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報告書第2部

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報告書第2部
表 4-6 バイオディーゼル製造コストの内訳
(単位: 円/L)
国内
アジアより輸入
菜種
バイオデ ィー ゼ ル製造
原料・材料
農林水産業 (原料バイオマス)
食料品 (廃棄バイオマス)
化学製品
メタノール
触媒
その他化学品
設備運転 (投入エネルギー)
石油・石炭製品(化石燃料)
電力・ガス・熱供給
水道・廃棄物処理
製造設備固定費
その他変動費
運輸
雇用者所得(人件費)
メンテナンス
米国
パーム油
構成要素分類
486.0
416.0
402.0
廃食油
年産
40万KL
年産
200万kL
大豆油
植物油
(菜種)
72.0
0.0
67.8
48.3
45.8
62.2
48.3
45.8
66.3
62.0
56.2
112.3
103.3
95.6
2.5
2.5
2.5
2.5
5.8
7.7
4.3
2.2
1.2
7.5
0.0
14.0
41.0
45.0
6.4
5.0
24.0
5.0
5.0
27.0
0.0
8.8
4.3
4.3
6.9
2.0
2.0
5.8
1.3
0.0
1.3
廃食油
41.1
30.4
22.8
7.6
4.3
2.2
1.2
9.1
1.8
3.0
1.5
1.5
1.5
1.5
0.9
2.1
注) 網掛欄は不明または他の項目に含まれる。
(出所) 各種資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
4) BTL の製造コスト
BTL は実用化に向けた技術開発段階にあり、ライフサイクル評価の事例が少ない。海外
の既存調査における各種燃料のライフサイクル CO2 の試算例では、BTL はライフサイク
ル全体でみても従来の石油燃料より有利であり、バイオエタノールや BDF よりも高い温室
効果ガス削減効果が得られる可能性が示されている。
経済性は、従来のバイオ燃料と同様に、原料となるバイオマスの調達方法によって影響
を受ける。海外のコスト検討事例では、原料の種類によって価格が大きく変化する可能性
が示されている。また、熱分解技術や FT 合成触媒技術の効率やコストも影響する。
(4) バイオ燃料の供給(流通)段階でのコスト
バイオエタノールは、国内生産する場合も輸入する場合も製油所を経由してサービスス
テーションに供給し、従来の燃料と同様に消費者が購入する形態となっている。しかし、
バイオディーゼルの場合には、国内では給油所での販売例は少なく、利用者が BDF 製造販
売事業者から直接購入、または使用側で BDF を製造して利用する事例が大半となっている。
いずれの燃料も、国内で生産した場合には工場から、海外から輸入した場合には港から
タンクローリーなどで貯蔵場所(製油所、油槽所、供給所など)まで輸送する必要がある。
1) バイオエタノールまたは ETBE の混合ガソリン
ガソリン自動車へのバイオエタノールの導入については、当面、E3(ガソリンにバイオ
エタノールを体積割合で 3%混合したもの)相当分を ETBE で導入することが進められて
いる。このような混合ガソリンは、現状の流通システムを活用して供給することが想定さ
れているが、ガソリンとバイオエタノールを流通段階で混合する必要がある。貯蔵中のエ
64
タノールには水分が混入しやすいことや、ETBE の品質管理の点からも、給油所向けにタ
ンクローリーにて出荷を行う際に製油所または油槽所で混合することが想定されている。
エタノール混合利用するためには、インフラ整備(エタノール貯蔵タンク、ローディン
グラック、消火設備等)のための費用が発生する。
石油産業活性化センター(PEC)では「エタノール添加ガソリン及びバイオディーゼル
導入時の課題に関する調査報告書」
(2004 年 3 月)において、エタノールのガソリン混合
利用に伴う国内流通インフラの追加費用として、約 3,320 億円との試算結果を出している。
