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海外調査依頼内容 - CLAIR(クレア)一般財団法人自治体国際化協会
海外調査依頼内容 1 回答日:平成 24 年9月 14 日 2 依頼者名:堺市支部 3 調査依頼事項:堺の刃物職人による米国での包丁鍛治の実演について 4 調査対象国又は対象地域等:アメリカ 5 調査の趣旨(調査結果の利用目的・時期を含め具体的に): 平成24年8月17日(金)~18日(土)に米国の有力キッチン用品店等の招聘により 堺から刃物職人3名が渡米し、ニューヨークで包丁鍛冶の実演を行うため、その活動 についての調査(キッチン用品店、来客者等への聞き取り、活動状況報告など)を行 い、PR資料としての使用する他(時期未定) 、今後の堺打刃物を中心とする地場産品 の海外市場開拓に向けての参考資料とする。 6 調査内容 ニューヨークのマンハッタン地区(8月 17 日)及びブルックリン地区(8月 18 日) で実施される包丁鍛冶実演の実地調査。 堺の刃物職人による米国での鍛冶実演についての報告 自治体国際化協会 ニューヨーク事務所 大野鮎子 1 鍛冶実演ツアーの概要 2012年(平成24年)8月12日(日)から8月18日(土)の7日間、米国の4つの州において包丁 鍛冶の実演が行われ、総勢1,050名の集客があった。日本の伝統的な刃物産地・堺から招聘 された鍛冶師の榎並正氏と谷有三氏、銘入れ・研ぎの大江章雅氏の3名は、包丁製造工程の 中でも最も興味深い火入れの作業に加え、銘入れ、研ぎを熱演。 イベントを主催した、ジャパニーズ・カリナリー・アート・ネットワーク(Japanese Culinary Art Network :以下、J-CAN)は米系の有力キッチン・ストアーによるバイヤーズ・グループで、日本 製品の高品質性、技術、職人気質、伝統、斬新さなどの特質を高く評価し、米国市場で日本製 品の販売を広げている。J-CANの代表は、キッチン用品店「The Brooklyn Kitchen」オーナー の Harry Rosenblum氏。 イベントは全米の都市に点在するJ-CAN会員の店舗や工場で実施され、カリフォルニア州 においてはソノマバレー、ペタルマ、サンマテオ、サンフランシスコ、ミネソタ州ではミネアポリス、 ジョージア州はデケーター、ニューヨーク州はマンハッタン、ラインベック、ブルックリンで実施さ れた。 2 鍛冶実演ツアーのスケジュール 月/日 開催場所 1 カリフォルニア州 ソノマバレー キッチン用品店「Sign of The Bear」 2 カリフォルニア州 ペタルマ 刃物専門店「Sonoma Cutlery」 3 カリフォルニア州 サンマテオ キッチン用品店「Perfect Edge」 4 カリフォルニア州 サンフランシスコ 包丁専門店「Town Cutler」 8/14(火) 5 ミネソタ州 ミネアポリス キッチン用品店「Kitchen Window」 8/15(水) 6 ジョージア州 デケーター キッチン用品店「Cook’s Warehouse」 8/16(木) 7 ジョージア州 デケーター キッチン用品店「Cook’s Warehouse」 8 ニューヨーク州 マンハッタン ジェームズ・ビアード財団庭園内 スポンサー キッチン用品店「Bowery Kitchen Supply」 9 ニューヨーク州 ラインベック キッチン用品店「Warren Kitchen & Cutlery」 10 ニューヨーク州 ブルックリン スモーガスバーグ スポンサー キッチン用品店「The Brooklyn Kitchen」 8/12(日) 8/13(月) 8/17(金) 8/18(土) 1 3 菊一ニューヨーク社長・柳澤育代氏による報告 ■8月12日 ソノマバレー・ペタルマ 初日の実演で、榎並氏と谷氏の鍛治、大江氏の銘切りは、堺の包丁を米国の皆様に知ってい ただく素晴らしい機会になると確信した。 ソノマバレーでは、少なくとも100名の集客効果があり、包丁も飛ぶように売れたとキッチン用 品店「Sign of The Bear」オーナーのスティーブ夫妻は大変喜んでおられた。カリフォルニアは 火事の危険性から火を使うイベントに非常に厳しく、夫妻は、ソノマバレーでのイベント実現ま で、町の公聴会に22回も出席したと笑いながら話しておられた。 また、J-CANのそれぞれの店がローカルの雑誌、新聞社にプレスリリースを行うなど独自に宣 伝をうち、集客につとめている。ネットワークの横の繋がりで、準備が必要なものを連絡し合い、 実演先で問題が起きないよう努力されている。 ■8月13日 サンマテオ・サンフランシスコ ソノマバレーの後、サンフランシスコ地域の2箇所でも実演を行ない、カリフォルニアでは総勢 300名のお客様に包丁鍛治を披露。