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3次元CADを 学ぶときのキモ

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3次元CADを 学ぶときのキモ
CHAPTER
1
3次元CADを
学ぶときのキモ
この章では実際にソフトウェアを使ってコマンドを理解する前に、3次元
CAD の特徴を理解して、どのような仕組みで動くのか、また2次元と3次元で
のデータの作り方はどんなところが違うのか。そのような差異を理解するととも
に、どのような考え方をすれば3次元によるモデリングを学ぶことが容易になる
のか、ということを理解することを目指す
さまざまな 3 次元モデラー
製造業を中心に3次元によるモデリングが普及を始めてから久しい。製造業はもとより、建
築やジュエリーなど、あるいは映像関係でも3次元によるモデリングが導入されていない産業
はないといっても過言ではない。しかし、一口に3次元のモデラーといっても実は、主なもの
で3種類のモデラーが存在する。
一つ目が主に CG など映像関係を中心に使用されている「ポリゴン系」の3次元モデラーで
ある。このタイプのモデラーの特徴は、まるで粘土細工のように形状を作っていくことができ
るということだ。その形状は三角パッチで形成されている。したがって、あまり正確な形状を
記述することは難しいが、キャラクターのように寸法では定義できないような形状をモデリン
グしたりするのにも向いている。
モデリングの流れとしては、たとえば立方体などのプリミティ
ブな形状を作った後にその形状を制御する点を、動かしながら、またその分割を細かくしてよ
り細かく形状を動かしながら、粘土細工のように形状を整えていく。CG ソフトは非常に高価
なものが存在する一方で、シェアウェアなみの価格でありながら、かなり機能の豊富なものも
存在している。
二つ目のタイプのモデラーが、
「サーフェイスモデラー」と呼ばれるものである。これは形
状が NURBS などの数学的な形状で厳密に定義されているものである。主に工業デザインをは
じめとする、自由曲面で非常に厳密に表面形状をデザインする必要がある業務で使用されてい
る。自動車のボディーのデザインなどは、まさにハイエンドのサーフェイスモデラーの独壇場
である。基本的なモデリングの流れは、特徴となるラインを直線や NURBS の曲線などで定義
し、それらを押し出したり、回転させたり、あるいは別の線に沿ってスイープをかけたりして
CHAPTER1 3次元CADを学ぶときのキモ 7
ポリゴン
サーフェス
ソリッド
曲線はなく、直線で構成
された三角面の集合で立
体を定義する
曲線と曲面、曲面同士の
関係で立体を定義する
サーフェスに加え、裏表
情報、体積情報などを持
ち、塊りとして立体を定
義する
図 1 3 次元形状の 3 つの表現形式
面を作成し、物体の形状はそのように物体の面を作りつなぎ合わせながら作っていく流れにな
る。面の形状の変更は、そのようにして出来上がった NURBS 面のコントロールポイント(制
御点)を動かしながら、調整していく。それゆえに、自由に形状を制御するためには、そのよ
うな NURBS の特徴も知っておく必要がある。ただし、出来上がった形状を「製品」としてモ
デリングしていくにはやや難しい面もある。
実際の、製品開発の流れでも工業デザイナーがサー
フェイスモデラーで魅力的な形状をデザインし、その形状を受け取った設計者が、ソリッドモ
デラーを使って製品として設計していくという流れが一般的である。
そして、三つ目がこの本で扱う「ソリッドモデラー」である。ソリッドモデラーは、特に製
造業を中心に最も幅広く使われているものである。「ポリゴンモデラー」と「サーフェイスモ
デラー」が、主として「形状を作る」ことが主たる機能であるが、「ソリッドモデラー」の機
能は単に形状を作ることにとどまらない。形状を作り、それらを組み合わせ、製品として仕上
げていく、まさに設計のための道具である。機械ものの部品を作っていくには最も適切である
ばかりでなく、備わっているさまざまな機能を使うことで、家電製品の筐体などデザイン性が
重視される製品のモデリングにも多用されている。特に最近のミッドレンジ以上のソリッドモ
デラーの場合には、サーフェイスモデリングの機能も成熟してきており、専門のサーフェイス
モデラーほどではないにしても、