各設備に償却年数を設定(8∼15 年)し、金利 2%、年間エタノール消費量 180 万 kL とし
(表
て、年間エタノール消費量 1L あたりの追加インフラ費用は 17.1 円と算出されている。
4-7)
表 4-7 バイオエタノール混合ガソリン(E3∼E10)供給のための追加設備
(出所)経済産業省「ブラジルからのエタノール輸入可能性に関する調査研究報告書」(2005 年 2 月)
65
2) バイオディーゼル
バイオディーゼルの場合には、軽油に混合するだけでなく、直接(ニート状態)使用す
ることもある。現時点では、バイオディーゼルの流通形態に関する議論が進められていな
いが、B5 や B10 などの混合軽油を利用する場合には、バイオエタノール混合ガソリンと同
様に、製油所等での新規設備が必要になる。
(5) バイオ燃料の使用段階でのコスト
バイオエタノールおよびバイオディーゼルともに、既存の化石燃料であるガソリンや軽
油との価格差分の燃料コストが増加することになる。
製造コストをガソリンや軽油と比較した場合、バイオ燃料の方が高くなっており、販売
に関しては、税金免除や購買助成金等の施策支援がなければ普及が難しいのが現状である。
1) バイオエタノール混合ガソリン
E3 や ETBE 7%程度の混合割合では、混合ガソリンの小売価格には大きな差は生じず、
ガソリンとエタノール、イソブチレンの相対的な価格差によっても影響されるが、エタノ
ールの卸売価格が相当低いレベルに抑えられない限り、通常のガソリンよりも経済性で劣
るという結果になっている。
2) バイオディーゼル
バイオディーゼルは軽油の代替燃料であり、バイオディーゼルの導入により化石燃料で
ある軽油の消費量を抑制することができる。対象となるのは、ディーゼル車が普及してい
るバスやトラック等の重量車である。
66
4.3 「バイオ燃料」の普及に伴う産業へのインパクト分析
(1) バイオ燃料の普及とコストの見通し
1) 日本政府の導入目標・計画
石油連盟は、2010 年度において、ガソリン需要量の 20%相当分に対し ETBE を7% 混
合していくこと(84 万 kL/年)を目指している。
(エタノールで 36 万 kL/年 =原油換算約
21 万 kL/年)
2007 年5月に首都圏の約 50 店舗で試験販売を始め、2008(平成 20)年度には 100 カ所、
2009(平成 21)年度は 1000 カ所へと段階的に拡大する予定になっている。 2010(平成
22)年度には全国に広げて本格導入となる。
一方、環境省は地球温暖化対策上望ましい目標として、輸送燃料中のバイオ燃料割合を、
2020 年に約 3%、2030 年に約 10%と設定している。
図 4-14
バイオ燃料導入目標・計画(日本)
(出所)経済産業省、環境省資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
67
2) バイオエタノールの国内生産見通し
技術的に利用可能なバイオマスとして、従来の発酵法が利用できる糖類や穀物類がある。
セルロース系バイオマスの糖化発酵技術も、経済性は問題であるが、利用可能な段階に達
している。
環境省の推計によれば、年間 5 万 kL 程度であれば、現状技術で国内生産可能である。
長期的には、最大で年間 210 万 kL 程度は国内生産の可能性もある。現在のガソリン需要
の 3%(約 180 万 kL)であれば、国産バイオエタノールで供給可能となっている。
図 4-15
国産バイオエタノールの供給可能量推計
2010年度供給見込み
バイオマスの種類
糖蜜(沖縄)
長期的供給可能量
エタノール
[kL]
エネルギー
[石油換算kL]
エタノール
[kL]
エネルギー
[石油換算kL]
700∼1,400
400∼800
2,400∼4,800
1,300∼2,600
規格外小麦(北海道)
5,800∼11,600
400∼800
20,500∼40,900
11,300∼22,500
廃木材
4,200∼7,000
2,300∼3,800
190,000∼ 390,000
130,000∼ 270,000
0
