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犯罪報道の国際比較分析 - DSpace at Waseda University
犯罪報道の国際比較分析 ―日米英三カ国の新聞報道を素材にして― 牧野 智和 1.問題設定 1990 年代から 2000 年代にかけての私たちの社会を理解する一つのキーワードに「治安」 があるだろう。オウム真理教の関連する一連の事件、センセーショナルに報道された少年 事件の数々、その他やはりセンセーショナルに報じられた多くの事件。内閣府「社会意識 に関する世論調査」における治安意識項目は、1994 年から翌 1995 年にかけて「悪い方向 に向かっている」と答える者が大きく増え、1998 年以降は「良い方向に向かっている」の 回答者を上回って現在に至っている。 とはいえ、2011 年の同内閣府調査では「悪い~」は 21.1%、 「良い~」は 13.3%となって おり、2005 年が「悪い~」47.9%、 「良い~」4.2%だったことを考えると一時のピークを過 ぎたようにみえる。オウム真理教事件は関係者の逮捕が相次いで終息に一歩近づいたよう にみえ(もちろん被害者の方々にとっては簡単に終わりようがないものだが) 、「第四の波 か」と一時言われた少年犯罪も鎮静化の方向に向かっているといえる。 教育および犯罪(社会)学の周辺では、神戸・連続児童殺傷事件以降に連なる多くの衝 撃的な少年事件について、非常に多くの言論が飛び交ってきた。具体的には、少年犯罪の 「増加」 「凶悪化」 「低年齢化」という事実認識、 「心の闇」という言葉が人口に膾炙するに 至った諸事件の解釈、少年法改正や「心の教育」の推進といったリアクション等に関して、 さまざまな言論が噴出してきたといえるだろう。 しかしこれもまた、往時のような言論の噴出からみると、現在の少年犯罪の状況につい ての言及はあまりみることができない。少年犯罪の近年の現象を若者一般の心性との関連 で論じた土井隆義(2012)などがあるものの、それでも、かつての注目度の高さに比する と現在との落差はいかにも大きい。 少年の検挙人員が減少しており、「社会問題」とみなされる度合いが弱まったため、言 及も減少したのだと考えることはできる。しかしながら、なぜ少年犯罪は「社会問題」と しての優先順位を他のテーマに譲るに至ったのだろうか。また、そもそもなぜ「社会問題」 たりえたのだろうか。結局のところ、十全な検討がなされないまま、ただ潮が引くように 少年犯罪への言及が少なくなっているのではないだろうか。 筆者が述べたいのは、この 15 年近く、教育および犯罪(社会)学界を賑わした少年犯 罪というテーマについて、総括的な検討が行われる必要があるのではないかということで ある。少年犯罪が「社会問題」としての位置づけを高めていく原因は何なのか。マスメデ ィアはその際どのような役割を果たしているのか。マスメディア「間」の役割の差やそれ 95 ぞれの関係性はいかなるものか。さらに、日本における犯罪の対処のあり方、犯罪報道の あり方は、国際的にみてどのような特性を有するのか、等々。 本稿はこのような、少年犯罪というテーマに関する、現状における総括に向けた一つの 試みである。ただ、本稿はそのためのもっとも基礎的といえる作業を行うため、少年犯罪 報道を直接的に扱うわけではない。本稿で行うのは、もっとも包括的な観点から私たちの 犯罪認識が成り立っている文脈を明らかにすること―つまり、日本における犯罪報道の 特性を明らかにするべく、海外の犯罪報道との比較を行うことである。 2.作業課題の導出―刑罰的ポピュリズム概念を参照して 近年の犯罪社会学においてしばしば言及される概念に、「Penal Populism」という概念が ある(Pratt 2007 など)。この用語の訳語は未だ定まっているわけではないが、本稿では「刑 罰的ポピュリズム」と呼ぶことにしよう。この概念は、犯罪をめぐる「エビデンス」 (特に、 犯罪をめぐる状況悪化が確認できないとするエビデンス)よりも個々の事件をめぐる(特 に犯罪被害者の) 「エピソード」を重視し、また「複雑で分かりづらい」司法手続きよりも 「簡単で明確な」処罰、つまり厳罰に傾斜していく社会意識の傾向を指しているというこ とができる(浜井 2009: 6-7)。 刑罰的ポピュリズム論には、各国の研究者が、完全に同じ立場ではないものの、賛同の 意を示している。たとえばジョック・ヤングは『排除型社会』 (Young 1999=2007)におい て、後期近代における「存在論的不安」の上昇を背景として、メディアを通した「他者の 悪魔化」がなされ、モラル・パニックが起こり、逸脱者について包摂ではなく排除のまな ざしが高まるという指摘を行っていた。あるいはロイック・ヴァカンは『貧困という監獄』 (Wacquant 1999=2008)において、新自由主義的政治・経済体制と、上述したような刑罰 的ポピュリズム(という用語をヴァカンは用いていないものの)との共振性を指摘してい た。 