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1 3者(議会・行政・市民)の関係について

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1 3者(議会・行政・市民)の関係について
1 3者(議会・行政・市民)の関係について
我が国の地方自治制度においては、主権者である市民が執行機関の長である市長と議決
機関である市議会の議員を直接選挙で選び、市民が間接的に行政運営に参画することとな
っている。市民から選ばれた市長及び市議会議員はともに市民の代表として、それぞれの
職務について市民に対する責任を負っており、市長と市議会が車の両輪のように協力する
とともに、相互に牽制し合うことによって独断や専行を防止し、公正、公平、民主的な行
政運営を行うことが期待される。
また、市民による自治を徹底するため、直接参政の手段として直接請求、住民投票、住
民監査請求及び住民訴訟の制度が保障されているとともに、市議会には市長に対する不信
任議決権が、市長には議会解散権が与えられている。
このように議会、行政、市民は、それぞれの権利・権能に基づき、それぞれが役割をバ
ランスよく果たしていくことによって、自治体における円滑な行政運営と地域社会の福祉
の向上に寄与することが求められている。
地方分権に関する法整備等の進展に伴い、市民が地域社会の課題に対して、これまで以
上に関心を持つようになった。そしてそれらの課題解決に向けても積極的に参加する市民
が多くなってきた。また、地域における各種ボランティア団体や市民団体の活動が活発化
することにより、地方自治の形は、いわゆる役所任せの自治から行政への参画や行政との
協働を進める参加型の自治へと急速に変貌しつつある。
言うまでもなく、自治の主体は市民である。自治体における議会及び行政は市民の信託
により成立するものである以上、議会と行政及び市民の関係を明確化することが自治体に
課せられた命題であると言える。お任せ民主主義から参加型民主主義へと市民が主体的に
かかわる自治体経営を志向している今こそ、3者がそれぞれの役割を果たしていくことに
責任を持ち、総体的なレベルアップを図っていくことが求められている。とりわけ議会に
おいては、市民との関係についてさらなる検証を行い、両者の関係をより充実させること
が求められている。
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2 議会について
市議会は、市民による直接選挙で選ばれた議員によって構成される議決機関であり、市
民を代表する意思決定機関として、条例の制定改廃、予算の議決、決算の認定など、市が
執行する施策・事業の主要な意思を決定するほか、監視権や調査権の行使により、市長が
行う行政運営を民主的に監視し牽制する権限等を持っているが、すべての行政運営に対し
て意思決定を行う権限を持つものではなく、その内容及び範囲は地方自治法に規定すると
ころによるものである。
また、地方分権の進展と行政に対する市民の関心の高まりを受け、全国各地で議会改革
へ向けた取り組みが進められている中、本市議会においても開かれた議会、市民にわかり
やすい議会を目指し、市民からの情報収集や市民に対する情報提供のあり方等について検
討することが求められていたところである。
当委員会における調査研究の中では、議会の権能と責務、議員の責務と倫理、監視・牽
制機能の強化という議会についての根本的な課題について改めて議論するとともに、行政
からの情報収集及び市民への情報公開、政策立案機能の強化という今日的な課題、また、
今後の課題として議会基本条例について一定の議論を行った。
検討課題ごとの結論は下記のとおりである。
(1) 議会の権能と責務
① 地方分権時代における市民自治の確立のためには、議会の権能と責務を再確認する
必要がある。
② 議会の権能とは、地方自治法の定めるところにより、条例の制定改廃、予算の決定
などの議決、市政に関する事項で別に法令及び条例で定められた事項について議決
することであり、市民の意思が市政に反映され、適正に市政運営が行われているか
を監視し、牽制することである。
③ 議会の責務は、会議を公開し、議会が保有する情報を市民と共有し、開かれた議会
運営に努めることである。そのためには、みずからの権能と責務に関し基本的な定
めを行い、市民に対し議会の役割を明確にすべきである。
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(2) 議員の責務と倫理
① 議員は、立法機関の一員として、調査研究、政策立案活動及び審議を通じて、その
役割を果たす責務を負う。
② 議員は、議案提出権を積極的に行使し、条例などの制定に努める。
③ 政治倫理に関する規定については、条例化を見据えてその確立を図る。
(3) 情報の収集と公開
① 議会と市民あるいは団体との距離を縮めるために、議会情報の公開と意見聴取・収
集等の新たなルールづくりが必要である。
② 議会図書室の機能を充実させ、一般の利用も含め、活用を図る。
(4) 議員立法など政策立案機能の強化
① 議員の政策立案能力の強化という視点から、情報を確保するルールが求められてい
る。
② 議会として政策立案機能を向上させることは重要な課題であり、議員立法の機会を
ふやすための環境整備が必要である。
