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Title 日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴

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Title 日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
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Issue Date
日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴( fulltext )
島田, めぐみ; 本田, 正文
東京学芸大学紀要. 総合教育科学系, 59: 513-525
2008/2/29
URL
http://hdl.handle.net/2309/89196
Publisher
東京学芸大学紀要出版委員会
Rights
東京学芸大学紀要 総合教育科学系 59 pp.513 ∼ 525,2008
日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
島 田 めぐみ *・本 田 正 文 **
留学生センター *
(2007 年 9 月 28 日受理)
1. はじめに
ハワイではサトウキビプランテーションの増加に伴う労働者不足を解消するために、海外から移民を受け入れ始めた。
日本人のハワイへの移住は1868 年(明治元年)に153 名が移民したのに始まったが、本格的に移民が開始されたのは官
約移民の制度が始まった1885 年である。その後、第 2 次世界大戦が勃発するまで多くの日本人がハワイに渡った。彼ら
は、プランテーション労働者のみではなく、教育関係者、宗教関係者、ビジネス関係者、呼び寄せられた花嫁や子供な
ど、様々な職業の者がいた。ハワイに渡った日本人はハワイでも日本語を使い続け、次世代へ日本語を継承していった
が、次第に独自の言語を形成するにいたった。その日本語は、英語やハワイ語からの借用語が多い、広島県や山口県な
どの方言が多く使用される、などの特徴を持っている。2 世は、両親が話すハワイ方言とも言うべきこの言語(以下、ハ
ワイ日本語)を聞いて育つが、第2次世界大戦にアメリカが参戦すると日本語の使用が禁止される。その後、3 世、4 世
と世代が進むにしたがい、使用言語が次第に英語へとシフトし、ハワイ日本語の使い手はその数を減らしつつある。
1世や 2 世が使用していた日本語を知る手段として、高齢の日系 2 世へのインタビュー、当時の新聞記事の調査が考
えられる。1900 年代は、ハワイの各島で多くの日本語新聞が発行されているが、そのほとんどは1900 年代後半までに
は姿を消している。その中のひとつに、1955 年 5 月から1990 年12 月までの期間、週に2回、ハワイ島ヒロで発行された
『ヒロタイムス』がある。島田・本田(2007)では、1964 年に発行された『ヒロタイムス』を分析したが、今回の調査で
は、さらに約10 年前の1955 年に発行された『ヒロタイムス』の記事に記載された語彙を分析し、当時のハワイ日本語の
語彙的特徴を明らかにする。
2. 先行研究
ハワイ日本語の特徴を記録したものに、話し言葉のデータから分析した安倍(1965)
、井上(1971)
、比嘉(1974)
、黒
川(1983)がある。比嘉(1974)によると、次のような性質があるとしている。
(1)英語やハワイ語からの借用語が多
く、発音は原語に近い。特に、時間や数量、親族呼称、人称代名詞などが多い。
(2)標準的日本語で使われていない単
語がある。ハワイ日系人は広島県や山口県の出身者が多く、それらの地方の方言が多い。また、明治時代のことばも使
用されている。
(3)英語的表現がある。ワン刀、ワンおばさん、サム人、ゴルフを遊ぶ、アイテンキ(I think)などが例
としてあげられている。
(4)相手によって文体を使い分けない。
(5)幼児語が使われる。おっぱ(おんぶ)
、あんよ、ま
んま、じゃぶじゃぶなどが例としてあげられている。
書き言葉を分析した研究に、島田(2006)
、島田・本田(2007)がある。いずれも、1964 年に発行された日本語新聞
『ヒロタイムス』から145 語のハワイ日本語特有語を抽出し、以下の特徴があることを明らかにした。
a. 標準的日本語では使用されない、英語からの借用語が使用されている。
b. 標準的日本語でのカタカナ表記と異なる、英語からの借用語が使用されている。
c. 標準的日本語での使用方法と異なる方法で、英語からの借用語が使用されている。
* 東京学芸大学(184-8501 小金井市貫井北町 4-1-1)
** ハワイ大学ヒロ校
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東京学芸大学紀要 総合教育科学系 第 59 集(2008)
d. ピジン英語やハワイ語からの借用語がある。
e. 日本語の方言が使用されている。
f. 歴史的に古い日本語が使用されている。
g. 造語が使用される。特に、
「去」
「連」など、接辞語が多い。
h. 日本語、英語、ハワイ語の混種語が使用される。
3. 調査について
3. 1 調査の目的
ハワイ日本語の書き言葉について研究したものは、1964 年に発行された日本語新聞『ヒロタイムス』の新聞記事を対
象とした島田(2006)と島田・本田(2007)のみである(以下、
「1964 年調査」とする)
。また、対象となった記事は、
『ヒロタイムス』のエッセー記事「をちこちこぼれ話」欄である。本研究では、
『ヒロタイムス』の発行が開始された
1955 年のすべての記事を対象とし、分析を行う。その上で、ハワイ日本語の語彙的特徴、1964 年と1955 年とでどのよ
うな変化が見られるかを明らかにする。
3. 2 調査の対象
本研究でとりあげる『ヒロタイムス』は、米国ハワイ州ハワイ島ヒロで1955 年から1990 年の間、週に2回発行された
日本語新聞である。
『ヒロタイムス』を対象とする理由は、以下のとおりである。
1.新聞記事という性格上、当時のハワイにおいて特殊な語は使用されていないと考えられる。
2.エッセー形式の記事も多く、日常使われていたハワイ日本語が多く使用されている。
3.記者がハワイ日本語の使い手である日系人である。
本研究では、1955 年に発行された新聞記事を分析対象とする。創刊号が 1955 年 5 月17日であるため、1955 年 5 月17
日から12 月20日までが対象となる。
3. 3 調査の手順
