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嗅覚測定法精度管理マニュアル

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嗅覚測定法精度管理マニュアル
嗅覚測定法精度管理マニュアル
平成 14 年 12 月
環境省環境管理局大気生活環境室
はじめに
昭和 46 年に悪臭防止法が公布されてから、今年で満 30 年を迎えます。この間、我が国にお
ける悪臭の状況も様々に変化してきました。法制定当初は主要な悪臭の発生源であった畜産農業
や化学工場への苦情は減少する一方で、近年は飲食店などのサービス業や個人住宅など、身の回
りの悪臭に対する苦情が増加する傾向にあります。平成 5 年度には 1 万件を下回った苦情件数も、
近年急激に増加に転じ、平成 12 年度にはピーク時の昭和 47 年度に匹敵する 2 万 1 千件に達す
るなど、悪臭防止対策の一層の推進が必要な状況にあります。
このような日常生活に伴う悪臭への対策の強化を図るため、悪臭防止法は数度にわたる改正を
経てきました。平成 7 年の一部改正では、複合臭等の問題に対応するため、嗅覚測定法を用いた
臭気指数規制を導入するとともに、日常生活に伴う悪臭の防止について関係者の責務に関する規
定を設けました。さらに、地方分権推進計画の一環として、悪臭防止法の測定に関する事務が市
町村長の自治事務となったことを受け、平成 12 年には臭気測定業務従事者(臭気判定士)に係
る制度を法律に規定するなど、測定体制の整備・充実に努めてきました。
臭気の測定は、悪臭防止法に基づく規制の根幹をなす部分であり、嗅覚測定法の普及のために
は、適正な精度管理による測定結果の信頼性の向上が必要不可欠となっています。本書は、嗅覚
測定において精度を確保するための様々な方策を示し、信頼性の高い測定の実施を図ることを目
的として作成されたものです。
市町村が嗅覚測定を実施する際には、本書で述べられたチェックポイントに留意して測定精度
の向上に努めるとともに、測定の委託を行う場合には、委託先への周知・指導用として本書を活
用していただければと考えます。
本書が悪臭防止・臭気対策の業務に携わる各方面の方々に広く活用され、我が国の臭気対策の
推進に役立てられることを祈念してやみません。
平成 14 年 12 月
環境省環境管理局大気生活環境室
25
嗅覚測定法の精度管理・安全管理検討会
検討員名簿
岩 崎
好 陽
東京都環境科学研究所 応用研究部(座長)
大 迫
政 浩
独立行政法人国立環境研究所
循環型社会形成推進・廃棄物研究センター
小 川
康 恭
独立行政法人産業医学総合研究所 有害性評価研究部
片 谷
教 孝
山梨大学 工学部 循環システム工学科
小 坂
芳 雄
株式会社環境管理センター 分析センター
高 橋
通 正
神奈川県環境科学センター 大気環境部
樋 口
隆 哉
山口大学 工学部 社会建設工学科
増 田
淳 二
大阪市立環境科学研究所 環境資源課
(敬称略)
嗅覚測定法精度管理手法検討ワーキンググループ
名簿
上 野
広 行
東京都環境科学研究所 応用研究部
高 野
岳
樋 口
隆 哉
山口大学 工学部 社会建設工学科
増 田
淳 二
大阪市立環境科学研究所 環境資源課(座長)
諸 井
澄 人
株式会社環境技術研究所 分析技術部
株式会社島津テクノリサーチ 分析部
(敬称略)
26
嗅覚測定法精度管理マニュアル目次
-------------------------------------------------------------------- 1
第1章
目的
第2章
精度管理の全体的枠組み-------------------------------------------- 2
第3章
精度管理のための組織・体系-------------------------------------- 4
3.1 組織
3.2 教育及び訓練
3.3 文書・記録等の管理
第4章
測定の実施における精度管理-------------------------------------- 6
4.1 SOP の作成
4.2 パネル
4.3 装置及び器具
4.3.1 留意事項
4.3.2 記録の作成と保管
1)装置
2)器具
4.4 試料採取
4.4.1 留意事項
4.4.2 記録の作成と保管
1)事前調査
2)試料採取
4.5 判定試験
4.5.1 留意事項
4.5.2 記録の作成と保管
4.6 測定結果の評価と報告
4.6.1 留意事項
4.6.2 記録の作成と保管
4.7 チェックリストの利用
第5章
5.1
5.2
5.3
5.4
5.5
5.6
標準物質を用いた精度管理---------------------------------------- 14
概要
標準物質
精度評価試験の実施
結果の評価
精度評価試験の実施頻度
外部精度管理体制の確立に向けて
参考文献--------------------------------------------------------------------------- 22
23
<資料編>
資料−1
組織の基本構成----------------------------------------------------
資料−2
SOP 記述項目一覧-------------------------------------------------
資料−3
標準操作手順書(例) --------------------------------------------
資料−4
パネル管理簿-------------------------------------------------------
資料−5
嗅覚検査結果記録票-----------------------------------------------
資料−6
真空瓶・試料採取袋記録簿 ---------------------------------------
資料−7
無臭空気供給装置用活性炭記録簿-------------------------------
資料−8
事前調査記録票−環境試料・排出口試料−---------------------
資料−9
現場記録図面-------------------------------------------------------
資料−10
試料採取実施計画票------------------------------------------------
資料−11
試料採取記録票−環境試料・排出口試料−----------------------
資料−12
嗅覚測定実施記録票−環境試料・排出口試料−-----------------
資料−13
嗅覚測定結果報告用紙 --------------------------------------------
資料−14
嗅覚測定法精度管理用チェックリスト--------------------------
資料−15
嗅覚測定法精度改善取組記録票----------------------------------
資料−16
精度評価試験の実施方法------------------------------------------
資料−17
精度評価試験の実施例 --------------------------------------------
資料−18
精度管理実施状況報告書------------------------------------------
資料−19
精度管理に関する用語説明 ---------------------------------------
24
23
24
25
27
28
29
30
31
35
37
39
43
45
46
48
49
53
55
56
第1章
目的
ポイント!
目的
嗅覚測定法において精度管理を行うための様々な方策を示し、信頼性ある測定
の実施を図る。
平成 7 年の悪臭防止法改正によって、人間の嗅覚を用いた測定法である“嗅覚測定法”による
規制が導入され、さらにその後の法整備を経て、臭気指数及び臭気排出強度(OER)による悪
臭規制が本格的に行われるようになった。この背景として、主な苦情発生源が従来の畜産農業・
化学工場などから飲食店などのサービス業や住宅といった都市・生活型のものに移行してきたこ
と、その結果として物質濃度による規制では十分効果が認められない複合臭気に起因する悪臭に
対処する必要性が出てきたことが挙げられる。この嗅覚測定法は、導入時に機器分析による物質
濃度測定と比較して遜色ない程度の精度があることが確認されている。しかし、人間の嗅覚を用
いるという点にそれまであまりなじみがなかったことから、測定結果の信頼性が広く認識されて
いるとはいえず、嗅覚測定法の普及のためには、測定法の精度管理及び測定結果の信頼性の向上
が必要不可欠となっている。また、国際的にも品質保証や品質管理に対する要望が高まってきて
おり、科学・技術の発展に寄与してきた我が国としても、積極的にリーダーシップを発揮し、精
度管理を考慮した嗅覚測定法の確立を図る必要がある。そこで、嗅覚測定法において精度管理を
行うための様々な方策を示し、信頼性ある測定の実施を図ることを目的として本マニュアルを作
成した。
◆注意◆
嗅覚測定法には、気体の臭気指数を求めるための三点比較式臭袋法及び排出水の臭気指数を求めるた
めの三点比較式フラスコ法があるが、本マニュアルでは、まず第一歩として三点比較式臭袋法に焦点を
絞って述べることとする。ただし、精度管理に関する基本的な考え方は両方法とも同様である。また、
嗅覚測定法の実施手順については臭気指数測定マニュアル1 ) や嗅覚測定法マニュアル2 )(以下、併せて
「測定マニュアル」とする。)が別に作成されており、装置・器具や基本操作について詳細な解説がなさ
れていることから、本マニュアルの使用に先立って、まず測定マニュアルを読まれることをお薦めする。
1
第2章
精度管理の全体的枠組み
ポイント!
精度管理の基本骨格
① 精度管理のための組織・体系
② 測定の実施における精度管理
③ 標準物質を用いた精度管理
精度管理の全体的枠組みを各章の内容と対応させて図−1に示す。以下、各項目について概略
を説明する。
精度管理のための組織・体系
嗅覚測定の信頼性を確保するためには、測定に関与する組織及びシステムの整備が必要であ
り、体系的な人員構成を行うことによって、担当者の役割分担を明確にするとともに、責任の
所在を明らかにすることができる。また、定期的な教育・訓練によって測定従事者の資質の確
保に努めることも必要である。さらに、嗅覚測定では試料が測定によって損失するために、同
一試料を用いた再測定が不可能である。したがって、測定終了後においても一連の測定過程が
的確に把握できるように、結果の整理と記録の保管に十分留意する必要がある。これらの詳細
については第3章で述べる。
測定の実施における精度管理
測定の実施に際しては、測定方法に起因する誤差要因を最小限に抑えるために測定マニュア
ル を 参 照 す る と と も に 、 各 測 定 機 関 に お い て 標 準 操 作 手 順 書 ( Standard Operating
Procedure:SOP)を作成し、測定マニュアルに記述のない詳細な内容も含めて操作手順を統
一しておく。また、測定の準備から結果の算出までの各操作における留意点を把握し、チェッ
クリストを作成することによって影響因子の低減に努める必要がある。測定結果は最終的に報
告書としてまとめることとし、結果の算出過程とその解釈について明示しておく。測定後に個々
の試料について履歴をたどる際、結果報告書が重要な役割を果たすことから、測定の詳細につ
いて記録するとともに、保管体制も確立しておく。これらの詳細については第4章で述べる。
標準物質を用いた精度管理
測定結果の信頼性を確保するための手法として、標準物質を用いた測定結果の評価が挙げら
れる。測定機関内で標準物質を用いた定期的な測定を行い、判定基準と比較することによって
自主的な精度管理を行うことができる。また、将来的には値付けされた標準物質を用いること
によって、測定機関間でのデータの整合性を評価することができる。これらの詳細については
第5章で述べる。
2
第1
章 目的
章 目的
第1
第2
章 精度管理の全体的枠組み
精度管理の全体的枠組み
第2
章 体系
第3
章 精度管理のための組織・
第3
章 精度管理のための組織・
体系
組織、教育・
訓練、文書・記録の管理
第4
章 測定の実施における精度管理
第4
章 測定の実施における精度管理
測定前管理
SOPの作成
パネルの選定
装置・器具の準備
測定管理
試料採取
判定試験
測定後管理
測定結果の評価と
報告
章 標準物質を用いた精度管理
第5
用いた精度管理
第5
章 標準物質を
定期的な機関内チェックおよび機関間試験
問題点の明確化と改善策の実施
外部精度管理体制の確立に向けて
図−1
嗅覚測定法における精度管理の全体的枠組み
3
第3章
精度管理のための組織・体系
ポイント!
精度管理のための組織・体系
① 体系的な人員構成→役割分担、責任の明確化
② 教育・訓練→測定従事者の資質確保
③ 文書・記録等の管理→結果算出までの過程を把握
3.1 組織
嗅覚測定を実施する測定機関においては、まず組織全体の構成を明らかにすることによって、
一連の測定実施における担当者の役割分担と責任の所在を明確にすることが必要である。
アドバイス
組織構成員と役割分担の例
組織構成員としては 、例えば以下のように 統括責任者 、品質管理者、技術管理者及び測定担当者
が挙げられる。ここで、品質管理者、技術管理者及び測定担当者 は嗅覚測定法の精度管理に密接に
関連していることから、嗅覚測定法に関する十分な知識と適性を有する者であることが 望ましい。
ただし、測定担当者が単に嗅覚測定 の実施者(オペレータ )の補助的役 割を果たす場合については、
この限りではない。なお、精度管理と合わせて 安全管理に関する役割分担も考慮した組織の基本構
成を資料−1に示している。
組織構成員
統括責任者
役
割
分
担
嗅覚測定の実施全般に関して責任を負う。
① 嗅覚測定実施の承認
② 品質管理者から提出される SOP 案、精度管理実施計画書案及び精度管理結果報告書案の
審査及び承認
③ 技術管理者から提出される嗅覚測定実施計画書案及び嗅覚測定結果報告書案の審査及
び承認
④ 品質管理者及び技術管理者の意見を踏まえて、精度管理に関する問題点を改善
嗅覚測定法に関して十分な知識と適性を有する。
品質管理者
嗅覚測定に関わる精度管理に責任を負う。
① 技術管理者から提出される SOP 案、精度管理実施計画書案及び精度管理結果報告書案を
審査し、統括責任者に提出
② 精度管理に関する問題点を改善するために、統括責任者に進言
嗅覚測定法に関して十分な知識と適性を有する。
技術管理者
嗅覚測定法の技術管理において責任を負う。
① 嗅覚測定(事前調査、試料採取を含む)を実施
② 測定担当者に対する適切な技術的指示
③ 測定担当者から提出された記録等の内容確認及び保管
④ SOP 案、精度管理実施計画書案及び精度管理結果報告書案を作成して品質管理者に提出
⑤
⑥
⑦
嗅覚測定実施計画書案を作成して統括責任者に提出
測定担当者から提出された嗅覚測定結果報告書案を審査し、統括責任者に提出
精度管理に関する問題点を改善するために、統括責任者に進言
4
測定担当者
①
②
③
④
嗅覚測定法に関して十分な知識と適性を有する。
技術管理者の指示に基づいて嗅覚測定(事前調査、試料採取を含む)を実施
必要な記録等を作成して技術管理者に提出
嗅覚測定結果報告書案を作成して技術管理者に提出
統括責任者
SOP
精度管理
実施計画書
精度管理
結果報告書
嗅覚測定
実施計画書
嗅覚測定
結果報告書
品質管理者
嗅覚測定法に関
嗅覚測定法に関
する知識と適性
する知識と適性
技術管理者
SOP
(
案)
精度管理
実施計画書
(
案)
精度管理
結果報告書
案)
(
嗅覚測定
実施計画書
(案)
嗅覚測定
結果報告書
(案)
記録等
の確認
と保管
嗅覚測定
の実施
(オペレータ)
嗅覚測定法に関
嗅覚測定法に関
する知識と適性
する知識と適性
技術的指示
測定担当者
嗅覚測定
結果報告書
(案)
記録等
の作成
嗅覚測定
の実施
(オペレータ)
関
嗅覚測定法に
嗅覚測定法に関
する知識と適性
する知識と適性
3.2 教育及び訓練
精度管理を効果的に推進するためには、適宜教育及び訓練(外部機関での研修などへの参加を
含む)の機会を設けて、測定従事者の資質及び技能の向上を図ることが必要である。
3.3 文書・記録等の管理
測定終了後においても一連の測定過程が的確に把握できるように、文書や記録などの管理体制
を確立しておく必要がある。また、試料採取時の状況からは考えにくい特異な測定結果が得られ
るなど、精度管理に関する何らかの問題が発生した場合は、速やかに必要な措置が講じられるよ
うな体制を整えておく必要がある。
5
第4章
測定の実施における精度管理
ポイント!
