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ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍

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ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍
日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要
No. 37 (2002) pp. 101 - 118
ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
安
井
真
也
Proximal eruptive products formed by lava fountain on Kilauea Volcano, Hawaii Island
Maya YASUI
(Received November 31, 2001)
A series of vigorous lava fountain sometimes occurs on Kilauea volcano, Hawaii Island. High fountain
activities in 1959 and 1983-86 formed cinder-and-spatter cones called Pu`u Pua`i and Pu`u `O`o, respectively.
The occurrence of near vent deposits was carefully observed in this study for both cases.Variations in the
occurrence of rootless flows are reported here including dissected blocks, slivers and other surface features
such as slickensides. These rootless flow resembles general aa flow in the medial to distal area. However,
the partially collapsed topography of the cone is remarkable in the proximal area. Some spatter ramparts
which were formed by low lava fountains through fissure eruptions were also surveyed in order to make a
comparison with high fountain deposits. Spatter ramparts themselves are composed of strongly agglutinated
spatters and are similar to the proximal facies of cinder-and-spatter cones formed by high fountains.
Although the behaviour of an individual spatter just after deposition is considered to be similar in both cases,
a faster accumulation rate and wider depositional area may generate rootless flow in the case of high fountains. Furthermore, rootless and clastogenic flow can be divided into two due to the fountain structure. That
is, intense accumulation of spatters around the vent may generate spatter-fed flow with high velocity, whereas
outer portion of fountain may generate rootless flow with lower velocity due to secondary flowage of the cone.
Keywords: lava fountain, spatter cone, Pu`u `O`o, Pu`u Pua`i, Kilauea Volcano, Hawaii Island
1.
1970 年代のマウナウルの噴火および 1983 ∼86 年のプ
はじめに
ウ・オオの噴火では,通常の溶岩噴泉に比べ非常に高
現在活動中のハワイ島キラウェア火山では“ハワイ
い高度まで到達する激しい溶岩噴泉が観測された。特
式噴火”と呼ばれる噴火様式の噴火がしばしば起こり,
にキラウェア・イキの活動では 570 m に達する溶岩噴
貴重な観察の機会を与えてくれる。一般に“ハワイ式
泉が記録され,溶岩噴泉に伴ってスコリアが広範囲に
噴火”と呼ばれる噴火様式は,割れ目火口から大量の
降下した。最近の研究では,このような激しい溶岩噴
溶岩を流出し,小規模な溶岩噴泉を伴う活動を示す。
泉の活動は,プリニー式噴火と呼ばれる噴火と機構が
このような噴火では,噴出されるマグマの大半は溶岩
類似した爆発的噴火であるという指摘もある (Parfitt
流となって火口から溢流することから,非爆発的な噴
and Wilson, 1999)。このような背景から,ハワイで
火様式の代表例として解説される。ところが,キラ
観察される溶岩噴泉は機構が多様であることが予想さ
ウェア火山の 1959 年のキラウェア・イキでの噴火,
れるが,活動の実態を知る上で重要な堆積物の記載例
日本大学文理学部地球システム科学科:
〒 156 − 8550 世田谷区桜上水 3 − 25 − 40
Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and
Sciences, Nihon University : 3-25 -40, Sakurajousui, Setagayaku Tokyo 156-8550 Japan
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は多くない。ここでは,キラウェア火山の 1959 年と
イ,マウナロア,キラウェアの 5 つの大型盾状火山が
1983 ∼ 86 年の激しい溶岩噴泉の活動を通じて形成さ
形成された。現在はキラウェア火山が最も活動的であ
れた火砕丘の観察結果を報告し,通常の溶岩噴泉によ
るが,ハワイ島南方の海底ではロイヒ火山が活動を始
る堆積物との比較を行う。さらに噴火の映像から得ら
めている(Fig. 1 )。キラウェア火山の最近 40 年間の
れる情報もあわせて溶岩噴泉の活動の実態を考える。
大きな噴火活動は以下のとおりである: 1959−60 年
のキラウェア・イキ噴火,1970 年代前半のマウナウ
2. キラウェア火山の活動の概略
ルの噴火,そして 1983 年以降現在まで継続する Pu`u
ハワイ島は太平洋上に位置する世界でも最も活動的
`O`o を中心とした噴火。
な火山島の一つである。ハワイ島の誕生は約 70 万年
1983 年以降現在まで継続中の活動は,過去 500 年
前に遡り,これまでにコハラ,マウナケア,フアララ
間で最大級のものであり,2000 年 1 月までに 1.9 km3
Fig.1 I ndex map of Hawaii Island and Kilauea Volano. A: Index map of Hawaii Island., B: Topographic map of Kilauea
Volcano. Localities of Pu`u `O`o and Puu Puai are shown., C: Map of the summit region of Kilauea volcano.
Localities of spatter ramparts, R1 ∼R4 are also shown.
図 1 ハワイ島キラウェア火山の位置図。A:ハワイ島の位置図。B:キラウェア火山の地形図および Pu`u `O`o, Pu`u
Pua`i の位置図。C:キラウェア火山の山頂部の地図とスパターランパート R1∼R4 の位置。
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ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
の溶岩が 102 km2 の面積を覆った。以下,主にハワイ
で,流速は時速 50∼500 m であった。噴火の継続時間
火山観測所のホームページ(http:/hvo.wr.usgs.gov/
が短く,海岸まで到達した溶岩流はなかった。
kilauea/summary/)に基づいて活動の経緯をまとめ
Pu`u `O`o は,比高 255 m,底径約 700 m で,火口の
る。1983 年 1 月に,山頂のハレマウマウ火口から東
深さは 210 m である。火砕丘の形状は南西側が高く非
に 19 km 離れたイーストリフトゾーン上で断続的な割
対称である。これは貿易風の影響により,火砕物が南
れ目噴火の活動が始まった。1983 年 6 月から 1986 年
西側に多く堆積したためと考えられている。火口の形
7 月までの 3 年間には断続的な溶岩噴泉の活動を通じ
状はやや東西に伸びた楕円形である。1997 年の部分
て,“Pu`u `O`o”火砕丘が形成された。Pu`u `O`o は
崩壊では火砕丘の西側が大きく崩れた(Plate 1)。火
ポリネシア語で,“Oo 鳥の丘”の意である。その後,
口内壁には著しい成層構造が見られ,厚さ 5 m 程度の
Pu`u `O`o の約 3 km 北東に活動が移り小型の盾状火山
溶結火砕岩の層が多数累重している。このことと断続
“Kupaianaha”が形成された。これ以降 5 年半にわ
的な溶岩噴泉の活動に伴って火砕丘の高度が増して
たって,Kupaianaha から供給された溶岩が地下の溶
いったという事実から(Wolfe, (ed), 1988 ; Heliker
岩トンネル(lava tube)を通じて海岸へともたらされ
and Wright, 1992),Pu`u `O`o は,個々の溶岩噴泉の
た。1992 年には活動の中心が Pu`u `O`o へ戻り,Pu`u
活動によって火口近傍にもたらされたスパターの積み
`O`o の南西に小規模な盾状火山が形成された。1997
重なりで構成されていると考えられる。
年 1 月 30 日には Pu`u `O`o 火砕丘の西側が崩壊し,
この崩壊は火口底まで及んだ。この直後に西方の
3. 2
Pu`u `O`o の火口縁∼山腹斜面の堆積物の産状
Napau Crater 付近で割れ目噴火が起きたが,活動は
北東側の火口縁には 1997 年に火口から溢流したパ
24 時間以内に終了した。1997 年 2 月には Pu`u `O`o
ホイホイ溶岩が見られる(Fig. 2,Plate 2 )。その表面
の火口内に溶岩湖が形成され,6 月には東側の火口縁
は平滑で,流下方向に平行な流線が発達する(Plate 2 )。
から溢れた溶岩が東方 1.5 km まで到達した。その後,
北東側を除く火口縁の表面には溶結した火砕物が露出
溶岩湖の溶岩は地下へ戻り,1998 年以降 Pu`u `O`o の
する。これらは岩相の違いから少なくとも 3 つにわけら
南側山腹から地下の tube system へ溶岩が供給される
れる(Fig. 2 )。ここでは,南東側の溶結火砕岩を Root-
ようになった。リフトゾーンから 10 km 以上離れた海
less flow A(以下,RF-A と呼ぶ),北側のそれを RF-
岸では,地下の溶岩トンネルを流れてきた溶岩が,太
B,北西のそれを RF-C とし(Fig. 2 ),それぞれの特
平洋に注ぎ込む様子が連日のように観察される
徴を記載する。これらは火口縁上に露出することから,
(ocean entry)。地表面でもしばしばパホイホイ溶岩
溶岩噴泉の活動の最も後期の噴出物と考えられる。ハ
ワイ火山観測所の Dr. C. Heliker によれば,RF-B は
やアア溶岩が流下する(surface flow)。
3.
