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脱原発を訴え、市民の力、女性や お母さんたちの力で政治を

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脱原発を訴え、市民の力、女性や お母さんたちの力で政治を
なまえのない新聞 No.178/2013 年5・6月号(1)
脱原発を訴え、市民の力、女性や
お母さんたちの力で政治を変えよう
長
谷
川
羽
衣
子
さ
ん
── 前回のインタビューは大飯原発再稼働を止
めるアクションの話が中心でしたが、この 7
月には参院選があるので、選挙のことや緑の党
の政策について聞かせて下さい。まずはどうし
て政治に関わるようになったんですか。
羽衣子● 政治に関わろうと思ったのは 3.11
からです。原発の再稼働のことや避難者への支
援、あるいはがれき問題を議員の方に陳情に行
って話したりすると、まったく知らないんで
す。関心も持ってないという方もけっこうい
て、ちゃんと関心をもって対応してくれるよう
な政治家がいたらよかったのになと思ったんで
す。京都市は大きな都市なのに、無所属・市民
派と呼ばれるような議員さんがいないんです。
それに社民党もいなくて、共産党が何か出す
と、ほかの党は反対するという、ややこしい政
党同士の関係というのがずーっとできあがって
いて、なかなかうまく回らないんだなとという
のがわかりました。特に再稼働の時に、あれだ
けの声があがって、みんなが抵抗して、でもや
っぱり再稼働されてしまうという、そこに大き
な問題があるなと。政治を変えないと、とても
じゃないけどいろんなことが変わらないなとつ
くづく痛感したんです。
何より、この国は意外と民主主義じゃないな
ーと思いました。あれだけの原発事故が起こっ
緑
の
党
の
共
同
代
表
と
し
て
7
月
の
参
院
選
に
出
馬
す
る
立
候
補
さ
れ
る
そ
う
な
の
で
、
お
話
を
聞
か
せ
て
も
ら
っ
た
。
(
浜
田
)
の
長
谷
川
羽
衣
子
さ
ん
が
緑
の
党
の
共
同
代
表
と
し
て
参
院
選
に
も
ても、私たちが反対か賛成かって言えるのは、
デモとか署名活動とか、あるいは陳情したりと
か、そういうことしかないんです。国民投票が
いいか悪いかというのはわかりません。たしか
に危険な面もあると思いますけど、イタリアで
は国民投票で脱原発がはっきり決まったんです
よね。でも日本では市民が決められるというの
はないんです。原発国民投票ってやってました
けど、議員の方はあっさり否決して。そのとき
は、選挙で勝ったということはもう信任を得て
いるということだから、その決定は民意に委ね
られると言うわけです。それはそうかもしれな
いけど、ほんとにそうなんだろうか。意外に政
治というのは手の届かないところにあるなと。
し
かも投票率が低ければなおさらです。実際私も、
民主党との政権交代が起こった時には、ほかの
人と同じように希望があって、私の世代なんか
は民主党に投票した人が多くて、投票率もすご
く高くなったわけです。でもあんまり変わらな
くて、政権が変わったことでたしかにいい面も
あったとは思ってますけど、かえって失望して、
あれだけの政治不信を招いてしまったと思うと
残念です。
私はこれまで民主党の時以外はだいたい消去
法で投票していたんですけど、原発事故後はど
うしてもここに入れたいという政党が必要だな
とつくづく思って、だったら自分たちで、ほん
原
発
再
稼
働
反
対
の
ア
ク
シ
ョ
ン
)
に
も
登
場
し
て
も
ら
っ
た
京
都
を
つ
く
ろ
う
と
す
る
試
み
だ
。
そ
こ
で
本
誌
の
昨
年
9
月
号
(
大
飯
で
は
な
く
、
市
民
の
力
に
よ
る
本
物
の
新
し
い
政
党
、
新
し
い
流
れ
こ
れ
は
離
合
集
散
を
繰
り
返
