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MRI | 所報 | 21世紀の日本社会の安全を考える
JOURNAL OF MITSUBISHI RESEARCH INSTITUTE 三菱総合研究所 / 所報 37 No. 2000 創立30周年記念号 お問い合わせ先 三菱総合研究所 広報部 電話: : (03)3277-0003 FAX (03)3277-0520 E-mail: [email protected] 創立30周年記念号テーマ論文 研究論文 21世紀の日本社会の安全を考える 木根原 良樹 要 約 20世紀、戦後の半世紀は、日本人は安全な暮らしを享受してきたかに見える。科学技術の進歩による生活 水準の向上もあって、日本は世界一の長寿国となった。しかし、現在の日本社会は、世界一安全な国とは言 えず、依然として多くの人命を脅かすリスクが存在している。交通事故、家庭内の事故、自殺の3つの原因 で合わせて年間5万人が亡くなっており、医療過誤も看過できない問題である。市民生活の身近なところに 大きなリスクが潜んでいるのである。 これらのリスクを安全工学の立場から分析すると、市民の安全責任の自覚、定量的なデータに基づく安全 目標の議論、因果関係の把握、ヒューマンウエア対策などの課題が浮き彫りになる。課題解決のためには、 市民のリスク・リテラシーの涵養、リスクに関するニュートラルな報道、安全工学を導入した対策研究、お よび安全がビジネスのインセンティブとなる枠組みの構築が必要と考えられる。 身近に潜むリスクが認知できていない日本人。安全は与えられるものではなく、自ら獲得するものである。 21世紀、より安全な日本社会を実現するためには、市民一人ひとりのリスク・マネジメントが求められる。 目 次 1.はじめに 2.日本は世界一安全か? 3.日本社会の安全の歴史 4.現在の日本社会におけるリスク 4.1 身近に潜む大きな危険 4.2 身近に潜むリスクの実態 5.身近に潜むリスクの問題点 5.1 誰が安全責任を負うか? 5.2 定量的データに基づく安全目標の議論 5.3 因果関係の把握 5.4 鍵を握るヒューマンウエア対策 6.21世紀の日本社会への提言 7.おわりに 三菱総合研究所 所報第37号(2000年10月) 152 Paper for the 30th Anniversary Issue 21世紀の日本社会の安全を考える ● Research Paper Views on Safety in Japanese Society in the 21st Century Yoshiki Kinehara Summary The Japanese appear to have enjoyed safe lives in the latter half of the 20th century following the end of the Second World War. With the advance of science and technology, standards of living rose and the Japanese came to have a longer life expectancy than any other nation. Today, however, Japan can’t be said to be the safest country in the world and there are as many life-threatening risks as ever. A total of 50,000people die every year as a result of road accidents, accidents in the home and suicide, and the problem of medical error cannot be overlooked. People face many hidden risks in their everyday lives. When these risks are analyzed from a safety engineering standpoint, various issues stand out in relief, including awareness of responsibility for one’s own safety, discussion of safety targets based on quantitative data, understanding of the relation between cause and effect, and humanware measures. To resolve these issues, fostering of risk literacy, neutral reporting of risks, study of measures incorporating safety engineering, and construction of a framework in which safety is a