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生 ご み バ イ オ ガ ス 化 事 業 の 評 価

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生 ご み バ イ オ ガ ス 化 事 業 の 評 価
資料
平成 18 年(2006 年)11 月
生 ご み バ イ オ ガ ス 化 事 業 の 評 価
~平成 14 年 11 月から平成 18 年 3 月までの実証試験に基づく評価~
横 須 賀 市 環 境 部
住友重機械工業株式会社
1.はじめに
横須賀市と住友重機械工業株式会社は、燃せるごみの有効利用に向け、平成 13 年度(2001 年
度)から共同で、燃せるごみのバイオガス化研究に着手した。
研究内容は、燃せるごみからバイオガス化に適したごみを機械選別し、メタン発酵を行うこ
とによって得られるバイオガスを精製して、実際にごみ収集車を走行させるものである。
本書はこの研究成果の概要及び実用施設を想定した事業評価結果をまとめたものである。
※
メタン発酵とは、酸素のない状態で、微生物により生ごみ等の有機物からメタン、二酸化炭素及び
水等を生成する反応をいう。
※
バイオガスとは、メタン発酵によって生成するガスのことで、成分の大半はメタンと二酸化炭素。
実証試験プラント全景
2.これまでの主な研究経過
平成 13 年度(2001 年度) :国内外の施設調査及び選別予備試験の実施
平成 14 年(2002 年) 9 月:実証試験プラント完成
平成 14 年(2002 年)11 月:実証試験開始
平成 15 年(2003 年) 1 月:バイオガスを自動車燃料としてごみ収集車に供給開始
平成 15 年(2003 年) 8 月:生ごみバイオガス化実証試験事業評価を実施
平成 16 年(2004 年) 2 月:選別設備等改造工事(~3 月)
平成 16 年(2004 年) 4 月:実証試験再開
平成 16 年(2004 年) 9 月:大型メタン発酵設備建設(~12 月)
平成 17 年(2005 年) 1 月:大型メタン発酵設備運転開始
平成 18 年(2006 年) 3 月:実証試験終了
1
4
3.実証試験結果と実証試験により得られた主な成果
(1)実証試験結果
実証試験により得られた結果を表1に示す。
表1 実証試験結果
搬入ごみのうち、選別しメタン発酵設備に投入した割合
メタン発酵槽投入ごみあたりのバイオガス発生率
メタン濃度50%換算値
バイオガス化による搬入ごみの減量率
期間1※1
期間2※2
期間3※3
50.3%
46.6%
46.3%
127m3N/t
141m3N/t
158m3N/t
153m3N/t
174m3N/t
190m3N/t
35.2%
32.4%
38.5%
※1
期間1とは、選別設備等改造工事前の期間(平成 15 年 1 月~平成 16 年 1 月)
※2
期間2とは、選別設備等改造工事後で収集地域を特定せずに収集したごみを処理した期間(平
成 16 年 4 月~平成 17 年 9 月)
※3
期間3とは、剪定枝混入率が低い地域から収集したごみを処理した期間(平成 17 年 10 月~平
成 18 年 3 月)
m3N(立米ノルマル)とは、0℃1気圧での気体の体積を表す。
※
(2)実証試験により得られた主な成果
ア.システムの安定性
4か年度に渡る実証試験の結果、次のとおりシステムが安定していることを確認した。
①
搬入ごみの組成の変動に対して、長期に渡り安定した運転が可能であった。
②
1 週間前後の運転休止後の施設立ち上げを、問題なく行うことができた。
③
本来、搬入されない違反ごみが搬入されることを想定し、以下の試験を実施した
ところ運転に支障をきたさないことを確認した。
・選別設備へ投入された違反ごみの排出試験
・メタン発酵設備へ投入された異物の排出試験
・メタン発酵の毒物に対する耐性試験
イ.自動車燃料としての適性
平成 15 年(2003 年)1 月~平成 16 年(2004 年)1 月及び平成 16 年(2004 年)7 月~8
月の 15 か月間に渡り、ごみ収集車(圧縮天然ガス自動車)に合計 1,537 m3N のバイオガス
を精製して得られた燃料を充填し、ごみの収集のための走行を行った。
都市ガスを燃料とした場合と比較し、運転性能に違いは認められず、走行状況は良好で
あることを確認した。
2
4.事業評価条件
燃せるごみ(収集ごみ)、直接搬入ごみ及び可燃性粗大ごみを全量焼却する場合(以下、「全
量焼却処理」という。
)と、燃せるごみ(収集ごみ)をバイオガス化し、バイオガス化残さ、直
接搬入ごみ及び可燃性粗大ごみを焼却する場合(以下、
「バイオガス化と焼却を組み合わせた処
理」という。
)の2つのケースを比較検討するものとした。
