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平成25年2月25日 平成24年度 教師海外研修・海外研修報告書

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平成25年2月25日 平成24年度 教師海外研修・海外研修報告書
平成25年2月25日
平成24年度 教師海外研修・海外研修報告書
氏名 深 浦 聡 明
1.今回の研修参加に際して、特に主眼をおいた点
(1)帰国後の開発教育を実践していくためにはスリランカにおける種々の情報や資料についての収集をする
こと。その際、インターネットや、本等で調べた知識と違った情報がないか注意した。
(2)日本とスリランカにおける両国間の歴史的な関わりの記録および内戦や津波の被害について、日本では
入手できないような生の情報(画像、映像、音声等)を持ち帰ること。
(3)現地で活躍している青年海外協力隊員や日本人ボランティアスタッフの活動を通して、日本人がスリラ
ンカの中で具体的にどのように活躍しているかを知ること。また、JICA の活動についてより具体的な
理解をすること。
2.視察を通して参考になったこと/疑問に思ったこと
(1)スリランカという島国には異なった言語、文字、宗教、文化を持った国民が住んでいる。多数派である
シンハラ人優遇政策に抵抗し、少数派タミル人が分離独立運動をおこし、それが結果的にはLTTE対
政府軍の内戦を引き起こしたことは理解できた。だが、今でもシンハラ人とタミル人は本当に憎み合っ
ているのかという点では疑問に思われる。タミル人の多く住む北東部は別としても、たとえばコロンボ
のような大都市では、両民族がお互いの違いを認めあえないと、それぞれの生活は成り立っていかない
はずである。自分が見たコロンボは活気あふれる大都会であり、治安も悪くはなかった。このような中
で2年前まで内戦があった両民族は共存しあえているが、宗教や文化の違いがあっても、お互いがそれ
ぞれの違いを尊重しあうという姿勢がどの程度まで根付いているのかという点もとても気になった。
(2) スリランカの内戦では、最終的には政府が力でLTTEを押さえ込む形になり終結した。一般的に仏
教信者は他宗教に比べて戦争を好まない傾向があるが、そうした中でなぜ慈愛深いはずの仏教信者の
政府軍が、戦争終結という大義名分があったにせよ、全く罪のない女性や子供を中心に一般住民を多
数殺戮できたのかがとても疑問に残る。政府軍の指令のもとでは内戦に勝つことが絶対であり、それ
が一網打尽兵器であるクラスター爆弾の使用まで至ったことに関しては、今でも世界でも非難の的と
なっている。二期目に入ったラジャ・パクサ現大統領の政治に対しても不満を持つ国民が多数いると
いう現実に対して、今後のスリランカのあり方がどのように変化していこうとしているのかが非常に
気になった。
3.教育指導への活用について考えたこと
世界中で起こっている戦争について、日々のニュースではテレビ・新聞などのメディアを通して、真
の意味での戦争の悲惨さを具体的に認識しづらい状況に現在の日本人は置かれている。自分自身、今回
の海外研修での生々しい現実を見ることがなければ、昨今のアルジェリアやマリ等で起きている問題に
対して、強い関心も芽生えることなく、テロや戦争の恐ろしさや邪悪さについて今ほど深刻に受け止め
考えることはなかったろうと思う。
スリランカ北部で30年を過ごした税所さんのお話を聞くにつれ、戦争は無法状態を生み出し、この
世の地獄をつくるという認識が深まったと思う。現在の日本が如何に平和な状態であり、戦争ほど残酷
で惨いことはないこと。そのことを生徒に伝える義務があると強く感じるようになった。こちらが現地
で学んだ事を真剣に訴え、伝えれば、生徒達にその思いが響き、深刻に受け止めてもらえることも帰国
後の授業で分かった。生徒達は本当に純粋であり、感受性も豊かである。だからこそ、一人でも多くの
生徒達に対して、現在世界で起こっている戦争や、それを陰で支えている軍事産業等も含め、様々な知
識などを教える必要を強く感じた。
4.研修に関する全般的な所見/意見について
正直なところ、今回の海外研修については学校現場の見学が皆無であったことが非常に残念であった。
しかし、帰国後むしろ地球規模で起こっている戦争や内紛に目を向けさせてくれるきっかけとなる生々し
い現実を見ることができたことは、自分のこれまでの世界平和や戦争についての認識を深めるのに大いに
役立ったし、教育現場限定の狭い視野ではなく、より広い視野に立つための大きな一歩になったと思う。
今回の研修で、自分の人生に対する考え方はかなり大きく変わったし、より多くの教育に携わる方々にも、
一人でも多く参加して欲しいと思うようになった。
5.JICAに対する要望・提言
視野を戦争や世界平和に向けさせる教育は、マスメディア統制がある限りは難しいものとなってくる。
今回のような過去の内戦現場に入り込んでの研修で得られた経験は今後の日本を背負う子供達にとって、
戦争の残酷さを教えるためには語り継がねばならないものであり、グローバル化の進む現代なればこそ、
可能な限り増やしていくべきであると思う。現在この研修で設けられている、同一教員の2度以上の参加
制限や年齢制限についてもある程度緩和してもいいのではと思う。世界に対して興味関心が強い教育者が
より増加し、目の前の子供達に伝えることができるかどうかが一番大切な事であるから、そのような実行
力・行動力をもった教員をより多く募り、教育現場に生かすことが出来ることが最も大切なことと考える。
また、教師としての立場からは、一校でもいいので学校を訪問し、授業見学したり生徒達との交流を学
校現場にも持ち帰ることができればより充実した研修になったと思われる。
6.今後の研修参加者へのアドバイス
年末ということもあり、時期的に今回の研修は大変な時期での実施であったが、自分としては学校種も
違う多くの海外経験豊富な仲間達との出会いがあり、自分の視野や見聞を広める意味で参加してよかった
と満足している。自分は運良く二度目の挑戦で夢が叶ったが、もしも参加するか否か迷っているようであ
れば、思い切って受験してみることである。そして参加することになった場合は、生徒への教育を念頭に
置きながら、思う存分事前に考えていたことを可能な限り実践してみることを薦める。
また、研修を充実したものにするためには、事前準備が不可欠である。今回の自分はもっと多くの予
備知識を蓄えて参加すべきだったと反省している。教師の日々の生活は確かに多忙で大変である。しかし、
今回のような研修では自分の価値観や人生や運命を変えるような大きな経験や出会いがあったりする。今
後の参加を希望される皆様にもそのような大きな出会いが待っていると私は信じている。人生は短い。ど
うせ生きるのなら「あのときこうしておけばよかった云々」といった台詞をはくことは避けたい。その意
味では、思い切って参加してみることを薦めたいし、これまでの狭い日本での教師社会では全く見ること
の出来なかった、世界のリアルな一面が見ることの重要性を感じ取ってもらいたい。
今回のスリランカチームは、他の8名の海外経験豊富なメンバーと違い、私だけは15年ぶりの海外旅
行であり、正直なところ不安な気持もあったが、他のメンバー達が、そんな自分をフォローしてくれたこ
とが嬉しかった。最高の雰囲気の中で研修ができたと思う。チームの皆様には感謝の気持ちで一杯である。
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