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新たな行政と民間企業との協働に向けて(概要)
新たな行政と民間企業との協働に向けて(概要) ~企業との協働が元気な北海道を創造する~ 地 域 積極的なCSR 人口減少、少子・高齢化、 経済のグローバル化 多様化・高度化するニーズ 新たな社会的課題 行 政 危機的な財政状況 専門的人材の不足 ■ 停滞 地域課題の解決 ■ 民間企業 幅広い分野に関する専門 ノウハウ(知識、技術・・・) 多様な人材 幅広いネットワーク 【企業との協働の可能性】 地域力の向上 ■ 新たなビジネスチャンスの創出 協働を推進するためには「情報提供」や「職員の意識改革」が欠かせない。 課 【行政サイド】 ・事業推進上の「組織文化」として定着していない。 ・職員の民間協働に対する意識が低い。 ・行政情報が企業等にうまく伝わっていない。 ・企業に積極的にアプローチしていない。 ・各部局間の連携が図られていない。 題 今 後 の 展 望 基 本 戦 略 提 言 【民間サイド】 ・行政情報が欲しい。 ・職員の協働に対する意識が低い。 ・本業とのバランスが難しい。 ・新たな事業を展開するための交流の 機会が欲しい。 【民間企業との協働が元気な北海道を創造する】 ■ 地域課題の解決 ■ 民間企業との協働の可能性 地域力の向上 ■ 新たなビジネスチャンスの創出 行政と民間企業・市民活動団体などが協働す る「新しい公共空間」の誕生 ○行政内部に広げる ○全道に広げる ○他の仲間とつながる ○情報を発信する ○信頼関係をつくる ~ 行政内部における明確な位置づけと環境整備 ~ 道民運動による全道展開 ~ 多様な主体の特性を活かした協働拡大 ~ 住民ニーズの民間企業への提供 ~ Win-Win の関係づくり ●気運醸成 ●推進体制の充実 ●情報発信 ●モデル事業 ●道政への反映 ●中小企業支援 ●人材育成 ・タイアップチャレンジ憲章(仮称) ・表彰制度の導入 ・民間企業との連携を推進するコーディネート機能の整備 ・メールマガジンの創設 ・ 「場」の提供 ・地域再生支援の実施 ・類似する協働事業の統合化 ・道の政策形成システムとのより一層の協働強化 ・中小企業が推進するCSR活動に対する支援 ・研修制度の充実 中 長 期 的 展 望 -1- 新たな行政と民間企業の協働に向けて ~企業との協働が元気な北海道を創造する~ 研 究 の 趣 旨 成熟社会を迎え、地方自治体にとっては、ますます高度化・多様化する住民ニーズにどう対 応していくべきかが大きな課題となる中、幅広い分野に関する専門知識やノウハウ、多様な人 材、ネットワークなどの資源を有する民間企業との協働が、地域の課題解決を進める上で有効 な手段として期待されています。 一方、民間企業は1980年代のフィランソロピーやメセナ活動の隆盛を経て、近年の企業 倫理の確立・法令遵守に至る「CSR(企業の社会的責任)」の取組が着実な広がりを見せ、最 近では、地球環境問題解決への積極的な貢献など、地域社会との関わりを重視する企業が増え ており、従来、行政が中心であった「公共サービスの担い手」のイメージが大きく変わりつつ ある。そこで、近年、多くの企業が取組を進めている「CSR(企業の社会的責任) 」に焦点を 当て、行政と企業との協働が将来の地域づくりに大きな役割を果たす可能性について展望する。 研究の方向性 1 民間企業との協働を取り巻く状況 いま本道は地方分権の進展、北海道開発行政の仕組みの見直し、厳しい財政事情など、これ まで本道の開発や発展を支えてきた仕組みが転換しつつあり、自らの価値や可能性を見つめ直 し、自主・自律の地域社会を実現する必要に迫られている。 こうした中、近年、民間企業と行政の協働による取組が、地域の課題解決を進める上で有効 な手段として期待されているが、その取り巻く状況について考察する。 2 民間企業との協働を巡る課題 道では、平成14年に「北海道行政基本条例」を制定し、道民との協働による地域社会づく りを道政の基本理念の一つに位置づけている。 