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iPS細胞研究に関する国際動向について
資料5 iPS細胞研究に関する国際動向について G-TeC・幹細胞【調査結果概要】 2010年3月30日 独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター 資料構成 1.調査概要 2.ファンディング 3.創薬 4.再生医療 5.標準化 6.幹細胞バンク ・参考 1.「幹細胞」 に関する国際動向調査の概要 ●2009年度のG-TeC (Global Technology Comparison) として、「幹細胞」 をテーマに選び、欧米を対象とした海外調査を実施。 ●G-TeCは、重要な科学技術に焦点を当て、各国・地域の動向を分析する ことで、日本のポジションを確認し、戦略立案に貢献することがミッション。 ●調査にあたり、「iPS細胞の国際社会への影響」 「幹細胞の実用化を巡る動き (創薬、再生医療)」 などを重要項目として設定。 ●「日本における幹細胞の研究シナリオ」 を構築するためのエビデンスとして、 「創薬」 「再生医療」 「標準化」 「幹細胞バンク」 などに関する海外の 注目動向を分析。 ●そのために、米国7機関 (米国国立衛生研究所、ハーバード大学ほか)、 英国7機関 (医学評議会、ファイザー社ほか)、フランス3機関 (ジョルジュ・ ポンピドーヨーロッパ病院ほか) などとの現地会合を実施。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 2 2‐1.米国国立衛生研究所の幹細胞研究へのファンディング状況 ●米国国立衛生研究所は、幹細胞研究への10億ドル規模の支援を継続している。ファンディング額は、 2008年度以降、漸増傾向にある。 ●これらに加え、2009年度及び2010年度には、米国再生・再投資法の資金を用い、約3億ドルの 追加投資を行っている。 ●オバマ政権がまとめた2011年度大統領予算教書においても、生物医学研究への支援が重視 されている。 ファンディング額(百万ドル) 1200 1000 800 600 米国再生・再投資法による追加支援 400 200 0 2007年度(実績) 2008年度(実績) 2009年度(実績) 2010年度(推定) 2011年度(推定) (出典) Estimates of Funding for Various Research, Condition, and Disease Categories, National Institutes of Health Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 3 2‐2.英国における幹細胞研究へのファンディング (2007年度) ●英国の場合、各種ファンディング機関による2007年度の実績として、幹細胞研究に対し 6000万ポンド規模の支援が行われている。 ●民間財団の 「ウェルカム・トラスト」、社会科学分野の 「経済・社会研究会議」 など、多様な 機関によるファンディング体制が構築されている。 スコットランド開発公社/英国 幹細胞財団 110万ポンド, 2% 経済・社会研究会議 150万ポンド, 2% その他 70万ポンド, 1% 英国心臓財団 360万ポンド, 6% 工学・物理科学研究会議 510万ポンド, 8% 医学評議会 2560万ポンド, 40% 英国癌研究所 580万ポンド, 9% ウェルカム・トラスト 880万ポンド, 14% バイオテクノロジー・生物科学 研究会議 1130万ポンド, 18% (出典) Meeting Papers on January 29 of 2010, Stem Cell Research and Regenerative Medicine, Dr. Catriona Crombie, Medical Research Council Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 4 3‐1.国際動向分析/“創薬”への取り組み ●iPS細胞の発明は、「創薬」 への幹細胞の応用を促進する上で、大きく貢献 している。 ●具体的には、「iPS細胞を用いることで、大手製薬企業が幹細胞研究に 取り組む際の倫理的障害が緩和される」 「iPS細胞を用いることで、大手 製薬企業が幹細胞研究に取り組む際のインセンティブが高まる」 などの 効果をもたらし、本分野への産業界の研究投資を増大させている。 ●患者由来iPS細胞などを用いた材料の機能評価や毒性試験など、創薬 研究に欠かせない画期的ツールとして、今後の大きな発展が期待される。 グラクソスミスクライン、ファイザーなどの欧米製薬大手が、こうした関心 を高めている。 ●本分野での研究活動が拡大している代表例として、「ハーバード大学・ ハーバード幹細胞研究所」 が挙げられる。 ●ハーバード幹細胞研究所は、2008年にグラクソスミスクラインから、5年間の 総額が2500万ドルに達する研究資金を獲得した。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 5 3‐2.国際動向分析/“創薬” への取り組み ●本研究は 「創薬」 及び 「病理機構解明」 を目的としたもので、「再生医療」 は 対象としていない。 ●「心臓血管」 「白血病」 「筋肉」 「神経」 「肥満」 及び 「膵臓」 の6領域を、 研究ターゲットとして位置付けている。 ●ハーバード幹細胞研究所は、創薬を目的とした幹細胞研究が拡大している 理由として、第一に 「iPS細胞が発明されたこと」、第二に 「治療法スクリー ニングセンター (Therapeutic Screening Center) が設置されたこと」 を 挙げている。 ●ハーバード幹細胞研究所が設置した 「治療法スクリーニングセンター」 は、 「iPS細胞を用いた機能・メカニズム評価」 などを活用し、 「材料や方法の スクリーニング」 に取り組んでいる。 ●すでに、4つの製薬企業とのパートナーシップを取り交わし、産学連携を基盤 とした幹細胞研究を展開している。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 6 4‐1.国際動向分析/“再生医療”への取り組み ●これに対し、iPS細胞を用いた再生医療については、以下の理由などにより、 臨床応用が急速に展開される状況にはない。 ●第一に、iPS細胞の生成過程について未解明な事項が数多く残されており、 再生医療全般に展開するには、そのための前提として 「iPS細胞の品質評価・ 管理のための継続的な基礎研究」 が求められる。 ●第二に、再生医療の分野では、既に、体細胞やヒトES細胞を用いた臨床研究 が進められているため、これらの研究をiPS細胞の研究で置き換えていくための インセンティブが必要になる。 ●実際に、英国現地会合では 「ファイザーとユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンが 連携し、ヒトES細胞を用いた網膜の再生医療研究を進めている」 ことなどが 示された。2011年・第一四半期には臨床試験が開始される計画となっている。 ●したがって、“短中期的シナリオ”としてiPS細胞の再生医療への応用を実現 するには、研究ターゲットを絞り込み、相対的に応用が容易な対象 (例えば、 移植細胞の数が少なくて済む、安全性評価が一つの細胞レベルで可能など) に集中したアプローチが重要になる。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 7 4‐2.国際動向分析/“再生医療”への取り組み ●ファイザー社は、2008年5月に、「再生医療」 に特化した新たな研究ユニット として 「ファイザー・リジェネレイティブメディシン」 を立ち上げた。 ●「英国・ケンブリッジ」 の拠点に35名前後、「米国・マサチューセッツ」 の拠点に 20名前後の人員を投入し、再生医療の研究に取り組んでいる。 ●本研究ユニットでは、「低分子化合物」 「ヒト胚性幹細胞」 「ヒト体性幹細胞」 及び 「自家幹細胞」 の4つが重点ターゲットとして位置付けられている。 ●再生医療への応用において、「iPS細胞」 の研究を強化していく動きは、現時点 ではまだ認められない。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 8 5.国際動向分析/“標準化”への取り組み ●一方、「日本が、iPS細胞の生成や品質などについて世界トップのナレッジ ベースを持っていること」 及び 「iPS細胞の再生医療への応用は、これまでに ない画期的医療をもたらすこと」 についての認識は、世界規模での拡がりを 見せている。 ●したがって、長期的シナリオに立てば、トップに立つ日本が世界を主導する形で、 未来の先端医療を実現するための 「iPS細胞の品質評価・管理のための基礎 研究を担う国際連携」 を組織するなどのアプローチを取り得る。 ●米英のライフサイエンス分野の中核ファンディング機関である 「米国国立衛生 研究所」 「英国医学評議会」 などからは、現地会合の際に、こうしたアプローチ への期待が示された。 ●幹細胞全体を対象に、世界における 「バンキング」 の動きをまとめると、次の ようになる。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 9 6‐1.幹細胞バンクを巡る国際動向 ●2010年3月時点で、世界に少なくとも16ヶ所 ・内訳は、北米エリア;3、英国;1、欧州・アフリカ大陸;3、 中東;1、アジア・オセアニア;8 (日本の京都大学、 理研BRC、医薬基盤研JCRB細胞バンクを含む) ●6機関がiPS細胞も分配 ●現在、米国NIHによるiPS細胞バンクや 中国における世界最大規模の幹細胞 バンクの設立構想が進んでいる ・ただし、iPS細胞のみに特化したバンク、 レジストリー機関はない (青または赤色の三角は所在地を示す。赤色はヒトES細胞と iPS細胞両方を扱っている機関) 参考文献 ; Lucas Laursen. (Stem cell) banking crisis. Nature Reports Stem Cells Published online| doi:10.1038/stemcells.2009.122, 2009, Jeremy Micah Crook & Derek Hei & Glyn Stacey. The International Stem Cell Banking Initiative (ISCBI): raising standards to bank on. In Vitro Cell Dev Biol—Animal. DOI 10.1007/s11626-010-9301-7 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 10 6‐2.