1955 年発行の『ヒロタイムス』で使用されている語のうち、
『日本国語大辞典』第 2 版(2001)に見出し語として掲載
のない語と、見出し語として掲載はあるものの標準的日本語ではないと判断できる語を分析対象として抽出した。これ
らの語を本稿では「ハワイ日本語特有語」と呼ぶ。次に、
「ハワイ日本語特有語」の出自、意味などを解明するために、
日本語、英語、ハワイ語の各辞書を調べるほか、ハワイ在住日系 2 世 1 へのインタビューを行った。
なお、新聞記事は旧漢字、古い活字を使用しているため、新聞記事からの例文、語は、なるべくオリジナルどおり表
記することとする。また、例文や語の意味がわかりにくい場合のみ、
[ ]の中に意味を示す。
4. 結果
ハワイ日本語特有語は、異なり語数で 371 語抽出された。内訳は、英語からの借用語 252 語、ハワイピジン英語 2 から
の借用語 21語、ハワイ語からの借用語 29 語、日本語由来の語 21 語、混種語 46 語、語源がわからない語 2 語であった。
ハワイ日本語特有語を分析したところ、他言語からの借用語が多いことが明らかになった。また、日本語由来の語では、
方言や造語が使用されていた。以下では、英語、ハワイピジン英語、ハワイ語、日本語と出自ごとに、それぞれの特徴
を分析していく。ハワイピジン英語には、ハワイ語からの借用語が多い。そのため、あるハワイ日本語特有語がハワイ
ピジン英語から借用された語か、ハワイ語から直接借用された語かということを判断するのは難しい。そこで、英語あ
るいはハワイ語の辞書に記載のある語は、それぞれの言語からの借用語とした。
4. 1 英語からの借用語
借用語の中では、英語を出自とするものがもっとも多く、252 語であった。以下では、英語からの借用語の特徴的な点
をまとめる。
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島田・本田:日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
4. 1. 1 口語英語
口語からの借用語があることは、島田・本田(2007)でも報告されている。1964 年調査では、
「サセ」
(saucy、粋な、
スマートな)
、
「カラボシ」
(calaboose、刑務所)
、
「トクトク」
(talk-talk、うわさ話)があげられている。今回の調査では、
(1)の「ヘイワイ」
(haywire、もつれた、ごたごたした)
、
(2)の「カラボーシ」
(calaboose、刑務所)
、
(3)の「ピンチ」
(pinch、逮捕)
、が観察された。日系二世であるトモエ・ニシさんへのインタビューによると、会話でも「ヘイワイ」は
よく使用されるそうである。
(1)自力で判断して行動する時は応々にして、
「ヘイワイ」な結果を生むものである。
(1955.9.2)
[∼、面倒な結果をうむ
ものである。
]
(2)パホエホエ警察のカラボーシに入れられたといふ。
(1955.10.14)
[パホエホエ(地名)警察の刑務所に入れられたと
いう。
]
(3)2 台の自動車がピンチされた。
(1955.10.4)
[2台の自動車が捕まった。
]
4. 1. 2 動詞
名詞の借用語が圧倒的に多く、
「借用語+する」という形で使用される動詞の借用語は、1963 年の調査では3 例(フラ
イする、ポリシユする、トクトクする)のみであった。今回の調査では、標準日本語では使用されないものが、15 例観
察された。
「ゴホームする」
(go home)
、
(4)の「セキハンする」
(shake hand)のように、動詞だけではなく、名詞を伴っ
ているものもあった。
(4)手を出してセキハンした(1955.5.24)
[手を出して握手した]
4. 1. 3 複数形
標準日本語では、
「ソックス」や「シューズ」などの例をのぞき、複数の物を指す場合でも、単数形を使用することが
ほとんどであるが、今回の調査では、以下のような複数形の使用が見られた。
(5)クツキース(cookies、クッキー)
(6)ステツプス(steps、階段)
(7)ボーイス(boys、少年)
(8)スポークスメン(spokesmen、代弁者)
4. 1. 4 数詞
先行研究では、時間や数量を英語で使用する場合が多いと指摘されているが(比嘉1974)
、書き言葉の場合、数字で表
記されるため、それが日本語で発音されるのか、英語で発音されるのかはわからない。そのため、1964 年調査では、
「五
ショウ」
「三博士」
「三女性」などの例を、英語の影響としながらも、
「ファイブ」
「スリー」と発音するものとしてはとら
えていなかった。しかし、この表現を口頭で表すときは、おそらく、英語で発音すると考えられる。1955年の調査では、
(9)の例が観察された。漢数字ではなく「ワン」
(one)と書かれているため、そのように発音していることがわかる。
(9) 五十才にワン足りない四十九才(1955.12.6)
(10)のように、名詞の前に数詞を伴うのは、英語の影響だと考えられる。また、
(11)の「ワンタイム」は「一度に」
の直訳だと考えられる。
(10)明治四十一年ごろ、マウイ島に二邦字新聞があった(1955.9.9)
(11)ステーキなら一斤半の大きいのでもペロリとワンタイムに平らげる(1955.8.30)
4. 1. 5 代名詞
島田・本田(2007)で指摘されているとおり、今回の調査でも、代名詞の借用語が観察された。今回新たに、複数形
の表し方に興味深い現象が見られた。
「アス」
(us)はすでに複数形であるにもかかわらず、
「アス等」と使用されており、
単に「アス」のみの使用は観察されなかった。また、
(12)のように、私たちの意味で「ミー等」も多く使用されている
(6 件)
。
「あなた」と「あなたたち」は、英語では区別できないが、ハワイ日本語では、
「ユー」
(you)と「ユー等」
(13)
の使い分けによって区別されていた。なお、一人称単数の主語は、
「I」ではなく、
「ミー」
(me)を使用するが、これは、
ハワイピジン英語でも同様の特徴があるとされている(Sakoda & Siegel 2003:7)
。
(12)ミー等ゼニ出し合ってパーテーをしたんです(1955.11.4)
(13)ユー等と遊ぶようなタイムがない(1955.8.23)
4. 1. 6 親族名称
ハワイ日本語では、親族名称に英語が使用されると言われているが、今回の調査でも、多く観察された。
(14)のよ
「ボーイ」は「男の子」と「息子」の意味に使用されるが、
(14)
うに、
「息子」は「ボーイ」
(boy)と言うことが多い。
は「うちのボーイ」と言っていることから「息子」を指していることがわかる。同じように、
「ギョール」
(girl)も「女