business incentive are required. The Japanese do not recognize the risks in their daily lives. Safety is not something to be taken for granted; it is acquired by our own efforts. Risk management on the part of every citizen is required to create a safer society in the 21st century. Contents 1. Introduction 2. Is Japan the safest country in the world? 3. History of safety in Japanese society 4. Risks in Japanese society today 4.1 Hidden risks 4.2 Reality of hidden risks 5. Problem of hidden risks 5.1 Who is responsible for our safety? 5.2 Discussion of safety targets based on quantitative data 5.3 Understanding the relation between cause and effect 5.4 Humanware measures hold the key 6. Suggestion to Japanese society in the 21st century 7. Conclusion JOURNAL OF MITSUBISHI RESEARCH INSTITUTE No.37(OCT. 2000) 153 1.はじめに 世界一長寿な日本。犯罪が少ない日本。今から100年前の日本では、飢饉や自然災害、伝染病に人々は 苦しめられていたが、科学技術の進歩とともに克服し、日本人の平均寿命は大きく伸びた。その間に多 くの人命を奪った不幸な戦争があったが、戦後、半世紀以上にわたって人々は安全な暮らしを享受して きたかに見える。 21世紀を迎える今、より安全な日本社会の実現のために、私たちは何をすべきか。まだ克服すべき課 題が多く残っている。日本社会の安全問題を統計データに基づいて展望し、安全工学的な立場から分析 を加えた上で、その解決に向けた提言を行うこととする。 2.日本は世界一安全か? 本当に日本は安全な国なのか。他の先進国と比較してみる。 (1)世界一長命な日本人 日本人の平均寿命は、1998年時点で男性77.16歳、女性84.01歳であり、世界一の長寿国である。日本と 同様に医療が進んでいる先進7カ国の中で見ても、日本人は1∼5歳長生きであり、やはり日本は健康 に対して「世界一安全」な国と言うことができる(図1参照)。 (2)日本は事故・災害リスクが小さくない 病気以外のリスクはどうであろうか。まず、事故や災害を原因とする死亡率を先進7カ国の中で比較 してみる。日本では、1998年に交通事故、家庭内や職場での事故、自然災害など不慮の事故等*1によっ て、4万人弱(人口10万人あたりに換算すると31人)が死亡している。日本の不慮の事故等による死亡 率は、先進7カ国中、比較的低いが、イギリスよりは高く、事故や災害に対しては特に「安全な国」と は言えない(図2参照)。 (3)殺人は少ないが、自殺の多い日本 日本では1997年に殺人犯罪により1,323人が亡くなっている(人口10万人あたり1.0人)。殺人による死 亡率は、先進国の中で最も低く、米国の7分の1にすぎない。犯罪に対しては、やはり「安全な国」と 言うことができる(図2参照) 。 しかし、自殺については、日本は人口10万人あたりの死亡率が25人と、先進7カ国の中で最も高く、 イタリアやイギリスの3倍もある。日本は、1年間に実に3万人以上の自殺による死者があり、事故や 災害による死者数に匹敵する。自殺に対しては「危険な国」である(図2参照) 。 154 21世紀の日本社会の安全を考える ● 男性 年 齢 60 65 70 75 80 女性 85 90 77.16 日本① 84.01 75.8 カナダ④ 81.37 74.9 イタリア⑧ 81.3 74 フランス⑨ 81.9 74.31 イギリス⑮ 79.48 73.29 ドイツ⑯ 79.72 73.1 アメリカ合衆国⑰ 79.1 国名右側の丸付数字は全世界での男女平均の寿命順位 日本は1998年、他の国は1994∼96年のデータ 資料:厚生省大臣官房統計情報部「日本人の平均余命・平成10年簡易生命表」より作成 図1.先進7カ国の平均寿命 70 年間死亡率(人口10万人対) 不慮の事故等 60 60 自殺 殺人 50 39 38 40 30 33 33 31 25 23 21 20 16 13 12 10 8.2 6.8 1.0 2.7 N.D. 0 日 本 6.9 4.0 3.6 ア メ リ カ 合 衆 国 フ ラ ン ス ド イ ツ イ タ リ ア イ ギ リ ス N.D. カ ナ ダ 資料:厚生省「人口動態統計」平成10年・平成4年、 厚生省「自殺死亡統計・人口動態特殊報告」平成11年、 法務総合研究所「犯罪白書」平成11年度版より作成 図2.