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第24回世界改革教会連盟総会

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第24回世界改革教会連盟総会
October 2
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5
研究資料
―2
6
5―
第2
4回世界改革教会連盟総会*
―― WORLD ALLIANCE OF REFORMED CHURCHES24th GENERAL COUNCIL ACCRA, GHANA ――
森
第24回世界改革教会連盟総会
(WORLD ALLIANCE
OF REFORMED CHURCHES24th GENERAL
1)
COUNCIL)
川
甫**
わっても心身に染み込んだかのようであった。
なお、日本キリスト教会の菊地純子牧師2)は常
は、2004年7月30日から8月13日、ガーナ共和国、
任委員(世界各地域から1名、計6名)に選出さ
アクラで、「すべての者が生命を豊かに受けるた
れた。
めに」
(『ヨハネ福音書』10:10)を主題として、
奴隷収容地下牢訪問は pilgrimage(巡礼、聖地
開催された。ガーナの貧困は予め聞いてはいた
旅行)と位置づけられていた。差別の極致とも言
が、空港に到着した時に、まず、実感した。灯火
うべき奴隷収容地下牢は人間の暗い罪を痛感せず
は暗く、宿舎までの建物も平屋で大変貧弱であっ
にはいられない重々しい、陰鬱な遺跡であった。
た。そ う し た 貧 し さ の 中 で、ガ ー ナ の 教 会 は
週末の近国、近隣地方の教会訪問は、多くのグ
WARC の2週間にわたる総会のため、よく準備
ループに分かれて実施された。私が訪れたペキ
し、人々も暖かく歓迎してくださった。
(アクラからバスで3時間)では、午後2時から
主な会場はガーナ国立大学と GIMPA(ガーナ
10時前まで、4つの部落を訪問したが、いずれの
経営行政学院)であった。ガーナ大学はキャンパ
村でも大人も子供も集落を挙げて、踊って歌って
スが広大で、街の家屋と異なって立派な建物で
大歓迎してくれた。酋長とも抱き合って挨拶した
あった。しかし、深い側溝がいたるところにあ
が、酋長の存在を初めて体験した。
り、夜は電灯が極めて少なく、総会案内書に注意
書きがあったが、落ちて負傷する人が幾人もあっ
世界各地域、各国から参加した、多くの人種、
た。編者も夜、側溝に落ち、膝から出血したが、
民族よりなる世界改革教会連盟の総会において、
翌朝、大学の診療所に行くと、同じような負傷者
拡大するアジア・アフリカ、とりわけ、アフリカ
たちに出会った。数日後、このことを同僚たちに
の諸教会は強烈に主張した。7年前のデブレツェ
話している目の前で、白人の女性が側溝に落ち、
ン総会から周到に準備されてきたアクラ総会は、
ずるずると体が溝の中に沈んでいった。近くにい
真剣にその課題に応えようとした。本研究資料で
た男性数人でこの女性を引きずり上げた。GIMPA
は、1)「基調講演」によって、アクラ総会の基
はこの総会を目指して、完工しようとしたそうだ
本的性格を、2)「世界改革派教会同盟第2
4回総
が、一応出来上がっていたけれども、総会開催の
会参加報告」によって、その審議、決議を、3)
期間中も工事は続けられていた。この2会場で主
{第24回世界改革教会連盟参加報告}によって、
題講演、分科会、部会が熱心に続けられた。毎
アクラ総会、ガーナ教会などの印象を提示しよう
朝、礼拝で始まり、夕食後は祈祷会が持たれた。
としている。これら3文書 は、WARC のこのア
朝から 夜 ま で 讃 美 と 祈 り、講 演 と 討 議 で ス ケ
クラ総会の状況を適切に提示、表現した大変優れ
ジュールはぎっしりと詰まっていた。リズム感豊
たものであるが、字数制限のため、残念ながら抜
かな歌と踊りの強烈な讃美は2週間の総会が終
粋にとどまった。
*
キーワード:世界改革教会連盟、ガーナ、アフリカ・キリスト教諸教会
関西学院大学名誉教授
1)以下、略語 WARC を用いる。
2)日本キリスト教会神学校旧約学講師、世界改革教会連盟第24回総会期・常任委員
**
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社 会 学 部 紀 要 第9
9号
本研究資料の構成は、上記3文書に他の資料を
付して、以下の通りとなる。
ロッパ大陸から西側の外の世界、すなわち、南半
球のアフリカ、アジア、ラテン・アメリカ、オセ
アニアの諸大陸へと移動した。20数億を超えるキ
1)基調講演「すべての者が生命を豊かに受け
るために」〈地の果てから〉
リスト教人口のうち、10億人以上がこれらの南側
諸国に住み、ヨーロッパとアメリカのキリスト教
泉3)
人口は、8億人強、約3分の1といわれる。これ
2)「世界改革派教会同盟4)第24回総会参加報告」
は WARC の場合も他の教派の場合も同じ傾向で
議長
宋盛
吉田
隆5)