幹細胞バンクの状況/米国 ▼Wisconsin International Stem Cell (WISC) Bank ●1999年に設立され、20005年から2010年2月までUS National Stem Cell Bankを運営。 ●2010年3月現在、US National Stem Cell Bankから引き継いだ20株のヒトES細胞と 6株の改変済みヒトES細胞、7株のiPS細胞株を提供。 ●提供依頼の初期手続きはオンラインで行うことができる。細胞株の使用料 ($1000) ならびに輸送料が必要。 ●iPS細胞の取得には、WiCellの実施する講習を受講することを推奨。 ▼Harvard Stem Cell Institute ●マサチューセッツ州総合病院の施設を用い、疾患特異的iPS細胞の樹立と国際的な普及 を目指している。 ●2010年3月現在までに疾患特異的iPS細胞が20種類樹立されたという報告がある。 ●研究所内のスタッフには無償で提供。所外の研究者 (非営利機関) は500ドルの送料が かかる。 ▼Massachusetts Human Stem Cell Bank ●2009年8月現在、ヒトES細胞2株とiPS細胞3株を提供。 ●疾患特異的iPS細胞の樹立と配布を行う。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 11 6‐3.幹細胞バンクの状況/英国 ▼UK Stem Cell Bank ●MRC (英国医学評議会) とBBSRC (英国バイオテクノロジー・生物科学研究会議) の資金 によって、National Institute for Biological Standards and Control (NIBSC) を母体に設立。 ●設立からの7年間で幹細胞バンクの運営に約1200万ポンドを支出。 ●幹細胞の品質管理や細胞株の特性検査、培養条件などを標準化して研究者に信頼性 と再現性の高い細胞株を提供することが目的であり、英国内で採取されるすべての ヒトES細胞が同バンクに登録され、国内外へ無償で配布している。これは標準化に 向けた戦略的施策である。 ●2010年2月現在、配布可能なヒトES株は15株、受託し品質検査を行っている株が約30株、 その他未受託株となっている。 ●UKSCB自体が研究施設をもち、細胞培養、保存、細胞特性の検査、安全性試験に 特化した研究を行っている (他の研究施設との競合を避けるために、幹細胞を用いた 基礎研究や産業化に向けた研究は一切行わないこととなっている)。Dr. Austin Smithの 作成したiPS細胞もここで扱われ、研究が進められている。 ●FP7のESNATS (Embryonic Stem Cell-based Novel Alternative Testing Strategies) に参加し、アストラゼネカ、GSK、ロシュ、リプロセル (日本企業) とともにヒトES細胞による 毒性試験の開発を行っている (ヒトES、iPS細胞による肝細胞と心筋細胞への毒性試験 の研究開発に資金を提供) 。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 12 【参考】 1‐A.主な現地会合機関/政策・ファンディング 会合機関 区 分 地域 名称/日本語 名称/英語等 対象者 役職 政策 ・ファンディング 米国 米国国立衛生研究所/国立神経疾 患・脳卒中研究所 ほか National Institutes of Health/National Institute of Neurological Disorders and Stroke, etc. Dr. Story Landis Director 米国 カリフォルニア再生医療研究所 California Institute for Regenerative Medicine Dr. Alan Trounson President 米国 メリーランド幹細胞研究資金 Maryland Stem Cell Research Fund Dr. Dan Goncel Director 英国 医学評議会 Medical Research Council Sir Leszek Borysiewicz Chief Executive 英国 ウェルカム・トラスト Wellcome Trust Dr. Alan Schafer Head of Science Funding 英国 バイオテクノロジー・生物科学研究会議 Biotechnology and Biological Sciences Research Council Dr. Vicky Jackson Programme Manager フランス筋ジストロフィー協会 French Muscular Dystrophy Association Dr. Serge Braun Scientific Director フランス Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 14 1‐B.