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金融商品をめぐる 環境変化と適切な金融行動

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金融商品をめぐる 環境変化と適切な金融行動
■規制緩和と直接金融の拡大により期待される生活者にとってのメリット
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
金融商品をめぐる
環境変化と適切な金融行動
■間接金融と直接金融
間接金融
直接金融
直接金融の拡大と適切な金融行動の重要性
銀 行
かつて金融の仕組みは、個人と企業などとのお金のやりとりが銀行
法 人
や信用金庫などを仲立ちとして行われる間接金融が中心でした。個人
収 益
>
預 金
受取利息
は銀行などにお金を預け、それを銀行は企業に設備投資資金などとし
利ザヤ
て、また個人に住宅ローンとして融資したりします。貸出す資金が回
人件費
設備費
システム費
など
収されるかどうかのリスクは銀行が負い、個人は基本的に預貯金で貯
蓄していれば一定の金利を得ることができます。また以前は、さまざ
* まな規制により金融機関の競争が制限され、金融商品の種類も限られ
金利も同じで、生活者にとって金融商品の選択の余地があまりありま
せんでした。こうした時代には、私たちが金融商品を選ぶ際に、金融
機関経営の健全性や金融商品の安全性の十分な判断をしなくても済ん
でいたといえます。
しかし、こうした環境は変わりました。現在は間接金融に加えて
直接金融の仕組みが広がっています。 個人は銀行などを仲立ちと
することなく、金融機関で直接、株式や債券を購入することにより、
直接企業にお金を投資する機会が多くなっています。その場合株式や
債券が値上がりすると、その収益は直接個人にもたらされます。また
金融機関の競争によって、私たちは多様な金融商品・サービスを選
択して、より高い収益性や利便性を追求できるようになっています。
38
貸付金
* 債券市場
株式市場
> 支払利息
個人は銀行に利ザヤを差引かれた残りを利
息として受取る。
銀行が企業を選ぶ。
資本市場
個 人
資金調達
法 人
社債発行
増資
投資
証券会社
<仲介者>
個 人
リターン
手数料
直接金融では証券会社を介して個人が企業
を選択するようになる。
* * 個人はリスクをとってリターンを追求する。
他方、株価や債券価格は変動するので、その価格変動リスクや信用
リスクなどは、個人が直接負うことになります。市場性のある投資信
託等は銀行等でも購入できるので、元本保証のある預貯金と混同しな
いよう注意が必要です。手数料等のコストも金融商品によってさまざ
まです。また、何に投資しているのか、どんなリスクをとっているの
か、仕組みがわからないと、どの商品を選んだらよいのか、わかりま
せん。このように選択の幅が拡がる反面、多様な金融商品や金融機関
を自分に合うように選択し、自ら責任をもつことが求められていま
す。
このように、自分の責任に基づいて、金融商品を自分で適切に選択
する、という意思決定と金融行動が大切になっています。
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金融機関が取扱う金融商品の範囲の拡大・多様化
してきました。銀行などでは現在、預貯金に比べてリスクの高い投資
信託や外貨預金そして変額年金などの金融商品を販売しています。一
方、証券会社は、証券総合口座の導入で、より利便性の高い金融商品
を取扱えるようになりました。また公社債投信や個人向け社債など、
ミドルリスク・ミドルリターン(リスク・リターンが極端に高くも
なく、低くもない)商品の販売も扱っています。
銀行と証券会社は、取扱っている金融商品についてリスク・リター
ンの組合せのパターンを増やしており、両者の品揃えが重なる面があ
るようになってきています。
このように、私たちが選べる金融商品はますます多様化していま
す。また、金融商品の種類の多様化とともに、収益と損失の組合せな
どの複雑化が進んでいます。こうしたなかで、自分に合った金融商品
を自らの責任で適切に選択することがますます重要になってきてい
ます。
■銀行・証券会社にみられる品揃えの変化
近年の1つの特徴として、口座の総合サービス機能の拡充があります。
銀行・証券会社などでは、普通預金や公社債投信など流動性の高い金融商品
を受け皿にして、その口座にさまざまなサービスを追加するかたちで、利便
性が高められています。
銀行では、
今まであった総合口座の機能を一段と高める動きが出ています。
従来の総合口座は、定期預金の積立てがメインでしたが、新しい総合口座で
は、外貨預金やMMF、投信と組合せて運用の幅を広げています。また家計
管理情報の提供や投資情報など幅広いサービスを付加する改良も加えられて
きているようです。さらに、預金残高やローンの利用度合いなどを基準に振
込み手数料を無料にするサービスも行っています。
証券会社では、
証券総合口座の機能が拡充されています。証券総合口座は、
MRFという、容易に換金できる公社債投信を中核にして、株式や債券・投
信の売買の資金振替などができる機能をセットしたものです。サービスの内
容は証券会社によって異なりますが、公共料金やクレジットカードの引落し
など広いサービスを提供しているところもあります。
一方、保険会社でも、保険総合口座が増えてきています。保険の場合は、
利便性を追求するメリットよりも、加入する保険の種類を増やしたり、通算
保険金額が大きくなったとき、特典として保険料を割引くなどのサービスが
提供されます。また、インターネット申込みの場合に保険料の割引をする
サービスを提供しているところもあります。
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
金融自由化の進展に伴って、金融機関は、販売する金融商品を拡大
口座の総合サービス機能の拡充
金融商品の適切な利用選択するために
それでは、適切に金融商品を選択するために、どんなことが必要な
のでしょうか。
1 金融商品の仕組みと特徴の着眼点を理解する
まず大切なことは、金融商品に関する知識の習得と共に、その基本
的な仕組みを知ることです。目の前に無数の金融商品があっても、基
本的な仕組みを理解していれば、「ああ、この金融商品の性格は、○
○に似ているな」とか「この機能は、今までの○○とは違った点が特徴
だな」といった見方ができます。仕組みがよく理解できない場合は、
その金融商品に手を出さないことです。
また、基本的な仕組みを理解するだけでなく、その金融商品について、
40
41
①何を運用対象にしており、どんな目的にふさわしいものか
②どんなメリットとデメリットがあるか
リスクのある金融商品については、金融機関から事前に、どんな
リスクがあるのかを確認することが重要です。高い収益が得られる
④手数料などのコストはどうか
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
③どんなリスクとリターンか
チャンスのある金融商品には、それと裏腹のリスクがあるはずですか
⑤税金がどうかかるか
といった特徴をおさえながら、金融商品を見分ける経験を積むことも
大切です。
ら、リスクの内容を正確に認識して購入しなければなりません。金融
機関は顧客に対し販売する金融商品のリスクについて説明することを
義務づけられています。きちんとしたリスクの説明ができる金融機関
2 リスクに対する対処方法を使い分ける
各種のリスクに対しては、それぞれの対処方法も異なってきますが、
それぞれのリスクに具体的にどう対処するかを知ることが重要です。
たとえば、価格変動リスク・為替変動リスクに対しては、市場変動を
常に確認しておくことが基本です。
また、信用リスクに対しては、ディスクロージャー情報の入手の仕
方、その読み方に習熟しておくほか、格付情報をあわせて利用する方
法もあります。
■リスクにどう対処するか?