過剰な犯罪報道、犯罪を社会全体が取り組むべき問題とするのではなく個人あるいは家 族に帰責しようとする志向の浮上、犯罪不安と厳罰化要求の高まりを包括的に論じるこれ らの議論は、日本における犯罪報道を理解するフレームワークとして一定の妥当性をもつ ものといえるかもしれない(牧野 2008 など参照)。だが刑罰的ポピュリズム概念は、たと えば「ゼロ・トレランス」の「発信源」としてのニューヨークを中心とした英米圏を主な 事例として論じられている向きがあり、日本における一定程度の当てはまりという以上に 概念は検証されてはいない。いや、そもそも刑罰的ポピュリズム概念の妥当性は、英米圏 においても未だ十全に検証されていないのかもしれない。 だが少なくとも、近年における各国の犯罪報道を一つの枠組から包摂しようとする同概 念は、研究の焦点を絞るにあたっては有益であるように思える。つまり、日本の犯罪報道 と、刑罰的ポピュリズム論でしばしば言及される英米圏―特に英米であり、アメリカの 場合は特にニューヨーク―の犯罪報道とはどのように相似性・相違性があるのかという 作業課題の導出には、一定の意義を付与してくれる概念だと考えられるのである。 とはいえ、日米英三カ国の犯罪報道を比較検討するとはいっても、各国の(犯罪)報道 が置かれているメディア環境は同様ではない。巨大なシェアを誇る全国紙が存在する日本。 96 新聞のシェアは相対的に小さい代わりにオンライン展開が積極的になされ、巨大なテレビ ネットワークとニュース専門チャンネルが競合するアメリカ。テレビ局の数が相対的に少 なく、タブロイド紙が非常に大きなシェアを有するイギリス。そして各国における犯罪報 道の効果も一様ではない(阪口 2008、小俣・島田 2011 など)。だが以下では、こうした 効果論の知見を念頭に置きつつも、各国の犯罪報道の特性を明らかにすることにまず傾注 することとしたい。 3.犯罪報道の国際比較分析 (1)分析素材について 2004 年と 2006 年に内閣府が実施した「治安に関する世論調査」では、治安や犯罪に関 する情報の入手先としてもっとも多く挙げられていたのは「テレビ・ラジオ」 (2004 年 95.7%、 2006 年 95.5%)、次いで「新聞」 (80.1%、81.1%)であった。その意味ではテレビを分析素 材とするのがより適切かもしれないが、ここでは資料の収集可能性から、新聞報道を素材 とすることとしたい。 とりあげる新聞は、日本『朝日新聞』、アメリカ『New York Times』、イギリス『The Times』 とする。ABC(Audit Bureau of Circulations)調査協会『新聞発行社レポート 半期(2011 年 7 月-12 月)』によると、 『朝日新聞』は『読売新聞』の 9,953,031 部に次ぐ 7,713,284 部 の発行部数を誇る、国内二大全国紙の一角といえる。 『朝日新聞』を選んだ理由は、牧野智 和(2006)の少年犯罪報道分析が同紙を対象としており、今後の少年・成人犯罪報道の比 較検討可能性を考慮してのことである。 『New York Times』は、同じく ABC 調査によると 2010 年 10 月から 2011 年 3 月の平日 平均発行部数は 916,911 部となっており、これは『The Wall Street Journal』(2,117,796 部)、 『USA Today』 (1,829,099 部)に次ぐ全米第 3 位の数字である。しかし上位 2 誌が経済紙と (アメリカには珍しい)全国紙であることを考えると、地方紙が中心的なアメリカにおけ るその代表的な新聞であるといえるだろう。また、新聞社ホームページへのアクセス数で は同紙は世界一のアクセス数を誇っており(comScore 調べ、2011 年 12 月)、その意味でも アメリカを代表する新聞でもあるといえる。 『The Times』は、イギリスにおける保守系の高級紙である。同じく ABC 調査では 2012 年 1 月の平日平均発行部数が 397,549 部と、日米の各紙に比べて購読者は少ない。だがイ ギリスで最大の発行部数を誇る『The Sun』 (2,582,301 部)はゴシップやスポーツ記事を中 核とするタブロイド紙であり、犯罪報道の扱い方も、日本でいうスポーツ新聞のそれに近 い。イギリスの発行部数上位 4 紙はこれらのタブロイド紙に占められている。そのため、 発行部数こそやや落ちるものの、犯罪報道の比較可能性を考慮し、またイギリスにおける 代表的な新聞として、高級紙である同紙を選定した。 (2)犯罪報道量と犯罪報道の位置づけ では各紙の報道についてみていくことにしたい。まず、犯罪報道が掲載されている紙面 に関連して情報の整理を行ったものが表 1 である。分析対象としたのは 2011 年 11 月 27 日から 12 月 26 日の紙面( 『朝日新聞』は朝刊のみ)である。 