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NPO 法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会 熊本県内での
NPO 法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会 熊本県内での講演会、ワークショップに関する報告書 2011 年度 (2011 年 4 月 1 日~2012 年 3 月 31 日) この事業は、リコー社会貢献クラブ・Freewill のご支援により実施しました。 1.治らない病気をもつ人の生活を支える取り組み 日本では、急速な高齢化の進展や生活習慣の変化、医療技術の進歩などによって、長期にわたって 医療を受けながら生活する人たちが増えています。NPO 法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会 では、こうした完治しない、もしくは完治が難しい病気をもつ人たちの社会生活を支えるため、スタ ンフォード大学医学部患者教育研究センターが開発した「慢性疾患セルフマネジメントプログラム (以下、CDSMP; Chronic Disease Self-Management Program)」を用い、病気をもつ人の自己管理 支援を行っています。 病気を治すことはできなくても、きちんと自己管理ができるようになれば、病気のせいで困ってい ることを減らすことができます。また、生活に喜びを取り戻すお手伝いをすることで、病気をもちな がら生きる人たちの意欲を引き出し、多くの人の生活の質(QOL)を改善することを目指しています。 当報告書では、リコー社会貢献クラブ・Freewill のご支援により実施した、熊本県内での取り組み について報告します。 2.事業報告 ア) 講演会「みんなを元気にするセルフマネジメント」 日時:2011 年 7 月 23 日(土) 13:30~16:00 場所:ウェルパルくまもと 大会議室 プログラム 1. 開会挨拶(熊本県難病相談支援・センター 所長 田上和子) 2. 来賓挨拶(熊本県健康福祉部 健康づくり推進課 課長 佐藤克之 氏) 3. 基調講演「自分らしく病気と付き合うために」 (福岡県立大学教員兼務理事 看護学部教授/看護実践教育センター長 安酸史子 氏) 4. 活動報告「慢性疾患セルフマネジメントプログラムについて」 (事務局長代行 武田飛呂城) 5. 参加体験談 慢性疾患セルフマネジメントプログラム参加者の体験談 (脊髄小脳変性症の患者さん、拡張型心筋症の患者さん、各1名ずつ) 6. 閉会あいさつ(NPO 法人 熊本県難病支援ネットワーク 理事長 山本今朝一) 主催:熊本県難病相談・支援センター / NPO 法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会 共催:NPO 法人 熊本県難病支援ネットワーク 参加者数:約 60 名 夏の暑い中にも関わらず、患者さんやご家族、行政関係者、医療関 係者などを中心に、約 60 名の方にお集まりいただきました。 冒頭、熊本県健康福祉部 健康づくり推進課課長の佐藤克之氏からご 挨拶を頂戴し、基調講演は福岡県立大学看護学部教授の安酸史子先生 にお話いただきました。 安酸先生は、米国スタンフォード大学で慢性疾患セルフマネジメントプログラムの開発が始 められたころ、ちょうどスタンフォード大学に留学されていて、開発者の 1 人であるケイト・ ロリッグ先生から、このようなプログラムを作ろうとしているというお話もお聞きしていたそ うで、その頃のお話も伺えました。また、セルフマネジメントプログラムを通して行われる、 病気をもつ人の気持ちを尊重しながら支援していくあり方についてお話いただきました。 その後、事務局長代行(当時)の武田から慢性疾患セルフマネジ メントプログラムの概要について説明し、慢性疾患をもつお二人か ら、参加体験談をお話いただきました。 参加された方からは、 「体験談に励まされた」、 「 (看護学生として) 安酸先生の講演に感動した」、「自己管理の技術をもっと詳しく知り たい」などの感想が寄せられ、多くの方に、本会の活動に興味をもっ てもらうきっかけになりました。 イ) CDSMP ワークショップ 講演会で多くの方に興味をもっていただき、その後、以下の通り 3 回のワークショップを開催 しました。 