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脳機能の理解と制御に向けた光神経生理学の創成
ii 第 179 回山梨大学医学会例会 日時:平成 26 年 11 月 18 日(火)午後 4 時∼ 5 時 会場:福利厚生棟多目的会議室 教授就任講演 脳機能の理解と制御に向けた光神経生理学の創成 喜多村和郎 山梨大学大学院総合研究部 生理学第 2 司会 武田 正之教授 【要旨】ヒトを含む哺乳類は,無限ともいえる異なるパターンの外部刺激を受容し,脳の広範囲に わたって蓄えられた記憶とその時々の脳状態に基づいて適切な行動計画を決定し,実行する。こ のような情報処理機構の実体は,大脳感覚運動野や小脳をはじめとする各脳領野に存在する,個 別の機能を分担する神経回路群の動的な相互作用を通じた並列情報処理である。我々は,脳内に おける感覚運動情報処理メカニズムを明らかにするために,行動中のマウスにおいて光学的およ び電気生理学的手法を用いて研究を進めている。まず,感覚情報が神経細胞にどのように入力し ているのかという最も基本的な問題に対して,2 光子イメージングを用いた単一シナプス活動可視 化法を開発することで,個々のシナプス入力が樹状突起上で機能的なクラスターを形成している ことを発見した。一つ一つの弱い入力が集団として入力することで効率よく情報を伝達すること に役だっていると考えられる。また,運動制御や運動学習に重要な働きをする小脳活動の機能単 位が,分子発現で規定される構造単位と精密に一致していることを発見し,この構造−機能連関 が円滑な運動発現や効率のよい運動学習に関与していることを明らかにしつつある。一方で,脳 はこれらの感覚情報と運動情報を統合して最終的な行動として表出しており,その基盤となる脳 領野間の連関を明らかにすることが必須である。このために,オプトジェネティクスを用いた大 脳−小脳間の機能的結合マッピングを行い,それぞれの脳領野がどのように結合しているかの詳 細地図を得つつある。今後は,これら先端技術を組み合わせた方法を用いて,脳における感覚運 動情報処理の全貌を明らかにしたいと考えている。