先進7カ国の不慮の事故等・自殺・殺人による死亡率 155 3.日本社会の安全の歴史 20世紀の100年間、日本は、科学技術の進歩によって安全な社会を手に入れた。一方で、科学技術が新 たな危険をもたらしたが、私たちはそれをコントロールする方法を学んだ。 (1)19世紀末の日本社会 今から100年前の1900年、日本の人口は約4,400万人、死亡率は人口千人あたり20.8人であった。現在 (1998年)の人口が約1億2,500万人、死亡率が7.5人であるので、100年の間に人口は3倍に増え、死亡率 は3分の1にまで減ったことになる。 人口学者の鬼頭宏教授(上智大学)は、日本の19世紀末までを「人口史におけるアンシャン・レジー ム」と名付けている。図3は、1886年(明治19年)の日本の年齢本籍人口である。いわゆるピラミッド 型の構成になっているが、出生率が高い上に死亡率が特に幼少年で高かったことを示すものである。ま た、ところどころの年齢層の人口に落ち込みが見られるが、伝染病や飢饉などによって短期間に大勢の 人が死亡した痕跡である。50歳人口の落ち込みは1837年(天保8年)の飢饉および流行病の結果であり、 25歳人口の落ち込みは1862年(文久2年)の風疹の大流行によるものであった。このように、100年前の 日本は、飢饉や伝染病の恐怖におびえる高死亡率の社会であった。 資料:鬼頭宏「歴史人口学における死亡動態」 『生存と死亡の人口学』大明堂、平成6年(1994) 図3.1886年(明治19年)の日本の年齢別本籍人口 156 21世紀の日本社会の安全を考える ● (2)日本社会の近代化 日本の死亡率は、1930年頃から徐々に減少しはじめ、第二次世界大戦をはさんで、1945年以降の10年 間で大きく低下した。国民の生活水準の向上と医療・衛生技術の進歩によって、乳幼児を中心に肺炎・ 気管支炎と結核による死者数を激減させたことが大きい。科学技術の進歩が、安全な社会の実現に大き く役立った時代である。 40 出生率 出生率・死亡率(人口千人対) 35 死亡率 30 25 20 15 10 5 0 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 西 暦 資料:厚生省大臣官房統計情報部「人口動態統計」平成10年などより作成 図4.日本の出生率・死亡率の推移 (3)高度経済成長期 1960年以降は、逆に、科学技術が新たな危険をもたらした時代であった。労働災害、交通事故、公害、 食品汚染、薬害である。1960∼70年にかけて炭鉱や建設現場を中心に労働災害による死者が年間6,000人 を超えたほか、モータリゼーションの進展に伴って交通事故も増え続け、1975年には死者が年間1万 7,000人を数えた。また、四日市ぜんそくや水俣病、イタイイタイ病と言った公害が社会問題となり、食 品汚染や薬害による犠牲者も出た。1955年の森永ヒ素ミルク中毒事件(患者1万2,000人、死者130人)、 キノホルム剤の副作用であるスモン病(1971年に提訴、原告6,000名)、最近の例では非加熱血液製剤に よるHIV感染(1989年に提訴、2,000名が感染)などである。科学技術の負の部分が顕在化し、災禍を招 いてしまった時代であった。 (4)現代の日本社会 日本の社会は、先の時代を教訓に科学技術に伴う危険をコントロールする方法を学んだ。労働災害は、 1970年以降、産官学の取り組みが活発となり、産業構造の変化もあって大きく改善された。現在は労働 災害による死者数が年間2,000人を下回っている。また、交通事故は、1970年前半に焦眉の社会問題とな り、警察庁が歩行者の安全確保のため歩・車道の分離などの対策を打った結果、歩行者の交通事故死が 年間約8,000人から4,000人弱にまで低減し、1976年には全死者数が1万人を割った。その後、現在まで、 157 年間死者数は1万人前後で推移している。公害対策も、法規制の強化と監視、環境装置の開発などによ って大きく進み、高度成長期のような惨事は起きていない。 4.現在の日本社会におけるリスク 一見、安全と思える現在の日本社会。実は、身近なところに生命の危険を招く大きなリスクが潜んで いる。 4.1 身近に潜む大きな危険 我が国の死因別死者数は、疾病を除いて最も多いのが自殺の年間約3万人であり、次に交通事故と家 庭内の事故の約1万人が続く。これらの死の特徴は、私たち自身が危険を招くものであると同時に、自 らの努力によって避けることが可能な死である。これらの要因による死者数は、最近20年間あまり改善 が見られない。一方、労働災害が年間2,000人弱、自然災害による死者が阪神・淡路大震災を除けば年間 100人前後である。このように、現在の日本社会では、自宅や道路など普段の暮らしの中に大きな危険が 潜んでいるのである。 35000 交通事故 30000 家庭内の事故 死者数(行方不明を含む) 労働災害 25000 自然災害 自殺 20000 15000 10000 5000 0 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 西 暦 資料:警察庁「交通事故統計年報」 、厚生省「人口動態統計」 、労働省「労働災害統計」 、警察庁警備局資料により作成 図5.