3)「第24回世界改革教会連盟総会参加報告」
遠藤
正子6)
ある。
このキリスト教の北から南への重心の移動は、
第2次世界大戦後に始まり、私たちの予想を超え
4)地図
た猛スピードで世界化した経済と政治的地政学に
5)ロゴ・マーク
よって加速された。このようにドラマティックに
6)主題讃美歌
激変し、軸足が移行した世界の中で、教会はこの
7)写真
現実をどう読み、解釈し、新しい道を見出すか。
大きな挑戦と課題である。
1)基調講演「すべての者が生命を豊か
7)
に受けるために」〈地の果てから〉
議長 宋盛泉博士
抄訳 小池創造牧師8)
7年前のハンガリー・デブレツェンの総会(主
題「不正義(悪)の鎖を断て」)から今回のガーナ
・アクラ総会に至るまで、総会は何とかして遅れ
を取り戻そうとして意図的に、従来のように伝統
的な教義や神学についての限りない議論の継続や
歴史はしばしば逆転し、逆流する。イエスは一
繰り返しをあえて中断し、今日の南側の教会とキ
粒のからし種のような弱小の弟子たちに向かって
リスト者が苦しみ戦っている現実の諸問題に取り
「あなた方の上に聖霊が降りると、あなたがたは
組むよう仕向けたのである。それは今日の教会の
力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく、
リーダーたちを教会的に訓練し、活性化させ、教
ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至
会が世界の信仰・希望・愛のために用いられる神
るまで、わ た し の 証 人 と な る。
(『使 徒 言 行 録』
の道具であり続けるために、驚くほどの難題の中
1:8)とおっしゃった。そして派遣されたキリス
に立たせ、改革の先陣に立つよう促しているので
ト教は世界宗教となり、地の果てにまで及んだ。
ある。
ところが今や歴史の重心とその軸足は移った。
ところで、今日の世界状況とその挑戦をどのよ
キリスト教的ヨーロッパ・アメリカと言われた世
うに認識し、それと対決するか。現代世界は驕り
界は今や世俗化し、キリスト教の重心は北のヨー
と貪欲、怨念と憎悪、無分別と無節操のうずまく
3)台湾出身、アメリカ・サンフランシスコ太平洋神学校教授。
4)世界改革教会連盟総会のこと。
5)日本キリスト改革派教会仙台教会牧師、神戸改革派神学校講師、訳書に『ハイデルベルク信仰問答』他。
6)日本キリスト教会東京中会連合婦人会委員、日本キリスト教会上田教会長老、翻訳業。
7)小池創造『牧会短信』(日本キリスト教会南浦和教会週報2
0
0
4年 No.3
7∼4
1所収)
8)小池創造(こいけ・そうぞう)1
9
3
1年、長野県に生まれ。1
9
5
7年、青山学院大学文学部神学科卒業。1
9
5
7―1
9
9
1
年、日本キリスト教会北見教会牧師、その間アメリカ・マコーミック神学校に留学。1
9
9
2年―1
9
9
5年、ドイツの
エキュメーニッシュ・フォールム・ベルリン・マルツァーンにおいて協力牧師。1
9
9
5年以来、日本キリスト教
会南浦和教会牧師として現在に至る。著書『田舎伝道者』
、『ベルリン 過去・現在・未来』
(共著)
。訳書 シュ
ラッター『ローマ人への手紙』
、G. P. ピアソン『六月の北見路』
、同『キリストの十字架』
、ヴェントラント『キ
リスト教社会倫理概説』
、『キリスト告白と平和』(ドイツ改革派教会平和宣言)
。D. ボンヘツファー『信じつつ
祈りつつ』
、編訳 ミラン・オポチェンスキー『悪の鎖を断て』ほか。
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傍若無人の世界である。そのような世界の中で、
そして今や、このように対立する世界と民族間
神に仕えるとはどういうことか。イエス・キリス
の癒しと和解、平和と共生を志すわれわれの願い
トが生まれ、生き、死なれた世界もまたそのよう
と行動の中に、聖霊は働き、助け、導いてくださ
な人間世界ではなかったか。イエスはその中で神
る。こ れ か ら の WARC の 旅 の 次 の ス テ ッ プ は
の支配を告げ、十字架上で死んでいかれた。今日
はっきり言って、この〈聖霊〉がわれわえの生活
の時代も不確かさと不安と恐怖に満ち、政治的、
と活動の焦点となるであろう。
経済的、そして、軍事的保護なしには生きられな
い。そのような不安と不確かさ、疑いと恐怖の中
で神に仕えるとはどういうことか。
ところで、傷つき解体崩壊した人間共同体の回
復と再構築こそ21世紀が取り組むべき大きなテー
マと挑戦である。その再生と回復のために中心的
イエスを取り囲み、そこに臨んだ運命は、われ
に働く力は〈聖霊〉である。その意味で、現在の
われを襲う運命よりはるかに厳しく、すさまじも
歴史の逆転と大きな分岐点に立って、教会とキリ
のではなかったか。そのような中でイエスはどの
スト者が何をなすべきかを教えるのも聖霊であ
ように神に仕えることができたか。イエスの献身
る。
と奉仕と犠牲の生涯の鍵――それは〈聖霊〉であ
り、聖霊の導きであった。イエスの生涯と宣教は