主な現地会合機関/大学・企業・病院 会合機関 区分 地域 名称/日本語 名称/英語等 対象者 役職 大学 ・企業 ・病院 米国 ハーバード大学/ハーバード幹細胞 研究所 ほか Harvard University/Harvard Stem Cell Institute, etc. Dr. Douglas Melton Scientific Director 米国 ジョンズ・ホプキンス大学/セルエンジ ニアリング研究所 Johns Hopkins University/Institute for Cell Engineering Dr. Ted Dawson Director 米国 ウィスコンシン大学マディソン校/ 幹細胞・再生医療センター University of Wisconsin-Madison/Stem Cell and Regenerative Medicine Center Dr. Timothy Kamp Co-Director 米国 カリフォルニア大学サンフランシスコ校/ エリ・アンド・イデッス・ブロード再生医療・ 幹細胞研究センター University of California, San Francisco/Eli and Edythe Broad Center for Regenerative Medicine and Stem Cell Research Dr. Arnold Kriegstein Director 英国 ケンブリッジ大学/ウエルカムトラスト 幹細胞研究センター University of Cambridge/Wellcome Trust Centre for Stem Cell Research Dr. Austin Smith Director 英国 インペリアル・カッレッジ・ロンドン/ MRC臨床科学センター Imperial College London/MRC Clinical Sciences Centre Dr. Amanda Fisher Director 英国 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン/ UCL幹細胞・再生医療センター University of College London/UCL Centre for Stem Cells and Regenerative Medicine Dr. Claudio Stern Chair of Steering Committee 英国 ファイザー・リジェネレイティブメディシン Pfizer Regenerative Medicine Dr. Paul Whiting Head of Molecular and Cellular Biology フランス I-STEM Institute for Stem Cell Therapy and Exploration of Monogenic Disieases Dr. Marc Peschanski Scientific Director フランス ジョルジュ・ポンピドーヨーロッパ病院 Hôpital Européen Georges-Pompidou (HEGP) Dr. Philippe Monasché Medical Doctor Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 15 2‐A.米国国立衛生研究所の幹細胞研究のファンディング対象 ●米国国立衛生研究所の幹細胞研究におけるファンディング対象は、「胚性」 「非胚性」 「臍帯血」 に大別されている。 ●iPS細胞については、例えば、国立神経疾患・脳卒中研究所の場合、2009年度の幹細胞研究 全体への投資額である約8500万ドルの内、約1100万ドルをiPS関連に充当している。 ファンディング額 (百万ドル) 区 分 2007年度 (実績) 2008年度 (実績) 2009年度 (実績) 2010年度 (推定) 2011年度 (推定) 全 体 968 938 1,044 1,070 1,100 74 88 120 123 126 ヒト以外 120 150 148 151 155 ヒト 226 297 339 348 358 ヒト以外 400 497 550 564 580 胎盤 44 46 49 50 52 ヒト 38 38 42 43 45 9 9 10 10 11 ヒト 胚性 非胚性 臍帯血 ヒト以外 (出典) Estimates of Funding for Various Research, Condition, and Disease Categories, National Institutes of Health Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 16 2‐B.米国国立衛生研究所における幹細胞株の登録状況 ●オバマ政権によりヒト胚性幹細胞研究への連邦支援が再開された。2009年7月に発効した 新たなガイドラインに基づき、米国国立衛生研究所において研究支援対象となる幹細胞株の 再登録が行われている。 ●2010年3月時点で43株が登録されており、この内、ハーバード大学の幹細胞株が27株を 占める。申請段階が115株、申請予定が233株となっている。 機関名 Harvard University Children’s Hospital Corporation Rockefeller University Novocell, Inc. WiCell Research Institute 幹細胞の株数 登録済み 申請段階 申請予定 小計 27 11 3 1 1 5 48 4 47 11 11 8 7 6 4 3 3 2 2 2 1 1 1 1 115 178 80 15 3 1 1 225 11 11 9 7 6 4 3 3 2 2 2 1 1 3 1 391 Reproductive Genetics Institute University of California, San Francisco Children’s Memorial Hospital Advanced Cell Technology, Inc. New York University Guangzhou Medical College