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第 9章 土地家屋調査士の進むべき道は?

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第 9章 土地家屋調査士の進むべき道は?
第
9 章 土地家屋調査士の進むべき道は ?
土地家屋調査士は、個々の不動産の価値の管理と、地域の安心・平和に貢献するのが務めです。
1 地図のメンテナンスの必要性
◦地図が正しいのはできたときだけ
土地の形状は、道路の新設や河川の改修、都市整備等々官公署等による大規模で地域一体を巻き込
んで行なわれる事業以外にも、自然の力で土地が隆起・水没したり、個人所有の土地であっても絶え
ず分筆・合筆が行なわれて変更が生じているものです。
従って、変更が生じた際には迅速にこれを地図に反映させ、現況と地図情報を常時一致させておけ
る体制が整っている必要があります。
そのためには、官公署と登記所あるいは各地の土地家屋調査士会の間の情報共有の体制が整ってい
ることのほか、表示に関する登記には申請義務が課せられていることや、申請がなされずに現況と地
図情報・登記情報が不一致な状況が長く続くと思わぬ損失を被るおそれがあることを国民に広く知っ
てもらう必要があると思われます。
後述する地図混乱地域のなかには、地図情報と現況の不一致が長らく放置されたことによって事態
が悪化したものがあるように思われます。
従って、登記制度の不十分な部分を明らかにすることにもなりかねませんが、地図混乱地域の存在
を広く知ってもらうことが表示に関する登記は迅速に申請するべきであることを反面的に伝える手段
になり得るのではないかと考えます。
2 「土地」についての代理人~土地の所有者との二人三脚
上記の後半部分=個人の土地所有者についての記述は、義務が課せられているとは言っても結局は
土地所有者の申請を待つほかないのであり、土地について変更が生じたら(あるいは変更を生じさせ
たら)登記情報・地図情報に反映させなければいけないとの認識を広く国民に持ってもらうだけでなく、
その際には土地家屋調査士が相談の受け皿であり、手続を代理する職務を有する存在であることを知
ってもらう必要があると考えます。
⑴ その土地をどう活かすか、どう紛争を予防するか
土地の利活用をするについての専門家としては、不動産鑑定士などの他資格者が専門として挙げら
れるところでしょう。しかしながら、土地を利活用する、資産として残すことについては、やはりそ
の境界が明らかでなければなにも始まらないものです。
例えば、震災復興などの場合であれば、まずは道路の復興整備が必要であり、そのためには道路境
界を明らかにしなければなりません。道路境界を明らかにするということは、道路とそれに接する私
有地との境界を明らかにすることです。
2011 士業最前線レポート 土地家屋調査士編
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土地家屋調査士
さらに有名な事例を挙げれば、六本木ヒルズの再開発に際して、その筆界の確定には4年半以上が
費やされたとも言われています。不動産取引の活性化、都市再生の円滑な推進、震災災の復旧事業など、
国民生活に直結する経済活動や生活の基盤については、「まず土地の境界を明らかにしなければなにも
始まらない」のであり、必要に迫られるまえに境界を明らかにしておけば、無駄な費用や時間、場合
によっては近隣との将来に渡ってのトラブルは回避できるものです。
⑵ 「その土地」より「その地域」がわかることが調査士にとって重要
建物と異なり、土地は形状を変えつつも永年に渡って存在し続けて来たものがほとんどです。今現
在存在する土地がどのような変遷を辿って現況を呈しているのか、それは対象となる一筆について知
るだけでなく、周囲の数筆、さらには対象土地が存する地域一体の変遷を知ることによってより合理
的な結論を導き、依頼者の利益に帰するものと考えます。
同一の都道府県であっても、明治時代の廃藩置県当時あるいは江戸時代には別々の統治下にあった
ことから当時の為政者による政策の影響が残る地域や独自の慣習が未だに残っている地域、さらに狭
い同一の市区町村内であっても城下町であったり、幕府の直轄地(いわゆる天領)であったことから
独自の統治を受け、その当時の慣習が未だに受け継がれている地域、戦後の復興過程で独自の発展を
遂げた地域等々、そこに存する土地が呈する現況の成立過程や経緯は個々に異なります。
従って土地家屋調査士は地域の変遷やその過程での特異性も含めて広く知識を得る必要があり、そ
のための資料が整えられている体制作りが必要であると考えます。
そしてそのことが将来の紛争の予防につながり、時として殺人事件にまで発展することもあり得る