測定の実施における精度管理
① 標準操作手順書(SOP)の作成→手順の統一、誤差要因の低減
② パネルの適切な選定と管理
③ 各操作における留意点のチェック、記録の作成と保管
・ 装置及び器具
・ 試料採取
・ 判定試験
・ 測定結果の評価と報告
4.1 SOP の作成
測定の実施に際してまず重要になるのは SOP の作成である。詳細な SOP を作成することに
よって、測定マニュアルに記述のない各測定機関での操作に関しても手順の統一を図り、誤差
要因を減少させることができる。ただし、現場での臨機応変な対応を妨げないように留意する
必要がある。資料−2には SOP の記述項目例を示しているが、これらは SOP 自体の作成方
法から信頼性保証まで幅広い内容を網羅したものであり、すべて揃えることは現実的ではない。
したがって、実際の測定機関においては測定マニュアルを基本としながら、それ以外に必要な
項目をピックアップするとともに、精度管理用チェックシートを活用することによって操作手
順の統一を図るとよいだろう(4.7 参照)。なお、資料−3には SOP の作成例を示している。
4.2 パネル
パネルの嗅力は測定結果に直接影響を及ぼすことから、嗅覚測定の実施にあたるオペレータ
は、測定結果の信頼性を損なわないように適切なパネルの選定を行う必要がある。また、オペ
レータはパネルの選定方法、嗅覚検査の結果及び嗅覚測定従事状況をパネルごとに記録し、保
管しておくことが望ましい。資料−4にパネル管理簿を、資料−5に嗅覚検査結果記録票を例
示する。
4.3 装置及び器具
4.3.1 留意事項
装置及び器具に関して重要な点は、無臭性の確保、吸着などによる試料損失の低減及び臭気
物質付着による汚染の防止である。無臭性の確保は、装置及び器具のみならず、嗅覚測定法全
体を通して非常に重要である。嗅覚測定法における無臭性の確認対象項目と対策を表−1にま
とめて示す。
6
表−1
対象
嗅覚測定法における無臭性の確認対象項目と対策
施設
内容
判定試験室、試料調製室、パネル控室
装置
無臭空気供給用器具
試料採取用器材
真空瓶、試料採取袋など
判定試験用器材
注射器、針、シリコンゴム栓、におい袋
器材保管庫
無臭空気
パネル、オペレータ
注射器などの器材の保管
活性炭槽を通気して調製した空気
化粧品、整髪料、手指など
対策
換気、清掃
活性炭、フィルター(脱脂綿など)の
交換
ガラス製分岐管の洗浄
真空瓶は無香性の洗剤で洗浄
試料採取袋は無臭空気もしくは対象
臭気で洗浄
注射器、針、シリコンゴム栓は無香性
の洗剤で洗浄、煮沸
におい袋は無臭空気で十分に洗浄
活性炭などで無臭性を確保
無臭空気供給用器具の管理
教育、指導
装置及び器具の取り扱いに際しては、以下の点に十分留意する必要がある。
装置及び器具のチェックポイント
m 試料採取用真空瓶は無香性の洗剤などでよく洗浄して蒸留水でよくすすぎ、においのしない清浄な
場所で自然乾燥させ、無臭であることを確認しておく。保管時は密閉し、採取口(枝管)はアルミ
箔で包んでおく。使用前は無臭空気を通気して瓶内が無臭であることを確認する。
m 試料採取用真空瓶や試料採取用吸引瓶のコックは無香性の洗剤などでよく洗浄して蒸留水でよくす
すぎ、においのしない清浄な場所で自然乾燥させ、無臭であることを確認しておく。グリスの塗布
はしない。
m 試料採取袋は無臭性で、臭気の吸着が少ない材質のもの(ポリエステル製など)を用いる。また、
使用前には無臭空気で袋内を数回置換したり、無臭空気を袋内に一定時間流し続けたりするなどし
て袋内の臭気を除去しておく。無臭性の確認は、無臭空気を袋内に満たして1時間程度放置した後
に袋内の空気を嗅ぐなどの方法で行う。
m 試料採取用ポンプは無臭性が高く、臭気が吸着しにくい材質のものを用いる。直接採取法において、
ポンプ内に試料を通して採取する場合には特に注意する。また、環境試料と排出口試料では別のポ
ンプを使用する。
m 試料採取袋までの導管は、通常は無臭性の高いポリふっ化樹脂製のものを用いるが、高温(200℃以
上)の排ガスを採取する場合などは必要に応じてガラス管などを用いる。使用前に無香性の洗剤な
どでよく洗浄して蒸留水でよくすすぎ、窒素や無臭空気を流して乾燥させ、無臭であることを確認
しておく。
m シリコンゴム管は無香性の洗剤などでよく洗浄して蒸留水でよくすすぎ、においのしない清浄な場
所で自然乾燥させ、無臭であることを確認しておく。必要最小限の長さを使用する。
m 水分の除去や冷却に使用する凝縮水トラップは、無香性の洗剤などでよく洗浄して、においのしな
い清浄な場所で乾燥させ、無臭であることを確認しておく。
m 無臭空気の作成に用いる空気注入用ポンプは、無臭性の高いものを用いる。また、過去に高濃度の
臭気に曝したものは使用しない。
m 無臭空気供給用器具に充填する活性炭は事前に十分洗浄を行い、無臭であることを確認しておく。
詳細については下記「アドバイス」欄参照。活性炭の交換頻度は使用状況によって異なるが、試料
数の多い場合には月に1回程度、少ない場合には年に1回程度行う。ただし、オペレータは常に無
臭空気の無臭性に注意を払い、必要に応じて洗浄あるいは交換を行う。
7
m 無臭空気供給用器具に使用するフィルター(脱脂綿など)は、薬品などのにおいが付着しているこ
とがあるので、事前に十分洗浄を行い、無臭であることを確認しておく。例えば、蒸留水で洗浄し
た後に清浄な部屋で自然乾燥させる。
m 無臭空気供給用器具に使用する分配器(ガラス製分岐管など)の先端に、手の接触などに起因する
臭気が付着していないことを確認する。汚染が認められる場合には十分洗浄して臭気を除去してお
く。
m 無臭空気供給用器具を使用しない間は、無臭性の袋で全体を包むことなどにより、臭気による汚染
を防ぐ。
m 注射器は無臭性のものを用いる。ガラス製注射器は無香性の洗剤などでよく洗浄し、熱湯に浸すな
どの後に乾燥させたものを用いる。特に摺り合わせ部分に臭気が残っていないことを確認する。た
だし、ルアーロック式の注射筒及びガスタイトシリンジのプランジャーは破損の危険性があるので、
煮沸や乾燥機の使用はしない。また、保管時は活性炭とともに専用ケースに入れたりアルミ箔で包
んだりして、外気による汚染を防ぐ。グリスの塗布はしない。
m におい袋は無臭性が高く、吸着性及び透過性が低いもの(ポリエステル製など)を用いる。製造後
長期間経っているものは、変質や着臭の恐れがあるので特に注意する。
m 鼻当ては無臭性が高いものを用いる。
m シリコンゴム栓は無香性の洗剤などでよく洗浄して蒸留水でよくすすぎ、においのしない清浄な場
所で自然乾燥させ、無臭であることを確認しておく。においが十分に落ちない場合には煮沸を行う
が、煮沸直後のシリコンゴム栓は特有のにおいがするので、一定期間(10 日程度)においのしない
場所で風乾する。
無臭空気供給用器具の活性炭槽は写真−1に示すように各部の無臭性を確保して使用する。
ガラス製分岐管
測定前にアルコールで洗浄し、油脂などを除去
しておく。
フィルター(脱脂綿)
風乾もしくは水洗後自然乾燥してにおいが無
いことを確認して使用する。
活性炭の微粉末が飛散して臭袋に入らないよ
うに注意する。
活性炭
水洗後、乾燥機で乾燥して使用する。乾燥機が
無い場合は新品と交換することが望ましい。
微粉末をふるいで取り除いて使用する。
写真−1
活性炭槽のチェックポイント
8
アドバイス
活性炭の洗浄方法例
無臭空気供給用器具に使用する活性炭は新品、再生を問わず下記の処理をした後、活性炭槽に充填し、
ポンプで通気して無臭であることを確認した後、測定に供する。
① 活性炭(顆粒状活性炭、破砕炭)をバケツに入れ、蒸留水を加えて半日程度放置する。
② 水面に浮かぶ油分や微粉末などを取り除き、活性炭を蒸留水で数回洗浄する。
③ 水洗した活性炭の水分をよく切り、においがしない乾燥機を使用して 100℃∼200℃で乾燥後、室温
まで冷却する。
④ 乾燥した活性炭はふるいなどで微粉末を除去した後、無臭性を確認した脱脂綿を用いて活性炭槽に
充填する。
⑤ 無臭空気は必ず試験前に無臭性が高いことを確認して使用する。
◇ 備考◇
・ 活性炭は水洗、乾燥の操作で微粉末などが取り除かれるので約 15%程度減量する。したがって、
充填に十分な量をあらかじめ準備しておく。
・ 乾燥したかどうかの目安とするために、乾燥前後の重量を測定するとよい。
・ 無臭空気調製用活性炭として上記処理をしたものが一部メーカーから市販されている。
・ 洗浄した活性炭の保管時には、においの吸着などの汚染に注意する。
4.3.2 記録の作成と保管
オペレータは以下の項目について記録を作成し、保管しておくことが望ましい。このことに
よって、適切な取り扱いに対する意識が向上するとともに、洗浄や消耗品交換の時期を把握す
ることができる。また、測定後に履歴をたどる際にも、測定当時の装置及び器具の状況を正確
に知ることができる。記録用紙の例として、真空瓶・試料採取袋記録簿を資料−6に、無臭空
気供給装置用活性炭記録簿を資料−7に示す。
1)装置
嗅覚測定で用いる以下の装置に関して、環境庁告示第 63 号で定められたものであることを
確認し、使用状況、管理状況及び修理状況などについて記録しておく。
①
試料採取装置(真空瓶、真空ポンプ、吸引瓶、試料採取用ポンプ、吸引ケースなど)
②
空気注入用ポンプ
③
その他必要であるもの
2)器具
嗅覚測定で用いる以下の器具に関して、環境庁告示第 63 号で定められたものであることを
確認し、使用状況、洗浄方法及び保管状況などについて記録しておく。
①
無臭空気供給用器具(活性炭を含む)
②
注射器(ガラス製注射器、樹脂製注射器、ガスタイトシリンジ)
③
におい袋
④
鼻当て
⑤
シリコンゴム栓
⑥
その他必要であるもの
9
4.4 試料採取
4.4.1 留意 事項
試料を正確に採取しなければ嗅覚測定の結果は無意味なものになってしまうことから、試料
採取に当たっては以下の点に十分留意する必要がある。
試料採取のチェックポイント
m
現場に赴き、直ちに試料採取を行うことができるほどの十分な情報が得られていない場合は、事前
調査を行う。事前調査では、臭気発生状況(臭気発生工程、環境臭気の変動パターンなど)や試料
採取場所の状況(場所の選定、足場の確保、器材の使用可能性など)について十分把握しておく。
m
事前調査 と試料採取は同じ者が行うことが 望ましい 。
m
環境試料 は時間変動が大きいことから、変動のパターン をできるだけ 把握した上、変動のピー
クをとらえて 採取する。
m
排出口試料の採取では、排ガス中の水分及びダストが影響しないように適切な除去手段 を講じ
る。例えば、水分の除去には凝縮水 トラップ を用い、ダストの除去には導管にガラスウールを
詰めたものを 用いる。
m
試料採取袋を用いて試料を採取する場合は、吸着による 試料の損失を防ぐために、袋内を試料
で数回置換した後に採取することが望ましい。
m
直接採取法において、試料採取用ポンプ を用いて複数の試料を採取する場合は、ポンプ 内の試
料通過部 の部品を交換するなどして、前の試料の影響が及ばないように 注意する。
m
運搬及び保管の際は直射日光、高温及 び他の臭気による 汚染を避ける。
4.4.2 記録の作成と保管
試料採取の担当者は、試料採取に際して以下の記録を作成し、測定結果とともに保管してお
くことが望ましい。このことによって、現場の状況を的確に把握するとともに、測定後も試料
の履歴を正確にたどることができる。
1)事前調査
事前調査を実施した場合は、その結果を記録し、保管しておく。事前調査記録票の例を環境
試料及び排出口試料について記入例とともに資料−8に示す。また、現場記録図面を記入例と
ともに資料−9に示す。
2)試料採取
試料採取の担当者は、試料採取時の状況を記録し、保管しておく。試料採取実施計画票の例
を資料−10 に、試料採取記録票の例を環境試料及び排出口試料について資料−11 に示す。また、
資料−9の現場記録図面も利用するとよい。
10
4.5 判定試験
4.5.1 留意事項
判定試験の実施においては、無臭空気の無臭性の確保、試料の適切な希釈、パネルの嗅ぎ方及
び回答方法の統一などが重要な因子となる。したがって、以下の点に十分留意する必要がある。
判定試験のチェックポイント
m 判定試験は原則として 試料採取の当日に実施する。当日の実施が不可能な場合には、遅くとも 翌
日の午前中には実施する。
m 試料採取 と判定試験の担当者が異なる場合は、確実な試料の引き渡しに留意する。
m 判定試験室 と試料調製室は十分換気し、常に無臭状態を保っておく。長時間室内にいると室内臭
の存在に気づかない場合があるので、時々室外の空気と比較して無臭であることを 確認する。ま
た、会議室等 を判定試験室 として 使用する場合は、前日から禁煙として 十分に換気を行う。
m 無臭空気を作成する際には、無臭空気供給用器具に最初しばらく 空気を流し、無臭であることを
確認してから 判定試験 に用いる。詳細については下記「アドバイス 」欄参照 。
m 無臭空気の温度は室温程度が望ましいが 、ポンプの熱によって温度が上昇する場合は、冷却用水
槽と凝縮水トラップを利用して空気を冷却し、測定に供するという 方法もある。
m におい袋は十分に洗浄してから使用する。例えば、無臭空気で袋内を数回置換したり、無臭空気
を袋内に一定時間流し続けたりするなどして袋内の臭気を除去しておく 。無臭性を判断するには、
