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地球温暖化への適応策
(注) 庁内関係課と調整中の計画書掲載案 調整中 第3回実行計画改定専門部会 平成 26 年 11 月 14 日 資 料 2 「地球温暖化への適応策」 本計画(神戸市地球温暖化防止実行計画)は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく法定 計画ですが、現行の規定では「地球温暖化への適応策(以下、「適応策」) 」の事項は、義務的記載 事項ではありません。 しかし、平成 24 年 6 月に中央環境審議会地球環境部会の報告書に「温暖化の影響は、気候、地 形、文化などにより異なるため、適応策の実施は、地域の取組を巻き込むことが不可欠であり、国 レベルの取組だけでなく地方公共団体レベルの総合的、計画的な取組を促進することが必要であ る。」と記載されていることや、平成27年夏ごろに政府全体の総合的、計画的取組としての適応 計画を策定する予定であることから、神戸市においても本計画において適応策の推進を位置づける ことにしました。 ただし、当面は本市において以前から潜在的に実施している適応策の着実な推進を行います。ま た、政府が策定予定の適応計画は、政府全体で短期的(~10 年)、中期的(10~30 年)、長期的(30~ 100 年)に適応策を重点的に講ずべき分野・課題を抽出して各省において検討されて策定されるとの ことです。従って、政府の適応計画策定後に、これらとの整合を図りながら本市が必要とする追加 の適応策の検討を行うことします。 1.「適応策」とは 「適応策」とは 地球温暖化による気候変動への対応には、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑制す る「緩和策」と、既に起こりつつある、あるいは起こりうる地球温暖化(気候変動)の影響に対し て、自然や社会のあり方を調整する「適応策」があります。今まで神戸市では、緩和策に重点を置 いて対策を実施してきました。 今後は、今までどおりの「緩和策」を最大限に実施することに加え、気候変動の影響は避けられ ないとの前提(※)に立ち、自らを守るための「適応策」が必要となってきます。「適応策」は、気 候変動の影響に対する社会経済の脆弱性の改善であり、影響に対する適応能力の向上や感受性の改 善などにより、抵抗能力を高めることであるとされています。 緩 和 策 適 応 策 地球温暖化の原因となる温室効果ガス 地球温暖化の原因となる温室効果ガス(二酸化 既に起こりつつある、あるいは起こりうる地球 炭素など)の排出 炭素など)の排出を抑制 の排出を抑制 温暖化(気候変動)の影響に対して、自然や社 温暖化(気候変動)の影響に対して、自然や社 ・・・気候変動の人為的な要因の改善 会のあり方を調整・・・緩和策を実施したとして 会のあり方を調整 も回避できない影響に対する対策 (例示) (例示) 省エネルギー対策(化石燃料の使用削減) 治水対策・洪水対策 再生可能エネルギーの普及対策 熱中症・感染症対策 森林吸収源の増加対策 農作物の病害虫・高温障害対策 二酸化炭素の回収・貯蔵技術の実用化対策 生態系の保全対策 温室効果ガス排出量を直ちに大幅削減できても、気候変動とその悪影響は直ち に止まらない。しかし、今、排出量を削減しないと、より大きな気候変動とそ の悪影響が予測されています の悪影響が予測されています。 ます。 地球の地上気温の経年変化(年平均) 地球の地上気温の経年変化(年平均) 引用元:JCCCA 引用元:JCCCA (全国地球温暖化防止活動推進センター) 大気中の 二酸化炭素濃度上昇 (産業革命前 280ppm ⇒ 2005 年 380ppm) 出典:IPCC 第 4 次評価報告書 第 1 作業部会報告書政策決定者向け要約 2.日本や神戸における気候変動と予想される 2.日本や神戸における気候変動と予想される影響 予想される影響 気候変動の例 悪影響の例 ① 猛暑日(日最高気温が 35℃以上)が増えている。 防災 河川洪水 土砂災害 ② 熱帯夜の日数が増えている。 沿岸域の高潮 ③ 平均気温が上昇を続けている。 ④ 短時間豪雨(1時間降水量 50mm 以上)が増えて いる。 ⑤ 降水量は年ごとの変動が大きくなっている。 健康 熱中症患者増加 感染症患者増加 自然生態系 生態系の変化 農業 農作物の減収 ① 猛暑日(日最高気温が 35℃以上)が増えている。 