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海 洋

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海 洋
海 洋
海洋の果たす役割
1 地質構造から見た海洋の役割
地質構造から見た海洋 役割
2 気候に対する海洋の役割
3 生物活動の場としての海洋
1 地質構造から見た海洋の役割
日本列島の形成とプレ トテクトニクス
日本列島の形成とプレートテクトニクス
造陸運動
現在われわれが住んでいる日本列島の大部分の基盤(大陸性
地殻)は、海洋によって作られたといえる。その過程は次のように
考えられている。
古生代には日本列島やサハリンなどはなかった。中生代ジュラ
紀 なる 当時 アジア大陸 沿
紀になると当時のアジア大陸に沿ってプレートが沈み込むようにな
沈 込む う な
り、大陸のプレートに沿って海溝が形成された。
一方、大陸の河川は風化浸食された大陸内部の岩石を、現在と
方、大陸の河川は風化浸食された大陸内部の岩石を、現在と
同様に河口付近の海までたえず運搬していた。しかしこのようにし
て長時間堆積され続けた結果、ある量を超えると、堆積物はくずれ
て乱泥流となって海溝へとなだれ込んでいった。この乱泥流による
堆積物をタービダイトという。
いったん堆積物をクリアすれば、しばらくはまた運搬・堆積をつづ
けることができるが、ある量を超えるとやはり乱泥流となって海溝
へとなだれ込む。こうして海溝の大陸側にはタービダイドが何層に
となだれ込む うして海溝の大陸側にはタ ビダイドが何層に
も厚く堆積するようになる。これらの堆積物を付加体という。
付加体にはこれ以外に海洋プレートから付加されたものもある。ま
付加体にはこれ以外に海洋プレ
トから付加されたものもある。ま
ず海洋プレート上の堆積物の一部は大陸側に付加される。放散虫
チャートや多色頁岩などが日本の陸上で観察されるのはそのためで
ある。
また、ハワイや伊豆諸島のような海洋プレート上の海山が大陸プ
ま
、
イや伊 諸島
うな海洋
海山 大陸
レートに衝突する場合、小さな海山は海溝に引き込まれてしまうが、
大きな海山は残って大陸側に衝突、融合することがある。現在の伊
豆半島などがその例である。
豆半島などがその例である
海山の一部だけが付加されることもある。その場合海山の密度の
大きい玄武岩質の基底部分は引き込まれてしまうが、サンゴ礁など
の密度の小さい頂上部分が大陸側に接合する。山口県秋吉台の礁
性の石灰岩は 古生代石炭紀に赤道近くで生育したサンゴが 海洋
性の石灰岩は、古生代石炭紀に赤道近くで生育したサンゴが、海洋
プレートに乗ってはるばる移動し、ペルム紀に至って付加されたもの
である。
付加体が陸岸から海溝まで達して、十分な厚さになると、これは大
付
体 陸岸
海溝
、十分な厚
な
、
大
陸プレートがそこまで延長されたということになる。すると沈み込み
の場所が沖側に移動し、海溝が新たに形成される。それまでの付
加体 深部に沈み込み面が位置し
加体の深部に沈み込み面が位置して、そこから上昇してくるマグマ
そ から上昇し くる グ
により、付加体は変成を受ける。これらは白亜紀の中ごろに起こっ
たものといわれる 領家変成帯や三波川変成帯は これらの変成を
たものといわれる。領家変成帯や三波川変成帯は、これらの変成を
受けた付加体である。
一方、その南の四万十帯は、海溝が移動した以後の白亜紀後半
方 その南の四万十帯は 海溝が移動した以後の白亜紀後半
-第三紀の新しい付加体であり、付加体の形成は現在でも盛んに
行われている。これらの付加体を基盤に、その上を第三紀以降の
火山噴出物で覆ったものが、現在われわれが見る日本列島の姿で
ある。
南四国の地質構造
白亜紀
7000万年BP
2500万年BP
1900万年BP
1700万年BP
1450万年BP
800万年BP
500万年BP
18000年BP
海洋プレートからの付加
四万十帯の形成
2 気候に対する海洋の役割
熱溜まりとしての海洋
海の近くでは、気温の変化が内陸に比べて小さいのは、誰でも実
感しているであろう。実際、海洋水の質量は、大気の全質量のおよ
そ200倍あり さらに比熱も約4倍であるから
そ200倍あり、さらに比熱も約4倍であるから、一度温度を上げるの
度温度を上げるの
に1000倍近い熱量を必要とすることになる。沿岸地域の気温日較
差 年較差が小さいのはうなずける このように海洋は熱溜まりとし
差、年較差が小さいのはうなずける。このように海洋は熱溜まりとし
て、気温の変化を緩和させる働きを持つ。
太陽からの熱が吸収されるのは主に地表面・海面であるが、水温
