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IMTS 2014 参加レポート

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IMTS 2014 参加レポート
2014/09/18
米国事務所 木原邦博
IMTS 2014 参加レポート
参加日時: 2014 年 9 月 8 日-11 日
参加場所: 米国シカゴ、マコーミックセンター
参加者: 8 日-9 日
佐野会長、高橋聡美、木原邦博
10 日-11 日 木原邦博
1. 総括的印象
IMTS 2014 の注目点は、新しいテクノロジー(アディティブ・テクノロジー)が既に現
実の世界で実用化レベルに達していることを具体的に示したことと言えます。
アディティブ・テクノロジー、アディティブ・マニュファクチャリング(3D プリンター)
を活用した新しい製造法が具体化・現実化され、これまでの切削技術と合わせてハイブリ
ッド化された新しい製造法、製品開発手法が多くの参加者に未来を感じさせると共に、新
技術の更なる応用が進むと考えられます。
また、デジタル技術の応用は CMM 領域を更に進化させ、CMM と加工をハイブリッド
させたトータルなオートメーション・システムへと進んでいます。
更に、ロボット技術が各方面に浸透し、新しいロボットの活用法が具体化されていること
も注目すべき内容でした。今後ロボットを活用したオートメーションは様々な領域へ展開
されていくと考えられます。
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2. 統計情報、一般情報
IMTS 2014 への参加者は、114,147 人の登録者を数え、開催期間が 6 日間と設定された
以降での新記録を更新したようです。
会場スペースはマコーミック・プレイスを全館使用した 1.282 ミリオン平方スクエアとな
り、メートルに換算すると約 119,000 平米、坪に換算すると 36,000 坪 となり、
出展企業数は、2,035 を数えました。
これは背景に、米国の景気回復が現実に進んでいること、技術の確実な進化によって製造
技術がより応用領域へ展開され、新技術が具体的に活用され始めているためだと判断され
ています。
特に 3D プリンターに代表されるアディティブ・テクノロジーに注目が集まっています。
前回 2012 年開催の IMTS 2012 では「新しい技術の紹介」という枠組みを超えていなか
った 3D プリンター製品も、今回は現実に活用できる新技術として各ブースで具体的な実
例・製品として展示・紹介されています。素材が初期のプラスティック系からカーボンフ
ァイバーや金属(チタン含)に拡大され、生成物が実製品として応用できる範囲へ入って
来ました。
この分野の応用展開は非常に速いスピードで進んでいることが分かります。今後更なる技
術革新を起しながら収益の見込めるビジネス領域が生まれて行くと考えられます。
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IMTS 2014 のセンターステージを確保したのは、世界で一番速く製造・製作された電気
自動車でした。
3D プリンターを活用してカーボンファイバー製ボディーを生成、
同じく 3D プリンターで生成した金属フォイールを組み合わせて、IMTS 開催中に延べ
44 時間で電気自動車を組み上げるという実演は成功した模様です。
3D プリンターで製作する電気自動車のビデオは以下のリンクで参照できます。
https://www.youtube.com/watch?v=daioWlkH7ZI
米国では以前の単なる製造業は空洞化し消滅しましたが、新しい技術を活用・応用した「新
しい製造業」の形態へと確実に変わりつつある姿を見せていると言えるでしょう。
日本の産業界から見ると個々の内容はまだまだ荒削りに見えますが、製造業が世界規模で
広がっている現実を直視し、一番大きな市場が何処にあるかそのレベルを見極めると共に
各技術を軽視せず、今後の経緯をしっかりと捉えて行くことが重要だと考えられます。か
つてはロボットやラピッドプロトタイピング(光造形等)も日本の技術が世界に先行して
いたことを忘れず、謙虚に取り組むことが大切だと感じます。
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3. IMTS 2014 における注目点
(1) 3D プリンターに代表されるアディティブ・テクノロジーが実用域に入ってきた
特に、新素材(カーボン、金属)を利用した 3D プリンターが具体化されてきたことで
実用性が上がり、それまでの単なるプロトタイプ作成用途から、実部品生成への取り組み
が始まっていることが分かります。
(2) アディティブ + サブトラクティブ(切削)というハイブリッド複合製品が登場し、特に
DMG MORI lasertec 65 shape に注目が集まっている
今後同様の技術が応用された製品開発が大手機械メーカーでも進む可能性があり、ハイブ
リッド構成に対応した NC コントローラー、CAM ソフトウエアの開発も必要となってく
