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特別寄稿 復興ファイナンスにおける民間金融機関の役割
特 別寄稿 経済・産業分析シリーズ 経済・産業分析シリーズ 復興ファイナンスにおける民間金融機関の役割 林 敏 彦 目 1.はじめに 2.兵庫県と東北3県 3.人口動態の意味 4.復興資金の全体像 次 5.復興資金の調達 6.復興基金 7.「東北復興基金」を 8.東北復興における金融機関の役割 阪神・淡路大震災からの復興に際して、資金は官対民が7:3で負担したが、復興事業の担い手としては逆に 3:7と民間部門が中心だった。金融機関は官・民双方に関係する。東日本大震災からの復興に当たって、民間 金融機関に期待される役割は①被災県に呼びかけ「復興基金」を設立すること、②地域金融機関を地域資産とし て活用すること、③復興プロジェクトに積極的に参加し、金融のプロとして、地域再生に貢献することである。 ようやく重大な被害を被った東北3県の復興計 1.はじめに 画が出そろいつつある段階で、気になることは、 東日本大震災復興構想会議は2011年6月25日 これらの復興委員会に経済の専門家のプレゼンス 総理大臣に報告書「復興への提言~悲惨の中の希 が低いこと、とりわけ金融関係者の参加がほとん 望~」を提出した。また、岩手県は県議会の承認 どないことである。国の復興構想会議委員の中に を経て8月11日「岩手県東日本大震災津波復興 金融関係者はゼロ、わずかに専門部会委員に日本 計画」を策定・公表し、宮城県は8月26日議会 政策投資銀行から1名入っているだけである。宮 に提出すべき「宮城県震災復興計画(案) 」を明 城県、岩手県、福島県の復興委員会にも、金融関 らかにした。原子力発電所事故への対応で忙殺さ 係者としては政策投資銀行の代表がそれぞれ専門 れた福島県も、9月12日に福島県復興計画検討 委員として1名だけ参加しているに過ぎない。 委員会をスタートさせ、年内にも復興計画をとり そのせいもあってか、被災地はこれから復興全 まとめようとしている。 体のファイナンスをどうつけていくかという問題 林 敏彦(はやし としひこ) 同志社大学総合政策学部教授。1966年京都大学経済学部卒業。72年米国スタンフォード 大学Ph.D.。神戸商科大学、大阪大学経済学部、放送大学を経て2009年より現職。スタン フォード日本センター理事長、ひょうご震災記念21世紀研究機構研究統括も歴任。近著 に『大災害の経済学』PHP新書。 ©日本証券アナリスト協会 2011 67