1986 年の Episode 46 に対比されるという。RF-B の
1983∼86 年噴火と Pu`u `O`o 火砕丘
3.1
表層には褐色のスコリアが認められるが,RF-B を切
1983∼86 年噴火の活動の経緯と Pu`u `O`o 火砕丘
る割れ目がスコリア層まで到達していることから
1983 年 1 月 3 日に現在の Pu`u `O`o の西方で割れ目
(Fig. 4 ),スコリアの堆積後に亀裂が生じたことが推
噴火が始まり,半年にわたって断続的に噴火が起こっ
定される。従って,表層のスコリアも Episode 46 の
た(Episodes 1-3)。6 月には Pu`u `O`o の位置での溶
溶岩噴泉に伴うものと考えられる。一方,RF-C の上
岩噴泉の活動が始まり,3 年間にわたって断続的に溶
は同スコリアに厚く覆われるため,RF-C は Episode
岩噴泉と溶岩流の流出がみられ,Pu`u `O`o 火砕丘が
46 以前の噴出物であると考えられる。また,RF-A の
形成された(Episodes 4-47)。個々の溶岩噴泉の活動
上にはスコリアが認められないことから,最後の溶岩
の 継 続 時 間 は 24 時 間 以 内 で , 噴 泉 の 高 度 は 最 大
噴泉の活動である Episode 47 に対比される可能性が
470 m であった。1986 年 7 月までの間に Pu`u `O`o は
高い。以下に,RF-A∼C の産状の記載を行う。
少しずつ高度を増した(Wolfe, (ed), 1988)。約 3 年
間の活動を通じて多数の溶岩が山腹へ流下したが大半
RF-A:火口縁の直下から中腹にかけて多数のブ
はアア溶岩であった。溶岩流は平均の厚さが 3∼5 m
ロックが分布する(Plate 3 )。中腹より下方の表層部
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安 井 真 也
Fig.2 Topography of Pu`u `O`o cinder-and-spatter cone and
distributions for rootless flows, RF-A, B and C. Values are altitude in meter.
図 2 Pu`u `O`o 火砕丘の地形と山腹斜面の RF-A∼RF-C
の分布。
はアア溶岩の表層と類似の産状を示すが,塔状の多面
体ブロックが多数含まれている。これらのブロックの
上面は平坦で,弱溶結のスパターが見られるが,側面
には成層した溶結火砕物の断面が露出する。規則的に
溶結度が垂直方向に変化するブロック以外に,単一の
Fig.3 Sketch of the northern flank of Pu`u `O`o which is
viewed from the northern sky. Localities (A∼F) for
the observation of RF-B in this study are shown (see
text). 1: Original surface of the cone in which fractures are developed., 3 and 6: Disturbed surface of
the cone, 2 and 4: Original surface of the cone surrounded by lava flow, 5: Original surface of the cone,
7: Crater overflows in 1997, 8 :RF-C
図 3 Pu`u `O`o 火砕丘北側斜面の鳥瞰図。A ∼ F は RF-B
の調査地点を示す(本文参照)。1:割れ目の発達す
る火砕丘の原面,3 と 6:表面が乱れた様相を呈す
る火砕丘の原面,2 と 4:溶岩流に囲まれた火砕丘
の原面,5:火砕丘の原面,7: 1997 年の火口から
溢流した溶岩流,8: RF-C。
ブロックでも溶結度が多様で,酸化した赤褐色のスパ
ターが複数のレベルに含まれるようなブロックも多
い。スリッケンラインが発達するブロックも多く,一
つのブロックに方向の異なるスリッケンラインが見ら
れるものもある。RF-B に比べ RF-A はブロック化が
著しいため,スリッケンラインはブロック化の過程で
生じたものとみられる。これらの観察事実は,複雑な
堆積と冷却が行われたことを示唆する。一連の噴泉活
動において堆積に強弱があり,噴泉が弱い時期に堆積
物の酸化が始まった後,またすぐ堆積が始まるといっ
た堆積と酸化が同時進行するような条件が考えられ
る。または,酸化の程度の異なるスパターが堆積する
ような条件にあったのかもしれない。中程度に溶結し
た部分を鏡下で観察すると,発泡はよいものの,一枚
の薄片内にも気泡形態の異なる部分が不均一に分布す
る。一枚の薄片の面積内にも多様な粒径の粒子が含ま
れているものとみられる(Plate 25-B)。
( 80 )
Fig.4 Schematic sketch of the section of RF-B on the northern flank of Pu`u `O`o. n: non-welded, m: moderatelywelded, d: densely-welded
図 4 Pu`u `O`o 火砕丘北側斜面の RF-B の断面の模式ス
ケッチ。n:非溶結,m:弱∼中程度の溶結,d:強
溶結
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ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
RF-B:火口縁直下の A 地点付近では火口縁にほぼ
いスリッケンラインが見られる。この産状より,この
平行する割れ目が多い(Fig. 3, Plate 4)。上空から見
ブロックはブロックの長さ分ぐらいの距離を下方へ
ると火砕丘の表面に細長い小片(sliver)が多く,下
滑ったものと考えられる。周囲の地形と比べると,こ
方へむかってブロックが増える。Plate 5 は A 地点の
の一帯のブロックはいずれも移動距離が大きくないと
表層にみられる箱型の窪地の地形を示す。この窪地は,
考えられる。中腹より下方の D, E 地点付近では,谷
火砕丘の表面が分裂し,下方へブロックが移動したた
の深さが浅くなり,一部のブロックは谷の外側の火砕
めに生じたものとみられる。A地点では深さ約 4 m の
丘斜面上に広がっている。この辺りではブロックの径
割れ目内に堆積物の断面が露出し,複数枚の溶結した
が小さくなり全体としてアア溶岩と類似した産状を呈
火砕物の層が累重する(Fig. 4, Plate 5 )。上部 4 分の
する(Plate 9 )。中腹より下流部を遠望観察すると,
1 は淘汰の良い降下スコリア堆積物で,少なくとも 3
広大なアア溶岩の溶岩原が広がっている。その中に,
枚の降下単位が見られる。それらの下位には,厚さ約
局所的にブロックが密集する場所が散在する。これら
50 cm 程度の溶結した層がすくなくとも 4 枚認められ
のブロックは中腹のものと同様とみられることから,
る。個々の層は垂直方向に溶結度が変化し,灰白色の
アア溶岩状の溶岩の分布域は地点 A でみられた流れ
強溶結部の上下に,中程度に溶結した赤褐色のスパ
の下流部と判断される。しかし,周囲にも類似の産状
ターの層がみられる。冷却節理がこれらの溶結した層