人間同士の感情が引き起こす無用なトラブルを回避する手段なのです。
3 地図混乱地域について
一定の地域において、かなりの広範囲にわたるその全域が、登記所に保管されている地図に表示さ
れた土地の位置および区画と、これに対応する現地の位置および区画とが著しく相違している地域が
存在し、登記実務上の呼称で地図混乱地域と呼ばれています。
既述のように不動産登記法の第14条1項は、「登記所には、地図および建物所在図を備え付けるも
のとする」と規定しています。
地図備え付けの最大の目的は登記された土地を現地において特定することであり、地図が整備され
ていれば現地において特定できない土地があっても復元することが可能です。
しかし、既述のように上記の第14条地図の整備は、登記所に備えられる地図枚数の約6割程度に
止まっており、第14条地図の要件を満たさない図面が半数近くを占めています。
その多くは主に明治時代に作成されたいわゆる公図であり、地図混乱地域も主として公図の中に見
られます。
近年では国会議員団が地図混乱地域を視察したことが新聞報道されたこともあり、その存在が広く
知られるようになっています。
地図混乱地域が生じる理由は様々であり、次の事例が見られます。
① 土地の現況に変更が生じているにもかかわらず登記手続きがなされていない事例
・土地改良事業が中途で頓挫してしまった
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・正規の手続によらない私的な土地改良や土地の交換が行われた
・地震・洪水・山崩れ等の天災が発生した
・ 軍用地として強制買収された民有地が境界不明のまま返還された。
② 登記手続きはされているが、登記に対応する土地の位置および区画が現地と地図とで一致して
いない事例
・宅地造成に際して、分筆登記・合筆登記を経るべきところをいわゆる机上分筆を行なって分譲
した。
③ 戦災で焼失したり、災害によって損なわれた地図等の復元期間内に登記された分合筆の記載が
ないもの
④ 地図が作成された当初から現地の土地の位置および区画を反映していない事例
・不正確な公図に合致させるような机上分筆が繰り返された
このような地域は、土地を基準に考えると実在する一定の範囲の土地が誰の所有に属するのか不明
なのであり、所有者を基準に考えると当人が実際に所有する土地が現地のどの位置・どの範囲なのか
不明なのです。
従って、金融機関から融資が受けられないとか、道路拡張の計画があっても任意買収や収用の交渉
相手が不明なため計画が全く進まない、ということが起こり得るのです。
地図混乱地域の解消方法としては
・分筆登記・合筆登記等の原則的な手続きによる是正
・土地改良または土地区画整理事業による是正
・土地所有者等の利害関係人全員の合意に基づく地図訂正
・国土調査法に基づく地籍調査による是正
・地方税法の規定に基づく申出による是正
が考えられますが、いずれの方法を採用するにしても理論上の問題、関係者の意見調整、必要経費
の負担、事務手続きや作業担当者の選定等々多くの課題があると考えられます。
ある地域における例では、1960年代以降、不動産業者が一部に農地を含む山林を宅地造成する際、
農地転用許可を得ることが困難だったにもかかわらず造成・分譲を強行、付近の地番を付番する等の
杜撰な分筆をしたものの登記が受け付けられたことが問題発生の発端だったと言われています。
後になって所有者不明の土地、所在地不明の土地、複数の同一地番の存在が表面化したのですが、
この地域の道路は市道としての認定を受けられなかったため、道路陥没の復旧費用までもが住民の負
担になっていました。
また、土地改良事業や土地区画整理事業、地籍整理事業などの公共事業においても、その区域界が
丁寧に処理されなかったものがあります。
このように深刻な問題を解決するためにはいずれの方法によって解決を図るのが最善であるか、一
帯の住民・自治体・法務局等々多くの関係者が共通の認識を持ち、利害の調整を図って事後に問題が
生じないように最大限の配慮をしながら検討されなければなりません。
また、解決が図られないままでは混乱が生じた理由や当時の事情・経緯を知っている人の高齢化が
進み、地図の整備や解決の足掛かりさえ失われてしまうとの懸念が生じていることからも地図混乱地
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土地家屋調査士
域の問題の解消が急がれています。
4 都市部と地方での業務の違い
都市部と地方での業務の違いを日常業務の側面から述べると、地価の違いもあって筆界の扱いにつ
いては都市部のほうがより慎重に扱うべき機会が多いと言えるでしょう。地籍調査が都市部のほうが
進展していないのは筆界の確定が困難であるところに大きな原因があるからです。
業務を行っていると各地域の特性があると感じることがあります。