主なリスク
3 金融機関からリスクの説明を受ける
対応方法の例
価格変動リスク
市場変動の把握、リスク回避手段の有無の確認
為替変動リスク
市場変動の把握、為替予約などリスク回避手段の検討
信 用 リ ス ク
ディスクロージャー誌・目論見書の利用、
決算情報の読み方への習熟
流動性リスク
約款、パンフレットなどの確認
もく ろ
み しょ
を選ぶことが必要です。
複雑な金融商品は、内容・仕組み・コストに要注意!
金融商品の中には、わかりにくく複雑な仕組みを持つものがあります。
外国為替証拠金取引
(FX)は、少額の証拠金を差し入れて外貨に換え、
証拠金額の25倍までを上限に取引ができます。少額の証拠金で取引できる
反面、差し入れ証拠金の25倍もの損失を生じるおそれのあるハイリスク・
ハイリターンの金融商品です。
この他にも先物取引やオプション取引といったデリバティブ
(金融派生
商品)と呼ばれる取引の手法を使った複雑な仕組みの金融商品が増えてきて
います。デリバティブは、リスクを抑え一定の収益を確保しようとしたり、
大きなリスクを覚悟して高い収益性を追求しようとした取引手法です。デリ
バティブ型金融商品には、為替相場や株価などが予想どおり変動すると大き
な収益が得られる反面、予想に反して変動すると大きな損失が発生するもの
もありますので、商品の内容面には十分な注意が必要です。
仕組預金や仕組債は、
「預金」
「債券」
という名前がついていても、
デリバティ
ブの仕組みが使われており、通常の
「預金」
「債券」
とは異なる高いリスクがあ
ります。仕組預金や仕組債・ノックイン型投資信託など、オプションを使っ
たデリバティブでは、満期の時期を決める権利
(オプションとは権利のこと)
や円で戻ってくる権利を行使できない仕組みになっているものがあります。
また外貨建て個人年金という金融商品があります。円をドルなどの外貨に
換えて外国債券を購入し、その外国債券で運用するもので、為替リスクや信用
リスクがあり、中途換金する場合は、ペナルティとして「解約控除」という手数
料が一定期間とられるというコストの問題もあります。
賢い金融商品選びは、あくまでリスクやコストに対する正しい理解のうえ
に成立つものです。仕組みの複雑なものは、それだけコストもかかります。
新しい金融商品を購入するときには、取扱っている窓口などで、商品の内容・
仕組み・コストについて自分が納得できるまで説明してもらいましょう。
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43
4 過去の実績を必ず確認する
■ここ数年間の株式相場、外国為替相場の動き
<株式相場>
<外国為替相場>
21000
150
19000
140
17000
130
円
15000
13000
11000
9000
7000
平成19年 20年 21年 22年 23年 24年25年 26年
出典:日経平均プロフィル
(http://www.nikkei.co.jp/nkave/index.html)
円/ドル
120
110
100
90
80
70
平成19年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年
出典:インターバンク
(http://www.interbank.co.jp/variable.html)
5 外部の知見とアドバイスの活用
絶えず新しい金融商品が販売され、多様化する中では、以上のような
点に注意していても、金融商品に関する知識の習得や理解は、どうして
も追いついて行けず、適切な判断を下せないこともしばしばあります。
そうした時に大切なことは、金融商品に関する中立的で客観的な情報や
知見にアクセスしたり、中立的なアドバイザーに相談することです。
中立的で客観的な情報については、金融広報中央委員会を始めとし
て、金融関連団体が、各種の金融商品別に、あるいは官庁が年金・税
金といった項目別に情報提供しています。
金融商品を選択する時点での予防的で中立的な相談窓口や事後トラブ
ルの際の相談窓口については、巻末の
「金融なんでも情報」
p290以降をご
覧ください。
キャッシュカードを守る
近年、カードの磁気情報を不正に読取り使用する犯罪である
「スキミング」
による偽造キャッシュカードの不正使用や盗難・紛失によるトラブルが多発
しています。これに対して銀行では生体認証を取入れて本人確認を厳格化す
るなどの対応や、ICキャッシュカード化によるなりすまし防止対策、AT
Мで1か月あたりの支払い限度額を設定し、ATМでの出金をロックする、
などの工夫がなされています。これらをまずチェックしてください。同時に、
次の点に日常的に留意してください。
・キャッシュカードの枚数を必要最小限に減らす。
・毎日キャッシュカードがあるかどうか確認し、月1回は通帳記帳する。
・口座番号は人に知られないようにする。
・暗証番号は生年月日など簡単に推測されるものにせず、口座ごとに異な
るようにし、こまめに変更したり、ほかでは使わないなど工夫をする。
・暗証番号をカードに記入したり他人に教えたり絶対せず、番号を書いた
り、番号を推測できる書類と一緒に保管しない。
・キャッシュカードの使える口座は必要最小限の預金額にして流動性を確
保し、残りのお金は定期預金やその他の金融商品での運用にまわす。
・ATМの利用にあたっては、暗証番号の入力時に覗き見されない、利用
明細書は安易に捨てない、などに気をつける。
なお、万が一カードの偽造や盗難にあった場合は、すぐに、取引している
金融機関に届出てください。キャッシュカードが盗まれていなくても、磁気
データがコピーされている可能性がある場合も金融機関に届出てください。
金融機関の電話番号は、NTTの電話番号サービス(104)でも確認できま
す。また全国銀行協会のカード補償情報センター(03−3216−3761)に問
い合わせてください。
被害については預金者保護法によって、預金者に過失がなければ金融機関
が被害を全額補償し、
過失がある場合もその立証責任を金融機関が負います。
ただし、暗証番号を推測できる書類と一緒にカードを保管して盗難にあった
場合などは預金者の過失となりますし、預金通帳やインターネットを使った
不正引出しは保護されないので、やはりすでに述べたような自己管理が重要
です。
■偽造・盗難カードに対する金融機関の補償割合
(預金者保護法)
偽造カード
盗難カード
預金者の過失の程度
無過失
100%補償
無過失
軽過失
100%補償
75%補償
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
相場の動きによって価格変動する商品に資金を投資するときには、
必ず過去の運用実績を確認することが重要です。相場の動きに価格
が左右される金融商品は、価格が上昇することもあれば、下落するこ
ともあります。現在は過去の価格変動の流れからみて、どのような水
準にあるかを把握しておくことが必要でしょう。
重過失
0%補償
重過失
0%補償
●暗証番号をカードに書いていた場合→重過失
●暗証番号を生年月日にしていて、生年月日がわかる書類と一緒に保管していた場合→軽過失
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45
適切な金融商品の利用選択のための環境整備
私たちの個人や家族が行う金融行動は、私たち自身の暮らしを守りよくす
2007年に始まった世界金融危機の中で、米国では、本来高額の住宅
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
るものですが、同時に消費や寄附、貯蓄や投資を通して社会に密接に関わっ
ています。たとえば、地球環境を悪化させるような消費をしていたり、環境
に配慮しない製品を作る企業に投資したりすれば、消費や投資を通して環境
悪化に手を貸すことになります。また被災地の人々への寄附や被災地ファン
ドを通した被災地の中小企業への投資は、被災地の人々と企業をはげまし、
復興の経済的な支えとなります。金融商品を選ぶ場合も、こうした視点も入
れて選ぶと、社会に良い影響を与えることができます。
ローンを返済するのに必要な年収のない人々が、借り入れ当初だけ適
用される低金利や、安易な住宅価格の値上がり期待をあてにして多額
の借入れをし、住宅を取得したところ、住宅価格が大幅に下落して返