0
50,000∼100,000
29,000∼58,000
食品廃棄物
35,700
19,600
35,700
19,600
稲わら
0
0
420,000∼ 840,000
240,000∼ 490,000
生産調整面積(稲)
0
0
75,000∼150,000
43,700∼87,500
遊休農地(ソルガム)
0
0
150,000∼ 310,000
90,000∼ 180,000
0
0
140,000∼ 240,000
80,000∼ 160,000
46,400∼ 55,700
25,500∼ 30,600
1,080,000∼ 2,110,000
630,000∼ 1,230,000
ミニマムアクセス米
エネルギー
資源作物
林地残材
合 計
(出所) 環境省 エコ燃料利用推進会議 「輸送用エコ燃料の普及拡大について」(2006 年 5 月)
3) バイオ燃料の国内での供給見通し
国内でのバイオ燃料の生産ポテンシャルはあるが、コスト面では輸入品と比べて割高で
あるため、当面は輸入が前提となっている。廃木材などのセルロース系バイオマスからの
エタノール製造およびガス化による BTL 製造のコストが低下すれば、国内生産も活発にな
ると考えられている。
68
(2) 製造段階の波及効果
太陽光発電や高効率自動車の場合と同様に、産業連関表で波及効果を表現した結果を表
4-8 に示す。当面はバイオ燃料(バイオエタノールとバイオディーゼル)を海外から輸入す
るのが主体になると見込まれるが、将来は未利用・廃棄物系も含めた農作物・林産品から
国内の工場で製造することを想定している。また、バイオ燃料は既存のガソリンや軽油に
数%混合させることを前提にしている。投入係数は先述のコスト構造分析の結果を基にし
て推計しているが、不明な部分は空白のままとなっている。
1) バイオ燃料
バイオ燃料として国産バイオマスを利用する場合には、
「農林水産業」への影響が大きい。
特に、エネルギー作物として栽培することになれば、重要な位置付けとなる。農業・林業
廃棄物を利用する場合は、間接的に波及効果がある。
バイオマス原料を輸入することも含め、国内の工場でバイオ燃料を製造する場合には、
「化学製品」のうちの「有機化学製品」産業での活動が主体となる。また、製造のための
エネルギーを多く消費するため、「電力・ガス・熱供給」および「鉱業」の「原油・天然ガ
ス」産業、「石油・石炭製品」の「石油製品」から投入される。
中間投入ではないが、初期投資として製造設備が必要となる。これは「一般機械」のう
ちの「化学機械」が対象となるが、プラントを建設・施工する「建設」および「対事業所
サービス」の「土木建築サービス」
(エンジニアリング等)も必要となり、これら産業への
波及効果も大きい。
バイオマス原料および製品の燃料も含め、トラックやタンクローリーなどによる輸送も
重要であり、「運輸」の「道路輸送」への波及効果は大きい。海外から輸入する場合には、
「外洋輸送」も関連してくる。さらに専用の輸送車を所有する場合には、「輸送機械」にも
波及する。
2) 化石燃料との混合燃料
バイオエタノール混合ガソリンもバイオディーゼル混合軽油も、石油産業が係っている
ため、「石油・石炭製品」の「石油製品」が主体となる。混合するための追加設備も必要と
なるため、バイオ燃料製造段階と同様に「一般機械」のうちの「化学機械」、およびプラン
トを建設・施工する「建設」および「対事業所サービス」の「土木建築サービス」(エンジ
ニアリング等)にも波及する。
(3) 使用段階の波及効果
バイオ燃料の使用段階では、自動車やトラック・バスなどの燃料として消費されて無く
なってしまうだけであり、産業へのインパクトはほとんどない。
消費者にとっては、従来の燃料と同様に購入することになり、変化はないと考えられる。
ただし、バイオ燃料と化石燃料とのコスト差を埋めるための「補助金」の導入も検討され
ており、政府による支出が増えることになる。
69
表 4-8 「バイオ燃料」製造段階の産業インパクト(産業連関表の投入係数)
70
(出所) 各種資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
