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マウスの精子形成からみえてきた “しなやかな”幹細胞

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マウスの精子形成からみえてきた “しなやかな”幹細胞
マウスの精 子形 成 か らみ えて きた
“しなやかな”幹細胞-ニ ッチ システム
"Fl
exible"
stem
cell-niche
system
in the mouse
spermatogenesis
吉 田松 生
哺乳 類の精 子形成 は高性 能な幹 細胞 システムの ひとつ とみなされて いる.し か しその実,幹 細 胞の実 体 やそれをさ
さえて いるであろ うニ ッチ(微 小環 境)は い まだ謎 につつまれて いる.筆 者 らは,ト ラ ンス ジェニ ックマ ウスやイメ
ー ジングとい った方 法 を用いて この問題 に取 り組 んで きた .そ の結果,少 しずつで はあるが,マ ウスの精 子形 成幹
細胞 やその ニ ッチの正 体が明 らか とな ってき ている.そ こ には,シ ョウジ ョウバ エの生殖 幹細 胞 に代 表 される,高
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度 に特殊化 したニ ッチで幹細 胞 が厳密 に制御 され る “
きち ょうめん”な システム とは対象 的な,“ やわ らが で “しな
やか”な幹 細胞-ニ ッチ像 が垣 間み える.
●マ ウス ●精子 形 成
●幹細 胞
●ニ ッチ
端 が ニ ッチ 領 域 とな り,幹 細 胞 を保 持 す る と と もに 自己 複
は じめ に
製 と分化 を制 御 す る(詳 細 は,文 献1,2)など を参 照 の こ と).
哺 乳 類 の精 巣 で は長 期 間 に わ た って きわ め て 多 数 の 精 子
メス の場 合 を,図1に
示 す.卵 巣 を構 成 す る十 数 本 の卵 巣
が 生 み 出 され る.こ れ を さ さ え る幹 細 胞 とは どの よ う な も
小 管 の 先 端(germarium)で
の で あ ろ うか?そ
(キ ャ ップ細 胞)が ニ ッチ を形 成 す る.生 殖 幹 細 胞 はキ ャ ッ
こで は,精 子 形 成 幹 細 胞 と と もに,支
は,高 度 に特 殊 化 した体 細 胞
持 細 胞 で あ る体 細 胞 が つ くる環 境(ニ ッチ)が 一体 とな って
プ細 胞 と密 接 に接 着 し,キ ャ ップ細 胞 に接 す る細 胞(生 殖
シ ス テ ム をつ くっ て い る はず で あ る.筆 者 らは,マ
ウスを
幹 細 胞 と して 残 る)と 接 しな い細 胞(分 化 過 程 に入 る)を 生
用 い て この 問 題 の解 明 に取 り組 ん で い る.本 稿 で は,き わ
じる よ うな非 対 称 分 裂 をつ ね に行 な う.分 化 過 程 に入 った
めて 秩 序 だ った組 織 構 築 を もち,そ れが ゆ え に研 究 が 著 し
細 胞 は 増 殖 を く り返 しなが らニ ッチ 領 域 か ら離 れ て い き,
く進 展 し幹 細 胞 ニ ッチ シ ステ ム の ひ な形 と な って い る シ ョ
成 熟 した卵 は体 外 に 開 口 した もう一 方 の 端 か ら体 外 へ と出
ウ ジ ョウバ エ の生 殖 細 胞 と対 比 しなが ら,哺 乳 類 の 精 子 形
る(産 卵).結
成 の特 徴 を議 論 す る.
胞 か ら開 口部 に むか って,分 化 過 程 に したが って 順 序 よ く
果 と して,卵 子 にい た る細 胞 は,先 端 の 幹細
配 置 す る.精 巣 に お い て も,ハ ブ細 胞 とよ ばれ る体 細 胞 が
ニ ッチ を形 成 し,基 本 的 には卵 巣 と同様 の幹 細 胞-ニ ッチ シ
Ⅰ シ ョウジョウバエの生殖腺
幹 細 胞-ニ
ス テ ム を もつ.シ
ッ チ シ ス テ ム の “ひ な 形 ”
ョウ ジ ョウバ エ の ニ ッチ は発 生 期(幼 虫
期)の プ ロ グラ ム され た 器 官 形 成 過 程 に よ りつ く られ る3).
シ ョ ウ ジ ョ ウ バ エDrosophila
melanogasterで
は,オ
ス ・メ ス と も に 生 殖 幹 細 胞 か ら配 偶 子(精 子 と 卵 子)を 生 じ
る.生
殖 腺(精 巣 と卵 巣)は 明 らか な極 性 を も ち,一
ニ ッチ が 障 害 を受 け る とそ の機 能 は不 可 逆 的 に失 わ れ,幹
細 胞 も維 持 され る こ とは ない.
