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第12号(2013年)

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第12号(2013年)
青濃
2013.03.04_#10252288_ 表 1-4_02_1416 ツカ 4mm 2c
赤濃
ISSN 1348-0154
紀 要
March 30, 2013
第
12
No.
号
12
Original Article
••Disaster management with information for hazardous weather (PartⅠ)
3
••The Effect of Dialog with Business Persons on Work Values of College Students
Yoshihiro WADA
Masanori SUZUKI
••A Study on Training for Note-Taking of University Freshmen International Students
… …………………………………………………………………… Yasuaki KUNIHIRO
••Results of Educational Research… ………………………………………………………… 3
30
日
… ………………… Satoshi MIYASHITA
Note
17
月
••Examination of stimulating vibration that revives Local Muscles method
25
年
―A Practical Study on Career Education by Quasi-experiment―
… ………………………………………………………………………… Sayoko MIYAIRI
平成
―Proposition of the forecast verification based on the true recognition of scores―…
… ………………………………………………………………… Tsuguhito NISHIGAKI
33
43
第 12 号
平成25年3月30日
原著論文
••防災気象情報を利用した防災マネジメント(PartⅠ)
垣 語 人
3
~キャリア教育に関する準実験による実践的研究~…………宮 入 小夜子
17
―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―…………西
••社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響
••Local Muscles を活性化させる振動刺激方法の検討
…………宮下 智 和田 良広 鈴木 正則
33
研究ノート
••日本橋学館大学留学生対象初年次科目におけるノートテイキングの指導
―ノートテイキングの習慣化とその意義について―…………國
弘 保 明
43
54
••教育研究業績一覧…………………………………………………………………… 54
日本橋学館大学紀要 第 12 号
目
次
原著論文
防災気象情報を利用した防災マネジメント(PartⅠ)
―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―………… 西
人
3
社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響
∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼………… 宮 入 小夜子
17
Local Musclesを活性化させる振動刺激方法の検討
……………………………………………… 宮下 智 和田 良広 鈴木 正則
33
垣
語
研究ノート
日本橋学館大学留学生対象初年次科目におけるノートテイキングの指導
―ノートテイキングの習慣化とその意義について―………… 國 弘
明
43
教育研究業績一覧………………………………………………………………………………
54
保
THE BULLETIN OF NIHONBASHI GAKKAN UNIVERSITY NO. 12
Contents
Original Article
Disaster management with information for hazardous weather (PartⅠ)
―Proposition of the forecast verification based on the true recognition of scores―
………………………………………………………………… Tsuguhito NISHIGAKI
3
The Effect of Dialog with Business Persons on Work Values of College Students
―A Practical Study on Career Education by Quasi-experiment―
………………………………………………………………………… Sayoko MIYAIRI
17
Examination of stimulating vibration that revives Local Muscles method
…………………… Satoshi MIYASHITA Yoshihiro WADA Masanori SUZUKI