事故・災害・自殺による死者数の推移 158 2000 21世紀の日本社会の安全を考える ● 4.2 身近に潜むリスクの実態 身近に潜む大きなリスク、すなわち交通事故、家庭内事故、自殺について、その実態を見てみること にする。さらに、最近、クローズアップされている医療過誤の実態にも触れる。 (1)交通事故 1976年以降、現在まで過去24年間、交通事故による死者数は年間1万人前後で推移しており、大きな 改善は見られない。戦後の交通事故死者数は、累計50万人を突破している。 死者数は、ほぼ横這いで推移しているが、交通事故の件数および負傷者数は、年々増加傾向にある。 つまり、事故を防止する対策は殆ど進んでおらず、自動車の耐衝突性能向上やシートベルトの着用によ って、事故が起こっても死亡に至るケースが相対的に少なくなったものと推測される。100万走行台km あたりの死傷を伴う事故件数は、ドイツ、イギリス、米国が0.6前後であるのに対して、日本は1を超え ている。道路事情の違いもあろうが、日本人は交通事故を起こしやすいと言える。 表1.国別の交通事故発生状況 人口10万人あたり 交通事故死者数(人) 走行10億台kmあたり 交通事故死者数(人) 走行100万台kmあたり 死傷を伴う交通事故件数(件) 日 本 米 国 フランス ドイツ イギリス 8.9 15.7 14.4 10.4 6.3 15.3 10.2 16.4 13.8 8.1 1.06 0.6 0.24 0.62 0.53 1997年のデータ 資料:OECD, IRTAD(International Road Traffic and Accident Database)より作成 (2)家庭内の事故 日本では年間1万人もの人々が、家庭内の不慮の事故で死亡している。その原因は、溺死、転落・墜 落、火災などである。特に子どもと高齢者の事故が目立っており、1歳から14歳の子どもでは不慮の事 故が最も多く、死因の約3分の1を占める。乳児がうつぶせ寝で窒息する、頭の重い幼児がバランスを 崩して浴槽に転落し溺れる、玩具や煙草、ナッツなど誤飲する事故が頻発している。高齢者では、浴室 やトイレで高血圧が原因で突然死する、足下を狂わせて階段から転落するなどの事故が多い。自宅の中 でのちょとした油断が、年間1万人もの命を奪っているのである。 (3)自殺 第2次世界大戦以降、総死亡率が戦前の3分の1にまで急激に低下したのに対し、自殺死亡率は、戦 前、戦後を通じて人口10万人あたり20人前後と改善が見られない。ここ25年間の自殺者数は、2万∼2 万5,000人の間を推移していたが、1998年に急増し史上最悪の年間3万人を超えた。我が国の年間の死亡 者数は約90万人であるが、実に30人に1人は自殺によって死亡しているのである。 最も数が多いのは病気を苦にした高齢者の自殺であるが、経済的な問題、家庭や勤務上の問題を動機 にした中年の自殺も目立つ。また、未成年者の自殺も年間500件ほどあり、15∼19歳の死因のうち自殺 が不慮の事故に続いて第2位となっている。青少年の自殺未遂者は、自殺者の100∼200倍あると推定さ 159 れている。 (4)病院に潜む危険 近年、医療過誤による患者の死亡事故が頻繁に報道されている。残念ながら、日本には医療過誤に関 する統計データがないが、米国での推計*2によると、医療過誤による死者が年間4万4,000人∼9万8,000 人と言われており、人口が約半分の日本に単純にあてはめると2万人を超えることになる。医事訴訟が、 平成10年には年間600件に達しているが*3、この件数が医療過誤全体の氷山の一角に過ぎないことを鑑 みると、先の推定値2万人は、事実から遠くない数字と思われる。安全であるべき医療機関に、大きな リスクが潜んでいるのである。 5.身近に潜むリスクの問題点 現在の日本社会が抱えるリスクの実状を見てきたが、何故、改善が見られないのだろうか。どこに問 題が隠れているのであろうか。安全工学の見地から分析を加えることにしたい。 安全工学とは、先端技術の開発に伴うリスクを軽減することを目的とした実践的な学問である。その 歴史は、1765年の蒸気機関の発明に遡り、化学プラントや原子力発電所、航空機などの分野で発展を遂 げてきた。安全工学は、一般に図6のプロセスによって問題解決に取り組むものである。 ①安全責任の明確化 ②安全目標の設定 ・定量的データに 基づく検討 ③因果関係の解明 ・リスク評価 ④安全対策 ・ハードウエア ・ソフトウエア ・ヒューマンウエア 出典:三菱総合研究所が作成 図6.安全工学の問題解決プロセス 5.1 誰が安全責任を負うか? 安全の向上には、それを願い、責任を自覚し、対策の遂行能力がある者の存在が不可欠である。事故 や災害では、第一にはその加害者が、被害者に対する補償責任を負うため、安全に努める責任も加害者 となり得る者が担うことが妥当と考えられる。 (1)一般市民の安全責任 自然災害は行政が、産業災害は事業者が安全責任を負い、多くの努力によってリスクが軽減されてき た。交通事故、家庭内事故、自殺といった身近なリスクに対して安全責任を負うのは、加害者となり得 る一般市民である。