今日の人間社会の分裂と崩壊は、政治的、経済
聖霊によって霊感を受け鼓舞された生涯であり、
的原因によるものだけでなく、宗教的要因によっ
宣教活動に他ならなかった。
てもたらされた流血や争いに起因するものであ
る。愛と平和と救いを説く宗教が世界の不安、恐
WARC に連なる教会もキリスト者もこのイエ
怖、憎悪、破綻を生み出すという皮肉な現実。今
スを奮い立たせた〈聖霊〉によって、今の時代と
日、宗教的原理主義が勃興し、多くの社会に恐怖
世界の中で、神の道具・証人として働かなければ
を与え、不安と緊張を煽っている。
ならない。今日、世界の教会はカリスマ的〈聖
霊〉を強調し、激増・拡大するペンテコステ派の
神と宣教の名において、熱情的に〈異教徒〉の
教会の挑戦を受けている。
「すべてのものが命を
魂を救うと唱導しながら、しばしば人間共同体を
豊かに受けるために」を主題とする今回の総会に
分裂させ、もろもろの絆を断ち切り、社会不安を
おいて、〈経済的正義と地球を保全するための契
巻き起こし、土着の文化を破壊してしまったの
約〉という課題に取り組むに至ったのは、聖霊の
は、キリスト教ではなったか。キリスト教は西
働きなしに可能であったか。
ヨーロッパから〈地の果てまで〉発展拡大し、そ
連盟の歴史を顧みると、われわれが取り組み
の拡張の過程の中で争いと崩壊をもたらし、今
闘ってきた諸課題の中で、聖霊の働きなしにでき
や、〈地の果てから〉語り伝えるキリスト者や教
たことがあったか。また、われわれの平穏無事を
会の、あの心を引き裂くような物語と歴史を聞か
考える以前に、痛み苦しむ人々の平安と安全と福
なければならないのである。
祉を何とかしようと志すなら、そのとき聖霊はわ
れわれのうちに働いていないだろうか。人間の力
このように社会・政治的、また、宗教的、文化
より、より偉大な力に頼ろうとすることを恐れて
的諸力によって引き裂かれ、傷ついた共同体は回
いる人々を鼓舞するなら、聖霊は確実にわれわれ
復し、再建されねばならない。この共同体の再建
の中に働いているのである。この聖霊の働きなし
こそ、WARC の諸教会とキリスト者が聖霊の呼
にどうして、宗教的、民族的、政治的、経済的に
びかけに応え、聖霊の力によってとりくむよう促
周辺社会に追いやられている人々とわれわれとの
されている課題にほかならない。では、聖霊はど
和解と一致、共に生きるという課題にチャレンジ
のようなキリスト教社会を再構築するよう呼びか
することができようか。
けているのか。
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社 会 学 部 紀 要 第9
9号
教会はつねに、教会の周りとその外にいる人た
かし、〈神の言葉〉はそれにとどまらず、〈癒す言
ちに〈開かれた〉社会を再構築すべきである。改
葉〉、〈赦す言葉〉、〈贖う言葉〉でもある。われわ
宗者を引き入れて自分たちの社会を形成する道具
れは自ら問わねばならない。
「いかにして、経済
として用いたキリスト教宣教は、しばしば〈閉鎖
的、人種的、政治的性差別を正すだけでなく、こ
的〉社会を造る傾向に陥った。そのため教会は自
の〈神の言葉〉をもって癒しの務めに従事するよ
分たちを取り巻く社会から隔離された共同体を形
う教会とキリスト者を励ますこ と が で き る の
成した。したがって、キリスト者は身体的、精神
か」。〈正義〉と〈公平〉を追求するだけでは社会
的(霊的)にもその社会ではまったくの〈外国
を再構築することはできない。正義のための正義
人〉になってしまったのである。7年前、われわ
ではなく、正義と共に癒し、癒しを伴う正義こそ
れはデブレツェン(ハンガリー)において情熱的
その目標でなくてはならない。
に〈不正義(悪)の鎖を断て〉と語った。今それ
イエスは医者であり教師、預言者にして改革者
と同じ情熱を持って、自分たちと違った宗教的信
であった。いやむしろ預言者や改革者よりも癒す
仰に生きている人々の霊性の世界に対するキリス
医者であったと言えよう。福音書で多くの癒しの
ト教の無関心、無神経、無感覚によって造りださ
物語があるのはそのためではないか。世界は癒し
れた〈無知と誤解と緊張の《鎖》と《障害》を断
の言葉と癒しの行為を必要としている。
て〉、と語らねばならない。
イエスの福音による癒しの言葉がキリスト教界
内の対立と分裂を癒す。そしてこの癒しの言葉こ
WARC は過去の過ちを取り返し、外の世界に
そそれぞれの異なった宗教的、文化的伝統をもっ
対し〈開かれた〉ものとなるため、西側(北)の
た人々を隔てる憎悪を癒すのである。またその言
教会とキリスト者に〈地の果てから〉
(南)の教会
葉が老若男女の心と体を癒す。これこそ古代イス
とキリスト者の悲しみに満ちた経験を感知するよ
ラエルの預言者たちの預言の務め、とりわけ神の
う働きかけることができるであろうか。
国を告げるイエスの宣教の中核ではなかったか。
〈地の果てから〉の教会にとって〈全世界教会〉
が協議事項になった契機や背景には、世界各地に
情熱的、扇情的に影響を及ぼし続けるカリスマ的