ると考えられます。
LASERTEC 65 の日本語サイトは以下から、
http://jp.dmgmori.com/%E8%A3%BD%E5%93%81/lasertec/lasertec-shape/lasertec-65-s
hape
IMTS 2014 における LASERTEC 65 の様子は以下から、
http://www.metalworkingcanada.com/3d-printing/dmg-moris-lasertec-65-3d-gets-its-im
ts-debut
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(3) ロボット技術が広範囲に応用されるようになった
従来の製造ラインでのロボットの活用から更に進み、従来のマシンや CMM 機器とロボ
ットを組み合わせて、より複雑な作業をこなすシステム化が行われています。
作業者が行っていた複雑な工程の中にロボットを投入することでワークフローの自動化を
進める試みが実施されています。ロボットのセットアップやオペレーションがソフトウエ
アを活用して容易になったことで、今後はこれまで活用されていない領域へもロボットが
投入されていくと考えられます。
新しいアイデアによってロボットが人間の作業に代わって行く形態が生まれると思われま
す。
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(4) CMM (プローブ、アーム、3D スキャナー)技術の発達と自動化
Hexagon(ヘキサゴン)
、Renishaw(レニショー)などの CMM メーカーがプルーブを
活用したインライン CMM を効果的に普及させていること、アームによる測定、ロボッ
トによる計測、3D スキャナーを活用したデジタル処理など、実体物をデジタル計測し製
造品質を高めるという CMM 分野の高度化が進んでいる。
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(5) CAM の低価格化とクラウド展開
従来の CAM メーカーが既存マシンへの細かな対応と切削パスの高度化、負荷制御やツー
ル寿命を伸ばすことによるコスト削減などに開発投資を進めている中で、Autodesk が
HSMExpress を幅広くダウンロード展開するとともに、Inventer への搭載、Fusion へ
の搭載という流れで、CAM の低価格化、クラウド化を進めていることが IMTS 2014 に
おける CAM 分野の特徴と言えるでしょう。
現在の Autodesk 製品 HSM は、従来の CAM 製品をリプレースするのではなく、新規
CAM ユーザへ浸透しているケースが多く、どちらかというと設計者が作業の流れのなか
で CAM 領域までを含んで利用するような場合に適用されている模様。
他 の CAM メ ー カ ー は 一 様 に
Autodesk の動きを警戒している
模様が見られた
IMTS 2014 における Autodesk CAM のビデオは以下から、
https://www.youtube.com/watch?v=clECecPGNkU
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(6) 教育システムへの新技術の浸透
かなり沢山の学生(高校生クラス)が IMTS に参加し、新しいテクノロジーに触れ、触
発されていることが分かります。米国政府による科学分野への投資が行われていることも
あり、未来のエンジニアを早い時期から育てて行こうとするプロジェクトが各地で実施さ
れているようです。また、20 代の若い参加者が増えていることも IMTS 2014 の傾向と
なっています。
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4. 市場見通し
Gardner Research の市場予想(米国におけるマシンツール市場予想)は以下のようにな
っています。
2015 年の米国機械市場は $8.8B に拡大(前年比 37% UP)すると予想されているようで
す。こうした予想にも牽引された IMTS 2014 の集客結果となっている模様です。
5. CAM メーカーの状況
(1) Mastercam
Mastercam ブースは例年通り既存ユーザ
が多く訪れ、活発な議論が行われている。
ブースそのものの大きな変化はなく、
「いつもお馴染み Mastercam」という雰
囲気でした。
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Mastercam +
Verisurf
Verisurf / Master3DGage の周りには常にお客さんが集まる傾向
がありますが、アームを使用した測定自体が CMM 業界で広まっ
ていることもあり、前回程の集客力は無くなった模様。
Mastercam + OCTOPUZ
Masteecam ブースでの In-House Solution 社の OCTOPUZ のデモ
前回の Robotmaster とは異なるアプローチで、自社製品としての展