33
Note
A Study on Training for Note-Taking of University Freshmen International Students
…………………………………………………………………… Yasuaki KUNIHIRO
43
Results of Educational Research …………………………………………………………
54
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
原著論文
防災気象情報を利用した防災マネジメント(PartⅠ)
―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―
西垣 語人*1
防災気象情報の研究者・作成者(防災官庁や民間気象会社)、伝達者(マスコミ)・利用者・
アドバイザー(防災コンサルタント)が一体となった、防災マネジメントを確立しなくてはな
らない。特に、防災気象情報の研究者・作成者は、スコアの正しい認識を持った上で、予測対
象とする気象現象の発生確率(観測率)
、および統計的予測性能を本質的に表す「捕捉率と誤
警報率の定量的トレードオフ関係(信号検出理論における ROC 曲線)」を別個に明確に把握
しなくてはならず、発生確率に対する統計的予測性能を明示すべきである。
キーワード
防災気象情報 コスト・ロス・モデル 観測率 信号検出理論 捕捉率と誤警報率の定量的トレードオフ関係
1.はじめに
1.1.現状
普段、テレビやラジオ、インターネットなどで
見聞きする天気予報・注意報・警報をはじめとす
従って、気象情報の利用者が切望する防災気象
情報ほど予測精度の問題、予測の当り外れという
「不確実さ」を伴うため、防災気象情報の利用者
は非常に厳しい「不確定性下の意思決定」をせざ
るを得ない。
る多くの気象情報は、その情報の利用者にとっ
そして、利用者に限らず、防災気象情報の研究
て日々の生活には欠かせない。とりわけ、注意
者・作成者(防災官庁や民間気象会社)
、伝達者
報・警報などの防災気象情報ともなれば利用者の
(マスコミや地方公共団体)、アドバイザー(防災
生命・財産・生活を保全するという大きな役割を
コンサルタント)という、防災気象情報に関わる
担っている。
すべての人々が、それぞれの立場から、気象情報
しかしながら、気象庁(2012)の報告にもあ
の予測性能や利用価値を理解しなれければ、利用
るように、ここ 20 年で観測技術の進歩やコン
者の直面する「不確定性下の意思決定」を支援で
ピュータの計算能力の向上、物理過程を含んだ計
きないのである。
算スキームの改良などに伴って、予測精度がある
ところが、西垣(2012b)が日本災害情報学会
程度改善しているにもかかわらず、災害をもたら
の学会報告で取り上げた「MSN 産経ニュース」
すいくつかの気象現象、局地豪雨(俗にいうゲリ
HP の記事(2012.5.11)のように、『竜巻注意情
ラ豪雨)
、竜巻などの予測改善が遅々として進ま
報が的中率* 1%』という言葉だけが独り歩きし、
ないのが現状である。
1%という大きさに研究者も利用者も伝達者も惑
わされ、竜巻注意情報の有用性を正しく捉えられ
ず、過剰反応といってその存在を軽視してしまう、
2012 年 9 月 26 日受理
Disaster management with information for hazardous weather
(PartⅠ ) ―Proposition of the forecast verification based on
the true recognition of scores―
*1 Tsuguhito NISHIGAKI
日本橋学館大学リベラルアーツ学部
といった「不確定性下の意思決定」を阻害しかね
ない事態を招くのである(*注…気象庁(2011)
がその HP で解説している竜巻注意情報の的中率
は、本稿で解説している後述の適中率とは定義が
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
異なるので混同してはならない。以降、適中率を
の経済価値の評価は確かに重要事項の一つであ
はじめとする、気象予測の検証に使う評価点数の
る。しかしながら、経済価値を評価する以前に、
ことを単に「スコア」と呼ぶことにする)
。
従来使われてきたスコアが何を意味し、スコアに
一方、気象情報の利用者が直面する「不確定性
よって検証された気象予報(気象予測)技術とい
下の意思決定」の方法論の研究として、次の立平
うものがどれほどの予測性能を持っているのか、
(1999)と山田(2001)などの先行研究がある。
正しい認識に基づいて予測性能を評価した上で、
立平(1999)はコスト・ロス・モデルに基づいた、
予測性能とは異なる予測技術の経済価値を論ずべ
気象情報の経済価値の評価方法を示した。利用者
きであり、予測性能と経済効果は分離して考える
が自分の経済状況、すなわち、防災対策にかけら
べきである。
れるコスト(費用)および防災対策を講じなかっ
たために受けるロス(被害・損失)を考慮した上
で、利用者に最大利益をもたらすような気象情報
の利用を導く方法を提案したのである。
1.2.2.問題 2:予測検証 4 要素の混同
立平、山田、西垣などの意見をまとめると、気
象予測技術を検証する中で別個に評価すべきもの
山田(2001)は近年の行政の効率化の流れを
は次の 4 点(4 要素)であるが、従来の検証では