方の先
Ⅱ 哺乳類の精子形成
Shosei
Yoshida
京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学講座
E-mail : [email protected]
哺 乳 類 は,卵
の形 成 が 幹 細 胞 ニ ッチ シス テ ム を失 っ た
(捨 て た)一 方 で,精 巣 は きわ め て生 産 性 の 高 い 幹細 胞 シス
テ ム を もち,長 期 間 にわ た って 日々,多 数 の精 子 がつ くられ
蛋白質 核酸 酵素•@ Vol.53
No.9
(2008)
1125
図1シ
ョ ウ ジ ョ ウ バ エ の 卵 巣 と 生 殖 幹 細 胞-ニ
ッチ
システム
(a)シ ョウ ジ ョウバ エの 卵 巣 の全 体像 と,(b)そ
は16∼20個
の 概 念 図.卵
巣
の 房 状 の枝(卵 巣 小 管)か らな って お り,行 き 止 ま
りの盲 端 にな って いる部 分(aで は 赤色 の 四 角,bで
示 す)のgermariumと
は青 色 の丸 で
よば れ る構 造 に,幹 細 胞 とそ れ を さ さえ
るニ ッチ があ る.幹 細 胞 か ら生 み 出 され た分 化 細 胞 は,分 化 ・成
熟 する に した が って しだ い にニ ッチ 領 域 か ら遠 ざ か って いき,受
精の の ち体 外 に 産卵 され る.こ の よう に,器 官 全体 が明 確 な極 性
をも って いる.
(c)germariumに
た り2∼3個
お ける幹 細 胞-ニ ッチ システ ム.germariumあ
が 存 在 する 生殖 幹 細 胞 は,高 度 に特 殊 化 した体 細 胞
(キ ャップ 細 胞 とター ミ ナル フ ィラ メ ン ト細胞)か らな るニ ッチ に
接 して いる.非
対 称分 裂 の 結 果,ニ
ッチ との接 触 を 保 った一 方 の
娘細 胞 が 幹 細 胞 と して 自己 複 製 する 一 方,ニ
ッチ か ら離 れ た娘 細
胞 は最 初 の 分 化 細 胞 で あ る シス トブ ラ ス トと な る.そ の の ち,4
回 の不 完 全 分 裂 を経 て16個
の細 胞 が 連 結 した シ ス トと な ったあ
と,そ の ひ とつ が卵 母 細 胞 とな り減数 分 裂 に入 る.シ
ョウジ ョウ
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バエ の卵 巣 で は,分 化 過 程 の 生殖 細 胞 を支 持 す る2種 類 の 体細 胞
(エ ス コー ト細 胞 と ろ胞 細 胞)が あ る.と も に幹 細胞 シス テム を も
ち,germariumの
な かで そ れ ぞれ 異 な ったニ ッチ 領域 に存 在 し
て いる25).
[文献26よ
て い る.精
れ は,両
子 形 成 は 直 径 約200μmの
精 細 管 で 進 行 す る.こ
形精 子細 胞,伸 張精 子細 胞 と,分 化 の順 に配列 す る(図2e,f).
端 が 精 巣 網(す べ て の 精 子 が 通 る 共 通 の 出 口)に 開
口 し た ル ー プ で あ り,総
延 長 が2m(マ
り許可 を得 て 転 載 ・改変]
ウ ス の 場 合)に 近 い
成熟 精 子 は 内 腔 に 放 出 され たの ち,精 巣 網,精 巣 上 体,輸
精 管 を経 て 体 外 へ 射 出 され る.精 細 管 は全 周 に わ た って 同
精 細 管 全 体 で ま ん べ ん な く精 子 形 成 が 進 行 す る(図2a,b).
じ基 本構 造 を示 し,ニ ッチ を思 わせ る よ うな特 殊 化 した 局
つ ま り,シ
所 構 造 は 知 られ てい な い.
ョウ ジ ョウバ エ の よ う な器 官 全 体 を通 して の極
性 は み ら れ な い.被
膜(白 膜)の
なか で 複 雑 に折 りたた まれ
て い る 精 細 管 の あ い だ を ぬ う よ う に 血 管 が 走 行 し,血
管 の
ま わ り に は ラ イ デ ィ ッ ヒ細 胞(男 性 ホ ル モ ン を 産 生)な
どが
Ⅲ 精細管内移植によるコロニー形成 と
GS細 胞の樹立
間 質 を 形 成 し て い る(図2c,d).
精 細 管 は,基
を 筋 様 細 胞(と
る.セ
底 膜 を は さ ん で 内 側 を セ ル ト リ細 胞,外
も に,体
細 胞)が
お お っ た基 本 構 造 か らな
ル トリ 細 胞 は 上 皮 構 造 を も ち,そ
の あ いだ の タ イ ト
ジ ャ ン ク シ ョ ンが 血 液-精 巣 関 門(blood-testis
実 体 を な す.こ
側
barrier)の
の タ イ トジ ャ ン ク シ ョ ン に よ り精 細 管 内 は,
哺 乳 類 の 精 子 形 成 幹 細 胞 は,同
じ く哺乳 類 の造 血 幹 細 胞
の ほ か唯 一,移 植 後 の コ ロニ ー 形 成 に も とづ く幹 細 胞 の 定
量 的 な解 析 が 実 現 して い る系 で あ る4).1994年,Brinster
らは,単 一 の 細 胞 に解 離 した ドナ ー の精 巣 細 胞 を宿 主 精 巣
の 精 細 管 内 に移 植 す る実 験 系(精 細 管 内 移 植 法)を 開 発 し
管腔
た5,6).移 植 され た細 胞 懸 濁 液 に含 まれ る幹細 胞 は,宿 主 精
に分 け ら
細 管 の基 底 コ ンパ ー トメ ン トに生 着 した の ち(そ の メ カニ ズ
イ トジ ャ ン ク シ ョ ン と基 底 膜 の あ い だ の 基 底 コ ン
ム は 不 明)に 増 殖 し,恒 常 的 に精 子 形 成 を行 な う コロ ニ ー
パ ー トメ ン トは 幹 細 胞 を 含 む 精 原 細 胞(体 細 胞 分 裂 段 階 の
を形 成 した.幹 細 胞 の 機 能 は 移植 細 胞 に由 来 す る精 子 か ら
生 殖 細 胞)に
産仔 を得 る こ とに よ り最 終 的 に証 明 さ れた.こ の 実 験 系 を
大 き く基 底 コ ン パ ー トメ ン ト(basal
側 コ ンパ ー トメ ン ト(adluminal
れ る.タ
よ り満 た され,減
compartment)と
数 分 裂(精 母 細 胞 期)に 入 る
と管 腔 側 コ ンパ ー ト メ ン トに 移 る.そ
1126 蛋 白質 核酸 酵素•@ Vol.53
compartment)と
No.9
の の ち,半
(2008)
数体 の 円
利 用 して,造 血 幹 細 胞 の と き と同様,お
もに細 胞 表 面 抗 原
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図2マ
ウス 精 巣 の組 織 構 築 と 精 子 形 成
(a)マウス精巣の全体像と,(b)そ の概念図.精 子形成の場である精細管は,複 雑に折 りたたまれて白膜に包まれている.図 では,二 十数本のうちの1本 の精細
管 を示す.個 々の精細管は両端 が精巣網 に開口 したループを形成 し,シ ョウジ ョウバエでみられるような極性はみ られない.幹 細胞は精細管ループ全体 に散在す
る(bの 青色の丸).