建物の登記では法務局ごとの扱いの相違があり、一例として挙げられるのは、
① 建物滅失登記において、法定の添付書面ではないが申請人の印鑑証明書や担保権者の承諾書を
添付させる法務局がある。
② 実地調査の際に少なくとも代理人である土地家屋調査士の立会いが求められる法務局と表示登
記官が独自に実地調査を行う法務局がある。
③ 閉鎖された家屋番号を再使用しない扱いとする法務局がある。
①の建物滅失登記における印鑑証明書や担保権者の承諾書の添付は、登記所側の実地調査の省略を
するためだと思われます。
また、③の閉鎖された建物の家屋番号の再付番しない扱いについては、従前の建物(閉鎖した建物)
と現存する建物とが混乱するのを避けるための扱いであると思われます。
参考までに地番および家屋番号の定め方に関する規定を引用し、要点をまとめておきます。
参考:不動産登記事務取扱手続準則
(地番の定め方)
第 67 条 地番は、規則第 98 条に定めるところによるほか、次に掲げるところにより定めるもの
とする。
⑴ 地番は、他の土地の地番と重複しない番号をもって定める。
⑵ 抹消、滅失又は合筆により登記記録が閉鎖された土地の地番は、特別の事情がない限
り、再使用しない。
⑶ 土地の表題登記をする場合には、当該土地の地番区域内における最終の地番を追い順
次にその地番を定める。
⑷ 分筆した土地については、分筆前の地番に支号を付して各筆の地番を定める。ただし、
本番に支号のある土地を分筆する場合には、その1筆には、従来の地番を存し、他の
各筆には、本番の最終の支号を追い順次支号を付してその地番を定める。
⑸ 前号本文の規定にかかわらず、規則第 104 条第6項に規定する場合には、分筆した土
地について支号を用いない地番を存することができる。
⑹ 合筆した土地については、合筆前の首位の地番をもってその地番とする。
⑺ 特別の事情があるときは、第3号、第4号及び第6号の規定にかかわらず、適宜の地
番を定めて差し支えない。
⑻ 土地区画整理事業を施行した地域等においては、ブロック(街区)地番を付して差し
支えない。
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⑼ 地番の支号には、数字を用い、支号の支号は用いない。
2 登記官は、従来の地番に数字でない符号又は支号の支号を用いたものがある場合には、
その土地の表題部の登記事項に関する変更の登記若しくは更正の登記又は土地の登記記録
の移記若しくは改製をする時に当該地番を変更しなければならない。ただし、変更するこ
とができない特段の事情があるときは、この限りでない。
3 登記官は、同一の地番区域内の2筆以上の土地に同一の地番が重複して定められている
ときは、地番を変更しなければならない。ただし、変更することができない特段の事情が
あるときは、この限りでない。
4 地番が著しく錯雑している場合において、必要があると認めるときは、その地番を変更
しても差し支えない。
(家屋番号の定め方)
第 79 条 家屋番号は、規則第 112 条に定めるところによるほか、次に掲げるところにより定める
ものとする。
⑵ 1筆の土地の上に1個の建物が存する場合には、敷地の地番と同一の番号をもって定
める(敷地の地番が支号の付されたものである場合には、その支号の付された地番と
同一の番号をもって定める。)。
⑵ 1筆の土地の上に2個以上の建物が存する場合には、敷地の地番と同一の番号に、1、
2、3の支号を付して、例えば、地番が「5番」であるときは「5番の1」、
「5番の2」
等と、地番が「6番1」であるときは「6番1の1」、
「6番1の2」等の例により定める。
⑶ 2筆以上の土地にまたがって1個の建物が存する場合には、主たる建物(附属建物の
存する場合)又は床面積の多い部分(附属建物の存しない場合)の存する敷地の地番
と同一の番号をもって、主たる建物が2筆以上の土地にまたがる場合には、床面積の
多い部分の存する敷地の地番と同一の番号をもって定める。なお、建物が管轄登記所
を異にする土地にまたがって存する場合には、管轄指定を受けた登記所の管轄する土
地の地番により定める。
⑷ 2筆以上の土地にまたがって2個以上の建物が存する場合には、第2号及び前号の方
法によって定める。例えば、5番及び6番の土地にまたがる2個の建物が存し、いず
れも床面積の多い部分の存する土地が5番であるときは、
「5番の1」及び「5番の2」
のように定める。
⑸ 建物が永久的な施設としてのさん橋の上に存する場合又は固定した浮船を利用したも
のである場合には、その建物に最も近い土地の地番と同一の番号をもって定める。
⑹ 一棟の建物の一部を1個の建物として登記する場合において、その一棟の建物が2筆
以上の土地にまたがって存するときは、一棟の建物の床面積の多い部分の存する敷地
の地番と同一の番号に支号を付して定める。
