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ベトナム・フエ市下水道整備計画(PDF形式:828KB)

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ベトナム・フエ市下水道整備計画(PDF形式:828KB)
平成 18 年度
地球環境・プラント活性化事業等調査
「ベトナム・フエ市下水道整備計画調査」
(ベトナム)
報告書要約
平成 19 年 3 月
日本水工設計株式会社
住友商事株式会社
株式会社エンバイロメンタルエンジニアリング
要 約
1. プロジェクトの背景
フエ市はベトナム国土の中央部に位置するトゥア・ティエン・フエ州の州都で人口は
2005 年現在で 326,000 人を擁し、同じく中部ベトナムの中心都市であるダナン市に次ぐ
中核都市となっている。
本市は 19 世紀初頭から 20 世紀半ばまでグエン王朝の都として栄えた場所として有名
であり、フエ市周辺の王宮跡地や廟といった建築物群は 1993 年にユネスコ世界文化遺
産「フエの建造物群」として登録されている。このため、王宮跡を初めとした遺跡巡り
や市内中央を流れる Huong 川の川上りツアーを楽しむため日本を含む海外諸国から数
多くの観光客が訪れており、市街地ではホテルの建設が進められる等、観光開発も重点
的に進められている。また、フエ市では大都市への移行を目指した都市開発計画が進め
られており、今後更なる人口増加が見込まれている。
しかし、近年の人口増加による生活排水の増加や病院・ホテル等の公共施設からの排
水の流入により、Huong 川や城郭内の水路は水質汚濁が進行しており、かつての水の都
の様相は失われている。更に、市街地は主に平坦な低地に立地していることに加え、地
先の水路網の不備や能力不足等に起因して、過去 10 年の記録では年間1回から7回の
浸水に見舞われており、市民生活や遺跡への影響は避けられない状況となっている。
N
フエ市
図.1 フエ市の位置(縮尺:約 1/1,500 万)
このため、本プロジェクトにより下水道網を整備し、適切な汚水処理及び雨水排除を
行うことは、
観光の目玉となっている Huong 川のみならず歴史的な水路網の水質改善、
景観の向上、浸水の脅威からの世界遺産の保護、地域住民の安全の確保につながり、本
市の主要産業である観光資源の保全や、今後の都市発展に大いに資するものと考えられ
る。
N
WWTP No.1
Proposed Area
Phase-1
WWTP No.2
Proposed Area
Phase-1
図.2 調査計画区域(縮尺:約 1/80,000)
2. プロジェクトの必要性
フエ市に顕在する水環境にまつわる問題は緊急に解決すべき課題となっており、本プ
ロジェクトによる下水道整備は非常に重要な役割を果たすものといえる。
① 汚水処理システムの導入

一般家庭や商店・市場等からの未処理に近い汚水排水の流入により、王宮跡地周辺の小
河川水路・池は汚濁が進行しており景観悪化の防止・改善が急務である。

人口増加やホテルの立地が今後も増加することに加え、新規の都市開発が計画されてお
り汚水処理システムの導入は公共水域の汚濁進行を防ぐ上で不可欠である。
② 雨水排除網の構築・改善

市街地は大部分が Huong 川下流部に面した平坦な低地であり、既存の水路の整備不足も
あり速やかな雨水排除が行えない状況にある。このため年間最低1回以上の浸水が発生
している。

浸水は王宮跡地周辺でも発生しており、世界遺産に指定された王宮跡に加え、現存する
城壁や遺溝等へ及ぼす影響が懸念されており一刻も早い対応が不可欠である。
③ 水辺空間の改善・景観の向上

王宮跡地のある旧市街地の小河川・池は、現在は荒廃が激しく土砂の堆積や水路の閉塞
がみられるため、これを解消し、かつての水路網を回復させる。

汚水処理システムの導入により歴史的水路網の水質向上を行い、遺跡群にふさわしい景
観を取り戻す必要がある。
(王族の舟遊びルートを再現したツアーを企画し観光資源と
して利用する構想がある)
本調査では Huong 川を含む市街地の河川・水路を対象に水質調査を実施した。この
結果、水の有機汚濁状況を示す指標である BOD(生物化学的酸素要求量)で、Huong
川では環境基準の 4mg/liter を超えており、城壁周辺の小河川である Dong Ba 川、Ngu Ha
川においても生活区域からの汚濁に強く影響を受けていることがわかった。
表.1 既存水路の水質汚濁状況
河川
Huong川
Dong Ba川
Ngu Ha川
地点
上流側
下流側
上流側
下流側
上流側
下流側
BOD
単位:mg/liter
備考
計画区域の上流端
計画区域の下流端
生活排水、市場排水
の影響を受ける
5
12
18
34
