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電子自治体の最適化

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電子自治体の最適化
地方自治体における情報システム最適化へ
の取組みが進められている。レガシー(旧
式)システムを全体最適の視点から再構築
する「業務・システムの最適化計画」は、
各府省庁で先行して取り組まれている。そ
の方法論を地方自治体に適用する場合には、
地域の実状を踏まえ、留意が必要である。
地方自治体の情報システムにおける、最適
化の位置付けとめざすべき将来像について
展望する。
特
集
電子自治体の最適化
―住民サービス向上とコスト低減の両立に向けて―
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19
年
12
月
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研究レポート(1)
電子自治体最適化に関わる施策動向
2頁
研究レポート(2)
地方自治体における最適化計画策定のポイント
4頁
先進事例インタビュー
兵庫県における情報システムの最適化について
兵庫県 企画管理部教育・情報局自治情報課 課長補佐 津川 誠司氏
6頁
特
集
電子自治体の最適化
研究レポート
(1)
電子自治体最適化に関わる施策動向
三菱総合研究所 システムエンジニアリング本部
主席研究員
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19
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12
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北尾 隆幸
■政府における最適化計画は順調に進行
減は欠かすことのできない検討事項である。また、
政府の情報システムは、2001 年度に発表され
より一層の運営の効率化、多様化する住民ニー
た『e -Japan戦略』により大きな転換期を迎えた。
ズへの対応、地域コミュニティの活性化など、
2003 年度には、費用対効果を高め、予算効率の
さまざまな課題への迅速な対応が求められてお
高い簡素な政府を実現することを目的とした「業
り、情報通信技術を活用し、行政改革を推進す
務・システムの最適化」の実施が決定した。各
ることにより、住民サービスを向上させる取組
府省では、府省横断的な全体最適の視点から、
みが行われている。
現状を可視化・明確化し、理想・将来像を共有
化し、理想に至るプロセスの共有と仕組みを確
■地方自治体における最適化の 2 つの側面
立する刷新可能性調査及び最適化計画策定を経
地方自治体における情報システムの最適化に
て、システム開発フェーズの終盤にさしかかっ
あたっては、二つの側面からのアプローチを考
ている。再構築された府省の新システムは、稼
えることができる。一方は情報システムを利用
動を来年度以降に控えており、これまで政府を
した業務遂行プロセスの最適化であり、他方は
挙げて取り組んできた一連の最適化計画の実現
情報システムの企画から運用に至るシステムラ
に、国民の期待が高まっているところである。
イフサイクルの最適化である。総務省では、
2010 年度までに実現すべき電子自治体のあるべ
■地方自治体への最適化計画の波及
き姿として『新電子自治体推進指針』を策定し
従来の地方自治体の情報システムは、個別業
ており、その中の今後の重点的な取組み事項と
務の効率化を図るために、信頼性の高いメイン
して「IT を活用した行政改革の推進」が掲げら
フレームを使用して、個々に構築されてきた。
れている。
この影響で、近年多くの地方自治体で、システ
ムが複雑化し、改修や運用が困難、運用コスト
■業務遂行プロセスの最適化に資する事業
が高騰、拡張性が困難等の問題が発生している。
業務遂行プロセスの最適化を実現するための