97 表 1 からは、犯罪報道が含まれる紙面のあり方が各紙で異なることが分かる。『朝日新 聞』に限らず日本の新聞では、犯罪報道は政治面や経済面とは区分された社会面に掲載さ れている。これは日本で暮らす私たちにとってはあまりにも当たり前のことだが、『New York Times』では犯罪報道は「National」 「New York」という欄に政治・経済・文化等に関 連する記事とともに区分なく掲載されている(同紙では「International」という欄があり、 それに対置されている)。『The Times』およびイギリスの新聞各紙では、「News」(これは 「World」という欄に対置されている)という欄に、やはり政治・経済・文化等に関連する 記事とともに掲載されている。 表1 三カ国の新聞における報道傾向概況 朝日新聞 New York Times The Times ニュース掲載面平均頁数 2.8 8.4 9.5 1頁あたり平均記事数 7.9 3.1 2.7 1 か月の犯罪記事総数 76 58 58 677 802 869 11.2% 7.2% 6.7% 421.3 619.8 325.6 1 か月の記事総数 犯罪報道占有率 犯罪報 道の平 均文 字数/ 語数 ※2011 年 11 月 27 日から 2011 年 12 月 26 日まで。犯罪記事のカウントにあたっては、ホワイトカラー犯 罪、企業犯罪は除いている。また、 「犯罪報道の平均文字数/語数」については、 『朝日新聞』は文字数を、 『New York Times』および『The Times』は語数を掲載している。 このように異なる紙面構成のもとで、日本の犯罪報道は 2 から 3 ページの、記事が詰め 込まれた社会面の中に、概して 1 日に 2、3 件程度掲載されている。一方米英では、10 ペ ージ弱の、100 語程度の短報から 1000 語を超すコラムまでがちりばめられたニュース欄に、 犯罪報道が概して 1 日 2 件程度掲載されている。 『朝日新聞』における犯罪報道の平均文字 数は 421.3 文字、 『New York Times』における犯罪報道の平均語数は 619.8 語、 『The Times』 では 325.6 語である。日本語の 1 文字が英語の何語に換算できるのかを断言するのは難し いが、仮に日本語 1 文字を英語 0.5 語と換算するとしても、いずれにせよいえるのは日本 の(犯罪)報道の「短さ」である。これは以下でもまた検討することとしたい。 次に、各紙の犯罪報道で扱われる罪種について整理したものが表 2 である。各紙ともに、 殺人事件が半数以上を占めていることが分かる。矢島正見(1991)はかつて、日本の新聞 における犯罪報道では殺人の報道率が突出し、強盗、放火がそれに続いていることを明ら かにしたが、本稿の限られたサンプルでもその傾向は再認することができる。本稿が矢島 の知見に付け加えられるのは、その傾向は日本に限らず、米英の代表的な新聞でも同様だ ということである。 98 表2 三カ国の新聞の犯罪報道において扱われた罪種 記事数 殺人(未遂) その他内訳 傷害致死 (3 件以上扱われた罪種) 暴行・傷害 9.3%(7)、窃盗 6.7%(5)、放火 6.7%(5)、強 朝日新聞 76 69.0%(51) New York Times 58 56.9%(33) The Times 58 63.8%(37) 強姦・性犯罪 8.6%(5)、薬物 5.2%(3)、詐欺 5.2%(3) 姦・性犯罪 5.3%(4)、強盗 4.0%(3) 強姦・性犯罪 8.6%(5)、暴行・傷害 6.9%(4)、発砲 6.9% (4) ※事件によっては、強盗殺人事件等、複数の罪種がカウントされる場合もある。 五十嵐二葉(1991: 3)はかつて日米の犯罪報道を比較し、日本の報道は事件の発生・捜 査段階での報道が、アメリカの報道は裁判報道と論評がそれぞれ多くを占めていると述べ ていた。そこでこの点についても確認しておこう。各紙の犯罪報道が、犯罪に関するどの プロセスを扱っているのかを整理したものが表 3 である。本論文におけるサンプルの場合、 日米にさほど構成の差はないようにみえる。この理由としては、狭山事件(1963)、袴田事 件(1966)、福井女子中学生殺人事件(1986)、東電 OL 殺害事件(1997)といった、かつ て大きな耳目を集めた事件の再審に関する記事がこの時期に集中したことにあるが、より 際立っているのは、日米の記事傾向に比して、英『The Times』の記事構成は裁判・収監・ 釈放に関するものにかなり寄っていることである。各国のこうした記事構成についてはや はり以下で再度検討することにしよう。 表3 三カ国の新聞における犯罪報道の特性 事件発生・逮捕 捜査 裁判・収監・釈放 論考 朝日新聞 30.3%(23) 25.0%(19) 40.8%(31) 3.9%(3) New York Times 27.6%(16) 19.0%(11) 43.1%(25) 10.3%(6) The Times 19.0%(11) 10.3%( 6) 65.5%(31) 5.2%(3) ※( )内は記事数。 (3)日本における犯罪報道の内容と論点 さて、ここまでの概要を踏まえて、各紙の犯罪報道をもう少し詳細に検討していきたい。 まず日本の『朝日新聞』についてである。同紙に限らず、日本の新聞報道の表現形態が強 く定型化されていることは、ニュース研究における共通認識となっている(稲垣 1987, 大 石・岩田・藤田 2000: 100 など)。稲垣吉彦は日本の新聞報道の標準的文体は、「五W一H を漏れなく語」(稲垣 1987: 65)ろうとするものであり、また結果を最初に述べた後にそ の経過や雑感を逐次説明する「逆三角型文章構成」(1987: 83)になっていると指摘する。 ファン・ダイク(van Dijk 1985: 86、大石 2000: 101)のニュース言説の構造論を参照して 整理すると(図 1)、第 3 層「エピソード(事実)」、第 4 層「出来事」、第 5 層「出来事の 主要部分」に関する部分(図内では項目に影がついている箇所)に重心が置かれ、事件の 注目度(に伴う文字数の増加)に応じて、 「背景」 (第 5 層) 、 「出来事の結果と反応」 (第 4 99 層) 、 「解説」 (第 3 層)といった他の要素が扱われるようになるのが日本の(犯罪)報道の 一般的な表現形態であるということができる。 図1 日本における犯罪報道の構成(van Dijk 1985: 86、大石 2000: 101 を参照) 次にこの時期の具体的な事件とその論点について整理したい。この時期 3 回以上報道さ れた事件は、堺市女性不明(のち殺害されたことが判明) ・会社元副社長殺害事件の発生・ 逮捕・捜査に関するもの(6 回)と、福井女子中学生殺人事件(1986)の再審に関するも の(5 回)のみである。逆にいえば、多くの事件は一度、あったとしても二度報道される 程度である。そしてこれらは概して、上述したような報道のフォーマットにしたがって、 非常に淡々と報告されるのである。ここでは『朝日新聞』における「事件発生・逮捕」報 道の平均文字数(368.8 文字)に最も近い「小 2 女児、切られる 先月も付近で被害 千 葉・松戸」(2011.12.2 朝刊)を例示しておこう。 「1 日午後 3 時 15 分ごろ、千葉県松戸市栄町西3丁目の路上で、帰宅途中の小学 2 年の女児(8)が、 何者かに刃物で切りつけられた。女児は脇腹の付近に数カ所の切り傷を負って病院に搬送されたが、 傷はいずれも浅く、命に別条はないという。千葉県警は殺人未遂事件として調べている。 県警によると、女児は現場から数百メートル離れた自宅まで歩いて帰宅し、母親が 110 番通報した。 女児は警察官に『後ろから近づいてきた男に、果物ナイフのようなもので切りつけられた』と話して いるという。 100 現場は JR 常磐線北松戸駅から北西に約 2 キロの住宅街。付近では 11 月 18 日、今回の現場から約 2.5 キロ離れた江戸川対岸の埼玉県三郷市鷹野 3 丁目で、下校途中の女子中学生が刃物で切りつけられ、 あご付近に切り傷を負う事件があり、県警で関連を調べている」(朝日新聞 2011.12.2 朝刊) 福井での事件は再審開始に関する報道が 2 件、冤罪に関するコラムが 3 件という内訳に なっている。冤罪に関する問題は非常に重要だが、ここでは犯罪の発生・逮捕・捜査によ り注目し、堺市女性不明・会社元副社長殺害事件の報道の内容に注目したい。事件の発生・ 逮捕に関しては、先に引用したような「出来事の主要部分」に関する5W1Hにプラスア ルファの肉付けという形態をとるが、これは捜査報道でも同様である。なお、以下の記事 「象印元副社長のカード使われる カメラにキャップ帽の男 堺の殺害事件」(2011.12.8 朝刊)における人名は匿名化している。 「象印マホービン元副社長の A さん(84)が 1 日朝、堺市北区の自宅で襲われ殺害された事件で、 この日午前、同じ北区内の現金自動出入機(ATM)で、A さんのキャッシュカードが使われていたこ とが大阪府警への取材でわかった。防犯カメラには、キャップ帽をかぶり、マスクで顔を隠した男の 姿が映っており、府警はこの男の特定を進めている。 捜査関係者らによると、A さんのカードが使われたのは、A さん宅から東に約 1.5 キロ離れた農協支 所の ATM。男は預金の残高照会をしたが、結局、現金は引き出されていなかったという。 防犯カメラには、黒っぽい服装に、キャップ帽とマスク姿の男が ATM の画面をのぞき込み、操作す る様子が映っていた。男は後ろに順番待ちの人が立つと、その場を立ち去ったという。 同様の姿をした男は、11 月 5 日から行方不明になっている堺市南区の主婦 B さん(67)のキャッシ ュカードが使われた都市銀行でも、ATM コーナーの防犯カメラに映っていた。