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キーサイト・テクノロジー データ圧縮、ストリーミングによる 長
キーサイト・テクノロジー データ圧縮、ストリーミングによる 長時間レーダー・パルス信号の 作成手法 Application Brief はじめに 高度なレーダ・システムの要件が進化するにつれて、探索、距離、トラッキングなどの主な仕様に性能の向上が 求められています。その結果、信号はますます高速になっています。また、信号フォーマットと変調方式(パルス ド、その他)もさらに複雑化し、広い帯域幅が必要になっています。この傾向は、電子戦システムを構築するエン ジニアにとって大きな課題です。 このようなシステムのテストを正確に行うには、より現実に近い信号シナリオを使ったテストが必要で、非常に 長い再生時間の(場合によっては無限の)複雑な信号シナリオが必要です。任意波形発生器(AWG)はこれらの信号 出力源として、最も有効なソリューションになります。 広帯域のクリーンなレーダ・パルスを作成するには、12ビットまたは14ビットの分解能と8 ∼ 12 GSa/sのサン プリング・レートを備えたAWGが最適です。既存のAWGは、長時間の信号シナリオを大容量メモリと高度なシー ケンス機能を用いて作成していました。しかし、それらをもってしても、レーダ・テストに必要な非常に長い再 生時間は実現できないという問題がありました。そこで、大容量の外部マス・ストレージから圧縮された波形デー タをAWGにストリーミングして、AWGハードウェア内のDSPリアルタイム処理で波形データ再生し、波形出力 を行う方法は、無限の再生時間を実現するための最適な方法の1つです。 このアプリケーション・ノートでは、このようなアプリケーションで広帯域かつ無限の再生時間を実現するため の3つの手法(アイドル挿入、デジタル・アップコンバート、DSP処理)についてご説明します。クラス最高のキー サイト・テクノロジーのAWG、M8190Aでこの手法を使用すれば、最高2 GHzの変調帯域幅のパルスド・レーダ 信号を高性能RAIDアレイまたは半導体ディスク・ドライブ(SSD)からストリーミングし、従来の方法ではなしえ なかった長時間再生を実現します。 03 | キーサイト | データ圧縮、ストリーミングによる長時間レーダー・パルス信号の作成手法 – Application Brief 課題 通常、AWGは、大容量サンプル・メモリや高度なシーケンス機能 など、幅広い機能を備えています。これらを使用すれば、再生時 間が長い複雑な信号シーケンスを作成できます。 M8190A AWGでデータ圧縮の手法を利用すれば、最高の帯域幅 でレーダ・パルスをストリーミングできます。以下の3つの手法 この方法で長い信号シナリオを作成できますが、2つの大きな制限 があります。1つは、内蔵メモリ容量とシーケンス機能を駆使して も、再生時間がやはり有限になることです。例えば、12 GSa/sの 信号を16 Gサンプルの内蔵メモリで再生すると、1.33秒しか再生 できず、レーダ・アプリケーションには不十分です。 – 外部トリガを用いて、アイドル挿入部を効率的に活用しデー タを圧縮する – デジタル・アップコンバートにより、ストレージする波形デー タをベースバンド信号にまで圧縮する – 周波数/振幅/位相の変更シナリオをDSP制御で実現する もう1つの制限は、定義済みのシーケンスで決められたシナリオ パターンしか出力できず、信号環境の変化に応じたパラメータ変 更が即座かつ柔軟に変えられないことです。これは動的な信号シ ナリオが必要なレーダー・アプリケーションでは大きな欠点です。 ソリューションの概要 AWGにレーダ・パルスをストリーミングできれば、このような制 限がなくなります。パルス・ストリーミングはリアルタイムで出 力できますが、あらかじめ計算されたものをRAIDシステムやSSD などのストレージ・デバイスから再生することもできます(図1)。 また、取り込んだ波形をそのまま再生、もしくは、リアルタイム 処理/編集して再生するキャプチャー・アンド・プレイバックの 手法も可能です。 しかし、12GSa/s、12ビット分解能で波形をストリーミングする には、144 Gbpsまたは18 Gbpsのスループット・レートが必要 です。