受け、気象庁をはじめとする防災官庁が防災気象
これらが混同されているか、不明瞭または未評価
情報の経済効果を勘案できるスコアを開発、提案
である。
した。彼は立平のコスト・ロス・モデルに立脚し
①気象現象の発生確率(または観測率)
た予報検証を発展させ、個々に見ればコストとロ
②捕捉率と誤警報率が表す予測性能(観測率に依
スの異なっている利用者集団全体の経済効果を評
存しない、正味の「見逃しと空振りとの定量的
価することのできる指数、ベネフィット指数を考
トレードオフ関係」)
③利用者のコスト・ロス構造
案した。
他方、立平、山田とは別に西垣(2012a)は信
④利用形態(利用時間、耐用時間など)
号検出理論に立脚した気象予測の検証方法につ
このうち、予測性能の評価に関しては①の予測
いて考察し、気象予測技術の予測性能の評価は
性能に関係ない観測率と、②予測性能を表す捕捉
ROC 曲線に示されるような、気象現象の発生確
率と誤警報率の 2 つが別個に評価されなくてはな
率(観測率)を分離した捕捉率(見逃し率)と誤
らない。
警報率(空振り率)の定量的トレードオフ関係、
4
4
この 2 点に加え、利用者に対する経済効果の
4
すなわち、
『どの程度ましなオオカミ少年か』を
評価を含めると、③、④の 2 点が追加されるが、
示すべきだとした。
これも別個に評価すべきである。
なお、これら 4 項目のうち、後者の③、④につ
1.2.従来の検証方法についての問題提起
本稿では、問題提起と議論の対象を気象現象の
有無予測(2 カテゴリー予測)に限定する。すな
いては利用者に対する経済効果も考慮する Part
Ⅱに問題点の議論を譲る。本稿の PartⅠでは前
者の①、②に限定して議論していく。
わち、降水量や降水確率などの予測値に閾値を設
定し、ON − OFF 情報に変換して発表する予測
情報のことである。
1.2.3.問題 3:発生確率(観測率)による従来ス
コア値への抑制効果
前節の①と②について、従来の検証方法には 2
1.2.1.問題 1:予測性能と経済効果の未分離
立平、山田両者が述べた通り、検証において、
利用者のコスト・ロス構造を考慮した、気象情報
つの大きな問題点がある。1 つ目は、従来のスコ
アは気象現象の発生確率(または観測率)の影響
で検証者の意図とは関係なく、その予測性能に直
西垣語人:防災気象情報を利用した防災マネジメント(Part Ⅰ)―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―
結する値が自動的に加減されており、観測率を明
2.理論
示せずに従来のスコアを使用することは本当の意
味で正味の予測性能を評価したことにならない。
2.1.2 カテゴリー予測と分割表
そして、2 つ目に仮に従来のスコアと観測率を別
気象現象の有無を降水確率や発雷確率といった
個に評価したとしても、いかなるスコアも単独で
指数で予測する場合に「指数がいくつ以上ならば
使用してしまうとやはり本当の意味で正味の予測
現象あり、それ未満ならば現象なし」と判断する
性能を評価したことにならない。
ためのしきい値を決定しなくてはならない。防災
気象情報は現状では降水量・風速・気温などの量
1.2.4.調査研究の方針
的予報に基づいており、確率形式の予報はまだ限
以上の問題点について、本稿では従来のスコア
られている。しきい値の決定後にその指数を使っ
の定義を確認し、スコアが観測率・捕捉率・誤警
て気象現象の有無予測を行って得られた予測の当
報率によってどのように構成されているかを確認
り外れ件数を表にまとめたのが表 1(下表)の 2
した上で、スコアへの観測率の影響や従来スコア
カテゴリー分割表である。
表 1)
2 カテゴリー分割表。
現象発生/非発生の当たり外れ回数。
の単独使用の影響を導出し、それらの改善方法を
提案する。また、本稿ではコスト・ロス・モデル
の詳細な解析手法は立平(1999)と山田(2001)
、
回数
および PartⅡの論文に譲り、彼らが十分に述べ
現象
あり
なかった、気象現象の発生確率(本稿は観測率で
代用)が分離された気象予測技術の予測性能、特
に、気象現象の発生確率を分離した形での見逃し
と空振りの定量的トレードオフ関係、数学的には
予測
あり
予測
なし
計
−
現象
なし
−
−
合計
−
+
−
−
この表の中で、現象ありと予測して現象があっ
信号検出理論の ROC 曲線(誤警報率の捕捉率依
た場合の件数
存性)が予測性能の指標として最も有望だが、こ
た場合の件数 −
れらを議論する。
また、現象なしと予測して現象があった場合の件
なお、PartⅡでは、ベネフィット指数による防
数 −
を「あり適中」件数、現象がなかっ
を「空振り」件数と定義する。
を「見逃し」件数、現象がなかった場
災気象情報の経済価値ついて述べるほか、射影幾
合の件数 − − +
何学の知見に基づいて、PartⅠで述べた ROC 曲
義する。さらに表 1 の各成分を観測回数 で割り、
4
4
4
線そのものが持つ統計的予測性能が、従来のスコ
相対頻度に換算すると次の表になる。
表 2)
2 カテゴリー分割表。
表 1 を相対頻度に換算して修正した表。
アやベネフィット指数の捕捉率依存性でも保存、
表現されていることも示す(発生確率を従来のス
コアとは別個に示さなくてはならないのに変わり
4
4
4
はないが)
。また、ここで予測性能を「統計的予
測性能」と言い換えた理由は、次節以降の 2 カテ
ゴリー予測の検証処理で得られる予測性能が「予
測性能のうち、統計処理によって失われた情報を