26 旧市街の生活排水が
48 集まる河川
(出典:JETRO 調査(2006 年 10 月)
)
これらの顕在する水環境における問題点の解決には、本プロジェクトによる下水道整
備が不可欠であり、早期に対策を講ずる必要があり、遺跡の保全及び観光資源としての
活性化、更には地域住民の生活水準の向上が達成されるものである。
3. プロジェクトの基本方針
本調査では本プロジェクトの実現に向けた調査及び検討を行った。調査内容及び基本
方針について以下に示す。
3.1 調査内容
① 下水道計画の策定
既存計画のレビューを行い、事業計画区域の設定、下水排除方式の設定、計画人口及
び計画下水量の設定を行った。
② 下水道施設の概略設計
経済性や施工性を勘案し、既設の排水路網を極力活用しつつ汚水幹線管路(及び中継
ポンプ場)の概略設計、下水処理方法の決定、下水処理施設の概略設計を行った。
③ 雨水対策施設の概略検討
既計画のレビューを行うとともに、浸水被害状況や降雨状況の特性を把握して浸水防
止に向けた対策案の検討を行った。
④ 環境保全効果の検討
事業実施に伴う環境影響を適切に判断するため JBIC「環境社会配慮のための国際協
力ガイドライン」及び現地法制度を踏まえた環境影響検討について検討を行い、留意す
べき点を検討した。
⑤ 段階的な整備計画の立案
各種の下水関連施設の整備実施に際し、優先性を考慮した整備計画の立案を行った。
⑥ 財務・経済面の評価検討
整備計画に基づき事業費の積算を行い、FIRR(財務的内部収益率)、EIRR(経済的
内部収益率)の評価検討を行うとともに、料金徴収体制、組織運営について提案を行っ
た。
⑦ 現地実態調査
測量調査、ボーリング調査、水質測定調査を現地で実施した。
3.2 調査の基本方針
本プロジェクトは、相手国機関が策定した Pre-F/S 調査により下水道整備計画の基本
的な構想が示されている。そこで本調査では、円借款に向けた案件形成を行う上でフエ
市における水環境の様々な課題点を調査した上で、現地の都市計画を始めとする各種関
連計画とベトナム国内及び日本の技術的基準・指針を踏まえてプロジェクトの実施可能
性について検討を行った。
4. プロジェクトの事業概要
4.1 下水道計画の策定
事業計画区域は当面整備を先行する区域(Phase-1)と、その後拡張する区域(Phase-2)
の2地区に大別し、それぞれ計画目標年を 2015 年、2030 年として整備計画の策定を行
った。
下水道計画区域は、Huong 川を挟んだ左岸(遺跡の保全や観光資源の維持向上が望ま
れる地域)、右岸(主要な都市機能に加え宿泊施設が建ち並ぶ地域)の双方を対象に進
めることが水環境の改善に効果的であり、Phase-1 対象区域では、システム導入による
早期の効果発現を目指し既成市街地の人口密度が高い区域を選定し、Phase-2 では市の
策定する開発予定区域を盛り込むものとした。
計画処理人口は既往の人口増加率と都市マスタープランによる計画値の妥当性を確
認した上で観光人口等を見込み、Phase-1(2015 年)で 372,900 人、Phase-2 の整備後(2030
年)で 509,600 人と設定した。
4.2 下水道施設の概略設計
(1)下水管路システムの検討
本市は既設の水路網が発達しており、一般家屋等からの汚水は道路脇の既設水路を経
て河川や池に放流されている。本調査では、この既設水路から汚水を取り込む管路を新
設し下水処理場に送水する「半分流式(インターセプター下水道)」を採用することで、
既設の排水網を活用し、経済的かつ早期の汚水処理システム導入を提案している。
また新設する汚水管は勾配を用いた自然流下を基本とするが、本地域は平坦な低地に
位置するため地形の落差が尐なく、処理場まで送水するには途中に中継ポンプ施設を必
要とする。Phase-1 地域は城壁内を始め既存の市街地内にポンプ施設が必要なことから、
道路下のマンホール内に設置できるポンプを採用し、景観上の配慮を行うこととした
(24 カ所)。
(2)下水処理場の検討
下水処理場は Huong 川の左岸、右岸に計2カ所を計画した。水処理方法には様々な
方法が存在するが、本調査ではベトナム国内の技術基準より、処理水の除去率が高い
(85%以上)処理法が求められ、Phase-2 までの整備を踏まえた場合の施設規模を考慮
した結果、処理性能が高く、よりコンパクトである標準活性汚泥法を採用することとし
た。
表.2 水処理方式の比較検討
処理方法
標準活性汚泥法
オキシデーション エアレーテッド
ディッチ法
ラグーン法
安定化池法
維持管理性
BOD:90%
SS:85%
◎
55
◎
高め
△
管理点検箇所
が多い
BOD:80%
SS:75%
○
100
○
高め
△
管理点検箇所
が尐ない
BOD:70%
SS:70%
×
270
△
低め