済不能となりました。また、そうした住宅ローンを組み込んだリスク
の所在がわかりにくい複雑な金融商品が世界中で販売されました。こ
うしたことを受け、金融機関等に対する規制・監督強化と消費者保護
このように個人と家計の金融すなわちパーソナルファイナンスは、自分と
施策の推進と同時に、消費者の金融リテラシー不足にもその一因があ
家族の家計を支えると同時に、
社会に対してさまざまな影響を与えています。
るとの認識が高まり、多くの国々で金融教育の推進・金融リテラシー
多くの人が消費者市民
(コンシューマー・シチズンシップ)として、自分の家
計をしっかり支えながら、社会や世界のお金の良い流れを作ろうという意識
をもって家計に取組んでいくことは、とても大切です。良い意志のあるお金
の使い方や貯め方、投資や寄附の仕方を考え、その観点から金融商品の選択
をすることは、お金を通して世の中をよくしていくことでもあります。
企業経営では、
「企業の社会的責任
(CSR)
」
が国際的に重視されるように
なっています。消費者への誠実な対応や従業員の労働条件の改善、地域社会
への貢献、環境負荷の少ない製品の開発などに配慮して企業活動をすること
がCSRです。CSRを自覚して活動する企業を企業市民
(コーポレート・
の普及が始まりました。消費者が自己の責任で金融商品を選択する時
代には、こうした金融機関の規制と消費者保護そして金融教育に関す
る環境整備が極めて重要になっています。
セーフティネットの整備
金融機関の競争によって、選択の幅は拡がってきましたが、その一方で、
金融機関の破綻を目の当たりにした時、自分の運用資金の安全性が脅か
されるのではないかと心配する方も少なくないと思います。
シチズンシップ)
とも呼んでいます。
しかし、生活者の「安全に運用したい」というニーズに対しては、政
こうした動向に対して、個人が企業に投資するときの基準にはリターンに
府による手厚い保護がなされています。たとえば、元本保証のある預
関する経済的指標とともに、環境配慮や企業の誠実性あるいは消費者尊重な
金には、預金保険による保護の仕組みがあります。金融システム全体
どの社会的な指標も考える
「社会的責任投資
(SRI)」があり、そうした企業
を選んで投資する社会的責任投資ファンド
(投資信託)もあります。また住民
参加型市場公募地方債への投資や再生可能エネルギー事業をすすめる市民電
力会社への出資なども社会をよくするお金の動きといえます。そして株式投
資の場合は、株主が経営者に社会的配慮を働きかけ企業の社会的責任を果た
させるという株主行動もこの一環といえるでしょう。
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
お金を通して社会をよくする
にも、政府は、仮にある金融機関が破綻しても、それに伴うシステム
の動揺が大きくならないように、バックアップする体制を法的に整備
しています。これが セーフティネット です。セーフティネットは、
システムが動揺しても、その周りに大きな安全ネットを張って、生活
者の安全が守られるように受止める役割を果たしています。
多様な選択肢の中で、リスクをとりたくないと感じる人は、セーフ
ティネットの仕組みを知り、こうした仕組みの整った金融商品を選択
することでリスクの範囲を縮小することができるわけです(詳しくは、
「金融機関破綻時の金融商品の保護について」の章をご覧ください)。
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47
消費者教育推進法
金融機関のディスクロージャー
公開されていなくてはいけません。十分な判断材料がないまま「健全
な金融機関を選ばなかったほうが悪い」といわれても困ってしまいま
す。金融機関のディスクロージャー
(情報開示)が適切に行われるよ
うにルールを整備することは、健全な金融機関を選ぶために必要不可
欠な前提条件といえるでしょう。
消費者基本法と消費者基本計画
平成16年に施行された「消費者基本法」
(旧
「消費者保護基本法」
)は、金融
も含めたすべての消費分野で、自己責任で判断できる消費者の確立を求めて
います。同法では、消費者対策で尊重すべき消費者の権利として、
・消費者の安全が確保されること
・商品とサービスについて消費者の自主的で合理的な選択の機会が確保され
ること
・消費者に対して必要な情報と教育の機会が提供されること
・消費者の意見が消費者政策に反映されること
・消費者に被害が生じた場合は適切・迅速に救済されること
を挙げており、また消費者が自ら利益の擁護および増進のために自主的・合
理的に行動することができるよう、消費者の自立支援を基本として消費者政
策が行われなければならないとしています。
これらの実現のため平成21年9月に消費者庁が発足し、平成22年3月に
は第二期目の消費者基本計画が作成され、実行されています。金融について
は、高齢者などをねらった悪質商法対策の強化、外国為替証拠金取引等にお
ける金融商品取引法の厳正な運用、融資保証金詐欺や架空請求詐欺・未公開
株取引を利用した詐欺的商法等の取締り強化を打ち出しています。また平成
25年6月に策定された消費者教育基本方針が盛り込まれ、金融を含めた消
費者教育の推進が掲げられています。
消費者教育に関し、基本理念を定め、国や地方公共団体の責務を明らかに
することなどにより、消費者教育を総合的かつ一体的に推進することを目的
とした法律で、平成24年12月に施行されました(正式名称は「消費者教育の
推進に関する法律」)。同法の消費者教育の基本理念は、「消費生活に関する
知識を習得し、これを適切な行動に結び付けることができる実践的な能力が
育まれること」
および
「消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画し、そ
の発展に寄与することができるよう支援すること」です。また、消費者教育
推進に関する施策を策定し実施することを、国や地方公共団体の責務として
います。
これは
「消費者基本法」で示された消費者の権利である「消費者に対する教
育の機会の提供」
を目的とするもので、消費者教育とは
「消費者の自立を支援
するために行われる消費生活に関する教育及びこれに準ずる啓発活動」とさ
れ、幼児期から高齢期までの各段階に応じて体系的に行うよう定めています。
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
自己責任の原則が適用されるには、正しく判断できるだけの情報が
金融教育の推進
自己責任意識が定着するには、金融知識の普及、金融教育への取組
みが大切だと考えられます。我が国では2012年11月に金融庁が、有識
者・関係省庁・関係団体をメンバーとする「金融経済教育研究会」を設
置して今後の金融経済教育のあり方について検討を行い、2013年4月
に研究会報告書を公表しました。この報告書を受けて2013年6月、金
融広報中央委員会を事務局とする「金融経済教育推進会議」が設立さ
れ、この取組みを推進しています。
金融広報中央委員会、各都道府県の金融広報委員会も、①中立・ 公
正な立場からの正確でわかりやすい
「金融経済情報の提供」
と、②一人
ひとりが賢い消費者として自立するための
「金融経済学習の支援」
をい
わば車の両輪とした金融に関する情報普及活動を積極的に展開してい
ます。とくに近年は、学校段階における金融教育への関心・ニーズの強
まりに対し、若年層向けの教材の充実や、金融教育公開授業も行って
きました。ほかにも、
金融経済に関する正確で十分な知識を習得したり、
調べたりできるように、インターネット
(http://www.shiruporuto.jp/)
による情報発信に力点を置いているほか、本冊子を含めた各種資料の
作成や各種ビデオ教材の貸出し、各地における講演会・セミナー、また、
コンクールの実施など、さまざまな活動を広範に行っています。
48
49
<金融広報中央委員会
「
」の主な刊行物紹介>
刊行物名
用 途
季刊発行の広報誌。暮らしに役立つ身近な金融
知識、金融教育の情報を知りたい方に。
暮らしと金融なんでもデータ
暮らしと金融に関するデータを知りたい方に。
家計の金融行動に関する世論 家計の金融資産に関する意識やその実態につい
調査
て、調査レポートで知りたい方に。
きみはリッチ?