35℃以上)が増えている。 神戸 全国 ② 熱帯夜の日数が増えている。 神戸 全国 ③ 平均気温が上昇を続けている。 1.5 1981-2010年平均からの差(℃) 1 神戸市の年平均気温偏差 神戸 0.5 0 -0.5 -1 -1.5 -2 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 年 全国 ④ 短時間豪雨( 短時間豪雨(1時間降水量 50mm 以上) 以上)が増えている。 神戸市での観測回数 [アメダス]1時間に降水量50ミリ以上の年間観測回数(神戸市) 2 神戸 2 11 1 1 11 1 11 1 0 1930 1940 1950 1960 全国 1970 年 1980 1990 2000 2010 3.本計画に盛り込む範囲 第1ステップ (潜在的適応策の推進) 潜在的適応策の推進) 本計画の改定 において今回 ①既に実施している適応策(※)を地球温暖化対策の切り口で体系化 する(※対症療法的、単体技術対策が多い) 新たに位置づ ける範囲 ②庁内横断的な体制整備と共通認識の共有化 ③市民への情報提供と啓発の実施 平成27年夏ごろ 政府全体の総合的、計画的取組としての適応計画を 策定予定・・・短期的(~10 年)、中期的(10~30 年)、 長期的(30~100 年)に適応策を重点的に講ずべき分 野・課題を抽出し各省が検討 第2ステップ( 第2ステップ(追加的適応策の検討・実施) 追加的適応策の検討・実施) 長期的視点・総合的視点の導入 ④将来の気候変動の予測と影響予測の実施 (実施計画の策定、予測技術の習得,モニタリングの実施) ⑤追加すべき適応策の決定・実施 4.適応策の推進計画 (1)目標 地球温暖化に対する適応策について、市民に対策の必要性を認識してもらえるように情報提 供に努め、庁内や関係機関を含めた連絡・協議・実施のための体制や仕組みを速やかに整備し ていきます。さらに、今後の追加的対策が、必要に応じて検討・実施できる体制づくりを推進 していきます。 (2)庁内の連絡・協議・実施のための体制整備 庁内の連絡・協議・実施のための体制整備 影響の分類 適応策の内容 気候変動全般 危機管理全般 気温上昇 熱中症・暑熱ストレス対策 気温上昇 動物媒介性感染症 降水量増加 説明 関係課 対策 危機管理室 消防局警防部警防課・救急課 健康づくり支援課 保健福祉局 予防衛生課 健康部 生活衛生課 水・食物媒介性感染症 気温上昇 気温上昇 降水量増加 の向上、品種改良・栽培法の 試験研究 (雨水排除、レインマップ、 大雨・洪水 ハザード、総合治水対策(県 条例対応)、河川カメラ、雨 水貯留など) (砂防・治山対策、 大雨・洪水 ヒートアイランド対策:緑化 等) 気温上昇 海面上昇・高潮 生活衛生課 産業振興局 建設局 計画課 下水道河川 保全課 部 河川課 建設局 公園砂防部 建設局 水性舗装) 道路部 (沿岸対策:護岸、堤防、防 みなと総局 潮堤、水門の整備) 技術部 環境局 連絡調整 計画課 農政部 (ヒートアイランド対策:透 気候変動全般 ★2 ★3 衛生害虫の分布拡大対策 農業対策:食糧生産性・品質 ★1 環境局 ★4 ★5 ★6 計画課 六甲山整備室 ★7 緑地課 計画課 ★8 計画課 ★9 環境評価共生推進室 ★10 地球環境課、 環境貢献都市室 (3)影響と対策 影響と対策 ★1 熱中症・暑熱ストレス対策 ①影響 ・猛暑日、熱帯夜の増加 ・熱中症による救急搬送人員の増加が懸念、特に高齢者は、重症化のリスクが高く注意が必要 (神戸市の熱中症による救急搬送の事例) 年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 搬送者数 130 652 377 420 640 ②対策 ・イベント開催時の注意喚起 ・野外での長時間行事(運動会等)の開催時期変更 ・熱中症対策マニュアルのより一層の普及啓発 ・熱中症の予防法の周知啓発(リーフレット(下記掲載) 、ポスターの作成) 水分補給 帽子着用 クールスポットの活用 炎天下での活動時間の短縮 など ・熱中症患者の対処法の周知啓発(リーフレット(下記掲載) 、ポスターの作成) ・コミュニティでの高齢者等への見守り啓発体制の充実 ・猛暑日・熱帯夜予測時の積極的アナウンス ・関係機関へ情報提供 感染症対策全般 感染症対策全般 ①影響 感染症のリスクは地球温暖化による気候変動により、全般的に高まるとされる一般的に指摘さ れることが増えているが、感染症の種類によってリスクの内容は異なると考えられ、また不明な 点も多くある。