(c)と(d)は,精 細管 とそれをかこむ血管網および間質.精 細管のすきまをぬうように血管(赤色)が 網目状に走 り,血 管の周 囲をライディッヒ細胞などからなる
間質(黄色)が とりかこむ.活 発に精子形成が起こる精細管の内部 に血管が入り込むことはない.
(e)と(f)は,精 細管上皮の構造 と精子形成の模式図.(c)や(d)の 四角に相 当する部分の組織構築で,(e)は 生殖細胞を除いた精細管の基本構築を,(f)は それ
に精子形成細胞 をくわえたものを示す.
巣
GS細 胞 の樹 立 は幹 細 胞 の性 質 や 幹 細 胞 能 の 実体 をin vitro
ンテ グ リ ン
で検 討 す る こ と を可 能 と した,造 血 幹 細 胞 で も達 成 され て
を 指 標 に して 幹 細 胞 を 濃 縮 ・純 化 す る 研 究 が 進 ん だ.精
中 の 幹 細 胞 活 性 を 濃 縮 す る マ ー カ ー と し て,イ
α6,CD9,E-カ
ドヘ リ ン な ど が 知 ら れ て い る7・9).し
造 血 系 で は 実 現 して い る よ う な,す
か し,
べ て の細 胞 が コロ ニ ー
を 形 成 す る 画 分 を得 る に は い ま だ 遠 い と い わ ざ る を え な い.
精 細 管 内 移 植 法 を ア ッセ イ 系 と して,2003年,篠
ら も,類
stem
cell)と 名 づ け た10).つ
胞
胞 培 養 は,少
精 細 管 内 移 植 法 で は,あ
らか じめ生 殖 細 胞 を除 去 した宿
主 精 細 管 に移 植 す る.こ れ は,細 胞 の もつ 自己 複 製 能 を最
づ い て,Brinster
似 の 培 養 系 を 報 告 し た11).GS細
Ⅳ 幹細胞と未分化型精原細胞
原 ら は,
コ ロ ニ ー 形 成 能 を 保 持 し た 培 養 細 胞 系 を 樹 立 し,GS細
(germline
い ない 重 要 な ブ レー クス ルー で あ る.
な
大 限 に検 出 で きる よう デザ イ ン され た 系 で あ る.で は,実
く と も数 年 以 上 に わ た っ て コ ロ ニ ー 形 成 性 の 細 胞 を 安 定 に
際 の精 巣 の なか の 恒 常 的 な精 子 形 成 で 機 能 す る幹 細 胞 の 実
維 持 す る こ とが で き る.そ
体 は どの よ うな もの だ ろ うか?そ
れ は,移 植 で 検 出 され る
“幹 細 胞 ”と同 じ細 胞 な の だ ろ うか?
の 一 方 で,GS細
ニ ー を形 成 す る 細 胞 は ご く一 部(高
胞 培 養 中で コロ
くみ て も,数%)に
とど
ま る.培
養 条 件 の さ ら な る 最 適 化 に よ りこ の 割 合 は 上 が る
の か,あ
る い は,幹
て い る の か,今
細 胞 維 持 の 重 要 な メ カニ ズ ム を反 映 し
後 の 研 究 が 待 ち 遠 し い.い
ず れ に し て も,
精 巣 で は,基 底 コ ンパー トメ ン トをしめ る精 原 細 胞 の なか
で,ご
く一 部 の細 胞 が 幹 細 胞 と して 機 能 して い る こ とは明
らか で あ る.し か し,残 念 なが ら今 日,多 数 の 精 原 細 胞 の
蛋 白質 核酸 酵素•@ Vol.53
No.9
(2008)
1127
なか の どの 細 胞 が 幹 細 胞 か,明
らか に な っ て い る とは い え
るの か?” “そ の結 果 つ く られ る,恒 常 的 な精 子 形 成 を さ さ
な い.現 在,幹 細 胞 を含 む こ とが 明 らか に な っ て い る最 小
えて い る幹 細 胞 シ ステ ムの 実 体 は どの よ うな もの か?” とい
の細 胞 集 団 は,“ 未 分 化 型 精 原 細 胞 ”と よば れ る,精 巣 全 体
う問 題 をか か げ て研 究 を進 め て い る.以 下,筆 者 らの 研 究
の1%以
を紹 介 しなが ら,マ ウス を用 い た 哺乳 類 の精 子 形 成 幹 細 胞
下 の細 胞 集 団 で あ る(図3).こ
す るAs(Asingle)細 胞,2個
個,8個,お
れ は,単 独 で 存 在
連 結 したApr(Apaired)細
胞,4
よび,お お むね16個 まで連 結 したAal(Aaligned)
細 胞 の各 精 原 細 胞 を総 称 した もの であ る(図3,お
献12,13).な お,未
よび,文
Ⅴ 未分化型精原細胞に目印をつける
分 化 型 精 原細 胞 は核 形 態 と周 囲 の 精 原
細 胞 と細 胞 周 期 が 同 調 しない こ とか ら定 義 さ れ る もの で,
連 結 して い る細 胞 数 は 目安 にす ぎな い.
