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2010年7月号(PDF/512KB)
Photographs Vung Su Lake – Thanh Hoa Province Dam and intake town JICA ベトナム事務所 2010 年 7 月号 (ベトナム事務所月報) 貧困地域小規模インフラ整備事業(タンホア省) 今月の主なトピック 「農地を工業用地に転用することが難しいとおっしゃるのならば 工業化を諦められたらいいんです。」 7 月 27 日、28 日にハノイにて「産業政策、裾野産業政策―日本の経 験から」と題して開催 されたセミナー2 日目、 も と 経 済 産 業省 事 務 次官の杉山商工中金 副社長から発せられ た言葉に、会場は一 瞬凍りつきました。 同時に、日本の産業 政策をその中核で担 ってきた杉山副社長 の「大事なことがわか っているのならばとく にかく実行あるのみ、 日本の経験等に頼ら ず、ベトナムが独自に ベトナムの産業を強く することを真剣に考え 行動せよ」というメッセ ージが、強烈に伝わっ た瞬間でもありまし た。 このセミナーはベトナム社会科学院と JICA の共催で、2010 年 3 月以 来行われている国家開発戦略策定支援の一環で実施されました。同 支援では、2010 年 6 月に次期国家開発戦略起草委員会の主要メンバ ー8 名を日本へのスタディツアーに招聘し、産業政策等について大和 総研武藤理事長をはじめとする著名な有識者との意見交換を実現し ましたが、スタディツアー終了後、ベトナム側から産業政策、とりわけ 裾野産業政策に絞って、今度は産業政策の政策決定者を対象にセミ ナーを開催したいとの要請を受け、1 ヶ月という短期間で準備し開催 にこぎつけたものです。 日本からは、前出の杉山商工中金副社長、朽木日本大学国際地域 開発学科教授、米村中小企業診断協会顧問、星野経済産業省技術 協力課長、坪井早稲田大学政治経済学部教授、ベトナム側からはナ ム社会科学院長、テュエン前商工大臣、テュワット工業戦略研究所長、 国会経済財政委員会副委員長等、また、在ハノイの日経企業関係者 等合計 80 名以上の参加を得て、冒頭で紹介したような大変活発かつ 率直の意見交換が行われました。 セミナーでは、裾野産業の育成を進めていく上で必要な政策について 日越双方の有識者における認識にほとんど差異がないことが明らか になりました。杉山副社長の言葉通り、あとは実行あるのみです。 このセミナーの様子は、日本の NHK をはじめ多くのベトナム側メディ アが取り上げられ、日越双方の関心の高さが伺えました。 2. 岡田外務大臣のご来訪 7 月 24 日(土)に岡 田外務大臣が坂場大 使と共に JICA 支援先 のハノイ工業大学およ び中小企業(キムロン 社)を視察されました。 大臣の関心は裾野産 業育成にかかる協力 にあり、ハノイ工業大 学では、過去に技術 1. 協力プロジェクトで供与されたフライス盤や NC 旋盤等の教育訓練機 材の活用状況や、現在実施中の技術協力プロジェクトにおける産学 連携の取り組み等を案内しました。また、キムロン社で は、シニアボランティアによるベトナムの裾野産業企業に対する技術 移転の現場を紹介しました。大臣は裾野産業育成の重要性に何度も 言及すると共に、大学幹部や学生、またキムロン社幹部やシニアボラ ンティアに対する様々な質問が為されるなど、JICA の裾野産業育成 にかかる協力を理解いただく非常に良い機会となりました。 3. ベトナム国家銀行総裁の訪日 ベトナム国家銀行(SBV)キャパシティ強化プロジェクトの一環として、 7 月 11 日から 14 日 にかけて SBV のザ ウ総裁以下 8 名の 高級幹部を日本に 招聘しました。日本 銀行の白川総裁と の面談を含めて、両 中央銀行の関係者 が SBV の課題を踏 まえ、各種意見交 換を行いました。ま た、JICA 本部も訪 問し、緒方理事長と の面談を行い、今 後の協 力につ いて 意見を交わしました。 現行プロジェクトは、 2010 年 9 月で終了 となりますが、フェ ーズ 2 が切れ目なく 開始される予定です。当該プロジェクトを通じて、ベトナム政府の金融 セクター改革が一層推進されることが期待されます。 4. 円借款「ギソン火力発電所建設事業」の起工式 7 月 3 日、円借款事業であるギソン1火力発電所(600MW)の起工式 が開催され、ベトナム 側からは、ズン首相、 タインホア省党書記・ 人民委員長、EVN 会 長等、保健大臣等、 日本からは、坂場大 使、関山丸紅副社長、 築野 JICA 所長等が 出席しました。