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東京学芸大学紀要 総合教育科学系 第 59 集(2008)
の子」と「娘」の意味がある。
(15)のように、父親を指す場合は「パパア」
(papa)と記すことが多い。本調査では、
「パパ」が1回、
「パパア」が7回観察された。そのほか、
「ブラザー」
(brother)
、
「シイスター」
(sister)
、
「グランマー」
(grandma)
、
「グランパー」
(grandpa)などがあった。
(14)うちのボーイも(柔道の)少年部に出場したことがある(1955.8.30)
(15)川添君は広島県備後の人だ、パパアの生も違ふと、ヤカマシク言はれた。
(1955.9.6)
4. 1. 7 日本語との複合語
日本語に接続し複合語を形成する借用語も多い。ハワイ日本語においては、標準日本語では使用されない複合語が
多く観察された。
(16)から(19)の例は、複数回観察された語である。カッコの中の数字は出現回数を示す。
(16)の
「ケーキ切り」
(ケーキ:cake)と(17)の「ボーケー投げ」
(ボーケー:bouquet)は、結婚式および披露宴での儀式的行
為であるが、結婚の報告記事が掲載された際に使用される場合が多いため、出現回数が多くなっている。
(18)の「配
達ボーイ」
(ボーイ:boy)は、新聞配達をする少年を指している。
(19)の「ポイズンかけ」
(ポイズン:poison)は、雑
草を一掃するために毒を撒くことである。ハワイは、植物がはやく成長するため、雑草に毒をかけることが日常的に行
われている。
(16)ケーキ切り(6)
(17)ボーケー投げ(4)
(18)配達ボーイ(4)
(19)ポイズンかけ(3)
1964 年調査では、
「盆踊り」を意味する「盆ダンス」が観察された(島田・本田 2007)が、1955 年の記事には一度も
記述がなく、すべて「盆踊り」あるいは「盆おどり」であった。したがって、
「盆ダンス」という語が一般的に使用され
るようになったのは、1955 年よりも後であることが推測できる。なお、現在のハワイでは、盆ダンスは、日系人のみなら
ず、他民族の間でも人気のある文化活動である。
4. 1. 8 日本語訳の併記
1955 年に発行された新聞の、1964 年調査との大きな違いは、英語からの借用語に日本語訳が記載されている例が散
見されるということである。島田(2006)および島田・本田(2007)では、日本語訳については記載されていないが、
1964 年の新聞を確認したところ「エーアメール(飛行郵便)
」の例があるのみであった。 1955 年発行の新聞記事には、
(20)から(23)のように、英語の借用語に続いてカッコ内に日本語訳を記述する例が 27 件観察された。なぜこのよう
(21)ウオーク・アウト(workout)
な語に日本語訳がつけられたか、
その理由はよくわからない。
(20)レーオフ(layoff)
、
のような、経営用語はなじみがないと考えられたためかもしれないが、
(22)スタンプ(stamp)などは日常的な語であ
るし、
(23)ラバ(lava)はハワイ島においては知らない人はいないと考えられる。また、
「タキス」
(tax)は今回の調査
で 6 件の例があったが、日本語訳が付されているのは1例のみであった。
「ラバ」も4件中1件のみ、訳が示されていた。
したがって、どのような借用語に日本語訳がつけるかという法則は見いだすことができないが、1955 年の時点で、記者
は、英語がわからない人を多少なりとも意識していたと推測できる。
(20)レーオフ(解雇)
(1955.6.7)
(21)ウオーク・アウト(休業)
(1955.5.24)
(22)スタンプ(郵便切手)
(1955.6.21)
(23)ラバ(熔岩)
(1955.5.21)
4. 1. 9 表記
実際にどのように発音するかは、表記からある程度推測できる。たとえば、
「girl」は、
「ギョール」と表記されている
が、実際話し言葉でも、
「ガール」よりは「ギョール」に近い発音である。また、諸星(2006)によると、1923 年に北
「ギョール」
米インディアナポリスのミッションズ大学で日本語を教えていた半井豊三による論文 3 に以下の記述があり、
と発音されていたと考えられる。
「それから布哇の英語は一種独特の癖がある故、布哇から来た日本人は直ぐに分る、例へば“girl”を「ギョウル」とい
ふ等がその例である。
」
このように、書き言葉において、どのように表記されるかということは、実際の発音を知るための手がかりとなるであ
ろう。標準日本語とは異なる例が数多く観察されたが、以下では、特徴的と言えるものをとりあげる。
まず、handを標準日本語に借用する場合、
「ハンド」と表記し、実際そのように発音する。
「ハンド」と表記すると、
子音ではなく、母音「o」で終わることになり、英語の発音とはかなり異なったものとなる。ところが、ハワイ日本語で
は、hand の場合、
「ハン」あるいは「ヘン」と表記され、
「d」の部分は省略される。Sakoda & Siegel(2003:27)による
と、この傾向は、ハワイピジン英語の特徴でもある。ハワイ語の音節は子音で終わることがないため、
「d」や「t」など
の音は省略されるとされている。1964 年調査でも、
「アップサイダウン」
、
「ドンケア」の例が紹介されているが、上記の
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島田・本田:日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
ハワイピジン英語の特徴にあてはまる。1955 年では、そのほか以下の例(
「g」
、
「c」
)が観察された。日本語の音節も子
音で終わることが少ないため、このような表記のしかたが、ハワイピジン英語の影響か、日本語の影響か、特定するの
は困難である。なお、
(24)から(26)の例のカッコ内は、原語と標準日本語での表記方法である。
(24)スタツキン(stocking、ストッキング)
(25)ダンシン(dancing、ダンシング)
(26)ピチヤー(picture、ピクチャー)
ハワイピジン英語の発音の影響を受けた可能性があると考えられる例はほかにもある。まず、
「d」の部分を「ヅ(ズ)
」
などと表記する点である。神崎(1985)によると、ハワイピジン英語では、
「d」が「r」の前に置かれたとき、
「d」は
[dʒ]となり、
「drive」は[dʒraiv]
、
「dress」は[dʒres]となる。その発音が反映されたためか、
(27)
(28)のように、標
準日本語では「ド」と表記される部分が「ヅ(ズ)