を示すアア溶岩が多数分布するため,RF-B の到達距
を全て貫くことから,複合冷却単位であると考えられ
離は不明である。以上の観察事実を考え合わせると,
る。つまり,1 つの層の冷却中に次の層が堆積するこ
中腹に見られるブロック群は,浅い谷が形成された後
とを繰り返し,最終的に全体として冷却したものとみ
に流れてきたものと見られる。浅い谷の谷底に降下ス
られる。ブロックの強溶結部を顕微鏡下で観察すると,
コリアが堆積していないことから,スコリアの堆積の
細粒でインターグラニュラー組織に類似した組織を呈
終了後にブロック群の流動が開始したものとみられる。
し,均一に見えるが,一枚の薄片スケールでみるとや
RF-B の東側の表層は厚さ 20 cm 程度のパホイホイ
や不均一である。斑晶としては少量のカンラン石が含
溶岩に薄く覆われる。A 地点の西方より F 地点までの
まれるが,破片状である場合もある(Plate 25 -A)。
範囲にみられる。この間も RF-B は A 地点周辺と同様
これらの観察事実は,顕微鏡スケールでも溶結火砕岩
にブロック化しているが,上位のうすいパホイホイ溶
の特徴をもつことを示す。割れ目の底にはスリッケン
岩も切られている。このことから,スパターの堆積,
ラインが発達する比較的平坦な鏡肌状の面が見られ
うすいパホイホイ溶岩の流下,スパターの層の溶結の
る。また,割れ目の崖の基底部に平行に,厚さ 40 cm
進行と割れ目の発達によるブロック化,という順序が
で幅 20 cm 程度の垂直方向にスリッケンラインが発達
考えられる。
する部分が見られる。これは強溶結部の層内に滑り面
が生じ,分裂したブロックが下方へ滑って定置した際
の急斜面上にシート
RF-C:火口縁直下の傾斜 30 °
に,滑り面下の強溶結層にブロックの荷重がかかって,
状の溶結火砕岩の断片が見られる(Plate 10 )。厚さは
強溶結部の一部がブロックのわきから湧き出したもの
2 m 程度で,溶結度が垂直方向に変化する。Plate 10
と考えられる(Fig. 4)。
の手前の斜面上には顕著なスリッケンラインを示す鏡
中腹の C 地点周辺では,斜面に浅い谷が形成され
ている。谷壁は垂直に近く,A 地点と同様の溶結した
肌状の強溶結部が地表に露出している(Plate 11)。こ
の直下には弱溶結部が見られる。これらのことから,
火砕物の断面が露出する(Fig. 3 の B, D 地点)。浅い
RF-C は強溶結部の層内に滑り面をもつ火砕成溶岩で
谷の中を大小のブロック群が埋めている(Plate 7 )。
あると考えられる。全体に降下スコリアに覆われ,突
ブロックの上面は周囲の火砕丘の表面と同様で,降下
出する部分のみしか観察できないため全貌は不明であ
スコリアの堆積面である。ブロックの側面にも A 地
るが,中腹でも同様の産状のブロックが認められるた
点と同様の溶結した火砕物が露出し,成層構造が認め
め,中腹より下方へも同じ火砕成溶岩が連続している
られる。これらのブロックはほとんど傾動していない。
ものとみられる。
Plate 8 の矢印のブロックのすぐ上方の斜面には著し
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4.
含まれる。リボン状火山弾も希に含まれる。火口から
1959 年噴火と Pu`u Pua`i 火砕丘
4. 1
約 400 m の付近(地点 B)では高さ数mの段差が見ら
れ,溶岩流の末端の地形と似る。火口から 300 m ∼
1959 年噴火の活動の概要
Pu`u Pua`i 火砕丘は,1959 年にキラウェア・イキ火
200 m の距離の Pu`u Pua`i 火砕丘の南側斜面上には亀
口で起こった噴火活動で生じたものである(Plate 12)。
裂が認められ,山頂部へ向かって亀裂の数が増え,深
この時の活動は激しい溶岩噴泉を行ったことが特徴
さも大きくなる。地点 C の割れ目内部には,A 地点
で,活動の詳細が詳しく観察されている(Richter et
と同様の層序が見られるが,最上部より 2 番目の層の
al., 1970)。活動の概要は次のとおりである。
下部が溶結しているものと判断された。火砕丘の山頂部
Phase 1: 1959 年 11 月 14 日,既存の大型のピット
は比較的平坦であるが,西側は深い亀裂が多く,硫気
クレーターであるキラウェア・イキ火口の南側火口縁
変質が著しい。山頂部の東部も亀裂が多く(Plate14),
上で割れ目噴火が開始し,溶岩噴泉の活動と溶岩流の
東側の亀裂内部には溶結したスパターの断面がみられ
流出が 2 日間継続した。16 日には火口がイキの火口
る。ここでは冷却節理の入り方から,少なくとも 2 枚
内壁上の 1 点に収束し,17∼21 日には噴出率が増加
の溶結した層があるものとみられた。地点 D では,
した。この間に火口周辺には Pu`u Pua`i 火砕丘が形成
上方の溶結層が見られる。この層は厚さ約 1.5 m で,
され,キラウェア・イキの火口底にはイキの火口壁上
溶結度が垂直方向に規則的に変化し,冷却節理が発達
を滝のように流れ下った溶岩が溜まって溶岩湖を形成
することから,単一の冷却単位と見られる(Plate 15)。
した。断続的な活動に伴って溶岩湖の深さは時間とと
上部の弱溶結部には,径 3∼ 5 cm 程度で厚さが 1 cm
もに大きくなった。Phase 1 では 0.031 km の溶岩が
程度のつぶれたスパターが積み重なっており,淘汰が
噴出したと見積もられている。
よい。個々のスパターは表面が平滑なのが特徴的であ
3
Phase 2∼17: Phase 1 の終了後 5 日目の 11 月 26
る。下方へ向かって溶結度が増し,強溶結部は灰白色
日から断続的な溶岩噴泉が始まり,0.071 km3 の溶岩
で,粒子の境界は認められない。最下部の弱溶結部に
が噴出した。特に Phase 15 では 570 m の高度に達す
は,赤褐色のスパターが認められる。強溶結部を鏡下
る溶岩噴泉と降下スコリアの噴出の活動が数分間観測
で観察すると,全体として,eutaxitic 組織を呈し,一
された。この間,Puu Puai 火砕丘のキラウェア・イ
枚の薄片内にも気泡の形態や量の異なる部分が不均一
キ側の急斜面(火口壁)では火口の周囲へのスパター
に分布するのが見られる(Plate 25 - C)。気泡が一定
の堆積とイキの火口底方向への崩壊を繰り返した。こ
方向に配列しており,粒子間に閉じ込められた空気と
の活動を通じて噴出した溶岩の大半は地下へ戻ってい
みられる気泡もある。以上より,強溶結部は,非溶結
き,最終的に溶岩湖としてイキの火口内に残った量は
部と同様の粒径の数 cm 前後の火砕物が溶結したもの
0.008 km と見積もられている(Richter et al., 1970)
とみられる。
3
キラウェア・イキの火口縁から Pu`u Pua`i 火砕丘の
4. 2
火口周辺の産状を遠望観察した(Fig. 6,Plate 16)。イ
Pu`u Pua`i の堆積物の産状
Pu`u Pua`i 火砕丘の南西側はゆるやかで,降下スコ
キの火口内壁上では,急斜面上にはりつくように火砕
リアの堆積面が広がっている(Plate 13)。ガリーの発
丘が形成されているが,火口の上方には馬蹄形の崩壊
達もほとんどなく,堆積当時の原面の保存がよい。火
地形がみられる。滑落崖には成層構造が認められる。
