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日米同時ゴールデン・サイクル - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

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日米同時ゴールデン・サイクル - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所
嶋中雄二の月例景気報告
No.67 2015 年 11 月 24 日
2016 年、「日米同時ゴールデン・サイクル」が到来か?
●安倍首相が着目した「珍しい現象」
「最近私は、30年以上、日本経済の循環を眺めてきた練達のエコノミストによる、ひとつの分析を目
にしました。『コンドラチェフの波』として知られる、技術革新やインフラ更新が左右する超長期の循
環、また、建設投資を要因とする、長期の循環に当たる『クズネッツの波』。それから、中期、短期の
循環である『ジュグラーの波』、『キチンの波』。これらの超長期から短期に及ぶ4つの波が、いま、
日本経済では、揃いも揃って、みんな上向きだと、その意味で、珍しい現象が日本経済に起きている、
という分析です」(2014年4月17日、『ジャパン・サミット2014』での安倍首相基調講演より)。
13年末に刊行した著書『これから日本は4つの景気循環がすべて重なる。ゴールデン・サイクルⅡ』
(東
洋経済新報社刊)の中で、私は、短期・中期・長期・超長期の循環がすべて上昇で重なる「ゴールデン・
サイクル」という現象が、既に13年から、日本経済に起きている、と主張した。そして、中原伸之・景
気循環学会会長の呼びかけで集まった、原田泰・日銀審議委員(当時は早稲田大学教授)、永濱利廣・
第一生命経済研究所主席エコノミスト(景気循環学会理事・事務局長)と共に首相官邸を訪問し、冒頭
の安倍首相のスピーチ発言のもととなった分析を披露した。
ところが、その後のGDP統計の改訂によって、当時は妥当であると考えていた私の判断の一部を、現
在では修正しなければならないことが明らかとなった。安倍首相をはじめ、「13年から既に日本経済は
ゴールデン・サイクル入りしている」との分析をお伝えしてきた多くの皆様には誠に申し訳なく思う。
だが、これはGDP統計の改訂によって、バンドパス・フィルターという統計的手法(表1)によって行う
日本経済の4つの景気循環の導出に用いている名目設備投資の対GDP比率のトレンド偏差値が、短期循環
のキッチン・サイクルについては、変化の方向が変わってしまったためだ。13年末から14年4月までの
期間で入手可能だったデータでは、底となっていた12年のマイナス0.41に対し、13年はマイナス0.37と、
マイナス幅が縮小し、トレンドに対して上の方向を向いた形であった。だが改訂後は、逆に12年がプラ
ス0.79とピークになり、13年が同0.60と12年比低下した後、14年がマイナス0.47、そして15年は、7‐9
月期のGDP1次速報値をもとにする限り、マイナス0.69と一段とマイナス幅が拡大してしまったのである
(図1、2)。
巻末に重要なお知らせを記載、ご参照ください。
1
表1.『バンドパス・フィルター』とは
○時系列データを、三角関数(sin関数、cos関数)で示される周期変動に分解する手法であり、Baxter and
King*などにより経済分析に用いられた。
*
Baxter and King(1995)、“Measuring Business Cycles Approximate Band-Pass Filters for Econometric Time Series”, NBER
Working Paper 5022.