」あるいは「ゾ」と表記されている。また、Sakoda & Siegel(2003:26)
は、
「d」音の特徴に加え、
「r」の前の「t」は「ch」というように発音されると述べている。
(29)と(30)は、標準日本
語で「ト」と表記されるところを「ツ」が使用されている。Sakoda & Siegelの言う「ch」をカナで表すと、
「チュ」に近
いと推測できるが、
「ト」よりは「ツ」のほうが近く、
(29)
、
(30)の例もハワイピジン英語の影響の可能性がある。
(27)ヅライバー(driver、ドライバー)
(28)ズレス/ゾレス/ヅレス(dress、ドレス)
(29)ツレーン(train、トレイン)
(30)ツラブル(trouble、トラブル)
water, watchなどの wa の部分は、標準日本語では「ウォ」と表記するが、ハワイ日本語では、
(31)から(33)のよう
に「ワ」と表記されていた。
(31)ワターボーイ(water boy)
(32)ワターパイプ(water pipe)
(33)ワツチ(watch)
母音では、オ段をア段にする例が多く見られた。
(34)から(37)はその一例である。下線部分の母音は、原語で表
すといずれも「o」で表記されるが、発音は[á]である。
(34)カテージ(cottage、コテージ)
(35)シヤーピング(shopping、ショッピング)
(36)ダクター(doctor、ドクター)
(37)タツプ(top、トップ)
4. 1. 10 その他
英語辞書に記載がなく、なおかつ各種ハワイピジン英語の書籍にも記載がない語が 2 例あった。
(38)の「ボーシ」は、
ボス(boss)つまり上役の意味であり、今回の調査では16 例観察された。
(39)
、
(40)のように敬称のように使用される
例も多かった。
「ボーシ」の語源は、bossであると思われ、Sato(2002)は “Pahoa Yesterday”の中で「bossi」という語
を使用しており、ハワイピジン英語でも使用されていることが推測できる。
(38)相賀社長は私のボーシである(1955.9.20)
(39)栗栖ボーシも馬上から、キビ畑廻りをしたルナであった(1955.9.6)
[栗栖上役も馬に乗って、サトウキビ畑まわり
をした監督であった]
(40)K谷口商店のボーシ谷口幸一氏(1955.12.6)
(41)のフアイサムは、例文中のフオーサム(foursome、4人組)の類推から作られた語であると考えられる。つまり、
フアイサムはファイヴサムであり、5 人組の意味で使用されている。日系人へのインタビューでは、通常使用する語であ
るとのことであった。
(41)フオーサムで行ったり、フアイサムで行くゴルフアーである(1955.5.24)
4. 2 ハワイピジン英語からの借用語
1964 年調査では、
「バンバイ」
(後で)
、
「ノーライキ」
(好きではない)
、
「ノートクトク」
(おしゃべりしない)
、
「ノー有
志」
(有志ではない)
、
「カウカウ」
(食べる)などが観察された。会話でもよく使用されるのは、
「カウカウ」
、
「バンバイ」
であり、1964 年の調査に引き続き、今回の調査でも観察された。次に多いのが「ノー」を伴う表現である。ピジン英語
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では、
「no」を「can」
「like」
「have」などの前につけて、否定を表すが、今回の調査でも、
(42)
、
(43)のほか多くの例
が観察された。
(42)ノーケン・ヘルプで長きに巻かれる(1955.8.26)
[仕方なく長きに巻かれる]
(43)タバコ屋の娘からもノーライキされるヒロ禁煙家(1995.5.21)
[タバコ屋の娘からも嫌われるヒロの禁煙した者]
ハワイピジン英語で存在や所有を否定する場合は、
「nomo」
(no more)を使用するが(Sakoda & Siegel 2003:85)
、今
回の調査でも(44)のように「ノーモー」が使用されていた。
(44)ノーモーならノーケン・ヘルプで片付いたからである(1955.11.11)
(45)の「トーマチ」は、ピジン英語の「too machi」
(too much)である。Simonson(1981)によると、
「too machi
good」は、
「とてもいい」という意味であり、日系人がよく使用すると言われている。
「too machi good」は英語(good)
を強調した表現であるが、
(45)は日本語(あまい)を強調した表現となっている。
(45)トーマチあまい国柄(1955.7.15)
[とてもあまい国柄]
(46)の「ローンモア」の原語である英語 lawn mowerは、
「芝刈り機」を意味する名詞であり、動詞としては使用され
ないが、ハワイピジン英語では動詞としても名詞としても使用できる。
(46)では「する」を伴い、動詞として使用され
ているため、ハワイピジン英語からの借用語の可能性がある。
(46)ヤードをロンモアさせる(1955.8.19)
[庭を芝刈り機で刈らせた]
次の語は、一見ハワイ語に見え、使用者の多くもハワイ語と認識しているが、実はハワイピジン英語である。
(47)の
(働く)
、
(48)
「ヌイヌイピリケア」の「ヌイヌイ」はハワイ語の「nui」
(大きい、と
「ハナハナ」はハワイ語の「hana」
ても)あるいは「nunui」
(非常に大きい)が語源である。なお、
「カウカウ」
(kaukau、食べる)も一般の使用者はハ
ワイ語だと認識しているが、語源は中国人が使用していたピジン英語の「chow chow」とされている(Sakoda & Siegel
2003:5ほか)
。
(47)ハナハナ[働く、仕事]
(48)ヌイヌイピリケア[とても大きな問題]
4. 3 ハワイ語からの借用語
4. 3. 1 動詞
英語からの借用語では、名詞が大半であったが、ハワイ語からの借用語は、動詞(借用語+する)として使用する例
(無駄にする)
、
(50)の「ホロホロ」は「holoholo」
(散歩する)
、
「モイモイ」は
が多い。
(49)の「ポホー」は「pohō4」
「moimoi」
(寝る)
、
(51)の「コクア」は「kōkua」
(協力する)
、
(52)の「パウ」は「pau」
(終わる)を意味するハワイ
語が語源である。
「モイモイ」
、
「コクア」
、
「パウ」は1964 年調査でも観察されている。
(49)二時間ばかりタイムをポホーした(1955.12.2)
[二時間ばかり時間を無駄にした]
(50)カウカウがすんだらホロホロして、ミーはモイモイしたい(1955.9.16)
[食事が済んだら散歩して、私は寝たい]
(51)領事館をコクアする(1955.9.27)
