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芝川を対象とした都市内の河川空間の形成に関する研究

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芝川を対象とした都市内の河川空間の形成に関する研究
旧芝川を対象とした河川空間の形成に関する研究
BR11066 真野和也
指導教員 作山 康
1. 研究の背景
流域面積は 96.8k ㎡、流路延長 26.1km の一級河川。
日本の都市内を流れる小さな河川は、高度経済成長
そのうち旧芝川は、川口市内を流れる細く曲がった方
期の開発で増加した工場や住宅の排水が流され、治水
の河川で、流域面積 18.45k ㎡、流域延長 5.5km。埼玉
対策のため暗渠化されるなどして、清流は都市から消
県の管轄区域では、北から青木水門、新青木橋、五右
えて行った。しかし、環境問題が深刻化し、「親水」
衛門橋、新朝日橋、朝日橋、青木橋といった橋が上を
の概念が生まれると。都市部でも自然空間の必要性が
横切る。
広く認識され始めると、河川の再生の重要性が高まっ
〇旧芝川の発足とその価値を失った経緯
てくる。市街地を流域とする河川の再整備をすること
江戸・八代将軍吉宗時代の農業排水路としての開削
において、本当に美しい河川空間をを形成するには、
以来、流域の人々の活動を支えてきた。その一方で河
ランドスケープのデザインや親水空間づくりだけでは
川の氾濫・洪水が頻繁に起こりやすく、昭和 30 ~ 40
なく、環境の改善や近隣の協力、そして現在では周囲
年代、治水対策のため新芝川が形成され、それまで水
の建物も含めた空間形成も必要になり、その過程は長
害が頻発していた区間は、南北両端の水門で閉ざされ、
いものになる。今回の研究では、周辺の土地を含めた
そこに工業排水や生活排水が流れるが、閉ざされてい
変遷を調べる。
るため、汚物がたまり込む場所となった。その中で、
旧芝川を再生する動きは、1977 年から始まっている。
2. 研究の方法
ここで
4.芝川沿川の土地利用の変遷
は、旧芝川
のうち、ま
ず、旧芝川
を現地調査
し、ヒアリングを含めて分析する。その後、周囲の土
地利用の変化を含め、現在の旧芝川の空間ができるま
でどのような経緯、動きがあったたのかを調査し、考
察につなげる。
3. 芝川の概要
芝川 ( 芝川上流・新芝川含む全体 ) は、埼玉県桶
1993 年、2005 年、2014 年の旧芝川流域の土地利用状
川市~東京
況を現在の白地図の上に図示し、変化を見る。現在集
都足立区間
合住宅や大型スーパーが立地している場所は、ほとん
を流れ、最
ど大規模な工場であった。その中に、中規模の集合住
終的に荒川
宅または社員寮が立地する。しかし、大規模な工場は
に合流す
他の土地に移転し、その跡地に高層マンションが建設
る、広域的
されていった。この区域は旧川口市側は準工業地域、
な河川であ
旧鳩ヶ谷市側は第一種住居地域、第二種住居地域、ま
る。
たは第一種中高層専用地域に指定されているため、あ
る程度の大型の集合住宅を建設することができる。そ
の流れで、ある程度の大きさの工場が他地域へ移転す
ると、空いた土地は集合住宅の建設地として適して
5-3 水質について
いるため次々建ち、実質上の土地利用の転換が起こっ
2003 ~ 2012 年にかけて、
た。芝川周辺の居住人口が増加することは、スーパー
県が 2 か所で調査したデー
マーケットを含めた商業・企業が増加した事、2010
タでは、2006 年から五右衛
年に保育園が沿川に新設された事にも繋がる。また、
門橋での BOD 値、2009
人の目が増えるため、川への意識が高まる事に繋が
年の秋から、両方で
り、その人口に合わせた整備を行うことができる。
BOD,DO 値が安定的に目
新青木橋 - 五右衛門橋間は、建物を南向きにすると、
目標値 BOD:10mg/l 以下
標達成している。
DO:5mg/l 以上
窓から芝川の景観を見ることができ、その区間の戸
6.考察
建て住宅はそれが活かされている。
〇旧芝川の場合は、河川の改修と土地利用の変化が直
接かかわっているわけではないが、工場街から住宅街
5. 河川自体の変化
への実質的な土地利用の転換が、旧芝川の自然景観を
5-1.きっかけとなったテレビ番組の活動 取り戻す動き、そして再整備後の景観の維持に繋がっ
2005 年、テレビ朝日で当時放送していた番組内で、
ていると考えられる。周辺の居住者が増えることで、
当時ヘドロにまみれていた旧芝川の再生試みるプロ
休日に芝川で活動する人が増えるのはもちろん、商業
ジェクトが開始。河川内での浄化の技術、それを活
施設や福祉・教育施設が沿川に増え、更なる賑わいを
かそうと行動した多くの住民の協働は、全体的に排
呼び寄せることができる。
水の水質改善と生態系回復の効果をもたらした。そ
〇住民、企業 ( メディア ) が主体となった水質改善の
れを上田県知事が視察し、県の事業発足につながる。
活動は、埼玉県の河川空間再生事業のきっかけとなり、
5-2 水辺再生 100 プランでの旧芝川の整備
住民とメディアの活動を引き継ぎつつ、河川の機能、
上記の活動の効果と、各地河川で公園的な緑の需
空間を仕上げるように再整備が行われた。旧芝川の再
要の高まりを機に、2008 年から 2010 年にかけて、
生事業は、特に水質浄化に重点が置かれ、そのために
モデル事業として
水面に仕掛けた装置のデザインによっては、水質の改
旧芝川の改修が行
善や自然の回復だけでなく、都市河川の景観も形成し、
われた。
市民の親水活動を促進することができる。
特に大きな要素を
占めているのが、
7. 今後の改善点
河川中に仕掛けた
〇戸建て住宅では、正面が旧芝川を向いている物がよ
「ウェットランド」
く見られるが、集合住宅ではそれが少ないようである。
という自然浄化ス
庭園が旧芝川を向いているかにも注目していく必要が
ペースであり、一
ある。( 下の写真の集合住宅・リバピア川口青木の庭
部区間でのみ、2 つ
園が良い例。) また、芝川が東西に流れているような
に分かれて設置さ
場所では、川の北側の建物は南向きになるため、庭園
れていた浄化装置を、1つのウェットランドにまと
や正面が芝川に向くように活かすことができる。
め、県が管理する各スペースに設置した。下水から
〇ウェットランド内に浮遊物が浮いている事があり、
流れてきた生活排水をその中で浄化して本流に流せ
清掃・維持管理の際は、行政に加え、より多くの住民
るようになっており、排水の出口が噴水のように、
の、より細目な参加があれば、水面は綺麗になるので
ウェットランドの出口を滝のようにすることで、水
はない
中に酸素を取り込む上に水の音も演出する。県の整
か。
備で、浄化装置に多自然護岸の要素を加えた。そこ
に生物も集まり、人の賑わいを呼んだ。
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