民間企業との協働についても平成18年から民間企業等から公共サービスの充実に資する事 業などに関する提案を募集する「北海道と民間企業等との協働に関する募集」事業を実施する などその取組を推進しているが、道におけるこれまでの実践事例とともに他府県の取組及び企 業アンケート結果により「効果」と「課題」について整理する。 3 民間企業との協働が元気な北海道を創造する 本道の地域社会を取り巻く環境が大きく変化する時代に、行政と民間企業との協働が様々な 地域の課題を解決するとともに、協働を契機に多様な主体が絆を強め、元気な地域をつくりあ げていけるか、その可能性について展望する。 4 民間企業との協働を効果的に進めるために 「新たな公共空間」の実現に向け、協働の受け皿となる企業のCSR活動を今後どう活性化 していくか、推進に向けた具体的な方策を提言する。 いま本道は地方分権の進展、北海道開発行政の仕組みの見直し、厳しい財政事情など、これまで -2- 1 民間企業との協働を取り巻く状況 本道の開発や発展を支えてきた仕組みが転換しつつあり、自らの価値や可能性を見つめ直し、自 主・自律の地域社会を実現する必要に迫られている。 また、住民ニーズは社会の成熟化、地域社会の環境変化により多様化し、公共サービスを行政の みが担うのは困難な状況にあり、最近では、行政では提供できない、あるいは行政では気がつかな いニーズに対応すべく、多様な主体が行政と協働して公共を担う「新しい公共空間」の形成の必要 性が指摘されている。「特定非営利活動促進法(NPO法)」 (平成10年)の施行以来、NPOが 「新しい公共空間」における公共の担い手として中心的役割を果たしてきたが、近年、CSRを経 営の中核に位置付け、行政と地域活性化に向けた協定を締結し、様々な政策分野で協働事業を展開 するなど、社会貢献に積極的に取り組む民間企業が増えつつあり、協働のパートナーとしての存在 感を増している。 また、昨年(平成20年)に洞爺湖町で開催された「北海道洞爺湖サミット」においては官民挙げ て開催支援と北海道情報の発信などに取り組んだが、そのなかでも民間企業は大きな役割を担って いる。 2 民間企業との協働を巡る課題 (1)北海道の取り組み状況 CSRに積極的に取り組む民間企業が増える中、「安全・安心な社会の構築」、「福祉分野への協 力」、 「食・観光の振興に対する協力」など複数の政策分野にわたり、協働による事業展開を目的と する包括連携協定の締結が増えており、平成21年2月現在、コンビニエンスストアや食品・飲料 メーカー、金融機関など12企業グループと協定を締結している。 これまで、 「北海道と民間企業等との協働に関する募集」事業で実施された取組や包括連携協定 を締結して実施された179件(平成20年9月現在)の取組を見ると、 「くらし・医療・福祉」 の分野が50件で最も多く、次いで「産業・経済」 ・ 「観光」と続いている。また、平成20年7月 に開催された北海道洞爺湖サミット関連の事業も多く実施されている。 道における民間企業との協働の取組はまだ始まったばかりではあるが、企業のCSRに対する関 心の高まりとともに包括連携協定の締結件数や協定等に基づく取組が拡大する傾向にあり、また、 各企業の特性や強みを生かした特徴のある事業が展開されてきている。 (2)民間企業との協働における「効果」と「課題」 効 果 課 題 行 政 企業の持つ専門的な技術などを活用で きる。 ① 民間企業との協働に関する理念の明 確化など職員が積極的に取り組める環 境づくり ② 民間企業との協働に対する職員意識 の向上 ③ これまでの仕事の進め方の見直し ④ 情報発信力の強化など民間企業が協 働の取組をしやすい環境づくり ⑤ 企業側の CSR 活動に対する支援の ための方策 -3- 民間企業 ① 公共サービスの担い手として事業利 益の一部を直接社会に還元することが できる。 ② PR効果等を得ることができ、また、 地域と関わることで住民のニーズを把 握し、新しいマーケットや販路の開拓に 繋がる期待もある。 ① CSR活動の目的の明確化 ② 効果的に取り組む手法の構築。 ③ 効率的なコストパフォーマンス(企業 の一方的な負担だけでは社会的な課題 を解決しようとするCSR活動は長続 きしない。) 