多重債務問題への対処等について知りたい方に。
ビギナーズのためのファイナ
金融の基礎知識や金融用語を知りたい方に。
ンス入門
大人のためのお金と生活の知 大人にとって役に立つお金と生活の基本的な
恵
知恵を身につけたい方に。
※http://www.shiruporuto.jp/about/siryo/book/index.htmlで他の刊行物も確認できますのでご
利用ください。また、一部はご請求も可能です。
また、金融知識の普及には、私たち一人ひとりが、十分な金融知識
を身につけることの大切さを認識し、主体的に学んでいこうとする姿
勢も重要です。金融知識は、さまざまな金銭・金融トラブルから私た
ちの身を守ることに役立つだけでなく、人生における夢や安定した老
後の生活の実現にも欠かせません。
タイプ別金融知識を身につける際のポイント
人生の中での置かれた立場によって、私たちが身につけるべき金融知識も
微妙に変わってきます。ここでの例示は、あくまで1つのパターンにすぎま
せんが、これから金融知識を身につけようとする際のポイントとして参考に
してみてください。
【大学生】
大学生は精神的・生活的・経済的自立への第一歩の時期です。学生として、
幅広い教養と専門性ある学問を習得し、就職するための職業能力の基盤を身
につけると同時に、生活力の一環として金融に関する知識と判断力そしてス
キルを身につけることが求められます。具体的には次の点に注意しましょう。
1 アルバイトしたり自活したりしながら、収入と支出にかかる家計管理
能力を磨くこと。本当に必要なものだけ買い、必要のない物はがまんす
る心を養うこと。
2 カードやローンなど借入に頼らず、限られた収入の中でお金のマネジ
50
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
くらし塾きんゆう塾
メントができること。また貸与型奨学金についても返済計画に注意する
こと。
3 リボルビング払いやキャッシングを安易に利用することの怖さを十分
理解すること。そのために金利の仕組みの理解と適切な金利感覚を身に
つけること。
4 教材やエステも含めて、訪問販売やインターネットショッピングなど
さまざまな商法による勧誘にのせられて購入し、多額の出費やローンを
組んだりしないこと。架空請求や未公開株取引勧誘などの知識と対処法
を理解すること。
5 ギャンブルや投機的売買に手を出して失敗しないこと。
6 公的年金の仕組みを理解して国民年金保険料を納めること。
7 学生生活中のケガや病気、自動車事故などに備えて障害保険や自動車
保険などの加入を検討すること。
8 少額でも積立貯蓄をすること。
9 大学卒業後のキャリアについて両親や大学の相談室などと一緒に考
え、必要であれば資格取得などもすること。大学で学問することは将来
のための貴重な自己投資であることを自覚し、学業にはげむこと。
10 社会のため、人のため、地球環境のためにお金を廻すことを視野に入
れ、寄付や社会的責任投資、社会起業家、環境保全の貯蓄や投資などに
ついても考えてみること。
【シングル層】
仕事をしているシングル層の場合、子どもの教育費に関する金融知識は必要
ありませんが、住宅や老後資金そして医療保険に関する金融知識は重要です。
次の点を中心に金融知識を得るようにしましょう。
1 収入と支出、貯蓄と保険・資産運用などに関する家計管理の知識とス
キルを身につけること。
2 クレジットカードの使いすぎ、インターネットショッピングやテレビ
ショッピングなどでの使いすぎに注意すること。FXなどハイリスクの
金融商品には十分注意すること。
3 住宅取得の場合は、過大な住宅ローンを組まないように、資金計画を
たて住宅ローンの種類や金利タイプの知識、金融機関ごとの住宅ローン
商品の特徴をしっかり把握すること。
4 キャリアアップのためのスキル獲得や資格取得などの自己投資を効果
的に行うこと。
5 保険については、生命保険よりも医療保険について、自分にあった内
容の長期保障を得るように、保険知識と商品知識を持つこと。
6 失業した場合の雇用保険の基本給付や職業訓練に関する給付などの知
識をもつ。
7 老後のための長期的な資金作りを貯蓄・保険・投資を通して準備でき
るように、公的年金やねんきん定期便の知識を獲得し、資産運用や個人
年金の知識を身につけること。
【シニア層】
シニア層は、すでに一定の不動産や金融資産を保有している場合が多いの
ですが、人生経験豊富で知識も持っている積りでも、意外とそれらの資産に
ついて正確な知識を持っていないことも多く、また介護や相続・相続税など
高齢期に特に重要になる金融知識が色々とあります。また実際の金融トラブ
ルもシニア層で多く起こっており、その対処も重要な課題です。従って次の
51
【障がい者】
障がい者の方
(あるいは障がい者を支えている方々)は、障がい者に対応し
た年金や税金・医療保険などの各種制度や金融商品、そして自治体などの制
度と手続きをよく理解し知識を身につけ十分に活用できるようにすることが
大切です。また社会に出て働く知的障がい者が金融トラブルにあったり多重
債務に陥る例が後を絶ちません。そうした意味で障がい者が金融に関する消
費者教育を受け、金融トラブル等に対処することはとても重要です。また金
融機関や金融の専門家が障がい者への理解を深めることも、トラブル防止の
ために必要です。
1 公的年金である障害年金の仕組みと受給、所得税の障害者控除や特別
障害者控除、
相続税の障害者控除などについて知識を得て活用すること。
2 利子が非課税となる障害者マル優制度、信託銀行で扱う障害者非課税
信託
(特定贈与信託)
、生命保険に関する障がい者の保険料免除など有利
な金融商品についての知識を得ること。
3 JR運賃・航空運賃・自治体で運営するバス・有料道路通行料など交
通に関する割引、NHK受信料免除や郵便料金の減免などの知識を得て
活用すること。
4 公営住宅の優先入居、都市再生機構の賃貸住宅優遇制度、住宅金融支
援機構の金利優遇制度など、
住宅に関する金融知識を得て活用すること。
5 民生委員を通して社会福祉協議会から生活福祉資金の貸付を行える制
度を活用すること。
6 金融トラブルや多重債務についての知識をもち、消費生活センターや
社会福祉協議会など相談できる場所を知っておくこと。
公正な取引の確保と金融ADR
自己責任原則が当たり前に受け入れられるには、不正がないことも
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
ような点での金融知識が求められます。
1 ねんきん定期便によって公的年金の金額を確認できること。
2 高齢者をねらった金融被害にあわないために、悪徳商法や振り込め詐
欺などについて最寄りの消費生活センターなどを通してしっかりとした
知識をもち、対処策や相談連絡先を確認しておくこと。
3 未公開株・社債・商品相場・外国通貨など利殖に関する消費者トラブ
ルに巻き込まれないように、国民生活センターや金融庁・消費生活セン
ターなどから知識を得て対処すること。
4 生命保険や医療保険の内容の整理をし、それらの保険金請求方法や税