太陽からの熱が吸収されるのは主に地表面・海面であるが
水温
の変化が深部に伝達されるのには時間がかかる。周期的な熱の流
入を仮定すると、ある水深まで伝達に要する時間がその周期よりも
はるかに大きいならば、変化はほとんどが相殺されてしまい、実質
的に影響を及ぼすことはできなくなる。すなわち、海洋のどの深さま
でが、熱溜まりとして働くかは、流入熱の変化する周期で決まる。
が 熱溜まりとし 働くかは 流入熱の変化する周期 決まる
日変化については、直接日射による変動は、海面下数mまでの層
が1-2 K変化する程度である。それ以深には風によって起こされる
乱流拡散で伝達される。
季節変化では、影響を及ぼす深さは100m程度まで達する。海面
からほぼ等温の混合層が存在し 混合層底ではそれ以深との間に
からほぼ等温の混合層が存在し、混合層底ではそれ以深との間に
水温のギャップができる。この水温躍層をseasonal thermocline とい
う。混合層の水深は季節によって変わり、夏から秋にかけてはしだ
いに薄くなり、水温ギャップが大きくなる。逆に冬から春にかけては
深くなって水温ギャップは小さくなり、seasonal thermocline は不明瞭
になる なお出入りする熱の季節変化が小さい熱帯地域では この
になる。なお出入りする熱の季節変化が小さい熱帯地域では、この
ような変化は起こらず、seasonal thermocline はない。
一年以上の長い周期についてはかなり様相が異なる。
年以上の長い周期に いてはかなり様相が異なる
中層水・底層水が形成される場所は、地球上で何カ所か決まって
いて、ノルウェー沖、南極大陸近傍のウェデル海などがそうである。
これらのスポットで底に沈んだ海水が、世界中の海の底層に広がっ
ている そこからゆ くりと上昇してくる低温の海水が 上層の暖か
ている。そこからゆっくりと上昇してくる低温の海水が、上層の暖か
い海水との間に、恒常的な水温傾度をもつ層を形成している。これ
を main thermocline といい、水深は数百
といい、水深は数百~千mぐらいである。この上
千mぐらいである。この上
昇速度は非常に遅いので、一度深海に沈んだ海水が再び海面に現
れるまでには、2000~4000年位かかる。
日本付近の海面水温
400m海水温
海洋の熱輸送
海洋水は海流となって循環している。海流には表層流と深層流と
海洋水
海流 な
循
海流
表 流
流
の2種類があるが、深層流は流れ方向の水温傾度が小さいため、
熱を輸送するのは表層流がほとんどである。
熱を輸送するのは表層流がほとんどである
全球的に見て、熱は赤道から極側に輸送されるが、緯度30度まで
の低緯度側では 海流による熱輸送が大気による熱輸送より大きく
の低緯度側では、海流による熱輸送が大気による熱輸送より大きく、
それより極側では大気の方が大きい。それらの大きさは最大で数P
Wに達する。
表層の海流系は、赤道付近を東西に流れる海流、亜熱帯を中心
に低緯度から中緯度までを循環する海流 亜寒帯を循環する海流
に低緯度から中緯度までを循環する海流、亜寒帯を循環する海流、
の3つに分けられるが、熱輸送にとって最も重要なのは、2番目の
p
gyre)であり、黒潮(Kuroshio)や(メキシ
gy
亜熱帯循環流(subtropical
コ)湾流(Gulf Stream)などはこれに属する。
亜熱帯循環の原因は、極側の偏西風、赤道側の貿易風による高
気圧性の風の流れである これらの風による応力のために高気圧
気圧性の風の流れである。これらの風による応力のために高気圧
性(anticyclonic)の循環ができる(北半球ならば右回り)。さらに、コ
リオリ力の緯度変化の効果により、西岸近くに幅の狭い強い流れが
できる。これを西岸境界流と言い、黒潮は北太平洋亜熱帯循環の
西岸境界流、湾流は北大西洋亜熱帯循環の西岸境界流である。
黒潮を例にとると、もともとは赤道の北側を西流する北赤道海流
であり、これが日射により温まり、フィリピンで南北に分かれ、北へ
向か た成分が 潮となる 台湾 東側を北上
向かった成分が黒潮となる。台湾の東側を北上して東シナ海に入り、
東
海
り
一部は北流して対馬海流となる。本流はトカラ海峡を通過し、日本
の南岸を東流して伊豆諸島から出ていく 流速は最大5ノット 幅は
の南岸を東流して伊豆諸島から出ていく。流速は最大5ノット、幅は
数十kmに達する。その水温の高さにより、特に冬期に顕熱や蒸発
の潜熱により、大気に大量の熱を吐き出す。日本海側が世界的な
潜熱
り、大気 大量 熱を き出す。 本海側 世界的な
豪雪地帯であるのもその分枝である対馬海流の運ぶ熱のためであ