口から南南西に約 500 m の地点 A では,表層から 1 m
馬蹄形の崩壊地形の内側には,表面に平坦な堆積面を
以上にわたって非溶結の降下スコリア堆積物が観察さ
残したまま断片化したブロックが多数見られる(Fig. 6
れる(Fig. 5, Plate 13)。降下単位が 4 枚以上認められ
の I と F )。Fig. 6 の E や G では亀裂の入り方が異な
る。スコリア粒子は,平滑で黒光りする表面と鋭利な
るため,数段階にわたって火砕丘が下方へ崩壊したと
破断面から成るものが多く,破断面にはレティキュラ
みられる。火口周辺の斜面は,多数のブロックから成
イト状の発泡形態を示す気泡が見られる場合が多い。
るが,表層の産状はアア溶岩と類似し,クリンカ状の
表層から 2 番目の層には,スコリアと同質で,平均的
溶結した火砕物に覆われる(Plate 17)。個々のブロッ
なスコリアの粒径に比べ粗い火山弾(16 cm 前後)が
クは大きく(∼数m),表面にスリッケンラインのあ
( 82 )
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─ ─
ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
Fig.5 Topography and topographic
section (A - A’) of Pu`u Pua`i
and the western part of
Kilauea Iki crater. Localities (A∼E) in this study are
also shown (see text). *:
assumed level of the preeruptive ground surface
based on the surrounding
topography.,**:estimated
level of the bottom of lava
lake in 1959 estimated by
Richter et al., (1970).
図 5 Pu`u Pua`i の 周 辺 の 地 形
と調査地点(A ∼ E)お
よび A-A’ 地形断面。
*
:周囲の地形から推定
される噴火前の地表面の
高度, ** :溶岩湖の底の
推定深度 Richter et al.,
(1970)による。
107
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( 83 )
安 井 真 也
Fig.6 Sketch of Pu`u Pua`i cinder-and-spatter cone viewed from Kilauea Iki Overlook. A: Flat surface on the summit of
Pu`u Pua`i, B: Flat surface with abundant fractures on the summit of Pu`u Pua`i, C: Cliff which is similar to landslide scarp, D: Eastern summit region of the cone with aboundant fractures,, E: Cliff which is similar to landslide
scarp, F: Fallen materials from the cliff, G: Cliff which is similar to landslide scarp, H: Lava flow, I: Lava flow
including huge blocks, J: Cliff which is similar to landslide scarp and talus deposit, K: Kilauea Iki vent, L: Lava
flow, M: Aa-like lava flow on the lava lake of Iki crater, N: talus deposit, O: Lava lake of Iki crater, P: Inner wall
of Iki crater.
図 6 Kilauea Iki Overlook からの Pu`u Pua`i 火砕丘のスケッチ。A:Pu`u Pua`i 火砕丘山頂部の平坦面,B:同割れ目
発達部,C:滑落崖,D:割れ目が発達する東側の火砕丘山頂部,E:滑落崖,F:崩落物質,G:滑落崖,H:溶
岩流,I:巨大なブロックを含む溶岩流,J:滑落崖および崖錐,K:火口,L:溶岩流,M:イキ火口の溶岩湖の
上に流下したアア溶岩状の溶岩流,N:崖錐,O:イキ火口の溶岩湖,P:イキ火口の火口内壁
るものもある。しばしば丸みのあるブロックも混ざる。
Plate 18 は Fig. 5 の E 地点の露頭の様子である。全体
に赤褐色で,上部はアアクリンカーに似たスパターが
キラウェアカルデラ底ハレマウマウ火口(Halemaumau crater)の北東約 250 m
丸みを帯びた外形のスパターコーンが割れ目の両側
溶結した産状を示す。下方へむかって溶結度が増し,
に配列し,コーンの間は不規則な形状の鞍部になって
表層から 1 m 程度の部分は強溶結である。気泡が不均
いる(Fig. 7,Plate 19)。割れ目をはさんだ全体の幅は
一に分布するのが特徴である。鏡下では,全体に隠微
5 m 前後で,比高は数m程度である。スパターラン
晶質であるが,結晶度や気泡形態の異なる部分が不均
パートは扁平なスパターの積み重なりから構成され,
一に分布する。粗粒なカンラン石が多い部分と少ない
外側斜面の下半分には,淘汰のよいスコリアから成る
部分が認められるが,マグマ混合による不均質性と火
崖錐が発達する。上半分の表面には扁平なスパターの
砕物の集合による不均質性の両方が重なってみえるも
上を淘汰のよい降下スコリア堆積物が部分的に覆う。
のとみられ,組織が複雑である(Plate 25 -D)。
スパターコーンを構成するスパターは著しく扁平な形
状を示すが,これは着地後の変形のためと考えられる。
5.スパターランパートの産状
着地前のしぶきの大きさは 20 cm 前後と推定される。
スパターランパート(spatter rampart)は,割れ目
一方,火口縁上に堆積しているスコリアは数 cm 径の
噴火の際に割れ目の両側にスパターが堆積して生じた
ものが多い。定性的には,スパターの粒径分布と降下
ものである。遠くから見ると石垣のように見えるが,
スコリアのそれは大きく異なり,前者の方が系統的に
実際には,スパターコーンが複数割れ目の両側に配列
粗い。スコリアは突起状の凹凸に富むやや緻密なもの
している。ここでは,キラウェア火山の 4 つの噴火事
と(1),平滑で光沢のある面と破断面から成る多角形
例のスパターランパートの産状についてまとめる。
状の発泡のよいものがあり(2),後者の方が多い。
(1)
と(2)の複合した粒子や,中間的な性質を示す粒子も
5. 1
( 84 )
1982 年 4 月噴火のスパターランパート(R1)
ある。外側斜面の下半部にみられる崖錐部分は火口縁
108
─ ─
ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
Fig.7 Schematic sketch of the R1 spatter rampart in Kilauea caldera.