しかし、これらの感染症のリスクの上昇への備えは、今の段階から十分に行う必 要がある。 温暖化によって影響を受けると考えられる感染症の例として想定されるものを下記する。 感染症 感染経路等 原因 動物媒介性感染症 媒介動物(蚊、 気温の上昇、降水量の増加、都市 (日本脳炎、マラリア、デング熱、 ダニ、ノミ、ネ 部の温暖化、海外渡航者の増加、 ウエストナイル熱、リフバレー ズミなど) 住民の感染症への警戒心の低下 水系の汚染 海水温の上昇、降水量の増加(途 熱、ダニ媒介性脳炎、ハンタウイ ルス肺症候群など) 水・食物媒介性感染症 (コレラなどの下痢症など) 上国での洪水被害の増加) 、海外渡 航者の増加 ②対策 (市民への対策の必要性の説明) 現在行っている感染症予防対策は、将来、地球温暖化の影響がより進行した段階 でも当然のこと、今の段階においても、とても重要なことです。日頃からの各自の 取り組みによって、感染症の流行を最小限に防ぐことができます。 また、海外での感染症患者の増加に伴い、海外渡航者による日本国内への持ち込みの増加やさ らに国内での感染拡大が懸念され、そのため、感染症モニタリングの継続強化がより必となる。 (新型インフルエンザの初期対策に有効であった神戸モデルの発展的活用) ★2 動物媒介性感染症対策 ①影響 気温上昇、降水量の増加により感染症を媒介する蚊等の生息期間量の増加 ②対策 ・感染症予防法に基づく運用や感染症予防マニュアルの関係者への周知 ・感染症版危機管理マニュアルの平常時からの担当者における確認 ・感染症サーベイランスの情報共有 ・日本脳炎予防接種の接種率の向上 ・感染症の予防法の周知啓発 (市民啓発) ⇒国内で、海外渡航時に蚊に刺されない対策の啓発(リーフ等の作成) (長袖、長ズボンの着用、虫よけ剤の適切仕様) ・日常生活環境における蚊などの媒介動物の発生源の環境整備 ・感染症発生時の蚊などの媒介動物の防除対策・・・デング熱発生時の事例 ★3 水・食物媒介性感染症 ①影響 海水温の上昇により、海外でコレラ等の水や食物が感染源となる経口感染症が増加し、これら に海外で感染し国内に帰国または入国する者が増え、国内流行の可能性が高まる。 ②対策 ・感染症予防(対策)マニュアル、食中毒予防(対策)マニュアルの平常時からの担当者による確認 ・感染症サーベイランスの情報共有 ・海外渡航者への啓発 ・海外渡航帰国感染者の早期発見と治療 ・食中毒予防対策の周知徹底 ・洪水時の衛生対策(消毒対策) (市民啓発) ★4 衛生害虫の分布拡大対策 ①影響 衛生害虫が、最近、生息地域が拡大している。一例としては、セアカゴケグモ、チャバネゴキ ブリ、イエシロアリ、イラガなど。 衛生害虫は、見た目が不快であるものから、 人を刺したり、噛んだり、さらには、感染症を 媒介したりすることもあるものまで、様々な種 類がある。今まで日本で見られなかった種類も、 日本に侵入し、国内で定着しているものもある。 現在の段階では、すべての衛生害虫の分布 拡大において、地球温暖化やヒートアイラン ド現象による気温上昇との因果関係が明確化 されているものではないが、その可能性は十 分に高いと推定されている。また、生活様式 や建築物の変化による冬季の温度上昇も衛生 害虫の生息域拡大に影響しているともいわれ ている。 ②対策 ・モニタリング等による生息域の把握 ・適切な駆除対策の実施 ・市民への情報提供と啓発の実施 ★5 農業対策 ①影響 ・農業 ・水産業 神戸特産の野菜・果実への影響 コメの収量 海苔養殖への影響 ②対策 ・食糧生産性・品質の向上(適切な栽培手法の指導、高温耐性品種の選定及び転換) ・品種改良・栽培法の試験研究(農作物等の品質低下に対する高温耐性品種の導入や適切な栽培 手法の普及) ・漁場保全対策(漁場の保全、漁場の一次生産力の変化予測などに役立てるための、定期的な海 洋環境のモニタリング調査(栄養塩類、プランクトン分析など) ) ★6 河川洪水対策 ①影響 ・短時間豪雨(1時間降水量 50mm 以上)が増えている。 ・降水量は年ごとの変動が大きくなっている。 ・これらにより、河川洪水の機会が増加することが予想される。 ②対策 (1)河川整備の推進 (2)河川情報の提供 ①河川モニタリングカメラシステム整備事業 ②河川増水警報システム運営管理事業 ③洪水ハザードマップによる情報提供 (3)河川の浸水想定区域における連絡体制の強化 ①河川溢水等による浸水想定区域の避難計画の作成 ②避難準備情報、避難勧告、指示の伝達方法の確立 ③住民への周知 ★6 都市の浸水対策の推進 ①影響 ・短時間豪雨(1時間降水量 50mm 以上)が増えている。 ・降水量は年ごとの変動が大きくなっている。 ・海面水位の上昇や高潮の影響を受けやすくなる。 ・これらにより、都市浸水の機会が増加することが予想される。 ②対策 (1)雨水幹線・雨水ポンプ場の整備 本市の雨水幹線・雨水ポンプ場の整備は、設計基準を降雨強度 49.1mm/hr、確率年 10 年と設 定し、都市部から重点的に実施している。 (2)降雨情報システムの整備(レインマップこうべ 250) 市内にあるレーダーサイトから電波を発射し、雨の強さや雨域の移動などの降雨情報を連続的 に観測している。観測された降雨情報は、降雨による浸水防止を目的とした雨水ポンプの運転や、 防災体制の確立に利用するほか、防災および日常生活に役立つ情報として、幅広く市民のみなさ んに利用していただくため、インターネット及び携帯電話サイトにて配信(レインマップこうべ 250)している。 (3)雨水流出抑制施設の整備 設計基準を超過する豪雨対策として、学校(真陽小学校)や緑地(真陽緑地)などでグラウン ド内貯留の整備も進めている。 ★6 ★9 高潮・沿岸部都市浸水対策の推進 ①影響 ・海面水位の上昇や台風の巨大化により高潮の影響を受けやすくなる。 ②対策 (1)海岸保全施設整備 (2)雨水整備重点地区(三宮南地区を除く) 雨水整備対象区域の中で、特に浸水の可能性の高い地域や人口の集中している地区を重点地区 と位置付け平成 13 年度から整備を進めている。赤塚山地区の整備は完了、和田岬ポンプ場や南 駒栄ポンプ場については供用開始済みである。 (3)三宮南地区浸水対策事業 平成 16 年に発生した台風による浸水を起因とし、三宮南地区の雨水幹線・ポンプ場の整備を 進めている。ポンプ場については 3 箇所整備する予定であり、京橋ポンプ場については平成 23 年度に供用を開始し、残る中突堤ポンプ場と小野浜ポンプ場については平成 27 年度の供用開始 を目指している。 ★7 土砂災害対策 ①影響 ・短時間豪雨(1時間降水量 50mm 以上)が増えている。 ・降水量は年ごとの変動が大きくなっている。 ・これらにより、土砂災害の機会が増加することが予想される。 ②対策 1 治山事業 (1)自然災害防止事業 (2)市有林内山腹崩壊復旧事業 (3)県単独補助治山事業 (4)国有林関係事業 (5)保安林関係事業(県実施) 2 砂防事業 3 地すべり対策事業(県実施) 4 急傾斜地崩壊対策事業(県実施) グリーンベルト整備事業の推進 5 道路防災対策事業 ★7 ★8 ヒートアイランド対策 (温暖化対策にも寄与する対策) 温暖化対策にも寄与する対策) ①影響 ・猛暑日(日最高気温が 35℃以上)が増えている。 ・熱帯夜の日数が増えている。 ・平均気温が上昇を続けている。 ・降水量は年ごとの変動が大きくなっている。 ・これらにより、都市排熱を原因とするヒートアイランド対策の必要性が増加することが予想さ れる。 ②対策( ②対策(温暖化対策にも寄与する対策) 温暖化対策にも寄与する対策) ・都市部の緑化の推進 ・河川沿公園の整備 ・幹線道路での環境形成帯の創出(浜手、中央、山手の各幹線道路での街路樹等の緑化の推進) ・臨海部での環境形成帯の創出(緑地区間等) ・透水型道路、歩道の設置推進 ★10 生物多様性の保全 (自然生態系の保全) 自然生態系の保全) ①影響 様々な気候変動により、自然生態系に影響を及ぼし、生物多様性の確保がより困難になると予 想される。 ②対策 ・生物多様性(例えば、種の多様性)の変化を把握できるモニタリング手法の検討 ●市民から提供された生物の目撃情報に基づく生物多様性モニタリングの活用(「みんなで つくる KOBE 生きものマップの投稿情報からピックアップ」 ) 例:セミ・ホタルの出現時期の変化など) ●市が定期的に実施している各種調査結果の活用 (例:①海域:クロロフィル a、植物プランクトン、魚類、メガロベントス、マクロベント ス、藻場(海藻) 、海水温、②河川:魚類、底生動物、付着藻類、③内陸部:レッドデータ フォローアップ調査:動物、植物)④神戸港沖での藻場の生育状況調査など)