(1)対象ごみ
対象ごみは、横須賀市、三浦市及び葉山町の2市1町から排出される燃せるごみ(収集ご
み)
、直接搬入ごみ及び可燃性粗大ごみとした。ごみの組成及びごみ量を表2に示す。
表2 対象ごみ量及び組成
燃せるごみ
(収集ごみ)
組成(%)
直接搬入ごみ
及び可燃性粗大ごみ
総量(t/年)
組成(%)
総量(t/年)
合計
組成(%)
総量(t/年)
紙類
43.1
52,632
3.7
857
36.9
53,489
生ごみ類
34.8
42,497
1.0
231
29.4
42,728
木・竹類
8.3
10,135
90.0
20,726
21.3
30,861
繊維類
3.1
3,786
5.3
1,212
3.4
4,998
プラスチック類
7.6
9,281
0.0
0
6.4
9,281
その他
3.1
3,786
0.0
0
2.6
3,786
100.0
122,117
100.0
23,026
100.0
145,143
計
(2)バイオガス化施設の物質収支
実証試験プラントにおける運転実績を基に、各設備の運転条件を設定し、バイオガス化施
設の物質収支を図1のとおり試算した。
発生バイオガスは、ごみ収集車 150 台(横須賀市 120 台、三浦市 15 台、葉山町 15 台)の
燃料として精製し、残りを発電するものとした。発電により得られた電力は場内利用とし、
余剰電力が生じた場合は電力会社に売電するものとした。また、メタン発酵槽投入ごみあた
りのバイオガス発生率とごみの減量率について表3に示す。
なお、その他のガス利用に関する調査として、バイオガスを利用した燃料電池による発電
の検討を行ったが、バックアップ電源として従来のガスエンジンやガスタービン等と併設す
る必要があり、事業評価の対象としなかった。
3
製品ガス(自動車燃料)
969,263m3N/年
プロパン
48,463m3N/年
選別ごみ
57,365t/年
[47.0]
搬入ごみ
122,117t/年
[100]
精製ガス
920,800m3N/年
発生バイオガス
6,754,427m3N/年
[6.72]
選別設備
ガス
分離膜
製品ガス
ホルダ
メタン発酵設備
メタン発酵槽
混合槽
選別ごみ脱水機
ガス
ホルダ
ガス精製利用設備
発酵槽投入ごみ
43,813t/年
[35.9]
選別異物
64,752t/年
[53.0]
発酵ごみ
13,788t/年
[11.3]
発電用バイオガス
5,833,627m3N/年
好気
発酵槽
焼却施設
(発電)
消化汚泥
脱水機
汚泥処理設備
直接焼却ごみ
23,026t/年
[18.9]
バイオガス化施設残さ
78,540t/年
[64.3]
放流水
56,000t/年
脱臭排水
洗浄水
雑排水等
排水処理設備
下水道
ごみ焼却施設
※1
[
]内の数値は、燃せるごみ搬入量 122,117t/年を 100 とした場合の重量割合を示す。
※2
発生バイオガスのメタン濃度は 60%
図1 事業評価の物質収支
表3 メタン発酵槽投入ごみあたりのバイオガス発生率とごみの減量率
事業評価採用値
メタン発酵槽投入ごみあたりの
バイオガス発生率
3
154m N/t
(6,754,427m3N/年÷43,813t/年)
3
メタン濃度50%換算値
185m N/t
(154m3N/年×(60%÷50%))
バイオガス化による搬入ごみの減量率 35.7%
((122,117t/年-78,540t/年)÷122,117t/年×100)
焼却対象ごみの減量率
30.0%
((122,117t/年-78,540t/年)÷(122,117t/年+23,026t/年)×100)
4
(3)施設の建設条件
建設地は特定せず、以下の条件を満足するものとした。
地形・土質等 (1) 面積:概ね 3ha
(2) 形状:平地、造成済み
都市計画事項 (1) 建ぺい率及び容積率:60%及び 200%
(2) 用途地域、防火地域、高度地区:指定なし
(4)施設整備規模
施設の稼動日数は、焼却施設 280 日/年、バイオガス化施設 325 日/年とした。また、稼動
時間は、焼却施設 24h/日、バイオガス化施設 20h/日とした。
設備の系列数は、全量焼却処理の場合、焼却設備を3系列とした。
バイオガス化と焼却を組み合わせた処理の場合、バイオガス化によりごみの減量が図られ
ていること、バイオガス化施設と焼却施設のごみピットを共用にするとともに、ごみピット
容量を大きく設定することで、負荷変動に対応しやすくしていることから、焼却設備、選別設
備及びメタン発酵設備をそれぞれ2系列とした。施設整備規模を表4に示す。
表4 施設整備規模
処理方式
全量焼却処理
施設名/設備名
焼却施設
計画処理量
施設稼動日数
施設規模
バイオガス化と焼却を組合せた処理
バイオガス化施設
焼却施設