におい袋に無臭空気を入れて、においの 有無を確認する。詳細については下記「アドバイス」欄
参照。
m 注射器は注入量 に応じた容量のものを用意し、試料で数回共洗いしてから使用する。また、注射
針がしっかり取り付けられていること、ガスタイトシリンジのプランジャーチップ が緩くなって
いないことを 確認する。
m オペレータ は当初希釈試料の臭気が強くなり過ぎないように、慎重に当初希釈倍数 を決定する。
例えば、複数のオペレータがいる 場合にはお互いに確認を取る、パネルに臭気強度 も回答させる
ようにしておき、臭気強度 3 以上の値が多く得られるようであれば再検討 するなどの方法がある。
m オペレータ は当初希釈試料だけでなく、各希釈段階 の試料についても 強度を確認し、正確な希釈
操作が行われているかどうか チェックする。なお、複合臭 の場合は希釈の進行とともに 質が変化
する場合があるので注意する。
m 必要に応じて事前にパネルに対して嗅ぎ方の指導(実演を含む)を行い、統一した方法で判定が
行われるように注意する。
m 必要に応じて判定試験前に適度に希釈した試料と無臭空気 をパネルに嗅がせて、試料臭気の質及
び無臭空気の性状を十分認識させておく。
m 必要に応じてパネルに1セット3個のにおい袋すべてについて臭気強度を回答させ、無臭性 の
チェック を行う。
11
パネルに臭気強度も回答させる際には、図−2に示すような回答用紙を用いるとよい。
回答用紙
氏名
3個の袋のうち、におい
があるのは何番ですか?
あなたが選んだ袋のにおいの 強さはど
の程度ですか?
当てはまる番号に○をつけてください。
0
1
2
3
4
図−2
アドバイス
わからない
やっと感知できるにおい
何のにおいかがわかる弱いにおい
楽に感知できるにおい
強いにおい
回答用紙の例
無臭空気の無臭性を確認する方法
無臭空気 は無臭性 を必ず確認してから 測定に供する。無臭性の確認手順 は以下の通りである 。
① 活性炭槽 に接続したガラス 製分岐管からの 空気のにおいを各々直接嗅いで無臭性 を確認する。
② ①で無臭性が確認されたら 、無臭空気 で十分に洗浄したにおい 袋に無臭空気を充填し、充填直後
に中の空気のにおいを 嗅いで無臭性を確認する。
③ ②で無臭性が確認されたら 、無臭空気 で十分に洗浄したにおい 袋に無臭空気 を充填し、10 分程
度放置後 、中の空気のにおいを嗅いで無臭性を確認する。
◇備考◇
・ ①では無臭空気供給用器具全体の無臭性を確認できる。
・ ②ではにおい 袋の無臭性を確認できる 。
・ ③ではパネル に試料を呈示した際の無臭性 を確認できる 。
・ ②で無臭性が確認された後、③でにおいが 感じられた場合は、シリコンゴム 栓の汚染やにお
い袋の製造不良などが 考えられる 。
4.5.2 記録の作成と保管
オペレータは判定試験実施時の状況を記録し、保管しておくことが望ましい。嗅覚測定実施
記録票の例を環境試料及び排出口試料について資料−12 に示す。
12
4.6 測定結果の評価と報告
4.6.1 留意事項
判定試験結果に基づいて試料の臭気指数あるいは臭気濃度を算出するが、この際、事前調査
の結果や試料採取状況などを勘案して測定結果を総合的に評価し、不自然な結果となっていな
いことを確認する。不審点が認められる場合には、測定の履歴をたどって結果導出までの過程
を再検討する。
4.6.2 記録の作成と保管
オペレータは測定結果の報告に際して記録を作成し、保管しておくことが望ましい。嗅覚測
定結果報告用紙の例を資料−13 に示す。案件ごとに、事前調査から試料採取、判定試験、結果
の算出に至るまでの一連の情報を一括して整理することによって、嗅覚測定全体の円滑な進行
を図ることができる。また、各作業担当者間の情報伝達をスムーズにし、測定後も試料の履歴
を正確にたどることが可能となる。
4.7 チェックリストの利用
精度管理に留意した嗅覚測定を行うためには、嗅覚測定に携わるすべての者が測定結果の
信頼性に影響する因子を十分に把握しておく必要がある。そこで、精度管理において重要な
ポイントを列挙したチェックリストを作成し、各操作をその都度チェックしながら進めるこ
とが望ましい。また、チェックリストに則って操作を進めることによって、操作手順の統一
化を図ることができる(4.1 参照)。資料−14 には嗅覚測定法精度管理用チェックリストの例
を示す。実際にはこれらの項目の中から必要なものを測定状況に応じて抜き出し、チェック
リストを作成するとよいだろう。
チェックリストの活用などによって精度管理上の問題点が明らかになった場合には、具体
的な問題点を記録するとともに、それに対する改善策とその効果をまとめておくことが望ま
しい。これらの情報の蓄積によって、より信頼性の高い嗅覚測定の実施が期待できる。資料
−15 には嗅覚測定法精度改善取組記録票の例を示す。
13
第5章
標準物質を用いた精度管理
ポイント!
標準物質を用いた精度管理
① 標準物質…酢酸エチル
② 標準臭気の調製方法
・ ガスボンベ
・ 標準ガス発生装置
・ 一定容積の空気中に気化
・ プッシュ缶
③ 自主的な精度管理…機関内チェック
④ 複数の測定機関による共同評価実験…機関間試験
5.1 概要
嗅覚測定法における精度管理の一手法として、標準物質を用いた精確さ(精度及び真度)の
評価が挙げられる。すなわち、閾値が既知である標準物質を用いて、測定機関において閾値の
繰り返し測定を行う。そして、閾値の平均値やばらつきの大きさを判定基準と比較することに
よって、その測定機関における嗅覚測定法の精度評価を行うことができる。判定基準としては、
過去の測定機関の共同試験によって得られた値を採用する。測定機関は評価結果に基づいて精
度管理上の問題点を把握するとともに、その改善方法について検討し、より信頼性の高い嗅覚
測定の実施に向けて努力することになる。ここで、標準物質を用いた精度管理としては、測定
機関の自主的なチェック手段として利用する場合と、複数の測定機関が共同試験を行ってお互
いに比較・検討を行う場合が考えられる。なお、
「精度」とは複数回の測定結果の一致の程度で
あり、
「真度」とは複数回の測定結果の平均値と真の値または参照値との一致の程度である(下
記「コラム」欄参照)。
14
コラム
「精度」・「真度」・「精確さ」の違いとは?
今、的に向かって射撃をしている場面を想像してみよう。的の中心を狙って撃つが、そう簡単に命中
するものでもない。4人がそれぞれ 10 発撃った後の弾痕を見てみると下の図のようになった。この結果
から4人の射撃の腕前をどのように評価したらいいだろうか?
Aさん
Bさん
Cさん
Dさん
ここで、次の二つの側面から検討してみよう。
① 弾痕の散らばり方
② 弾痕の的の中心への近さ
Aさんは散らばり方は小さいが全体的に的の中心から外れている。Bさんは全体的に的の中心付近に
集まっているが、散らばり方が大きい。Cさんは散らばり方も小さく、的の中心にきれいに集まってい
る。Dさんは散らばり方も大きく、的の中心からも外れている。このような状況を統計的に表現すると、
①の散らばり方が精度であり、②の中心への近さが真度である。そして、両者を合わせて考えた全体と
しての腕前の良さが精確さである。以上をまとめて表にすると下のようになる。
精度
真度
精確さ
Aさん
○
×
△
Bさん
×
○
△
Cさん
○
○
○
Dさん
×
×
×
嗅覚測定においても同様の考え方で精度と真度の評価を行うことができる。
◆注意◆
ここでの説明は JIS Z 8402-1 に基づくものである。「精度」という言葉の意味が、広く「精度管理」
という表現で使われる場合と、厳密な統計用語として使われる場合で必ずしも一致しないという点に留
意する必要がある。
5.2 標準物質
精度評価を行うための標準物質として、酢酸エチルを用いる。測定機関内でのチェック用
として簡易的に使用する場合は、市販されている試薬を用いることができるが、外部精度管
理の枠組みの中で精度評価を行う場合は、他の測定機関と結果の比較ができるように値付け
された標準物質を用いる必要がある。ただし、値付けを行うには校正機関などによる信頼性
の保証が必要となるが、供給体制を含めた詳細については今後さらに検討する必要がある
(5.6 参照)。
調製方法としては、酢酸エチル標準ガスボンベを用いる方法、標準ガス発生装置を用いる方
法、酢酸エチルを一定容積の空気中に気化させる方法、標準ガス入りプッシュ缶を用いる方法
が挙げられる(下記「アドバイス」欄参照)。なお、いずれの方法で調製する場合でも、精度評
価試験の実施に際しては酢酸エチルの濃度を明らかにしておく必要がある。
15
標準物質の選定理由
平成 12 年度に環境省の委託を受けて社団法人臭気対策研究協会内に設置された「嗅覚測定法の精度管
理・安全管理検討会」において検討した結果、標準物質に必要とされる以下の条件を満たす物質として、
酢酸エチルが選定された3 )。
①
所定濃度の標準臭気の作成が容易で、かつ作成した標準臭気が安定であること。
②
嗅覚に対する特性が比較的優れていること。すなわち、パネルの嗅力分布のばらつきが小さく、に
おいの有無の判断が容易な物質であること。
③
オペレータやパネルに対する安全性が高く、健康被害や健康影響への不安を極力与えない物質であ
ること。
アドバイス
標準物質の調製方法
各方法の概要及び注意点を以下に述べる。なお、設定濃度の検証及び安定性について検討した結果、
いずれの方法においても良好な結果を得ている4 )。
①標準ガスボンベを用いる方法
標準ガスボンベ はガス製造会社から入手する。酢酸エチル濃度は
2000ppm 程度、希釈ガスは窒素とする。ボンベ内の濃度は製造会社 の
検定によって求められるが、保証期間は一般に半年以内である。ボン
ベの使用履歴が臭気に影響しないように、嗅覚測定用の標準臭気とし
て使用する旨をあらかじめガス製造会社に伝えておくとよい。圧力調
整弁は無臭であるものを用いる。
②標準ガス発生装置を用いる方法
ガス拡散管(ディフュージョンチューブ)に酢酸エチル(市販の試
薬)を入れて恒温に保持すると、蒸散拡散する量が一定となる。そこ
に一定流量の希釈ガス(通常は窒素)を通すと一定濃度のガスが得ら
れる。ガス濃度は、ガス拡散管内の酢酸エチル減少量を一定時間間隔
で測定し、単位時間当たりに拡散するガス量を求め、希釈ガス量で除
することによって求められる。酢酸エチルの調製に先立って、希釈ガ
スの無臭性を装置出口で確認しておく。
③酢酸エチルを一定容積の空気中に気化させる方法
試料採取袋やにおい袋に一定容積の無臭空気を正確に注入した後に、一定
量の酢酸エチル(市販の試薬)をマイクロシリンジ で注入して気化させる 。
あるいは、真空瓶に一定量の酢酸エチルをマイク
ロシリンジで注入して気化させ、一定量の無臭空気
が入ったにおい袋を接続して希釈し、全体の濃度を
均一化する。例えば、25℃の室内で無臭空気 10L が
入っている試料採取袋に酢酸エチル 80μL を注入し
て気化させると、袋内の酢酸エチル濃度は 2000ppm
となる。この方法ではマイクロシリンジを用いて少
量の酢酸エチルを注入する必要があるために、操作
は十分慎重に行う。
16
④標準ガス入りプッシュ缶を用いる方法
標準ガス入りプッシュ缶は、酢酸エチルをガスボンベよりも低
圧で小容量のプッシュ缶に充填したもので、ガス製造会社から入
手する。酢酸エチル濃度は 2000ppm 程度、希釈ガスは窒素とする。
プッシュ 缶内の濃度および保証期間 は製造会社 の検定によって
求められる。
各方法の長所、短所および留意点をまとめて下の表に示す。
調製方法
①ガスボンベ
・ 操作が容易
②標準ガス発生装置
③一定容積中に気化
④プッシュ缶
・ 機器測定で精度を
確認済み
・ 低コスト
・ 操作が容易
長所
・ 濃度の保証がガス製
造会社によってされて
おり、安定供給が可能
短所
・ 濃度保証期間が半年
程度と短い
・ 機器の安定に時間
を要する
・ 操作の熟練度が大
きく影響
・ 濃度保証期間が短
い
・ ボンベ自体のにおい
の影響
・ 装置から発生する
においの影響
・ マイクロシリンジ
による試薬注入操作
・ プッシュ缶自体 の
においの影響
留意点
・ 濃度の保証がガス
製造会社 によってさ
れており、安定供給が
可能
・ 圧力調整弁の無臭性
・ 充填圧力の低下に
よる濃度変化
・ 充填圧力の低下によ
る濃度変化
5.3 精度評価試験の実施
測定機関が測定精度を自己評価する手法は、JIS Q 00335 )、JIS Z 8402-46 ) 及び JIS Z
8402-67 ) に示されている。これらに基づく精度評価試験実施の流れは以下のようになる
(図−3)。測定機関は標準物質を調製した後、嗅覚測定法の判定試験の方法に従って、
併行条件下において臭気指数 を繰り返し測定する。その後、標準物質として用いた酢酸エ
チルの濃度と臭気指数測定結果から酢酸エチルの閾値濃度の常用対数値を算出する。ただ
し、実際はパネルの閾値(閾値に対応する希釈倍数の常用対数値)を計算し、これを酢酸
エチルの濃度の常用対数値から差し引くことによって 、酢酸エチルの閾値濃度 の常用対数
値を算出する。この操作を各測定で行い、以下の評価に用いる。
17
外部精度管理の枠組みにおいて必要
標準
物質の値付け
認証
精度評価試験
精度評価試験
標準臭気の
調製
繰り返し測定
物質濃度
臭気指数
閾値の常用対数値
No
外れ値はないか?