含まない」という意味を明確にするためである。
従って、これ以降、予測性能は「統計的予測性能」
に限定して議論する。
を「なし適中」件数と定
相対
頻度
予測
あり
現象
あり
現象
なし
計
予測
なし
計
−
−
−
− +
−
−
これら表 1、2 を元に各種スコアの計算式やそ
のふるまいを分析していく。
なお、これ以降は議論の便宜上、相対頻度を確
率とみなす。また、観測技術の観測性能による観
測の限界から、本来、予測対象とする気象現象の
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
気候的発生確率と は厳密には異なるが、これも
「どんなスコアの捕捉率依存性でも異なる予測
また議論の便宜上、 を気候的発生確率とみなし、
技術間での統計的予測性能の比較結果は同じ
さらに発生確率と略すことにする。
である」ことが射影保存量である複比によっ
て保証されているのを確認しやすいこと、
2.2.各種スコアの定義
が挙げられる。
2.2.1.捕捉率
次節では、従来のスコアについて、その定義式
・誤警報率 ・観測率Δ
表 2 の中で 、 − 、 、 − をそれぞれ発生
を前述の ・ ・ または ・ ・ または ・ ・
確率、非発生確率、予測確率、非予測確率と定義
Δを使った計算式に変形し、 値(Δ値)による
する(なお、発生確率は観測精度などの問題から
従来のスコア値への抑制効果の確認の準備をする
理想的な気候的発生確率
と区別して考える)。
表 1、2 を元に、捕捉率 (Hit Rate)と誤警報
率 (False Alarm Rate)を次式で定義する。
=
=
−
−
=
=
式、
式、
Δ式
と呼ぶ)。
なお、定義式と異なるこのような 3 種類の式表
現を行う理由として、前述のΔの導入理由に重な
…(1)
−
−
(以降、この変形を順に
るが、次の 4 点が挙げられる。
…(2)
1.統計的予測性能に関係する捕捉率と誤警報率
つまり、捕捉率とはあり適中件数を現象あり件
のペアと統計的予測性能とは直接関係がない
数で割ったものであり、誤警報率とは空振り件数
観測率(発生確率)とを分離して表現できる
を現象なし件数で割ったものである(なお、誤警
ため、スコアが統計的予測性能とは関係ない
報率は分母が − なので、分母が
観測率によって、
(意図的であるかないかに関
である空振
り率とは異なる)
。
わらず)スコア値がどのように抑制されたの
ここで、スコアではないが、新たな指標として、
降水・発雷などの気象現象の観測件数と非観測件
数の比を考慮し、観測率Δ
Δ=
−
=
か、が明瞭になる。
2.検証時に観測率Δが分かれば、予測対象とす
る気象現象の発生確率
−
だけ発生確率
…(3)
が明瞭になり、どれ
の小さい気象現象(竜巻など)
を予測対象とした統計的予測性能なのか、が
と定義する。すなわち、観測率Δは発生確率
に対するオッズ(Odds)になっている。
判然とする。
3.信号検出理論(2.4 で詳述)に基づけば、統
なお、通常は観測率Δよりも現象の発生確率
計的予測性能を表す、捕捉率
と誤警報率
で議論する方が期待値としてのスコアの意味合い
の定量的トレードオフ関係が観測率を分離し
を把握しやすく一般的だが、 からΔに表現を変
た形で明瞭になる。なお、立平(1999)の 45
換した理由として、
ページに掲載された従来のスコアを用いた図
1.スレットスコアや Heidke のスコアなどの使
がこのトレードオフ関係を示しているように
用頻度の高いスコアは、 よりもΔの方が簡
見えるが、従来のスコアでは観測率によるス
潔に表現できることが多く、発生確率
コア値への抑制効果を排除できない。
値に
よる、統計的予測性能とは関係なく自動的に
4.詳細は PartⅡで述べるが、現象の有無判定の
生じる、スコア値への抑制効果を把握しやす
しきい値を変化させた時の従来の各種スコア
いこと、
の捕捉率依存性(または誤警報率依存性)の
2.PartⅡで射影幾何学を用いて議論する際にそ
グラフをスコア曲線と定義すると、射影幾何
の数学的処理と考察が簡便になること、つま
学的にはスコア曲線は ROC 曲線の射影変換
り、射影変換を表す線形行列の演算によって
になっており、ROC 曲線によって示された統
西垣語人:防災気象情報を利用した防災マネジメント(Part Ⅰ)―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―
計的予測性能「捕捉率と誤警報率の定量的ト
測検証時に「なし適中」件数がほかの 2 カテゴリー
レードオフ関係」が、当然、任意のスコア曲
分割表の成分である「あり適中」件数、「見逃し」
線でも成り立つことが証明され、使用するス
件数、「空振り」件数に対して非常に大きい場合
コアによって統計的予測性能が歪曲されない
が多く、予測技術の統計的予測性能を評価する際
ことが保証される。
にスコアに考慮するのは不適切であるとして適中
率の分母、分子から差し引かれている。
2.2.2.適中率
通常、
適中率
(Accuracy)とは気象庁(2012
現在)がその HP に掲載している「天気予報の
2.2.4.Heidke のスキルスコア
Heidke(ハイキ)のスキルスコア
とは、
精度検証結果」の中で「降水の有無の適中率が
もともと適中率
85%」と述べているスコアを指す。なお、竜巻
統計的予測性能に関係なく適中した事例の確率
注意情報の的中率(=竜巻あり予報の適中率)と
を差し引いたものであり、次式で定義する。