図 7 キラウェアカルデラ内のスパターランパート R1 の模式スケッチ。
上に堆積しているスコリアと同様の性質,粒径分布を
覆われる。火口縁の直下の内壁側はオーバーハング
示す。
しており,その部分の個々のスパターは扁平で,火
しばしば縄状構造の発達するパホイホイ溶岩が,ス
口内壁側へ垂れ下がっている(Plate 22)。火口内壁は
パターコーンの間の鞍部から流出した跡が観察される
垂直に近く,扁平なスパターの積み重なりが見られ
(Fig. 7,Plate 20)。溶岩の上にはスコリアが少量のる
る。個々のスパターは直径 30 cm 以下,厚さが数 cm
箇所もある。Fig. 8 -A には R1 のランパートの模式的
で,表面が赤紫色,内部は暗灰色を呈する。火口底
な断面図を示す。火口の内側には,垂れ下がるように
には表面の殻が破砕した溶岩が露出するが,部分的
著しく変形したスパターの積み重なりが見られる。
にスコリアにうすく覆われる。溶岩の表面の殻は厚
Fig. 8 -A の矢印の部分では,パホイホイ溶岩の断面と,
さ 5 cm 程度で,その内部には空隙が見られる場合も
火口底に落下したとみられる溶岩片が見られた。最盛
ある。火口底に近い内壁には,内壁にはりつくよう
期には溶岩の頭位が上昇してスパターランパートの外
に溶岩が認められる。溶岩の部分は緻密で,弱い成
へ溢流し,その後地下へ戻っていく際に,スパターラ
層構造が認められる。赤褐色と暗灰色の部分が複雑
ンパートの内側を満たしていた溶岩表面の殻の部分が
に分布する産状を呈する。溶岩の表面にはスリッケ
内側へ崩落したものと解釈される。
ンラインが発達する(Fig. 8-C)。この部分の溶岩の高
さは,スパターランパート内を満たした溶岩の最高
5. 2
1974 年 6 月噴火のスパターランパート(R 2)
位の頭位を示すものと考えられ,スリッケンライン
ケアナカコイ火口(Keanakakoi crater)の北方約 100m
は溶岩が活動末期に地下に戻る際に生じたものとみ
R 2 は基本的に R 1 と同様の構造であるが,火口底
られる。溶岩に火砕物が含まれる産状は,溶岩がス
にもルーズな降下スコリアが堆積している点が異な
パターランパートを満たした状態の時に,放出され
る。ランパートの根元から離れるにつれてスコリアの
たスパターが再び火口に戻って取り込まれたためか
粒径と層厚が減じ,5∼6 m の距離で消滅する(Fig. 8 -
もしれない。スパターランパートの外側斜面は降下
B)。スコリアの分布限界より外側にはパホイホイ溶
スコリアに厚く覆われ,割れ目が発達する。降下ス
岩が拡がる。
コリアは外側へ向かって層厚が激減し,割れ目発達
帯から約 18 m で消滅する。粒径も火口から離れるに
5. 3
1974 年 6 月噴火のスパターランパート(R 3)
つれ小さくなる。スコリア粒子は,平滑で光沢のあ
ルアマヌ火口(Lua Manu crater)の東北東約 200 m
る表面と破断面から成り,破断面には多様な径の気
R 3 はやや大型であり,周囲にはパホイホイ溶岩が
泡が観察される。これらの破断面がマグマの破砕時
拡がる(Plate 21)。火口縁上は平坦で降下スコリアに
に生じたものか,スコリアの着地時に生じたものか
109
─ ─
( 85 )
安 井 真 也
Fig.8 Schematic sketches for the spatter ramparts, R1, R2, R3 and R4 in Kilauea Volcano.
図8 キラウェアのスパターランパート R1∼R4 の模式図。
の区別は困難であるが,しばしばジグソー状構造を
み重なりとスコリアから成る構造が見られる。火口内
もつスコリアが堆積面に露出していることから,着
壁の下半分には溶岩が張り付いていることから,活動
地時の破砕もかなりあるものとみられる。
最盛期には溶岩の頭位が火口内壁の中程の高さまで上
昇したとみられる。スパターランパート中央部の割れ
5. 4
1973 年 11 月噴火のスパターランパート(R4)
目のまわりは平滑で,表面に著しい流線の構造が発達
パウアヒ火口(Pauahi crater)の北西約 100m
する。これはスパターランパートを満たした溶岩が噴
R 4 の構造は R 1 ∼ 3 と類似するが,火口内壁の上半
火の末期に割れ目に向かって流れ込んだ跡と考えられ
部に薄いスパターの層が張り付いている。この層が局
る(Fig. 8 -D)。以上の観察事実から,R 4 ではスパ
所的に剥がれ落ちたところから内部の,スパターの積
ターランパートを形成した溶岩噴泉の後,溶岩の頭位
( 86 )
110
─ ─
ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
が上昇し,再び小規模な溶岩噴泉を行って周囲にスパ
縁の直下にあり,山体の一部が決壊すると,そこから
ターを堆積させてから溶岩が地下に戻っていったとい
溶岩が流れ出す様子もしばしば観察される。産状が似
う推移がうかがえる。
ていることから,スパターコーンの場合にも同様の現
象が起きているものとみられる。
6.