開を進めています。
ロボティクスに代表される世界と自動化(オートメーション)とが注
目を浴びてくる中での製品展開と言えそうです。
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(2) VERO
IMTS 2014 開催前に Hexagon に買収された VERO ブース
前回とは異なり、VERO 製品を一つのブースにまとめ、コンパクトな表現とな
っています。
展示されている製品は VISI, Surfcam, EdgeCAM, WorkNC の 4 製品
各製品の開発・販売策は当面変わらない(アナウンス上での表現)ようですが、
CMM 大手の Hexagon の意向により今後の動向は不明です。継続して注目して
おく必要があるでしょう。
(3) Delcam
Autodesk 傘下となった Delcam
の様子は以前と同じ。
Delcam 製品はそのまま継続販売
されて行く予定ですが、Delcam
の 内 部 技 術 は Autodesk 製 品
HSM に統合されていくと想定さ
れます。
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(4) Esprit
IMTS の CAM ブース正面に位置する Esprit お馴染みの光景です。
ビールを配る「おもてなし」も何時もの風景として定着しています。
ヨーロッパでの強さを米国市場でなかなか発揮できていない Esprit ですが、
CAM 業界の再編の中で今後の動きが注目されるところです。
(5) NX
ある意味で余裕の雰囲気を醸し出す
NX です。
CAM 業界の再編にも左右されること
なく、NC, CNC の強さを生かして大
手企業における占有度を保って行く
という雰囲気ですね。
(6) Gibbs Cimatron
Gibbs – Cimatron 陣営も例年通り
のブース展開となっています。
それぞれの製品の強みを生かして堅
実なユーザ開拓が行われているよう
です。
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(7) HyperMill
IMTS CAM ブース群の端に位置する
HyperMill OPEN MIND もお馴染みの
ブース展開です。
IMTS での集客力はそれ程でもありま
せんが、市場での収益力は高く、5 軸の
世界での定評は良く知られています。
(8) SolidCAM
iMachining を展開する SolidCAM は他の CAM 製品とは異なる展示会場
での出店となっています。
それなりな意図があるのか、ブースの確保が出来なかったのかは不明です
が、カッティング・ツール等が展示された領域での CAM 製品の展示も
ある意味では面白い戦略かも知れません。
(9) CAMWorks
お馴染みのメンバーで構成された
CAMWorks も元 気 な姿 を 見 せて い ま
す。
IMTS のような大きな展示会での集客
力は Mastercam 等に奪われて高くはあ
りませんが、製品販売そのものはそれな
りに好調なようです。
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(10)
ICAM
昔から CAD/CAM のメンバーは変わら
ないという言い伝えがありますが、
ICAM も常に同じ陣容で展示会を行っ
ていることが分かります。
ビジネスを同じ陣容で継続出来ることは
素晴らしいことでもあります。
(11)
TopCAM
TopSolid という CAD 製品の名前を前面
に出しての TopCAM の展示です。
企業システムとの親和性の高さから、あ
る 米 国 外 の Mastercam リ セ ラ ー が
TopCAM と Mastercam との併売を始
めたことを IMTS 会場で個人的に囁いて
くれました。
(12)
BobCam
低価格製品であるからと侮ってはいけな
い BobCAM ブースです。
IMTS 2014 では前回よりも展示会場の
中心でのブース展開となっています。
米国での顧客数は多く、ホビーユーザも
含めた販売展開策には定評があります。
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(13)
CAM-Tool
日本で高い実績を持つ CAM-TOOL も
小さいながらブース展開をしています。
加工精度の高さが徐々に米国市場にも浸
透していると想像されています。
ブースは小さくても、機械メーカーとの
協賛で、マシンの展示に合わせた製品紹
介を行っているようです。
(14)
Autodesk
新参者(新規参入)の Autodesk のブース位置は会場の端っこで、決して良い
位置ではありませんが、HSMExpress のダウンロード数に表れているように、
新規ユーザをそれなりに集客できているようです。
ツールメーカーとの協賛でツールメーカーブースでの実演を並行して実施し
ています。HSMWorks でお馴染みの負荷制御はこれから更に浸透していくの
でしょう。
以上
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