外れ値を除外
Yes
No
精度は許容範囲内か?
測定方法の検討
Yes
No
真度は許容範囲内か?
評価試験の検討
Yes
評価結果の整理
図-3
標準物質を用いた精度評価方法の概要
5.4 結果の評価
得られた結果に対しては、まず統計的検定を行い、外れ値がないかどうかを調べる。外れ値
があればそれを除外した後、精度のチェックを行う。ここで測定方法の併行標準偏差(共同試
験によって求められている既知の値)と統計的に有意な差がなければ、真度のチェックに進む。
真度のチェックにおいて、参照値(共同試験によって求められている既知の値)と統計的に有
意な差がなければ、その測定機関における測定精度(精確さ)は許容範囲内にあるということ
になる。精度及び真度のチェックにおいて統計的な有意差があると判定された場合は、まず精
度評価試験の実施において問題点がなかったかどうか検討し、再試験の必要性を判断する。精
度評価試験の実施に問題がなかったと判断された場合には、嗅覚測定の実施において精度管理
上の問題点が存在すると考えられることから、原因を明らかにした上、改善策を検討する必要
がある。ここで、精度管理に関するチェックリストや精度改善取組記録票が有効に活用される
べきであろう(4.7 参照)。以上の精度評価の詳細については資料-16 に示す。また、精度評
価試験の実施例を資料-17 に示す。
18
精度評価の判定基準値について
平成 12 年度及び平成 13 年度に環境省の委託を受けて社団法人臭気対策研究協会内に設置された「嗅
覚測定法の精度管理・安全管理検討会」において、酢酸エチルを用いた照合試験を 7 測定機関で行った
結果、閾値の平均値、併行標準偏差、再現標準偏差として以下の値が得られた8)9)。なお、値はいずれ
も閾値の常用対数値として表したものである。
判定試験方法
平均値
併行標準偏差
環境試料(平成 13 年度実施) -0.10(0.79ppm)
0.13
排出口試料(平成 12 年度実施) -0.26(0.56ppm)
0.17
再現標準偏差
0.24
0.22
室間標準偏差
0.20
0.15
精度評価の判定基準値としては、当面これらの値を参考値として用いることとするが、今後も適宜デ
ータを蓄積してより信頼性を高める必要がある。
標準臭気の臭気指数の目安
濃度 2000ppm の酢酸エチルを用いて排出口試料の方法によって臭気指数を併行条件で繰り返し測定
した場合、測定結果の標準偏差及び平均値が以下の条件を満たすことが望ましい。ただし、n は繰り
返し測定の回数である。
標準偏差
臭気指数の平均値
n=3
3.0 以下
35.5±2.0
n=4
2.8 以下
35.5±1.7
n=5
2.7 以下
35.5±1.5
これらは資料-16 に示した精度評価方法に基づいて求められたものである。
5.5 精度評価試験の実施頻度
各測定機関が標準物質を用いて精度評価試験を行う頻度は、嗅覚測定の頻度、パネル構成の
変化、オペレータの経験、コストなどを総合的に判断して決定する必要があるが、下記の頻度
を目安としてデータを蓄積し、それらの結果に基づいて以降の実施頻度を再検討するとよい。
ただし、測定機関の実情を踏まえて柔軟に対応する必要がある。
併行条件下における繰り返しチェック
これは本章で述べたように、標準臭気の繰り返し測定によって精度及び真度を評価す
るものである。基本的に年に複数回、一度に4回以上の繰り返し測定を行う。ただし、
測定頻度が少ない機関は年に1回でもよい。当初はできるだけデータを収集して変動の
把握に努める。標準臭気の臭気指数の目安として、上記欄内の値を参考にするとよい。
定期的チェック
これは繰り返し測定ではなく、一度に1回だけの測定を定期的に行うものである。基
本的に 30 検体に1回あるいは月に1回の多い方の頻度で行う。ただし、測定頻度が少
ない機関で測定間隔が一月以上空く場合は測定の都度行う。1日8検体以上測定する機
関では、実施日の午前最初と午後最後の計2回行うのもよい。濃度 2000ppm の酢酸エ
チルを用いた場合は、臭気指数が 35.5±3.5 の範囲内に収まるかどうかが目安となる。
測定結果の報告の際に精度管理の実施状況に関する情報も提供する必要がある場合には、資
料-18 に示す精度管理実施状況報告書を用いるとよい。
19
コラム
内部精度管理の実施例
平成 13 年度に自治体及び民間分析機関の合計7機関に標準臭気を配付し、排出口試料の測定方
法で1回ずつ臭気指数を測定してもらうとともに、判定試験用器材や判定試験操作の詳細な手順
を調査した。後日、測定結果に影響を及ぼすと考えられる要因をチェックポイント(資料-14 参
照)として各機関に伝達(フィードバック)し、使用器材や作業内容を改善した後、再度同一試
料を測定してもらった。改善の前後における7機関の臭気指数測定結果の分布は下図のようにな
った。ここで標準とは、適正に測定したと考えられる場合の分布の目安である。このように内部
精度管理を行い、各機関において影響要因を改善することによって、臭気指数測定結果が改善さ
れたことが伺える。
器材・作業の改善
改善前
15
標準
改善前
10
度数
15
標準
改善後
10
度数
5
5
0
改善後
0
24
26
28
30
32
35
37
39
24
26
28
30
32
35
37
39
臭気指数
臭気指数
5.6 外部精度管理体制の確立に向けて
各測定機関で広く精度評価試験を行うためには、一定のレベル以上の品質が確保された標準
物質を用いる必要がある。すなわち、校正機関などで認証された標準物質の供給体制を整備す
ることによって測定機関間のデータの比較を行う必要がある。計量分野では、このような体制
を計量法における計量標準供給制度(JCSS 制度)として、下記のように位置づけている。
①
国家計量標準(一次標準)を経済産業大臣が指定
②
経済産業大臣から指定された供給実施機関(指定校正機関)が一次標準を供給
③
経済産業大臣から認定された認定事業者が計量器の校正または標準物質を値付け
また、計量法に基づく試験所・校正機関認定制度では、ISO/IEC ガイド 58(JIS Z 935810))
に適合した校正機関が ISO/IEC 17025(JIS Q 1702511))に基づき、試験機関を認定するシステ
ムになっている。化学物質に関しては、財団法人化学物質評価研究機構が標準ガス及び標準液に
係る校正機関として指定されており、認定事業者から一般ユーザーに供給される標準物質の濃度
信頼性試験を実施している。このような標準物質の供給システムの概要を図-4に示す。嗅覚測
定法における標準物質も化学物質として同様の扱いが可能となれば、今後標準物質の供給体制を
整備することが必要になるであろう。
20
標準物質供給体制の確立によって、各測定機関における自主的な精度管理に加えて、下記のよ
うな場面に適用が可能であると考えられる。
①
第三者機関による測定機関の外部監査
② 社団法人臭気対策研究協会の臭気測定認定事業所制度にみられるような登録審査時及び登録
後の定期的なクロスチェック
③
嗅覚測定法の改善及び新たな測定法の開発に伴う精度評価共同試験
④ 精度向上のための測定機関の自主的な取り組みとしての共同試験
上記いずれの場合においても、精度評価の実質的遂行あるいは実施機関の取りまとめを行う第
三者機関が必要であり、外部精度管理手法の具体的な検討とともに、評価システムの整備と各測
定機関の関わり方についてさらに議論を続ける必要があろう。
標準物質
指定校正機関
指定校正機関
特定標準物質
特定標準物質
および製造装置
および製造装置
証明書の発行
特定標準物質による値付け
特定二次標準物質
特定二次標準物質
特定二次標準物質による値付け
一般ユーザー
一般ユーザー
実用標準物質
実用標準物質
標準物質の供給システムの概要
21
実用標準
証明書の発行
二次標準
認定事業所
認定事業所
図-4
国家計量標準
(
一次標準)
値付け実施機関
参考文献
1)環境庁大気保全局大気生活環境室編:臭気指数測定マニュアル(1996)
2)環境省環境管理局大気生活環境室編 :嗅覚測定法マニュアル,社団法人臭気対策研究協会 ,東京
(2001)
3)社団法人臭気対策研究協会:平成 12 年度環境省委託業務結果報告書,嗅覚測定法の精度管理・
安全管理検討調査報告書,4-7(2001)
4)3)の 8-21
5)JIS Q 0033,認証標準物質の使い方(2002)
6)JIS Z 8402-4,測定方法及 び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第4部:標準測定方法の真度
を求めるための基本的方法(1999)
7)JIS Z 8402-6,測定方法及 び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第6部:精確さに関する値の
実用的な使い方(1999)
8)3)の 22-37
9)社団法人臭気対策研究協会:平成 13 年度環境省委託業務結果報告書,脱臭技術に係る性能評価
マニュアル等策定検討調査−(Ⅱ)嗅覚測定法に係る精度管理・安全管理方法の策定に関する検
討調査−,4-15(2002)
10)JIS Z 9358,校正機関及 び試験所の認定システム−運営及び承認に関する一般要求事項(1996)
11)JIS Q 17025,試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項(2000)
22
嗅覚測定法精度管理マニュアル
< 資 料 編 >
資料−1
組織の基本構成
資料−2
SOP 記述項目一覧
資料−3
標準操作手順書(例)
資料−4
パネル管理簿
資料−5
嗅覚検査結果記録票
資料−6
真空瓶・試料採取袋記録簿
資料−7
無臭空気供給装置用活性炭記録簿
資料−8
事前調査記録票−環境試料・排出口試料−
資料−9
現場記録図面
資料−10
試料採取実施計画票
資料−11
試料採取記録票−環境試料・排出口試料−
資料−12
嗅覚測定実施記録票−環境試料・排出口試料−
資料−13
嗅覚測定結果報告用紙
資料−14
嗅覚測定法精度管理用チェックリスト
資料−15
嗅覚測定法精度改善取組記録票
資料−16
精度評価試験の実施方法
資料−17
精度評価試験の実施例
資料−18
精度管理実施状況報告書
資料−19
精度管理に関する用語説明
資料−1
組織の基本構成
精度管理及び安全管理に関する組織の基本構成を下に示す。これは十分な人数が存在す
る測定機関で採用し得る最も理想的な構成である。実際の測定機関ではこれを参考にして
構成人数や実情に合わせて柔軟に対応し、最も効果的かつ実際的な組織構成とするとよい。
精度管理
安全管理
組織の統率方向
統括責任者
統括責任者
嗅覚測定法に関する知識と適性
品質管理者
管理責任者
技術管理者
調査責任者
(事前調査者)
(試料採取者)
測定担当者
オペレータ
◆注意◆
上図の各構成員に関する特記事項及び留意点は以下の通りである。
安全管理に関する統括責任者は、嗅覚測定に限らず測定機関における安全管理全般を統括する者が
相当する。
品質管理者は測定結果の独立性と信頼性の確保に重要な役割を果たすことから、測定には直接関与
しない中立的立場の構成員を充てる必要がある。
精度管理に関しては品質管理者、技術管理者及び測定担当者、安全管理に関しては管理責任者、調
査責任者(事前調査者、試料採取者)及びオペレータが嗅覚測定法に関する十分な知識と適性を有
する者であることが望ましい。
精度管理における技術管理者及び測定担当者は技術的レベルによる分類であり、安全管理における
調査責任者(事前調査者、試料採取者)及びオペレータは主として作業内容による分類であること
に注意を要する。したがって、技術管理者は調査責任者(事前調査者、試料採取者)及びオペレー
タとしての役割を果たし得るし、測定担当者は事前調査者、試料採取者及びオペレータとしての役
割を果たし得るという関係にある。
23
資料−2
SOP 記述項目一覧
Ⅰ.標準操作手順書に関する標準操作手順書
1
2
3
4
5
標準操作手順書の分類(SOP No.及び名称)
標準操作手順書で使用する用語の定義
標準操作手順書の様式
標準操作手順書の作成
標準操作手順書の改訂
6
7
8
9
標準操作手順書の発効
標準操作手順書の配付・回収及び廃棄
標準操作手順書の保管
標準操作手順書からの逸脱
Ⅱ.施設に関する標準操作手順書
1
2
3
4
5
6
施設図及び各管理区域の機能と名称
施設及び設備の表示
管理区域での着衣
採取器材保管室の運用
試験器材保管室の運用
採取試料保管室の運用
7
8
9
10
11
12
試料調製室の運用
判定試験室の運用
パネル控室の運用
データ処理室の運用
資料保管室の運用
試薬、測定済み試料及び廃棄物の設置場所
6
7
8
9
10
資料保存施設管理責任者の業務
技術管理者の業務
品質管理者の業務
試験の実施に係わる者の資格
教育の実施
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
試薬、試料、資材の表示
判定試験用資材の管理
器具の洗浄
試験記録の取り扱い
試験報告書の作成
不測の事態発生時の対応
試験計画書からの逸脱
試験資料の整理
試験資料の一時保管及び最終保管
安全管理
3
試験方法の標準操作手順書の管理
5
6
7
8
器材、器具の標準操作手順書作成方法
器材、器具の使用
器材、器具の管理
標準器(温度計、湿度計)の管理
Ⅲ.組織運営に関する標準操作手順書
1
2
3
4
5
統括責任者
統括責任者の業務
嗅覚測定法実施組織
職員及び試験従事者の登録
各責任者の指名
Ⅳ.試験の実施に関する標準操作手順書
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
試験の業務の流れ
試験管理台帳及び主計画表の作成
試験台帳の作成
試験計画書の作成
試験試料の管理
精度管理用標準物質の管理
試料採取器材の管理
試料採取器材の洗浄
判定試験用器材の管理
判定試験用器材の洗浄
Ⅴ.試験方法の標準操作手順書
1
2
試験方法の標準操作手順書番号
試験方法の標準操作手順書作成方法
Ⅵ.器材、器具の標準操作手順書
1
2
3
4
器材、器具の分類と登録
器材、器具の管理担当者の指定
器材、器具の表示及び配置
器材、器具の標準操作手順書番号
Ⅶ.信頼性保証部門による調査に関する標準操作手順書
1
2
3
4
5
6
7
信頼性保証調査計画
品質管理者の指名
施設調査の実施
試験調査の実施
24
調査結果報告
信頼性の保証
調査資料の整理及び保管
資料−3
標準操作手順書(例)
Standard Operating Procedure (SOP)
分
類 (Group)
名
称
標準操作手順書に関する標準操作手順書
(Title)
標準操作手順書で使用する用語の定義
SOP No. (Ver. No.)