このような高速データ・レートは、高性能PCの演算能力の 限界を超え、最高速マス・ストレージ・デバイスのスループット 性能も容易に超えてしまいます。 により、実現できます。 圧縮された波形データは、高い忠実度を持って所望の波形データ に戻し、再生されなければいけません。この点でM8190Aは優れ ていて、ハードウェアの最高速度で、3つのすべての手法の伸張 をサポートしています。これにより、圧縮された広帯域レーダ・ パルスは、数Gbpsの比較的低いデータ転送レートでAWGにスト リーミングできます。AWGはASICでそのストリームを所望の波 形データに戻し、最高の信号品質で、数GHzまでのIFの広帯域レー ダ・パルスを送信できます。 データ・ストリームは、さまざまなデータ・ソースから構成でき ますが、そのうちの2つがレーダ・アプリケーションに最適です。 – RAIDアレイ:複数のハード・ディスク・ドライブ(HDD)で 構成され、ストレージ容量は最大で数100Tバイトです。リー ド性能は、多くの場合、1 ∼ 2 Gbpsの範囲です。 – 高性能SSD:ストレージ容量は最大1 TBで、リード性能は 3 ∼ 4 Gbpsです。 これらのデバイスからレーダ・パルスをストリーミングする場合、 後で再生できるように、事前に波形を計算して保存する必要があ ります。これにより、ストリーミング・システムのホストPCの CPUは低性能でも問題ありません。 RAID PCIe AWG PCIe リニア・チャープ幅2 GHzのレーダ・パルス 図1. PC、RAIDアレイ、AWGによる代表的なストリーミング構成。 04 | キーサイト | データ圧縮、ストリーミングによる長時間レーダー・パルス信号の作成手法 – Application Brief 外部イベントに応じてリアルタイムの変更が必要なアプリケー ションでは、レーダ・パルス・パラメータを即座に変更しなけれ ばなりません。これは、リアルタイム自動データ作成機能と呼ば れます。この手法では、外部PCがストリーム波形データをリアル タイムに計算します。CPUの処理能力とアルゴリズムの効率とい う2つの要因によってシステム性能が決まります。 AWGは、PCとAWG間のダウンロード性能の違いを補償する機能 が必要です。AWGの内蔵波形メモリはリングバッファ構造となっ ており、PCがレーダ・パルスをリングバッファに書き込むのと同 時 にAWGが バ ッ フ ァ を 読 み 込 み、 そ の 情 報 をDAコ ン バ ー タ (DAC)に送出して、信号を出力できます。 トリガ トリガ トリガ トリガ レーダ・パルス 1 レーダ・パルス 2 レーダ・パルス 3 レーダ・パルス 4 レーダ・パルス 5 トリガ トリガ トリガ 各圧縮法の動作の概要 3つの手法(アイドル挿入、デジタル・アップコンバート、DSP処理) レーダ・パルス N 図2. トリガ・ストリーミングによって、M8190Aメモリのリングバッファ を活用できます。 の概要を紹介し、各々の長所と短所について説明します。 トリガを使ってアイドル信号挿入を効率的に 多くの場合、パルスのオン/オフ比は、1:5 ∼ 1:100です。オフ 位相の間は信号は送信されないため、オン・ステートのパルス情 報のみをAWGにストリーミングして波形圧縮を実現します。これ により、圧縮率はオン/オフ比に等しくなります。 周期トリガ信号をパルス繰り返し周波数でAWGに印加すれば、各 パルスが出力されます。これは、AWG内部の「トリガ・ストリー ミング」によって実行されます。AWGは、周期トリガ信号の繰り 返し周波数で、レーダ・パルスを出力します。 M8190A AWGの波形メモリはリングバッファで構成され、これ は個別のセグメントに分割されています。この場合、各セグメン トには、PCからストリーミングされた1つのレーダ・パルスが含 まれています(図2)。最初のトリガを受信すれば、レーダ・パル ス1が出力されます。パルスとパルスの間のアイドル部において、 次のパルスのデータをリングバッファにストリームさせておくこ とが可能です。そして次のトリガで次のパルスを出力します。 この方法が非常に有効な場合があります。例えば、2 GHz帯域幅の 信号を作成するには、AWGは4.8 GSa/sのサンプリング・レート で動作しなければなりません。14ビット分解能でレーダ・パルス をストリーミングする伸張データ・レートは67.2 Gbpsになります。 