⑺ 家屋番号が敷地の地番と同一である建物の敷地上に存する他の建物を登記する場合に
は、敷地の地番に2、3の支号を付した番号をもって定める。この場合には、最初に
登記された建物の家屋番号を必ずしも変更することを要しない。
⑻ 建物の分割又は区分の登記をする場合には、前各号に準じて定める。
⑼ 建物の合併の登記をする場合には、合併前の建物の家屋番号のうち上位のものをもっ
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土地家屋調査士
て合併後の家屋番号とする。ただし、上位の家屋番号によることが相当でないと認め
られる場合には、他の番号を用いても差し支えない。
⑽ 敷地地番の変更又は更正による建物の不動産所在事項の変更の登記又は更正の登記を
した場合には、前各号に準じて、家屋番号を変更する。
要約すると、土地の地番は地番区域内の本番の最終の枝番号を順次追って付番していくこと、建物
の家屋番号は、敷地の地番と同一の番号をもって定め、敷地に支号がつけば支号を付した地番と同一
の番号をもって家屋番号とすることとされています。
また、建物は複数の敷地にまたがって建築されることがありますが、その場合は主である建物のみ
の建物であれば床面積が最多となる敷地の地番をもって定め、附属建物を有する建物であれば主であ
る建物が存する敷地の地番をもって家屋番号を定めるとされています。
土地の地番については閉鎖された地番は特別の事情が無い限り再使用しないとの規定がありますが、
建物の家屋番号についてはこのような規定はありません。
これは、土地は人為的な分筆・合筆、自然発生的な隆起・水没・地盤の移動を繰り返しながらも永
続的に存在し続けるものですが、建物は数十年から百年程度の存在を前提にしたものであることによ
ります。
このことは、過去に存在したのと同一の家屋番号を付しても大きな混乱は起こりませんが、土地も
同様の扱いを行ったとしたら分合筆の経緯が調査不能となることを考えれば明らかです。
また、土地の登記では法務局だけでなく、各地の市区町村との交渉があり得、道路図面の整備状況・
測量の実施状況等によっても扱いが変わってくるので建物以上に地域性が生じ得ます。
官民の境界査定の申し出がなされた場合、土地家屋調査士や測量会社に委託して得た調査結果と自
治体側の精査結果が同一であれば、それをもって境界とする扱いとして比較的短期に境界が定まる扱
いとしている自治体があるとも聞きます。
さらに、例えば土地改良区域内でその土地改良事業の測量精度、隅切りの大きさ等々が定まってい
ることがあります。地元の調査士が当該地域内の登記を行うと測量資料を市役所に提出し、市役所で
は街区調査図等の基としており、後続の登記を行う土地家屋調査士がこの慣習を知って市役所の資料
にも当たれば安価・迅速・正確に登記を完了できるのです。
各地域の扱いを知らないと正確な調査ができなかったり、依頼人に時間的にも費用的にも負担を強
いることが生じ得ることから土地家屋調査士は申請を行う地域の扱いを熟知している必要がある一方、
オンライン申請あるいは郵送での申請が可能な現在では、従来に比較してより多くの管轄法務局へ申
請の機会があるものと考えられます。
したがって土地家屋調査士は普段から業務に関して研鑽する一方、各地の独自的・特徴的な扱いに
ついてはその土地の土地家屋調査士会や法務局・地方法務局において公示していくことも将来的には
必要なのではないかと考えます。
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第 9 章 土地家屋調査士の進むべき道は?
5 受験生の減少問題
既述のように土地家屋調査士の業務は国民の生活と密接な係わりを有し、公共的な側面を多分に持
ち合わせているものである一方、この資格試験の受験者数は減少し続けています。
平成 10 年度の土地家屋調査士試験の出願者数は 11,000 名であったが、平成 15 年度は 9,300 名、平成
16 年度は 8,875 名、平成 19 年度は 7,500 名、平成 21 年度は 7,234 名(受験者数は 6,026 名)と年々出願
者数が減少し続けています(下表参照)。
試験会場も都道府県ごとに一試験場でなく平成 19 年度の試験からは、札幌、仙台、東京……等の法
務局の管轄ごとに一試験場が設置されているのが実情であり、平成 22 年度からは2年連続で出願者数
が 7,000 人を割ってしまいました。
真偽はともかくとして、このまま受験生が減少し続けたら土地家屋調査士の資格が国家資格でなく
なるのではないか?土地に関する登記は測量士に、建物に関する登記は建築士に開放されるのではな
いか?と心配する声が聞かれることさえあります。
資料 : 受験者数・合格点の推移
年度(平成)
平成 19 年度
平成 20 年度