○「時系列データは、さまざまな周波数(周期)の変動を合成したものとして表すことができる」との考え方が
基本にある。逆にいえば、「時系列データはさまざまな周波数の変動に分解できる」ことになる。
fxnt:周波数xn の変動、αn :fxntの振幅(係数)として、時系列データ:Yt は、以下の通りに
表される (tは時間)。 Yt=α1 *fx1t+α2 *fx2t+α3 *fx3t+…+αn *fxnt+…
○このうち特定の周波数を選択し(xa~xb)、これら以外の周波数の振幅をゼロとして、選択した周波数の
変動の基調部分を抽出する。
(資料)Baxter and King(1995)などをもとに三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
図1.名目設備投資/GDPの推移
(%)
(%)
17.0
図2.バンドパス・フィルターによって抽出された
名目設備投資/GDPの短期循環
1.0
16.5
現在のデータ
16.0
14年3月時点
12年
0.79
0.5
13年
0.60
15.5
15.0
0.0
14年
▲0.47
14.5
14.0
-0.5
13.5
13.0
現在のデータ
-1.0
14年3月時点
12.5
12.0
90
95
2000
05
10
15
15年
13年 ▲0.69
12年
▲0.37
▲0.41
-1.5
(年)
(注)暦年、現在のデータの直近は 15 年 1~3Qの平均値。
(資料)内閣府「国民経済計算」をもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
90
95
2000
05
10
15
(年)
(注)暦年、現在のデータの直近は 15 年 1~3Qの平均値。
バンドパス・フィルターにより 3~8 年の波を抽出。
(資料)内閣府「国民経済計算」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
一方、1885年以降における日本のキッチン・サイクルの周期は、バンドパス・フィルターによる周期
3~8年の波からは、4.6年周期(山から山では最長6年、谷から谷では最長7年)が抽出されており、13、
14、15年の3年間の下り坂が認められた以上、16、17年は非常に高い確率で上り坂に差しかかることに
なる。このことはとりも直さず、私が当初「ゴールデン・サイクルにある」と考えた13、14、15年の3年
間は残念ながら「ゴールデン・サイクル」ではなく、「シルバー・サイクル」にあったことになる。むし
ろ、これからの16、17年こそ、1967、68年以来、ほぼ50年振りの「ゴールデン・サイクル」ということに
なるわけだ(図3、4、5、6、7)。ここで、「ゴールデン・サイクル」とは、キッチン(短期、周期4.6年)、
ジュグラー(中期、同9.6年)、クズネッツ(長期、同21.8年)、コンドラチェフ(超長期、同56.5年)
の4つの景気循環がすべて上昇する状況を言う(表2)。キッチン・サイクルのみが下降中で、他のより
長い3つのサイクルが上昇している状態は「シルバー・サイクル」、キッチン、ジュグラーを除く長期、
超長期の2つの循環が上昇しているのは「ブロンズ・サイクル」と呼称している。
巻末に重要なお知らせを記載、ご参照ください。
2
図3.日本の短期循環(在庫投資循環)
(%)
4
1944
3
1911
1939
1918
2
1934
1924
1
2017?
1974
1905
1897
周期3~8年の波
(キッチン・サイクル:4.6年)
1957
1961
1930
1889
1950
1953
1948
1901
1969
1985
1991
1980
1964
2007
1997
2001
2004
2012
1927
0
1926
1894
-1
1899 1903
1886
1922
-2
1909
1900
1930
1978
1987
2015
1945
1972
1960
1975
1990
2005
2020
(年)
図4.日本の中期循環(設備投資循環)
3
1918
周期8~12年の波(左目盛)
(ジュグラー・サイクル:9.6年)
1951
1928
1908
2
(%)
30
名目設備投資/GDP比率(右目盛)
25
1961
1971
1897
1
1955 1959
1946
1941
(%)
4
1999 2002
1994
2009
1983
1965
1915
1915
1962
1936
-3
1885
2005
1952
1949
1928
1932
20
1941
1981
1999
1990
2008
2017?
1887
15
0
10
-1
1985
1892
1934
1902
-2
1976
1946
1913
1923
1956
-3
1885
(%)
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
1885
1900
1915
1930
1945
2004
1994
2013
5
1966
1960
1975
1990
0
2020
(年)
2005
図5.日本の長期循環(建設投資循環)
1940
周期12~40年の波
(クズネッツ・サイクル:21.8年)
2026?
1990
1918
1894
1968
2004
1999
1903
2011
1980
1930
1900
1915
1930
1950
1945
1960
1975
1990
2005
2020
(年)
図6.日本の超長期循環(インフラ投資循環)
(%)
3
周期40~70年の波
(コンドラチェフ・サイクル:56.5年)
2
2031?
1974
1917
1
0
-1
1946
2002
-2
-3
1885
1900
1915
1930
1945
1960
1975
1990
2005
2020
(年)
(注)図 3-6:暦年、直近は 2015 年 1-3 月期~7-9 月期平均値。3-8 年、8-12 年、12-40 年、40-70 年の波はバンドパス・フィルターにより抽出。
(資料)図 3-6:嶋中雄二『これから日本は 4 つの景気循環がすべて重なる。ゴールデン・サイクルⅡ』東洋経済新報社、2013 年、
大川一司他『国民所得』(長期経済統計1)東洋経済新報社、1974 年、内閣府『国民経済計算』をもとに三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
巻末に重要なお知らせを記載、ご参照ください。
3
図7.日本の名目設備投資/GDP比率の複合循環~2016~17 年にゴールデン・サイクル?~
6
(%)
1940
5
周期3~8年の波
(短期循環=キッチン・サイクル:4.6年)
周期12~40年の波
(長期循環=クズネッツ・サイクル:21.8年)
4
1990
3
1918
2
2016~17?