[領事館を援助する]
(52)パハラ耕地の八十一名がパウされる(1955.12.20)
[パハラ(地名)耕地の81名がやめさせられた]
4. 3. 2 名詞
名詞の例も多く、もっとも多く観察されたのは、
「アイカネ」
(aikāne;友人)であり、1964 年調査と同じ結果であった。
その他、
「レイあるいはレー」
(lei;花の首飾り)
、
「ハオレ」
(haole;白人)
、
「カナカ」
(kanaka;ハワイ人)が、それぞ
れ4回以上観察された。
また、慣用表現に使用する例も見られた。
(53)の「パパレ」
(pāpale)は帽子の意味であるが、
「パパレを脱ぐ」つま
り「シャッポを脱ぐ」で「脱帽した」という意味で使用されている。
(53)すっかり、パパレを脱いだのであった(1955.7.19)
4. 3. 3 複合語
日本語と接続して複合語を形成している例も観察された。
(54)の「ハオレ学校」は、
「白人」を表すハワイ語「haole」
(ハオレ)に「学校」が接続したものである。直訳すれば「白人の学校」ということになるが、公立学校を指していると
考えられる。
(54)ハオレ学校と、日本人学校へは必ず通はしました(1955.12. 6)
英語と接続したものには、以下の例があった。
(57)の「マクレ・ドンケア」は、
「マクレ」
(makule)が「老人」
、
「ド
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島田・本田:日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
ンケア」
(don’t care)が「気にしない」の意味である。
(55)コクアメン(1955.8.12)
(kōkua men、協力する人)
(56)ポホー・マネー(1955.6.14)
(pohō money、無駄金)
(57)若い人々がマクレ・ドンケアとなったら(1955.9.6)
[若い人が老人に無関心になったら]
4.4 日本語
4. 4. 1 接辞的表現
1964 年調査では、時を表す接辞的表現「一昨」
「昨」
「去」
「今」
「明」
「毎」が観察され、今回の調査でも、同様の例
が観察された。島田・本田(2007)で指摘したように、
「一昨」は「2日前の」
、
「昨」は「前日の」の意味で使用されて
いる。
(58)一昨サンデー[一昨日の日曜]
(59)昨マンデー[昨日の月曜]
(60)去週間[先週]
(61)今フライデー[今週金曜日]
(62)毎サンデー[毎週日曜日]
(63)明サタデー[明日土曜日]
1955 年、1964 年ともに、多くの例が見られることから、当時一般的な表現だったと考えられる。話し言葉でも使用さ
れていたかどうかは不明であるが、
「毎サンデー」は、口頭によるインタビューで採取例がある。
今回の調査では、新たに「第二」という例も観察された。
(64)は、
「第二日曜」の「日曜」の部分を翻訳したもので
ある。以上の表現から、曜日に英語を使用することが一般的だったということがうかがえる。
(64)第二サンデー
そのほかの接辞的表現には、島田(2006、2007)で指摘した「好」
、
「愛」
、
「両」が観察された。接辞として「好」を
使用する例は、1964 年調査では「好人気」
(島田・本田 2007:489)
、ブラジル日本語では「好ポンド」などが報告され
ている(鈴木 1982:102)
。ハワイ日本語において、英語からの借用語に「好」を伴う複合語としては、
(65)の「好チャ
ンス」が初めての例である。
(66)の「愛」は、ハワイ日本語では、
「愛息」
「愛嬢」など多く使用されているが、
「愛孫」
は標準日本語では使用されない語であろう。
(67)の「両」もハワイ日本語では多く使用されていた。
(65)好チャンス
(66)愛孫
(67)両サンデー
今回新たに観察された接辞は「新」である。
(69)のように、標準日本語では使用されない表現方法が観察された。
(68)は、文脈から「新しい島」の意味で使用されていることがわかる。
「新しい建物」という意味で「新建物」という
例もあった。
(68)ホノルルの西方三八五哩の海上に又も新島らしいものが出現(1955.9.27)
4. 4. 2 方言
ハワイに移住した日系人の出身地は、広島県や山口県が多いため、それらの地域の方言が多く使用されている。今回
の調査では、
(69)の「みやすい」
(簡単)
、
(70)の「久しう」のようにウ音便の使用などが観察された。ウ音便に関し
ては、ほかに、
「同じう」や「厚う」の例があった。また、話し言葉では語尾に「のう」をつけることが多いが、今回の
調査でも(71)のようにハワイ語に「のう」をつける例が観察された。
(71)の「ポロレイ」は「正しい」を意味するハ
ワイ語「pololei」である。そのほか、
「マンマンキビ」
(とうもろこし)
、
「シビ」
(まぐろ)などがあった。
(69)帰化が非常にみやすく(1955.9.2)
(70)久しうコナに行っていないので(1955.7.26)
(71)リコウな子はポロレイのうと言って親を悦ばすらしい(1955.11.25)
4. 4. 3 造語
造語は、英語からの翻訳による造語と、類推による造語の2 種類に大別できる。
英語からの翻訳による造語には、1964 年調査では、買物センター(shopping center)
、アイス水(ice water)などの例
があったが、今回の1955 年の調査でも新たな造語が観察された。
英語では、会社名や店の名前に、
「Kadota Brothers」のように、
「Brothers」を使用する場合があるが、日本語ではそれ
に相当する語がないため、
(72)の「角田兄弟現金店」のように、
「Kadota Brothers」を「角田兄弟」と翻訳している。
(72)角田兄弟現金店(shop at Kadota Brothers)
また、鳥や樹木の名前の「bird」
「tree」の部分を翻訳する例が観察された。
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東京学芸大学紀要 総合教育科学系 第 59 集(2008)
(73)マイナー鳥(myna bird)
(74)バンヤン樹(banyan tree)
次の例は、山「mauna(
「山」を示すハワイ語)
」や谷「valley」の部分を翻訳した例である。
(75)マウナケア山(Mauna Kea)
(76)マノア谷(Manoa Valley)
その他以下の例が観察された。
(77)ローカル人(local man)
(78)スタート線(start line)
(79)フラ踊(hula dance)
類推による造語も多くの例が観察された。
(80)と(81)の例は、