は異なる。通常の適中率は次式(4)で定義する。
+( −
=
= 1−
−
+
)
1
−
1 +Δ
率は
+
)
−
1−
2(
−
)
=
…(6)
( − ) +( − )
1
+
…(4)
1 +Δ
ただし、
(4)
の第 1 ∼ 4 式は順に、
定義式、
式、
−
2(
−
)
=
( + )
−2
− +2
Δ
=
1 +Δ
+( −
=
+
(1 − )
(1 − )
=
の分母、分子の両者から、
式、
Δ式である。この第 4 式からは適中
ただし、式中の
率の中で、偶然適中した確率を意味し、
の線形結合で表されることが分かり、そ
と
+
( − )
( − )
=
の線形結合の係数は観測率Δに依存している。
は次に説明するスレットスコア
は「あり・なし適中」の確
2
…(7)
と表現される。(6)は第 1 式が定義式、第 2、
Heidke のスキルスコアの原型式であることから
3 式が定義式を元にスコア計算を簡略化した式で
解説したが、本稿では調査対象とせず、気象予測
ある。(6)を変形して、
技術の統計的予測性能を測る上で多用されている
を順に示すと、
スレットスコア、Heidke のスキルスコアを調査
対象とした。
スレットスコア
は前述の適中率
(Critical Success Index)
の定義式において、その分
式、
Δ式
2( − )
=
(1 − ) + (1 − )
=
2.2.3.スレットスコア
の
2( − )
+ −2
2( − )
=
…(8)
(1 −Δ) +(Δ− 1 − 1) +(1 +Δ)
となる。
母、分子からそれぞれ「なし適中」件数である
− − +
を差し引いたものであり、次式の
真の技術統計
(5)で定義される。
=
=
+
−
=
+(1 − )
=
1 +Δ
、 スコア
(True Skill Statistics)は
Hanssen − Kuiper の
+ −
スコア、予測効率とも呼
ばれ、次式で定義される。
−1
…(5)
ただし、
(5)
の第 1 ∼ 4 式は順に、定義式、
式、
2.2.5.真の技術統計
式、
Δ式である。なお、このスコアは予
=
=
−
−
−
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
=
=
−
数で割って相対度数に直すと、図 1 の相対出現頻
−
1−
−
度分布(階級幅の極限では確率密度関数)ができ
…(9)
る。なお、図 1 で横軸に確率値を採用**した理
ただし、第 2 式以降、定義式、
Δ
由について、伝達者や利用者が扱う情報としては
Δ式を見るとΔが含
確率情報が一般的で降水量で考えるよりも分かり
まれていない。従って、気象現象の観測率Δ、す
やすいからである(**注…しかしながら、現在
なわち、発生確率
は量的予報が主であるため、横軸は確率でない方
式の順に示した。
の
式、
による抑制効果は
に対
しては起きない。
が一般性はある)。
2.3.各種スコアにおける観測率Δ依存性
前節 2.2 の各種スコアの定義と
Δ式から、
次のことが分かる。スコア ・ ・
を除いて、
予測検証に利用されるほとんどのスコアは観測率
Δ(発生確率 )というゲタを履いており、大き
いΔはスコアの身長を大きくする、と例えるこ
とができる。すなわち、スコア ・ ・
以外
のスコアは観測率Δに強く依存しており、予測対
象とする気象現象の発生確率 が小さければ小さ
いほどスコア値も統計的予測性能に関係なく自動
図 1)
確率密度関数(相対出現頻度分布)
。
現象ありと現象なし、それぞれの場合における指数
の相対出現頻度分布を表したものである。
的に小さくなってしまうということである。われ
図 1 で、太実線、細実線の山がそれぞれ現象あ
われが知りたいのはゲタをはいていない本当の身
り、なし予測時の相対出現頻度分布(以降、便宜
長、防災気象情報の統計的予測性能である。この
上、確率密度関数と呼ぶ)を表す。また、2 つの
問題を解決するため、次節の信号検出理論を導入
山が重なる部分で、 は薄い灰色、 は灰色部分
し、正しいスコアの認識を得る。
にあたり、両者を分ける中央の太点線は通常のし
きい値(つまり、予測効率
2.4.信号検出理論
信号検出理論は、1950 年代にレーダー・シス
が最大となる指
数値)の位置を表す。そして、この太点線をはさみ、
現象あり予測時の山の右側が 、なし予測時の山
テムの通信工学的理論として考案された
(竹内ら,
の左側が
1989)
。すなわち、正規分布するノイズに埋もれ
は表 2 の分割表の各成分である、現象あり 、予
た信号の ON − OFF 状態を検出する能力を調べ
測あり 、あり適中 、見逃し − 、空振り − 、
るための理論であるが、心理学の分野にも応用さ
なし適中 − − + と次のような関係がある。
れている。この理論を本稿で扱っている「指数を
を指している。このとき、 、 、 、
=
=
使った気象現象の有無予測(2 カテゴリー予測)
」
に適用しよう。
2.1 節で述べたように、この予測で得られた当
=
=
−
1−
=
り外れの予測成績から分割表を作成してスコアを
= 1−
計算するのだが、これとは別に、現象あり予測時
と現象なし予測時のそれぞれで指数(降水量、降
水確率など)を適切な階級幅の階級に振り分けて
度数を数え上げ、それぞれ現象あり、なしの総件
−
= 1−
=
1−
+ =1
+
= 1 …(10)
− +
1−
西垣語人:防災気象情報を利用した防災マネジメント(Part Ⅰ)―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―