精 細 管 内 の 精 子 形 成 は周 期 的 に進 行 す る14)(精 上 皮 サ イ
ク ル,マ ウ スの場 合 は約8.6日)が,未
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研 究 の現 状 と課 題 を考 えて い きた い.
分化型精原細胞 はこ
未 分 化 型 精 原 細 胞 は1960年 代 に形 態 的 観 察 に よ り見 いだ
され た.ホ
ー ルマ ウ ン ト標 本 の ほか,切
片 上 で 染 色 した核
の 形 態 か ら も同 定 で きる と され る17).し か し,こ れ らは 当
のサ イ ク ル を通 して つ ね に 少 数 が 存 在 し,各 周 期 に1回 ず
然 なが ら組 織 を固 定 す る必 要 が あ り,未 分 化 型 精 原 細 胞 の
“ナ マ ”の挙 動 を ダ イ レ ク トに検 討 す る こ とは で き なか
った.
つ 分 化 型 精 原細 胞 の最 初 の段 階 であ るAl精 原 細 胞 を生 み 出
また,細 胞 を同 定 す る信 頼性 が 観 察 者 の 力 量 に よ るの も大
す.ま
きな問 題 で あ っ た.一 方,こ の 細 胞 集 団 に特 異 的 な遺 伝 子
た,薬 剤 や 高 温 処 理 に よ って 未 分 化 型 精 原 細 胞 を残
して ほか の 生 殖 細 胞 が な くな っ た 精 巣 か ら完 全 な精 子 形 成
は長 く知 られ て な か っ た18).筆 者 らは,精 原 細 胞 のcDNA
が 再 生 す る(文 献15)な ど)事 実 は,未 分 化 型 精 原 細 胞 が 幹
ラ イブ ラ リー を作 製 してbHLH(basic
細 胞 を含 む こ と を支 持 す る.さ
基 性 ヘ リ ックス-ル ー プ-ヘ リ ック ス)型 転 写 因 子 を コー ドす
らに,精 細 管 内 移 植 後 の コ
helix-loop-helix,塩
ロ ニー 形 成 能 も未 分 化 型 精 原 細 胞 に相 当す る画 分 に強 く濃
る遺 伝 子 を検 索 し,Ngn3(neurogenin
縮 す る し7,16),GS細 胞 も未 分 化 型 精 原細 胞 と共 通 した性 質
型 精 原 細 胞 に発 現 す る こ とを 見 い だ した.Ngn3遺
を 多 く示 す こ とが 知 られ て い る(文 献10)な ど).
基 底 膜 上 の 少 数 の精 原 細 胞 に発 現 し,発 現 細 胞 をGFPで
筆 者 らの研 究 グ ルー プ は,“ マ ウ ス精 巣 の なか で未 分 化 型
3)遺 伝 子 が 未 分 化
伝子 は
標
識 す る トラ ンス ジ ェニ ッ クマ ウ ス で は未 分 化 型 精 原 細 胞 に
精 原細 胞 は どの よ うな挙 動 を示 す のか?” “未 分 化 型 精 原 細
特 徴 的 な連 結 した細 胞 の形 態 が 観 察 され た19)(図4).筆
胞 の挙 動 は 周 囲 の ニ ッチ に よっ て どの よ う に制 御 さ れ て い
らは,Ngn3遺
者
伝 子 の 発 現 制 御 領 域 に よ り未 分 化 型 精 原 細
図3マ
ウ ス 精 巣 内 に み られ る 精 子 形 成 過 程
成 体 精 巣 で 観 察 さ れ る精 子 形 成 細 胞 の な かで,も
っ
とも未 分 化 な もの は単 独 で存 在 す る精 原 細胞(Asingle,
Asと よば れる)と され る.そ のの ち,娘 細 胞 が細 胞 間
橋 で 連 結 した ま ま にな る 不 完 全 分 裂 を く り返 し,2
個,4個,8個,16個,…
と,2のn乗
個の細胞が
つ な が った 合 胞 体(シ ス ト)を つ くる .そ の うち,A
と2個 の 連結(Apaired,Apr),お
よび,お お む ね4個,
s
8個 な い し16個 の連 結(Aaligned,Aal)を 総称 した もの
が,筆 者 らの注 目 してい る未 分 化型 精 原 細 胞(Aundiff)
で あ る.未 分 化 型 精 原 細 胞 は最 初 の 分 化 型 精 原 細 胞
(A1)に 転 換 した あ とは,6回
の 体 細 胞 分 裂 を含 む,
き わめ て秩 序 だ った 分 化 過 程 を経 て減 数 分 裂 に入 る.