「黒んぼう」と並んで使用されていたものである。
造語と意識されていたかどうかは定かではないが、意識されていたとしても、新聞でこのような大胆な造語を使用する
ことは、比較的大胆に造語が行われていたことを示すと言える。
(80)白んぼう
(81)黄ろんぼう
(82)
、
(83)は、日系の類推から使用されていると考えられる。
(82)外人系
(83)支那人系
(84)の「禁煙家」は、愛煙家から類推されたと考えられる。
(84)禁煙家
4. 5 出自が不明な語
ハワイ日本語特有語の出自および意味を解明するために、各種辞典、先行研究、ハワイ日本語話者へのインタビュー
を行ったが、今回の調査では次の3 語の出自が解明できなかった。トモエ・ニシさんへのインタビューによると、
(85)
の「アンプ」は「危ない」
、
(86)の「オーバケンタイ」は「気にしない」
、
(87)の「カベサ」は「脳」という意味であ
る。
(85)アンプな禁煙家(1955.5.21)
(86)昔のハワイはオーバケンタイで、大人の男女混浴だった(1955.8.19)
(87)カベサの働きが違う(1955.11.25)
5.おわりに
島田・本田(2007)では、
『ヒロタイムス』1964 年発行分の記事を分析し、本研究では、同じく『ヒロタイムス』1955
年発行分の記事を分析した。島田・本田(2007)では、記事の一部の分析にとどまったが、今回はすべての記事を分析
対象としたため、多くのデータを得ることができた。英語からの借用語は異なり語数で 371 語であり、1964 年調査(島
田・本田 2007)の98 語の実に3 倍以上であった。ハワイピジン英語からの借用語は異なり語数で 21 語であり、1964 年
調査では3 語であったので 7 倍であった。
また、1980 年代までの先行研究では、ハワイピジン英語からの影響についてはほとんど触れられていないが、語彙的
にも表記(音声)的にも、実はかなり影響を受けていることが本研究において明らかになった。音声に関しては、先行
研究において英語からの借用語は英語の発音に近いという記述があるが(比嘉1974)
、今回の分析から、ハワイピジン
英語の発音の影響もかなり受けていると言える。ハワイ日本語を解明するためには、ハワイピジン英語からの影響を十
分に考慮する必要があるだろう。
英語(口語英語も含む)
、ハワイ語、ハワイピジン英語などからの借用語が多い、日本語の方言が使用される、造語
が多いなどの特徴は、島田・本田(2007)の結果とほぼ共通しており、一貫して、独自のハワイ日本語が存在していた
ことが確認できた。今回新たに明らかになった特徴として、複数形の名詞を英語から借用する場合原語どおりに複数形
で借用する、代名詞に「等」をつけて複数形を作る、英語からの借用語の表記についてハワイピジン英語の影響を受
けている、などが明らかになった。また、1955 年の結果で、1964 年調査と異なる点として、一部の英語からの借用語に
日本語訳が記載されている、
「盆ダンス」の使用がない、などがあげられる。ピジン英語に関する研究や書籍は多いが、
ハワイ日本語に関するものはわずかである。ハワイ日本語の特徴はおおむね明らかになったと考えられるが、さらに、
具体的な使用例を増やし、分析を進める必要があるだろう。また、今回も出自が解明できなかった語もあった。今後、
当時のハワイ日本語を解する者へのインタビューが困難となるため、ハワイ日本語の全体像を解明することが急がれる。
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島田・本田:日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
注
1 ハワイ島ヒロ在住の日系2世であるTomoe Nishiさんにインタビューを行った。
2 ハワイピジン英語は、厳密にはピジン(pidgin)ではなくクレオール(creole)と呼ぶべきであるが、ハワイでは「ピ
ジン(Pidgin)
」と呼んでいるため、本稿では「ハワイピジン英語」と呼ぶこととする。
3 「北米に於ける日本語」
『国学院雑誌』34 巻 2 号、1928 年 2 月(諸星 2006)
。
4 ハワイ語は、母音に長音、単音の区別がある。
「ō」は、長母音を示している。
資料
カッコ内の数字は出現回数を示す。本文でふられておらず、意味が連想しにくいもの、特殊なもの、通常と異なる語
のみ*を付し、リスト末に意味を記した。下線を示したものは、1964 年の調査(島田・本田 2007)の資料に掲載されて
いるものである。
英語からの借用語
U・ドライヴ*1(1)
アドレス*2(1)
アプライアンス*3(1)
アポイント*4(1)
アン・ネセサリー(1)
アンダスタンド(1)
インジョイ(2)
インジン(1)
インターン*5(1)
インタミデエート(1)
イントレスト(1)
ウイーク・デース/ウイクデース(2)
*6
*7
ウエスト・マネー (1) ヴエトラン (1)
ウイツシユフル・シンキング(1)
ウォーク・アウト/ウォークアウト(10)
エネ・タイム(1)
エネメー・エイリアン(1)エンプロイー(1)
オートモビール(1)
オーバ・タイム(1)
オーライ(4)
オーライオーライ(1)
オール・タイマー*8(1)
オールタイム(1)
カウンテー*9(1)
カウンテー・インプロイー(1)
カクテルアワー(2)
カストマー(6)
カストデアン(1)
カテージ/カテーヂ(2)
*10
カラボーシ(1)
カンツラクター(1)
ギニピツグ(1)
ギフトシヤツプ(1)
(1)
キヤソリツク(1)
ギヤソリン(3)
ギヤランテー(1)
キヤレンダー(1)
ギヤロン(2)
ギヨール(3)
クキース/クツキース(2)
クツク(1)
グツド・イングリツシ(1)グツド・フード(1)
グツドウイル(1)
グラーヂ(3)
グランパー(1)
グランマー(1)
グローブ(1)
ケーヂ(1)
ケーン(1)
ケチン*12(5)
コアタ(1)
コトンマテリアル(1)
ゴホーム(1)
コワイヤ(1)
コンスーマー(1)
サーゼント(1)
サイド・ウォーク/サイドウオーク(9)
サクリフアイズ(1)
サタデー(39)
サフマー*13(1)
サンデー(85)
サンデー・スクール/サンデースクール(16)
カラー
*11
グラース
(1)
サンタイム(1)
シイスター(1)
シェイク・ヘン/セキハン/セキハンド(3)
シニオリテー(4)
シビリアン(1)
ジム(1)
シヤーピング(1)
ジヤリー(1)
ジヤリシー(1)
ジユウ/ジユー(3)
シユース(9)
シユウメーカー(1)
ジヨイ・ライド(1)
シヨート・タイム(1)
シヨートパンス(1)
ジンゴルベル(1)
シンダ*14(1)