起
案
AA102 (1.0)
年月日
(Date)
署名
(Signature)
年月日
(Date)
署名
(Signature)
Plan preparation
統括責任者
Project Manager
<目 次>
項
目
頁
起案者及び統括責任者の日付、署名欄
目次
本文
1.
目的
2.
適用
3.
責任
4.
用語の定義
25
- - - - - - - - - - -
1
1
-
2
2
2
2
-
-
-
-
-
標準操作手順書(例)
Standard Operating Procedure (SOP)
分
類 (Group)
名
称
(Title)
SOP No. (Ver. No.)
標準操作手順書に関する標準操作手順書
標準操作手順書で使用する用語の定義
AA102 (1.0)
1.目的
嗅覚測定法試験を実施するために使用する標準操作手順書(以下「SOP」という。
)で
使用する用語を定義する。
2.適用
本 SOP は、○○市嗅覚試験施設で使用する SOP に適用する。
3.責任
本 SOP の起案、制定、改訂、配付及び廃棄は、○○市嗅覚試験施設の統括責任者の責
任の下で実施する。
4.用語の定義
SOP で用いる主な用語は、一般用語及び悪臭防止法関係法令で定義された用語以外に
次の通り定義する。
嗅覚測定法
: ○○市嗅覚試験施設で実施する次の試験。
(1) 平成 7 年 9 月 13 日 環境庁告示第 63 号
改正 平成 8 年 2 月 22 日 同 第 7 号
改正 同 11 年 3 月 12 日 同 第 18 号
改正 同 12 年 6 月 15 日 同 第 35 号
臭気指数及び臭気排出強度の算定の方法
採取試料
: 以下の試料をいう。
(1)敷地境界線上で採取した臭気
(2)気体排出口で採取した臭気
(3)放流口から採取した排水
・
・
・
・
以上
26
資料−4
パネル管理簿
(
No.
パネル氏名
〒
住所
TEL
FAX
年
月
日生
E-mail
性別
男 ・ 女
健康状態
登
年
)
録
月
職 業
喫煙の有無
日
日
登録解除日
年
嗅 覚 検
A
B
査
年
月
日
記 録
C
D
E
月
日
27
(確認者氏名
検査者
)
パネル経験
年 月 日
試料数
(確認者氏名
)
資料−5
嗅覚検査結果記録票
検査日時
年
月
日(
温度
検査場所
氏名
男・女
℃
)
時
湿度
分 ∼
%
時
分
オペレータ氏名
生年月日
年
月
日(
)歳
第一回テスト
基
準
臭
付臭番号
回 答
判 定
A.β−フェニルエチルアルコール(10-4.0 w/w)
1 2 3 4 5
合 再
B.メチルシクロペンテノロン(10-4.5 w/w)
1 2 3 4 5
合 再
(10-5.0 w/w)
1 2 3 4 5
合 再
D.γ−ウンデカラクトン (10-4.5 w/w)
1 2 3 4 5
合 再
(10-5.0 w/w)
1 2 3 4 5
合 再
C.イ ソ 吉 草 酸
E.ス カ ト ー ル
再テスト
基
準
臭
付臭番号
回 答
判 定
1 2 3 4 5
合 否
1 2 3 4 5
合 否
結 果
28
資料−6
真空瓶・試料採取袋記録簿
(
)
No.
容
量
材
質
使用開始日
年
月
日
年
月
日
年
月
日
年
月
日
年
月
日
年
月
日
洗 浄 日
1
使 用 日
採取臭気
使 用 者
洗 浄 日
2
使 用 日
採取臭気
使 用 者
洗 浄 日
3
使 用 日
採取臭気
使 用 者
洗 浄 日
4
使 用 日
採取臭気
使 用 者
洗 浄 日
5
使 用 日
採取臭気
使 用 者
洗 浄 日
6
使 用 日
採取臭気
使 用 者
廃
棄
日
29
資料−7
無臭空気供給装置用活性炭記録簿
(
)
No.
容
積
材
質
使用開始日
年
月
日
年
月
日
年
月
日
年
月
日
年
月
日
年
月
日
洗 浄 日
1
洗浄方法
使 用 日
使 用 者
洗 浄 日
2
洗浄方法
使 用 日
使 用 者
洗 浄 日
3
洗浄方法
使 用 日
使 用 者
洗 浄 日
4
洗浄方法
使 用 日
使 用 者
洗 浄 日
5
洗浄方法
使 用 日
使 用 者
洗 浄 日
6
洗浄方法
使 用 日
使 用 者
廃
棄
日
30
資料−8
事前調査記録票−環境試料−
調査日
天候
年
月
日
曜日
記録者
℃ 湿度
% 風向
気温
m/s
風速
試料採取者への伝達事項
事業場名
(担当者
)
所在地
業種
発生源施設の種類
従業員数、敷地面積及び生産・処理規模
名、
m3、
原燃料の種類、性状及び使用量
臭質
臭気強度
脱臭装置の有無、処理方式
無・有(
簡易測定
方式)
苦情の有無及び苦情発生時の状況
無・有(
備考、その他
)
試料採取計画
<工程フロー図>
<発生源施設の臭気発生状況>
(稼働時間
高
:
∼
:
)
(
中
工
)程
低
停
燃焼範囲(Min
∼Max
℃)
燃焼稼働(連続・断続)
31
着火時間(
:
)消火時間(
:
)
事前調査記録票−環境試料−(記入例)
記録者
調査日 2002 年 8 月 1 日 木 曜日
気温 28.5℃ 湿度 60 % 風向 N
天候
晴
事業場名
○○資源リサイクルセンター
(担当者
環境 太郎
風速 0.6
m/s
試料採取者への伝達事項
井伊 香
)
事業場からは複数箇所で臭気が発生してい
るので、試料採取当日に採取地点を風向等
により決定すること。
所在地
○○県○○市○○町1丁目1番地
業種
レンダリング、フェザーミール
採取器材は複数持参すること。
発生源施設の種類
クッカー排気、乾燥機排気、工場雰囲気、直燃排気、
土壌脱臭、汚水排水施設
事業場内の作業の進行状況を確認のうえ、
試料の採取を実施すること。
従業員数、敷地面積及び生産・処理規模
6 名、 5000 m3、 800トン/年
長靴持参のこと。
原燃料の種類、性状及び使用量
A重油、1000L/月
排ガス臭
アンモニア臭
臭質
臭気強度
3
脱臭装置の有無、処理方式
無・有( 直接燃焼、土壌脱臭
簡易測定
方式)
苦情の有無及び苦情発生時の状況
無・有( 住居地域へ風向が変わったときに発生
)
備考、その他
現場写真 有り
試料採取計画
<工程フロー図>
試料運搬
(トラック)
工場内搬入
クッカー
乾燥機
倉庫
雰囲気
土壌脱臭
直接燃焼脱臭
大気
煙突排気
<発生源施設の臭気発生状況>
(稼働時間
高
直
( 燃
中
工
)程
低
停
8
9
10
11
12
13
14
15
8:00 ∼ 17:30 )
16
17
18
燃焼範囲(Min 800∼Max 900℃) 燃焼稼働(連続・断続) 着火時間( 9:00 ) 消火時間(16:00)
32
事前調査記録票−排出口試料−
調査日
天候
年
月
気温
日
曜日
記録者
℃ 湿度
% 風向
事業場名
m/s
風速
試料採取位置
(担当者
)
所在地
採取口(フランジ等)の有無、寸法、実煙突高さ
業種
排出ガスの温度
排出口の数
排出ガスの水分量
測定対象排出口No.
ダクト内の圧力
発生源施設の種類
空気の漏れ込み等
原燃料の種類、性状及び使用量
足場の状況
臭質
電源の有無、採取位置からの距離
脱臭装置の有無、処理方式
無・有(
方式)
簡易測定
苦情の有無及び苦情発生時の状況
無・有(
)
備考、その他
試料採取計画
<排ガス処理フロー図>
<発生源施設の稼働状況>
(稼働時間
高
:
∼
:
)
(
中
工
)程
低
停
燃焼範囲(Min
∼Max
℃)
燃焼稼働(連続・断続)
試料採取者への伝達事項(特に必要な器材等)
33
着火時間(
:
)消火時間(
:
)
事前調査記録票−排出口試料−(記入例)
記録者
調査日 2002 年 8 月 1 日 木 曜日
天候
晴
気温 28.5℃ 湿度 60 % 風向 N
事業場名
○○資源リサイクルセンター
井伊 香
(担当者
環境 太郎
風速 0.6
m/s
試料採取位置
直燃設置施設屋上の煙突
)
所在地
○○県○○市○○町1丁目1番地
採取口(フランジ等)の有無、寸法、実煙突高さ
150mmφ、H0=15m
業種
レンダリング、フェザーミール
排出ガスの温度
800℃
排出口の数
3(煙突1、倉庫換気扇2)
排出ガスの水分量
多い
測定対象排出口No.