オン/オフ比が1:20の場合、圧縮データ・レートは3.36 Gbpsなの で、PCIe®でも対応できます。 デジタル・アップコンバートと補間 アップコンバートは、通常、アナログ、ソフトウェア、デジタル の3つの手法のうちの1つで実行されます。アナログ・アップコン バートは従来の方法です。プラットフォームはベクトル信号発生 器で、同相/直交位相(I/Q)データを受信し、変調信号を必要な 搬送周波数で出力します。これには2つの欠点があります。アッ プコンバート処理で、イメージ信号歪みやキャリア・フィードス ルーなどの歪みが発生することです。さらに、このような問題を 修正するために、手動でアップコンバート経路のインピーダンス を調整する必要があり、時間がかかります。 ソフトウェア・アップコンバートは、MATLABなどのアプリケー ションでI/Qデータを計算し、演算によりIFにアップコンバートし て波形をAWGにダウンロードする手法です。信号品質は非常に優 れていますが、再生時間に問題があります。例えば、アプリケー ションで、1.9 ∼ 2.0 GHzのレンジで100 MHz帯域幅の信号が必 要な場合、AWGに必要なサンプリング・レートは最大IF周波数で 決まるので、2.0 GHzの2.4倍の4.8 GSa/sになります。これに相 当するI/Qベースバンド信号のサンプリング・レートを求めると、 100 MHzの2.4倍の240 MSa/sになります。したがって、同じメ モリ容量の場合、IFの再生時間は20分の1になります。 05 | キーサイト | データ圧縮、ストリーミングによる長時間レーダー・パルス信号の作成手法 – Application Brief 一方で、デジタル・アップコンバートが最も好ましい手法です。 図3のように、M8190A AWGに実装されているデジタル・アップ コンバートは、係数3 ∼ 48のデジタル復元フィルタを使用した補 間器と数値制御発信器(NCO)によって構成されています。これに よってベースバンドIQ信号を即座に必要な周波数帯の信号にコン バート(変換)することが可能です。この手法には、注目に値する 利点が2つあります。 – DSPによって数学的にコンバートを行うため、アナログアッ プコンバート時のようなスプリアスは最小であること(図4) – ストレージされる波形データは、IF信号ではなくベースバン ドIQ信号にまで圧縮が可能になること デジタル・アップ・コンバート I/Q乗算器 ベースバンド 信号発生器 補間器 DAC I+Q データ 数値制御 発振器 (DDSエンジン) 図3. M8190A AWGに実装されたデジタル・アップコンバートのブロック図 です。 補間、デジタル・フィルタリング、I/Qデジタル変調を組み合わ せて使用すれば、メモリをフル活用して歪みのないIF信号を出力 できるという利点があります(図4)。 前述のソフトウェア・アップコンバートの例では、100 MHz帯域 幅の信号を発生するために、I/Qサンプル・ペアを120 MSa/sで 発生させる必要があります。AWGを補間モード48で動作させる と、DACは120 MSa/sの48倍の5.76 GSa/sで動作します。 NCOは、1.95 GHzの中心周波数を発生するように調整できます。 したがって、デジタル・アップコンバートに必要なストリーミン グ・インタフェース経由のデータ・スループットは、ソフトウェア・ コンバージョンの20分の1になります。 レーダー信号のパラメータをDSP処理で 変更する 移動レーダ・ターゲットの反射によりドップラ効果が発生し、反 射パルスの周波数がわずかに変化します。このような信号も、信 号発生中にNCO設定を変更すれば発生させられます。 M8190AのNCOは72ビット分解能で、これは数pHzの周波数分解 能に相当します。これにより、搬送周波数が少しだけ異なるレー ダ・パルスを別にストリーミングする必要はありません。この種 の パ ル ス を1回 だ けPCか らAWGに ス ト リ ー ミ ン グ し、AWGの DSPを用いて即座でそれを変更し、搬送周波数が少しだけ異なる レーダ・パルスを何回も送出することができます。 似た方法で、AWGのDSPエンジンの内蔵アンプを用いて振幅を 変更できます。この場合も、連続パルスで異なるのは振幅だけな ので、レーダ・パルスを1回だけストリーミングすれば、AWG内 部のDSPを用いて振幅をリアルタイムに変更できます。 