3 民間企業との協働が元気な北海道を創造する (1)民間企業との協働の可能性 住民ニーズは社会の成熟化、地域社会の環境変化により多様化しており、公共サービスを行政の みが担うのは困難な状況にある。 最近では、行政では提供できない、あるいは行政では気がつかないニーズに対応すべく、多様な 主体が行政と協働して公共を担う「新しい公共空間」の形成の必要性が指摘されている。 今後、専門的な技術、アイデア、資金力等の資源を有する民間企業と行政との協働の取組が活発 化することで、これまで行政のみでは対応できなかった地域が抱える課題が解決され、元気な地域 づくりの実現につながる可能性がある。 ア 地域が抱える課題の解決 民間企業は自社に関係する「社会的課題」の解決に貢献することにより、企業価値の向上、ひい ては収益の向上を目指していく。一方、行政は地域の「社会的課題」の解決に企業の人材やノウハ ウ、資金を役立てることにより、 「より良い社会づくり」の構築を目指していく。こう考えるとC SRと行政には接点があり、民間企業と行政の協働は、新たな公共サービスの提供方法としての大 きな可能性がある。 イ 地域力の向上 地域においては、地場産業を支える多くの中小企業は、地域を支えるネットワークの重要な一員 である。中小企業は、地域に密着した存在であり、地域社会と深い関わり合いを有し、事業経営を 巡る課題も、地域全体の問題と深い関わりがある場合が多い。したがって、企業の自主的な取組で あるCSRが定着した場合、地域社会が抱える様々な課題の解決に結び付く可能性が大きい。 ウ 新たなビジネスの創造 近年の行政では、助成金や補助金といった資金面のほか啓発活動、相談・情報提供といった支援 を行っているが、民間企業は自らの事業活動の経験を生かした柔軟な連携が可能であり、行政と民 間企業が協働して、SB・CBが抱える課題を解決することにより新たな事業機会、雇用の場を生 む可能性がある。 (2)北海道における民間企業と行政の協働の将来展望 行政と民間企業との協働は単に個々の地域課題の解決をもたらすだけではない。協働事業の実施 を通じて、異なる組織の経験や知識が相互に移転しあう。協働の取組から得られた「知恵」が、双 方の職員の思考や行動形態、「組織文化」にプラスの刺激を与え、全く新しい発想のもと、住民ニ ーズにより一層合致したサービスが新たに生み出されることが期待できる。 また、行政と民間企業の協働は地域の「有り様」を見つめ直し、新しい時代の変化にマッチした 形に「地域の形」を再構成する重要な手立てとなるものである。異なる「組織文化」を有する民間 企業と行政が相互信頼関係のもと、「顔の見える」関係を構築しながら地域の関係者と絶え間ない 対話を積み重ねる。その試みが新しい地域づくりに向けた様々な関係者の絆を深めるとともに、新 たな取組を誘発し、地域の自立意識を育んでいく。 さらに、様々な地域や分野で民間企業との協働が進展することで、道内各地域の「ヒト、モノ、 情報、カネ」の流れが活発化し、様々な主体が積極的に参画する地域づくりが展開される。 こうした協働による新しい地域の姿を展望した場合、そこでイメージされる「公共空間」は、こ れまで我々が「常識」として考えてきた、行政を主たる担い手とした姿とは大きく異なってくる。 「新しい公共空間」では行政は新たな時代に対応した「戦略的な地域経営のための企画立案や条 例制定」など本来、行政でなければ対応し得ない「コアの業務」を担うことになリ、その他の業務 は様々な形で民間開放され、その中でも「民間企業との協働」は、多彩な形で公共サービスの中核 的な手法の一つとして定着することが見込まれる。 -4- 4 民間企業との協働を効果的に進めるために (1)基本的な戦略 ア 行政内部に広げる ~ 行政内部における明確な位置づけ 企業等との協働の推進に関する基本方針を確立する必要がある。併せて、協働を全庁的に推 進する体制の整備や職員一人ひとりの意識改革を促すなど、協働促進のための全庁運動を展開 する。 イ 全道に広げる ~ 道民運動による全道展開 地域における行政と民間企業との協働気運をより一層高めるため、道や経済界、NPO等が 協働して、多様な主体間の協働による「公共サービス」の提供を促進する道民運動を展開する。 