6 .1
堆積物と映像からみた溶岩噴泉の活動の実態
スパターランパートの外側に拡がるパホイホイ溶岩
堆積物と映像からみたスパターランパートの形
の流出過程としては,スパターランパート内の溶岩の
成過程
頭位が上昇したのち,複数のスパターコーンの間の低
割れ目噴火をとらえた映像を観察すると,噴火の最
所から溢流する場合や,スパターランパートを崩壊さ
初期の割れ目の開口直後は火のカーテン状の溶岩噴泉
せて流出する場合が考えられる。R 1 ではスパター
が起こるが,すぐに複数の火柱にわかれる場合が多い。
コーンの間の低所から流出した形跡があり,溶岩流の
この観察事実からスパターランパートを構成する個々
上にコーンとコーン上に堆積したスコリアに由来する
のスパターコーンは,個々の火柱に対応するものと考
ブロックを少量のせているため,スパターランパート
えられる。割れ目火口からのスパターの到達距離は短
の部分的な崩壊を伴っているものとみられる。大型の
く,数 m 以内である。スパターコーンの外側斜面は
スパターランパートの R 3 では,割れ目火口に平行な
概ね急傾斜(∼50 °)であるが,これは噴泉高度が低
亀裂が外側斜面に見られる。スパターランパート自体
く(∼50 m 程度),割れ目火口からのスパターの到達
が大型になるために,内部の強溶結部分が重力的に不
距離が小さいことによるとみられる。やや大型のスパ
安定になって変形し,2 次流動する可能性もある。
ターコーンの場合には,火口縁上が比較的平坦で,そ
以上の観察事実および議論より,割れ目噴火では,
の上にスコリアが堆積している場合が多い。R 1 では
大局的には,スパターランパートの成長とともに溶岩
スパターコーンの外側斜面がスコリアから成る 30 °前
の頭位が上昇して溢れ出し,その後溶岩が地下へ戻る,
後の崖錐に囲まれるが,これはスコリアの降下が活動
というシナリオが考えられる。すなわち,噴火の初期
の後半まで継続したか,降下量が多かったためとみら
に割れ目火口から火のカーテンないしは火柱状の噴泉
れる。降下スコリアの分布は割れ目火口の周り 10 数
の活動を行ってスパターランパートを形成後,溶岩流
m ほどに限られているので,噴火時に観察される溶
の溢流に転じるという推移をたどる場合が多いものと
岩噴泉の火柱の周囲とその上部に舞い上がる黒色の噴
みられる。
煙に由来するものと考えられる。
火口内壁と外側斜面では,スパターコーンを構成す
6. 2
1959 年と 1983-86 年噴火の火砕丘と溶岩流
るスパターは重力方向に垂れ下がる産状を示す。この
1959 年噴火で形成された Pu`u Pua`i 火砕丘は,そ
ことから低粘性のマグマのしぶき(スパター)は,着
の噴火口が既存のピットクレーター(キラウェアイキ)
地後すぐに変形すると考えられる。スパターコーンと
の火口壁上に開口しているのが特徴である。その結果
類似した地形にホーニトがある。これは溶岩流の上に
として,噴火口の周りの 56 度に達する急斜面上に堆
形成される小型の噴出口で,スパターの積み重なりか
積したスパターの層がイキの火口底に向かって崩壊・
ら構成され,小規模なものほど外側斜面の傾斜が大き
2 次流動を繰り返し,アア溶岩と類似した表面形態を
い(∼50 °)。R 3 の近くの溶岩流上にみられるホーニト
示す溶岩流をもたらした。噴火当時の火口近傍をとら
は,直径約 2.5 m 比高 1.5 m の小規模なものであるが,
えた写真を観察すると,イキの火口底には大量のスパ
急峻な斜面を持ち,扁平なスパターの積み重なりが見
ターが溶岩噴泉から直接降下して溶岩湖を形成してい
られる(Plates 23, 24)。ホーニトの形成過程をとらえ
る。これと同時に,一旦噴火口の周りの火口壁上に堆
たビデオ映像を見ると,火口の近傍にしか堆積が起こ
積してからイキの火口底へ向かって流れ込む溶岩流が
らないような小規模なスパターの噴出が繰り返される
認められる。噴火口の周りへのスパターの堆積が激し
ような活動の際に,急峻な斜面をもった小規模な丘が
いことに加え,堆積が急斜面上で行われたことにより,
形成され,火口縁では着地直後にスパターが変形・流
火砕成溶岩の流下が助長されたものと考えられる。一
動する様子が観察される。また,マグマの頭位が火口
方,Pu`u Pua`i 火砕丘のイキ火口とは反対の南西側斜
111
─ ─
( 87 )
安 井 真 也
面では,非常に規模の小さい溶岩流状の地形がみられ
∼13,および 15∼18 の溶岩流は勾配が大きく(最大
るが,溶結した火砕物によって構成されるため,火砕
480m/hr, Episode 17),Episode 4∼7 と 10 の溶岩流は
成溶岩であると考えられる,この場合は,基底地形は
勾配が小さい(最小 57m/hr, Episode 10)。流速の大
平坦であったと推定されるので(Fig. 5 の断面図),強
きいものは到達距離も大きい(∼13 km, Episode 18)。
溶結層が重力方向に若干変形を起こした程度のもので
噴火直後に撮影された写真には,噴火口の周囲に既存
あると考えられる。
の火口を埋め立てた溶岩が見える。このことは,噴火
Pu`u `O`o の火口縁から山腹にかけて分布する RF-A
時には,噴火口の周囲に堆積したスパターが既存の火
∼C の場合は,それぞれ地形的に火砕丘の原面が崩壊
口を埋め立てて,一種の溶岩湖をつくり,そこからの
していると判断されることから,火砕丘の部分崩壊と
溢流が起こりうることを意味する。溶岩湖からの単純
崩壊物の 2 次流動による火砕成溶岩であると考えられ
な溢流の場合は,表面が平滑なパホイホイ溶岩が流下
る。現在山腹斜面には火砕丘の断片のブロックが散在
するものと予想されるので,アア溶岩が卓越する実際
するが,地形的にみて個々のブロックの移動距離は小
の傾向と調和的でない。しかし,溶岩噴泉の継続する
さい。しかしながら,それぞれの延長方向には溶岩原
間,火口内の噴火口の周りにスパターを溜めながら,
が広がることから,山腹を流下した後,山麓へも相当
供給が続く限り溢流が盛んに起これば,高噴出率のア
流下した可能性がある。
ア溶岩が流下することが可能と考えられる。一方,火
Pu`u `O`o の初期の活動(Episodes 4 -18)では,各噴
砕丘の崩壊・2 次流動による火砕成溶岩の場合は,ブ
火で流下した溶岩について,噴火開始からの時間と溶
ロックの移動距離が小さいとみられることから,流速
岩流の到達距離が測定されている(Wolfe,(ed)
,1988)
。
はさほど大きくないと予想される。Episode 46 前後と
それによれば次に示すように,流速の異なる 2 種類の
みられる活動後期の溶岩流 RF-A, B, C については,
溶岩流がある。経過時間と到達距離の関係を示した図
溶岩流の到達距離や噴火開始からの時間のデータは得
において勾配の大きいものは流速が早く,勾配の小さ
られていないため,流速の大小を評価することはでき
いものはその逆を意味する(Fig. 9)。Episode 8, 9, 11
ない。しかし,産状を考慮すると,火砕丘の崩壊によ
るものとみられる。ところで,RF -B の西側部分の上
にはうすいパホイホイ溶岩が覆っている(Fig.3 の F
地点周辺)。これは RF -B をもたらした噴火の後期に
火口から溢れ出した溶岩があったことを示唆する。火
砕丘の崩壊と 2 次流動が起きつつある時に,火口から
の溢流があれば,両側面をもった溶岩流が流下する可
能性もある。
6. 3
溶岩噴泉とその堆積物の多様性
本研究で観察した溶岩噴泉による火口近傍の堆積
物は,火砕丘とスパターランパートの 2 種類である。
6. 2 の議論より,火砕丘の形成を伴う激しい溶岩噴泉
の場合には,次の 2 つの火砕成溶岩があることが考え
られる;1 )噴火口のすぐ周りに大量のスパターが降
下し,堆積直後に流動を始める溶岩,2 )噴泉の中心
Fig.9 Representative variation in flow velocity for the lavas
from Pu`u `O`o in the cases of Episodes 10 and 12
(after Wolfe, (ed) (1988)).