煙突1
ダクト内の圧力
+圧
発生源施設の種類
クッカー、乾燥機
空気の漏れ込み等
無し
原燃料の種類、性状及び使用量
A重油、1000L/月
足場の状況
はしごが必要
臭質
排ガス集(刺激臭)
電源の有無、採取位置からの距離
有・30m(延長コードが必要)
脱臭装置の有無、処理方式
無・有( 直接燃焼
方式)
苦情の有無及び苦情発生時の状況
無・有( 住居地域へ風向が変わったときに発生 )
簡易測定
備考、その他
直燃入口 アンモニア200ppm(検知管○○社3M)
直燃 排ガス測定記録有り 現場写真有り
試料採取計画
<排ガス処理フロー図>
クッカー
熱交換器
乾燥機
熱交換器
直燃
排気
<発生源施設の稼働状況>
(稼働時間
高
直
( 燃
中
工
)程
低
停
8
9
10
11
12
13
14
15
8:00 ∼ 17:30 )
16
17
18
燃焼範囲(Min 800∼Max 900℃) 燃焼稼働(連続・断続) 着火時間( 9:00 ) 消火時間(16:00)
試料採取者への伝達事項(特に必要な器材等)
採取導管(ステンレスパイプ)、ドレンポット(2個)、冷却槽(水冷)を持参
クッカー、乾燥機の稼働状況、直燃の燃焼温度を確認してから試料採取。NOx検知管で確認
34
資料−9
現場記録図面
調査日
天候
年
月
気温
日
曜日
記録者
℃ 湿度
% 風向
備考(伝達事項)
事業場名
地域区分
住居
A地域
商業
B地域
準工業 その他
(
)
工業
方位
風速
規制地域内・規制地域外
臭気指数・
・物質濃度 規制基準
1 号規制(
)
2 号規制(
)
3 号規制(
)
排出口の状況(側面図)
凡例)風向:←
試料採取予定地点:●
苦情発生地点:★
35
m/s
現場記録図面(記入例)
調査日 2002 年 8 月 1 日 木 曜日
記録者
天候
気温 28.5℃ 湿度 60 % 風向 N
晴
方位
N
m/s
備考(伝達事項)
事業場名
○○資源リサイクルセンター
地域区分
住居
A地域
商業
B地域
準工業 その他
(
)
工業
環境 太郎
風速 0.6
規制地域内・規制地域外
臭気指数・
・物質濃度 規制基準
1 号規制(臭気指数12
)
2 号規制(計算ソフトで算出)
3 号規制(臭気指数28
)
排出口の状況(側面図)
凡例)風向:←
試料採取予定地点:●
苦情発生地点:★
採取孔
土壌脱臭
入口 ●
(工場内雰囲気)
土壌脱臭●(出口)
事務所
クッカー
←熱交換器
乾燥機
←熱交換器
工場内臭気の漏洩
駐車場
汚水
直燃
●
↑
煙突(2号規制)
倉庫
↑
換気扇
↑
換気扇
● 敷地境界線(1号規制)
★ (住居)
36
排水
処理
施設
●
排水
(3 号規制)
資料−10
試料採取実施計画票
作成日
年
月
日(
)
記入者(
事業場名
敷地境界の状況
(担当者
)
所在地
業種
試料採取予定日
事前調査
年
月
日(
)
年
月
日(
)
有・無
環境試料
採取場所
採取予定時刻
試料数
(試料数合計
排出口試料
採取場所
採取予定時刻
排出口の状況
)
試料数
(試料数合計
)
排ガス流量の測定(有・無)
排ガス水分の測定(有・無)
排出水試料
採取場所
排出水の状況
採取予定時刻
試料数
(試料数合計
その他試料
採取場所
)
その他の状況
採取予定時刻
試料数
(試料数合計
)
日(
)
試料採取時の注意事項
嗅覚測定実施予定日
年
月
37
)
試料採取実施計画票(記入例)
作成日 2002
年 8 月
5 日( 月 )
事業場名
○○資源リサイクルセンター
(担当者
所在地
○○県○○市○○町1丁目1番地
記入者(
井伊 香
業種
レンダリング、フェザーミール
事前調査
年
8
年
8
月
8
月
1
日(
木
日(
木
)
有・無
2002
環境試料
採取場所
敷地境界線 風下
採取予定時刻
10:00
採取予定時刻
14:00
2
(試料数合計
排出水試料
採取場所
排水処理施設
2
間が変化するので注意すること。
排出口の状況
試料の採取場所は直燃が設置されて
いる建屋の屋根上で実施。
当日、ハシゴが必要。
高所作業のため、安全帯を装着のこ
と。
排ガスは高温のため試料採取導管
はステンレス製パイプを使用。
ドレンポットにより試料ガスの冷却、水
分の除去を実施。
試料の採取はクッカー、乾燥機が稼動
) 時に実施すること。
試料採取時には稼動確認のこと。
排出水の状況
柄杓で採水
採取予定時刻
12:00
試料数
臭気指数 1
(試料数合計
その他試料
採取場所
土壌脱臭入口・出口
)
試料数
臭気指数 1
NOx検知管 1
排ガス流量の測定(有・無)
排ガス水分の測定(有・無)
予備の採取袋を準備
) 当日の試料の搬入時間により操業時
試料数
臭気指数 2
(試料数合計
排出口試料
採取場所
直燃煙突排気
採取予定時刻
11:00
1
)
試料数
臭気指数 各1
NH3検知管 各1
(試料数合計 4
)
試料採取時の注意事項
その他の状況
土壌脱臭出口は土壌表面で採取。
採取時に風の影響を受けないよう
採取場所の周りを大きめのダンボール
などを置いて採取を工夫。
足下 簀の子、板必要。
事業場周辺の臭気を確認の事。
事業場内で作業時に嗅覚疲労、順応
に留意する事
排ガス測定:高温・高所注意
調査時には始業時から現場待機
現場写真を参照の事
嗅覚測定実施予定日
2002
)
事業場内は風向が建物の影響で変化
するのでにおいが一番強い時に複数
の試料を採取する。
試料採取予定日
2002
環境 太郎
敷地境界の状況
敷地境界の臭気は事業場雰囲気臭
) 気の漏洩が主であるので操業状況を
確認して作業がピ-クの時に採取す
る。
年
8
月
9
日(
38
金
) 作業時安全確認を徹底する事
資料−11
試料採取記録票−環境試料−
採取日
年
月
日(
)
事業場名
記録者(
)
敷地境界の状況
(担当者
)
所在地
業種
発生源施設の種類
原燃料の種類、性状及び使用量
臭質
脱臭装置の有無、処理方式
無・有(
方式)
施設の稼働状況
苦情発生時の状況
試料採取
試料No.
場所
時刻
臭質
39
臭気強度
天候
気温
湿度
風向
風速
試料採取記録票−環境試料−(記入例)
採取日 2002
年 8 月
8 日( 木 )
事業場名
○○資源リサイクルセンター
井伊 香
(担当者
所在地
○○県○○市○○町1丁目1番地
環境 太郎
記録者(
)
敷地境界の状況
土壌脱臭
(臭気噴出)
)
業種
レンダリング、フェザーミール
工場
工場臭気の漏洩
クッカー
乾燥機
発生源施設の種類
工場雰囲気(漏洩)
土壌脱臭噴出臭気(追加)
原燃料の種類、性状及び使用量
A重油、1000L/月
直燃
脱臭
臭質
①② アンモニア臭、動物臭
③ 同上および土壌臭(鶏糞様臭)
①
脱臭装置の有無、処理方式
無・有( 土壌脱臭
②
③
方式)
施設の稼働状況
8:00~17:30
クッカー、乾燥機が設置されている工場の雰囲気の
漏洩臭気を敷地境界線でピーク時に採取
苦情発生時の状況
土壌脱臭の臭気を敷地境界線で採取
北風時に風下民家からの苦情有り
試料採取
試料No.
場所
時刻
①
敷地境界風下
②
③
臭質
臭気強度
天候
気温
10:00
アンモニア臭、動物臭 強度3
曇
27.0℃、75% N 1.0m/s
敷地境界風下
10:10
アンモニア臭、動物臭 強度3.5
曇
28.0℃、75% NW 1.2m/s
敷地境界風下
10:35
アンモニア臭、動物臭 強度2.5
曇
28.0℃、72% N 0.8m/s
(コメント)
①② 臭気採取時ににおいは間欠的で強さに変化があった
③は土壌脱臭の噴出箇所と同じにおいが敷地境界線で感じられたので追加採取
40
湿度
風向
風速
試料採取記録票−排出口試料−
採取日
天候
年
月
気温
日
曜日
記録者
℃ 湿度
% 風向
事業場名
風速
m/s
排出口の状況(平面図)
(担当者
)
所在地
業種
測定対象排出口No.
発生源施設の種類
原燃料の種類、性状及び使用量
臭質
脱臭装置の有無、処理方式
無・有(
方式)
施設の稼働状況
試料採取位置
試料No.
排出口の状況(側面図)
採取口
採取時刻
測定口における排出ガスの排出速度
m/s
排出ガスの温度
℃
排出ガスの水分量
%
測定口におけるダクトの断面積
m2
排出口の口径
m
排出口の実高さ
m
排出口から敷地境界までの最短距離
排出口の向き、形状
上向き・横向き・斜め下向き・下向き・陣笠
その他(
)
周辺最大建物高さ(敷地内にある建物で、排出口と建物との距
離が建物高さの10倍以内であり、その中で建物高さが最高のもの)
m
m
備考
上記建物の敷地境界までの最短距離
m
41
試料採取記録票−排出口試料−(記入例)
採取日 2002 年 8 月 8 日 木 曜日
記録者
天候
曇
気温 28.0℃ 湿度 70 % 風向 N
事業場名
○○資源リサイクルセンター
井伊 香
(担当者
環境 太郎
風速 1.0
m/s
排出口の状況(平面図)
)
熱交換器
所在地
○○県○○市○○町1丁目1番地
業種
レンダリング、フェザーミール
測定対象排出口No.
煙突 1
発生源施設の種類
クッカー、乾燥機
原燃料の種類、性状及び使用量
A重油、1000L/月
↑
煙突 直燃脱臭
臭質
排ガス臭
脱臭装置の有無、処理方式
無・有( 土壌脱臭
方式)
施設の稼働状況
8:00~17:30
試料採取位置
煙突 測定孔
試料No.
④
採取口
煙突1 排気
排出口の状況(側面図)
採取時刻
14:00~14:05
煙突
←採取孔
測定口における排出ガスの排出速度
2.5 m/s
排出ガスの温度
820
℃
15
%
排出ガスの水分量
測定口におけるダクトの断面積
0.07
m2
排出口の口径
0.3
排出口の実高さ
15
m
排出口から敷地境界までの最短距離
m
排出口の向き、形状
上向き・横向き・斜め下向き・下向き・陣笠
その他(
)
周辺最大建物高さ(敷地内にある建物で、排出口と建物との距離
が建物高さの10倍以内であり、その中で建物高さが最高のもの)
10
m
備考
NOx 40ppm (検知管○○社11S使用)
10
m
30
m
上記建物の敷地境界までの最短距離
42
資料-12
嗅覚測定実施記録票-環境試料-
(
試
料
測 定 機 関
臭 気 指 数
オペレータ
臭 気 濃 度
臭
試 験 日 時
年
月
日
分
数
注 入 量
1
2
3
mL
1
2
3
mL
希釈倍数
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
正 解
定
数
不 正 解 数
不 明
~
時
気 温
回
パネル
質
時
試 験 場 所
)
数
平均正解率
<その他特記事項>
43
分(所要時間
℃
1
2
3
mL
1
分)
湿 度
2
%
3
mL
1
2
3
mL
嗅覚測定実施記録票-排出口試料-
(
試
料
測定機関
臭 気 指 数
オペレータ
臭 気 濃 度
臭
質
時
分
試 験 日 時
年
月
日
試 験 場 所
mL
mL
対 数 値
付臭番号
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
定
付臭番号
回
答
臭気強度
判
℃
mL
希釈倍数
回
時
気 温
注 入 量
パネル
~
定
44
mL
)
分(所要時間
湿 度
mL
分)
%
mL
パネルの
個人閾値
(対数値)
資料-13
嗅覚測定結果報告用紙
年
月
日
件名:
測定機関
印
オペレータ
(臭気判定士免状番号
)
嗅覚測定結果を以下のとおり報告します。
【測定結果】
試料名称
採取日
測定日
臭気指数
測定方法
(臭気濃度)
(環境・排出口・排出水)法
【パネル】
パネル 氏名(又はイニシャル)
年齢
性別
職
業
経
験
(どちらか○印)
嗅覚検査合格日
A
歳
回・年
年
月
日
B
歳
回・年
年
月
日
C
歳
回・年
年
月
日
D
歳
回・年
年
月
日
E
歳
回・年
年
月
日
F
歳
回・年
年
月
日
【添付資料】
別添 1 事前調査記録票
別添 2 現場記録図面
別添 3 試料採取実施計画票
別添 4 試料採取記録票
別添 5 嗅覚測定実施記録票
(委託の場合:別添 6 精度管理実施状況報告書)
45
資料-14
嗅覚測定法精度管理用チェックリスト
Ⅰ.パネルの選定
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
基準臭液の保管方法は適切か?
基準臭液は有効期限を過ぎていないか?(製造後 2 年以内、開封後 1 年以内)
におい紙の保管方法は適切か?
におい紙の無臭性は保たれているか?
試験室は無臭が保たれているか?
試験室は適切な温度と湿度が保たれているか?
試験室は被験者がリラックスし、落ち着いて、かつ集中できる環境か?
におい紙に基準臭液を付けてから速やかに嗅がせているか?
においを嗅ぐ際に基準臭液が垂れたり鼻先に触れたりしていないか?
使い終わったにおい紙は適切な方法で捨てているか?
Ⅱ.試料採取用器材
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
試料採取用真空瓶の保管方法は適切か?
試料採取用真空瓶の無臭性は保たれているか?
試料採取用真空瓶の数は十分か?
試料採取用吸引瓶の保管方法は適切か?
試料採取用吸引瓶の気密性は保たれているか?
試料採取用吸引瓶の数は十分か?
試料採取袋の保管方法は適切か?
試料採取袋の無臭性は保たれているか?