残高を確認後、ほぼ全 額の 5 万円をおろしてすぐに店を出たという。 府警は 6 日、この男が無職の C 容疑者(50)だとして、窃盗容疑で逮捕した。C 容疑者は『私には 知らないことです』容疑を否認しているという。 C 容疑者はかつて A さん宅の向かい側に暮らしていたという」(朝日新聞 2011.12.8 朝刊) このように、日本(『朝日新聞』)における犯罪報道は、5W1Hベース、逆にいえば一 部の事件を除き、背景や解釈を捨象したかたちで、非常に淡々と、犯罪という事象の発生 が語られるのである。 (4)アメリカにおける犯罪報道の内容と論点 アメリカやイギリスの場合は、ファン・ダイクの示した構成要素の多くをみることがで きる。短報1で扱われる事件を除けば、初報で事件の状況、容疑者について、被害者につい て、背景についてのニュース・ストーリーが一気に語られることは珍しくない。たとえば 2011 年 12 月 12 日の 「元警官が税務調査官の妻をクイーンズで殺害(Ex-Officer Kills His Wife, a State Tax Agent, in Queens, the Police Say) 」という記事では、10 日の午後に発覚した事件 1 『New York Times』では「National Briefing」として、国内で起きた事件が 3、4 件程度、 100 語前後で語られる欄があり、『The Times』では名称はないものの、同様の欄で 1 日に つき 10 件程度の事件短報が掲載されている。 101 にもかかわらず、殺害された妻が日常的に行っている業務、妻の同僚の証言、複数の隣人 の証言、容疑者が課されると想定される刑罰、そして妻の母親もかつて殺害されたことな どの情報が手際よく整理され報じられている。 アメリカの報道で興味深いのは、数ヶ月前の事件のニュース・ストーリーがしばしば報 じられるという点にもある。これは逆に、ストーリーの素材が出揃った時点で記事にする という制作ルーティンの違いといえるかもしれない。その意味で、ストーリーの素材がす べて出揃わなくとも、発生・逮捕の第一報をまず報じる日本とは大きく報道の姿勢が異な るようにみえる。 また、論評記事もしばしばみることができる。レストランチェーン「ワッフルハウス」 で起きた強盗事件を扱った記事2では、南部では多くの事件がワッフルハウスを一つの起点 として起こっていること―テロ攻撃の相談の場、逃亡中の容疑者が食事をとる場、強盗 の対象となる場となっていること―に触れながら、南部の生活に深く浸透しているワッ フルハウス(24 時間営業で、どこにでもあって便利)の営業規制は容易ではないといった 話に展開していく記事である。具体的な事件を手がかりにしながら、より広い社会的背景 について考察を展開するこのような記事は、週に 1 件程度みることができる。日本の場合 は、かなり話題となる事件でなければ、こうした論評に展開することはない。 また、裁判報道に力を入れているのも『New York Times』の特徴である。弁護士、検察 官、裁判官などの証言を入れ込みながら、いわば裁判を題材としたドラマのように、裁判 の過程が臨場的に幾度も描かれることは珍しくない。また、不当逮捕や無罪判決の報道も 多く(それ以前に警察の捜査方針や検挙体制に批判的な論調がとられる記事も少なくない) 、 第四の権力としてのメディアという姿勢が自覚的に担われていることを看取することがで きる。 (5)イギリスにおける犯罪報道の内容と論点 イギリスの犯罪報道は、上述したとおり、「裁判・収監・釈放」に関する報道が中心で ある。 「事件発生・逮捕」に関する報道は、なされても多くの場合短報で済まされることが 多く、400 語以上費やされた記事はこの 1 か月で 5 件に過ぎない(捜査報道では 3 件) 。一 方、 「裁判・収監・釈放」についての 400 語以上の報道は、この 1 か月で 11 件にのぼって いる。 しかし、量的傾向は裁判に偏っているとはいえ、イギリスにおいて全体的に事件の発 生・逮捕についての報道が軽んじられているわけではないようである。というのは、この 時期に報道が集中した事件に、行方不明となっていた女児―やがて殺害されたことが明 らかになる―のボイスメールを『News of the World』紙の記者がそのボイスメールをハ ッキングし、またその後に削除した結果、家族が生存を信じることになった(ボイスメー ルの削除操作が生存の証拠だと信じた)というスキャンダルがあった。これにとどまらな いハッキングが発覚によって、『News of the World』は既に 2011 年 7 月に廃刊となってい るが、このことは新聞によっては、事件の発生・逮捕あるいは捜査の報道に精力を注いで いるものがあるということを意味しているだろう。これは新聞間での報道姿勢の不統一と 2 「A Large Side of Drama at Waffle House Diners」(2011.11.27)。 