榎並氏、谷氏は現地で支給された慣れない炉も難なく使 用され、スケジュールどおりに進んでいる。 ■8月14日 ミネアポリス ミネアポリスでの実演会場は、ミネアポリス市内最大級のキッチン用品店で、職人の皆さんが 堺から特別に持ってこられた包丁が、ほぼ完売する盛況ぶり。ミネアポリスでの実演は、日本 の貴重な文化として鍛治実演が評価されたものと推測される。実演先のキッチン用品店オー ナーも、堺の刃物職人が披露する技術に大変感心し、実演の機会を大変喜んでおられた。 ■8月15、16日 デケーター デケーターでは、鍛冶イベントとして事前に販売したチケットが両日ともに完売。また2日目の 16日には、在アトランタ日本国総領事館から宮森丈治首席領事が見学に来られ、アトランタの 土地で日本の文化を広げていることに対する謝辞と今後のアトランタでの活動にも期待したい との言葉があった。 ■8月18日 ブルックリン ブルックリンのスモーガスバーグでは在ニューヨーク日本国総領事館の木暮雅和領事が見学 に来られ、鍛冶職人の匠の技に感心されていた。木暮領事は日本の文化を米国に紹介するこ とを任務のひとつとされており、J-CANのイベントがその意味で非常に良い機会であったと感 謝されていた。今後もこのような取組みがあれば協力したいとの申し出をいただいた。 2 4 来客者数(柳澤氏からの聴き取り情報) ■8月12日~13日 カリフォルニア州 ソノマバレー ペタルマ サンマテオ サンフランシスコ 計 約100名 約50名 約100名 約50名 約300名 ■8月14日~16日 ミネソタ州、ジョージア州 ミネアポリス デケーター① デケーター② 計 約200名 約100名 約100名 約400名 ■8月17日~18日 ニューヨーク州 マンハッタン ラインベック ブルックリン 計 約50名 約100名 約200名 約350名 3 合計 約1050名 5 取材報告 マンハッタン ジェームズ・ビアード財団庭園での鍛冶実演 8月17日(金) 10:00~12:00 実演のスポンサー: 「Bowery Kitchen Supplies」 ■第1回目 鍛冶実演 (10:00~11:00) 来客者は約20名、スタッフや関係者を含めると40名ほどが見守る中、米国料理界で最も権威 ある団体と称される「ジェームズ・ビアード財団」の庭園を会場に、1回目の実演が行われた。 はじめに鍛冶実演ツアーの主催者であるJ-CAN代表のHarry Rosenblum氏から来場者へ挨拶 とJ-CANの説明があり、続いて、菊一ニューヨーク社長の柳澤育代氏から挨拶と会社説明、堺の 刃物職人の紹介があり、その後、米国西本貿易株式会社ニューヨーク支店長である鈴木喬久氏 から短い挨拶があった。 榎並氏が地金を炉に入れ熱したあと谷氏がハンマーで叩く工程を実演すると、観客から体験し たい人を募り、数名が名乗りをあげて作業を体験した。体験者は、「思ったよりもハンマーが重た い」、「地金の中心を打ち込むのが難しかった」と感想を話していた。 そのあと、地金の上に刃金を取り付ける「刃金付け」の作業をし、「泥塗り」、「焼き戻し」工程を 披露したのち、大江氏にバトンタッチして包丁の柄を取り付ける作業を紹介して実演は終了した。 3名の職人に会場から大きな拍手が送られた。 実演後、ほとんどの来場者が会場2階に設けられたビデオ上映会場に移動し、菊一製作の堺 の刃物職人による包丁の製造工程の映像を鑑賞した。 ■第2回目 鍛冶実演 (11:15~11:45) 本日2度目の実演であったことと、新しい来場者が約10名ほどであったことから、準備や説明 が短時間で済み、ハンマー打ち体験に1回目より多くの人が参加した。 観客の中には、実際に堺を訪問し榎並氏の工房で包丁作りを体験したことのある人もいた。堺 の刃物まつりについて質問されたため、10月の「堺まつり」と2月の「堺刃物まつり」を紹介。 4 ■写真 左から榎並氏、谷氏、大江氏、菊一文殊四郎包永 の松岡会長ご夫妻、柳澤社長ご夫妻 実演会場の様子 鍛冶実演の様子 J-CAN 代表の Rosenblum 氏による挨拶 柳澤氏の挨拶と職人の紹介 地金を炉で熱する工程(榎並氏) 5 ハンマー打ちの実演と来場者によるハンマー打ち体験の様子 包丁の柄取り付け(大江氏) 観客による泥塗りと焼きもどし作業の体験 包丁の製造工程の映像を鑑賞する様子(左)、包丁の販売風景(中央)、会場入り口(右) 6 ■実演のスポンサー: Bowery Kitchen Supplies ※店舗に実演スペースがないためジェームズ・ビアード財団の庭園を借りて実施。 