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
出願者数
7,540 名
7,270 名
7,234 名
6,739 名
6,310 名
対前年度増減数
-392 名
-270 名
-36 名
-495 名
-429 名
対前年度増減率
-4.9%
-3.6%
-0.5%
-6.8%
-6.4%
受験者数
6,250 名
6,074 名
6026 名
5643 名
5056 名
合格者数
503 名
488 名
486 名
471 名
390 名
8.05%
8.03%
8.07%
8.35%
7.71%
合格率
※
択一足切り点
32.5 点
35.0 点
32.5 点
32.5 点
30.0 点
書式足切り点
38.0 点
31.0 点
35.0 点
29.0 点
24.0 点
合格点
78.0 点
73.0 点
70.5 点
67.0 点
60.0 点
※ 合格者数÷受験者数× 100
ただし、合格者数は平成 10 年度が 616 名、平成 21 年度が 486 名ですが、資格者を増やすとの法務省
の方針を受けて合格率は上昇しています。しかし、平成 23 年度は再び合格率が下降しています。
また、同じく登記を業務にする資格でも司法書士試験の出願者数が平成 10 年度は 21,000 名、平成
21 年度は 32,000 名、平成 23 年度では 31,000 名と5割前後増しであるのと比較すると大きく水を明け
られている現実もあるのですが、これらの理由としては次のものが考えられます。
・業務と国民の生活に密接な関わりがあるにもかかわらず、マスコミなどに取り上げられる機会が
少なく知名度が低い(知名度が低い理由として、事件の依頼人となるのが不動産の最終的な取得
者である一般の国民ではなく、不動産業者、建築・建設業者、金融機関等、不動産の取得を介在
する立場の業者であることが多いため、調査士の業務が一般の国民の目に直接触れる機会が少な
い(ユーザーが限定されている)ことが考えられる)。
・試験の範囲が法律の学習だけでなく数学の知識や作図の技術を必要とすることから敬遠されてし
まう。
・開業時に測量器材を揃える必要があり、他資格と比較して多額の開業資金を要する。
・法律実務家としての側面と測量技術者としての側面との二面性・多様性が敬遠される。
2011…士業最前線レポート 土地家屋調査士編
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土地家屋調査士
・屋外での作業を伴うことが敬遠される。
数年来の世界的不況や雇用の悪化の影響を受けた結果、不動産取引が停滞して土地家屋調査士の本
来的業務における活躍の機会が減少しているのは事実でしょう。
しかし、受験を敬遠させていると考えられる上記の理由は、逆に捉えるとこのような特性を持つ資
格の職業はほかに無いことの裏返しであるとも言えます。
また、受験生の数は減少したものの、全国の土地家屋調査士の数は平成 10 年以降 18,000 名前後でほ
ぼ一定しています(この点、司法書士は少額訴訟開放の影響か平成 10 年の 16,980 名から平成 23 年に
は 20,607 名に増加しています)。
全国の土地家屋調査士の年齢別構成は下表のとおりで平均年齢は 56 歳となっています。
資料 : 会員の年齢構成
不明
1.8%
70 歳以上
12.1%
20 代
0.8%
30 代
9.8%
40 代
15.8%
60 代
26.0%
50 代
33.9%
出典)平成 20 年度土地家屋調査士業務形態・報酬実態調査報告書 2008 年 9 月 日本土地家屋調査連合会
測量器材の高性能化や登記申請のオンライン化のような測量・登記を取り巻く環境の進化に対して
より円滑に順応していけるのは若い世代であり、彼等にも活躍の場が存分にあるものと思われます。
登記のオンライン申請について補足すると、平成 22 年1月より所有権保存登記(司法書士の業務で
ある権利の登記に該当する)のオンライン申請で登録免許税の軽減(租税特別措置法第 84 条の5第1
号の規定による)を受けるためには前提として建物の表題登記もオンライン申請されていなければな
らないこととなりました。
このように依頼主の軽減負担のためにもオンライン申請への対応が当然の動きになっていくものと
考えられます。
さらに他の頁で述べているように土地家屋調査士の職業的専門性や社会的有益性が高い評価を受け
ている分野、今後さらなる研究が必要とされている分野も存在するのです。
これらの特性や将来性を知り、新たな機会を見出してこの資格を志す若い世代が増えることを願っ
て止みません。
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第 9 章 土地家屋調査士の進むべき道は?