運動に触発されるところが大きかった。もちろん
)
2)「世界改革派教会同盟9(World
Alliance
10)
of Reformed Churches!WARC)」
(吉田 隆)
このカリスマ的キリスト教は〈聖霊〉理解と経験
においても一面的であり、聖霊の働きの捉え方は
外国教会連絡委員会の決議と指名を受けて、世
恣意的、利己的傾向をもっていて聖書的にも神学
界改革派教会同盟(以下、WARC)」第24回総会
的にも欠陥がある。しかし少なくとも、彼らの運
にオブザーバーとして参加しましたので、以下の
動は人間の落ち着きを失った心や不安、人間生活
通り御報告いたします。
の傷つきやすい弱さに答えているのである。これ
こそ、今日の〈地の果てから〉の教会と〈地の果
!.WARC について
てまで〉の教会にとって〈全世界教会〉の関心事
1.発足:WARC は、107力国215教会(3!
4が南
として協議すべき重要課題にほかならない。
半球)からなる同盟で、7500万以上の会員を
そこでまず、われわれが着手すべきことは、教
有する。1875年に発足した欧米の長老教会か
会を〈癒すことのできる〉社会として装備するこ
らなる同盟と、1891年に発足した会衆派の世
と。改革教会としてのバック・グラウンドと伝統
界会議とが1970年に合同。WARC となった。
をもったわれわれの教会と神学では、〈神の言葉〉
を預言者的・審判的言葉として強調してきた。し
9)日本キリスト教会所属の小池創造牧師と遠藤正子委員は「世界改革教会連盟」という訳語を用いておられる。
1
0)『日本キリスト改革派教会第5
9回大会』2
0
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4年1
0月
October 2
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5
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2.組織:7∼8年毎に開催される総会と、毎年
開 催 さ れ る 執 行 委 員 会、及 び 六 つ の 部 門
2.場所:ガーナ共和国アクラ市ガーナ大学及び
近隣大学
(Theology, Cooporation and Witness, Women
and men, Finance, Communications, Youth)
3.参加者:
によって構成される事務局からなる。その
!代議員参加者数は、場所の影響もあってか、
他、地域毎(ラテン・アメリカ!カリブ・北
前回を下回り、90ヶ国163教会390人(内、女
米!ヨーロッパ!北東アジア!南アフリカ)
性43%・青年1
2%は、前回以上)。しかし、
の集会も中間期に随時開催されている。
招待者やヴィジター!オブザーバー、地元か
らの参加者を含めるとおよそ800名が参加。
3.近年の動向:
1982年(カナダ・オッタワ)アパルトヘイト
が罪であることを宣言。
1989年(韓国・ソウル)女性の教会・社会参
加を強調。
!2002年に加盟した CRCNA(北米キリスト改
革派教会)からもエンゲルハート総書記とブ
リンク教授(カルヴィン神学校)が出席。
CRCNA は、2回 総 会 に 出 席 し た 後 に、
WARC 加盟の是非を再評価するとのこと。
1997年(ハンガリー・デブレツェン)経済の
!日本からは、加盟教会の日本キリスト教会
不公正・環境破壊について会員教会
(代議員2名・ヴィジター3名)、在日大韓基
が認識を深め・教育し・告白するこ
督教会(代議員2名)
、カンバーランド長老
と(processus confessionis)が呼び
教会日本中会(代議 員1名)より参加。ま
掛けられた。
た、総会を支える青年奉仕者(steward)と
※なお、同総会の報告については、第
52回『大会記録』2
11―219頁の牧田
吉和委員11)による報告参照。
して、日本キリスト教会から1名参加。
!日本キリスト改革派教会からは、報告者がオ
ブザーバーとして、また外国教会連絡委員の
森川甫長老夫妻が個人資格で参加した。
4.他団体との関係
!REC(Reformed Ecumenical Council)と1998
4.テーマ
年から定期的対話を開始。REC 加盟教会39
今大会は、新世紀最初の総会にあたり、我々
教会の内、現在、22教会が WARC にも加盟。
の信仰と生を祝うべく「すべての人が全き命
!WCC や LWF(ルター派)と の 共 同 開 催 に つ
を得るために」
(ヨハネ10:10)がテーマと
いては継続審議中。
なった。
“生”に対する今日のあらゆる脅威
・挑戦を確認し、神の御旨を求めることを目
5.公用語:英語・仏語・独語・スペイン語
的として開催された。
!.第24回総会
5.内容
1.日時:2004年7月30日(金)∼8月13日(金)
(1)スケジュール
※報告者は、8月11日まで参加。
初日のオープニング・セレモニー後、毎日
※総会に先立ち、青年と女性のカンファラン
午前8時の朝拝・聖書研究に始まり午後8時
