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呼吸器疾患患者に適した洗髪体位の検討
呼吸器疾患患者に適した洗髪体位の検討 ーセミファーラ一位と前屈位を比較して一 B棟 8階 O福 山 景 子 佐 藤 恵 美 2 . 実験方法 I.はじめに 1)環境条件 洗髪介助は、患者の負担が最小限で、より 5年 1 0月 1 0日 (1)実験期間:平成 1 効果的な結果を得ることが望ましい。呼吸器・ 24日 感染症・血液内科(以後、当病棟とする)で ( 2 ) 室温は 24土 2C、湿度は 20%前後 は、現在、移動可能な患者に対し、椅子に座 0 に設定した。 り前屈位で洗髪を実施している。しかし、そ 2) 洗髪条件 の体位における筋負担が大きく、パイタルサ インの変動があることは、すでに研究されて 文献の検討により以アのようにした。湯温 呼吸器疾患患者に対しても適切な体 は 38~ 40C、使用シャンプー量計 6ml おり 1) 0 位とはいえない。そこで、昨年私たちは、健 リンス 3mlとした。全被験者とも、 1 康成人を対象とし、呼吸器疾患患者にとって 目の洗髪は前屈位で行い、約 1週間後にセミ 安楽とされているセミファーラ一位と前屈位 ファーラ一位で、実施した。洗髪手順は表 1 での洗髪を実施し比較、検討した。その結果、 示す。 表 I 洗髪手順とパイタルサイン測定時間 前屈位洗髪では血圧、脈拍、呼気炭酸ガ、ス分 技術 圧(以下 EtC02 とする)の上昇を認め、実施 手順の概略 l 準 後のアンケートでも前屈位洗髪は、頚部、腰 備 測定時間 (分) 順序 -モニター類装着 -首にタオルを巻きケープを 着ける白 部などに苦痛を感じ、また、洗髪過程におい ー頭髪をブラッシングする。 て呼吸苦の訴えもあった。その結果をもとに、 2 安 座{立にて 5分間安静 ( j ) 0 ' 頭髪に湯をかける。 ②1 5 " 静 今回、呼吸器疾患患者を対象として、安全安 3 洗 楽な洗髪体位を導きだすことを目的とし両体 つ 位で洗髪を実施した。 -シャンプーをつけ洗う。 ③1 ' 0 5 " -すすぐ。 @1'25" -シャンプーをつけ洗う ( 2度 ⑤2 ' 1 0 " 目 ) 。 -すすぐ。 1 .研究方法 ' 1 0 " ⑤3 04'10" リンスをつけすすぐ。 1.被験者:研究の趣旨に同意の得られた 髪をタオルで包み底位に戻 4 整 56~72 歳の肺癌の男性患者 3 名(肺部分 髪 す 。 E 切除術施行経験あり)と間質性肺炎の男性患 ③5 ' 0 0 " タオルドライの後、ドライ ヤーをかける。 ③8 ' 0 0 " ⑩8 ' 3 0 " -プラシで髪を整える。 者 2 名、 HJ 分類は I~n 。であった。髪 5 . 安 5cmまでとした。 は頭頂部より 1 静 座位にて 5分間安静。 3 ' 3 0 " ⑪1 ハ u n u 時間経過および手順を一定にするために 了後アンケートを実施した。呼吸苦の程度に テープレコーダーを用い再生しながら行っ o r g S c a l eを使用し、測定した(表 ついては B た。実施時は看護師 1名が洗髪し、 1名が記 2 )。 録した。被験者の洗髪は 2回とも同一看護 表2 B orgS c a l e 師が行った。また、セミファーラ一位は、文 O 献検討 2) により以下の方法で、行った。受水 全くなし 0 . 5 ごくごくわずか 槽に、プラスチック製のザルとビニールクッ ションで作成した頭支台を固定した。