6 地震への各地の土地家屋調査士会の取り組み
平成7年の阪神・淡路大震災以降もわが国では甚大な被害をもたらす大規模な地震・災害が各地で
発生しています。
大規模な地震・災害が発生すると、土砂崩れや地殻の変動などによって土地の境界が不明になったり、
建物が倒壊・半壊等の被害を受けることが避けられませんが、この問題を解決するために土地家屋調
査士が大きな役割を果たした例、度重なる地震・災害の経験から、行政と協定して土地家屋調査士の
特性を復興に生かそうとする例および他の専門士業と協同する例に言及します。
いずれからも土地家屋調査士が極めて専門的な分野の業務を行っており、それが国民の財産保全に
寄与していることが見て取れるほか、今後の土地家屋調査士の可能性や進むべき方向をも示唆してい
るものと思われます。
⑴ 阪神・淡路大震災の復興時における土地家屋調査士の行動
平成7年(1995 年)1 月 17 日、マグニチュード 7.2 と言われる大地震が阪神地域を襲い、約 6,500 名
の死者を出したばかりでなく、20 万棟余の全半壊・全半焼建物や地殻変動によって広範囲に渡り地表
面が水平・垂直に移動した結果、土地の境界・筆界が混乱するなどの被害をもたらしました。
災害発生時、まず最優先されるのは人命救助であり、ライフラインの確保ですが、復興のためには
建築とインフラ整備が不可欠であり、その基盤である不動産についての混乱が解決されないままでは
復興のための方策が進まないのは明らかです。
この点、阪神・淡路大震災の復興過程において、土地家屋調査士が土地建物の表示に関する登記の
専門家として大きな役割を果たしたことは、社会的評価を受けたばかりでなくその後の土地家屋調査
士制度と業務の変革に大きな影響を及ぼすこととなりました。
すなわち、法務省は、膨大な数の被災家屋の滅失登記を職権で行えるとしましたが、これに伴う現
地確認作業を受託した兵庫県公共嘱託登記土地家屋調査士協会は短期間でその作業を終えました。
また、境界問題については当初大混乱が予想されていたものの、神戸地方法務局長からの照会に対
5
する法務省民事局長からの回答 を受け、登記官をはじめとする登記所職員とともに被災地の土地家屋
調査士が適切な対応で調整作業を行った結果ほとんどが解決されたのです。
このほかにも被災マンションの再建・復旧に伴う登記に関する問題や、被災者から寄せられる不動
産に関しての種々の相談にも適切に対応しました。
これら一連の活動を通じて土地家屋調査士の専門資格業としての知名度や社会的有益性の認識は従
来と比較して格段に高まり、土地家屋調査士が有する専門的知見が社会に惹起する紛争解決の一翼を
担うものと認知されたことはその後の筆界特定制度や土地家屋調査士会 ADR の誕生に多大な影響を与
えたものと考えられます。
⑵ 静岡県における行政と土地家屋調査士会との協力体制について
東海地震の発生が予想される静岡県に設置された静岡県土地家屋調査士会は、静岡県および県内全
域の市町との間で災害時家屋被害認定調査に関する協定を締結するに至っているのでそこに至る過程
や、協定の概要について言及します。
5 平成7年3月29日法務省民三第2589号民事局長回答(要旨)
「地震による地殻の変動に伴い広範囲にわたって地表面が水平移動した場合には、土地の筆界も相対的に移動したものとして取り扱う。なお、
局部的な地表面の土砂の移動(崖崩れ等)の場合には、土地の筆界は移動しないものとして取り扱う。」
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土地家屋調査士
静岡県でこの協定締結が実現する以前、まず、平成7年の阪神・淡路大震災の2年後に社団法人兵
庫県公共嘱託登記土地家屋調査士協会が「阪神・淡路大震災による倒壊・焼失建物の滅失調査報告書」
を上梓しています。
同報告書では「このような震災が二度とあってはならない」という思いのもと、震災時に土地家屋
調査士がより一層の社会貢献ができるよう、震災時の業務をより迅速に・効率的に進められないか・
本来業務を足掛かりにさらに活躍の場を広げられないかを、特に震災情報の収集・提供の観点から検討・
考察しています。
その後、平成 19 年3月 25 日に発生した能登半島地震の復興過程において、石川県土地家屋調査士
会が「何でも行政相談会」への参加、「常設無料相談会の設置」「建物滅失登記無料代理申請」等の被
災者支援のための施策を行っています。
この地震では、発生から3ヶ月の時点で全壊建物 640 戸、半壊建物 1583 戸、一部損壊 13829 戸の甚
大な被害が生じたが、発生直後はライフラインの確保が第一優先とされ、県の担当機関と石川県土地
家屋調査士会との面談に至るまでにも一週間以上を要し、さらに被災者が実際に相談に訪れるように
なるのは発生から1ヶ月以上を過ぎてからだったとのことで、専門家として何かをなすべきであると
の使命感は持ちつつも何ができるのかが判らない中での試みであったことが読み取れると言えます。
そのようななかで他の士業団体に先駆けての行動が評価され、合同相談会では県側からの依頼でこ
れらの団体との連絡調整も行ったとのことです。
兵庫および石川の土地家屋調査士会の取り組みを活字で目にすると、「地元密着で営業・活動をして
いるのだから……」というものを超越した使命感のようなものを感じずにはいられない思いがします。
そこで静岡県の活動への言及ですが、度重なる大規模な地震・災害における被害と各地の土地家屋
調査会の活動を見聞した静岡県土地家屋調査士会は、まず「地震対策調査報告」「提言」をまとめた冊
子を作成・発刊し、土地家屋調査士の関係組織だけでなく県内各市町の担当部署や県の関係機関に配
布しました。
この冊子には、前者では阪神・淡路大震災以降の地震における各土地家屋調査士会や法務局等の対
応の検証と静岡県が発信している東海地震についての情報が、後者では土地家屋調査士、土地家屋調
査士会、法務局、市町村への提言が掲載されているのですが、後者の「提言」において、土地家屋調
査士に対しては「罹災証明発行のための建物調査に土地家屋調査士が参加するための制度研究」を、
市町村に対しては「罹災証明発行のための建物調査に土地家屋調査士が参加できるよう制度的検討」
を掲げています。
そして発刊と前後して静岡市の担当部署(消防防災局防災部)に対する罹災証明発行に際しての土
地家屋調査士参加のための制度検討の依頼と、同部防災指導課からの「土地家屋調査士会との協力協
定について」の提示があり、協議・検討の結果、平成 20 年7月2日に静岡市との間での協定締結に至
ったのです。
協定で土地家屋調査士が協力を求められた業務として重要なものは罹災証明発行に際してのもので、
災害発生の3日ほど後から市職員との2名1組で被災地域を巡回して家屋の被災状況を確認し、罹災
証明発行に必要な調査を行うとの内容です。
また、住宅の応急修理、被災住宅の被害確認の関係から、被災から1ヶ月以内に罹災証明を発行す
る必要があるとの要請もあります。
罹災証明書は、災害救助法の適用審査、被害者生活再建支援法による支援金の審査、災害保険の認
定審査等に必要なものです。
平成 19 年7月 16 日に発生した新潟県中越沖地震の際には、罹災証明書の発行に伴う家屋被害認定結
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2011 士業最前線レポート 土地家屋調査士編
第 9 章 土地家屋調査士の進むべき道は?