スがそれぞれ開催された。また、総会前と
過ぎの夕拝(晩祷)に終わるスケジュールの
期間中、総会に参加している神学教授陣と
中で、主題講演やプレゼンテーション等によ
地元の神学校とのタイアップによる神学生
る19の全体会・7つの分科会・3つの部会・
のための研修コースも開催。
4つの委員会・3回の地域集会が組み込まれ
た。期問中2度の主日は、最初が独立記念広
1
1)神戸改革派神学校校長
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社 会 学 部 紀 要 第9
9号
場における地元教会との数千人による合同礼
我々は信ずる。神が聖霊の力において、被造
拝、2度目は小グループに分かれて土曜から
物への畏敬・共同体の回復・個人の変革・富の
泊り込みで地元教会への訪問礼拝。その他、
公正な配分・すべての命を祝うためにグローバ
プログラムの一環として、ギニア湾岸に残存
ルな生に対する土台を与えておられることを。
する“奴隷市場”へのツアーがあった。
(2)主題講演・分科会・部会
我々は信ずる。国々や世界大の共同体が人間
の生の家(the household of human life)を築く
会議は、いくつかの主題講演を元に、7
方法は、絶えず神に対して責任を問われるもの
つの分科会に分かれて、今日教会が直面す
であり続けることを。人類は、常に、唯一まこ
る課題を論じ、それらを今度は3つの部会
との神か富や力の神々かの選択を迫られている。
(mission, covenant, spirituality)でそれぞれ
我々は信ずる。今日、とりわけ教会は苦しむ
の視点から論じ直し、最終的に総会全体の告
人々の傍らに立ち、積み重なる経済的不公正と
白文章(牧会的書簡と声明文)に集約させる
環境破壊に直面する大地の叫びをあげるよう召
方向で進められた。
されていることを。そして、公平は大水のよう
主題講演は、議長 の 主 張(文 脈 化・聖 霊
に義は絶えざる河のように流れ下ることを。
の強調・霊性の強調)があちらこちらに散見
我々は信ずる。神は我々をイエス・キリスト
されたが、全体的に前回の総会を踏まえた経
に倣うように召しておられることを。すなわ
済・環境問題等、政治的色彩の濃い内容で
ち、よき音信を貧しい者に健康と癒しを病める
あった。
者にもたらし、自由を囚われ人に平和を戦いの
分科会と主な課題は、以下の通り。
① Healing:病(とりわけ、HIV!Aids)に苦し
む人へのミニストリー。
② Honouring diversity:他民族・宗教・文化
との関わり。
③ Inclusiveness and participation:教会内に
おける差別と参与の問題。
④ Peace:様々な暴力、戦争、死刑制度等の
場に告知し、見捨てられた者や疎外された者た
ちを抱き、多様性を尊重し、女性と男性を教会
と社会におけるパートナーとみなすことを。
我々は信ずる。神の民・キリストの体・御霊
の共同体である教会(congregation)が、あら
ゆる場にあって神の使命(mission)のしるし
・証人・サクラメントとなるよう召されている
ことを。服従が我々の信仰のはかりである。
問題。
⑤ Gender justice:教会内外における女性に
関わる諸問題。
WARC 閉会礼拝のための誓約(Covenant)
我々はあらゆる生に対する神の主権を認識
⑥ Creation:環境破壊、エコロジーの問題。
する。今24回総会の代議員として、我々は宣
⑦ Economic justice:多国籍企業、南北の経
言した。現在のグローバルな経済秩序がその
済格差・経済的不公正の問題。
(3)声明文(Covenanting for Justice)
総会で採択された声明文は、以下の通り。
「信仰告白(Confessing the Faith)
我々は信ずる。創造者であり、あらゆる生の
保持者である神を。この方は世界の癒しと贖い
力を次第に無責任な諸機関の手にゆだねてい
ること。また、人々を商品のように扱い、大
地を略奪していることを。この問題は、我々
の信仰の告白の中心にそのまま関わる。アク
ラを離れるにあたり、我々は共に契約を結ぶ
よう招かれている。
におけるパートナーとして我々を召しておら
れる。
我々は世界改革派教会同盟として自らに誓
我々は信ずる。神がイエス・キリストにおい
う(covenant)。公正な世界経済と被造世界
て、地上における人間性とあらゆる命と共に、
の健全性(integrity)のために、他の教団・
また、そのために契約を結ぶ方として啓示され
エキュメニカルな共同体・他の信仰共同体・
ていることを。
市民運動・民族運動と共に労することを。
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それ故、我々はこの告白をパートナーと協
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1―
分自身と自分の時間と労力を捧げることを。
働する具体的な行為へと翻訳することを模索
する。