また、 頚部への負担を軽減させるため頚部と受水槽 との接触部分にタオル、レストンを巻きクッ ションとした。リクライニング式洗髪イス在 使用し、被験者にとって安楽な体位を設定し 1 ごくわずか 2 軽度 3 中等度 4 いくぶんきつい 5 きつい 6 実施した。 7 3) 実験手順 大変きつい 8 ( 1 ) 実験時間 9 洗髪前後 5分間は安静とした。洗髪に要 10 最大 極めてきつい する時間は文献検討により 8分 30秒とした。 したがって、被験者が実験に要するすべての 11.実験結果 時聞は 18分 30秒とした。 00とし、前屈位、セ 座位安静時の値を 1 ( 2 ) 測定方法と測定内容 ミファーラ一位それぞ、れの洗髪動作における 実験中の血圧値・脈拍数・呼吸回数・酸 血圧・脈拍・呼吸回数・ S p o2・E t c o2 の平均 2とする)は、ライ 素飽和濃度(以下旬 0 値を指数で表したものが図 1'"図 6である。 フスコープベッドサイドモニター (BSM- また、前屈位とセミファーラ一位そ比較する 2301、日本光電社製)を用いて、 E t C 0 2は ため二元配置分散分析を使用し有意差を求め NPB75Etc02(ネルコア社製)を用いて、経 た 。 時的に測定した。実験開始前、心電図モニ 1.洗髪諸動作と血圧・脈拍数 ターを装着、左腕にマンシェットを巻き、右 体位別に被験者 5名の洗髪行為全体にお p02モニターを装着し、鼻には 手第 3指に S ける血圧の平均を見たところ、収縮期血圧・ カニューラを装着した。被験者の動作中のパ 拡張期血圧は、有意差は認めなかった。洗髪 t C 0 2を表 1に示す時聞に測 イタルサインと E 動作別に拡張期血圧の変動を評価してみる 定した。 と、すすぎ時に上昇する傾向にあった。また、 ( 3 ) アンケート調査 前屈位洗髪では、終了時、前屈姿勢から坐位 洗髪体位は適当で、あったか、洗髪中の呼吸 に戻る際に収縮期血圧の上昇を認めた。 苦の有無、洗髪中に苦痛を感じた体の部位に 脈拍の平均は、有意差を認めなかった。し ついて前屈位、セミファーラ一位の各実験終 かしシャンプー、すすぎ時に前屈位において 日 U Spo2の平均については、で有意差は認め 脈拍の上昇を認めた。 2. 洗髪諸動作と呼吸回数・ Spo2 ・E t c o2 なかったもののセミファーラ一位は一貫して 高い傾向にあった。 呼吸回数の平均については、有意差は認め E t c o2の 平 均 に つ い て は 、 有 意 差 ( p< なかったが、前屈位ではすすぎ時に呼吸回数 0.000 を認めた。 は減少傾向にあった。 。 / . . . ノ0 号 古 1 1 2 1 1 0 1 1 0 呼 1 0 8 収 塁間 1 0 6 縮 期 血 圧 平 均 値 1 0 4 霊 1 0 2 姿勢 平 均 120 80 姿勢 1 凹 口 直 { 指 98 数 10 前回 セミ 60 セミ 96 口 70 前屈 1 0 1 1 1 1 時間 時間 図 4 洗髪中の呼吸回数の平均値 図 1 洗髪中の収縮期血圧の平均値 9 也 1凹 9 也 110 5 1 0 8 拡 張 期 血 1 0 6 圧 平 1 0 2 1 0 0 . 0 動 1 0 4 脈 雲 均 100 値 指 回 数 姿勢 喜 6 4 99 1 1 0 姿勢 9 9 . 0 ロ前屈 平 均 口前毘 E コ 9 9 . 