これらの問題解決手段として、政府の最適化
象徴的な取組みとして、自治体 EA(Enterprise
計画の推進に引っ張られるように、業務・シス
Architecture)があげられる。自治体 EA は、行
テムの最適化やシステム資産の見直しによるシ
政改革の推進に向けて、業務及びシステムを組
ステムコスト削減への取組みが実施されている。
み替えることにより、ヒト・モノ・情報の流れ
夕張市の事例を待つまでもなく、少子高齢化等
を最適化させる取組みである。基本的には、中
に起因した財政状況の逼迫に直面している地方
央官庁における業務・システム最適化計画の策
自治体は多く、情報システムにかかる経費の削
定手法を踏襲しているが、特に各業務を「見え
図表1 地方自治体における情報システム最適化に関わる各施策の実施率
(%)
(%)
<都道府県>
80
40
60
30
40
20
20
10
0
<市町村>
0
2006
2007
(年度)
n=47
2006
(n=1,843)
BPR・EA等の業務改革
レガシーシステムオープン化
情報化投資の事前評価
情報課投資効果の事後評価
2007
(n=1,827)
(年度)
資料:総務省「地方自治情報管理概要」(2006 ∼ 2007 年)をもとに三菱総合研究所作成
る化」することにより、機能と情報の組み合わ
わち情報システムを適切に評価する能力を獲得
せに分解することに主眼を置く。同じく総務省
することであり、PDCA(Plan-Do-Check-Act)
が展開している地域情報プラットフォームと同
を意識したライフサイクルプロセスを実現する
様に、SOA(Service Oriented Architecture)
ためには不可欠な取組みである。
の考え方も含んでいる。他に類する業務が少なく、
特定の業務に特化した中央官庁の業務・システ
■自治体における最適化計画の推進状況
ムに比べ、地方自治体の業務はどの地方自治体
総務省が発表した「地方自治情報管理概要」
も法律に定められた同等の業務を実施しており、
には、都道府県及び市町村における情報システ
自治体間での業務の標準化を推進することが着
ム最適化への取組み状況が掲載されている。こ
眼点の一つとなっている。
れによると、都道府県及び市町村ともに電子自
治体に関わる施策の実施率として、
「レガシーシ
■情報システムのライフサイクルプロセスの
ステムからオープンシステムへの変更」に対す
最適化に資する事業
る措置が、最も多い割合を示している。レガシ
情報システムのライフサイクルプロセスの最
ーシステムのオープン化が優先して実施されて
適化に資する事業としては、レガシーシステム
いることの要因には、社会的な関心の高まりに
のオープン化によるマルチベンダ化の推進、及
加え、経費効果を明確に算出しやすいことがあ
び情報システム調達の透明化・効率化があげら
げられる。一方で、
「情報化投資効果の事後評価」
れる。中でも重要なのが、情報システム調達の
を実施している割合は、少数にとどまっている。
透明化・効率化である。情報システムのライフ
今後、長期的な視点から情報システムに対す
サイクルプロセスの最適化を維持するためには、
る投資を評価し、広義での情報システム最適化
公正かつ公平な調達環境を整備することはもち
を実現するためにも、事後評価に対する取組み
ろんのこと、自治体側の発注能力を向上させる
の割合が増加することが期待される。
ことが重要である。発注能力の向上とは、すな
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電子自治体の最適化
研究レポート
(2)
地方自治体における最適化計画策定のポイント
三菱総合研究所 システムエンジニアリング本部
研究員
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19
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木下 玄