◎
管理点検箇所
が尐ない
BOD:70%
SS:70%
×
730
△
低め
◎
管理点検箇所
が尐ない
総評
△
◎
○
○
○
×
○
×
処理程度
(除去率)※
所要用地(ha)※
(OD法を100とした場合)
経済性
(※出典:「開発途上国における都市排水・汚水処理技術適用指針(案)
」建設省・国際建設技術協会、平成4年)
Phase-1 における処理能力は左岸処理区で 21,200m3/d、右岸処理区で 22,800m3/d とな
っており、経済性の概略検討においてもオキシデーションディッチ法よりわずかである
が安価となった。
表.3 計画諸元の概要
項目
計画目標年度
下水道
整備区域
地域
面積(ha)
計画処理人口(人)
下水排除方式
左岸処理区
右岸処理区
合計
Phase-1 Phase-2 Phase-1 Phase-2 Phase-1 Phase-2
2015年
2030年
2015年
2030年
2015年
2030年
Huong川左岸
Huong川右岸
-
既存集落 既存集落 既存集落 既存集落
-
-
開発区域
開発区域
-
-
1,019
1,469
1,092
3,358
2,111
4,827
179,700 211,200 193,200 298,400 372,900 509,600
半分流式
半分流式
半分流式
半分流式
半分流式
半分流式
+分流式
+分流式
+分流式
汚水幹線延長(km)
ポンプ場箇所数
下水
処理場
41.7
63.8
26.6
342.6
11
2
13
8
3
21,200
35,400
14,200
16,700
処理能力(m /d)
標準活性汚泥法
標準活性汚泥法
水処理方式
汚泥処理方式 汚泥濃縮+機械脱水 汚泥濃縮+機械脱水
地先水路
地先水路
放流先
用地面積(ha)
6.25
6.25
6.95
6.95
68.3
24
35,400
-
-
-
13.20
406.4
10
52,100
13.20
水処理:標準活性汚泥法
汚水
最初沈殿池
エアレーションタンク
汚泥
最終沈殿池
重力濃縮タンク
消毒槽
機械脱水機
処理水
搬出
図.3 汚水処理方法のフロー図
4.3 雨水対策施設の概略設計
度重なる浸水被害は未整備地区や、既設水路網の機能不全や能力不足への対応が求め
られる。そこで本調査では計画区域内の雨水排除能力を地域の既定計画である2年確率
に対応した整備を見込むものとした。これにより毎年頻発している比較的大きな降雨に
おける浸水被害を解消することが可能となる。一方で、主に雨期における多雨や台風に
起因する Huong 川の氾濫に起因する既設水路の排水能力の低下を防止するため、遺跡
のある旧市街地の水路と Huong 川を結ぶ3地点にゲートを設置し、城壁内の支川水路
の水位上昇を食い止める方策を提案した。
これにより、城壁内では概ね5年に1回の頻度で発生する大雨に対応(5年確率)で
き、現在事業が進められているターチャックダムの供用後は Huong 川の高水位が 0.8~
1.2m 低下するため、城壁内の浸水影響は更に食い止められることが期待できる。
また、城壁内の Ngu Ha 川や調整池、沼は土砂等の堆積により従来の通水能力が失わ
れていることから、浚渫等や閉塞の解消を行うことで雨水対策の面のみならず、下水道
整備による水質向上の効果が期待される。
5. 環境保全効果の検討
本調査では計画区域内の河川水路を対象に2回の水質調査を実施した。この結果を用
いて下水処理による水質改善効果を予測したところ、未対策のまま都市が発展し続ける
と Phase-1 目標年である 2015 年の BOD は 16mg/liter、
Phase-2 目標年の 2030 年で 21mg/liter
となった。一方、下水処理を導入した場合、Huong 川周辺の環境基準値である 4mg/liter
を達成することが可能となることがわかり、下水処理システム導入の必要性が確認され
る結果となった。
表.4 下水処理による水質改善効果
河川
地点
Huong川
計画区域
下流端
単位:mg/liter
Phase-1目標年(2015) Phase-2目標年(2030)
2006年
(JETRO) 下水処理 下水処理 下水処理 下水処理
あり
なし
あり
なし
12
4
16
4
21
※水質予測結果は年間の平均の放流水質に換算したもの
2006年の実績値は11月における単一日の結果による
また、本調査では JBIC「環境社会配慮のための国際協力銀行ガイドライン」に沿っ
た初期環境影響評価について、チェックリストを基に現時点で懸念される下水道関連事
業運営に伴う環境配慮事項を確認した。
6. 財務・経済面の評価検討
本プロジェクトの概算事業費は Phase-1 で約 120 億円(約 1 億 1,740 万ドル/約 1 兆 6,390