試料採取袋の枚数は十分か?
試料採取用ポンプの保管方法は適切か?
試料採取用ポンプの無臭性は保たれているか?
試料採取用ポンプの交換部品の数は十分か?
試料採取用吸引ケースの保管方法は適切か?
試料採取用吸引ケースの気密性は保たれているか?
導管の保管方法は適切か?
導管の無臭性は保たれているか?
導管の材質は適切か?(ポリふっ化樹脂、ガラス、ステンレスなど)
導管の数は十分か?
凝縮水トラップ、ダスト除去用ガラスウールは用意できているか?(排出口試料)
Ⅲ.試料採取
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
必要に応じて事前調査を行っているか?
採取場所は適切か?(苦情発生時の状況を反映させ、風向などを考慮)
採取時間は適切か?(環境試料は 6~30 秒、排出口試料は 1~3 分)
判定試験に十分な量を採取しているか?(環境試料は 10L、排出口試料は 3~20L)
臭気の変動パターンを把握してピーク時に採取しているか?(環境試料)
排ガス中の水分及びダストの影響を除去しているか?(排出口試料)
もれによる空気の吸い込みなどはないか?(排出口試料)
試料採取袋内を試料で数回置換してから採取しているか?
複数試料を採取する際は前の試料の影響が及ばないように注意しているか?
環境試料と排出口試料の両方を採取する場合は環境試料を先に採取しているか?
試料採取袋の破れやコックのゆるみはないか?
運搬や保管の際は直射日光、高温、他の臭気による汚染を避けているか?
46
Ⅳ.判定試験用器材
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
空気注入用ポンプの保管方法は適切か?
空気注入用ポンプの無臭性は保たれているか?
無臭空気供給用器具の保管方法は適切か?
無臭空気供給用器具の活性炭は適切な方法で洗浄しているか?
無臭空気供給用器具の活性炭の無臭性は保たれているか?
無臭空気供給用器具のフィルターは適切な方法で洗浄しているか?
無臭空気供給用器具のフィルターの無臭性は保たれているか?
無臭空気供給用器具の分配管の無臭性は保たれているか?
注射器の保管方法は適切か?
注射器の無臭性は保たれているか?
注入量に応じた容量の注射器及び注射針を用意しているか?(大容量の注射器には太穴型注射針)
注射器及び注射針の数は十分か?
におい袋の保管方法は適切か?
におい袋の無臭性は保たれているか?
におい袋の数は十分か?
鼻当ての保管方法は適切か?
鼻当ての無臭性は保たれているか?
鼻当ての数は十分か?
シリコンゴム栓の保管方法は適切か?
シリコンゴム栓の無臭性は保たれているか?
シリコンゴム栓の数は十分か?
回答用紙及び集計用紙の内容は適切か?
Ⅴ.判定試験
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
試料採取後できるだけ早い時期に行っているか?(原則として当日、遅くとも翌日午前中)
試料採取時と比較して臭気の強度や質に著しい変化はないか?
パネルは全員嗅覚検査に合格しているか?
パネルの体調や心理状態(緊張、イライラなど)に問題はないか?
パネルの化粧や飲食、喫煙のにおいは影響していないか?
パネルは判定試験の手順を十分理解しているか?
パネルが疲労しない程度の試料数か?
判定試験室は無臭が保たれているか?
判定試験室は適切な温度と湿度が保たれているか?
判定試験室はパネルがリラックスし、落ち着いて、かつ集中できる環境か?
試料調製室は無臭が保たれているか?
試料調製室は適切な温度と湿度が保たれているか?
無臭空気の無臭性は保たれているか?
におい袋は十分洗浄できているか?
注射器は試料で数回共洗いしてから使用しているか?
注射針はしっかり取り付けられているか?
ガスタイトシリンジのプランジャーチップは緩くなっていないか?
注射器で正確な量を注入できているか?
当初希釈倍数の強度は強すぎたり弱すぎたりしないか?
各希釈段階の強度に異常はないか?
嗅ぎ方は統一されているか?(鼻当ての有無、嗅ぐ強さ、外気による希釈の影響など)
付臭におい袋を選ぶ判断基準は統一されているか?(においの有無、強度、質)
パネルの不用意な発言や私語の多さが他のパネルの判断に影響していないか?
パネルの臭気強度の回答に不自然な点はないか?(希釈したのに強度が大きくなるなど)
付臭におい袋の番号を控えるときに書き間違いはないか?
配付するにおい袋に間違いはないか?
回答用紙の番号を集計するときに写し間違いはないか?
臭気指数や臭気濃度の算出過程で計算間違いはないか?
事前調査結果や試料採取状況などを勘案して結果に不審点はないか?
47
資料-15
嗅覚測定法精度改善取組記録票
(
記入日
年
試
月
日(
)
) 記入者
料
採取日
年
月
日(
) 試験日
年
月
日(
)
具体的内容
問題事例
関連するチェックリスト番号
改善策
効
果
結果の
生かし方
□
□
□
□
□
□
SOP に記述を追加
チェックリストに項目を追加
(
(
特段の行動なし
その他(
)に周知徹底
)に報告
)
確認者1
確認日
年
月
日(
)
確認者2
確認日
年
月
日(
)
48
資料-16
精度評価試験の実施方法
1.概要
測定機関の精度評価を行う試験は、一般に同一の試料を複数の測定機関に配付
して繰り返し測定する、いわゆる共同評価実験により行われる。ただし、十分
信頼できる標準物質が存在し、測定方法の精度が既知の場合には、この標準物
質を用いて測定機関の併行精度やかたよりを評価することができる。ここでは、
標準物質として酢酸エチルを用いた精度評価試験の詳細について述べる。なお、
ここで用いる併行精度、再現精度及び嗅覚閾値の各値については、今後も適宜
データを蓄積して信頼性を高める必要がある。
2.標準物質を用いた精度評価
2.1 測定試料
環境試料の測定方法の精度評価試験には、酢酸エチルを約 50ppm 注1,2)に調
製したものを用いる。また、排出口試料の測定方法の精度評価試験には、酢酸
エチルを約 2000ppm 注1,3)に調製したものを用いる。
注1)濃度が異なることによって併行精度などが異なる可能性があることから、本来は複
数の濃度段階で行う必要があるが、現状では 1 段階としている。
注2)濃度の調製は、濃度既知の標準ガスボンベから分取する、標準ガス発生装置を用い
る、無臭空気を注入した臭袋に一定量の酢酸エチルを気化させるなどの方法で行う。
測定は試料調製後、速やか(半日程度以内)に行う必要がある。また、可能であれば
「特定悪臭物質の測定の方法」(昭和 47 年環境庁告示第 9 号)に従って濃度測定を
実施する。
注3)上記注2)に示す方法と同様の方法で調製する。
2.2 測定方法
測定は「臭気指数及び臭気排出強度の算定の方法」(平成 7 年環境庁告示第 63
号)に従って行い、閾値濃度の常用対数値を計算する。独自に手順の改善など
を行った場合には、その点について明記する。なお、測定機関の精度を評価す
るためには、繰り返し測定をしなければならない。
2.3 結果の評価に用いる値
結果の評価に用いる値は表-Aに示す通りである。
表-A
精度評価試験の結果の評価に用いる値
測定方法
参照値 μ
環境試料
排出口試料
-0.10
-0.26
併行標準偏差 再現標準偏差 室間標準偏差
σr
σR
σL
0.13
0.24
0.20
0.17
0.22
0.15
49
2.4 結果の評価
1)併行標準偏差の既知の値を用いる方法
測定結果は、あらかじめ JIS Z 8402-2 に示されたグラッブズの検定により、
外れ値の検討をしておく。以降、JIS Z 8402-4 に従って評価を行う。
①測定機関内精度のチェック
まず、n 個の繰り返し測定結果 xi (i=1~n)から、平均値 x 及び測定機関内
標準偏差 s r を以下の式によって求める。
x=
1 n
∑ xi
n i =1
sr =
1 n
(xi − x )2
∑
n − 1 i =1
(1)
⎛ n ⎞
⎜ ∑ xi ⎟
n
2
xi − ⎝ i =1 ⎠
∑
n
= i =1
n −1
2
(2)
続いて、以下のように C" を計算し、 C"crit と比較する。
⎛s
C" = ⎜⎜ r
⎝σr
C"crit =
⎞
⎟⎟
⎠
2
(3)
χ 2 (1−α ) (ν )
ν
(4)
ここで、σ r は併行標準偏差で既知の値(表-A)、χ 2 (1−α ) (ν ) は自由度ν = n − 1 の χ 2
分布の (1 − α ) 分位点で、通常、 α = 0.05 とする。比較の結果、 C" > C"crit ならば、
s r と σ r は統計的に有意な差があるということになるので、測定が正しく行われ
ているか、あるいは測定方法自体に問題がないか検討する。 C" ≤ C"crit ならば、
統計的有意差があるとはいえないので、引き続き測定機関のかたよりを評価す
る。
②測定機関のかたよりのチェック
以下の式によって、測定機関のかたよりの推定値 Δ̂ 及び Aw を計算する。
Δˆ = x − μ
(5)
1.96
n
(6)
Aw =
ここで、 μ は参照値である(表-A)。次に、以下の式によって測定機関のかた
50
よりの 95%信頼区間を求める。
Δˆ − Awσ r ≤ Δ ≤ Δˆ + Awσ r
(7)
この区間 Δ が 0 を含めば、測定機関のかたよりは統計的に有意ではないという
ことになる。0 を含まなければ、統計的な有意差があるということになり、測定
結果及び測定方法について検討する必要がある。
2)併行標準偏差及び再現標準偏差の既知の値を用いる方法
測定結果は、あらかじめ JIS Z 8402-2 に示されたグラッブズの検定により、
外れ値の検討をしておく。以降、JIS Z 8402-6 に従って評価を行う。
①測定機関内精度のチェック
(4)式までは 1)の方法と同様であり、 C" ≤ C"crit ならば、引き続いて測定機関の
かたよりを評価する。
②測定機関のかたよりのチェック
容認の基準は次式に示す通りである。
x − μ < 2 σ R2 − σ r2
n −1
n
(8)
ただし、σ R は再現標準偏差で既知の値である(表-A)
。上式が成立しなければ、
測定結果及び測定方法について検討する必要がある。
3.共同実験による測定機関の評価
上述の試料以外に、
濃度が未知である標準物質(酢酸エチル)
酢酸エチル以外の物質
実発生源の臭気
などを用いて試験室の精度を評価する場合には、以下に述べる共同評価実験を
行う。
注4)一般の分析においては、例えばすでに十分信頼の得られている試験室での測定結果
との比較によって、かたよりなどを評価することも可能ではあるが、嗅覚測定法の場
合、測定結果はパネルの嗅力に依存し、いわゆる真の値と呼ばれるものが測定不可能
であることから、このような方法は推奨されない。
注5)評価には、測定法の併行標準偏差及び再現標準偏差を用いる。嗅覚測定法の場合、
これらは各臭気物質に対するパネルの嗅力分布にも依存すると考えられるため、臭気
ごとに異なる可能性がある。この点については、今後各臭気に対する知見を蓄積する
必要がある。
注6)実発生源や濃度未知の試料については、測定結果として臭気指数しか得られない。
濃度既知の単一物質の場合は臭気指数のほか、閾値が算出される。閾値を用いる場合
51
はその対数値を求めて下記の評価を行う。臭気指数を用いる場合は臭気指数を 10 で
除した値を求めて下記の評価を行う。
3.1 参加測定機関数と繰り返し回数
参加測定機関数は多いほど望ましいが、極端に多いのは現実的ではない。ま
た、繰り返し回数は 3 回以上とする。
3.2 試料の配付
測定試料の配付は、臭気指数が未知であることを保証するためにも、できれ
ば試験に参加しない第三者機関が行うことが望ましい。臭気指数があまりに大
きいと2段階希釈を行う必要性が生じるので、配付試料の臭気指数の範囲はあ
らかじめ十分に検討されなければならない。また試料の安定性の問題から、試
料の調製から測定までの時間はできるだけ短いことが望ましく、かつ各測定機
関における測定の時間的スケジュールを統一する必要がある。
3.3 測定方法
2.2 と同様の方法で測定する。
3.4 結果の評価
測定機関内精度については、2.4 と同様の方法で評価する。
測定機関のかたよりについては、JIS Z 8402-6 に従って評価する。まず、各
測定機関 j(j=1~p)について測定結果の標準偏差 s j を(2)式により求める。そ
して(9)式及び(10)式により併行分散 sr 2 及び室間分散 sL 2 を求める。
∑ (n
p
sr =
2
j =1
j
− 1)s j
∑ (n
p
j =1
2
(9)
− 1)
sd − sr
n
2
sL =
j
2
2
(10)
ここで、
p は参加測定機関数、n j は測定機関 j における繰り返し測定回数である。
また、
p
⎤
1 p
1 ⎡ p
2
2
(
)
(
)
(
)
−
=
−
n
x
x
n
x
x
nj ⎥
⎢∑ j j
∑
∑
j
j
p − 1 j =1
p − 1 ⎣ j =1
j =1
⎦
2
sd =
2
n=
1 p
∑nj
p j =1
(11)
(12)
52
p
x=
∑n
j =1
j
xj
(13)
p
∑n
j =1
j
であり、x j は試験室 j における平均値である。s L 2 は既知の室間分散 σ L 2 と比較さ
れる。容認の基準は次式に示す通りである。
n sL + sr
χ 2 (1−α ) (ν )
≤
2
2
ν
n σ L +σ r
2
2
(14)
ここで、有意水準 α は 0.05 とする。もし、(14)式に適合するならば、 s L 2 は容認
でき、すべての試験室が満足すべき結果を得たと判断できる。基準が適合しな
いときには、グラッブズの検定統計量を計算することにより、最も外れている
結果を見つけ、そこで問題となる試験室の測定結果を除外し、残った試験室に
ついて再び室間分散を推定する。もし修正した室間分散が(14)式を満たしている
ならば、これらの試験室は承認される。そうでなければ、グラッブズの検定の
統計量を再計算し、必要ならばこの手順を繰り返す。ただし、多くの試験室が
外れ値となる場合にはこの方法は適さず、評価を行う前に全データを検査し直
す必要がある。
53
資料-17
精度評価試験の実施例