式典に おいては、ズン首相 からは、日本の ODA に対する感謝の言葉とともに、第二期 IPP を合 わせた発電計画の早期実施と、石油精製等、他の大型投資事業を含 め、ギソン地域を北部産業開発の拠点として推進する政府方針が強 調されていました。 5. 技協プロジェクト「中部地域都市上水道事業体能力開発プロジェ クト」JCC が開催 7 月 22 日、中部地域都市上水道事業体能力開発プロジェクトの JCC が フエ省で行われました。JCC 議長の建設省 Quang 副大臣の出席のも と 、 C/P 機 関 で あ る 建 設 省 、 都 市 建 設 大 学 校 、 フ エ 省 水 道 公 社 (HueWACO (HueWACO)、また、 協力機関であるベトナ ム上下水道協会等か ら代表者が出席しまし た。会議では、ドラフト 版となっていた PDM と PO が承認され、副 大臣と JICA 長瀬次長 により署名が行われ ました。本プロジェクトは、関係機関の協力関係を構築し、水道事業 体の能力向上のための研修システムを創り上げることを目的としてい ることから、議論を通して、プロジェクト成果の持続性の確保の重要性 が指摘されるとともに、責任機関である建設省のイニシアティブへの 期待が示されました。 6. 地域リーダーのためのトレーニング実施 7 月 20~23 日、草の 根技術協力事業「ハロ ン湾における住民参加 型資源環境システム構 築支援事業」の一環と して、地域リーダー育成 トレーニングが行われ ました。本研修は、水上 生活者を主とした地域 住民の環境への気づき や彼らの自立的な環境 保護意識の養成、当該 地域でのリサイクルシ ステムの確立などを目 的としました。トレーニ ングには、 ハ ロン湾管 理局、女性連合、青年 同盟、水上生活者代表、 観光専業者代表などの 参加がありました。 本研修では、ハロン湾における水環境保全や環境教育に関する講 義だけでなく、ハロン湾におけるコンポストプラントやハノイ3R プロジ ェクトの視察が実施され、参加者間で積極的な意見交換などが行わ れました。 この研修を通して、各受講者、特に水上生活者や観光船 業者がハロン湾の環境保護に向けて積極的かつ自発的に活動して いけるようになるになることが期待されております。 7. 中部地域観光開発戦略セミナー開催 7 月 30 日、ダナン市 において、JICA とダ ナン市人民委員会 と共催で中部地域 観光戦略にかかる セミナーを実施しま した。本セミナーは、 ダナン市都市開発 マスタープラン調査 の一環として行わ れ、文化スポーツ観光省観光総局、フエ省、クアンナム省、ダナン市 等が参加しました。中部地域の世界遺産(フエ王宮、ミソン遺跡、ホイ アン旧市街)の資源を活かした広域の観光戦略の策定、観光開発の ための人材育成や制度構築や観光インフラの整備の必要性について 議論しました。 新規案件紹介 1. 無償資金協力「人材育成奨学計画」(7 月 12 日、G/A 署名) 人材育成奨学計画 (JDS)の実施のため に 3 億 6200 万円を限 度とする無償資金協 力の交換公文に教育 訓練省ルアン大臣と 坂場大使が署名しま した。昨年度に JDS の見直しを行った結 果、2010 年から 2014 年は 6 つの重点分野 (成長促進のための 制度整備、運輸交通・都市開発、農業、環境、法制度整備、行政改 革)において特定の省庁・機関の行政官を対象に実施することになり ました。新方式に切り替わって一年目の JDS 生 28 名が日本の大学の 修士課程で学ぶため、8 月 2 日にハノイを出発しました。 2. 技協プロジェクト「国家温室効果ガスインベントリ策定能力向上 プロジェクト」(7 月 1 日、R/D 署名) ベトナムは急速な 経済成長に伴い、温 室効果ガス(GHG)の 排出も増加の一途を 辿っています。今後、 持続可能な低炭素社 会へと移行するには、 GHG 排出状況の把 握に基づく最適な対 策の立案・実施が必 要です。本プロジェク ト は MONRE DMHCC(水文気象気候変動局)を CP として正確で一貫性した GHG インベントリを定期的に作成する能力を強化するものです。プロジェク トを通じて国家 GHG インベントリ作成を 2 回(2005 年、2010 年)行い、 国内の施策促進のみでなく、国際社会への説明責任も増すことが期 待されます。本プロジェクトは、2010 年 9 月から 3 年間で実施する予 定です。