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主翼の設計 ~紙飛行機を用いた最も飛距離の出る主翼の導出~

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主翼の設計 ~紙飛行機を用いた最も飛距離の出る主翼の導出~
主翼の設計 ~紙飛行機を用いた最も飛距離の出る主翼の導出~
2 班 青木育也
1.はじめに
飛行機には前後方向に推進力,抗力,上下方向に
揚力,重力がかかっている.慣れ親しんだ紙飛行機
について解析,実験していきたいと思う.
紙飛行機をより飛ばすには揚力を大きくし抗力を少
なくすることになる.ここで揚力Lは
L=1/2(空気密度)(速度)²(翼の面積)(揚力係数) (1)
で求められる.揚力係数を変えることで揚力を増や
すことが可能で迎え角(翼の角度)を大きくする,
または翼の形状を変えると揚力係数を増やすことが
できる.しかし揚力係数の増加には限界があり航空
機の一般的な翼型では 16 度から 20 度あたりが揚力
係数増加の限界である 1).抗力も同じ式であらわさ
れ,抗力係数も翼の形と迎え角によるのでその二つ
の要素を変えていって最も飛んだものが適切な主翼
といえる.
また翼のアスペクト比という値がある.アスペク
ト比は
(アスペクト比)=(翼幅)²/(翼の面積) (2)
で求められる.詰まりアスペクト比とは主翼の縦と
横の長さの比である 2).アスペクト比は実際に飛行
機を作るときに用いられ,空力的にはアスペクト比
が大きいほど主翼に働く誘導抵抗は低下する.誘導
抵抗とは翼の端に生じる渦によって生じる力である.
飛行中の翼の上面は静圧が低く,下面は静圧が高く
なっている.空気は圧力の高いほうから低いほうへ
と流れようとするため,翼の端では下から上へ回り
込もうとする空気の流れができてこれが渦となる 1).
この誘導抵抗を小さくするには翼端を細くして翼面
積を大きくすることになり,その結果アスペクト比
はなるべく大きな値をとることが望ましい.ただし
アスペクト比が大きいと構造強度が低下してしまう.
実際に様々なアスペクト比の主翼を用いて材料,機
体にあった主翼を求める.
2.実験 1(翼の形状と迎え角を変化させる)
2.1 準備 1 では主翼を設計する上で考慮すべき二
つの式を紹介した.まずは(1)を用いて揚力がより大
きくなり,抗力がより小さくなるような主翼の形と
迎え角を求める.その結果から,実験 2 で用いるた
めに,飛距離の出る翼の形状と迎え角の組み合わせ
を絞る.
図1 紙飛行機の機体
図2 発射台
揚力抗力の数式より揚力係数,抗力係数以外の値
を一定にしなければならない.速度を一定にするた
めに紙飛行機を飛ばすための発射台を作る.図2の
ように牛乳パックを切り開いて図のように折り,折
径 6cm の輪ゴムを先端に取り付ける.図の谷の部分
に紙飛行機をはさみ,地上 30cm の位置から水平に
発射する.
翼の面積は 48cm²で一定とした.
用いた主翼の形は矩形翼,先細翼,後進翼,楕円
翼,三角翼である.矩形型は長方形の翼である.先
細型はいわゆるテーパー翼のことで実機の世界では
最もよく使用されている 3).ふたつの等脚台形を長
辺で合わせた形である.後進型は先細型の翼の台形
の進行方向の辺を伸ばしたものである.すべての翼
の中心の幅は 3cm であり翼幅は 16cm とした.アス
ペクト比を 5.33 に統一した.
また飛距離を主翼だけの影響にするために,機体
はすべて図1のものを用いる.機体長は 18cm,機
体幅は 2cm である.垂直尾翼は高さ 1.5cm,底辺
2.6cm の直角三角形で水平尾翼は翼幅 4.8cm,中心
の長さは 1.6cm,端の長さは 0.8cm である.また主
翼の直前に重心を取り付けた.材料は画用紙(ダイ
ソーでハツ切り 15 枚入りのもの)を用いる.実験
は各条件で 10 回ずつ行う.
2.2 結果 図 3(a)からすべての翼の形において迎え
角が 3°のとき平均飛距離が最大になっている.ま
た迎え角を 8°12°としていくとすべて飛距離が落
ちた.また 0°よりは角度をつけたほうが飛距離は
伸びた.以上から角度をつけることは揚力にもつな
がるがつけすぎると抵抗が大きくなり飛距離が落ち
るのだと考えられる.また翼の形はできるだけ空気
の流れを乱さないものが適切と思われる.三角型は
空気の流れは比較的乱していないと考えられるが他
の主翼と面積を合わせるために縦に長い形になって
しまったので構造強度が足りてなかったのだと考え
られる.図 3(b)を見ると 12°とした時に楕円以外の
主翼で最大飛距離と最小飛距離の差が大きくなって
いる.一番大きく抵抗を受け安定しないのだと思わ
れる.0°としたときと平均飛距離が最大であった
3°のときの値は小さくなっていて安定している.
3°は四つの角度の中で最も空気の流れを抗力でな
く揚力に変えている.この結果から矩形 3°先細 3°
後進 3°を実験2で用いる.
3.2 結果 図 4(a)からすべての主翼においてアスペ
クト比 8 のとき平均飛距離が最大になっている.ア
スペクト比 5 のときよりも 8 のときのほうが平均飛
距離は大きいことから構造強度低下の影響より誘導
抵抗の低下の影響のほうが大きいことがわかる.ま
た 8 から 10,12 と増やしていくとその逆であるこ
とがわかる.よって飛ばすのに最も適したアスペク
ト比は 8 から 10 の間であるとわかる.また後進は
斜めについていてほかの二つより構造強度が低いか
ら 10 から 15 にしたときの下げ幅が大きい.図 4(b)
から飛距離最大であるアスペクト比 8 のときに最も
安定している.さらにアスペクト比を上げると安定
性はなくなりさらに上げると構造強度が足りなくな
り短い飛距離で安定してくる.
(a)
(a)
(b)
図4 三種類の翼のアスペクト比を変化させて飛ば
した結果
(b)
図3 翼の形状と迎え角を変化させて飛ばした結果
3.実験 2(三種類の翼のアスペクト比を変え
る)
3.1 準備 アスペクト比 5,8,10,15 の主翼を矩
形,先細,後進でそれぞれ用意する.また面積は
60cm2 で一定とする.一例として矩形のアスペクト
比 5 の主翼の翼幅は 17.3cm である.他は実験 1 に
同じとする.
4.結論
(1)(2)の主翼の設計に関わる式から,最も飛距離の出
る主翼を設計することを目的として二つの実験を行
ってきた.まず空気の流れを乱さない翼の形を考え
揚力がよく生まれる迎え角を実験で求める.今回の
ように画用紙でやる場合構造強度の足りない主翼で
は飛距離は伸びない.またアスペクト比は 8~10 の
中から探す.
参考文献
1) 高木雄一,航空工学の本,日刊工業新聞社
2) 白鳥敬, 飛行機がわかる,技術評論社(2007)
3) 北代省三, 模型飛行機入門(2012)
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