1968
1894
1974
1
1917
0
1916~17
2026?
2017?
2031?
1960~61
1967~68
1957
-1
1946
1904~05
2002
1903
-2
-3
周期8~12年の波
(中期循環=ジュグラー・サイクル:9.6年)
-4
1980
周期40~70年の波
(超長期循環=コンドラチェフ・サイ クル:56.5年)
1930
1950
-5
1885
1900
2011
1915
1930
1945
1960
1975
1990
2005
(年)
(注)暦年、直近は2015年1-3月期~7-9月期平均値。 3-8年、8-12年、12-40年、40-70年の波はバンドパス・フィルターにより抽出。
(資料)嶋中雄二『これから日本は4つの景気循環がすべて重なる。ゴールデン・サイクルⅡ』東洋経済新報社、2013年、
大川一司他『国民所得』(長期経済統計1)東洋経済新報社、1974年、内閣府『国民経済計算』をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
表2.「ゴールデン・サイクル」とは
①キッチン(短期)
: 4.6年周期
②ジュグラー(中期)
: 9.6年周期
③クズネッツ(長期)
: 21.8年周期
「ゴールデン・サイクル」
=4つのサイクルがすべて
上昇局面となること
*②、③、④の3つのサイクルの上昇局面
の場合は「シルバー・サイクル」
④コンドラチェフ(超長期): 56.5年周期
(資料)初出は、嶋中雄二『ゴールデン・サイクル』東洋経済新報社、2006年。
嶋中雄二『これから日本は4つの景気循環がすべて重なる。ゴールデン・サイクルⅡ』東洋経済新報社、2013年に詳述
●イエレン議長も感じ入った「16年、日米同時ゴールデン・サイクル」
もともと、ゴールデン・サイクル論は、私が、20世紀の経済学者シュンペーター(J.A.Schumpeter)が、
いわゆる「3循環図式」を説明する際に用いる「すべての波動が下落したなら、大きな谷となり、それ
らすべてが上昇すれば、大きな山となる」(シュンペーター/ 金指基編訳『景気循環分析への歴史的接
近』八朔社、1991年、10ページ)という言葉の後段部分を基礎にして考案したものである。
しかし同時に、シュンペーターは、「長期波動がその好況段階にあるときは、ヨリ小さい波動-概し
て、ヨリ重要性の少ない革新に対応するものであるが-は、上昇がヨリ容易だろうし、その『基礎とな
っている』好況が続くかぎり、それらに対してクッションが用意されているだろう」(シュムペー
巻末に重要なお知らせを記載、ご参照ください。
4
ター、吉田昇三監訳『景気循環論』有斐閣、1958年、247ページより)と述べている。これは、基本的
には短・中期循環よりは長・超長期循環の方が重要であると主張しているに等しい。それ故、私のゴー
ルデン・サイクル論でも、長期のクズネッツ・サイクル(21.8年周期)と超長期のコンドラチェフ・サ
イクル(56.5年周期)が上昇局面で重なる「ブロンズ・サイクル」(過去は1904~17年の「坂の上の雲」
の時代、1951~68年の「ALWAYS三丁目の夕日」の時代、そして今回は、2012~26年における「第3の歴
史的勃興期」)を、むしろゴールデン・サイクル以上に重要な現象として、いわば株式市場のテクニカ
ルな重要サインである「ゴールデン・クロス」に類似したものとして扱っているのだ(図8)。
図8.日本の名目設備投資/GDP 比率の複合循環~ブロンズ・サイクル~
(%)
6
1940
5
周期40~70年の波
(超長期循環=コンドラチェフ・サイ クル:56.5年)
周期12~40年の波
(長期循環=クズネッツ・サイクル:21.8年)
4
2013年
伊勢神宮:式年遷宮
出雲大社:平成の大遷宮
1990
3
「ALWAYS 三丁目
の夕日」の時代
1918
2
1968
1894
1917
1
2026?
1974
0
第3の
歴史的勃興期?