果に対する被災者の不満が相次ぎ、柏崎市では 6000 棟もの家屋への再調査を実施したことが報道され
ましたが、この証明書が迅速・公正に発行されることこそ復興のための第一歩であると言えるでしょう。
なお、土地家屋調査士が被災直後の現地を巡回する機会が与えられたことは復興後の登記業務にと
って有益であるだろうとの考え、また罹災証明の発行に係わることは復興後の建物滅失登記申請受託
に際して有益であるだろうとの考えが紹介されていることに言及しておきます。
静岡市との協定締結後、下田市を中心とする賀茂地域一市五町、静岡市と並び県内のもう一つの政
令指定都市である浜松市とも協定を締結し、平成 21 年の年初には静岡県とも協定を締結するに至りま
した。罹災証明書の発行手続は市町村が行うものですから、それまでの市町との締結内容とは若干の
相違点がありましたが、県内各地域の防災局単位を基本とした市町が連名で協定を締結することにつ
いて県が調整業務を行うことが盛り込まれたことから、その後のわずか2ヶ月半余、同年4月1日ま
での間に県内の全 37 市町との協定締結が終了しました。
被災後の大混乱やどれだけの被災住宅があるか判らない中で、土地家屋調査士が本来的業務に類似
の役割を負い、復興の第一歩の一翼を担うことは職務の一端であり、社会の要請でもあり、市町村・
被災者・土地家屋調査士のいずれにとっても有益なものだと考えられます。
願わくばこのような活動が脚光を浴びて土地家屋調査士の存在を世の中に広く知っていただく契機
にもなって欲しいものです。
なお、平成16 年に新潟県中越地震、平成19 年に中越沖地震が発生した新潟県、平成15 年に宮城県北
部地震、平成 20 年に宮城・岩手内陸地震が発生した宮城県でも士業団体間の連絡の場や協議の場が設け
られており、宮城県災害復興支援士業連絡会では宮城県との協定締結に向けての準備が行われていました。
⑶ 東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)と土地家屋調査士
このようななか、2011 年(平成 23 年)3月 11 日午後2時 46 分、三陸沖の深さ 24㎞で発生したマグ
ニチュード 9.0、最大震度7という日本国内の観測史上最大の巨大地震は、内陸5㎞にも達した大津波
と原子力発電所の事故をも誘発し、特に東北地方の太平洋沿岸一帯に壊滅的な損害を与え、発生から
7ヶ月以上を経過した今でもなお復興への道筋を不透明なものとしています。
警察庁緊急災害警備本部の発表によれば、その被害は平成 23 年 10 月 25 日現在死者 15,829 人、行方
不明者 3,745 人、全壊建物 118,790 戸、半壊建物 184,343 戸、道路の損壊は 3,559 箇所に上ります。
土地家屋調査士でも岩手県土地家屋調査士会の会員 1 名が津波の犠牲になっています。
地震をはじめとする災害の発生は、土地の地殻変動や土砂崩れ等による境界の混乱、建物の全壊・
半壊等の被害を大規模・広範囲にもたらします。
そして、土地については水没等で存在しなくなった土地の滅失登記がなされたり不明になった土地
の境界を復元する必要が生じ、建物については現に存在しないものとなった建物の滅失登記がなされ
る必要が生じます。
これらは不動産の現況と登記記録を一致させるためだけでなく、無用な混乱を回避して速やかな復
興を実現するためにも必要不可欠なことです。
今回の東日本大震災においては、津波により倒壊した建物が流された結果、元の住宅地一帯が建物
の基礎部分を残すのみの広大な空き地と化した映像、建物の原形は辛うじて留めているが元々あった
位置から何百メートルも流された場所に行き着いた建物の映像、元々の位置に柱・梁・屋根を残して
はいるものの壁や室内の全てを流されてしまった建物の映像等が繰り返し放送されたことから、建物
に甚大な被害が生じたことをご存知であるかたは大変多いと思いますが、土地についても太平洋側の
東北沖で南北 450 キロメートルに渡って4メートル以上(震源付近では 24 メートル以上)の地滑りが
2011 士業最前線レポート 土地家屋調査士編
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土地家屋調査士