71
5 「二酸化炭素回収・貯留(CCS)」の評価
CO2 回収・貯留技術(CCS:Carbon-dioxide Capture and Storate)を地球温暖化対策に
応用し、CO2 の大規模発生源である火力発電所や製鉄所の排ガスから CO2 を分離・回収し、
パイプラインや船舶(この場合は液化が必要)にて貯留地点まで輸送し、地中や海中に貯
留させる技術である。
図 5-1
CO2 回収・貯蔵の概要
(出所) (財)地球環境産業技術研究機構(RITE) 資料
5.1 「CCS システム」の要素技術
図 5-2
CO2 地中貯留のイメージ
(出所) (財)地球環境産業技術研究機構(RITE) 資料
72
(1) CO2 分離・回収
CO2 発生源である排ガス中の CO2 は、排出源において排ガス中より分離・回収される。
排ガス中の CO2 の分離・回収ための方法としてはいくつかの研究・開発がなされており、
既に実用化の段階にあるものもある。中でも化学吸収法は、吸収液にアミン溶液を利用し
た方法で既に商業化されており、現時点でも適用可能と考えられる。しかし、CO2 を吸収
した液から CO2 を回収するために多くの熱エネルギーが必要である。そのため、分離・回
収コストの総額が炭素固定化による削減コスト全体の 70%程度を占めることになり、この
プロセスにおける効率改善が課題である。
また、低コストな方法として高分子膜分離法の研究・開発が進められている。高分子膜
そのものは高価であるが、回収のためのエネルギーが低く抑えられるため、実用化されれ
ば分離・回収費用の低減が期待できる。
表 5-1 分離・回収方法とその特徴
分離・回収方法
特徴
CO2 吸収液の化学反応を利用してCO2 を分離するものである。吸収されたCO2 を
化学吸収 取り出す際に多量のエネルギー(蒸気)が必要である。CO2の回収率は90%、純度
は99.9%である。
吸収法
吸収液により物理的にCO2 を吸収し、減圧(加熱)してCO2 を回収するものである。
物理吸収
CO2の回収率、純度は化学吸収法(アミン法)と同等かやや劣る程度である。
CO2を活性炭などの吸着剤と接触させ、その微細孔にCO2 を物理化学的に吸着させ
吸着法
るものである。CO2 回収率は90%、回収CO2 の純度は99%とされている。
高分子膜 高分子膜に対する気体の透過速度の違いを利用してCO2 を分離するものである。
CO2 を選択的に輸送する物質であるキャリアを保持した膜によりCO2 を分離するも
膜分離法 液膜
のである。現時点では、基礎的研究の段階にある。
多孔質材料中の透過において表面拡散流を生じるため、これを用いて分離を行う。
無機膜
化石燃料を酸素で燃焼させ、排ガス中のCO2 濃度を100%近くに高めるものである。
酸素燃焼法
CO2 濃度94∼95%の排ガスが得られることが実験により確認されている。
ガス中のCO2 を昇華させドライアイスとして回収するものである。
昇華法
(出所) 各種資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
図 5-3
CO2 分離技術の動向
(出所) (財)地球環境産業技術研究機構(RITE) 資料
73
発電所からの CO2 回収プロセスは、通常の煙道ガスからの改修を行う「燃焼後回収」と、
IGCC などのように燃料の部分酸化によってガス化された圧力を持った CO2 高濃度の合成
ガスから CO2 を回収する「燃焼前回収」に分類できる。また、燃料を酸素で燃焼させ、CO2
濃度の極めて高い排気ガスが生成する「酸素燃焼法」がある。
図 5-4 石炭火力発電所における CO2 分離回収技術
燃焼後回収
燃焼後回収(Post-Combustion
(Post-CombustionCapture) Capture) CO2,H2O,N2
PC
PC
脱塵
脱硝
脱硫
ボイラー
ボイラ
純酸素燃焼
純酸素燃焼(Oxy-Fuel) (Oxy-Fuel) CO2,H2O,O2
脱塵
石炭 PC
ボイラ
酸素 酸素
空気
分離
(脱硝)
脱硫
冷却