102 いう論点を浮上させるものだが、この点は後でまた扱うこととしたい。 この時期もう一つ報道が集中したのは、黒人少年の殺害に関する裁判である。その論点 は、加害容疑がかけられている二人の元少年の加害行為というよりは、そこに人種差別的 背景があったかという点にある 3。サッカーでの人種差別事件が引き合いに出される記事4 もあり、この事件は単なる殺人事件ではなく、人種差別や白人ギャングの問題と重ねられ て注目の的となっている。 また、イギリスの場合も、裁判のやりとりがそのまま記事にされているケースが少なく ない。たとえば、2011 年 12 月 16 日の「ローレンス君殺害事件の王立顧問弁護士は容疑者 母のアリバイねつ造を主張(QC at Lawrence Murder Trial Claims Mother Invented Alibi) 」と いう記事では以下のようなやりとりが掲載されている 5。日本でも裁判官の判決やコメント が報道されることはあるが、このような相互のやりとりが掲載されることはかなり稀であ る。 Mark Ellison, QC, for the prosecution, said: “The first that we’ve heard of any suggestion that you can alibi your son for this murder today. I suggest made it up and it’s a recent thing that you have made it up.” Mrs. Norris said: “I haven’t made nothing up.” Mr. Ellison: “There’s not been a breath uttered until today that you were in a position to give your son an alibi.” Mrs. Norris: “My son would have been at home.”(The Times 2011.12.16) (6)新聞ごとのバリエーション さて、ここまでの議論に関して、率直に次のような疑問が湧くかもしれない。つまり、 三カ国の報道傾向としてここまで述べられてきたことは、単に選定された新聞の特性に過 ぎないのではないか、と。そこで、これまで述べてきた論点について、各国の代表的な新 聞を素材にして比較検討してみることとしたい。 三カ国における代表的な新聞の報道傾向について整理したものが表 4、各紙の犯罪報道 の特性を整理したものが表 5 である。日本は全国紙、ブロック紙、地方紙についてそれぞ れ発行部数の上位三紙を抽出している。アメリカはニューヨークにおける発行部数の上位 三紙を、イギリスは保守系高級紙である『The Times』、リベラル系高級紙『The Guardian』、 発行部数の多いタブロイド紙の中でもゴシップ中心ではなく国内ニュースを扱う『Daily Mail』の三紙をそれぞれ抽出している。 まず表 4 からは、表 1 で扱った三カ国の代表的新聞の傾向を再認することができる。日 本では 2 から 3 頁強程度の社会面に多くの記事が詰め込まれ、一方で米英は諸々の国内ニ ュースを扱う欄に、頁あたり 2 件弱から 3 件強の記事が掲載され、各個の出来事がより詳 細に検討される。とはいえ、イギリスの場合は『The Guardian』と『Daily Mail』の間でニ ュース欄の頁数が 3 倍以上開いている。翻って日本をみると、社会面の構成自体に関して 3 「Secret Tape Exposes Lawrence Defendant's Racist Obscenities」 (2011.12.14)。 「Lawrence Jury Is Told: Don't Bow To Pressure」(2011.12.23)。 5 訳出することも考えたが、本文のニュアンスを最大限汲み取ってもらいたいと考え、原 文をそのまま掲載している。 4 103 大きな差は新聞間にはみられない。 差がみられるのは犯罪報道の数である。まず、日本の場合は全国紙よりもブロック紙や 地方紙において、犯罪報道の記事数および掲載割合が大きくなる傾向がある。これはまず、 各地域で発生した窃盗や傷害などの事件をブロック紙、地方紙が積極的に掲載しているこ とによると考えられる。また、全国紙でも掲載される事件の当該地域では、他地域ではみ られない独自の捜査報道が行われる場合もあることにもよるといえる。 米英でも各紙での差はあるが、特にアメリカ(ニューヨーク)の場合、 『New York Post』 が「NYPD DAILY BLOTTER」というニューヨーク警察からのレポートを毎日掲載してお り、こうした紙面構成の水準において、犯罪報道を重視する姿勢が異なっている。 