生じたこと、陸地においても牡鹿半島の電子基準点で約 5.3 メートルの地殻変動が生じたことが観測さ
れ、10 キロメートルあたり2センチメートルの変動が生じた東北六県および関東甲信越地方の一都九
県において電子基準点・三角点の成果公表が停止されました。これらの基準点には修正が加えられた
うえで再び測量の基準点となされる必要があります。
また、局地的な測量の結果、各方向に異なる距離の移動が生じていることが判明し、画一的な修正
を行っただけでは境界や権利上の争いを後世に残すことが懸念される地域があるなど、土地について
も専門的な見地から解決にあたるべき多くの事象が生じているのです。
このような事情から、土地の境界に関する問題を扱うこと、建物の物理的変更を登記に反映させるこ
とを業務の中心とする土地家屋調査士はその知見や経験を活かしながら法務局をはじめとする国の機
関、自治体、他の専門資格士業と協働して問題の解決や災害からの復興に尽力することが可能なのです。
今回の災害に際して日本土地家屋調査士会連合会では地震発生直後の 3 月 11 日午後 3 時、松岡直武
日本土地家屋調査士会連合会会長(当時)を本部長とする東北地方太平洋沖地震災害対策本部を土地
家屋調査士会館(東京都千代田区)4 階に設置して対応にあたりました。
そして、全国的な組織である利点を生かして所属会員の安否確認を含む被災地の情報収集、被災地
に向けての救援物資輸送の手配が迅速に行われたほか、政府、省庁、与党法務部門より、災害からの
復旧・復興に際して登記事務の円滑な処理および土地の境界や地図等に関する諸問題についてヒアリ
ングの要請がなされ、提言や要望を行ってきました。
救援物資の輸送に関しては、震災直後の道路事情・物流事情が不十分な最中、新潟県土地家屋調査
士会を拠点に陸路で被災地の調査士会に届けられました。
これらの物資はさらに県内の地域ごとの単位(○○支部と呼ばれることが多いようです)に届けら
れますが、配布の対象が土地家屋調査士だけに限られるものではないのは当然です。
そして政府、省庁、与党法務部門からのヒアリング要請がなされたのは阪神淡路大震災における復
興支援経験が評価されてのことであり、連合会が行った提言や要請は、登記を受ける際の登録免許税
の免除措置や地積測量図の扱いについて法務省から各法務局の主席登記官に発せられた事務連絡等に
繋がっています。
また、被災地の一つである宮城県の土地家屋調査士が所属する宮城県土地家屋調査士会では、災害
発生直後の通信インフラが不十分であるなか会員の安否確認が最優先に行われました。
当初は、ひとつの支部の誰とも連絡が取れず、誰の安否も判らない地域もあり、所属会員全員の無事
が確認できるまでに9日間を要したうえ、自宅や事務所が被害に遭った会員も多数いらしたそうです。
このように自らも被災者である会員が存在する宮城県土地家屋調査士会ではありましたが、自動車
で移動可能な県内各地域へ出向いての会員の安否確認・支援物資輸送、震災による建物の滅失登記に
関してや法務局に備え付けられた 14 条地図の扱いについて仙台法務局と協議し、具申を行ったほか、
他の資格士業との学習会や相談会の開催、法テラスでの相談受付など復興支援のための活動が継続し
て行われています。
平成 23 年 10 月25日現在の宮城県内の全壊建物は 76,062 戸を数え、全体の 64 パーセントにも上ります。
仙台法務局では職権による建物滅失登記を平成 23 年8月から平成 24 年1月末に掛けて行っていま
すが、そのための調査業務は宮城県公共嘱託登記土地家屋調査士協会が受注して実施されています。
どのような状態を以って建物が滅失したものとして取り扱うのかを物理的な側面と法的な側面から
判断する唯一の専門資格は土地家屋調査士であることに加え、辺り一面の建物が津波で流出して地盤
も移動してしまっている場所で建物が存在していた位置を確実に特定し登記に繋がる調査を遂行でき
るのは地元の土地家屋調査士以外に考えられません。
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2011 士業最前線レポート 土地家屋調査士編
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