③ 政策立案機能、監視・牽制機能の強化の観点から、専門家の知見を効率的に活用で
きるようにすることが重要である。
④ 政策立案機能の強化の観点から、議員間の円滑な意見交換を行う場として、政策研
究会、懇談会等の設置を検討する。
(5) 監視・牽制機能の強化
① 監視・牽制機能を強化するために、必要に応じて、議決事件の範囲拡大を検討する。
② 監視機能の強化という観点から、行政から議会への報告については、より積極的な
対応を求める。
③ 諮問機関等各種審議会における審議経過を担当の常任委員会に適時報告することが
必要である。
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(6) 議会基本条例の制定
① 議会基本条例の制定を視野に入れて、今後議論を深めていく。
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3 行政について
行政は、市の事務に関する管理執行権を持つ市長とその補助職員が行う行政事務の執行
機関である。市長の権限については、議案提出、予算の調製と執行、地方税の賦課徴収な
ど、地方自治法に概要が規定されている。
行政は、住民福祉の増進を図るために、自主的かつ総合的に事務を執行する役割を広く
担っている。
昨今、地域社会の課題に対する市民意識の高まりや、行政への市民参画、行政と市民と
の協働が進展することにより、市政運営や政策立案に際し、行政はこれまで以上に市民へ
の情報提供を行うとともに、市民からの意見聴取を十分に行い、開かれた行政運営に努め
ることが求められている。
当委員会における調査研究の中では、改めて行政の責務及び職員の責務について議論し
たほか、市民の苦情を救済する制度について、市民への情報公開と政策形成過程における
市民参加、さらには望ましい組織・機構並びに行政評価について、提案を含めて議論した。
検討課題ごとの結論は下記のとおりである。
(1) 行政の責務
① 行政は、法令に基づいて、その財産を適正に管理し、事務を処理し、市民の生命と
財産を守り、福祉の増進を図るために自主的かつ総合的に事務を執行する責務があ
る。
(2) 職員の責務
① 職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために、勤務しなければならない。
② 職員は、法令を遵守し、市民の視点に立ち、公正かつ能率的に職務を遂行するとと
もに、市民への説明責任を負う。
③ 職員は、職務に専念するとともに、常に能力向上に努めなければならない。
(3) 市民の苦情救済の制度化
① 市民の苦情救済制度について検討し制度化する必要がある。
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(4) 政策形成過程の情報の公開
① 行政から市民へ積極的に情報を提供するとともに、行政への市民参画を促す取り組
みが必要である。
(5) 政策形成過程における市民参加(住民投票制度・パブリックコメント)
① 行政は、議会制民主主義を補完し、市民自治を促進する観点から、住民の意見を広
く把握するよう努めなければならない。
(6) 望ましい機構・組織のあり方(人事評価)
① 行政の機構・組織編成においては、市民生活の実態やニーズを十分に踏まえて、市
民にわかりやすい体制を構築すべきである。
② 行政は、やる気と活気がみなぎる職員を育成する人事評価のあり方を確立すべきで
ある。
③ 行政は、風通しのよい職場づくりに努め、公益通報者保護制度を実効性のあるもの
とするため、第三者機関の設置等を含め、検討すべきである。
(7) 行政評価
① 行政は、行政評価を生かした取り組みを推進するため、早期に行政評価制度を確立
しなければならない。
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4 市民について
地方自治体における主権者は市民であり、市民は行政が行う役務の提供を等しく受ける
権利を持つと同時に、その負担を受け持つ義務を負っている。
地方自治制度は、原則として代表民主制であり、市民は市長及び市議会議員を選挙によ
って選ぶことにより間接的に行政運営に参画することとされているが、市民による自治を
図るため、住民投票、住民監査請求及び住民訴訟という直接参政の制度が認められている。
当委員会における調査研究の中では、これまでの役所任せの自治から参加型の自治へと、
地方自治の姿が大きく変化する中で、改めて市民の権利・責務について議論するとともに、
これからの市民自治の担い手として地域コミュニティーについても議論した。
検討課題ごとの結論は下記のとおりである。
(1) 市民の権利・責務(住民投票制度・パブリックコメント)
① 市民には、市が保有する情報を知る権利、自治に参加する権利、市が行う行政サー
ビスを受ける権利があり、一方、主権者として互いに尊重しながら自治に参加し、
みずからの発言と行動に責任を持ち、行政運営と行政サービスに伴う負担を受け持
つ責務がある。
(2) 地域コミュニティーづくり
① 市民は自治の担い手としての地域コミュニティーの役割と責務を認識し、地域コミ
ュニティーを守り育てるよう努める。
② 地域コミュニティーにおいては、リーダーの育成が必要である。
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