図 9 Episode10 と 12 の Pu`u `O`o の溶岩流の流速の変化
図の例。Wolfe, (ed) (1988) を改変。
からやや離れたところで,火砕丘を形成しつつ,その
崩壊と 2 次流動によってもたらされる溶岩。Pu`u`O`o
の溶岩噴泉の観察を行った研究で,溶岩噴泉内部の構
造は,噴泉の中心部ほどスパターの数が多く,火口近
傍に降下するスパターも多いとする主張がある
( 88 )
112
─ ─
ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
(Head and Wilson,1989)。このことも考えあわせる
6 . 1 の議論より,スパターランパートを形成する噴火
と,溶岩噴泉の中心部と外縁部でのスパターの堆積量
は,初期に小規模な噴泉活動を行うものの,割れ目火
の違いを反映して火砕成溶岩の多様性が生じることが
口からの溶岩の溢流を主とするため,本質的には非爆
予想される。1959 年噴火の場合は,噴火口の周囲の
発的な噴火ととらえられる。
急斜面上に堆積してイキの火口へ流れ込んだ激しい火
以上をまとめると,溶岩噴泉の活動には,火砕丘お
砕成溶岩と,イキ火口とは反対の南西側の平坦面へ流
よび火砕成溶岩をもたらす爆発的な噴火と,溶岩流の
下した小規模な火砕成溶岩が認識される。Pu`u `O`o
溢流を主とする非爆発的な噴火があるととらえられ,
においては高速の溶岩流と相対的に低速のそれがあっ
それぞれの噴火がもたらす火口近傍の堆積物は多様で
たことが示唆的である。6. 2 の議論より,Pu`u `O`o で
あることが明らかとなった。特に,爆発的な激しい溶
は既存の火口を埋めて形成された溶岩湖からの連続的
岩噴泉の場合は,噴泉の構造を反映して,噴火口の周
な溢流が生じた可能性が高いため,噴火口の周囲の堆
辺からもたらされる高噴出率の火砕成溶岩と,噴泉の
積に加えて,溶岩湖の生成とそこからの連続的な溢流
外側での堆積により形成された火砕丘斜面に由来する
も重要なプロセスの一つと考えられる。
低噴出率の火砕成溶岩があるものと考えられる。
Parfitt and Wilson(1999)は,ハワイ式噴火のジェッ
トは,プリニー式噴煙内の、膨張するガスと火砕物粒
子と取り込まれた空気とから成る乱流の流れと類似す
るが,ハワイ式噴火の方がガスの含有量,噴出速度が
かなり小さく,火砕物の粒径が粗い点が異なると予想
した。彼らは,1959 年の噴出物の粒径が粗いこと
(Parfitt, 1998)と,噴泉からの火口近傍への堆積量と
噴泉上の噴煙からの降下スコリアの堆積量の比が 10
対 1 と見積もられることを考慮に入れて,モデル化を
行った。既存のプリニー式噴火のモデルについて,粒
径が粗いことと,粗い粒子はガスよりも上昇速度が遅
いという初期条件を変えて再計算したところ,実際と
調和的であるという結論を得た。1959 年噴火も 1983
∼86 年噴火も激しい溶岩噴泉の活動を主としたこと
が明白であり,溶岩流が穏やかに溢流するタイプの非
謝辞
本報告は,著者が 2000 年 3 月に約 3 週間ハワイ島に滞
在して地質調査を行った際の結果をまとめたものである。
渡航にあたって,元日本大学教授の荒牧重雄氏には米国地
質調査所のハワイ火山観測所へ支援要請をしていただき,
また多くの助言をいただいた。滞在中は,ハワイ火山観測
所の所長 Dr. Don Swanson をはじめ,多くの方々に大変お
世話になりました。特に,Swanson 所長には Pu`u `O`o の
調査のため,ヘリコプターで現地を訪れる機会を作ってい
ただくなど,全般的にお世話になった。また Dr. Christina
Heliker と Mrs. Jane Taeko Takahashi には文献やビデオ映
像の閲覧の便宜を図っていただき,また Dr. Arnold Okamura に は 野 外 で 議 論 し て い た だ い た 。 Dr. Christina
Heliker との議論は特に有意義でした。また Dr. Thomas L.
Wright には 1970∼ 80 年代の活動状況について詳しくご教
示いただいた。日本大学の高橋正樹教授には本報告の機会
を作っていただき,また粗稿の問題点の指摘と多くの議論
をしていただいた。以上の方々に深く感謝いたします。
爆発的な噴火様式ではなかったととらえられる。一方
参考文献
Head, J. W. and Wilson, L. (1989) Basaltic pyroclastic eruptions: Influence of gas release patterns and volume
fluxes on fountain structure, and the formation of cinder
cones, spatter cones, rootless flows, lava ponds and lava
flow. J. Volcanol. Geotherm. Res. 37: 261− 271.
Heliker, C. and Wright, T. L. (1992) The Pu’u ‘O’o-Kupaianaha eruption of Hawaii’s Kilauea Volcano, Earth in
Space: 5 − 7.
Parfitt, E. A. (1998) A study of clast size distributions, ash
depositon and fragmentation in Hawaiian-style volcanic
eruptions. J. Volcanol. Geotherm. Res. 84 : 197 − 208
Parfitt, E. A. and Wilson, L. (1999) A plinian treatment of
fallout from Hawaiian lava fountains. J. Volcanol. Geotherm. Res. 88 : 67 − 75.
Richter, D. H., Eaton, J. P., Murata, K. J., Ault, W. U., and
Krivoy, H. L. (1970) Chronological narrative of the
1959-60 eruption of Kilauea Volcano, Hawaii, U.S. Geological Survey Professional Paper 537-E: 73p.
Wolfe, E. W. (ed) (1988) The Pu`u `O`o Eruption of Kilauea
Volcano, Hawaii: Episodes 1 through 20, January 3,
1983, through June 8, 1984. U. S. Geol. Surv. Prof. Pap,
1463, 251p.
113
─ ─
( 89 )
安 井 真 也
Plate 1
写真 1
Plate 3
写真 3
Plate 5
写真 5
( 90 )
Pu`u `O`o cinder and spatter cone, seen from the south.
The edifice is asymmetrical due to the collapse in 1997.
Lava field is spreading around Pu`u `O`o.
南方より見る Pu`u `O`o 火砕丘。1997 年の部分的な崩
壊により,画面右手の山体が欠落している様子がわか
る。Pu`u `O`o の周囲には溶岩原が広がる。
Plate 2
写真 2
Pu`u `O`o cinder-and-spatter cone seen from the northeastern sky. Rootless flows A and B can be seen.
北 東 の 上 空 か ら 見 る Pu`u `O`o 火 砕 丘 と RF-A と B。
RF-A と B の間は 1997 年の溶岩流。
Surface morphology of RF-A. Remarkably dissected surface of the cone can be seen. Section of the welded spatters is observed in the fracture. Surface pale-gray part is
due to the alteration of volcanic gas.
RF-A の表面形態。破砕が著しい。表面の白く見える部分
は火山ガスにより硫気変質を受けたもの。画面奥が火口縁。
亀裂内には溶結した火砕物の断面が観察される。
Pu`u `O`o cinder-and-spatter cone seen from the northern sky. Rootless flow B can be seen and the section of
rootless flow C is exposed on the cliff of right hand side.
See Fig.3.
写真4 北側上空から見る Pu`u `O`o 火砕丘と RF-B と C。Fig.3
参照。
An arrow shows a small depression on the crater rim area of
Pu`u `O`o. Small cracks are developping underfoot. Small
depression is one of the source of rootless flow B (RF-B).
Topographically, it is clear that cubic shaped block dissected
toward down slope generating this depression.
Pu`u `O`o 火口縁直下の火砕丘表面の亀裂。矢印の部分は,
RF-B の供給源の一つで,カステラ状のブロックが画面左
手(斜面下方)へ向かって滑り落ちたために生じた窪地。
Plate 6
Plate 4
写真 6
114
─ ─
Inside the depression of photo 5. Pile of agglutinate showing remarkable stratification can be seen on the vertical
wall of the dissected block. Small-scale squeeze-up (arrow)
is recognized on the foot of the block.