ガス化炉
酸素
酸素
分離
H2O
CO2回収
(冷却分離)
燃焼前回収
燃焼前回収(Pre-Combustion
(Pre-CombustionDe
DeCarbonization) Carbonization) H 2O
CO2,H2
CO,CO2,H2,H2O
シフト反応
脱塵・脱硫
CO2分離
石炭
H2O,N2,O2
CO2回収
(化学吸収法)
空気
石炭
CO2分離
H2
ガスタービン
CO2回収
(物理吸収)
空気
(出所) (財)地球環境産業技術研究機構(RITE) 資料
(2) CO2 輸送
排ガスより分離・回収された CO2 は、その後貯留地まで輸送される。輸送方法としては、
排出源と貯留地が近い場合にはパイプラインによる輸送が効率的であり、排出源と貯留地
が遠い場合には船舶による輸送が他の輸送手段に比べ効率的である。パイプラインで輸送
する場合は、分離・回収した CO2 を超臨界の状態まで圧縮することで輸送効率を上げ、導
管の腐食を防ぐ必要がある。船舶で輸送する場合には、分離・回収した CO2 を液化する必
要があり、液化を行なうコストは無視できない。利用する船舶は、CO2 の物性から専用船
の必要はなく、LPG 船の適用が可能と考えられる。
表 5-2 輸送方法とその特徴
輸送方法
特徴
パイプライン
排出源と貯留地が近い場合、分離・回収したCO2を超臨界
状態(気体と液体の密度が同じになり、互いの区別ができ
ない状態)にして貯留地まで輸送する
船舶
排出源と貯留地が遠い(海外など)場合、分離・回収した
CO2を液化し船舶で貯留まで輸送する
(出所) 各種資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
74
(3) CO2 貯留
貯留地まで輸送された CO2 は、地中や海中に圧入される。その方法は、貯留される場所
や目的により分類できる。原油回収と炭層メタン回収では、CO2 の貯留と同時に副産物(石
油やメタンガス)が得られるため、副産物の利用まで考慮すれば、炭素固定化の費用を低
減できる可能性がある。
世界における貯蔵能力の推計では、1990 年排出量基準で地中固定のみで約 280 年分と推
定されており、炭素固定化による温暖化対策が長期的に利用可能であることがわかる。た
だし、地中や海中での CO2 の挙動が解明されておらず、貯留に関する長期的な環境への評
価、地震による影響、貯留ポテンシャル、漏洩、モニタリング手法の確立等、技術的に不
確実な部分が多数残っている。
表 5-3 貯留方法
固定方法
特 徴
原油回収
炭層メタン回収
地中固定
枯渇油・ガス井
帯水層
海洋溶解
海底固定
深海注入
生物固定
• 原油の三次回収において油田に CO2 を
注入し、原油回収を促進
• 採掘不可能な深層炭層に CO2 を吸着さ
せ、同時にメタンを回収
• 石油や天然ガスを蓄えていた油田やガス
田の貯留能力を利用
• 貯留能力は実証済
• ほとんど変動しない地下の塩水に CO2 を
溶解
• CO2 を海洋に注入し溶解・拡散
• 気体溶解法(気体での注入)と液体溶解
法(液体での注入)が存在
• 海底の窪地に CO2 の湖を形成
• 隔離期間は 2000 年以上と期待
• 植物や藻類・植物プランクトンなどの光合
成により植物体に固定
貯蔵能力(全世界)
733∼2,383 億 t-CO2
1,467 億 t-CO2
油井: 3.667 億 t-CO2
ガス井: 14.667 億 t-CO2
36,667 億 t-CO2
36,667 億 t-CO2
地上植物: 44 億 t-CO2・/年
(出所) 各種資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
1) 地中貯留
現在、ノルウェー沖の北海におけるスライプナー(Sleipner)ガス田やカナダのワイバー
ン(Weyburn)油田で石油増進回収による CO2 貯留が実施されている。
ノルウェー沖の北海におけるスライプナーガス田では、天然ガス田で産出される天然ガ
スに含まれている CO2 濃度が 9%と輸出可能な濃度より高いため、1996 年の操業より化学