ただし、最後の 2 つの式は 2 つの山が規格化さ
測の検証では、多数の人命に関わるような大災害
れていることを表し、現象あり、なし予測時の山
を見逃してしまう危険性が大いに高まる。従って、
の面積(=1)がそれぞれ + 、 + に等しいこ
しきい値は低くなりすぎないように設定しなくて
とを表す。この図 1 から次の 2 つの場合を考える。
はならない。
1 つ目は図 2 に示したような理想的、というよ
なお、最善のしきい値とは本来、利用者のコス
りは非現実的な確率密度関数である。 = =0 で
ト・ロス構造によって決定されるため、次の論文
空振りも見逃しも全くないという「完全予測」の
PartⅡに説明を譲る。
事例である。当然、しきい値は 2 つの山の境界に
決定され、
= =1、 =0 となる。
2.5.ROC 曲線
2 つ目は図 3 に示したような現実的、極めてあ
ROC(relative operating characteristic、receiver
りがち確率密度関数である。図 1 の現象あり予測
operating curve)曲線とは、前節の信号検出理論
時の山の位置を図 3 では細点線の位置で示してあ
に基づき、現象の有無予測によって得られた 2
る。図 3 ではあり予測時の山がなし予測時の山の
つの確率密度関数で、予測の指数値のしきい値を
ある左へシフト(左向きの黒矢印)しており、2
最小値から最大値まで変化させたときの「捕捉率
つの山はほとんど重なり、 、 が非常に大きい。
の誤警報率
依存性」を図示したものである。
残念ながら、このケースは防災気象情報の統計的
図 4 に便宜上(特に PartⅡにつなぐために)縦
予測性能を扱う際にもあり得るものである。
軸と横軸を入れ替えた、誤警報率
の捕捉率
依存性のグラフを示す。この図は予測技術の例と
して、完全予測(前節に説明済み)
、技術 1、技
術 2、技術 3、無技術の 5 つについて、それぞれ、
太点線、太実線、細実線、極細実線、細点線で示
してある。統計的予測性能が良ければ良いほど、
ROC 曲線が悪い方のよりも右下に位置しており、
つまり「より大きな捕捉率とより小さな誤警報率
を持つ」ことを表している。その結果、統計的予
図 2)
理想な確率密度関数。非現実的。
測性能が良ければ良いほど、直線 = と ROC
曲線とで囲まれた面積が大きくなる。
なお、実際の大雨や竜巻など激しい現象の場合、
図 3 の確率密度関数が非対称に歪んだり、あり
予測時の山となし予測時の山とでピークの高さが
違ったり、時には 2 つのピークが出現する場合も
あり得る。このような場合、図 4 の各種技術に対
応する ROC 曲線は交差したり波打ったりする可
能性がある。その場合、交点間で限定的に「より
大きな捕捉率とより小さな誤警報率を持つ」方が
図 3)
現実の確率密度関数。
技術が上であると解釈する。
このような場合、
通常の信号検出理論(竹内ら,
1989)で言われているように「予測効率
この ROC 曲線こそ、捕捉率(見逃し率)と誤
最
警報率(空振り率)の定量的トレードオフ関係=
大時の指数値をしきい値」にしてしまうと、捕捉
「どのくらいましなオオカミ少年なのか?」を明瞭
4 4 4
率
が大幅に減少し、防災気象情報用の気象予
に示したものである。つまり、捕捉率を大きく(=
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
見逃し率を小さく)したいとしきい値を変えれば、
また、読者の理解を促すために便宜上、事例説
誤警報率(=空振り率)が増えてしまうというジ
明の 2 カテゴリー分割表は表 2 の相対頻度で表
レンマに我々は居て、信号検出理論の確率密度関
現したものではなく、通常の表 1 のものだけを引
数において現実は b=c=0 となりえないので、
「同
用した。
じ回数だけ空振るなら、少しでも現象ありと当て
る回数が多い予測」または「同じ回数だけ現象あ
4.調査結果
りと当てられるなら、少しでも空振るウソの回数
が少ない予測」を我々は選択すべきなのである。
従って、検証時において、できれば ROC 曲線
の形状そのもの、少なくとも
・ ・Δを明示す
4.1.事例 1、観測率Δに対するスコアの挙動
表 3 は仮想的な予測結果を想定して作成された
2 カテゴリー分割表で、 ・ ・ ・ の値を一定
になるように観測率Δを 1、9、15%と変化させ、
ることが求められる。
それぞれ例①、②、③とした。なお、Δが 100%
を超える、つまり現象なし件数があり件数を上回
る(発生確率が 50%)を超える場合が理論上は
あり得るが、防災の対象となる気象現象としては
発生確率が低くて考えにくく、除外しても良いと
判断して省略した。
表 4 は表 3 を元に計算した各種スコアの観測率
依存性をまとめたもので、統計的予測性能を示す
本質的なスコア 、 、
図 4)
ROC 曲線。
便宜上、通常のものとは縦軸と横軸が逆である。こ
の図のおける予測精度は、無技術<技術 3 <技術 2
<技術 1 <完全となっている。
および
は変化しないが、
がΔと共に増加しているのは明白で、
統計的予測性能とは関係なくΔが自動的に
よび
お
の値を大きくしている。従って、任意の
検証時には、必ず、統計的予測性能を表さないΔ
の評価を 、 、
3.調査方法
3.1.従来スコアの挙動調査
前章の理論を元に具体的なスコアの計算事例を
2 つ調査し、その問題点を確認した。