■地方自治体にとっての情報システム
場合には、自治体 EA 事業による取組みは、業
地方自治体における財政状況は、全国的な傾
務を支援する情報システムの可視化や情報共有
向として悪化していることは事実であるが、そ
を推進させ、業務効率を向上させる等の成果が
れでも「都市と地方」
「市区町村と都道府県」の
期待される。一方で、最適化に向けて当面の課
違いにより、置かれている状況はさまざまである。
題として認識されている事項が短期的な経費削
そのため、自ずと各自治体における課題、選択
減である場合、業務・システム再構築等の抜本
すべき対応策は異なってくる。例えば、市区町
的な改革を伴わなくとも、情報システムの調達
村の業務においては対住民の窓口業務が大きな
過程等を見直すだけで、運用コストの大幅な削
割合を占めるが、都道府県の業務では住民との
減が図られる場合もある。まずは、解決すべき
接点は限定的であり、問題意識にも差異が生じ
課題を明確化し、緊急度や関連する施策動向等
ることは明らかである。各自治体が抱える課題
を整理することが重要である。
に向けて、いかに効果的かつ効率的に情報シス
テムの投資を進め、電子自治体としての最適化
■レガシーシステムオープン化の要否
を実現するかが重要である。経営と情報システ
汎用機で稼動しているレガシーシステムのオ
ムとの融合は、民間企業のみならず地方自治体
ープン化へ向けての取組みが活発であるが、こ
においても顕著であり、住民サービスの向上を
の取組みに対しても同様の視点が不可欠である。
図る上での大きな鍵となる。
レガシーシステムのオープン化を推進する要因
としては、運用コストの抑制、レガシーに関す
■電子自治体の最適化における EA の要否
る技術を保有する技術者の減少、特定ベンダー
電子自治体の最適化についての議論において、
の技術への依存により調達先が限定されるベン
EA は欠かすことのできない取組みとして位置
ダーロックインの排除等があげられる。しかし、
付けられている。総務省が展開する自治体 EA
これらの要因を解決するための手段は、オープ
事業では、業務を「見える化」することにより
ン化に限られるわけではない。税務をはじめと
抜本的に業務・システムを再構築し、スムーズ
する自治体の基幹系レガシーシステムには、構
な情報流通及びサービスレベルの向上を図るこ
築当初からの職員ノウハウが蓄積されており、
とを目的としている。そのため、自治体 EA 事
オープン化を一度に実施しようとすると数十億
業で示される手順を踏襲し効果をあげるには、
単位での経費が必要となる場合もある。さらに、
業務主管課をはじめ全庁的な推進体制を構築す
過去のノウハウが新システムに充分に反映でき
る必要がある。例えば、庁舎移転等にともなっ
ない場合には、安定した業務の実施を阻害する
て全面的な庁内組織の見直しを検討するような
恐れもある。当面の課題が運用コストの削減で
図表2 自治体におけるシステム最適化の実施イメージ
電
子
自
治
体
の
実
現
最適化計画にもとづく
業務・システム再構築
住民ニーズ
業務・システム
最適化計画
社会環境
の変化
自治体
としての
電子化展開
方針
参照モデル
EAによる
業務・システムの
最適化計画策定
国の
政策動向
情報技術
の進歩
参
照
モ
デ
ル
の
見
直
し
業務参照モデル
データ参照モデル
サービス・コンポーネント
参照モデル
業務・システム
運用
技術参照モデル
業績測定参照モデル
最適化計画
評価結果
評価指標に
基づく事後評価
●
効
果
的
な
情
報
投
資
め
ざ
す
べ
き
●
住
民
の
ニ
ー
ズ
に
即
し
た
サ
ー
ビ
ス
提
供
●
効
率
的
な
業
務
実
施
資料:三菱総合研究所
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ある場合、投資と回収のバランスを考慮すれば
対応しながら最適な状態を維持することが可能
完全なオープン化のみが解決策とはならない。
となる。業務・システム最適化のガイドライン