我々は WARC の代議員として誓う。この
24回総会の決議を我々を送り出し、また、受
それ故、我々は、我々と我々の子孫が公正
な世界に生きられるように、命を選択する。
(4)新役員(中略)
(5)今後の方針(中略)
け入れる諸教会と忠実に分かち合うことを。
それ故、我々は自らの教会や会衆の会議に
おいて今総会の決議の主唱者となる。
6.評
価
(1)一般的所感
我々は誓う。神の御霊が世の人々に命をも
・エキュメニズムの意味の自覚的な変化が現れ
たらす力を識別することにおいて我らを導い
ている。単なる教会一致運動を超えて、用語
てくださるよう祈ることを。そして、苦難と
の本来の意味(ギリシャ語“oikos”=家)に基
死をもたらすものに反対することができるよ
づき、派生語である教会一致
(ecumenism)
うに。
も世界経済(economy)も環境問題(ecology)
それ故、我々は、苦しむ者、傷ついた人々
と共に歩み、命の神の代理人として、死の諸
力に反対する。
我々は誓う。マモンの神に立ち向かう神の
ミッションの一部となることを。
それ故、我々は貧しい人々とパートナーと
なることが進んでできるよう模索する。
も包括的に一つのこととして捉えようとして
いる。
・同盟そのものも教会間相互の交わりを越え
て、共同体・家族としての相互教育・相互扶
助の側面が強く感じられる。実際、加盟教会
の中には、「政治的に不安定なために教会が
どうなるか分からない。そのため、一つのセ
我々は誓う。環境の乱用に抗して立ち、被
キュリティーとして、国際的な繋がりを付け
造物に対する畏敬と感謝を推進する行動をす
ておくために加盟している」と言っていた教
ることを。
会も。
それ故、我々は、環境保護のために労し、
・(中略)
可能なあらゆる方法で資源を保持することを
(2)消極的評価(中略)
模索する。
(3)積極的評価(中略)
我々は誓う。我々の社会における富の不公
(4)総括的評価(中略)
以下、割愛
正な配分に対して証言し、このグローバルな
経済帝国の諸影響に苦しむ人々との連帯にお
いて立つことを。
それ故、我々は、神の恵みのしるしとして
3)「第24回世界改革教会連盟総会参加報
12)
(遠藤正子)
告」
出て行き、公正な社会を模索する人々と労
する。
○ガーナ
我々は誓う。未来に対して開かれ、あらゆ
今回のテーマと経済危機を協議するため
る時代に命を与える霊性を生き抜き、文化と
に、アフリカの地、ガーナが議場に選ばれた
共同体のなかでイエス・キリストの良き知ら
ことの意義は大きい。ガーナは国を挙げて
せに表現を与えることを。
それ故、我々は、恵みとまことの神との関
係を育むために時間をさく。
(特に、カーナ福音教会とガーナ長老教会の
多大な奉仕に感謝)この総会を迎え、貧困の
中で全力を尽して備え、「この貧しさを見よ」
我々は全世界の他者と共に誓う。我々は、
とばかりに来訪者に国情をさらけ出した。缶
経済と環境の変化と再生と回復の召しに、自
詰状態の会議から開放されて、娑婆に触れる
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4年9月1
3日発行
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社 会 学 部 紀 要 第9
9号
ことができたのは、8月3日の奴隷収容地下
牢訪問と、7∼8日にかけての地域教会訪問
こ と が 多 か っ た。会 期 中、テ ー マ ソ ン グ
“Life in
Fullness”は繰り返し歌われた。郷
で、現地や往復のバス旅行で得難い体験をし
に入れば……ではないが、太鼓交じりの前奏
た。ガーナの国土は日本の約三分の二、人口
が始まると、前後左右で体を揺さぶり始める
約1970万人、多部族国家でそれぞれが異なる
人々につられて、自然に足踏みでリズムを
言語を持ち、公用語は英語。国民の半数がキ
とっているから不思議だ。讃美に関しては、
リスト教徒、15%がイスラム教徒、その他、
「メザシ」のあだ名で知られた不動スタイル
伝統的宗教。首都はアクラ。国土は鉄分を多
のダークダックス(ご存知ですか?)に近い
く含む赤土で、地質は貧しい。主要産業はカ
日本キリスト教会の私は、少々ばつが悪かっ
カオ豆、鉱業(金、その他)、木材。国旗は
た。異 文 化 の な か、「霊 性」を 協 議 す る 場
赤(英領からの独立戦争で流された祖先の
で、「詩とさんびと霊の歌とによって、感謝
血)、黄(金をは じ め と す る 豊 か な 鉱 物 資
して心から神をほめたたえなさい」
(『コロサ
源)、緑(豊かな森林)の三色で、真ん中に
イ』3:16)との御言にあらためて出会った。
黒星(初代大統領を象徴)。
献金にも歌と踊りが伴う。教会での献金
は、英 語 で offering(捧 げ る、差 し 出 す)、
○太鼓はしゃべる
collection(集める)だが、ガーナでは講壇
行く先々に太鼓と歌と踊りがあった。太鼓
前の献金箱に各自が歌い踊りながら捧げに行
はリズムを打つだけでなく、
〔ことば〕を表