1.標準物質を用いた精度評価例
酢酸エチル 1800ppm の試料を作成し、排出口試料の方法で嗅覚測定を3回繰
り返し行った。このときの結果を表-Bに示す。なお、試料の酢酸エチル濃度
を環境庁告示の特定悪臭物質の測定方法により求めたところ、1740ppm であっ
た。
表-B
精度評価試験における臭気指数測定結果の例
a. 各測定におけるパネルの個人閾
値(対数値)の平均値(上下カット後
の 4 人の平均値)
3.74
3.99
3.49
b. 酢酸エチル濃度の対数値
(=log 1740)
c. 閾値濃度の対
数値(= b-a)
3.24
-0.50
-0.75
-0.25
上記の結果から、閾値濃度の対数値の平均値 x = -0.50、標準偏差 s r = 0.25 と
なる。
ここでは、併行標準偏差及び再現標準偏差の既知の値を用いる方法で結果の
評価を行うことにする。まず、機関内精度のチェックを(3),(4)式に基づいて行
うと、以下のようになる。
⎛s
C " = ⎜⎜ r
⎝σ r
C"crit =
2
⎞
0.25 ⎞
⎟⎟ = ⎛⎜
⎟ = 2.2
⎝ 0.17 ⎠
⎠
2
χ 2 (1−α ) (ν ) χ 2 (0.95 ) (2) 5.99
=
=
= 3.00
2
2
ν
したがって、機関内精度は満足できる値であるといえる。続いて、かたよりの
チェックを(8)式に基づいて行うと、以下のようになる。
x − μ = − 0.50 − (− 0.26 ) = 0.24
2 σ R2 − σ r2
n −1
3 −1
= 2 0.22 2 − 0.17 2
= 0.34
n
3
したがって、かたよりの容認基準も満たされ、満足な結果が得られたと判断で
きる。これらの例は排出口試料の測定方法に関するものであるが、環境試料の
場合も同様である。
54
2.共同実験による測定機関の評価例
10 測定機関において 3 回ずつ繰り返し測定を行い、臭気指数として表-Cの
ような結果を得た。以降の計算には、臭気指数を 10 で除した表-Dの値を用い
る。
表-C
測定機関
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
表-D
試験室
共同実験の結果例
32
35
36
34
34
34
24
35
34
35
臭気指数
34
35
32
34
36
35
25
32
32
36
35
32
32
35
35
35
22
35
32
34
測定機関内精度の計算
臭気指数/10
平均
標準偏差
y
sj
s j /σ 2
2
1
3.2
3.4
3.5
3.37
0.15
0.81
2
3.5
3.5
3.2
3.40
0.17
1.04
3
3.6
3.2
3.2
3.33
0.23
1.84
4
3.4
3.4
3.5
3.43
0.06
0.12
5
3.4
3.6
3.5
3.50
0.10
0.35
6
3.4
3.5
3.5
3.47
0.06
0.12
7
2.4
2.5
2.2
2.37
0.15
0.81
8
3.5
3.2
3.5
3.40
0.17
1.04
9
3.4
3.2
3.2
3.27
0.12
0.46
10
3.5
3.6
3.4
3.50
0.10
0.34
全平均
3.30
Sy j
0.337
55
まず、測定機関内精度を評価する。 χ 2 (0.95 ) (2) / 2 = 5.99 / 2 = 3.00 であるので、表-
Dの値と比較すると、すべての試験室について容認されるという結果になった。
引き続いて、かたよりを評価すると以下のようになる。
n sL + sr
0.341
=
= 3.5
2
2
0
.096
n σL +σr
2
2
χ 2 (0.95 ) (9) / 9 = 16.92 / 9 = 1.88 であるので、すべての測定機関で容認されるとはいえ
ない。最も大きく外れている値は測定機関 7 のものである。測定機関 7 に対す
るグラッブズの統計量の値は以下のようになる。
G = (3.30 − 2.37 ) / 0.337 = 2.76
JIS Z 8402-2 によると、これは限界値を超えており、試験室 7 の結果は除外
される。除外して再度計算すると、以下のようになる。
n sL + sr
2
2
n σL +σr
2
2
=
0.018
= 0.19
0.096
一方、 χ 2 (0.95) (8) / 8 = 15.51 / 8 = 1.94 であるので、測定機関 7 を除いたすべての測
定機関は容認されると考えられる。
56
資料-18
精度管理実施状況報告書
年
月
測定機関:
測定方法:
1.併行条件下における標準臭気の臭気指数の繰り返し測定結果(直近のもの)
測
定
日
年
月
繰り返し回数
日(
)
回
標準臭気
臭気指数測定結果
1
範
2
平 均 値
3
標準偏差
内
訳
調製方法
囲
~
4
5
6
2.標準臭気の臭気指数の定期的測定結果(上記の繰り返し測定以降に実施されたもの)
臭気指数
標準臭気
測定日
備考
測定結果
内訳
調製方法
1
年
月
日(
)
2
年
月
日(
)
3
年
月
日(
)
4
年
月
日(
)
5
年
月
日(
)
6
年
月
日(
)
7
年
月
日(
)
8
年
月
日(
)
9
年
月
日(
)
10
年
月
日(
)
範
囲
平 均 値
標準偏差
3.その他特記事項
57
~
日
資料-19
精度管理に関する用語説明
一次標準【primary standard】
最高の計量性能をもち、同一の量の他の標準への参照なしにその値が特定の範
囲内において受容されるように指定され、又は広く認められた標準。(JIS Q
0030)
最高の特性をもち、同一の量の他の標準への参照なしにその値が認められた標
準。(JIS Z 8103)
かたより【bias】
観測値・測定結果の期待値から真の値を引いた値。現実には真の値の代用とし
て参照値又は合意値が用いられる。(JIS Z 8101-2)
測定値の母平均から真の値を引いた値。(JIS Z 8103)
測定結果の期待値と、採択された参照値との差。(JIS Z 8402-1)
※JIS Z 8402-1 には、「採択された参照値」を「真の値」とすべきであるとの
記述がある。
共同評価実験【collaborative assessment experiment】
同一試料、同じ標準測定方法による、各試験室の測定能力を評価するための多
施設共同実験。(JIS Z 8402-1)
国際標準【international standard】
国際的な合意によって認められた標準であって、当該量の他の標準に値付けす
るための基礎として国際的に用いられるもの。(JIS Z 8103)
誤差【error】
観測値・測定結果から真の値を引いた値。現実には真の値の代用として参照値
又は合意値が用いられる。(JIS Z 8101-2)
測定値から真の値を引いた値。(JIS Z 8103)
国家標準【national standard】
国家による公式な決定によって認められた標準であって、当該量の他の標準に
値付けするための基礎として国内で用いられるもの。(JIS Z 8103)
再現条件→(室間)再現条件
再現精度→(室間)再現精度
再現標準偏差【reproducibility standard deviation】
再現条件で得られた測定結果の標準偏差。(JIS Z 8402-1)
58
(採択された)参照値【(accepted) reference value】
次のようにして得られた、比較のために容認された標準として役立つ値。
a) 科学的原理に基づく理論値又は確定値。
b) ある国家又は国際機関の実験研究に基づく付与値、又は認証値。
c) 科学又は技術集団の主催する共同実験研究に基づく合意値、又は認証値。
d) a),b),c)のいずれにも拠ることができないときは、その量の期待値、す
なわちその測定値の母集団の平均値。(JIS Z 8402-1)(JIS Z 8101-2 でもほ
ぼ同様の表現)
参照値→(採択された)参照値
(室間)再現条件【reproducibility conditions】
同一試料の測定において、試験室・人・日時・装置のすべてが異なっていると
いう繰り返しに関する条件。(JIS Z 8101-2)
同一と見なせるような測定試料について、同じ方法を用い、異なる試験室で、
異なるオペレータが、異なる装置を用いて、独立な測定結果を得る測定の条件。
(JIS Z 8402-1)
(室間)再現精度【reproducibility】
室間再現条件による測定結果の精度。標準偏差で表した場合には(室間)再現
標準偏差、分散で表した場合には(室間)再現分散という。(JIS Z 8101-2)
再現条件による測定結果の精度。(JIS Z 8402-1)
実用標準【working standard】
計器、実量器又は標準物質を、日常的に校正又は検査するために用いられる標
準。(JIS Z 8103)
真度【trueness】
真の値からのかたよりの程度。かたよりが小さい方が、より真度が良い、又は
高いという。現実には真の値の代用として参照値又は合意値が用いられる。
(JIS Z 8101-2)
十分多数の測定結果から得られた平均値と、採択された参照値との一致の程度。
ふつう真度はかたよりによって表される。(JIS Z 8402-1)
※JIS Z 8402-1 には、「採択された参照値」を「真の値」とすべきであるとの
記述がある。
真の値【true value】
ある与えられた特定の量の定義と合致する量。これは理想化された完全な測定
によってのみ得られる値である。(JIS Z 8101-2)(JIS Z 8103 でもほぼ同様
の表現)
59
精確さ【accuracy】
観測値・測定結果と真の値との一致の程度。真度と精度を総合的に表したもの。
現 実 に は 真 の 値 の 代 用 と し て 参 照 値 又 は 合 意 値 が 用 い ら れ る 。( JIS Z
8101-2)
個々の測定結果と採択された参照値との一致の程度。(JIS Z 8402-1)
※JIS Z 8402-1 には、「採択された参照値」を「真の値」とすべきであるとの
記述がある。
精度【precision】
同一試料に対し、定められた条件の下で得られる独立な観測値・測定結果のば
らつきの程度。ばらつきが小さい方が、より精度が良い、又は高いという。
(JIS Z 8101-2)
定められた条件の下で繰り返された独立な測定結果の間の一致の程度。(JIS
Z 8402-1)
※JIS Z 8103 における「精度」は、JIS Z 8101-2 及び JIS Z 8402-1 の「精確
さ」に相当する。
トレーサビリティ【traceability】
不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基
準に結びつけられ得る測定結果又は標準の値の性質。基準は通常、国家標準又
は国際標準である。(JIS Z 8103)(JIS Q 0030 でもほぼ同様の表現)
二次標準【secondary standard】
同一の量の一次標準との比較によって値が付与された標準。(JIS Q 0030)
(JIS Z 8103 でもほぼ同様の表現)
認証標準物質【certified reference material: CRM】
認証書の付いた標準物質で、一つ以上の特性値が、その特性値を表す単位を正
確な現示へのトレーサビリティが確立された手順によって認証され、各認証値
にはある表記された信頼水準での不確かさが付いているもの。(JIS Q 0030)
一つ以上の特性値が認証された、認証書付の標準物質。特性値を表す単位につ
いて、その正確な現示のためのトレーサビリティが確立され、かつ表記された
信頼水準での不確かさが認証書に付されるという手続きによって、特性値は認
証される。(JIS Z 8103)
外れ値【outlier】
観測値の集合のうち、異なった母集団からのもの、又は計測値の過ちの結果で
ある可能性を示す程度に他と著しくかけ離れた観測値。(JIS Z 8101-1)
一組の値のうち、他の値と不整合な値。(JIS Z 8402-1)
60
ばらつき【dispersion, imprecision】
観測値・測定結果の大きさがそろっていないこと。又は不ぞろいの程度。ばら
つきの大きさを表すには、標準偏差などを用いる。(JIS Z 8101-2)(JIS Z
8103 でもほぼ同様の表現)
標準物質【reference material: RM】
測定装置の校正、測定方法の評価、又は材料に値を付与することに用いるため
に一つ以上の特性値が十分に均一で、適切に確定されている材料又は物質。
(JIS Q 0030)(JIS Z 8103)
併行条件【repeatability conditions】
同一試料の測定において、人・日時・装置のすべてが同一とみなされる繰り返
しに関する条件。(JIS Z 8101-2)
同一と見なせるような測定試料について、同じ方法を用い、同じ試験室で、同
じオペレータが、同じ装置を用いて、短時間のうちに独立な測定結果を得る測
定の条件。(JIS Z 8402-1)
併行精度【repeatability】
併行条件による観測値・測定結果の精度。標準偏差で表した場合には併行標準
偏差、分散で表した場合には併行分散という。(JIS Z 8101-2)
併行条件による測定結果の精度。(JIS Z 8402-1)
併行標準偏差【repeatability standard deviation】
併行条件で得られた測定結果の標準偏差。(JIS Z 8402-1)
参考規格
1)JIS Q 0030,標準物質に関連して用いられる用語及び定義(1997)
2)JIS Z 8101-1,統計-用語と記号-第1部:確率及び一般統計用語(1999)
3)JIS Z 8101-2,統計-用語と記号-第2部:統計的品質管理用語(1999)
4)JIS Z 8103,計測用語(2000)
5)JIS Z 8402-1,測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)-第1部:一般的な原
理及び定義(1999)
61
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