かなり柔軟な自由曲面の形状を作る機能が備わってきている。
さらに作成した形状が実際に製品として壊れずにその役割を果たすことができるのかどうか検
討するための解析ツールが備わっているものもある。それらを考えれば、ソリッドモデラーが
最も柔軟で、これ一台あれば、形状の検討から実際に製品を設計していくことができるといっ
ても過言ではない。形状の作り方も、やはり前述の二つとは異なる。詳しくは、本書の第2章
以降で詳述していくが、スケッチと押し出し(あるいはカット)といったコマンドの繰り返し
で物体の形状を仕上げていく。このソリッドモデラー特有のコマンド操作の手順や、なぜその
ような手順でモデルを構築していくのかを理解できれば、効率的に、また変更や流用のしやす
い3次元形状を作っていくことができる。ソリッドモデラーで作る形状は、その名の通り「ソ
リッド」と呼ばれる中身の詰まった立体である。サーフェイスだけでも一見したところ同じ形
状を作ることができる。しかし、サーフェイスというのは全く厚みのない「形」だけを表現し
ている。ソリッドの場合には、そこに厚みがあり、容積があり、材料の物性を定義すれば、重
8 SolidWorks
さもある。言ってみれば、コンピュータの画面上で表示されている「バーチャルな」物体であ
り製品であるといえる。このようにバーチャルな製品を作っていくことができるのが、ソリッ
ドモデラーであるといえる。
2次元的考え方と3次元的考え方
最近では、初めから3次元 CAD を習得していくケースも増えてきているが、まだ2次元
CAD から3次元 CAD へ移行するというケースも多い。そこで、必ず問題となるのが、2次元
のドラフティング的な考え方を3次元 CAD に持ち込み、結果としてうまく使いこなすことが
できずに、挫折してしまうというパターンだ。最初から3次元であれば、「モデリングツール
とはこういうもの」という思い込みがないだけに、このような問題はおきにくい。
2次元の図面である物体を表現しようとすれば、三面図のように、物体をある視点からとら
えた側面を記述したり、それで表現しきれないところは、断面図を使って表現する。全体像は
投影図などを使って表現する。ポイントは、2次元ではどのような視点から、いくつ図を書い
たところで、ある物体の一つの側面しか示していないということである。2次元 CAD を使う
という行為は、そのある側面のスケッチを描いていくということに他ならない。そのように2
次元 CAD に習熟した人ほど、その2次元の作法を3次元のモデリングの世界に無意識に持ち
込んでしまう。
3次元 CAD の場合でも、基本ある部分のスケッチから始まる。しかし、そのスケッチの持
つ位置づけが異なっているのだ。3次元 CAD においては、スケッチは簡単なほうがよい。簡
単なほうがよい理由はあるのだが、それは後のセッションで説明する。いずれにしてもその3
次元モデリングにおけるスケッチで、2次元 CAD から脱却できない人の場合には、ついつい
スケッチのところでディテールを書き込んでしまうのだ。寸法も含めて詳細に書き込んでしま
うことも珍しくない。その結果、なんとか形ができたとしても、モデルの作成そのものにやた
らと時間がかかってしまったり、出来上がった形状を変更しようとしても、うまく変更ができ
ず結果としてトータルの設計時間が長くかかってしまうことも珍しくない。
スケッチは単純に、ソリッドのフィーチャーの積み重ねで形状を作る
一つの例を取り上げてみよう。図 2 に示すものは、極めてシンプルなコップのような形状で
ある。これを3次元 CAD で作ろうとしたらあなたはどうするであろうか。この形状を作成す
る方法はいくつかある。
CHAPTER1 3次元CADを学ぶときのキモ 9
図 2 コップ形状を作成する
最も標準的なソリッドモデリングの手順で作成すれば、図 3 に示すように、円の
→
押し出し
→
スケッチ
→
押し出しカット
の4つの手順で出来上がる。
図 3 標準的なソリッドモデリングでの
10 SolidWorks
スケッチ
図 4 断面をスケッチして回転させる場合
しかし、図 4 に示すような、いわゆる図面のような絵を思い描いていたとしたらどうだろう
か。これを思い浮かべているとすると手順はおそらく、図4に示すようにL字型のスケッチを
描いてからそれを、
円の半径で回転させることを思い浮かべるのではないだろうか。実際問題、
このようにやっても全く同じ形の形状が出来上がる。だったら、2次元的な頭で考えたやり方