スウエター/スエター(3)スカラーシツプ(1)
スクール・ドライバー(1)スクールボーイ(1)
スタツキン(2)
スタツク(1)
スタツプ(1)
スツアデス(1)
ステツプス(2)
ステブル(1)
ストーム(1)
スポークス・メン(1)
スポイル(1)
ズレス/ゾレス/ヅレス(4)
セービング(1)
セールス・ギヨール(1) セメン(1)
セメン・フロアー/セメンフロアー(2)
ソーイング・ミシン(1) タースデー(1)
ダイク(1)
タキシー(2)
タキス(6)
タキス・ペーヤー(1)
タキスオフイス(1)
ダクター(21)
タツギ/タツグ*15(2)
タツプ(1)
タツプマン(2)
ダデイ(1)
− 521 −
東京学芸大学紀要 総合教育科学系 第 59 集(2008)
タンキ*16(1)
ダンシン(1)
チアメン(1)
チエツキ/チヤツキ(6)
チムニー(1)
チユー(1)
チユースデー(3)
チヨウチ(1)
ヅライバー(1)
ツラツク(1)
ツラブル(2)
ツレーラー(1)
*17
(1)
ヅレス・メーキング(1) テー・シヤツ(1)
テースデー(1)
テープ・メジヤー(1)
テーム(1)
テケツ(5)
デスカウント(1)
デスプレー(4)
デスマスク(1)
デビウ(1)
デポジツト(1)
デリバー(5)
デンテスト(3)
ドネーション(1)
トメト(1)
ツレーン
テリトリー・インプロイー(1)
テンプラリー・ツランスフアー(1)
ドライ・シーズン(1)
*19
ナテン
(1)
*18
(1)
トロンコ
ナンバー・ツー(1)
ニゴシエーシヨン(1)
ナンバー・ワン/ナンバーワン(5)
ニユース・ヴァリユー(1)バアー(1)
*20
パーキン・ミーター(4) パーク
(3)
*21
パーマネント(1)
ドン・ケア/ドンケア(2)ドンケア・タイプ(1)
パーラー
(4)
ハードヘツド(1)
バーバー・シヤツプ(1)
バイシクル(1)
ハイスクール(1)
*22
ハウス・アンド・ロット(1)
パーキン・スペース(1)
(1)
バガース
バチエラーオブ・アーツ(1)
バトリー(1)
パパ/パパア(8)
バビキユー/バブキユー(2)
パンス(1)
ハンタース(1)
ハンデンキツプ(1)
ハンテング(1)
ビアー/ビヤ/ビヤー(5)ビーンス(1)
ビケーシヨン(1)
ビズネス(20)
ピチャー(4)
ビフオーア(1)
ピンチ(1)
フアウンデーシヨン*23(1)
フアクトリー(1)
フアニユチア(1)
フアヤー・エンヂン(1) フールタイム(1)
ブキツパー(1)
ブツク*25(1)
ブラザー(1)
ブラツド・バンク(1)
フラツト・レート(1)
ブランチ(1)
フレツシ(1)
フレツシマン(1)
*24
フオジユライ
(1)
フラツシ(1)
ブレード/ブレツド(3) プレヂユアー(1)
ペーデー(1)
ペーパー・ミール/ペーパーミール(2)
ペーント/ペンタ/ペンター/ペント(6)
ポイズン(2)
ボーイ(15)
ペーブ(1)
ベベー(1)
ベンゴ*26(1)
ボーイス(2)
ボーシ(16)
ポーチギース/ポルキー(1)
ボーデン・スクール(1) ホーム・ウォーク(1)
ポリテツクス(1)
マーブル(1)
マザーインロー(1)
マチニー(2)
マツチ・ベター(1)
マテリアル(1)
マンデー(23)
ミー(16)
*27
*28
(1)
ミール(3)
ミシン
ヤード(10)
ヤード・マン(1)
メール
(1)
メリケン(1)
ラーストミニツツ/ラスト・ミニツ(2)
ライデイング/ライデング(2)
ラヴアー/ラバ/ラバー(6)
ラダースピート・ミーター(1)
ラツク*29(1)
*30
ラッチ
(1)
ラツシ・アワー/ラツシアワー(4)
ラバ・ツリー/ラバー・ツリー(2)
ランチシヤツプ(1)
リスペクト(1)
ルマー(1)
レーオフ(1)
レコメンド(1)
レターパケツジ(1)
レターン・シヨウ(1)
レデオ(2)
レント(1)
ローカルボーイス(1)
ロング・タイム(1)
ワターパイプ(1)
ワターボーイ(1)
ワツチ(3)
ワッチメン(1)
ワン(1)
ワン・タイム/ワンタイム(5)
ワンウエー(1)
ワンダフル(1)
カウカウ(2)
サイミン(1)*32
ハワイピジン英語からの借用語
エネタイムケン(1)
オール・セム*31(1)
チキン・ヘカ*33(1)
チヤツプスイ/チヤプスイ*34(2)
*35
ヌイヌイペリケア
(1) ノーケン(1)
トーマチ(1)
ノーケン、スタツプ/ノーケン・ストツプ(2)
ノーケン・ヘルプ(3)
ノーピリケア(1)
ノーフーフー*36(1)
ノーポホー*37(1)
ノーモー(1)
ノーライキ(6)
パウパウ*38(1)
ハナハナ*39(1)
バンバイ*40(7)
ホーハナ*41(1)
ローン・モア/ローンモア/ロンモア(3)
− 522 −
島田・本田:日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
ハワイ語からの借用語
アイカネ(40)
アヒナ(1)
*43
アロハヌイ
(2)
ケイキ*46(1)
*47
(1)
アラヌイ*42(1)
*44
カナカ(4)
カネ
(1)
コクア(24)
パウ(9)
アロハ(1)
カマアイナ*45(1)
ハオレ/ハオレー(6)
*48
(3)
フーフー*49(3)
パパレ(3)
ヒラヒラ
ポホー(2)
ホロホロ*50(1)
ポロレイ/ポロレー(14) マクレ(1)
マラヒネ*51(2)
ムームー(1)
モイモイ(3)
モロハ*52(3)
ルアウ*53(1)
ルナ*54(3)
レイ/レー(7)
ワヒネ*55(2)
マンマンキビ(1)
みやすい(2)
愛孫(3)
一昨―(8)
黄ろんぼう(1)
街(78)
外人系(5)
角田兄弟現金店(1)
観光團(7)
帰府(10)
去―(7)
禁煙家(1)
近耕地(2)
結婚月(1)
昨―(5)
支那人系(1)
主産(1)
出府(13)
新―(2)
花嫁月(1)
アイカネ記者(1)
アス等(1)
アキ・ボトル/空きボトル(2)
アロハ・ウイーク(1)
アロハ・シャツ/アロハシャツ(3)
アロハ週間(4)
おばけハウス(1)
外人ストア(1)
カナカ語(3)
カナカ人種(2)
カナカ族(1)
カナカ民族(1)
カネ番頭(1)
ククイ油*57(1)
好チャンス(2)
コクアメン(2)
帰廣(2)
クリスマス月(1)
ケーキ切り(5)
スタート線(1)
仕事メン(1)
タイプライター叩き(1)
パーキン場(2)
ハイスクール生徒(1)
ハオレ学校(1)
ハオレ・シヨウ(1)
配達ボーイ(4)
パパレ姿(1)
ビア飲み場(1)
フラ踊(1)
フラダンス(4)
ボーケー投げ/ボーケ投げ/ボーケ投(3)
パケー
*56
ハツパイ
(1)
日本語由来の語
明―(2)
他言語との複合語