一般市民が、安全の向上を願いその責任を自覚しないかぎり、これらのリスクを減 らすことはできない。 1トンもある自動車を時速50kmで走らせれば、歩行者にとって紛れもなく凶器である。ドライバーは、 歩行者や他のドライバーに対して安全責任を負うのである。同時に自らの命に対しても安全責任を負う。 160 21世紀の日本社会の安全を考える ● 交通事故死を減らすには、シートベルトの着用というドライバーの自己防衛が最も効果的である*4。衝 突安全性能がAAA *5の自動車でもシートベルトを着用しなければ全く無意味であることに気付く必要が ある。 (2)家族や友人が守るべき命 家庭内の事故により年間1万人が亡くなっている。その多くは、家族の保護・介護が必要な乳幼児と 高齢者である。家族が、乳幼児や高齢者を守る安全責任を自覚するべきある。オーストラリアでは、1988 年から全国にセイフティセンターが設立され*6、子どもの事故予防に努めている。子どもが生後約6カ 月になったところで、親たちがセンターを訪れ、見学と講義を受ける。その内容は、小児事故データベ ースの分析から得られたものであり、親たちが事故予防の自覚と知識を身に付けた結果、子どもの事故 の発生件数が20∼30%減ったと報告されている。 一方、自殺者は年間3万人にのぼる。その動機は、病苦、経済生活問題、家庭問題、勤務問題、男女 問題、学校問題など様々であるが、周りにいる家族や恋人、友人、職場や学校の仲間が、自殺のサイン を見逃さず適切なケアを行っていれば救えた可能性もある。 市民一人ひとりが、最も親しい人の命を守る責任を自覚すべきである。 (3)医療現場の安全モラル 事故を防ぐには現場の安全モラルを高めることが重要である。武蔵野赤十字病院では、医療過誤の防 止のためリスクマネジメント委員会を設置し、医師、看護婦などから庶務課に設置したポストに極些細 なミスまで文書を投函してもらい、職員のプライバシーを尊重したリポートを作成、院内報に掲載して いる。産業分野では、このような活動を30年以上前から取り組んでおり、医療現場でも常識にしていく 必要がある。 我が国の医道審議会が1999年に医療過誤により処分した医師は2名に過ぎない。いずれも業務上過失 致死罪で刑事罰を受けているが、処分の内容は医業停止3カ月という軽いものであった。確かに、当事 者を罰するだけでは医療過誤は撲滅できずシステム自体を改善する必要があるが、安全責任の所在を明 確にすることは対策のインセンティブになる。 表2.社会リスクごとの安全責任者の考え方 加害者 被害者 安全責任を負う者 自然災害 自 然 一般市民 行政※ 産業災害 事業者 一般市民(住民・従業員) 事業者※、行政 交通事故 一般市民(ドライバー) 一般市民 一般市民(自分) 一般市民(自分) 一般市民(自分、家族)※ 医療過誤 医療従事者 一般市民(患者) 医療従事者※、行政 自 殺 一般市民(自分) 一般市民(自分) 家庭内の事故 一般市民(ドライバー※)、 行政、メーカー 一般市民(自分、家族、 知人)※、社会 ※:主に安全責任を負う者 資料:三菱総合研究所が作成 161 5.2 定量的データに基づく安全目標の議論 社会に潜むリスクが、どれほど深刻な問題なのか、その解決のためにどの程度のコストを投入すべき か、定量的なデータに基づき社会全体で議論する必要がある。 (1)身近に潜むリスクの比較 日本におけるリスク要因別の年間死亡率(1989∼1998年の10年間の平均値)を図7に示す。病気で1 年間に10万人あたり100人、すなわち日本国民100人中1人の割合で死亡している。また、自然災害によ る死亡確率は、阪神・淡路大震災を除けば、100万人に1人のレベルである。一方、自殺、交通事故、家 庭内の事故による死亡確率は、それぞれ1万人に1人のレベルである。この数字は、私たちのほとんど が、一生のうちに親しい人を自殺や交通事故、家庭内の事故で亡くす経験をすることを意味する。この 悲しい事実を、私たち一人ひとりが十分に認識すべきである。 年間死亡率(人口10万人対) 1000.00 100.00 10.00 1.00 0.10 0.01 病 気 自 然 災 害 ︵ 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 含 ま ず ︶ 自 然 災 害 ︵ 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 含 む ︶ 労 働 災 害 交 通 事 故 家 庭 内 の 事 故 自 殺 リスク要因 注:1989∼1998年の10年間の平均値 資料:前掲資料を用いて作成 図7.死亡リスクの比較 (2)安全目標 安全工学の分野では、死者を出すような事故の発生確率を100万年に1回以下に抑えることを安全目標 の一つにしている。ある1箇所のプラントの産業活動に伴うリスクが、自然界から受けるリスクと同等 以下であれば、許容されるとの考え方である。交通事故、家庭内の事故、自殺のリスクの安全目標はど こに設定すべきか。理想的には自然災害によるリスクと同等、すなわち現在の100分の1に減らすことが 望ましいが、実際としては非現実的な数字である。 