し
て
き
た
既
成
政
党
の
看
板
塗
り
替
え
党
が
い
よ
い
よ
参
院
選
に
チ
ャ
レ
ン
ジ
す
る
こ
と
に
な
っ
て
い
る
。
に
な
り
そ
う
だ
。
し
か
し
こ
こ
数
年
来
、
準
備
を
整
え
て
き
た
緑
の
の
7
月
に
行
わ
れ
る
参
院
選
で
も
こ
の
流
れ
が
続
け
ば
や
ば
い
こ
と
は
時
計
の
針
が
逆
転
し
は
じ
め
た
よ
う
な
状
況
と
な
っ
て
い
る
。
。
こ
不
振
で
自
民
党
政
権
の
誕
生
を
許
し
て
し
ま
い
、
日
本
の
原
発
政
策
昨
年
暮
れ
の
衆
院
選
で
は
期
待
し
て
い
た
脱
原
発
政
党
が
思
わ
ぬ
とに自分が投票したいと思えるような党を作
ろうと、それが私にとっては緑の党だったん
です。
緑の党が、やっぱりこれだなーと思ったの
は、理念はもともと合ってるなと思ってたん
ですけど、環境が大きなテーマであること、
そして公平な社会を掲げていること、何より
持続可能性というのをメインに言っているこ
と。すべての政策が持続可能性を基本におい
てます。あと平和。そして参加型民主主義と
いうのをメインにおいてます。ドイツの緑の
党はもともと市民運動の人たちが政党っぽく
ない政党をめざしてつくったんです。どうや
って権力的な構造にならないか。ピラミッド
型にならないかということをずーっと模索し
てきていて、ボトムアップの政党であるよう
に努めてきています。現在でもその努力を常
にしています。
── 具体的にはどんな?
羽衣子● たとえばドイツ緑の党で総会がど
ういう風に行われているかというと、各地域
に地域組織があって、そこは代議員を 1 人総
会に出すわけですけど、人数が多ければ何人
次頁に続く (2)なまえのない新聞 No.178/2013年5・6月号
前
頁
か
ら
続
く
↑
京
都
の
街
中
で
の
脱
原
発
ア
ク
シ
ョ
ン
に
参
加
す
る
羽
衣
子
さ
ん
── 映画「六ヶ所村ラプソディ」
も出せます。その代議員が集ま
って総会の決議をするわけなん
ですけど、各地方の意見がちゃ
んと通るようになってるという
のと、総会で 20 人以上の賛同が
あれば誰でも修正案を出せて、み
んなの前で発表して、それに対
する賛成・反対をその場で決め
てもらうことができる。これは
個人の声をある程度はその場に
反映させることができるいい方
法だなと思ってます。そういう
修正案が毎日大量に出てくるわ
けです。ここんところおかしい
とか。でも 20 人の賛同が必要と
いうことは、自分たちでもちゃ
んと対話して意見をまとめるという努力がちゃ
んとされているし、修正案を出して話し合っ
て、賛成反対を決めるところでも意見を言える
というのはすごくいいことだと思います。どう
しても大きな政党になるとピラミッド型で話が
一方的になりがちなんですけど、そうならない
ための努力をしているということですね。みん
なが意見を言えるチャンスがある。そのために
は 3 日間ぶっとおしで、朝の 8 時から夜中の 2
時までやってますけどね。
── それは体力がいりそうですね。
羽衣子● みんな適当に自分の関係あるところ
だけ出てますけど。ずっと出てると倒れますか
ら。
(笑)そういうことを続けているというこ
とと、地域の活動に力点をおいているというこ
と。ドイツはもともと連邦制で、地域の独立性
が高いということがありますけど。
── 日本の緑の党はけっこう地方議員がいるそ
うですね。
羽衣子● はい。もともと虹と緑の 500 人リス
トというのがありまして、緑的な形で立候補し
たり、議員のネットワークをつくろうというの
だったと思うんですが、北欧なん
かの議員は報酬もほとんどなく、世
のため人のために役立ちたいとい
う気持ちでみんなボランティアの
ように議員活動をしているという
話がありましたが、日本の議員と
はえらい違いですね。