[文献14よ
1128 蛋 白 質 核 酸 酵 素•@ Vol.53
No.9
(2008)
り転 載 ・改 変]
胞 に 外 来 遺 伝 子 を発 現 させ る こ とが 可 能 に な った こ と を利
ー カ ー 遺 伝 子(LacZ遺
用 して,こ の細 胞 の性 質 を検 討 して い る.
る レ ポ ー タ ー21,22)を もつ トラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス を 用 い
Ngn3遺
伝 子 につ づ い て,未 分 化 型 精 原 細 胞 に発 現 す る
た.こ
の 時 点 でNgn3遺
精 原 細 胞 が,細 胞 連 結 の 数 の ほか に も不 均 一 な性 質 を もつ
に 標 識 す る こ と が で き た.
興 味 を もっ て調 べ て い る点 で あ る.
伝 子)を 発 現 す
の マ ウ ス に タ モ キ シ フ ェ ン を投 与 す る こ と に よ り,そ
遺 伝 子 がい くつ か報 告 され てい る9,18).その 結 果,未 分 化 型
細 胞 の 集 団 で あ る こ とが 明 らか に な りつ つ あ る.筆 者 ら も
伝 子 を発 現 して い た細 胞 だ け を不 可 逆 的
詳 細 は 文 献13,20,23)にゆ ず る が,こ
の 実 験 の 結 果,定
常状
態 の 精 巣 で 精 子 形 成 を さ さ え て い る 幹 細 胞(actual
cell,長
Ⅵ パルスラベル実験か ら垣間みえる
しなやかな幹細胞システム
期 間,組
織 の な か に 存 在 し,分
を 定 量 的 に 検 討 す る こ とが 可 能 と な っ た.興
筆 者 らの 研 究 で まず 紹 介 した い の は,精 巣 の組 織 を破 壊
stem
stem
化 細 胞 を生 み 出 し
つ づ け る 細 胞)を 検 出 す る こ と に は じめ て 成 功 し,そ
actual
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伝 子 あ る い はGFP遺
の挙 動
味 深 い こ と に,
cellは 精 細 管 へ の 移 植 に よ り検 出 さ れ る “コ ロ
ニ ー を 形 成 す る 能 力 を もつ 幹 細 胞 ”と は 異 な る 細 胞 集 団 で あ
す る こ とな く未 分 化 型 精 原 細 胞 を任 意 の 時点 で標 識 して(パ
る こ とが 強 く示 唆 さ れ た.こ
ル ス ラベ ル),そ の 子 孫 細 胞 の 運 命 を調 べ た 結 果 で あ る20).
定 常 状 態 の 精 巣 で す み や か に 入 れ 替 わ る こ とか ら,自
己複
これ は,Ngn3遺
製 は せ ず に 分 化 し て い く細 胞(transient
cell)
伝 子 発 現細 胞 に タモ キ シ フェ ン誘 導性Cre
リコ ンビナ ーゼ を発 現 す る と同 時 に,Creリ
コ ンビナー ゼ に
巣 に お け るNgn3遺
(a)と(b)は,成
筆 者 ら は,も
体 精 巣 に おけ るNgn3遺
形 精 子 細 胞,S:セ
(c)と(d)は,EGFP(enhanced
にEGFP遺
っ と も 仮 定 が 少 な い も の と し て,図5の
モ
伝 子 発 現 細 胞19)
伝 子 の発 現(in situハ イ ブ リダ イゼ ー シ ョン).Ngn3遺
する と,基 底 膜(点 線)に 接 した 扁平 な 核 を もつ 精 原 細胞(矢 じり)に シ グナ ル(紫 色,ピ
精 母 細 胞,t:円
amplifying
が そ の 主 体 で あ る 可 能 性 が 考 え られ る.
よ ってloxP配 列 の あい だ で組 換 えが 起 こる と不 可 逆 的 にマ
図4精
の “コ ロ ニ ー 形 成 性 幹 細 胞 ”は
ル トリ細 胞,m:筋
GFP)に
よ るNgn3遺
伝 子 とポ リA付 加 シ グ ナル(pA)を
様 細 胞.バ
伝 子 発 現 細 胞 は精 細 管 の 周 囲 に少 数 存 在 す る(a).高
ン ク色 は核 染 色)が み られる(b).g
: Ngn3陰 性 精 原 細 胞,p:パ
倍 率で 観 察
キ テ ン期
ー は100μm.
伝 子 発 現 細 胞 の可 視 化.マ
ウスNgn3遺
挿 入 した コ ン ス トラ ク ト(c)を 用 いて,ト
図3で 模式 的 に示 した よ うな,未 分 化 型 精 原 細 胞 に特 徴 的 な数(1,2,4,8,16,右
伝 子 を 含 むDNA断
片 のな か で,Ngn3遺
ラ ンス ジ ェニ ッ クマ ウ ス を 作 製 した.そ
伝 子(水 色 の四 角)の 領 域
の 精 細 管 の蛍 光 観 察(d)で
は,
下 にそ の数 を示 した)だ け連 結 した細 胞 が 可 視 化 され た.