億ドン)、Phase-2 整備に必要な事業費はで約 175 億円(約 1 億 4,880 万ドル/約 2 兆 3,970
億ドン)となった。また、財務分析結果は下記の通りとなった。
(1)FIRR(財務的内部収益率)は、現行制度における維持管理費財源となる「排水税(水
道料金の上限 10%分を追加で徴収できる)」の料率改定に加え、下水道利用者から
使用量を徴収する方法を組み合わせて複数種の検討を行った結果、排水税の改定
(10%から 33%に)を行った後に、下水道使用量を最終的に水道料金の 33%として
徴収する案が最も無理のない料金設定となり、キャッシュフローの累計黒字転換が可
能となった。
(2)EIRR(経済的内部収益率)は、本プロジェクトの実施効果として貨幣換算が可能な
効果として「健康被害の軽減」「漁業生産性の維持・向上」「土地価格の上昇」「観
光価値の維持向上」「浸水軽減効果」を挙げ、それぞれの便益の解析を行った。この
結果、EIRR は 13.3%となり、本プロジェクトの事業効果が高いことがわかった。
表.5 概算事業費
項目
建設工事
下水管渠
ポンプ場
下水処理場
土木工事
機械・電気
土木工事
機械・電気
土木工事
機械・電気
その他
(浚渫・護岸
等)
補償費
運転維持管理関連設備
コンサルタント費用
詳細設計
入札図書作成支援
施工監理
維持管理職員教育等
プロジェクト管理
税金 (VAT・輸入品税)
物価上昇分
予備費用
Total
Phase-1
Phase-2
Total
Mln-VND Mln-JPY Mln-USD Mln-VND Mln-JPY Mln-USD Mln-VND Mln-JPY Mln-USD
1,195,611
8,727
74.210 1,690,448
12,339 104.926 2,886,059
21,066 179.136
485,283
3,542
30.121 1,111,368
8,112
68.982 1,596,651
11,654
99.103
3,672
27
0.228
1,510
11
0.094
5,182
38
0.322
69,430
507
4.309
36,420
266
2.261 105,850
773
6.570
85,490
624
5.306
45,654
333
2.834 131,144
957
8.140
490,950
3,584
30.473 296,272
2,163
18.389 787,222
5,746
48.862
9,999
73
0.621 199,224
1,454
12.366 209,223
1,527
12.987
50,787
371
3.152
0
0
0.000
50,787
371
3.152
5,011
37
0.311
47,265
345
2.934
52,276
382
3.245
33,729
246
2.094
22,906
167
1.422
56,635
413
3.516
133,792
977
8.304 189,164
1,381
11.742 322,956
2,357
20.046
103,155
753
6.403 145,848
1,065
9.053 249,003
1,818
15.456
9,607
70
0.596
13,583
99
0.843
23,190
169
1.439
17,487
128
1.085
24,723
180
1.535
42,210
308
2.620
3,543
26
0.220
5,010
37
0.311
8,553
62
0.531
27,362
200
1.698
38,996
285
2.420
66,358
484
4.118
99,115
723
6.152 165,493
1,208
10.272 264,608
1,931
16.424
66,426
485
4.123 128,432
937
7.972 194,858
1,422
12.095
78,053
570
4.845 114,132
833
7.084 192,185
1,403
11.929
1,639,099
11,964 101.737 2,396,836
17,495 148.772 4,035,935
29,459 250.509
1JPY=
137 VND
1USD=
16,111 VND
表.6 財務分析の検討結果
区分
FIRR(財務的内部収益率)
IRR
(%)
NPV
(Mlnドン)
9.13
3,999
B/C
備考
排水税の値上げ(4回、現
行の10%から33%に)+
1.015
下水使用料徴収(上水料
金の20%~33%に相当)
便益の貨幣換算:
健康被害の軽減
漁業生産性の維持向上
EIRR(経済的内部収益率)
13.27
166,234
1.103
土地価格の上昇
観光価値の維持向上
浸水軽減効果