の党というのは世界中で脱原発を一環して訴え
てきたわけですから、3.11 後こそ、そういう
役割というか使命があるのではないかと。
── 世界の緑の党のことは知ってる人は多く
て、なんで日本にはそれがないんだという声は
だいぶ前から聞きますね。
羽衣子● そうなんです。でも日本ではなかな
か新しい政党というのは難しくて、まず第一に
国会議員が 5 人いないと、それは単に政治グル
ープになるだけで国政政党が受けられる政治団
体の資金も来ないわけです。そして選挙では必
ず 10 人の候補を出さないと、そもそもチャレ
ンジできない。そして供託金が 1 人 600 万円
(比例代表区)か 300 万(選挙区)
。これだけの
ハードルがあると、もうなかなか政治にチャレ
ンジすることが難しい。どうしても新しい政党
ができるというのは、既成政党の分裂になるわ
けです。それは私たちのとはまた違う別物なん
です。それをボトムアップで市民の力で政党を
作ろうとすると、日本ではすごくハードルが高
くて、候補者を 10 人たてて、供託金を 6000
万用意して、ということをしなければならな
い、ほんとに大変なことになってくるんです。
が 15 年くらい前からあって、何年か続いてた ── 供託金が高いというのは知ってる人が多い
んです。その流れと、2004 年に中村敦夫さん と思うけど、他の国に比べて日本が特に高いと
が緑の会議という名前で、日本の緑の党をつく いうことまではあまり知られてないですよね。
ろうといって選挙をされた時の流れが合わさ (*韓国が 150 万、カナダ 7 万、イギリス 9
り、それプラス市民がどんどん入ってきて、私 万、インド 2 万 5000 円、ニュージーランド
もそうですね。3.11 以後にすごく増えて倍増し 1 万 5000 円、アメリカ・フランス・ドイツ・
て、それで国政にチャレンジしようということ イタリアには供託金がない)
になったんです。地方議員さんはけっこう数が
多くて、緑の党の会員になってる議員さんとい 羽衣子● 考えたら、一票の格差よりも違憲な
うのは 70 人から 80 人くらいいるんです。各
地で緑の理念にかなうようなことをずっとやっ
てこられた方ばっかりですね。
でも日本の政治の構造というのが、地方だけ
では難しいことがあって、国政政党とならない
と党と名乗ることすら難しい。そういうところ
で今回の国政チャレンジを決めまして、特に緑
んじゃないかなと思いますね。被選挙権なんて
万人に等しく認められた権利のはずですから。
300 万、600 万の供託金というのはそれをはる
かに侵害するものだと思うんです。何人かの人
がそれを訴えたことはあるんですけど、なかな
かその制度は変わらないです。
羽衣子● 日本の議員は議員報酬
が高いというのが一つでしょうけ
ど、問題はそれだけでなくて、特
殊なものとしてみなされている。特
に国会議員なんかは世襲制になっ
ていて、一種の特権身分ですね。
もう二世どころか四世くらいの人
もざらにいますし、そこまで来るとほんとに身
分が固定化している身分制度みたいなものです。
その構造の中に入って勝ち抜いた人だけが新し
く下からあがれる。でも結局そういう人たちは
その党に従わなければならないから、だんだん
染まってしまうと思うんです。
── 緑の党は一から新しい政党をつくるわけで
すね。
羽衣子● こつこつと地域からつくっていくと
いうことですが、これがいかにハードルが高い
かというのを実感しているところです。
(笑)
── そんなに大変なのに羽衣子さんはよく出る
決心したナーと思います。
羽衣子● みんなに言われてるんですよ。
(笑)
私はわりと安易な気持ちで緑の党の共同代表を
引き受けてしまったんです。大飯原発のことで
忙しかった時に、
「あ、はい」とあっさり引き受
けてしまって。で、大飯原発のことが終わって
から、
「しまった、けっこう重責だったわ」と思
って。
(笑)それでそのあと、共同代表にふさわ