で何が悪いのだろうか。
実は、スケッチで形状を作り込むと、後の変更が面倒なのだ。それは、3次元モデルのデー
タの持ち方による。3次元モデラーの種類にもよるが、一般に市場で最もよく使われているソ
リッドモデラーの場合には、データの中身としてフィーチャの「履歴」というものを持ってい
る。スケッチは、履歴の中でも最もベースとなるものであり、そこを作りこんでしまうと後で
変更をする時などに面倒なことになってしまうのだ。例えば、このコップの側面および底面の
厚みを現在の5ミリから 2.5 ミリに変更することを考えてみよう。最初に述べた方法であれば、
フィーチャーをクリックして押し出しの深さを変えるだけで変更完了だ。ところが、スケッチ
を書き込んだ方法だとどうであろうか。まずスケッチに戻って、そこの寸法を変更しなければ
ならない。この程度の形状であれば、大した差ではないかもしれないが、より複雑な形状であ
ればなおのこと、スケッチで作りこんでしまうと面倒になってくる。3次元モデルを作成する
ときはスケッチは単純にして、3次元 CAD としてのフィーチャーを使って、足したり引いた
りするような作り方が「ソリッドモデラー」らしい作り方であり、それがモデルを作る時にも
変更する時にも苦労が少ないやり方なのである。
3 次元 CAD を学ぶときのハードルの乗り越え方
最近の3次元 CAD は、どのように作ってもそれなりの形状ができたりする。ところが、見
た目の形状ができたとしても、ちゃんとした作り方をしていないので後でデータの流用ができ
なかったり、あるいは2度と変更のできないような形状ができてしまって頭を抱えたりする。
しかし、この問題に対しては、すでに3次元モデリングの多くの先達たちが、設計の観点から
意識した、3次元モデラーとして正しいモデリングの手順とはどのようなものかを解説してあ
るテキストも存在するので、そちらを参照すると良い。
CHAPTER1 3次元CADを学ぶときのキモ 11
ところが、まだその段階に届かないところで、足踏みをしている場合もある。講習会で使い
方を学んでは見たのだが、自分なりのオリジナルの形状を作ってみようとするとどうもうまく
いかない。あるいはなんとかできるのだが、やたらと時間がかかる。なぜかというと、ユーザ
インターフェイスに用意されているアイコンやメニュー上のコマンドの意味がよくわからない
のだ。2次元 CAD であれば、そのコマンドとそこから生成される形状というのは、ほぼ等価
にマッピングされているといってもよいかもしれない。第一、作成される形は基本的にはさま
ざまな種類の線種があるとはいえ、線やハッチング、それに寸法などだけで形成されている。
設計を意識したモデリングの前に、
そもそもコマンドを押したら何が起きるのかを理解する
ところが、
3次元モデラーの場合には、
言ってみればパソコン上に、バーチャルなものを作る。
すなわち実際に即した本当の形状を作り上げるので、そのための作り方がコマンドになってい
る。だから、コマンドがそもそもどんな役割を果たしているのか。あるいは、そのコマンドを
実行するのにどんなインプットが必要で、それらのインプットに応じてどんな形状が作成され
るのか、ということがある程度理解できていないと、思うような形状が作れないのだ。例えば、
下記にいくつかの異なるメニューバーを示してみる。最初のものは、おなじみの MS WORD
のメニューであり、2番目のものが SolidWorks のスケッチのメニューである。そして最後の
ものが SolidWorks で3次元の形状を作るためのフィーチャーのメニューだ。
◉ MS WORD のメニュー
◉ SolidWorks のスケッチのメニュー
◉ SolidWorks の 3 次元形状を作るためのフィーチャーメニュー
WORD のメニューもスケッチのメニューもコマンドの内容が、成果物そのものにひもづい
ていたり、そうでなかったとしてもその変化が容易に想像がつくものがほとんどある。ところ
が、フィーチャーのメニューの場合、確かにその行為を代表させるような絵がアイコンとして
記されているが、実際にはそこから創りだされる成果物の形状は実に様々である。ソリッドモ
デラーのオペレーションに慣れるまでは、それが主要なわかりにくさの一つである。
12 SolidWorks
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