蛋白質 核酸 酵素•@ Vol.53
No.9
(2008)
1129
デ ル を 提 唱 して い る.す
は た ら くactual
stem
な わ ち,“ 定 常 状 態 で 幹 細 胞 と して
cellに
くわ え て,幹
細 胞 と しての 潜
在 能 力 を も つ も の の 自 己 複 製 し な いpotential
存 在 す る.こ
の 集 団 は,定
stem
常 状 態 で はtransient
ing cellと して は た ら くが,actual
stem
cellが
amplify
cellが 機 能 を 失 う
よ う な と き に は 柔 軟 に 自 己 複 製 モ ー ドに 転 換 し て そ の 穴 を
埋 め る こ とが で き る ”と い う 考 え で あ る.
実 際 に,長
al stem
期 間 に わ た る 精 子 形 成 の な か で,と
cellが 失 わ れ る こ と,そ
cellの 子 孫 か ら新 た なactual
こ と,も
stem
観 察 して い る.筆
れ は,近
stem
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ウ ス の 精 子 形 成 幹 細 胞 シ ス テ ム の 機 能 コ ン パ ー トメ ン ト
stem
cellが 生 じて 補 充 さ れ る
者 ら は,こ
の と き に もpotential
分 化 型 精 原 細 胞 の サ ブ ポ ピ ュ レー シ ョ ン の 詳 細 や そ
れ ら の 挙 動 に つ い て の 知 見 が 蓄 積 し,筆
の モ デ ル20)
隣 のactual
cellが は た ら い て い る の で は な い か と考 え て い る.今
後,未
図5マ
き にactu
証 さ れ て,幹
者 らの モ デ ル が 検
細 胞 が しだ い にそ の ベ ー ル を脱 い で い くこ と
を 期 待 し て い る.
(a)通 常 の 精 子 形成.
(b)actual
stem
図6GFPで
cellが 失 われ た とき.
可 視 化 さ れ たNgn3遺
(a)タ イム ラ プス 連 続観 察 によ る,GFPに
伝 子 陽 性 未 分 化 型 精 原 細 胞 の 挙 動24)
よ り標 識 され た 未分 化 型 精 原 細 胞 の 局 在 と,分 化 型 精 原 細 胞 へ の転 換 に と もな う遊 走.未
時 には血 管(黒 色 の 帯 と して みえ る)と 周 囲の 間 質 に近 接 す る 領域 に局 在 した(0時 間,各
パネ ルの 数 字 は観 察 開始 か らの時 間).分
ってそ の領 域 か ら2つ の8細 胞 シス ト(Aal-8,黄 色 とオ レ ンジ色 で 示 す)が 遊走 し,血 管 や 間質 の な い領 域 に 広 が った(約36∼60時
化 型 精 原 細 胞 への 転 換 が 起 こ り,そ の のち,2つ
の シ ス トは わず か2∼3時
間).分
蛍 光 が弱 くな る のが わ かる.各
化 型精 原 細 胞 にな る にと もな い,GFPの
(b)∼(e)は,未
例 では,隣
1130 分 化型 精 原 細 胞 の 局 在 す る領 域 の 例.未
間の 差 で 同 調 的 に分 裂 して,2つ
の16細
分 化 段 階 を 同定 した根 拠 な ど,詳
分 化型 精 原細 胞(矢 じり)は,血
管,な
No.9
(2008)
間).こ
の 遊 走 のあ い だにA1分
胞 シ ス ト(A2精 原 細 胞)と な った(73∼76時
細 は文 献24)を 参照.
か で もそ の 分 岐 点付 近 に集 ま っ てい る場 合 が多 い.(b)や(c)の
り合 う精 細 管の な かの 未 分 化 型 精 原 細 胞 が,血 管(の 分 岐)を は さ んで 向 か い合 って局 在 して い る.
蛋 白質 核 酸 酵 素•@ Vol.53
分 化 型 精 原 細胞 は,観 察 開 始
化 型精 原 細 胞 へ の転 換 に と もな
管 や 間 質 細 胞 に近 接 す る領 域 に局 在 して い る こ とが 明 らか
Ⅶ 生細胞イメージングから垣間みえる
しなやかな未分化型精原細胞のニッチ
にな っ た.分 化 型 精 原 細 胞 に転 換 す る と同 時 にそ の領 域 か
ら離 れ て,精 細 管 全 体 に ダ イナ ミ ック に遊 走 す る よ うす も
観 察 され た(図6).こ
Database Center for Life Science Online Service
も う ひ とつ,精 巣 内 ニ ッチ につ い て議 論 した い.先
に述
れ は,固 定 切 片 標 本 の3次 元 再 構 築
(動 か な い イ メー ジ ング)の 結 果(図7)と
も一 致 した.さ
ら
べ た 筆 者 らの研 究 もそ うであ るが,従 来 の哺 乳 類 の精 子 形
に,血 管 の パ ター ンが 変 化 す る と と もに,未 分 化 型 精 原 細
成 幹 細 胞 研 究 の ほ と ん どが,細 胞 の 位 置 や 動 きを考 え に入
胞 も局 在 を変 え る こ とが 示 唆 され た.以 上 の こ とか ら,筆
れ(る こ とが で きて)て い な い.そ の 一 方 で,移 植 実験 な ど
者 らは,精 細 管 の な か の血 管 や 間 質 に接 す る部 分 が 未 分 化
は,精 子 形 成 が特 殊 な ニ ッチ と切 って も切 れ な い 関係 に あ
型 精 原細 胞 の ニ ッチ で あ る と提 唱 して い る24)(図8).