日時: ①2011 年 8 月 11 日~9 月 15 日の毎週木曜日(全 6 回) 13:30~16:00 ②2011 年 10 月 8 日~11 月 12 日の毎週土曜日(全 6 回) 13:30~16:00 ③2012 年 1 月 26 日~3 月 1 日の毎週木曜日(全 6 回) 13:30~16:00 場所: ①、③ 熊本県難病相談・支援センター 多目的室 ②ウェルパルくまもと 会議室 参加者数: 合計 29 名(① 9 名 ②10 名 ③10 名) 参加者の感想 上記①~③に参加した方の感想の一部を紹介します 年代 性別 病名 感想 50 代 男性 多系統委縮症 最初は自分だけがつらい目に合っていると思っていたメン バーが複数いたが、お互い大変だということがわかってきて変 わってきた。 60 代 女性 強皮症、 病になって視点が変わってきたな・・・とは思っていました。 皮膚筋炎、 しかし、この会に参加して、心の目を開くことが出来たと感じ 多発性筋炎 ています。否定的な捉え方をしてはいけないこと、今まで出来 たことが出来なくなり、悔しさより私にはまだ出来ることがあ る・・・という希望、そしてゆっくりでスローでも良いからやっ てみようと思う前向きな気持ちになりました。 50 代 女性 ご家族 困難な感情への対処法・コミュニケーション術を学んだことは 大きかったです。自分の感情をうまくコントロールしていくこ と、私メッセージを発信して自分が本当に伝えたいと思ってい ることを伝え、聞きたいとおもっていること(情報)を上手に 収集することがこれからできてゆければ嬉しいです。 50 代 女性 膠原病、 家族とのコミュニケーションのとり方が改善したと思います。 抗リン・脂質 言葉に出す前に相手の気持ちを考え、感じ、なるべく気持ちよ 抗体症候群 く意思(気持ち)を通じ合える様になりました。自分を客観的 に見られる様になったと思います。 ウ) CDSMP ワークショップの進行役(リーダー)の育成 CDSMP ワークショップは、進行役を患者さんが務めます。医療従事者が相手だと、緊張して うまく話せなかったり、本音を言いづらかったりしますが、患者さん同士だからこそ素直に話せ ることがあります。 本会では、患者さんの中から CDSMP ワークショップの進行役(リーダー)を育成するため、 スタンフォード大学が定めたカリキュラムに則って a)リーダー研修を開催しています。また、 リーダー達のフォローアップのため、b)リーダーフォローアップ研修会を開催しています。 a) リーダー研修 日時:2011 年 11 月 19 日(土)~23 日(水)の 5 日間 9:00~16:00 場所:タワーホール船堀(東京都江戸川区) 担当マスタートレーナー※:近藤房恵、武田飛呂城 参加者:8 名(うち、熊本県からの参加は 3 名) 熊本県でさらに多くのワークショップを展開 するため、リーダー研修には熊本から三名が参 加しました。このうちお二人は難病をもつ方た ちでしたが、慣れないホテル生活をしながらも 積極的に研修に参加し、リーダーとして進行す る方法を身につけ、すでに 2012 年 1 月 26 日か らのワークショップと、同 6 月 2 日からのワー クショップでリーダーを務めています。 ※ マスタートレーナーは、CDSMP リーダーの育成を行うことができる、スタンフォード大学医 学部患者教育研究センター認定資格所持者のこと。 b) リーダーフォローアップ研修会 日時:12 月 4 日(日) 場所:熊本県総合福祉センター 担当マスタートレーナー:小野美穂、武田飛呂城 参加者数:12 名 リーダーのスキルアップのため、熊本県内でフォローアップのための研修会を行いました。 同研修会では、進行が難しい状況のロールプレイを行い、マスタートレーナーがアドバイス などして、それぞれの体験を分かち合いました。 3.御礼 リコー社会貢献クラブ・Freewill のご支援により、熊本県内で大きく事業を展開することができま したこと、心よりお礼申し上げます。 本会の CDSMP ワークショップ参加者の変化については、2006 年度から 2010 年度まで、厚生労 働科学研究費を取得した東京大学大学院医学系研究科山崎喜比古准教授(当時)による前後比較調査 を実施し、健康状態の自己評価や、健康に関する悩み、症状への対処実行度、ストレス対処能力、日 常生活満足度など 9 つのヘルスアウトカムで有意な改善が認められています。また、2011 年度の調 査研究においては、服薬アドヒアランスの改善も示唆されています。 こうしたエビデンスをもとに、治らない病気をもつ人やそのご家族の笑顔を取り戻すお手伝いをす るため、本会一同、全力で事業を進めてまいります。引き続き、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願 い申し上げます。