5 飽 和 1 3 値曲馬 指 守 セミ 1 1 数 1 0 1 1 E 時間 時間 図 5 洗髪中の Sp02の平均値 図 2 洗髪中の拡張期血圧の平均値 号 色 104 120 号 也 1 0 2 脈 拍 110 呼 気 炭 酸 1 0 0 平 均 富田 支1 凹 姿勢 数 ロ 2 94 1 1 0 分 庄 前屈 平 均 値叩 セミ 指 数 1 1 時間 1 10 1 1 時間 図 3 洗髪中の脈拍の平均値 図 6 洗髪中の EtC02の平均値 セ ミ A 円 BA マ ハ U 3 . アンケート結果 く慢性閉塞性肺疾患の軽症例には、①呼吸補 体位については、 3名がセミファーラー位 助筋の活動が抑制され、横隔膜の活動が増加、 の方が快適で、あったと答え、残りの 2名はど ②一回換気量が増大し換気率が改善、③呼吸 ちらも快適で、あったと答えていた。また、前 困難感が減少、④機能的残気量、酸素消費量 屈位洗髪では、 l名が腰部に苦痛を感じたと の減少等の効果が証明されている。今回の結 答えていた。また、前屈位洗髪時に l名が 果でも、セミファーラ一位では呼吸苦の訴え 呼吸苦を感じたと答えていた。ボルグスケー もなく、呼吸機能への影響も少なかった。 ルは lであった。 今回の実験結果と、昨年の健康成人に対す る洗髪実施結果での、体位の違いによる循環 I V . 考察 血液量、呼吸機能におよぽす影響、また、患 今回、前屈位・セミファーラー位と 2体 者の苦痛、呼吸苦の自覚という点もふまえ検 位での洗髪を実施し血圧・脈拍において有意 討すると、呼吸器疾患患者には、前屈位より 差は認めなかったものの前屈位洗髪のすすぎ もセミファーラ一位洗髪の方が、適している 時と座位に戻る際に血圧の上昇を認めた。そ と考える。 の理由として佐藤ら 5) は洗髪において前屈 姿勢による頚部の屈曲で、頭音防、ら心臓への 引用・参考文献 血流が急激に変化すること、頚部屈曲で血管 1)島田多佳子:生活行動援助技術としての 抵抗が高まることによって心臓の循環血液量 洗髪に関する文献研究と今後の課題、鹿応 にも影響しさらに酸素の消費が増加している 、 1~ 1 3、 1 9 9 9 義塾看護短期大学紀要 9 ことからも末梢の酸素の供給を補うために血 圧脈拍が上昇すると述べている。 2) 新納貴子:洗髪時の身体的苦痛の軽減 洗髪車補助物品の工夫在試みて一、クリニ p o2は 2体位闘で差 今回の結果では、 S 3 ( 5 )、 1 9 9 2 カルスタディ、 1 は認めなかった。その点については、比較 3) 板橋繁:ケアにつながる解剖・生理学辞 p o2が良好な患者で実施しており、酸素 的S 典(肺理学療法のための解剖生理学)、臨 解離曲線を考えると動脈酸素分圧の変化が 5 ( 1 3 )、 1 9 3 5~ 1 9 4 1、 1 9 9 9 床看護、 2 S p o2に現れにくく明らかな変動がみられな 4) 上本野唱子:体位変化に伴う呼吸機能 t c o2は、前屈位が有 かったと考えられる。 E 評価、月刊ナーシング、 19(9) 、 140~ 意に上昇した。その原因として、①前屈姿勢 1 4 2、1 9 9 9 に伴い胸郭が狭小し横隔膜の運動も制限され 5) 佐藤愛紀子:前屈位洗髪の負荷と効果 効果的な換気が行えなかったこと、②顔に71< 1 ) 、 5 3 6 4、 の 検 討 、 新 大 医 短 紀 要 4( が掛かることで息止めをしていたことが考え 1 9 9 0 られる。前屈位における呼吸数の減少は、呼 吸状態の不安定な患者にとっては低酸素血症 を惹起させることとなる。 セミフアーラ一位は横隔膜呼吸を行いやす - 103-