しいように、自分でもだいぶ勉強しましたね。
修士論文を書いた時よりもよくやりました。
(笑)
私の知識はある程度の範囲に偏っていたし、で
もそうはいかなくて、矢のように質問がくるし、
薄ーくならしていろんな問題を学んだり、お話
を聞いたり。
そうこうしているうちに衆議院選挙が行われ
ましたけど、あの選挙はほんとすごかったです
ね。緑の党はあの突然の解散では準備が整わな
くて、チャレンジはずっと考えてはいたんです
が、やっぱり間に合わず、けっきょく応援をす
るということにとどまったんです。未来の党は
希望ではあったけれども、あんな形になってし
まい、嘉田知事が決断されたことはほんとにす
ごかったなと思います。脱原発のために立とう
とされたことは。ほんとにえらいなーと今でも
尊敬しているんですが、その形は残念なことに
古い政治の離合集散だと思われてしまった。み
なまえのない新聞 No.178/2013年5・6月号(3)
道にやっていくということがどうしても必要だ
ろうということでね。
私も共同代表である以上、責任があるという
ことがあるし、ほかの人に比べてチャレンジす
る条件というのかハードルが低いんです。仕事
をやめないといけないというわけじゃなく、
NGO だったら代表を続けられるし、あるいは
家族の反対というのもそんなにありませんし。
私が緑の党に入ったのは、理念に共感したと
いうのはもちろんですが、感情的な理由として
は、一つには 3.11 以後に立ち上がったたくさ
んの人たちの多くはお母さんたちです。女性で
子供を持ってるお母さんたちがすごく動いてま
す。驚くべきことに大飯原発の前まで子供を連
れて行ってわーわーやるわけです。あのエネル
ギーはすごいなーと思っていて、あの人たちが
政治にチャレンジしたらちょっとは変わるんじ
ゃないかと思ったんです。それは国政とまでは
思ってませんでしたけど、地方議会とかにああ
いう人たちが入っていって声をあげたら、それ
は変わるだろうと私は希望を持ちました。
ドイツのべーベル・ヘインさんという連邦議
員の方が何年か来日されていたんですが、たま
たま司会をしていろいろお話すると、彼女も男
の子が 2 人いて、ルール工業地帯におられたら
しいんですけど、排気ガスの反対とかやってい
るうちにチェルノブイリ事故が起こって、それ
に反対するために立ち上がってデモをしはじめ
たと。お母さんたちのいろんな楽しいデモとか
マスコミがとりあげてくれないから工夫したデ
環境を変えないと少子化なんて止まる
わけありませんし、少子化対策だけし
てればいいわけではないし、そもそも
その言い方がいや!みたいなことで
(笑)
、相変わらず自民党の選ぶ言葉っ
て最悪だなあと思ってるんです。
私の友人たちは二極化してまして、ま
あまあいい会社に入るんですけど、あ
まりにもハードワークでやめてしまっ
て、そうすると今度は非正規になって
しまって、なかなか再就職、特に女性
の再就職は難しいんです。それで非正
規だと不安定だし、今度は精神を病ん
し、役職も女性が必ず半分、候補者も女性の方
を多くするというのが規則で決まっているんで
す。これはドイツも一緒で、女性の方が必ず優
先なんです。それは政治の世界では女性がマイ
ノリティだということから、必ず女性を多くす
るんです。それはフランスもそうです。
── 日本の政治家たちを見たら、もうほんとに
背広着たおっさんばっかりで、ちょっと異様な
雰囲気ですよね。まるで古いギャング映画みた
いな。
羽衣子● テレビで見てるとほとんどが男性で
すね。政治の世界には決して女性の声が届いて
いないと思います。たしか OECD 諸国で国会
議員の女性の割合が最低なのが日本ですよね。
先進国と言いつつ、最低ランクなんです。国際
的な政治の成熟度の基準というのがいろいろあ
るらしいんですが、女性の政治参加とか、流動
性、つまり市民でも政治家になれるかとか、日
本は最下位にくるんじゃないかと思うくらいで
す。
── 国によっては議員の総数のうち一定の割合