金について把握しておくこと。
5 将来的に意思決定能力の低下の不安がある場合、家族にサポートして
もらうことと同時に、地域包括支援センターや社会福祉協議会などで成
年後見制度や介護保険制度活用について知識を得て、利用を検討してお
くこと。
6 将来の相続に備えて資産管理をきちんと行うこと。預金口座や証券口
座の整理や残高の定期的な確認をすること。金融機関の貸金庫の利用も
含めて重要書類の整理と管理を行うこと。不動産も含め、遺産分割につ
いて遺言を検討しておくこと。
7 税理士・弁護士・ファイナンシャルプランナー・消費生活相談員など、
信頼できる専門家に相談できるようにしておくこと。
前提になります。商品の内容やリスクについてきちんとした説明のな
い不当な勧誘で被害を受けたのに、
「自己責任だ」といわれても納得が
いきません。
このため、平成22年4月に金融分野における裁判外紛争解決制度
(金融ADR:Alternative Dispute Resolution)が創設されました。
これは時間もお金もかかる裁判をすることなく、苦情処理と紛争解決
の両方を行う制度で、紛争解決については、当事者同士があっせん・
調停・仲裁などの合意によって行います。これによりトラブルの性質
や当事者の事情に応じた迅速で簡易かつ柔軟な紛争解決が期待でき
ることになりました。この制度に基づき、金融庁は業(第一種金融商
品取引業、第二種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業等)
ごとに指定紛争解決機関を指定しました。また法務大臣により裁判外
紛争解決機関として認証されている民間機関に日本共済協会、証券・
金融商品あっせん相談センター、(社)日本消費生活アドバイザー・コ
ンサルタント協会があります。苦情や相談がある場合は、こうした指
定紛争解決機関等にご連絡ください(本書292、293ページで一部紹介
しています)。
消費者は、購入した金融商品に問題を感じた場合、金融商品の種類
に応じて指定紛争解決機関に申し立てをします。当該金融機関がどん
な指定紛争解決機関と契約しているかは、その金融機関のホームペー
ジで調べて確認してください。指定紛争解決機関は、次の8つです。
全国銀行協会
生命保険協会
日本損害保険協会
信託協会
保険オンブズマン
日本少額短期保険協会
日本貸金業協会
証券・金融商品
あっせん相談センター
これらの機関は、金融機関を当該紛争に関して調査し、消費者と金
融機関に和解案を提示します。原則すべての金融機関が指定解決機関
と契約を結びます。紛争解決機関に消費者から苦情や相談が持ち込ま
52
53
れた場合、金融機関は解決機関への説明や資料提出を義務づけられる
ほか、合理的な理由がない限り和解案も原則、受け入れなければなり
性を確保します。消費者の指定解決機関利用料は無料、有料でも2,000
円~5万円程度で、数十万~数百万円かかる訴訟費用より安価です。
指定紛争解決機関がない業態の金融機関に関する苦情処理等につ
いては、その金融機関に直接問い合わせてください。なお次の表にあ
る団体に加入している金融機関については、その団体のホームページ
でも説明しています。
全国信用金庫協会
日本資金決済業協会
日本投資顧問業協会
全国労働金庫協会
不動産証券化協会
金融先物取引業協会
全国信用組合中央協会
日本証券業協会
第二種金融商品取引業協会
JAバンク(JA・信農連)
投資信託協会
証券・金融商品
あっせん相談センター
JFマリンバンク
(漁協・信漁連)
消費者団体訴訟制度
消費者被害の未然防止や被害拡大の防止のため、内閣総理大臣が認
定した「適格消費者団体」は、それぞれの法律に違反する事業者の不当
な行為に対して、差止請求ができることになっています。
適格消費者団体は、現在11あり、消費者庁サイト内「消費者制度」に
一覧表があります(平成26年11月末時点)。事業者の不当な行為をみか
けたら、適格消費者団体に連絡しましょう。
54
近年さまざまな金融トラブルが起こっています。これはインターネットな
ども含め、金融商品販売ツールが多様化していること、新しい金融商品開発
のスピードが速く消費者側の金融商品理解との間に情報格差があること、法
整備が充分でなかったこと、金融知識・理解に比較的乏しい高齢者を中心に
個人の金融資産蓄積が進み、年金不安と超低金利の中でリスクを十分理解せ
ずにリターンを求める問題があること、などによっています。
金融トラブルには次のようなものがあり、それぞれ本書のコラムで詳しく
説明しています。
『ヤミ金融から身を守る』
(70ページ)
ア.ヤミ金融関連―コラム
『外国為替証拠金取引
(FX)
について』
(129ページ)
イ.外国為替証拠金取引―コラム
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
ません。また、金融庁は解決機関に対する検査や監督を強化し、中立
金融トラブルに巻込まれないために
ウ.投資ファンドなどの投資商品
a.未公開株―コラム
『未公開株、社債等に関する不審な勧誘にはご注意
を!』
(176ページ)
b.不動産ファンド—出資法に抵触するおそれのあるものや、要件を具備
していないもの
c.投資ファンド―コラム
『いわゆる投資ファンドについて』
(66ページ)
エ.銀行商品
a.窓販商品―投資信託や変額年金保険は基本的に元本保証型商品では
なく、元本保証しないという認識が購入者になく、トラブ
ルになることがある。
b.預金関連―フィッシング詐欺
(金融機関などからの正規のメールや
Webサイトを装い、暗証番号やクレジットカード番号など
を盗む詐欺です。
「釣り」
を意味する
「fishing」
が語源になっ
ています。
)
や盗難通帳・カード・偽造カードによる預金引
出し—コラム
『キャッシュカードを守る』
(45ページ)
振り込め詐欺—コラム
『振り込め詐欺とその救済について』
(56ページ)
オ.その他
これらのトラブルにあわないためには、次の点を心がけてください。
①甘い話の裏には、必ず大きなリスクがあること、「ハイリスク・ハイリ
ターン」
を肝に銘じること。
②金融経済知識を身につけるよう努力する。特にそれぞれの金融商品のリ
ターンと同時にリスクについて十分把握する。
③信用のおける業者であること。住所・電話番号・代表者名・規制する法
律名・登録しているかどうか、など相手の情報を確かめる。
④自分の個人情報はなるべく言わない。
⑤自分で決断力が弱かったり、意思決定能力が衰えている、という場合は、
相談できる家族や信頼のおける第三者にサポートしてもらうこと。その
ために、日常生活自立支援事業
(コラム7ページ)や成年後見制度
(コラ
ム8ページ)
を活用すること。
55
振り込め詐欺とその救済について
近年、さまざまな金融商品が身近な商品として提供されるように
なっていますが、消費者に対して、金融商品の販売や勧誘を行う際、
金融商品販売業者の説明が不十分だったことが原因で、たとえば元本
割れが生じた場合などにトラブルにつながるケースが少なくありませ
ん。このようなトラブルから消費者を保護するため、「金融商品の販