図4. デジタル・アップコンバートで作成した2 GHz幅の20本のマルチトー ン信号です。 まとめ データ圧縮は、レーダ・パルスの長時間再生に特に有効な手法で す。この手法により、PCコントローラからAWGにパルス・デー タをストリーミングするのに必要な転送速度を低減できます。 M8190A AWGは、データ圧縮された波形を忠実に所望の波形デー タにもどず機能をハードウェアでサポートしていて、10以上の圧 縮係数を使用できます。このアプリケーション・ノートで紹介し たストリーミング手法を使用すれば、パルスド・レーダ・システ ムのテストで最大2 GHzの変調帯域幅を実現できます。 関連情報 – Data sheet:『Keysight M8190A 任意波形発生器』、カタロ グ番号5990-7516JAJP – Application note:『Baseband Upconversion to Desired Intermediate Frequency with Regard to Signal Quality and Play Time』、カタログ番号5991-1649EN – Application note :『 Frequency-Agile Complex Signal Simulation with the Keysight M8190A Arbitrary Waveform Generator』、カタログ番号5991-1656EN 06 | キーサイト | データ圧縮、ストリーミングによる長時間レーダー・パルス信号の作成手法 – Application Brief myKeysight www.keysight.co.jp/find/mykeysight ご使用製品の管理に必要な情報を即座に手に入れることができます。 www.axiestandard.org AXIe(AdvancedTCA® Extensions for Instrumentation and Test)は、 AdvancedTCA®を汎用テストおよび半導体テスト向けに拡張したオープン規格です。 Keysightは、AXIeコンソーシアムの設立メンバです。 www.lxistandard.org LXIは、Webへのアクセスを可能にするイーサネット・ベースのテスト・システム用 インタフェースです。Keysightは、LXIコンソーシアムの設立メンバです。 www.pxisa.org PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)モジュラ測定システムは、PCベースの堅 牢な高性能測定/自動化システムを実現します。 www.keysight.com/quality Keysight Technologies, Inc. DEKRA Certified ISO 9001:2008 Quality Management System 契約販売店 www.keysight.co.jp/find/channelpartners キーサイト契約販売店からもご購入頂けます。 お気軽にお問い合わせください。 PICMGおよびPICMGロゴ、CompactPCIおよびCompactPCIロゴ、AdvancedTCAおよび AdvancedTCAロゴは、PCI Industrial Computers Manufacturers Groupの登録商標です。 “PCIe”および“PCI EXPRESS”は、PCI-SIGの登録商標/サービス・マークです。 www.keysight.co.jp/find/modular www.keysight.co.jp/find/awg-apps キーサイト・テクノロジー合同会社 本社〒 192-8550 東京都八王子市高倉町 9-1 計測お客様窓口 受付時間 9:00-18:00(土・日・祭日を除く) TEL ■■0120-421-345 (042-656-7832) FAX ■■0120-421-678 (042-656-7840) Email [email protected] 電子計測ホームページ www.keysight.co.jp © Keysight Technologies, 2014 Published in Japan, October 23, 2014 5991-3937JAJP 0000-00DEP www.keysight.co.jp