一つの現実的なマイルストーンとして、交通事故、家庭内の事故、自殺による死者数を現在の3分の 162 21世紀の日本社会の安全を考える ● 1にまで低減することを提案したい。我が国は、20世紀の100年間で死亡率を3分の1に減らした実績が ある。海外に目を向けると、英国の交通事故による死亡率(走行10億台kmあたり)は日本の半分であ り、自殺の死亡率も3分の1である。身近に潜むリスクを3分の1に減らす目標は、十分に達成可能と 考える。 一方、医療過誤については、先ほど述べた通り実態を示す定量的なデータがない。日本の医療費は国 民1人あたり約3万円にのぼるが、医療過誤の防止のためのコスト増加は必要と考える*7。その議論の ためにも、是非、実態データの取得と公表が望まれる。 5.3 因果関係の把握 危険に至るプロセスの因果関係が分かって初めて、有効な対策を打つことができる。航空機の分野で は、ひとたび事故が起こると、航空事故調査委員会が徹底した原因究明を行い、再発防止策を勧告する。 この活動は、航空機の安全性の向上に大きな役割を果たしてきた*8。 しかし、日本では一般に、事故や事件が起こった場合、加害者や管理者の責任追及に終始し、何故、 事故や事件が起こったかについて深い原因究明が行われない傾向がある。事故や事件を生んだシステム 全体にメスを入れないと、再発防止はできない。 (1)危険が分からないドライバー 欧州各国では、1970年前半から自動車事故の原因究明に取り組んでいる。中でもドイツ連邦道路研究 所は、450人の職員と年間42億円の予算を費やし、自動車メーカーや医療機関の協力も得て年間1,000件 もの事故を詳細に調査・分析している。日本では、1992年に(財)交通事故分析センターが設立されたが、 事故の原因究明は緒に就いたばかりである。 安全運転管理者講習の講師を勤める長山泰久氏(交通科学研究所所長)は、事故事例分析から運転時 の危険源を明確にし、危険の予測・察知の指導を行うことで、受講事業者の事故件数を大きく減らすこ とに成功している*9。ドライバーが、交通事故の因果関係をしっかりと理解すれば、交通事故の犠牲者 を大きく減らすことができるのである。 (2)医療過誤の原因究明 弁護士を中心とする医療事故情報センターが1990年に設立され、1997年には医療従事者を中心とする 医療事故調査会が発足し、医療過誤の対策活動を行っている。しかしながら、多くの医療過誤裁判を手 掛ける吉川孝三郎弁護士は「日本ではミスが起きても徹底的な原因究明より隠蔽する意識ばかりが強い。 教訓にして、その後に生かすといった姿勢が欠けているのが根本的な問題だ」と訴えている*10。原因究 明の活動は始まったが、現場の意識はまだ低いようである。厚生省も、1999年から医療現場でのインシ デント事例(ヒヤリとしたりハッとした事例)約1万件の分析に着手したところであり、今後の成果に 期待したい。 5.4 鍵を握るヒューマンウエア対策 安全対策は、ハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアの3つで構成される。交通事故を例に 説明すると、ハードウエアとは自動車および道路設備、ソフトウエアは免許制度や交通規則などのルー 163 ル、ヒューマンウエアはドライバーの安全意識と運転能力である。 ハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアという3つの安全対策をバランス良く行うことが大 切であるが、交通事故や家庭内の事故、自殺、医療過誤の問題は、共通してヒューマンウエア対策が大 きな鍵を握る。人間が適切な危険回避行動を行うためには、図8の4つの要素を全て備えている必要が ある。一つでも欠けてしまうと事故につながる。 意志 ・危険を回避する意志がある 知覚 ・危険信号を察知することができる 知識 ・危険信号を知覚した際に危険を予測できる知識がある 行動 ・エラーなく危険回避行動を行う ヒューマン ウエア 出典:三菱総合研究所が作成 図8.ヒューマンウエアの構成要素 (1)ドライバーの危険回避能力 交通事故死を減らすには、ドライバー自身のシートベルトを着用する「意志」、事故事例分析から危険 予測を学ぶ「知識」といったヒューマンウエア能力の向上が必要である。警察庁は、1994年に普通自動 車教習カリキュラムを全面的に見直し、危険予測教習や応急救護処置教習などを導入している。また、 自動車メーカーが、フルブレーキなど極限運転を体験する研修を応募者を対象に実施している。このよ うな、一般のドライバーの危険回避能力を高める取り組みを、より充実させ高い成果が上がるよう期待 したい。 また、ドイツのベンツ社では、高度なドライビング・シミュレータを用いて人間の反応や操作に関す る研究を行っている。ヒューマンウエアを研究して、事故を起こしにくい自動車づくりに活かすといっ たアクティブ・セイフティの導入が始まっている。 (2)自殺予防教育 米国では、1950年代から1980年代にかけて若者の自殺が3倍に増え、また「死にたい」と思ったこと のある高校生の8∼9割が、その気持ちを親ではなく同級生に伝えるとの調査結果が出た。このような 背景から、カリフォルニア州では、1984年から高校で自殺予防教育が行われている。