売等に関する法律」
( 以下「金融商品販売法」といいます。)が施行され
ています。金融商品販売法に定められている主要な点は以下の3点で
す。
1 重要事項に関する説明義務
金融商品販売業者が金融商品の販売を行う場合は、その商品が持っ
ているリスクなどの重要事項について、消費者にきちんとした説明を
行わなければならない旨が定められています。具体的には、以下の重
要事項について説明義務が生じます。
重要事項
56
金融商品販売法の3つの柱
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
振り込め詐欺とは、主に次の4つの詐欺のことです。
①オ レ オ レ 詐 欺―電話を利用して親族、警察官、弁護士などを装い交通
事故の示談金などの名目で、現金を預金口座などに振
込ませるなどの方法によりだまし取る(脅し取る)詐欺
(恐喝)
。すぐに振込まない、1人で振込まない、のが
鉄則です。
②架 空 請 求 詐 欺―郵便、インターネットなどを利用して不特定多数の者
に対し、架空の事実を口実とした料金を請求する文書
などを送付するなどして、現金を預金口座などに振込
ませるなどの方法によりだまし取る
(脅し取る)詐欺
(恐喝)
。発送元が裁判所の場合は、裁判所のホーム
ページ等で電話番号を調べたうえで、その裁判所に確
認してください。架空請求詐欺事件では、書面に振込
先の銀行口座を記載せず連絡先の携帯電話の電話番号
だけを記載し、連絡を受けると口座を指定して振込ま
せます。また、携帯電話にきた迷惑メールに記載され
たアドレスをクリックしただけで高額な入会金を請求
するなど、手口が一段と巧妙になっています。利用し
た覚えがなければ振込まない、もし、請求の電話があっ
てもはっきり断る、のが鉄則です。
③融資保証金詐欺―実際には融資しないにも関わらず、融資する旨の文書
などを送付するなどして、融資を申込んできた者に対
し、保証金などを名目に現金を預金口座などに振込ま
せるなどの方法によりだまし取る詐欺。
④還 付 金 等 詐 欺―税務署や社会保険事務所を偽り、税金の還付金等に必
要な手続きを装って、ATMを操作させて口座間送金
により、現金をだまし取る詐欺。
これらに共通する留意点は、相手に連絡しない、相手に自分の氏名・住所
を教えない、見覚えのない送信元からのメールに表示されているアドレスに
はアクセスしない、ということです。
詐欺にあった場合は、
「振り込め詐欺救済法
(犯罪利用預金口座等に係る資
金による被害回復分配金の支払等に関する法律)
(
」平成20年6月21日施行)
が適用されます。この法律は、詐欺その他の人の財産を侵害する罪の犯罪行
為であって、財産を得る方法として振り込みが利用されたものによる被害者
に対し、被害回復分配金の支払手続等を定めるものです。これには金融機関
への被害の申請が必要です。また振り込んだお金が引き出されている場合
は、その額により分配金が一部減額されます。被害にあった場合は、警察や
金融機関に早く連絡し、犯罪に使われた口座の利用停止を求めてください。
金融商品購入に関する消費者保護
元本割れのおそれがあることとその要因
元本を超える損失が生ずるおそれとその要因
(要因)金利、為替、有価証券などの相場変動
(例:外貨預金、投資信託)
金融商品販売業者や社債発行企業の業務または財産の状況変化
(例:社債)
など
金融商品の権利を行使することができる期間の制限や解約期間の制限
(例:投資信託で一定期間解約できないタイプ)
57
◎金融商品販売業者
次の対象金融商品を取扱っている金融機関などをさします。
2 損害賠償の請求
◎対象金融商品
被った場合、金融商品の販売業者に対して損害賠償の請求が可能です。
以下のとおり幅広い範囲の金融商品が対象となっています。
この場合、金融商品販売法により、消費者側の立証責任は、金融商
対象となる金融商品の例
預貯金、定期積金、金銭信託、公社債、株式、投資信託、保険・共済、抵当証券、
商品ファンド、デリバティブ(金融派生商品)、外国為替証拠金取引など
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
上記の重要事項の説明がなかったことによって、消費者が損害を
品販売業者が説明義務に違反したこととなり、また、損害は元本割れ
となっている額相当であることが推定されることになりました。
3 勧誘方針の公表
金融商品販売業者はそれぞれが販売における勧誘方針を定めて、こ
個人情報保護法
平成17年4月から個人情報保護法が完全施行されました。これは、個人
れを公表する義務があります。具体的な勧誘方針は以下のとおりで
す。
情報を5,000件以上管理している金融機関などの個人情報取扱い事業者に対
し、
「生存する個人に関する情報で特定の個人を識別可能なもの」について、
本人の了解なしに流用や売買・譲渡することを規制する法律です。金融機関
に提供する個人情報も、当然この法律の保護の下にあり、この法律を守らな
い金融機関は届出や訴えにより法律で罰せられます。
個人情報を第三者が利用する場合には、本人の同意が必要です。
◆利用方法による制限
第三者は利用目的を本人に明示しなければなりません。
金融商品販売業者がこれに違反した場合は、過料に処されます。ま
◆正確性の確保
た、勧誘方針の公表は、勧誘の適正さを確保するだけでなく、その内
個人情報を利用する第三者は常に正確な個人情報を保つようにしなければ
容を消費者や消費者団体などに評価されることになるので、業者間の
なりません。
競争促進、ひいては消費者へのサービス向上につながることになりま
◆安全性の確保
流出や盗難・紛失を防止して個人情報の安全性を確保しなければなりません。
す。
◆透明性の確保
本人が閲覧可能であること、本人の申し出により訂正を加えること等の透
明性を確保することが求められます。
金融機関に財産などに関する個人情報を提供する場合は、以上のような点
を金融機関が守って業務を行っているかによく注意しておきましょう。
58
59
金融商品販売法と消費者契約法
ます。消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される契約のす
べてを対象としています。事業者が、契約を結ぶ際に重要な情報を伝
えなかったり、「再三訪問したうえ、契約するまで居座る」などの消費
者を困惑させる行為を行った場合、消費者はその契約を取消すことが
できるとされています。
金融商品販売法と消費者契約法は、下記のように要件が異なります
○ あなたが購入しようとしている金融商品について、重要事項に関する説
明を受けましたか?
○ その説明で十分に理解できましたか? わからない内容や金融用語につ
いては、納得できるまで質問し、理解しましょう。
○ 売買手数料や中途解約の場合の手数料、その他のコストがどれくらいか
かるかわかりましたか。
○ 金融商品のパンフレットや説明書は契約が終わるときまで保管しましょう。
○ 金融商品販売業者の経営状態は安全ですか?
○ 金融商品販売業者の勧誘方針はチェックしましたか?