の人数を女性にわりあてるという制度のところ
もあるみたいですね。
羽衣子● クォータ制、割り当て制度というん
ですが、フランスのオランド政権なんかは閣僚
の半分を女性にしましたね。そこにフランス緑
の党の人も一人入ってます。そういうところ
は、特に日本では激しく欠けていたところです
モとかしていて、それだけでは変わらないとい ね。
うことで地方議員になり、地方議員から州の環
緑の党は立ち上がったお母さんたちがチャレ
境大臣になられたんです。ドイツは連邦制です ンジしやすい枠組みであるということです。
から州でも環境大臣というポストがあるんです。
そこで、デモで訴えていた政策を全部実現した ── そうすると女性の支持も得やすいでしょう
と言わはるんです。それはすごいことだなーと ね。女性がみんな緑の党に投票したら国会議員
思って。あ、こういうところにロールモデルが の半数が緑の党になって、政権をとれそうです
あるなと思ったんです。
ね。
(笑) 女性向けの政策としてはどんなも
緑の党はそういうお母さんたちがチャレンジ のがあるんですか?
しやすい枠だなと。政党的ではない政党で、必
ず女性が半分というクォータ制というのがあっ
て、共同代表も 4 人なんですけど 2 人は女性だ
羽衣子● よく少子化対策って言われますけ
ど、私はこの言葉には反対で、それはいろんな
↓
んなそういう政治の形には飽き飽きし
てるんだろうなというのをすごく痛感
しました。
私たちはそれではいけないだろう
と。結成の時に参議院選挙にチャレン
ジすると決めていたので、新しい市民
の政党としてチャレンジすることがど
うしても必要だろう。国会議員の方 5
人をくどいて政党要件をとれとか、い
ろんな意見はあるんですけど、そうな
った場合、また同じような政党ができ
たとみなされるかもしれない。そこは
プラスの面もありマイナスの面もある
と思います。
緑の党は一人づつがつくる、英雄を出さない
という政党なので、それだったら自分たちで地
ド
イ
ツ
緑
の
党
の
集
会
で
挨
拶
す
る
羽
衣
子
さ
でしまったりということがありますね。 ん
もう一つは正規社員の総合職みたいなところに
就職した人は、夜中の 12 時まで働いて、とて
もじゃないけど結婚してる暇がないし、子供を
産んでる暇なんてもっとないみたいな。そうい
う職場環境が両方とも解決されないと、少子化
なんて絶対止まらないと思います。そういう構
造を変えないといけないですね。フランスなん
かで一番成功した例と言われるのが、子供を育
てる人には、たとえ独身であろうがシングルマ
ザーであろうが結婚してようが、ちゃんと援助
するということを決めたんです。結婚していな
くてもパートナーシップ制でちゃんと遺産がと
れたりするよう整備したんです。そうするとハ
ードルが低くなって、子育てのコストが低くな
るので、出生率がプラスになりましたね。その
へんが日本ではぜんぜん遅れているなと思うん
です。日本は女性の管理職の比率も最低ランク
じゃなかったかと思いますね。管理職への登用
も少ないし、結婚したあと退社するというパタ
ーンが多くて、そうするとせっかく経験のある
人材が戻ってしまうわけですから、社会的にも
損失だと思います。日本の雇用制度全体でそこ
の整備がすごく遅れているということです。子
供を持っても働けるという環境を整備しないと
いけないと思いますし、採用の時に女性が不利
にならないようにするとか、賃金の男女格差が
今はすごく大きいわけですから、それは必ずな
くすということ、それが緑の党の政策としては
っきりと力をいれていくことを打ち出していま
す。
子供を産んで育てることが障害にならないよ
うにしていくことが必要で、少子化対策という
のはそこをちゃんとやらないと解決しないと思
います。
── 僕は参院選挙の仕組みもあまりよくわかっ
てないんですが、長谷川さんは京都の地域から
立候補するわけですか? すると兵庫に住んで
る人は投票できない?