-1
1946
1903
-2
-3
2002
「坂の上の雲」
の時代
「復興から
高度成長」の時代
1904-1917年
-4
1904年日露戦争
1951-1968年
1930
1950
1900
1915
1930
2011年東日本大震災
12年アベノミクス
14年消費税率8%
16年伊勢志摩サミット・参院選
17年消費税率10%
19年ラグビーW杯
20年東京五輪
1980
1951年サンフランシスコ講和条約
-5
1885
2011
1945
1964年東京五輪
1960
1975
1990
2005
(年)
(注)暦年、直近は15年1-3月期~7-9月期平均値。12~40年、40~70年の波はバンドパス・フィルターにより抽出。
(資料)大川一司他『国民所得』(長期経済統計1)東洋経済新報社、1974年、内閣府『国民経済計算』をもとに
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所作成。
嶋中雄二「これから日本は4つの景気循環がすべて重なる。ゴールデン・サイクルⅡ」東洋経済新報社、2013年。
橋本脩一『企業者精神と長期景気循環-「平成の坂の上の雲」は始まっている-』日本経済新聞出版社/日経事業出版センター、2014年
他方、もう1つ気になるのが、米国の短、中、長、超長期の複合循環の位相がどうなっているかとい
う点である。実は米国も、17年までとみられる「ブロンズ・サイクル」(16.1年周期の長期のクズネッ
ツ・サイクルと52.0年周期の超長期のコンドラチェフ・サイクルが両方上昇)を形成している上に、やは
り日本同様短期のキッチン・サイクルのみが13、14、15年と下降する「シルバー・サイクル」となって
いる(図9、10)。したがって、米国も実は、16、17年と「ゴールデン・サイクル」を形成するべく、
4.4年周期の短期のキッチン・サイクルが16年から上昇に転じると、日米同時にゴールデン・サイクル
の到来となる。15年5月12日の「海外出張報告」で、同月1日に米国FRB(連邦準備理事会)のイエレン
議長と会談した山本幸三・自民党衆議院議員は、「とくに嶋中雄二氏の景気循環論によれば、2016年か
ら日米共にゴールデン・サイクルが実現しうるという説を紹介したところ、(イエレン議長は)『この
ような議論は米国で目にしたことはなく、大変興味深い』と感じ入っていました」と記している。FRB
による12月利上げも、そう考えれば、十分根拠があることになるが、どうだろうか。
巻末に重要なお知らせを記載、ご参照ください。
5
図9.米国の名目設備投資/GDP比率の複合循環
~超長期・長期の循環の上昇局面が重なるブロンズ・サイクルを形成~
(%)
2.5
2.0
周期40~70年の波
(超長期循環=コンドラチェフ・サイクル:52.0年)
1952
1.5
1982
2000
1.0
1983
0.5
2017?
1965
0.0
2035?
2008
1960
‐0.5
2009
1957
1972
‐1.0
周期12~40年の波
(長期循環=クズネッツ・サイクル:16.1年)
1991
‐1.5
1945
1955
1965
1975
1985
1995
2005
2015
(年)
(注)暦年、直近は15年1-3月期~7-9月期平均値。バンドパス・フィルターにより抽出。
(資料)米商務省資料などをもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
図10.米国の名目設備投資/GDP比率の複合循環
~シルバー・サイクル~
(%)
2.5
2.0
周期8~12年の波
(中期循環=ジュグラー・サイクル:8.5年)
周期3~8年の波
(短期循環=キッチン・サイクル:4.4年)
1952
1.5
1982
2000
1.0
19831985
1957
1960
1956
0.5
1950
0.0
1949
1953
19651966
1952
1952
‐1.5
1994
1981
2000
2017?
1992
2003
1998
1985
1971
1994
1976
1983
周期40~70年の波
(超長期循環=コンドラチェフ・サイクル:52.0年) 1972
周期12~40年の波
(長期循環=クズネッツ・サイクル:16.1年) 1991
1945
1955
1965
1975
2017?
2012
2035?
1987
1970
1964
1961
2007
1989
1978
1973 1976 1980
1980
1958 1960
1957
‐1.0
1973
1969
1955
‐0.5
1966
2007
1998
1989
1985
1995
2003
2008 2009
2012
2010
2005
(注)直近は15年1-3月期~7-9月期平均値。バンドパス・フィルターにより抽出。
2015
(年)
(資料)米商務省資料などをもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(以上)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング
景気循環研究所長
嶋中 雄二
03-6213-6571
[email protected]
巻末に重要なお知らせを記載、ご参照ください。
6
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(商号)
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(加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取
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7
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