1 つ目は観測率Δを 1、9、15%と変化させた
場合における各種スコアの挙動、2 つ目は観測率
Δを 6.7、1.4、0.020%、誤警報率
を 100、21、
とは別に行う必要がある。
表 3) 異なる観測率Δに対する分割表、仮想的な事
例。ただし、 ・ ・ ・ の値は一定として、 ・
を変化させたもので、例①(上)
、②(中)
、③(下)
の順に観測率Δを 1、9、15%と変化させた。
例①:Δ=1%[P/
(1−P)
=500/55000]
、
およそ 100 回に 1 回は観測している場合。
回数
予測あり
予測なし
合計
現象あり
200
300
500
0.29%と変化させた場合における各種スコアの挙
現象なし
5000
50000
55000
動を調査した。特に、観測率依存性が大きいス
合計
5200
50300
55500
レットスコアと Heidke のスコア、および予測効
率
に注目した。
なお、スコアの計算で定義式、
Δ式それぞ
れの計算結果の一致も確認した。但し、計算結果
が一致したため、特に区別せず計算結果を片方の
み表 4、6 に示す。
例②:Δ=9%[P/
(1−P)
=500/5500]
、
およそ 10 回に 1 回は観測している場合。
回数
予測あり
予測なし
合計
現象あり
200
300
500
現象なし
500
5000
5500
合計
700
5300
6000
西垣語人:防災気象情報を利用した防災マネジメント(Part Ⅰ)―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―
例③:Δ=15%[P/(1−P)
=500/3300]
、
およそ 7 回に 1 回は観測している場合。
回数
予測あり
予測なし
合計
現象あり
200
300
500
現象なし
300
3000
3300
合計
500
3300
1300
悪、例⑥が最良な想定となるが、実際は捕捉率
しか分からずに誤警報率
が不明であるために本
当の統計的予測性能は決めようがない。
このように − − +
トレードオフ関係が曖昧となり、統計的予測性能
が不明となる。捕捉率
表 4)
表2を元に計算された各種スコアの観測率依
存性。表の「変化なし」は小数点以下が完全一致。
観測率Δ(%) 観測率Δに対
例① 例② 例③ する各種スコ
1
9
15 アの変化
各種スコア
を省略すれば定量的
と誤警報率
との定量
的トレードオフ関係、強いては ROC 曲線の形状
を知るためにも、なし適中件数 − − +
省略してならないのである。
捕捉率
40
40
40
変化
なし
表 5)
異なる「なし適中件数」 − − +
る分割表、気象庁(2011)の報告。
誤警報率
9.1
9.1
9.1
変化
なし
例④:Δ=6.7%
(
真の技術統計
=
Hanssen の スコア
31
31
31
変化
なし
25
Δと共に
増加
31
Δと共に
増加
スレットスコア
Heidke のスキル
スコア
3.6
5
20
26
回数
事例 2、誤警報率
に対するスコアのふ
るまい
に対す
=39/581)
、 =100%
予測あり
予測なし
合計
現象あり
8
31
39
現象なし
581
0
581
合計
589
31
620
例⑤:Δ=1.4%
(
回数
4.2.
を
=39/2832)
、 =21%
予測あり
予測なし
合計
現象あり
8
31
39
現象なし
581
2251
2832
合計
589
2282
2871
表 5 は気象庁(2011)がその HP で公開して
いる資料「竜巻注意情報および竜巻発生確度ナウ
キャストの検証結果(2011 年)
」を元に作成した
2 カテゴリー分割表、表 6 は表 5 を元に計算した
各種スコアの誤警報率依存性をまとめたものであ
例⑥:Δ=0.020%(
回数
予測あり
=39/199,411)、 =0.29%
予測なし
合計
現象あり
8
31
39
現象なし
581
199,380
199,411
合計
589
199,961
200,000
る。ただし、元資料には「なし適中件数 − −
+ 」の情報が欠落しているという不備がある
ため、誤警報率
表 6) 表 5 を元に計算された各種スコアの誤警報率
依存性。表の「変化なし」は表 4 と同じ。
が 100%、21%、0.020%とい
う 3 つのケースをこちらで想定した。なお、3 番
観測率Δ(%)
各種スコア
目のケースは 1 年間(=365 日×24 時間)に 2 時
間程度の観測率を持つ現象、どこかの管区気象台
の管轄下で年 1、2 回程度起きる竜巻を想定した
ものである(気象庁 HP 竜巻 DB より概算)
。ど
の想定でも捕捉率(21%)とスレットスコア(1%)
は変わらないが、誤警報率
真の技術統計
が 100%から 0.29%、
が−79%から 20%、Heidke の
スキルスコアが−10%から 2.5%まで変化してい
る。つまり、信号検出理論より、統計的予測性能
の一条件である誤警報率
比して予測効率
が大きく減少するのに
が大きく増加し、例④が最
捕捉率
誤警報率
真の技術統計
=
Hanssen の スコア
スレットスコア
Heidke のスキル
スコア
6.7
誤警報率 F に
例⑥ 対する各種ス
1.4 0.020 コアの変化
21
21
21
100
21
0.29
減少
− 79
0.0
20
増加
1.3
1.3
1.3
変化なし
− 10
0
2.5
増加
例④
例⑤
変化なし
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