羽衣子● 参議院選挙も比例区と選挙区がある
んです。選挙区は都道府県単位で一つの選挙区
になるのですが、定数が一人の選挙区が 31 も
次頁に続く (4)なまえのない新聞 No.178/2013年5・6月号
前
頁
か
ら
続
く
↑
緑
の
党
・
京
都
の
事
務
所
で
イ
ン
タ
ビ
ュ
ー
あります。その選挙区でトップだ
った人だけが当選し、あとは全部
死に票になってしまうという小選
挙区の制度で、組織があるほど強
いわけです。緑の党はそうじゃな
いので、緑の党がいいなと思った
人が誰でも投票できるように、主
に全国比例から出るんです。全国
が一つの区なので、誰でも、どこ
に住んでいても投票できます。そ
の場合、緑の党と書いてもらうか、
候補者の名前を書いてもらうか、ど
ちらでも構いません。ただ、党内
で誰が一番に受かるかというのは、
個人名でとった票数によるんです。
最初から決まってる順位というのはないんで
す。なので、10 人の候補者の中で、名前の数
が多かった人から通る優先順位となるという、
そういうシステムなんです。だから私の名前、
「長谷川羽衣子」と書いて下さる方が多いほど
私の順位が高くなる、ということです。そうい
う制度になっているということがあんまり知ら
れていない、私も知りませんでした(笑)が、
そういうところに日本の民主主義の難しいとこ
ろがありますね。
── 参院選では何票とると議員を出せるんです
か?
羽衣子● 緑の党か長谷川羽衣子か、あるいは
他の候補者の名前を書いてもらった票をみな合
わせてだいたい 120 万票くらいとると一議席、
250 万票くらいで二議席というかんじです。昨
年、未来の党が比例区で 340 万票くらいだった
かな、それが多いか少ないかわからないですけ
ど、それくらい未来の党に賭けた人がいたとい
うことです。
── 衆院選ではなく参院選に出るというのはど
ういうわけですか?
羽衣子● 一つは解散がないということです。
参議院は不要だ、一元化した方がいいという意
見も根強くあることは事実ですが、衆議院は解
散があってどうしてもじっくり政策に取り組め
ないことが多い。参議院の方は6年間の任期が
あって解散がないということでじっくり政策に
取り組めます。そういう意味で緑の党は参議院
の方が向いてるんじゃないかと思います。
── 緑の党って環境の問題以外で、たとえば経
済のことなんかはどうなんですか?