吸収法であるアミン吸収法により CO2 の分離・回収を実施している。回収した CO2(100
万 t- CO2/年)は海域の地中に存在する帯水層へ注入し、CO2 の隔離を行なっている。本事
業の目的は、ノルウェーにおける炭素税の回避であり、分離した CO2 を大気へ放出した場
合では、約$50/t- CO2 の税金が課税される。
カナダにおける EnCana 社のワイバーン油田(サスカチュワン州)では、産出される原
油が減少傾向にあり、より一層の石油の増進回収を行なう必要があった。このため、2001
年より米国のノースダコタ州にある Great Plains 合成ガス製造工場で製造された合成ガス
より、化学吸収法であるアミン法により CO2(5,000t-CO2/日)の分離・回収を行ない、パ
75
イプライン(輸送能力 270 万m3/D)にて約 320km 離れたカナダのワイバーン油田へ輸送、
油田への注入を行ない石油の増進回収を図っている。ただし、石油増進回収を目的とした
CO2 の注入であり、産出された原油と共に注入された CO2 の一部が再放出されるとの研究
報告もなされている。
2) 海洋貯留
CO2 を海洋で処理する方法として様々なアイディアが提案されてきたが、それらを大別
すると、溶解法と貯留法に分類できる。前者は、海洋の広大さを活かし、回収 CO2 を液体
または気体として 2000m 以浅の海中に溶解拡散させるというもので、大気中 CO2 増加分の
一部が海洋中に取り込まれるという自然循環を先回りする意味合いがある。後者は、CO2
が CO2 溶解海水より重くなる 3500m 以深の深海底窪地に液体として溜めるというもので、
影響範囲を最小にする狙いがある。いずれの方法も技術的に可能であることから、海洋環
境や生態系への影響評価が実現の成否を決定づけると考えられる。
技術的容易性とコスト面からは、処理深度が浅い溶解法に分があるが、実現にとってよ
り重要と考えられる隔離期間、可逆性(後悔したときに取り返しがつくかどうか)及び環
境影響評価の精度と容易性において、貯留法の方が圧倒的に有利であることが分かる。
図 5-5
CO2 海洋貯留のイメージ
(出所) (財)地球環境産業技術研究機構(RITE) 資料
海上技術安全研究所(旧船舶技術研究所)では、貯留法を念頭に過去 11 年余りにわたり
研究を行い、500m(北太平洋)∼900m(北大西洋)以深で生成する CO2 ハイドレート2の
性質を明らかにするとともに、貯留法の弱点の一つでもある高深度への輸送問題克服とコ
スト削減を目指した CO2 投入法 COSMOS(CO2 Sending Method for Ocean Storage)を
提案している。
深海貯留に要する純コストは、COSMOS 実現時には溶解法と同レベルとなり、総発電コ
2
氷に似た結晶性の準安定化合物で、水との混合物はシャーベット状となる
76
ストの 20%程度と試算されている。しかし、京都議定書がわが国に求めている削減量(1990
年実績の−6%)は省エネルギーなど他の削減法と合わせて達成すべきものであることから、
深海貯留が受け持つ削減量は高々5%と考えられる。したがって、深海貯留に要するコスト
は平均すると発電コストの 1%程度となり、許容レベルにある。
タンカー輸送される CO2 は、タンク圧力をできるだけ下げる必要性から、ドライアイス
になる直前の−55℃程度にまで冷却される。この様な低温 CO2 は、500m の浅海で十分海
水より重くなるため、直径が 1m 以上の大液泡として放出できれば、海水からの受熱や液泡
を覆う氷層の浮力にもかかわらず、3500m 以深の貯留サイトまで自然沈降させることがで
きる。(図 5-6)
図 5-6
CO2 深海貯留のイメージ
(出所) (独)海上技術安全研究所
表 5-4
CCS の要素技術整理
(出所) 各種資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
77
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