る こ とを示 してい る.筆 者 らの重 要 な 目的 の ひ とつ は,精
この よ う に,マ ウ スの 未 分 化 型 精 原 細 胞 の ニ ッチ は,ぎ
子 形 成 幹 細 胞 ニ ッチ の 実 体 を明 らか にす る こ とで あ る.し
っ し り詰 ま っ た精 細 管 の あ い だ をぬ う よ うに走 る血 管 網 の
か し,真 の 幹 細 胞 を同 定 す る こ とがか な わ ない 今 日,未 分
パ ター ンに した が っ てつ く られ ,血 管 網 の 再 編 成 とと も に
化 型 精 原 細 胞 の ニ ッチ を明 らか にす る こ とが 当 面 の 目的 と
柔 軟 に再 編 成 され てい る とい う可 能 性 が 浮 上 す る.こ れ は,
な る.
シ ョウジ ョウバ エの 生 殖 幹細 胞 ニ ッチが 発 生 期 の臓 器(生 殖
筆 者 らは,未 分 化 型 精 原 細 胞 とそ こか ら生 まれ た分 化 細
腺)形 成 プ ログ ラムの な かで厳 密 に決 め られ,障 害 を受 けた
胞 が,精 巣 の なか で ど こに 局 在 しどの よ うに移 動 して い る
ら二 度 と再 生 しない の と対照 的 にみ え る.し か し,“ 幹 細 胞
か を,生 細 胞 イ メー ジ ン グ に よ り明 らか にす る こ とを試 み
ニ ッチ”を解 明す るに は,未 分 化 型精 原細 胞 の なか の真 の幹
た24).蛍 光 蛋 白質 を用 い た イメ ー ジ ン グが 生 命 現 象 の見 方
細 胞 と考 え られ る “actual stem
を劇 的 に変 え る力 を もつ 例 は枚 挙 に い と まが な い.筆 者 ら
そ の 精 巣 内 で の挙 動 が つ まび らか に な るの を待 た な けれ ば
は,GFPで
な ら ない.ま
標 識 したNgn3遺
伝 子 発 現 未 分 化 型 精 原 細 胞19)
cell”の実 体 が 解 明 され,
た,血 管 や 間 質 が どの よ うな メ カ ニ ズ ムで ニ
を精 巣 構 造 を破 壊 す る こ とな く観 察 し,さ らに,精 巣 中 の
ッチ領 域 を規 定 して い るの か,そ こで は どの ような分 子 が機
挙 動 を連 続 観 察 す る方 法 を開 発 した.そ の結 果,未 分 化 型
能 して い るの か,非 常 に興 味 深 い.い ず れ も,解 明 が待 ち
精 原細 胞 は,精 細 管 の基 底 コ ンパ ー トメ ン トの な か で も血
遠 しいの と同時 に,ぜ ひ 自分 た ちの手 で 明 らか に した い課題
図8未
分 化 型 精 原 細 胞 が 局 在 す る “ニ ッチ ”
領 域の構造の模式 図
図73次
図2の よ うに,精 細管自体は特別の構造をもたないが,
元 再 構 築 によ って 可 視 化 した 未 分 化 型 精 原 細 胞 の 局 在24)
280枚 の連続切片にもとづいて3次 元再構成 した精細管.複 雑に折れ曲が った精細管のなかで,未 分
化型精原細胞(緑 色)が,周 囲をとりかこむ血管網(赤色)や,血 管周囲の間質 に近接する部分(黄色)
に局在するようすがわかる.(a)と(c)は 血管を除いた再構成で,(c)と(d)は 拡大図.ロ ーマ数字は
精細管周期のステージ.詳 細は,文献24)を 参照.
精細管周囲の血管や間質 との位置関係にもとづいてニ ッ
チが規定されている.す なわち,未 分化型精原細胞 は,
基底 コンパー トメン トのなかで血管 ・間質 に近接するニ
ッチ部分に局在 し,分 化型精原細胞への転換 にともな っ
て基底 コンパー トメン ト全体に広 がる.6回 の体細胞分
裂ののち減数分裂 に入るとともに,管 腔側 コンパー トメ
ン トに移動 し,精 子にいたる分化過程を進む.
蛋 白質 核酸 酵素•@ Vol.53
No.9
(2008)
1131
であ る.
7)
Shinohara,
Natl.
お わ りに
8)
T.,
Acad.
け足 で 哺乳 類(マ ウス)の 精 子 形 成 幹 細 胞 につ い
9)
て の研 究 の現 状 を概 観 して きた.哺 乳 類 の 精 子 形 成 の幹 細
胞-ニ ッチ シス テ ム は,シ
ョウ ジ ョウバ エ の 場 合 と比 べ て,
幹細 胞 もニ ッチ も,は る か に “い い加 減 ”に つ くられ て い る
M.,
Kadokawa,
76,
130-141
Kanatsu-Shinohara,
11)
Kubota,
de
H.,
USA,
101,
Rooij,
D.
Russell,
L., Ettlin,
T.:
Biol.
Reprod.,
Brinster,
69, 612-616
R.
L.:
(2003)
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Natl.
Acad.
21, 776-798
Hikim,
A., Clegg.
of the
E.: Histological
Testis,
S., Komatsu,
(2000)
(2007)
T.:
Cache
Fertil.
River
Steril.,
and
Press,
29,95-102
K.