く。会衆が多ければ、それだけ献金に費やす
すことをはじめて知った。ガーナの若者に日
時間も長引く。しかも、献金は一度の礼拝の
本の太鼓や鼓は古来の民族信仰や神道に通じ
中で二度、三度は普通だと言う。どの教会も
るものであることを話すと、彼らの場合も同
独立採算で援助を受けていないので、
「まだ
様で、従来の土着信仰、木や石の偶像信仰に
捧げられるのでは……」と促されるとのこと
使われた太鼓を、イエス・キリストを信じる
だった。ちなみに、私が週末に訪問した村の
信仰に取り入れたのだと言う。植民地化に
教会での礼拝は三時間、他の村でも同様か、
よってもたらされたキリスト教と、鎖国4
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あるいはもっと長い教会もあったとのこと。
年後にもたらされた日本のキリスト教、諸国
の文化的背景の違いを思わされた。リズムに
○奴隷収容地下牢
自然に反応して動き出す身体、躍動感、即座
バス14(17?)台を連ね て、か つ て の 要
にハーモニーをかもす音感のよさ等。同じ人
塞、後に奴隷収容地下牢として利用されたエ
間の肉体を授かりながら、太古の昔から培わ
ルミナ、および、ケープコーストを訪ねた。
れ、血となり肉となっているものの違いを見
アフリカからの参加者にとっては、先祖が奴
せ付けられた。
隷として虐待され辛苦と死にさらされた聖地
であり、人間の罪を悔いる「聖地 巡 礼」で
○礼拝、讃美、献金
あ っ た。1540―1850年 に か け て の3世 紀 間
期間中の朝礼拝は、約1時間。御言への応
に、奴隷としてアメリカやヨーロッパへ送り
答としての祈りや讃美がある。聖書は英、
込まれたアフリカ人は1500万人に上る。地下
仏、独、西語のほかに、参加国の言語 を 用
牢の想像を絶する不潔、恐怖、悲嘆、怒り、
いて交代で朗読された。31日の礼拝では、
絶望、死。しかもその地下牢の真上の教会
森下真裕美伝道師13)が、創世記1章の一部を
で、クリスチャンの奴隷商人が神に礼拝を捧
日本語で朗読された。讃美は常に高らかに美
げ、祈り、讃美をしていたとは……。奴隷商
しいハーモニーをもって歌われ、踊りを伴う
人であったアメイジン・グレイスの作詞者
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3)日本キリスト教会佐呂間教会
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ジョン・ニュートンのことを考えた。歴史
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常時出るわけではなかった。
は、人間が人間を虫けら扱いにする罪を繰り
村の長老宅で挨拶を済ませた後、教会付属
返している。われわれは到底まともに顔をあ
の小さい学校に案内された。2∼6歳の子供
げることができない存在だ。イエス・キリス
たちが50人ほどいて、目をくりくりさせなが
トの十字架のあがないの重さをあらためて思
ら歌を歌っていた。私たちが紹介されると、
わされた。奴隷制によって犯された罪と、現
真っ白な歯を見せてにこにこ笑い、机の間を
在の世界で弱者が不公正の鎖につながれ経済
歩く私たちに手を差し出した。彼らは、親が
的奴隷化にさらされていることを重ね合わせ
エイズで死んでしまったか、治療のために両
た、印象深いプログラムであった。
親に捨てられたエイズ孤児だった。教会員た
ちが里親となって、面倒を見ている。小さな
○週末ホームステイ
貧しい村でエイズの苦難を担い合う人々と出
8月7日、参加者はいくつかのグループに
会うことによって、私の中にエイズ問題が現
分かれて、近隣の村に一泊し、翌日の礼拝に
実のものとなった。他のグループでは、ホテ
出席した。私はヴォルタ湖に近いオドマセ・
ルのような富豪の家に泊まった者、奥地の小
クロボ(アクラからバスで2.
5時間)という
さな部落に泊まった者もあり、それぞれが大
貧しい村へ行き、アイルランドから参加した
歓迎を受け、主にある交わりを感謝した。
若者男女二人と共に宣教師未亡人の家に泊め
ていただいた。ゲストルームがあり、村の中
では整った家で、トイレは水洗式だが、水は
以下、割愛
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4)地
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図
上図
左図
アフリカ大陸
GHANA(ガーナ)
(PETIT LAROUSSE 参照)
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ガーナ南部(アクラ、ギネア湾岸、ヴォルタ湖など)
5)ロゴ・マーク
アクラ総会のロゴ
中心のシンボルは、Gye Nyame「神以外には」を表わす。
卵形はいのちの象徴。周囲はガーナ織布、ケンテ。
(遠藤正子『世界改革教会連盟参加報告』
)