University of Connecticut University of California, Los Angeles Cellartis AB University of Texas, Houston Mt. Sinai Hospital Jawaharial Nehru Centre for Advanced Scientific Research Stanford University California Stem Cell, Inc. Reprogenetics, LLC University of New South Wales 合 計 43 1 2 233 (出典) NIH Human Embryonic Stem Cell Registry, National Institutes of Health Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 17 2‐C.米国国立衛生研究所におけるiPS細胞を巡る動き ●米国国立衛生研究所については、iPS細胞を対象とした研究やファンディング として、以下の動きなども注目される。 1)2008年度より、健常者及び精神疾患の患者由来iPS細胞に関する探索的 研究を対象としたファンディング制度を導入 (所管部門はNational Institute of Mental Health)。 2)2009年度に、米国再生・再投資法からの研究資金をもとに、神経疾患研究 を対象とした3つのiPSコンソーシアム (パーキンソン病、ALS、ハンチントン病 が、それぞれの研究対象) を立ち上げ。 3)幹細胞ユニットにおいて、人 (男女各1名ずつ) から得た6つのiPS細胞株 の特性を評価中。 4)2010年2月に、iPS細胞センターの設立計画を発表。「コア施設」 「専用研究室」 「関連プロジェクト」 の立ち上げを目指している。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 18 5‐A.幹細胞の標準化を巡る国際動向 ▼International Stem Cell Forum (ISCF) ●ISCFは、英国医学評議会の支援によって2003年に発足した国際組織。2010年時点では 21カ国の組織が参加。 ●ISCFによる決定事項は法的な拘束力はないが、ISCFにおける決定・合意事項が幹細胞研究 全般におけるグローバルスタンダードの強力な候補となる可能性が高いことは確かである。 ●2010年現在、倫理や社会受容を扱う 「Ethics Working Party (EWP)」、知的財産関連案件 を扱う 「Intellectual Property Rights (IPR)」、幹細胞研究の基盤整備を取り扱う 「The International Stem Cell Initiative (ISCI)」、ならびに幹細胞バンクのより効率的な運営と国際 連携を検討する 「The International Stem Cell Banking Initiative (ISCBI)」 が設置されている。 ▼International Stem Cell Initiative (ISCI) ●英国の幹細胞研究者 Peter Andrew教授 (シェフィールド大学) が主宰。 ●幹細胞研究の基盤整備、特にES細胞の臨床応用に向けて基礎研究面について議論を 行う組織として発足。 ●ワーキンググループ (ISCI1、ISCI2) の活動を主導し、ES細胞の細胞株作成に関し、 国際合意として満たすべき細胞株の特徴と基準について合意形成を行った。また、 ESを治療へ応用する上で重要となる細胞株の特性に関する国際基準を作成している。 ●現在、ES細胞に加え、iPS細胞を含めた多能性幹細胞の国際基準作成のための新たな ワーキンググループ設置に向けた準備が進められている。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 19 6‐A.幹細胞バンクを巡る国際動向 ●UKSCBの責任者である Glyn Staceyが、International Stem Cell Banking Initiative (ISCBI) を主宰。 ・オーストラリア、カナダ、中国、チェコ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、日本、インド、イスラエル、 韓国、シンガポール、スペイン、スウェーデン、米国の機関で構成。日本からは理化学研究所 バイオリソースセンターが参加している。 ●ISCBIの主な活動目的は、以下の通り。 ・細胞株の品質管理における最低基準の確定 ・世界各国の異なる機関で作成される細胞株の特徴データを比較可能にする体制構築 ・細胞株や他の実験材料を国際的に交換できる体制構築 ●「ヒトES細胞のバンキング・提供」 に関しては、2009年12月にガイドラインの策定を 完了した。 ●「iPS細胞の評価」 については、現在基準を策定中である。 ●その他、カナダ幹細胞ネットワークが生命倫理学者を交えた国際ワークショップ を2009年7月に開催し、iPS細胞の倫理的な作成と普及のために、具体的に 検討すべき倫理的課題をセル誌上で発表した。それらは、①プライバシーの保護、 ②同意および同意の撤回、③細胞提供者の権利の及ぶ範囲、④知的財産に 関する課題、⑤iPS 細胞の倫理的使い方、⑥臨床応用に向けた課題、の6つである。 Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved. 20