生徒向けのカリキ ュラムの中身は、次の5つの項目からなる。事実を知り深刻に考える生徒自身の「意志」、自殺のサイン を「知覚」する方法、自殺に関する正しい「知識」、そして友人を自殺から救う方法と自分の自殺に対す る回避「行動」。ヒューマンウエアの4つの要素をきちんと教えるカリキュラムとなっている。 ①青少年の自殺の実態 ②自殺のサインとは 164 21世紀の日本社会の安全を考える ● ③ストレスや薬物乱用と自殺の危険の関係 ④友人の自殺の危険に気付いたら、どのように救いの手を差し伸べるか ⑤地域に自殺について相談できるどのような機関があるか 我が国でも、自殺予防に限らず、このような科学的視点に立った「自分と家族・友人の安全を守る教 育」の導入を検討してはどうであろうか。 (3)医療現場のヒューマンエラー 米科学アカデミー医学研究所(1999年)は、医療過誤の原因について、①読みにくいカルテで薬品ア レルギーを見逃した、②薄めなければ使えない劇薬を誤って使用した、③高度化する医療技術に医師ら がついていけないなどを挙げている。また、日本の看護婦の全国組織は、「医療過誤の背景には過酷な労 働環境がある」として、再発防止のため①増員による勤務体制の改善、②事故が起きにくい医療機器・ 用具の普及拡大、③職場の民主化を提言している。いずれもヒューマンウエアに関わる問題であり、特 に「知覚」と「行動」のエラー防止が課題となっている。これらは、産業分野で既に取り組まれてきた 問題であり、安全工学の導入によって、大きな改善が期待できる。 医療過誤の中には、医師の誤診もあるが、これを防止するには別の医師が二重に診断する、いわゆる セカンド・オピニオンが有効である。医師がセカンド・オピニオンを推奨し、患者も自発的に他の病院 で診断を受ける。そうすれば、診断ミスは確実に減るだろう。 6.21世紀の日本社会への提言 安全工学的な見地から身近に潜むリスクの問題点を洗い出したが、その根底にある課題を探り、21世 紀の日本社会への提言としたい。 (1)市民のリスク・リテラシー教育 身近に潜むリスクへの対応は、一般市民が安全責任を負うこと、市民自身が危険回避能力を持つこと が重要であることを述べてきた。そのためには、市民一人ひとりが、直面するリスクの本質を理解する 力、いわばリスク・リテラシーを涵養する必要がある。テレビやゲーム機の中のバーチャルな死に慣ら された現代人に対しては、家庭、学校教育、社会教育の場で次のようなリスク・リテラシー教育の展開 が望まれる。 ①生命を実感する体験 家庭や学校での動物の飼育、臨海・林間学校、農林漁業の体験、自らが命を守る必要がある武道や マリンスポーツなど。 ②実践的なリスク科学教育 身近に潜むリスクに対し、道徳観や遵法主義に終始するのでなく、定量的なデータで示して事態の 重大さを認識させ、危険の因果関係を理解させた上で対応のあり方を提示する。 (2)ニュースになる死・ならない死 身近に潜むリスクは、市民一人ひとりがその実態を認識しない限り、安全対策は進まない。身近なリ スクと言っても、一般の市民が直接にその悲劇を経験する頻度は少なく、テレビや新聞から流れる事 故・事件報道から情報を得ている。交通事故の惨状が新聞を賑わした1970年前後、人々は交通安全対策 165 の必要性を強く願い、1995年の阪神・淡路大震災の直後は、日本中の人々が地震の心配をした。マスコ ミ報道から端を発した所沢市のダイオキシン騒動も記憶に新しい。現在でも毎年多くの犠牲者を出して いる交通事故や家庭内事故、自殺、そして実態を示すデータの無い医療過誤。報道機関が公衆のリスク の認識に果たす役割は大きい。報道機関は、その役割を自覚し、リスクの重大さに応じた報道を行うべ きである。 また、報道の内容にも課題がある。加害者や管理者の責任追及と犠牲者の美化に終始し、原因究明と 予防対策の視点に欠けることが多い。特に自殺報道には注意が必要である。若者に人気の有名人や同世 代の自殺があると、後を追って多くの若者が自殺する「群発自殺」が起こる。テレビでは、嘆き悲しむ 友人達や自殺現場に飾られた花が映し出されて自殺が美化され、自殺手段がこと細かに説明される。報 道をみた若者が、「自分も死ねば、皆の関心を集められる」、「思っていたよりも簡単に死ねる」と考えて 自殺に踏み切る危険性が指摘されている。若者の自殺を予防する視点、例えば、自殺の危険を示すサイ ンや悩みの治療方法を解説する、いのちの電話など相談窓口を紹介するような報道も行うべきではない だろうか。 (3)身近に潜むリスクの研究とビジネス・インセンティブ 産業分野では、安全に対して多くの人材とコストを投入し、操業の安全性を向上・確保してきた。そ の取り組みの中から生まれた学問が安全工学である。交通事故、家庭内の事故、自殺、医療過誤は、ヒ ューマンウエア対策が鍵を握ることを述べたが、安全工学の視点に立った研究によって解決できる問題 も多い。厚生省が平成11年度より「医療のリスクマネジメントシステム構築に関する研究」を始めたが、 身近に潜む全てのリスクに対して、安全工学に関わる研究者や産業界の実務者を加えた本格的な安全研 究体制を確立することを提唱したい。 また、産業分野では近年、環境対策が一気に進んだ。