FIRR(財務的内部収益率)におけるNPV及びB/Cは割引率をベトナム国家銀行(SBV)の基準
金利から年7.8%を用いて算出した
EIRR(経済的内部収益率)におけるNPV及びB/Cは割引率を一般的な評価に用いられる年10
~12%として算出した
7. プロジェクト実施スケジュール
本プロジェクトで予想される Phase-1 における実施スケジュールは、
・2007 年4月~2008 年3月:案件形成期間(JBIC-SAPROF 調査、ローン締結)
・2008 年4月~2009 年 12 月:コンサルタント選定、詳細設計
・2009 年中盤以降:工事入札・契約
・2010 年中盤以降~2013 年:建設工事
と想定され、2013 年内に下水処理場の試運転、供用開始を目標とする。
表.7 プロジェクト実施スケジュール(Phase-1)
年
案件形成
詳細設計
工事入札・契約
下水管渠
ポンプ場
建設
工事
下水処理場
水路浚渫・水門
職員教育、住民啓蒙
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2003年内の下水処理場進運開始を目標
8. プロジェクト実現に向けた懸案事項
本プロジェクトは相手国機関による Pre-F/S 作成後、2006 年7月にフエ省人民委員会
より政府計画投資省(MOPI)に ODA による開発要請が行われている。
その後、9月に政府関連機関から成る諮問・監査を経て 12 月に修正版 Pre-F/S が計画
投資省に承認され、12 月に首相承認を得ており、今後は円借款事業としての本格的な
要請に進むものと考えられる。
一方、本プロジェクトにおける環境影響評価(EIA)をフエ市において作業中であり、
2007 年前半に環境影響報告書が申請される見通しとなっている。
本プロジェクトの実現に向けた懸案事項としては、下記のものが考えられる。
(1)遺跡の保護と下水道整備の両立
世界遺産として登録されている王宮跡以外も旧市街の城壁内部はグエン王宮時代の
遺跡、違溝が数多く存在しているため、下水道施設(管渠、ポンプ場)の施工、Ngu Ha
川の浚渫や護岸に対する対策を行う際には遺跡の破壊に繋がらないよう留意する必要
があると考えられる。一方で UNESCO やフエ市遺跡保存センターは浸水被害による遺
跡の浸食被害の早期解消は最優先の課題であることを認識し、下水道整備計画には好意
的な意見を示している。
また、王宮内の排水整備は遺跡保存センターの管轄となっているが、排水能力や浸水
被害の状況に応じては整備対象に加えることが望ましい。
(2)Ngu Ha 川周辺の不法居留民の移転
フエ市では Ngu Ha 川の復元プロジェクトを本プロジェクトで同時に進めることを要
望している。このプロジェクトには川の浚渫、護岸復旧、景観整備が含まれており、下
水道プロジェクトに関連する項目として護岸の整備に伴う 150 世帯の住民移転が見込
まれている。
フエ市の住民移転プロジェクト管理委員会では移転先の土地の提供が行われており、
移転者側も好意的な対応が可能とされているが、速やかな実施可能性については事業の
実施時期を含めて対応を行うことが求められる。
9. 我が国企業の技術面の優位性
本調査において提案した下水処理方式である標準活性汚泥法は、日本国内の公共下水
道で採用されている下水処理法の約 34%以上を占める、最も普及した処理法のひとつ
であり、日本企業でも数多くのプラントメーカーが参入しており、主要な機器であるポ
ンプ設備、ブロア設備、汚泥の掻き寄せ設備、各種計装設備において十分な実績と幅広
い製品群を有しており、国際的にも十分な競争力を有している。
また、汚泥脱水機においても種々多様な方式が開発されており、標準活性汚泥法と同
様に十分な競争力を有している。
更に、国内で標準活性汚泥法が導入されてからの設計、施工のみならず運転管理に至
るノウハウの蓄積は非常に豊富であり、ベトナム国内における需要に十分に対応できる。
これら日本企業から調達が見込まれる機材は事業費総額の約 23%に及び、本事業の
実現化は本邦企業の進出機会の創出のみならず、国際貢献の見地からも顔の見える援助
として非常に有望である。
更に、本調査において提案した下水処理場のブロア施設、ポンプ施設、脱水機等の各
設備は本邦企業の製品・技術が活用できるため、STEP 案件としての案件形成を行うこ
とで、ローン金利の低減に伴う事業経営面の強化、事業効果の向上も期待できる。
当該技術導入に当たっての留意事項としては、日常の運転管理に十分な知識と経験を
有すことが挙げられる。これに対しては、組織面の改善策として提案している技術者並
びに管理者の教育訓練を十分に行うことにより対応は十分に可能である。
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