ポイズンカケ/ポイズンかけ(3)
ポホー金(1)
ポホー・マネー(1)
ボン・シーズン(1)
マイナ鳥(1)
マクレ・ドンケア(1)
マクレワン(1)
ミー等(6)
メシア教
モンキポツト樹(1)
來廣(14)
ラバ林(1)
ローカル人(1)
*58
ホロホロ時代
(1)
出自の不明な語
アンプ(1)
*1
オーバケンタイ/オーバ・ケンタイ(4)
カベサ(1)
レンタカー *2 演説 *3 電化製品 *4 指名 *5 収容 *6 無駄なお金 *7 退役軍人 *8 常勤 *9 郡 *10
ワイシャツ *11 ガラス *12 キッチン *13 2年生 *14 灰 *15 切符 *16 タンク *17 汽車 *18 トランク
*19
なし *20 駐車 *21 居間 *22 きびの搾りかす *23 土台 *24 7月4日 *25 告発する *26 衝突 *27 機械 *28
郵送 *29 ロック *30 錠前 *31 ∼同様 *32 ハワイ風ラーメン *33 料理の名前 *34 料理の名前 *35 非常に困る
*36
落ち着け *37 怠けるな *38 終わる *39 仕事 *40 後で *41 キビを刈る仕事 *42 道路 *43 アロハの強調 *44
男性 *45 地元の人 *46 子供 *47 中国人 *48 恥ずかしい *49 怒る *50 歩く *51 外国人 *52 怠け者 *53
ハワイ風宴会 *54 監督 *55 女性 *56 運ぶ *57 ククイという植物からとれる油 *58 徒歩の時代
(車がなかったころ)
− 523 −
東京学芸大学紀要 総合教育科学系 第 59 集(2008)
参考文献
安倍勇(1965)
「ハワイと日本語」
『言語生活』166、81−88
阿部新(2006)
『小笠原諸島における日本語の方言接触』南方新社
井上史雄(1971)
「ハワイ日系人の日本語と英語」
『言語生活』236、53−61
神崎浩(1985)
「ハワイのピジン英語」
『ハワイ俗語辞典』研究者、219−229
黒川省三(1983)
「ハワイの日本語」
『現代方言学の課題 社会的研究篇』
、199−220、明治書院
真田真治(2006)
『社会言語学の展望』くろしお出版
島田めぐみ(2006)
「1960 年代におけるハワイ日本語の語彙的特徴」
、第 239回近代語研究会(発表レジュメ)
島田めぐみ・本田正文(2007)
「ハワイ日本語の語彙的特徴」
『東京学芸大学紀要総合教育科学系』第 58 集、483−493
鈴木英夫(1982)
「ブラジルにおける日本語の変容」
『名古屋大学教養部紀要』26, 91−116
相賀安太郎(1953)
『五十年間のハワイ回顧』
「五十年間のハワイ回顧」刊行会
ダニエル・ロング、小松恭子、新井正人、米田早希望(2007)
「サイパンの日本語について−実態調査の中間報告−」
『人文学報』
首都大学東京都市教養学部人文・社会系
比嘉正範(1974)
「ハワイの日本語」
『現代のエスプリ』85, 178−197
諸星三智直(2006)
「アメリカ日本語教育史における半井豊三の事績」
『国語研究』第 69 号、左1−17
Reinecke, J.E. 1969. Language and Dialect in Hawaii. Honolulu: University of Hawaii Press.
Sakoda, K. & Siegel, J. 2003. Pidgin Grammar. Honolulu: Bess Press.
Sato, H. 2002. Pahoa Yesterday: Hawaii Japanese Center
Simonson, D. 1981. Pidgin to Da Max. Honolulu: Bess Press.
Simonson, D. 1982. Pidgin to Da Max Hana Hou. Honolulu: Bess Press.
参考辞書
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『日本国語大辞典』第二版全 14 巻(2001)小学館
Pukui, Mary Kawena and Elbert, Samuel H. 1986. Hawaiian Dictionary. Honolulu: University of Hawai`i Press.
Tanouchi, Lee A. 2005. Da Kine Dictionary. Honolulu: Bess Press.
− 524 −
島田・本田:日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
日本語新聞に見るハワイ日本語の特徴
The Characteristics of the Japanese Language Used in Japanese Newspaper of
Hawaii
島 田 めぐみ *・本 田 正 文 **
SHIMADA Megumi, HONDA Masafumi
留学生センター*
要 旨
本研究は、米国ハワイ州ハワイ島ヒロで発行された日本語新聞『ヒロタイムス』で使用された日本語を分析したもの
である。島田・本田(2007)では、
『ヒロタイムス』の1964 年の記事の一部を分析したが、本研究では、発行が開始さ
れた1955 年のすべての記事を分析対象とした。分析の結果、371 語のハワイ日本語特有語が抽出された。その内訳は、
英語からの借用語 252 語、ハワイピジン英語からの借用語 21 語、ハワイ語からの借用語 29 語、日本語由来の語 21語、
混種語 46 語、語源がわからない語 2 語であった。今回新たになった点は、
「ボーイス」のように複数形の名詞を英語か
ら借用する場合原語どおりに複数形で借用する、
「ミー等」のように代名詞に「等」をつけて複数形を作る、英語から
の借用語の表記についてハワイピジン英語の影響を受けている、などである。また、1955 年の記事の分析において、島
田・本田(2007)の1964 年の結果と異なる傾向も観察された。1955 年の記事においては、一部の英語からの借用語に日
本語訳が記載されている、
「盆踊り」あるいは「盆おどり」のみで「盆ダンス」の使用がない、などがあげられる。
「盆
ダンス」が一般に使用されるようになったのは、1955 年よりも後であることが明らかになった。
* Tokyo Gakugei University (4-1-1 Nukui-kita-machi, Koganei-shi, Tokyo, 184-8501, Japan)
** University of Hawaii at Hilo
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