羽衣子● 私は、もともと現在のドイツ緑の党
に感銘を受けて、緑の党を志しました。ドイツ
緑の党も、結成当時は反資本主義・反経済成長
だったのですが、その後、市場原理と環境経済
学を取り入れ、
「環境と経済の両立」を目指す
日本緑の党は、今のところ 6 割
くらいは脱成長かな。5 割か。そ
のあたりは今後議論していくしか
ないと思ってます。
── じゃあまだこれから話し合っ
て決めていくということですか。
ようになりました。その結果として実現した政
策が、環境税制改革と再生可能エネルギーの促
進です。これによって、60 万人近くの雇用が
生まれたと言われています。しかし、ドイツ緑
の党の経済政策を支持する私は、世間的にはた
ぶん中道左派くらいやと思うんですけど、現在
の日本の緑の党の中ではけっこう右派(笑)な
んです。まあ、ドイツもそうだったように、結
成した当初は経済政策に関しても原理的な考え
方が多いのは仕方がないと思っています。党内
でも熟議を重ね、
「環境と経済の両立」を基礎
とした経済政策を提案していきたいですね。
── 緑の党としての経済政策というのはいちお
う出してましたよね。
羽衣子● はい。私の自分のビジョンの一つに
も経済政策を入れてますけど、私はもともとド
イツの緑の党を知っていて、日本の緑の党に入
ったんですが、ドイツの緑の党の経済政策はか
なり現実的ですね。
つい最近、3.11 のあとなんですが、ベンツ
とかフェラーリとかの本社のあるバーデン=ヴ
ュルテンベルク州の州知事に緑の党の人がなっ
たんです。40 年間、保守政権だったのに。そ
れはやっぱり衝撃的なことで、自動車会社は
戦々恐々としたみたいなんです。ドイツ緑の党
は経済的にはかなり合理的ですけど、それでも
やっぱり自動車より電車と言ってるんですね。
さらには自転車推奨とか、そういうかんじなん
です。だからそのへんをかなり恐れられたんで
すが、クレチェマン知事という人は緑の党内で
はやっぱり右(笑)
、保守的な立場で、経済成長
は必ずしも悪いわけではないという立場なんで
す。もともとドイツ緑の党は出発点では脱成長
だったんです。ちょうどその頃は産業に対する
アンチテーゼとして脱成長論が出てきた時で、
最初はずーっとそうだったんですが、それがだ
いぶ無くなって来まして、今も中ではいろいろ
議論があるんですけど、国政政党になると脱成
長とまではいかなくて、経済成長を追い求めな
いけれども、だからといって否定するわけでは
ないというくらいです。
羽衣子● 緑の党の一つの公約と
して、いちおうそこそこまとまっ
て第一次発表はしたんですけど、ま
だこれからどんどん変えていかな
いとという意見もあります。
やっぱり経済政策は一番聞かれ
ますね。どの政党もそうだと思い
ますけど。私なんかは、1つには環境に負荷を
与えるような影響のある企業とか、排出とか、
ほんとはエネルギーが一番なんですが、そこに
税金をかけて減らしていき、企業がかなりの負
担をしている雇用保険とか、人を雇うのにかか
る税金とかお金を減らすことにするという、そ
れはドイツの緑の党が行った改革だったんです。
環境税制改革というんですけど。それは雇用が
促進されるので、環境にもよく雇用にもいいと
いうことで、わりと成功した政策で効果があっ
たんです。それは日本でも導入が可能な範囲だ
と思うんです。私たちが別に政権与党にならな
くても、それなりにちゃんとした政党がやれば、
十分に効果があることなので、企業の反発もま
あ少ない方だと思います。ということで、私は
それをメインで訴えようかなと思ってるんです。
●インタビューはこの他にも原発、環境問題を
はじめ様々なテーマについて聞かせてもらった
が、残念ながらスペースの都合上、全部はのせ
られなかった。
去年暮れの衆議院選挙では脱原発を目指す未
来の党などの活躍を期待したが、意外な結果に
終わった。そのため、選挙というものにしらけ
てしまった人もいるのではないかと思う。だが
このまま7月の参院選でも自民党が勝って多数
派を占め、好き勝手なことができるような状態
になれば、日本は大きく右旋回してしまい、原
発政策も 311 がまるでなかったような状況に
なりかねない。今回の参院選はそれを食い止め
るためにも非常に重要な選挙だと言える。
環境や脱原発、社会的公正などを掲げ、やっ
と日本でも立ち上がって国政選挙にチャレンジ
しようとしている緑の党は、脱原発勢力が希望
を託し、育てていくべき党だと思う。手あかに
まみれた既成政党よりも、市民から生まれた新
しい党に賭けてみようではないか。名前のない
新聞・アマナクニは緑の党を支持することを表
明し、読者の皆さんにも同調を訴えます。
(あ)
■きょうと緑の党:www.greens-kyoto.org/
■長谷川羽衣子 HP:www.hasegawauiko.com/
■緑の党 Greens Japan:greens.gr.jp/
Tel. 03-6454-6068 / Fax. 03-3318-6063
Fly UP