この場合、ハードウェアのみをオープン化する
には、EA 実施による効果を測定するための
ストレートコンバージョン等の手法も視野に入
KPI(Key Performance Indicator)が業績測
ってくる。運用コストを削減しつつ、既存資産
定参照モデルとして定義されている。これらの
である業務ロジックについては、長期的に腰を
指標を参考としつつ、情報システムの企画から
据えて対応を進めることも有効である。このよ
運用へと続く、情報システムライフサイクルの
うに、レガシーシステムに対する扱いにおいても、
最適化を実現することが望まれる。
現状課題の認識、優先度等の明確化が何よりも
一過的なEAやレガシーシステムオープン化は、
重要となる。
情報システムのライフサイクルを俯瞰で捉えた
全体最適には必ずしも寄与しない。自治体にお
■ PDCA を意識した
ける情報システムの最適化の真の目的は、中長
電子自治体最適化活動の継続
期的に安定したシステム環境、財政基盤を継続
組織における改善活動を持続的に運用してい
的に構築するとともに、住民に対するサービス
く他の取組みでも同様であるが、自治体におけ
レベルを、常に向上させることである。その点
る業務・システムの最適化においても PDCA を
に十分に留意しつつ、各自治体の持つ背景や実
回すことが重要である。まずは、課題の認識、
情に合わせた視点、及び手法を構築すべきである。
及びあるべき姿を明確に描くことから始まる。
実績があり、世の中の主流となっているモデル
その上で、取組みの実施状況を目的に即した指
は尊重すべきだが、本来の目的を見失うことに
標で定量的に評価し、課題認識にフィードバッ
なってはならない。
クすることで、随時変化する社会環境に動的に
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電子自治体の最適化
先進事例インタビュー
兵庫県における情報システムの
最適化について
兵庫県 企画管理部教育・情報局自治情報課 課長補佐 津川 誠司氏(写真)
聞き手:三菱総合研究所 システムエンジニアリング本部 本部長 泉 和明
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●自治体 EA 事業について
は、現場の職員に対しては、主に EA ドキュメ
――兵庫県では、厳しい財政状況を改善するた
ント作成の材料となる資料の提供に協力しても
め、全県をあげて行財政構造改革に取り組んで
らいました。その上で、三菱総合研究所に依頼
おられます。そのような状況の中、情報システ
して、EA ドキュメントを作っていただきました。
ムについても、自治情報課が中心となって EA
職員を参加させることにより、一体感を共有す
に取り組むことにより、大きな効果をあげてお
ることは必要ですが、必ずしもその結果として、
られます。今年の初めには、総務省が作成した
全体最適の観点から適切な成果が得られるとは
『情報システムの効率化に向けた取組事例集』
限りません。やはり、システムの分析能力を有
にも、兵庫県は、EA によって大きな効果をあ
する者が集約的に作業を行うことにより、迅速
げた事例として取り上げられました。この取組
化が図られるとともに、適切な分析基準を設定
み内容について、お聞かせください。
できると考えています。兵庫県におけるこれま
津川 誠司(以下、津川)
兵庫県における EA
での最適化の取組みでは、方向性の検討を兵庫
の取組みの特徴は、一般的な自治体 EA 手法で
県側がトップダウン的に検討し、文書の整理な
あるトップダウンによる取組みに加えて、もう
どの詳細な分析を三菱総合研究所が集約して行
一つ、ボトムアップによる刷新可能性調査を組
う、という役割分担が明確になっていた点が非
み合わせることによって、より効果的な対策を
常によかったと思います。
実現しているところにあります。長期的な視点
――職員の考えを最適化計画に反映させるため
としての EA と、短期的な視点としての刷新可
に、注意された点はありますか?