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6)主題讃美歌
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WARC HANDBOOK FOR PARTICIPANTS より引用
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7)写
真
University of Ghana, Volta Hall
Opening Worship at the International Conference Centre
Sunday Worship at Black Star Square
総会議場 GIMPA
ACCRA の市場
ACCRA 商店街
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奴隷収容地下牢
額「詩編132篇」
奴隷収容地下牢
奴隷収容地下牢
Cape Coast
かつての奴隷積出港の浜
野口英世博士記念研究所(ガーナ大学分校)
左同資料室
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社 会 学 部 紀 要 第9
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PEKI 街並み
地方教会、村を訪問
歓迎会(PEKI)
尊長に対面、挨拶
物理学者(Wien の国際研究機関を定年退職)宅
長老派教会(PEKI)の聖餐式
長老派教会(PEKI)の礼拝献金
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ガーナの合唱団
CENTRAL CAFETERIA
以上の写真撮影 森川 甫・美穂子
LAKE VOLTA
ガーナ大学キャンパス
(撮影 菊地純子牧師)
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WORLD ALLIANCE OF REFORMED CHURCHES(WARC)
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4th GENERAL COUNCIL, ACCRA, GHANA
ABSTRACT
On the 30th July to the13rd August 2004, WARC gathered the delegates and visitors of
its member churches and those who had concerns for a reunion, for worship and
reflection, for spiritual renewal, for clarifying their vision and understanding of the mission
to which they have been called. “It is a time to renew our commitment to prophetic
action, to receive new challenges and to share a pastoral visit with member churches in a
particular part of the world.”(Rev. Dr. Setri Nyomi, General Secretary of WARC)
In this article, we have collected three documents: the keynote address and two
reports. The keynote adress was given by Rev. Dr. Song Chang Onsen, president of WARC
(1997―2004). He pointed out the object and problems of the General Council in reference
to “that all may have life in fullness” (John10:10). This excellent presentation and
translation is given by Rev. KOIKE Souzo. One report written by Rev. YOSHIDA Takashi,
shows us accurately the whole program of the General Council, and the other one, by Mrs
ENDO Masako, is an very interesting essay on this General Council.
Key Words : WARC, Ghana, African christian churches
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