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
「金融商品販売法」とあわせて「消費者契約法」が同時に施行されてい
<金融商品を購入する際のチェックポイント>
ので、金融商品の販売にはその両方が適用されます。
トラブルが発生したときには、金融ADRの指定紛争解決機関、各
金融機関・金融関係団体の苦情・相談窓口、消費生活センター、国民
生活センターなどが相談に応じます
(292ページ、293ページ参照)
。
外貨建て個人年金保険のコストと解約
金融商品を購入する際のチェックポイント
これらの法律は、消費者の利益を確保するために定められたもので
す。しかしながら、消費者自らも、金融商品を購入する際には、重要
と思われる事項や理解できない事項については、納得できるまで金融
商品販売業者に質問する、契約前には必ず勧誘時の説明内容と契約内
容に違いがないかなどをしっかりと把握することにより、トラブルを
未然に防ごうとする心構えが大切です。
最後に、金融商品を購入するときのチェックポイントを挙げておき
ます。なお、すべてのポイントを網羅しているわけではなく、あくま
でも参考としてください。
ドルなどによる外貨建て個人年金保険という金融商品があります。これに
は次のようなさまざまなコストがかかります。
1 為替手数料―円で年金をもらう場合、購入時に円をドルに、年金支払
い時にドルを円に換えるために、為替手数料がかかります。
2 契約時費用―契約時にかかる費用です。
3 保障・運用コスト―運用期間中にかかる費用で積立金の一定割合で計
算されます。
4 解約控除―中途解約する場合にかかる一種のペナルティで、解約返戻
金から控除されますが、据置期間(解約するとペナルティが課せられる
期間)
が10年等と長いのが一般的です。
5 据置き期間延長費用―年金原資の据置きを延長する場合にかかります。
6 年金支払い費用―年金が支払われる期間に年金額に対して一定割合で
計算されて引かれます。
外貨建て個人年金保険の場合、為替リスクがあり、また運用対象が外国債
券であれば信用リスクがあります。こうしたリスクに加えて、上記のような
さまざまなコストがかかります。特に
「解約控除」
といわれるコストは、変額
年金と同様にかかるもので、その金額が高くなるので、注意してください。
一時払
保険料
10万ドル
1
60
5
3
2
年金原資
106920ドル
積立金
93500ドル
4
終身年金
運用=据置期間10年
6
61
■金融商品の規制の仕組み
一部不動産ファンド
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
国交省
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
商品取引
金融庁が監督
金融商品によってバラバラだった法体系を横断的にひとつにまと
経産省
農水省
金融商品取引法
め、投資家保護ルールを徹底させ、金融商品利用者の利便性を向上さ
投資顧問業者
投資信託委託業者
証券取引所
金融先物取引所
金融商品取引業者
金融商品取引所
各法で
規制
金融商品取引法
・リスクの度合いを説明
・商品の仕組みを書面で交付
・プロ投資家相手は簡易な規制
・罰則強化
各法で
規制
金融商取法に
合わせて
販売ルールを強化
金融商取法の
販売ルールを適用
現制度
62
証券取引法
※限定列挙
不動産特定事業法
信託受益権販売業
商品取引所法
商品投資販売業者
投資ファンド
金融先物取引業者
金融先物取引法
証券会社
通貨・金利スワップ
天 候 デリバティブ
券取引所」などの名称を引き続き使用することはできます。
金融先物取引
社
債
国
債
投資信託
保険業法
株
式
変額年金保険
商品取引所」と法律上呼ぶことになりました。ただし「証券会社」や「証
銀行法
業者を「金融商品取引業者」と、また証券取引所などの取引所を「金融
旧制度
金融商品取引法では、証券会社や投資顧問会社など規制対象となる
外貨預金
に金融商品取引法が成立し、平成19年9月30日に施行されました。
有価証券デリバティブ ※
せるため、従来の証券取引法が抜本的に見直され、平成18年6月7日
63
◎規制対象となる金融商品
・適合性の原則
金融商品取引法は、株式・債券・投資信託・金融先物取引など元本
―顧客の知識・経験・財産の状況と契約目的に照らして不適当な
勧誘をし、投資者保護に欠けることのないようにする。
ルールを設定しました。この中には、「任意組合」や「匿名組合」によ
◎投資性の強い預金・保険等に関する規制強化
る投資ファンドや多様なデリバティブ取引も含まれることになりまし
金融商品取引法の施行と併せて、「銀行法」や「保険業法」で規制され
た。
る預金や保険のうち、投資性の高いものについても、利用者保護の立
そして販売・勧誘、資産運用・助言および資産管理を全て本来業務
場から金融商品取引法と基本的に同様の販売・勧誘ルールが適用され
とした上で、その内容に応じて規制を整備しています。また、いわゆ
ています。
るプロ向けと一般向けの商品類型などに応じて差異のある柔軟な規制
も一つの特徴となっています。
◎販売・勧誘ルール―投資家へのリスク説明など
業者が販売・勧誘を行う際には、次のようなルールを守らなければ
投資性の強い預金など
(銀行法など)
外貨預金
為替相場の変動により、円建て元本の
欠損が生じるおそれがある預金
仕組み預金
中途解約の場合に、金利動向に基づき
計算される違約金により、元本欠損が
生じるおそれがある預金
なりません。違反した場合は行政処分の対象になります。
・標識の掲示
―営業所ごとに、見やすい場所に標識を掲示する。
・広告の規制
―金融商品取引業者である旨および登録番号などを表示する。
―利益の見込みについて、著しく事実に相違する表示や、著しく
人を誤認させるような表示しない。
・契約前の書面交付
―金融商品取引業者である旨および登録番号などを表示する。
―契約の概要や手数料の概要について記載する。
―「損失が生ずることとなるおそれ」や「損失の額が、顧客が預託
すべき保証金などの額を上回ることとなるおそれ」があるとき
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
が保証されていないリスク商品について、横断的に共通の販売・勧誘
為替相場の変動により、円建ての保険
外貨建て保険・
金などにつき損失が生じるおそれがあ
投資性の強い保険など 年金
る保険・年金
(保険業法など)
運用状況により、保険金などにつき損
変額保険・年金
失が生じるおそれがある保険・年金
投資性の強い信託など 指定金銭信託
(信託業法など)
(実績配当型)
運用状況により、元本欠損が生じるお
それがある信託
商品先物取引
(商品先物取引法)
商品の価格などの変動により、損失が
生じるおそれがある取引
不動産特定共同事業
(不動産特定共同事業法)
不動産取引の状況により、損失が生じ
るおそれがある取引
は、その旨を記載する。
・契約時の書面交付
・禁止行為
―「虚偽のことを告げる行為」や「不確実な事項について断定的判
断を提供し勧誘する行為」の禁止。
―勧誘の要請がない顧客に対する訪問・電話による勧誘の禁止。
―顧客が契約しない意思を表明した場合の勧誘の継続の禁止。
・損失補てんの禁止
64
65
特定商取引法
一般にファンドとは、複数の投資家から資金を集めて、その資金によって
特定商取引法は、次の取引を対象とし、事業者規制や解約ルールが定めら
れています。
(1)訪問販売、
(2)通信販売
(表示規制等があるが、現状ではクーリングオ
フ対象外)
、
(3)電話勧誘販売、(4)連鎖販売取引(マルチ商法)
、
(5)特定継
続的役務提供
(エステ・パソコン教室など6業種)
、
(6)
業務提供誘引販売
(内
職商法)、(7)
訪問購入
金融取引では、未公開株や社債の電話勧誘があり、高齢者が電話勧誘で被
害にあうケースが目立っています。特定商取引法では、勧誘に先立って事業
者名や勧誘目的を明示する義務があること、契約をしない意思を表示した者
に対する勧誘禁止、申し込み書面や契約書面の交付義務、8日間のクーリン
グオフ期間などを設けています。