選別設備
メタン発酵設備
145,143t/年
122,117t/年
57,365t/年
101,566t/年
280日/年
325日/年
325日/年
280日/年
181t/24h×3系列= 226t/20h×2系列= 106t/20h×2系列= 190t/24h×2系列=
543t/24h
452t/20h
212t/20h
380t/24h
5.事業評価結果
(1)経済性の評価
ア.建設費
建設費の試算結果を表5に示す。
全量焼却処理の場合、事業費は 288 億円であり、そのうち 255.6 億円が交付金交付対象
事業となり、85.2 億円が交付金として充当され、交付金を除いた必要財源は 202.8 億円と
なった。
一方、バイオガス化と焼却を組み合わせた処理の場合、事業費は 285 億円であり、その
うち 247.68 億円が交付金交付対象事業となり 95.68 億円が交付金として充当され、交付金
を除いた必要財源は 189.32 億円となった。
したがって、バイオガス化と焼却を組み合わせた処理は、全量焼却処理と比べ、事業費
では 3 億円、交付金を除いた必要財源では 13.48 億円の費用を削減できることになる。
5
表5 建設費試算結果
(単位:千円)
バイオガス化と焼却を組合せた処理
全量焼却処理
区 分
焼却施設
本工事
交付金交付
付帯工事
対象事業
交付金交付対象事業費計
本工事
交付金交付
付帯工事
対象外事業
交付金交付対象外事業費計
事 業 費 計
交付金
共通設備
施設全体
25,320,000
7,872,000
16,656,000
0
24,528,000
240,000
0
0
240,000
240,000
25,560,000
7,872,000
16,656,000
240,000
24,768,000
2,472,000
816,000
1,236,000
552,000
2,604,000
768,000
312,000
288,000
528,000
1,128,000
3,240,000
1,128,000
1,524,000
1,080,000
3,732,000
28,800,000
9,000,000
18,180,000
1,320,000
28,500,000
8,520,000
3,936,000
5,552,000
80,000
9,568,000
(1/3)
(1/2)
(1/3)
(1/3)
20,280,000
5,064,000
12,628,000
1,240,000
(交付金交付率)
交付金を除いた必要財源
焼却施設
バイオガス化施設
18,932,000
注1)金額は消費税を含まない。
注2)造成工事や地盤改良を含む基礎工事類は含まない。
※ 交付金とは、環境省循環型社会形成推進交付金をいう。
イ.維持管理費
売電収入や収集車燃料費も含めた維持管理費の試算結果を表6に示す。
全量焼却処理の場合の年間維持管理費は約 6.75 億円、バイオガス化と焼却を組み合わせ
た処理の場合の年間維持管理費は約 6.15 億円となった。
バイオガス化と焼却を組み合わせた処理は、全量焼却処理に比べ、年間約 6 千万円、率
にして約 9%の維持管理費が削減される結果となった。
表6 維持管理費試算結果
(単位:千円/年)
バイオガス化と焼却を組合せた処理
全量焼却処理
区 分
焼却施設
バイオガス化施設
焼却施設
施設全体
薬品費
160,687
113,030
151,422
264,452
水道使用費
29,097
6,810
28,448
35,258
下水道使用費
20,893
20,287
11,291
31,578
電力費
27,349
7,225
13,115
20,340
売電収入額
-130,100
-68,045
-123,517
-191,562
収集車燃料費
116,160
14,539
0
14,539
プラント用燃料費
31,722
0
10,645
10,645
消耗品・定期点検費
420,000
130,000
300,000
430,000
合計
675,808
223,846
391,404
615,250
注1)消耗品・定期点検費は施設稼動後15年間の平均である。
注2)金額は消費税を含まない。
6
(2)環境負荷の評価
ア.温室効果ガス
バイオガス化と焼却を組み合わせた処理とすることで削減できる温室効果ガスの排出量
(二酸化炭素換算値)について試算した結果を表7に示す。
温室効果ガスの排出削減量は 6,348t-CO2/年と求められた。
これは、横須賀市の事務・事業の実施に伴って排出する温室効果ガスの約 9%※に相当す
る。
※
横須賀市地球温暖化対策実行計画(平成 18 年(2006 年)3 月)に記載の、平成 16 年度(2004 年度)
実績との比較
表7 温室効果ガス排出削減量の試算結果