表4 紙名 三カ国における代表的新聞の報道傾向概況 ジャンル 部数 平均 平均 頁平均 犯罪 犯罪記 頁数 記事数 記事 記事数 事割合 読売新聞 全国紙 9953031 2.7 24.4 9.0 17 9.9% 朝日新聞 全国紙 7713284 2.9 21.0 7.4 12 8.2% 毎日新聞 全国紙 3421579 2.0 16.0 8.0 11 9.8% 中日新聞 ブロック紙 2680535 2.7 22.7 8.4 36 22.6% 北海道新聞 ブロック紙 1139954 3.7 30.6 8.2 35 16.4% 西日本新聞 ブロック紙 768087 3.3 26.4 8.0 19 10.3% 静岡新聞 地方紙 673566 2.7 31.7 11.7 46 20.7% 神戸新聞 地方紙 554278 2.9 29.1 10.2 27 13.2% 京都新聞 地方紙 493314 3.4 31.9 9.3 38 17.0% New York Times アメリカ 916911 8.0 28.3 3.5 12 6.1% New York Daily News アメリカ 530924 11.2 25.4 2.3 23 12.9% New York Post アメリカ 522874 13.8 42.9 3.1 42 14.0% The Times イギリス 397549 10.4 26.6 2.6 15 8.1% The Guardian イギリス 215988 6.1 19.4 3.2 8 5.9% Daily Mail イギリス 1945496 19.0 36.7 1.9 20 7.8% 次に表 5 をみてみよう。表 5 からは、表 3 でみた犯罪報道の特性を再整理することがで きる。表 3 では「事件発生・逮捕」に関する記事の割合は『朝日新聞』が最も多かったも のの、その割合は 30.3%に留まっていた。しかしサンプルとする時期を改めて日本の 9 紙 についてみてみると、日本の新聞における犯罪報道は、 「事件発生・逮捕」に重心を置いて いるという五十嵐の上述の指摘が今回は当てはまることがわかる。また、表 1 に関して日 本の犯罪報道の「短さ」に言及したが、表 5 からは各紙において、そのような犯罪報道の 短さを共通してみることができる。 一方、アメリカにおいては、各紙で犯罪報道の重心がやや異なっていることが分かる。 上述した「NYPD DAILY BLOTTER」を毎日紙面に掲載している『New York Post』では「事 件発生・逮捕」が犯罪報道の過半数を占め、『New York Daily News』でも 4 割強となって 104 いるが、『New York Times』では「裁判・収監・釈放」により重心が置かれ、記事の分量 も多い。イギリスでは各紙ともに「裁判・収監・釈放」に圧倒的な重心が置かれているが、 『Daily Mail』で特に記事分量が多いことがわかる。これは「事件発生・逮捕」に関しても 同様である。米英に共通していえるのは、新聞によって犯罪報道への姿勢が顕著に異なる ということである。 表5 三カ国における代表的新聞の犯罪報道の特性 犯罪報道に占める割合 紙名 発生 逮捕 文字(語)数平均 裁判 捜査 収監 コラム 釈放 発生 逮捕 裁判 捜査 収監 コラム 釈放 読売新聞 64.7% 5.9% 17.6% 0.0% 354.6 183.0 279.3 - 朝日新聞 75.0% 0.0% 25.0% 0.0% 346.9 - 301.7 - 毎日新聞 63.6% 18.2% 18.2% 0.0% 346.1 568.5 203.0 - 中日新聞 55.6% 22.2% 22.2% 0.0% 304.4 545.8 337.3 - 北海道新聞 71.4% 8.6% 17.1% 0.0% 264.4 408.0 443.5 - 西日本新聞 73.7% 0.0% 26.3% 0.0% 258.1 - 295.2 - 静岡新聞 63.0% 13.0% 21.7% 2.2% 235.0 350.8 305.2 1193.0 神戸新聞 70.4% 22.2% 3.7% 3.7% 285.1 293.2 276.0 903.0 京都新聞 73.7% 13.2% 13.2% 0.0% 251.5 300.8 189.2 - New York Times 33.3% 16.7% 41.7% 8.3% 388.3 1817.5 505.2 645.0 New York Daily News 43.5% 17.4% 34.8% 4.3% 200.4 302.8 220.4 380.0 New York Post 52.4% 9.5% 33.3% 4.8% 390.0 272.0 284.2 459.5 The Times 13.3% 0.0% 80.0% 6.7% 68.0 - 301.7 232.0 The Guardian 25.0% 0.0% 75.0% 0.0% 106.5 - 401.3 - Daily Mail 15.0% 5.0% 80.0% 0.0% 397.3 2416.0 734.4 - ※「事件発生・逮捕」「捜査」「裁判・収監・釈放」のうち最も割合の多い項目に下線を引いている。 