インターネット上で主に行われる取引は、商品の購入、サービスの提供、
オークションなどがありますが、消費者が事業者と取引しようと、インター
ネット上で商品やサービス
(役務)
の申込みを行う場合、その商品やサービス
は原則として特定商取引法の通信販売に該当します。通信販売では、広告に
事業者情報や取引条件などの表示義務、誇大広告などの禁止、承諾をしてい
ない者に対する電子メール広告の提供禁止、契約の撤回
(法定返品権)
などが
規定されています。通信販売には消費者による8日間の契約解除の権利を認
めるが、事業者が返品特約を定めて広告に表示した場合には、その表示内容
が優先となります。さらに電子消費者契約法により、事業者側が、消費者が
入力した内容を確認できる措置をしていない
(確認画面がない)
場合、申込み
に関し消費者側に重大な過失があっても、民法第95条の錯誤無効を主張す
ることが出来るとされています。
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
行われる事業や資産運用の利益を投資家に分配する仕組みのことです。次の
表にあるように様々なかたちのものがあり、民法上の任意組合、商法上の匿
名組合もファンドにあたります。金融商品取引法の成立により、これらの
ファンドは根拠法令も含め、全体として販売規制等の法規制を受けることに
なりました。
■主なファンドの類型
投資信託及び投資法人に関する法律
特定目的会社
資産の流動化に関する法律
投資信託
投資信託及び投資法人に関する法律
特定目的信託
資産の流動化に関する法律
任意組合
民法
匿名組合
商法
組合型
投資法人
信託型
根拠法令
会社型
ファンド
投資事業有限責任組合
投資事業有限責任組合契約に関する法律
有限責任事業組合
有限責任事業組合契約に関する法律
こうしたファンドに投資する場合は、次の点に留意してください。
・ファンドがどのような法的契約によって組成されているか。
・ファンドが投資家保護の観点から、行政の監督を受けているか
(詐欺的
なファンドの中には、行政の許可などを受けていると詐称する場合もあ
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
いわゆる投資ファンドについて
ります)
。
・ファンドの投資内容とリスクについて、十分な説明があるか。
・投資した資金の使途について正確な情報の開示がされているか。
・ファンドの取扱い業者および取扱い業者が投資をする場合の投資先業者
(実際の投資先)
が信頼できる業者であるか。
・ファンドの勧誘に際して、商品について十分な説明が得られない場合、
ファンドの仕組みが理解できない場合は、はっきりと断ることが重要で
す。
金利の規制等について
消費者金融など貸金業者や、そこからの借入について定めているの
が貸金業法です。この法律では貸金業者に対する、
(1)総量規制、
(2)
上限金利の規制がポイントです。貸金の金利を規制する法律は、利息
制限法と出資法の2つがあり、前者が民事的に無効となる金利につい
て定め、後者が刑事罰の対象となる金利の限界を定めています。
(1)総量規制とは、個人の借入残高が、原則、年収等の3分の1まで
に制限される仕組みです。
個人が新たに貸金業者から借入をする場合、その人の同意の下、業
66
67
ては、利息ではなく元本の支払いに組入れることができ、その結果元
らのその人の借入残高を調査します。自社の貸付残高が50万円を超え
本がなくなっているはずなのに支払われた金銭については返還を求め
る貸付を行う場合、または他の貸金業者を含めた総貸付額が100万円
ることができます。
を超える貸付を行う場合は、
「年収を証明する書類」の提出を求め、年
◎出資法
収等の3分の1を超えないかの確認をします。
出資法5条2項は、金銭を貸付ける者が「業」として(反復継続して
指定信用情報機関は、信用情報提供を行う法人で、内閣総理大臣に
ということ)貸付を行う場合、年20%を超える割合による利息の契約
よって指定されている次の団体です。
をしたときは、刑事罰の対象となり、5年以下の懲役、もしくは1,000
指定信用情報機関名
主な会員
CIC
クレジット会社、信販会社、貸金業者
日本信用情報機構
銀行系・流通系・メーカー系カード会社、
信販会社、貸金業者、金融機関、保証
会社、リース会社
この総量規制には、貸金業者ではない銀行・信用金庫・信用組合・
労働金庫・農協等の金融機関からの借入は対象外なほか、不動産購入
や自動車購入のための借入も除外されます。また、緊急の医療費の借
入などについては、この総量規制の例外とされます。収入のないいわ
ゆる専業主婦が消費者金融から借入をする場合は、借入金額が夫の収
入の3分の1以内かどうかを確認することが必要になります。
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
者は指定信用情報機関が持つ個人信用情報を使って、他の貸金業者か
万円(法人の場合3,000万円)以下の罰金を科すとしています。
<金利の規制>
刑事罰【超過分は無効】
年20%
年20%
行政処分【超過分は無効】
年18%
有効な利息
10 万円
年15%
100 万円
(2)利息制限法の上限金利を超えると民事上無効で業者は行政処分
の対象となり、20%を超えると出資法により刑事罰の対象にもなり
ます。
◎利息制限法
利息制限法では、貸金元本(元金)の金額に応じて、次のような上限
金利を定めています。
元 本
上限金利
10万円未満の場合
年20%
10万円以上100万円未満の場合
年18%
100万円以上の場合
年15%
この利息制限法による利率の制限を超える場合には、不当利得返還
請求ができます。すなわち、すでに制限を超えて支払った部分につい
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ヤミ金融から身を守る
ヤミ金融とは法律を無視した高金利でお金を貸そうとする無登録の金融
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
● 金融商品をめぐる環境変化と適切な金融行動
業者です。10日で4割(トヨン)
、10日で5割(トゴ)といった違法な高金利
の利息をとる業者もあります。貸金業を営む者
(貸金業者だけではなく無登
録で営業する業者を含む)
が年109.5%を超える利息の契約をしたときには、
その金銭消費貸借契約は無効とされています。
「低金利で融資」
「他店で断られた方でもOK」
「らくらく・簡単」
「即日融資」
など消費者の心理をついて甘い言葉で、電話・チラシ・ダイレクトメールな
どで勧誘してきます。一度ヤミ金融から借入れると、他の同様な業者からも
勧誘が頻繁に行われるようになります。業者間で情報を共有していると考え
られます。
ヤミ金融の手口にはたとえば次のようなものがあります。
・
「整理屋」―「あなたの債務を整理・解決します」などと広告し、多重
債務者から
「整理手付金」
などの名目で現金をだまし取る。
・
「買取屋」―融資の条件としてクレジットカードで商品を次々と買わ
せ、それらを定価以下の安い金額で買取るか、またはさら
金
立
に高金利で融資する。申込者には業者への借金のほかにク
レジット会社への債務が残る。
そこでヤミ金融とかかわりそうだと思ったら、
次の点をおさえてください。
・財務局長または都道府県知事の登録を受けているか。
金
金
金
金
・法律違反の高金利でないか―出資法や利息制限法で定める上限金利を
超える金利、例えば「10日で3割〜5割」、
「3万円借りて7日後に1万円の利息」は
違法金利です。
・住所・電話番号・銀行の口座番号などの個人情報は教えない。
・万が一借りる場合は契約書を必ず受取り保管する。契約書を渡さない業
者からは借りない。
金融商品や金融取引の基本を解説しています。
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しています。
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です。
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