写真 5 の窪地のやや下流部の様子。写真 5 の窪地を形成し
た岩塊の断面に発達する成層構造が見える。底部には下方
からしみ出して来たとみられる溶岩(矢印)が見える。
ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
Plate7
写真 7
Rootless flow B looking up from the flank. Large block
is concentrated in the depression.
中腹より見上げる火口縁直下の RF-B の様子。窪地内に
巨大な岩塊が密集している。
Plate 8
写真 8
Rootless flow B in the flank. A block, indicated by the
allow,remained remarkable slickenline on the slided surface of left hand side.
中腹の RF-B の様子。矢印のブロックはその左手(人の
位置)の滑り面上に巨大なスリッケンラインを残した。
Plate9
写真 9
Plate10 Remnant of dissected blocks of RF - C on the steep slope
of the cone. An arrow shows the slided surface with
remarkable slickenside.
写真 10 火砕丘の外側斜面上の RF- C のブロック。矢印の部分
は著しいスリッケンラインが発達する滑り面。
115
─ ─
Occurrence of RF-B looking up from the flank
of Pu`u `O`o cone. Note the shallow depression
on the right hand side.
写真 8 よりさらに下方の火砕丘中腹より見上げ
る火口縁直下∼中腹にかけての RF-B の様子。
浅い谷地形に注意。
Plate11 Slickenline developing on the slided surface
in Plate 10. Scale; 33cm.
写真 11 RF- C の滑り面(写真 10 )上に発達するス
リッケンライン。スケールは 33cm。
( 91 )
安 井 真 也
Plate12 Whole view of Kilauea Iki looked down from Kilauea Iki
Overlook. An arrow shows Pu`u Pua`i.
写真 12 Kilauea Iki Overlook より見下ろすキラウェア・イキの
全景。矢印の部分が Pu`u Pua`i 火砕丘。
Plate13 Scoria fall deposit at the locality of A in Figure5. Scale;
1m.
写真 13 Fig.5 の A 地点の 1959 年噴火の降下スコリア堆積物。
スケールは 1m。
Plate14 Fractures developing on the summit region of Pu`u Pua`i cone.
写真 14 Pu`u Pua`i 山頂部に発達する亀裂群。
Plate 15 Section of the agglutinate in the fracture on the summit area of Pu`u Pua`i (locality
E in Figure 5 ). Degree of welding increases downward. Scale; 33cm.
写真 15 Fig.5 の D 地点の Pu`u Pua`i 山頂部の亀裂内に現れたアグルチネートの断面. 下
方へ向かって溶結度が増す。スケールは 33cm。
Plate16 The 1959 vent area looking up from the crater bottom of
Kilauea Iki.
写真 16 イキの火口底より見る 1959 年噴火の噴火口周辺。
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ハワイ島キラウェア火山の溶岩噴泉による火口近傍堆積物
Plate17 The 1959 vent and surrounding area looking up from the locality of E in Figure 5. Aa-like
clastogenic lava flowing down on the steep slope is characteristic.
写真 17 Fig.5 の E 地点より見る 1959 年噴火の噴火口とその周辺。画面右手は斜面上を下るアア溶
岩状の火砕成溶岩。
Plate18 Section of Aa-like lava at the locality of E in Figure5.
Degree of weldeing increases downward. Scale; 33cm.
写真 18 Fig.5 の E 地点のアア状溶岩の断面。溶結度が下方へ
向かって増大する。スケールは 33cm。
Plate19 Whole view of the 1982 spatter rampart (R1) seen from the
Halemaumau trail in Kilauea caldera. Pahoehoe lava field is
spreading around the R1. The wall of Kilauea caldera can
be seen in the distant.
写真 19 キラウエアカルデラ内の Halemaumau trail より見る R1 の
全景。R1 の周囲にはパホイホイ溶岩が広がる。背景はキ
ラウェアカルデラのカルデラ壁。
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Plate20 One of spatter cones which consists of the spatter
rampart (R1). Ropy structure is observed on the lava
around a knapsack. Pile of spatters is observed on
the outer slope of the cone.
写真 20 R 1 の ス パ タ ー ラ ン パ ー ト を 構 成 す る ス パ タ ー
コーンの一つ。ザックの辺りに縄状溶岩が流下し
た跡が見える。小丘の外側斜面には垂れ下がった
スパターの積み重なりが見える。
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安 井 真 也
Plate21 Whole view of the 1974 spatter rampart (R3). It is surrounded by the pahoehoe lava. An arrow shows the location of the eruptive fissure.
写真 21 R3 のスパターランパートの全景。周囲にはパホイホイ
溶岩が広がる。矢印は噴火割れ目の露頭の位置を示す。
Plate 22 Inner wall of the 1974 spatter rampart (R3). Remarkable
pile of flattened spatters are visible. Height of this wall
from the bottom is approximately 2m.
写真 22 R3 のスパターランパートの火口内壁。扁平なスパター
の積み重なりが観察される。この壁の火口底からの高
さは約 2 m。
Plate23 A hornito which locates near to the 1974 spatter rampart
(R3). It is a small-scale mound with 1.5m in height and
about 2.5m in diameter. A knapsack for scale; 38cm.
写真 23 R3 のスパターランパートの付近の溶岩上のホルニト。
比高 1.5 m,直径約 2.5 m の小規模な丘である。スケー
ルは 38 cm。
Plate 24 Crater rim of
the hornito in Plate
23. Inner crater wall
is on the right hand
side and opposite side
is outer slope. A pile
of strongly deformed
spatters are remarkable. Scale: 33cm.
写真 24 写真 23 の小丘
の火口縁の様子。
画面の右側が火口
内壁で,左側が外
側斜面である。ス
パターが変形した
様子が明瞭であ
る。スケールは
33cm。
Plate 25 Photomicrographs of agglutinate of Pu`u `O`o
and Pu`u Pua`i.
A: RF-B of Pu`u `O`o.Fine grained groundmass and
olivine phenocrysts. White lines show broken surface of olivine., B: RF-A of Pu`u `O`o. Needle-like
plagioclase mircolites in groundmass. Coalesced
vesicles are observed., C:Strongly welded part of
agglutinate on the summit area of Pu`u Pua`i (Loc.
D, in Fig.5). Eutaxitic texture with heterogeneity in
crystallinity. Morphology and amount of vesicles are
also heterogeneous., and D: Densely welded part of
clastogenic flow on the bottom of Kilauea Iki crater
(Loc.E in Fig.5). Eutaxitic texture is recognized by
fiamme with different crystallinity and colour.
写真 25 Pu`u `O`o と Pu`u Pua`i のアグルチネートの顕微
鏡写真。
A: Pu`u `O`o の RF-B. 細粒の石基とカンラン石斑晶。
白色の線はカンラン石の破断面を示す, B: Pu`u `O`o の
RF-A. 針状の斜長石のマイクロライトが多い。結合した
気泡も認められる, C: Pu`u Pua`i 山頂部のアグルチネー
トの強溶結部(Fig. 5 の地点 D)に見られる Eutaxitic
組織。石基の結晶度や気泡形態,気泡の量が不均一で
ある, and D: キラウェア・イキ火口底上の火砕成溶岩
の強溶結部(Fig.5 の地点 E)に見られる Eutaxitic 組織。
結晶度や色調の異なる溶結レンズが認められる。
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