4.考察 3.での分析結果を整理しよう。日本の犯罪報道は、5W1H(のみ)を基調とする、 「事件発生・逮捕」が淡々と、相対的に手短に報道されるというスタイルが一般的である。 全国紙よりブロック紙・地方紙の報道量が多いという傾向はみられるものの、報道の内的 構成に新聞ごとの差異が大きく見られないのが日本の犯罪報道の特徴である。 アメリカやイギリスは、ともにニュース・ストーリーに重きを置いている。短報として 報じられる事件を除けば、一つの事件に多くの字数を割き、現場の状況、関係者の証言、 事件が起きる背景が詳細に報じられている。また、両国とも(特にイギリス) 「裁判・収監・ 釈放」に関して、日本よりも多くの注目を払っており、事件発生以後の状況が広く伝わる ようになっている。そして人種差別問題、警察の捜査方針の問題等、一つ一つの報道に論 105 点が設定されている度合いが高いことも特徴である。そして、犯罪報道の量、重心の置き 方には新聞ごとで大きな違いがある。 さて、最も単純に考えるならば、ここで次のような仮説が浮かぶことになるだろう。つ まり、日本の近年の犯罪不安の高まりについては、こうした「沢山の事件が起こっている」 ことを淡々と報じる、 日本独特のスタイルが関係しているのではないかという仮説である。 つまり、どのような地域で、どのような新聞をとろうとも、人々の目の前には日々多くの 犯罪(殺人を中心とする)が起こっていると報じられるのが日本なのであり、そのような 犯罪をめぐる「疑似環境」こそが、私たちの犯罪観や治安意識に影響を与えている面があ るのではないか、と。 そこで、こうした日本の5W1Hの犯罪報道形態は、いつごろからみられるものなのか を簡単にではあるが検討してみよう。図 2 は、『朝日新聞』における過去 30 年間の犯罪報 道量を整理したものである。また、図 3 は、 「事件発生・逮捕」 「捜査」 「裁判・収監・釈放」 に関する各年の割合を整理したものである。 犯罪記事数 40 35 30 25 20 15 10 5 0 27.8% 犯罪報道含有率 30.0% 27.7% 25.0% 20.0% 15.0% 3.3% 10.0% 5.0% 0.0% 図2 『朝日新聞』における犯罪報道量の経年比較6 100% 80% 裁判・処分% 60% 捜査% 40% 発生・逮捕% 20% 0% 1980 1984 1988 1992 1996 2000 2004 2008 2012 図3 6 『朝日新聞』における犯罪報道構成要素の経年比較 各年 5 月 14 日から 20 日を対象。これは図 3 も同様である。 106 各図からいえるのは、年によって報道数の多寡がみられるものの、ある年を境に劇的な 変化がみられるわけではないということである。また、時期をさかのぼればその分社会面 は 1 日平均 2 頁に近づいていき、記事あたりの分量もむしろ減少傾向にある。ここからい えるのは、先の仮説は成り立たないということである。 だが一方で、図 2 と図 3 においてともに特異な傾向が示されている年がある。1995 年で ある(図 2 では 1983 年も特異な傾向を示しているが、これは神社本庁爆破事件の容疑者逮 捕によるものである)。1995 年の 5 月といえば、オウム真理教の起こした一連の事件につ いて、教団幹部が相次ぎ逮捕され、教団教祖・麻原彰晃(松本智津夫)が教団施設への強 制捜査の末、逮捕された時期であった。冒頭で述べたような、1994 年から 1995 年にかけ て治安意識が急激に悪化したことと合わせ考えると、治安意識の画期は、非常に単純なが らも、形式的な側面よりもその報じられ方の内実に特質をもつ、劇的な事件にこそあるの ではないかという素朴な考えに立ち戻らざるをえない。形式的な側面の検証を経てたどり つくのは、そのような画期となる事件の報道がいかに行われ、私たちに後々まで影響を及 ぼすような犯罪観を打ち立てていったのかを検証することが、1990 年代・2000 年代の犯罪 不安の醸成を考えるにあたって必要だという、やはり非常に単純で素朴な「振り出し」で ある。 本稿は、日米英の犯罪報道の相違を明らかにしたという点では、これまでにない一定の 知見をもたらしたといえる。しかし、私たちの犯罪認識が成り立っている文脈を明らかに するという観点からすれば、まだ具体的に何かを示すことができたわけではない。ただ、 どこを明らかにすべきかという手がかりをつかむことはできたといえるだろう。筆者の今 後の課題としたい。 【引用・参考文献】 赤羽由起夫,2010,「 『リスク』としての少年犯罪とモラル・パニック―『普通の子』の 凶悪犯罪報道に着目して」『犯罪社会学研究』35: 100-114. van Dijk, T. 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