る。
その他に赤道地帯に特有な現象として、東西方向に熱を輸送する、
いわゆるエル=ニーニョ現象がある。
海流図
3 生物活動の場としての海洋
海洋の生物生産は、光合成を行う中心が植物プランクトンである
海洋の生物生産は
光合成を行う中心が植物プランクトンである
ことが大きな特徴である。海藻類は漁場の形成には重要であるが、
沿岸付近にしか生育できない。プランクトンはそのライフサイクルが
早いため、陸上植物に対してそのバイオマスは1%以下にすぎない
にもかかわらず、年間の光合成量はほぼ同等である。
また、海洋は植物プランクトンにとって、小さいスケールの生息環
境の差が少ない。水温・日射が適当であれば、あとは海水の成分
の問題であり、いわば水耕栽培である。実際に一次生産量を求め
問題 あり
わば水耕栽培 ある 実際に 次生産量を求め
ると、陸上生物と異なり亜寒帯でも場所によっては十分な生産量が
あるので 生物生産の制限要因は水温や日射ではなく 海水であ
あるので、生物生産の制限要因は水温や日射ではなく、海水であ
ることがわかる。
水深については、入射光が1%になる水深が光合成と呼吸とが
水深については
入射光が1%になる水深が光合成と呼吸とが
補償する深度であるといわれている。その深さは外洋では場所に
よってかなり変動するが、オ ダ として約100mであり、これより浅
よってかなり変動するが、オーダーとして約100mであり、これより浅
い部分で光合成生産が行われる。
海水が含んでいる成分のうちで主要なものは、イオン重量%の順
に、Cl 、Na+、SO4 、Mg++、Ca++、K+、となっている。そ
に、Cl-、Na+、SO4-、Mg++、Ca++、K+、となっている。そ
の濃度はその場の蒸発・降水、河川水の流入などで大きく変動する
が、主要成分相互の割合は一定値に近い。
その他に、CO2、O2、鉄イオン、燐酸イオンなどがあり、これらは
場所 より なり濃度 変わる。 れらの微量イオンのうち、硝酸イ
場所によりかなり濃度が変わる。これらの微量イオンのうち、硝酸イ
オンおよび燐酸イオンの分布が生物にとっては非常に重要であり、
栄養塩とも呼ばれる。場所によってはこれらのイオン以外に、鉄イ
オ の量が生物生産の制限条件となる とがある
オンの量が生物生産の制限条件となることがある。
植物プランクトンの光合成速度は速いので、海面近くの硝酸・燐酸
イオンは短時間に消費され尽くしてしまう。しかもプランクトンの遺骸
は、その場では分解されず、マリン・スノーとなって海底に降り積もり、
そこではじめて分解される このため 光合成補償深度以浅でのそ
そこではじめて分解される。このため、光合成補償深度以浅でのそ
れらのイオンは失われてしまい、海底付近にたまることになる。何ら
かの機構によりこれらのイオンを海面近くまで持ち上げない限り、光
合成生産は停止してしまう。
CATION
Na +
ANION
10.65
Cl –
18.98
K+
0.38
Br –
0.065
Mg 2+
1.27
SO4 2-
2.65
Ca 2+
0
0.40
40
HCO3 –
0 14
0.14
Sr 2+
0.008
H3BO3 – 0.026
海水1kg中に含まれるイオン(g)
北野(1980)による
海域による生産量の相違
各大洋の中緯度帯では
各大洋
中緯度帯 は main thermocline に妨げられて、これらの
に妨げられ
れら
イオンの上部への移動は非常に遅い。このため最も生産量の高い
海域と比べると その10%程度の生産量しか上げられない このよ
海域と比べると、その10%程度の生産量しか上げられない。このよ
うな場所を「海の砂漠」と呼んでいるが、実はこれに相当する海域が
海洋の大部分を占めて る。では逆
海洋の大部分を占めている。では逆にどんな海域が生産量が高い
な海域
産量 高
のか、というと、それには2つのタイプがある。
第1のタイプは、表面の混合層が発達して、イオンの豊富な深層
まで達して、全層が十分かき混ぜられる混合域である。ベーリング
海や南極海などの亜寒帯-寒帯、日本近海などの中緯度の漁場
がこれに相当する。
第2のタイプは、底からわき上がる湧昇流のある海域である。湧昇
第
、
わ
湧昇流 あ 海域 あ 。湧昇
流の起きる条件は2つあり、赤道沿いの赤道湧昇と大陸西岸の沿
岸湧昇がある。後者の例としてはアフリカ西岸、カリフォルニア沖、
ペ
ペルー沖などがあり、特にペルー沖のアンチョビー(カタクチイワシ
沖などがあり 特にペ
沖
チ ビ (カタクチイ シ
の類)の漁獲は量も多く、またエル=ニーニョとの関係で有名である。
栄養塩分布
Fly UP