能性調査を併用することで、はじめて継続的な
津川 職員に対する EA ドキュメントのチェッ
システム最適化体制を実現できると考えていま
クの依頼にあたり、1か月後にホームページで
す。
公開すると言っておけば、皆、真剣に見てくれ
――では、まずトップダウンによる EA の取組
ますね。これにより、EA ドキュメントの内容
みについてお聞かせください。
をチェックする段階で、職員の協力をかなり広
津川 兵庫県においても、全体最適の進め方と
範囲に得ることができたと考えています。また、
しては、あくまでトップダウンによる実施が不
EA のドキュメントは、誰が見てもわかるもの
可欠であると考えています。例えば、EAのドキュ
ができました。結果として、自分達の行ってい
メントの作成について、自治体 EA では、通常、
る業務の共有、可視化が十分達成できたので、
現場の職員主体で「見える化」を図ることとし
自治体 EA がめざす以上の成果を得られたと考
ていますが、各業務の担当者の主観が入ってし
えています。
まい、客観性を失う懸念があります。兵庫県で
●定量的な評価について
――それらのトップダウン
的な EA 手法に加えて、兵
庫県ではより短期的なボト
ムアップでの詳細な検討を
されています。兵庫県にお
ける刷新可能性調査につい
て、お聞かせください。
津川 日本の EA の手法に
おいては、定量化という観
点が欠けていると考えてい
ます。その部分を補うため、
兵庫県では費用検討の手法
を EA の中に大幅に取り入
れました。この調査では、
兵庫県 企画管理部教育・情報局自治情報課 課長補佐 津川 誠司氏
対象とした全 73 の庁内システムについて、委
ことですね。お疲れ様でした。
託契約や機器調達の見直しを行いました。これ
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だけの数のシステムについて個別の開発ベンダー
●レガシーシステムのオープン化について
と折衝を行いましたから、かなり手間はかかり
――電子自治体における最適化の推進という観
ましたが、それだけの価値はありました。折衝
点からは、レガシーシステムのオープン化とい
にあたっては、システム保守費用の中の SE 単
う議論が欠かせません。兵庫県では、税や財務
価や前年度実績から逐一見直していきました。
などのいわゆる基幹系の業務に汎用機を利用し
――かなり緻密な作業になりますね。
ていますが、早急にオープン化する意向はない
津川 「積算資料」等の積算をする際に基準と
そうですね?
なる雑誌を見てみると、SE の単価というのは
津川 レガシーシステムのオープン化というこ
各地域で定められています。その単価から大幅
とはよく言われるのですが、現実的には難しい
に乖離した単価で積算されているシステムにつ
面が多くあると考えています。単純に考えても、
いて、一般的な単価に合わせる作業を実施しま
何万ページもの帳票などを印刷するには、汎用
した。これまでは、個別の単価ではなく、
「一式」
機のプリンタの方がまだまだ優れています。オー
と表現されていたために見逃していた部分です。
プン化にあたっては適材適所の考えに立ち、で
また、保守における出動回数についても、実績
きるところからやっていきたいと考えています。
報告から実際の出動回数を明らかにしました。
――オープン化にあたっては、いくつかの手法・
保守の出動回数に、年度ごとのバラつきはあま
技術がありますね。確かに、既存の資産をどの
りありませんので、実績の回数を基本として実
ように評価するのか、一概に不良債権だといっ
際に保守にかかった費用を積算し、契約額と乖
て廃棄してしまっていいのかという点は、注意
離した額の減額を交渉しました。
が必要ですね。
――ただ業務を整理するにとどまらず、より現
津川 兵庫県では、IBM 機と富士通機という2
実的な視点に立ち、地道な検証をされたという
台の汎用機を持っています。IBM 機の中では約
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19
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電子自治体の最適化
特
集
図表3 兵庫県におけるEAの取組みの位置付け
(統制重視)
トップダウン
アメリカ
カナダ
日本EA
デンマーク
︵
費
用
重
視
︶
︵
業
務
重
視
︶
兵庫県EA
日本刷新
可能性調査
イギリス
ドイツ
ボトムアップ
(技術重視)
自
治
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ン
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資料:兵庫県
130 種類の業務が動いていますが、その内の大
シップを持った組織が存在することは大きいと
半の業務は県の職員が作りあげたバッチ処理で、