(単位:t-CO2/年)
バイオガス化と焼却
を組合せた処理
全量焼却処理
売電により、電力会社の発電量低減
に伴って削減できる温室効果ガス
バイオガス化に
よる排出削減量
-6,302
-9,279
2,977
化石燃料使用に伴って排出される
温室効果ガス
3,195
507
2,688
焼却処理、排水処理に伴って排出さ
れる温室効果ガス
2,545
1,862
683
-562
-6,910
6,348
計
イ.環境汚染物質
表8に焼却施設から排出される環境汚染物質について示す。バイオガス化と焼却を組み
合わせた処理とすることで、焼却排ガスに含まれるばいじん、窒素酸化物、硫黄酸化物、
塩化水素、ダイオキシン類は 13.5~13.7%削減でき、また、焼却排ガスを含め施設全体か
ら排出されるダイオキシン類は 4.4%削減できる結果となった。
表8 焼却施設から排出される環境汚染物質削減量の試算結果
項 目
年間焼却量
排出ガス量(湿)
単 位
排出源
バイオガス化と焼却を
組合せた処理
全量焼却処理
バイオガス化併
設による削減率
t/年
-
145,143
101,566
30.0%
3
-
687,571,420
593,612,270
13.7%
3
-
580,533,300
501,197,110
13.7%
m N/年
排出ガス量(乾)
m N/年
ばいじん
kg/年
焼却排ガス
8,510
7,360
13.5%
3
焼却排ガス
42,540
36,810
13.5%
3
焼却排ガス
8,510
7,360
13.5%
3
焼却排ガス
8,510
7,360
13.5%
焼却排ガス
58,050
50,120
13.7%
主灰
1,572,770
1,356,660
13.7%
μg-TEQ/年 飛灰
6,087,880
5,972,490
1.9%
排水
630
370
41.3%
7,719,330
7,379,640
4.4%
窒素酸化物(NOx)
硫黄酸化物(SOx)
塩化水素(HCl)
ダイオキシン類(DXNs)
m N/年
m N/年
m N/年
計
7
6.まとめ
平成 13 年度(2001 年度)から実施している燃せるごみのバイオガス化研究において、平成 14
年度(2002 年度)から平成 17 年度(2005 年度)にかけて行った実証試験結果に基づき事業評価を
行った。
評価条件として、燃せるごみ(収集ごみ)122,117t/年、直接搬入ごみ及び可燃性粗大ごみ
23,026t/年の計 145,143t/年のごみを処理する実用施設を想定した。
評価は、全量焼却処理の場合とバイオガス化と焼却を組み合わせた処理の場合の2つのケー
スについて比較検討を行うことにより実施した。
得られた評価結果を以下にまとめる。
① バイオガス化により、燃せるごみ(収集ごみ)122,117t/年が 78,540t/年まで削減され、
減量化率は 35.7%となった。
② 焼却対象ごみ量は、全量焼却処理の場合 145,143t/年であったものが、バイオガス化と焼
却を組み合わせた処理とすることにより、バイオガス残さ 78,540t/年に直接搬入ごみ及び可
燃性粗大ごみ 23,026t/年を加えた 101,566t/年となり、焼却施設規模は全量焼却処理と比べ
約 30%縮小できることが示された。
③ 施設の建設に要するコストは、全量焼却処理で 288 億円に対し、バイオガス化と焼却を組
み合わせた処理で 285 億円となった。
また、循環型社会形成推進交付金を除いた必要財源は、全量焼却処理の場合で 202.8 億円、
バイオガス化と焼却を組み合わせた処理で 189.32 億円となり、13.48 億円の費用削減効果が
認められた。
④ 売電収入や収集車の燃料費も含めた施設の維持管理に要するコストは、全量焼却処理で年
間 6.75 億円に対し、バイオガス化と焼却を組み合わせた処理で 6.15 億円となり、年間 6 千
万円、率にして約 9%の費用削減効果が認められた。
⑤ 環境負荷の評価では、バイオガス化による売電量の増加及び収集車の化石燃料削減により
温室効果ガス排出量が削減され、その量は二酸化炭素換算で年間 6,348t-CO2 と求められた。
また、バイオガス化により焼却対象ごみ量が削減され、それに伴って焼却排ガス量及び焼
却排ガス中の環汚染物質排出量は 13.5~13.7%削減されることが示された。
さらに、施設全体から排出されるダイオキシン類は、4.4%削減されることが示された。
上記のとおり、実用施設を想定した事業評価の結果において、従来の全量焼却処理に比べ、
バイオガス化と焼却を組み合わせた処理が優れていることが確認され、実用化は可能との結論
を得た。
8
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