け ば解 くほ ど
18)
Aponte,
Yoshida,
と思 い つ つ も,垣 間 み えて きた “しな やか ”な シス テ ムの か
20)
Nakagawa,
ら くりをな ん とか知 りたい と思 って い る.こ の しなや か さ は
本稿で紹介 した筆者 らの研究は,京 都大学大学院医学研究科 腫瘍生
物学講座で行なわれた.鍋 島陽一教授の辛抱強いサポー トと,粘 り強
くパルスラベル実験 を行なった中川俊徳博士は じめ,共 同研究者の
方々に深い感謝の意を表 したい.
258,
Russell,
209-225
L.
D.:
(2003)
Biol.
Reprod.,
65,
1170-1178
van
Bragt,
727-742
S. et
al.: Dev.
T.,
M.
P., de
Rooij,
D.
G., van
Pelt,
A.
M.:
(2005)
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Nabeshima,
269,
447-458
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Y., Yoshida,
S.: Dev.
Cell,
12,195-206
(2007)
21)
Araki,
K., Araki,
USA,
者 が ルー ズ なだ け か も しれ な い.
Biol.,
H.,
113,
19)
に筆
al.: Dev.
P. M.,
Apmis,
に わ か る こ とは な いの だ ろ う
日本 的 な 感性 に 近 い の で は な いか と感 じて い る が,単
et
(2001)
謎 は増 えて い く.“ 精 子 形 成 幹 細 胞 が わ か っ た!” と思 え る
22)
Kawamoto,
23)
Yoshida,
1120,
24)
M.,
92,160-164
Miyazaki,
S. et
al.:
FEBS
S., Nabeshima,
47-58
Yoshida,
J., Vassalli,
P.: Proc.
Natl.
Acad
Sci.
(1995)
Lett.,
Y.,
470,
263-268
Nakagawa,
T.:
(2000)
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NY
Acad.
Sci.,
(2007)
S., Sukeno,
M.,
Nabeshima,
Y.:
Science,
317,
1722-1726
(2007)
25)
Nystul,
26)
Kai,
T.,
T.,
Spradling,
Spradling,
A.:
A.: Proc.
Cell
Stem
Natl.
Cell,
Acad.
1, 277-285
Sci.
USA,
(2007)
100,
4633-4638
(2003)
献
下 由 起 子:蛋 白 質 核 酸 酵 素,51,2306-2311(2006)
2)浅
岡 美 穂:実 験 医 学,23,692-696(2005)
Kitadate,
Y., Shigenobu,
S., Arita, K., Kobayashi,
S.: Dev. Cell,
4)
Brinster,
R. L.: Science, 296, 2174-2176 (2002)
5)
Brinster,
R. L., Avarbock,
M. R.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91,
11303-11307 (1994)
Brinster, R L., Zimmermann,
J. W.: Proc. Natl. Acad Sci. USA, 91,
11298-11302 (1994)
1132 吉 田松 生
略歴:1995年
13,151-159 (2007)
6)
Reprod.,
(1978)
Chiarini-Garcia,
3)
Sinha
(1990)
Ohbo,
1)山
Biol.
(2004)
Evaluation
Y., Aizawa,
17)
文
R.,
L. D.: J. Androl.,
R.,
Nishimune,
16)
っ と,完璧
al.: Biol.
M.
Clearwater
永 年 の謎 が 少 しず つ 解 け るの が 実 感 で きる わ くわ くす る
に は ほ ど遠 い.き
T.:
H., Marunouchi,
2080-2086
Histopathological
瞬 間 に立 ち 会 え るの は,す ご く幸 せ な こ とだ と思 って い る.
しか しそ の一 方 で,月 並 み ない い 方 だ が,解
et
G., Russell,
14)
なや か さ”をあ た えて い る よ うに も思 う.
S., Shinohara,
Y., Kurahashi,
16489-16494
て い る),は るか に長 い時 間 を生 きる(つ ま り,幹 細 胞 ニ ッ
15)
R. L.: Proc.
(2007)
M.
13)‹g“c•¼•¶:’`”’Ž¿ ŠjŽ_ •y‘f,52,
え る と,こ の “い い加 減 ”さは,シ ス テ ム全 体 に 強靭 な “し
M. R., Brinster,
(2000)
Toyokuni,
Avarbock,
よ りはるか に体 が大 き く(つ ま り,多 くの細 胞 か ら成 り立 っ
チ システ ム は長 く機 能 を保 持 しなけれ ば な らない)こ と を考
Database Center for Life Science Online Service
M.,
Reprod.,
10)
12)
Avarbock,
97,8346-8351
(2004)
Tokuda,
Sci.
よ うで あ る.し か し,わ れ わ れ 哺乳 類 が シ ョウ ジ ョウバ エ
K. E.,
USA,
Kanatsu-Shinohara,
70, 70-75
以 上,駆
Orwig,
Sci.
蛋 白 質 核 酸 酵 素•@ Vol.53
No.9
(2008)
東京 大学 大 学院 医学 系研 究科 修 了,同 年 国立 精
神 ・神経 センター神経 研 究所 ポ ス トドク,1997年
大阪 大学 細胞
生体 工 学 セ ンター 助 手 を経 て,1998年
より京都 大学 大学 院 医学
研 究科 助 手(現 助 教),2001∼2005年
が け “認 識 と形 成”研 究者.
科学 技 術振 興機 構 さき
研 究 テーマ:哺 乳類 精子 形 成 の恒 常性 維持 の メ カニ ズム.
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