思います。その意味でも、兵庫県の取組み方法
開発自体に費用はかかっておらず、メンテナン
は、全国の自治体の中でも成功している貴重な
スも職員と業者が高度に集約化して実施してい
事例で、まさに EA の兵庫モデルといえます。
ます。ハードについても、現在利用している汎
本日はお忙しい中、どうもありがとうござい
用機は再リースをしているので、当初に比べる
ました。
とかなり安くなっています。一方で、これらを
すべてオープン化して作り直すと、100 億円以
上かかります。ここで、投資と利益の適正なバ
ランスを考える必要があります。ただ、汎用機
を永久に残すわけにもいきませんから、ソフト
[参考]
兵庫県における最適化計画の取組み状況
(http://web.pref.hyogo.jp/pa12/pa12_000000
024.html)
ランディングの方向で検討をしていきたいと考
< 2005 年度のシステム経費削減状況>
えています。
2005 年度は、9 システムを対象とした。特に
――オープン化を推進する理由には、メンテナ
削減効果が顕著であったのは、以下の 3 システ
ンス性を向上させるという視点もありますが。
ムである。
津川 メンテナンスの観点からいえば、兵庫県
1)行政情報ネットワーク(県庁 WAN)
では従来からシステムに関するドキュメントを、
県庁 WAN の経費削減は、主に機器メーカー
しっかりと整備しています。ドキュメント等に
との直接交渉により、保守単価等を逐一削減す
ついての標準化ルールの遵守は、大変重要であ
ることにより実現している。削減要因は、以下
ると考えており、これからも、この運用方針を
の通りである。
継続していきたいと思っています。
・ 機器保守料率の見直し
――やはり、庁内の一体感も重要ですが、検討
・ 修理派遣回数の精査
においても、運用においても、明確なリーダー
・ 定期点検の廃止
図表4 兵庫県における最適化計画と成果の推移
2005
最
適
化
計
画
2006
2007
システム
基盤システム:県のIT施策の基盤
業務システム:各課の業務を
汎用機システム:汎用機で処理
種別
となるシステム
処理するシステム
されるシステム
システム
全9システム
全8システム
全6システム
名
□兵庫情報ハイウェイ
□県立大学学内LAN
□税務システム
□行政情報ネットワーク(県庁WAN)
□河川情報総合管理システム
□大型汎用機システム(1号機)
□文書管理システム
□広域災害・救急医療情報システム
□大型汎用機システム(2号機)
□電子申請システム
□環境情報総合システム
□財務会計システム
□災害対応総合情報ネットワーク
□土木積算システム
□県営住宅総合管理システム
□兵庫衛星通信ネットワーク
□工事・用地台帳システム
□給与システム
□電子入札システム
□人と自然の博物館ネットワーク
□入札参加資格審査システム
□占使用台帳システム
□物品電子調達システム
選定理由
県全体の運用経費の47.7%を占
県全体の運用経費の30.1%を占め
県全体の運用経費の16.2%を占める。
める。計画の策定による効果が
る。運用経費が5,000万円以上の
汎用機システムのうち、運用経費が
高い。
ものを選定。
5,000万円以上のものを選定。
成果(経費削減額) 約2億3,300万円
約1億424万円
資料:兵庫県
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・ その他精査
以上により、約 6,300 万円を削減した。
2)兵庫情報ハイウェイ
従前のネットワークでは二重リングを採用し
ていたのに対し、SONET/SDH を採用の上、総
延長を減少させ、アクセスポイント数も削減し
た。これにより、年間経費の約 4 億円削減を
2008 年度から予定している。
3)災害対応総合情報ネットワーク
三菱総合研究所 システムエンジニアリング本部 本部長 泉 和明
一般的な SE 単価を参考に、保守契約におけ
3)環境情報総合システム
る SE 単価の統一を図るとともに、稼動実績を
商用ソフトからオープンソースへの切り替え
精査することで、約 1,000 万円を削減した。
により、ソフトウェア費用等を約 2,900 万円削
減した。
< 2006 年度のシステム経費削減状況>
4)工事・用地台帳システム
2006 年度は、8 システムを対象としている。
サーバ機器を安価で高性能な機種へ見直すこと
1)県立大学学内 LAN
により、機器費用を約 1,100 万円削減した。
諸経費の見直しにより、約 660万円を削減した。
5)土木積算システム
2)広域災害・救急医療情報システム
専用端末を廃止し、職員共用パソコンを利用
データセンターの利用料等の見直しにより、
することにより、機器費用を約 2,000 万円削減
運営費用を約 550 万円削減した。
した。
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