企業が国際規格ISO14001の取得、環境負荷の少 ない商品の開発、環境報告書の作成・公表などを行い、市民の側も環境に対するコストを負担するよう になった。環境に優しいことがビジネス・インセンティブになる枠組みが出来つつある。身近に潜むリ スクの問題においても、同じ様な枠組みの構築が望まれる。事故予防に優れた自動車、安全に住むこと のできる家、医療過誤対策が進んでいる病院が、市民に選ばれる時代の到来を期待したい。 7.おわりに 日本人の「生きる力」が弱まっているという漠然とした不安を感じている。交通事故や家庭内の事故、 医療過誤、自殺といった身近に潜むリスクに対して自己防衛できていない現在の日本人。来る21世紀の 早々には、名実ともに世界一安全な日本社会が実現されることを願いたい。 20世紀末にあたり、人類は、炭酸ガス排出問題、遺伝子操作、環境ホルモン、電子ネットワーク事故 といった新しいリスクに直面している。また、食糧問題や病原性ウィルスなど多くの生命を脅かすリス クも解決されてはいない。高度情報化が進んだことで、サイバーテロや中傷情報のネットワーク配信な ど情報犯罪にもさらされるようになった。 21世紀は、規制緩和や人・物・金・情報のボーダレス化が一層進む結果、社会の安全に対する国の機 能が曖昧になり、個人の自己防衛の比重が大きくなる。一人ひとりのリスク・マネジメントが求められ る世紀となろう。 166 21世紀の日本社会の安全を考える ● 注 *1 ここでは、厚生省「人口動態統計」の「不慮の事故及び有害作用」を指す。 *2 米科学アカデミー医学研究所が1999年11月29日に発表したデータによる。 *3 弁護士で医師の児玉安司氏による。 *4 平成8年度の調査であるが、シートベルトの前席着用率を95%にできれば、死者数を2,200人(全体の25%)も 低減できるとの予測がある。 *5 自動車事故対策センターが1995年度モデルから衝突安全性能試験等を実施・公表している。 *6 我が国でも、東京都の池袋保健所に「子ども事故予防センター」が設立された。 *7 医療過誤は、看護婦が絡むケースが多いと言われている。ベッド100床あたりの看護職員数は、日本は42人 (1996年時点)であり、実に米国の5分の1、欧州の2分の1に過ぎない。看護婦に対する健康実態調査(日 本医労連が1996年に約6万5,000人を対象に実施)では、75%が「慢性疲労状態」と回答し、50%が「常に強 いストレスを感じている」と答えている。 *8 日本の航空事故調査委員会は運輸省内に設置されているが、日本乗員組合連絡会議は、1998年に運輸大臣に対 し、委員会の独立性の保障などを中身とする「航空機事故調査委員会の改善について」要請書を提出している。 *9 長山泰久「提言/直言 交通事故死者数を半減するために」 『JAMAGAZINE』1998年4月号 *10 毎日新聞記事「看護婦と医療事故、過酷な労働に生きぬミスの教え」1999年4月10日付け 参考文献 1)厚生省大臣官房統計情報部:『日本人の平均余命・平成10年簡易生命表』 . 2)厚生省大臣官房統計情報部:『人口動態統計』 (平成10年,平成4年) . 3)厚生省大臣官房統計情報部:『自殺死亡統計・人口動態特殊報告』 (平成11年) . 4)法務総合研究所:『犯罪白書』 (平成11年度版) . 5)警察庁生活安全局地域課:『自殺の概要』(平成10年度版) . 6)総務庁編:『交通安全白書』(平成11年版) . 7)(財)矢野恒太郎記念会編:『数字でみる日本の100年(改訂第3版) 』,国勢社(1991) . 8)「21世紀日本の構想」懇談会・第3分科会:『安心とうるおいの生活』 (第5回会合議事概要 1999. 7. 26開催) . 9)鬼頭 宏:『歴史人口学における死亡動態』 「生存と死亡の人口学(シリーズ人口学研究4) 」 (平成6年(1994) ) . 10)守谷安則:『安全に果たす事故調査分析の役割』 「自動車技術」53巻11号(1999) . 11)長山泰久:『提言/直言 交通事故死者数を半減するために』 「JAMAGAZINE」(1998年4月号) . 12)清水和夫:『クルマ安全学のすすめ』 ,日本放送協会(1997) . 13)山中龍宏監修:『子どものケガ・事故,予防・救急ブック』 ,ほんの木(1998) . 14)建設省住宅局長通達:『長寿社会対応住宅設計指針』 (平成7年6月23日付け) . 15)高橋祥友:『青少年のための自殺予防マニュアル』 ,金剛出版(1999) . 16)油井香代子:『医療事故で死ぬな!』 ,小学館(2000) . 17)OECD:“IRTAD(International Road Traffic and Accident Database)”(1999) . 18)WHO:“World Health Statistics Annual” ,(1990-1992) . 19)http://www.asahi-net.or.jp/%7EPF4M-ATM/IRYOU/IRYOUJIKO/990410miss.html(医療過誤に関するホーム ページ) . 20)こどもの健康週間群馬地区行事企画委員会:http://www.sb.gunma-u.ac.jp/`tomomasa/k/ch/(「子どもの事故撲 滅キャンペーン」ホームページ) . 167