Bowery Kitchen Supplies (http://www.bowerykitchens.com/index.html ) 店舗はチェルシーマーケット内 (http://www.chelseamarket.com/ ) 住所:88 10th Avenue, New York, NY 10011 TEL: 212-376-4982 オーナー Robyn Coval氏 オーナー Howard Nourieli氏 スタッフ Marissa Sanchez氏 オーナーのNouriei氏は、2010年10月に堺にて包丁作りを体験(http://bowerykitchen.blogspot. com/2010_11_01_archive.html)されており、年度内に再び堺を訪問予定とのことである。 ■堺職人感想 【大江氏】 ・ どの場所でも非常に喜んでもらえており、堺の技術を披露する良い機会になった。 ・ 日本では観客からこれほど良いリアクションがもらえないため、職人のモチベーションを上げ るにも良い機会である。今後もこのような機会があれば、若い職人を順番に参加させたい。 【榎並氏】 ・ 日程がタイトで体は疲れ気味であるが、たくさんの方に喜んでもらえて精神的には元気である。 来客者にサインを求められるなどスターになった気分である。 ・ こちらで使用している炉はガスバーナーで温度を上げるため温度調整が難しく、最初の数日 は苦労した(現在は慣れた)。 ・ 今後も、小鍛冶会(榎並氏が代表を務める堺の若手鍛冶グループ)の活動を支援してくれる J-CANのような団体と積極的に連携していきたい。 【谷氏】 ・ 米国人は日本人より反応がよく大変喜んでもらえるため実演のし甲斐があり、励みになる。来 客者にサインを求められるなどスターになった気分である。 ・ 実演では、鉄を伸ばす工程をハンマーで行うため、少々筋肉痛になっている。 7 ブルックリン スモーガスバーグでの鍛冶実演 8月18日(土) 11:00~15:00 実演のスポンサー: 「The Brooklyn Kitchen」 ■会場の様子と実演および包丁販売の様子 会場となったブルックリンのウィリアムズバーグ・ウォーターフロントでは、5月から11月までの 毎週土曜日に「スモーガスバーグ」が開催され、ホームメイドのスイーツやパン、ジャム、ピクルス、 バーガー、ラーメン、BBQサンドウィッチなどの屋台が並び多くの人で賑わう。 J-CANのブースは会場のほぼ中央にあり、包丁鍛冶の実演スペースとその横にテントを設置。 テントには菊一ブランドの包丁と、スポンサーの「The Brooklyn Kitchen」(J-CAN代表のHarry Rosenblum氏がオーナーのキッチン用品店)の包丁が並べられた。堺市の観光PR用ポスターと 海外販路開拓用のバナーも同テント内に設置し、用意した50部の資料がほぼなくなった。 鍛冶実演は、11時30分、12時15分、13時10分、13時45分、14時30分の計5回行われ、各回に 20~30名が集まった。その中には、鍛冶実演の見学を目的に来たのではない人も多く含まれて いたようである。多くの人が集まるスモーガスバーグを会場にしたことで、より多くの人に包丁を PRすることができ、堺市のプロモーションにもなった。 Rosenblum氏が解説を加えながら各回約30分の実演、その後、テントに誘導して包丁を販売。 包丁をその場で購入すると全て20%引きになること、さらに銘入れ職人(大江氏)に名前を彫って もらえるということで、「The Brooklyn Kitchen」の包丁販売は大変盛況だったようである。 ■写真 テントの様子(銘入れのサービスと値引きがあり包丁はよく売れていた) 8 堺関連のポスターとバナーを設置(配布資料もほぼなくなった) スモーガスバーグに来ていた多くの来場者が鍛冶実演を見学 クロージング・プレスレセプション 8月18日(土) 17:00~19:00 会場:「The Brooklyn Kitchen」 実演ツアーを締めくくるクロージング・プレスレセプションがJ-CAN代表のHarry Rosenblum氏が 経営するキッチン用品店「The Brooklyn Kitchen」にて行われた。 雑誌記者や写真家など事前に申し込みのあったプレス関係者に加え、ツアーで実演した堺の刃 物職人やJ-CAN関係者、地元のナイフ職人、キッチン用品店オーナー、貿易商社の関係者など 50名ほどが集まった。 プレス関係者による取材は会場内でそれぞれ個別に行われ、主にJ-CAN代表のRosenblum氏 や菊一ニューヨーク社長の柳澤氏が対応。最後は関係者による記念撮影と閉会の挨拶が行わ れ終了した。 9 ■写真 記者(左から2人目)の取材を受ける関係者 閉会の挨拶 J-CAN 関係者集合写真 ブルックリンキッチンで取り扱っている包丁 来堺経験があり、堺での鍛冶修行を希望しているナ イフ職人のマライア氏(右から2人目)と堺の刃物職 人の皆さん 写真家の Adam 氏(左)は堺の刃物職人を撮影する ため年内にも堺を訪問予定。 右は京都市から JNTO へ派遣されている西松氏 10