ウ 他の仲間とつながる ~ 多様な主体の特性を活かした協働 民間企業のみならずNPOなど公共サービスを担うことが可能な幅広い主体による協働を行 政がコーディネーターとなって促進することが期待される。 エ 情報を発信する ~ 住民ニーズの民間企業への提供 民間企業等が行政との協働に踏み切るためには、どのような公共サービスが地域で求められ ているのか(ニーズがあるのか)を知る必要があることから、民間企業等に対して必要な情報 を適宜提供できる仕組みを整えることが必要である。 オ 信頼関係をつくる ~ Win-Win の関係づくり 事業を継続するためには、常に対等の立場であることを意識するとともに、日常的なコミュ ニケーションの積み重ねによる信頼関係の醸成に努め、相互にメリットを享受できる事業構築 (Win-Winの関係)に心がけるなど、お互いに仕事を進めやすい環境づくりに努める必 要がある。 (2)新たな取組の提案 ア 気運醸成 ● タイアップチャレンジ憲章(仮称)の制定 企業との協働の取組を更に拡大するため、民間企業等との協働に対する道の方針を宣言す ることで、全道・庁内を通じた普及啓発運動を展開する。(組織文化としての定着化を目指 す) ● 表彰制度の導入 協働に取り組む企業のモチベーションを高めるとともに、民間企業等の新規参入を促進する ため、事業内容に一定の成果が得られた企業に対する表彰を検討する。 イ 推進体制の充実 ● 民間企業との連携を推進するコーディネート機能の整備 民間企業との協働を効果的に推進するため、協働事業の総合調整や各企業のCSRの実態把 握(専門分野・人材など)、各企業へのCSRの奨励、協働事業の理解・普及など協働事業に 必要な業務を一体的に取り扱う道庁内の機能を拡充する。 -5- ウ 情報発信 ● メールマガジンの創設 庁内各部の協働に関する情報を集約し、メールマガジンを活用して定期的に発信することに より、提供情報を活用した協働の取組を促進するとともに、市町村などへの情報提供を推進す る。 ● 「場」の提供 民間企業等との協働に向けた機運を全道的に高めるため、これまでの取組事例や推進上の課 題、道の協働制度の概要などを地域の民間企業や市町村などに幅広く紹介し、具体的な相談の 機会を提供する「出会いの場」を創設する。 エ モデル事業 ● 地域再生支援の実施 人口減少や少子・高齢社会の到来、経済のグローバル化の進行など道内の各地域を取り巻く 環境はかつて無いほど厳しい。これまで地域活性化に大きな役割を果たしてきた地域の民間企 業や地方自治体も、地域経済の疲弊や危機的な財政状況などから体力を落としてきており、地 域再生に向けた取組は十分な成果をあげていない実情にある。地域などが抱える課題の解決に 向け、現在、道と協働事業に取り組んでいる民間企業(協働企業群)が協働して取組を進める ことができるよう、道がコーディネート機能を発揮し、支援の枠組みを整える。 ● 類似する協働事業の統合化 これまで各部が個別に実施してきた「食」をテーマとするイベント事業を統合し、同時期・ 同会場で協働して開催することで、行政と民間企業等の協働の拡充や効果的な事業展開を推進 し、道内食材に関する情報発信や北海道ブランドの知名度の向上を図る。 オ 道政への反映 ● 道の政策形成システムとのより一層の協働強化 道が設定するテーマに沿った協働事業を民間企業等から募集し、次年度に事業化を図る。 カ 中小企業支援 カ 中小企業支援 ● 中小企業が推進するCSR活動に対する支援 地域ニーズに対応したきめ細かい公共サービスを提供していくには、地域の実情に明るい地 場の企業のCSRを活性化する必要がある。このため、企業負担の少ない単発イベントへの協 力など定型的な協働メニューなどの情報を提供し、地域の中小企業等に行政との協働を試験的 に体験してもらう。 キ 人材育成 ● 民間派遣・研修制度の充実 民間企業との協働を効果的に推進するためには、民間企業のニーズや仕事の進め方などに習 熟した職員を育成する必要があることから、民間企業への派遣研修を活発に実施するととも に、庁内研修を活用した意識改革を図る。 -6-