5.結論
防災気象情報の利用するにあたり、防災マネジ
補遺 各種スコアの
式・
式・
導出方法について
A1). 表 2 の諸因子の表現式、準備
メント上、統計的予測性能を正しく評価する上で
表 1・2 を元に計算する、捕捉率
重要な要素は次の 2 点である。
の定義式は次式であった。
①予測対象領域・予測対象期間で発生する現象の
=
=
=
−
−
発生確率 (観測率Δ)
②信号検出理論によって判断される、予測技術の
統計的予測性能、捕捉率 (見逃し率)と誤警
報率 (空振り率)の定量的トレードオフ関係
4
4
Δ式の
…(A1)
=
従って、あり適中
と誤警報率
と誤警報率
−
1−
…(A2)
と捕捉率
および予測確率
の関係は(A1)、(A2)より、
4
―どの程度ましなオオカミ少年か―、つまり、
=
…(A3)
ROC 曲線
=
+(1 − )
両者は別々の情報であるため、別個に評価され
…(A4)
とも表現できる。また、注目する気象現象の気候
なくてはならない。発生確率 (観測率Δ)は気
的発生確率 、および
象現象の種類によって異なるし、また ROC 曲線
率Δはそれぞれ
の形状こそ統計的予測性能である。従って、
(Δ)
Δ=
と ROC 曲線を評価しない限り、正しい予測検証
=
を行ったと言えないのである。
と同等な性質を持つ観測
…(A5)
1−
Δ
…(A6)
1 +Δ
というようにΔは
のオッズとなっている。
また、諸因子をΔの関数として表すと、
◎ 現象なし
1−
= 1−
Δ
1
=
…(A7)
1 +Δ
1 +Δ
◎ 見逃し
−
=
−
= (1 − )
=
Δ
(1 − ) …(A8)
1 +Δ
◎ 空振り
−
=
=
+
( − )−
1
1 +Δ
=( − )
…(A9)
◎ なし適中
1−
− +
−
= 1 −( − )
−
= 1 − (1 − )
= 1−
+
=1−
−
−
−
(1 − )
−
+
+
)1 − )
=(1 − (
= 1−
=
Δ
(1 − )
1 +Δ
1
(1 − ) …(A10)
1 +Δ
西垣語人:防災気象情報を利用した防災マネジメント(Part Ⅰ)―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―
A2)
. 適中率
適中率
、式(4)
(
は、(A1)∼(A10)より、
+
( − −
=
+
=
−
=
+2
−
= 1−
−(1 − ) −
Δ
=
1 +Δ
1
+
(1 − )
1 +Δ
Δ
=
1 +Δ
1
−
1 +Δ
A3)
. スレットスコア
=
+
=
−{
+( − (
) − )
}
2
−2
−
従って、
、式(5)
=
Heidke のスキルスコア
+
( −
−
=
は、
+
)
−
…(A14)
1−
+
( − )
( − )
2
である。ここで、
…(A15)
の分母、分子に
2
をかけ
てそれぞれ計算すると、
の分子)
×
2
+
( − −
=2
=(
−
−
+
)
−
+ 2 )− {
+2
−2
−
−
2( − )
+ −2
…(A19)
2(1 − (
) − )
(1 − 2 ) +
(1 − (
)1 − 2 ) +
)…(A16)
×
2
+
( − )
( − )
}
−
2
+
1−
1−
+
2( − )
1−
−1
+ 1+
1−
2( − )
=
…(A20)
(1 −Δ) +(Δ− 1 − 1) +(1 +Δ)
ただし、
=
で割ると、
代入して、分母、分子を (1 − )で割ると、
A4)
. Heidke のスキルスコア、式(8)
−
2
…(A18)
(A1)∼(A10)より、この式に(A3)
、
(A4)を
…(A12)
=
2
2(
−
)
( + )
−2
…(A13)
1 +Δ− 1
= ( −
は次式のように簡略化される。
=
=
=
…(A17)
2( − )
=
(1 − ) + (1 − )
式(A12)の分母、分子を で割ると、
(
+
この式の分母・分子を
w
+ −
=
+
(1 − )
=
+
+
(1 − ) }−
+{
=
+
2(
−
)
=
( − )+( − )
1
+
…(A11)
1 +Δ
は、
(A1)∼(A10)より、
−
+
2
= ( + )− 2
+2
+(1 − )
(1 − )
スレットスコア
2
=( − ) + ( − )
− +2
=
)×
2
2
= −2
= 1−
=
=(1 −
=
)
の分母)×
+
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
参考文献
1 )MSN 産経ニュース HP, 2012.5.11 :
explanation.html, メニュー「気象統計情報」中
の「天気予報・台風」のコンテンツ「天気予報
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120511/
の精度検証結果」にある「検証方法の説明」.
dst12051101130003-n1.htm, メ ニ ュ ー「 事 件 」
5 )竹内啓ら , 1989 : 統計学辞典 , 東洋経済新報社 ,
中の「事故・災害関連」のコンテンツ『
【竜巻情報】
的中率 1%、
NHK 速報に賛否「有益」
「大げさ」
』.
2 )気象庁 , 2011 : 気象庁 HP
http://ds.data.jma.go.jp/fcd/tatsumaki/
tatsumaki_jyoho_rireki_2011.html, メニュー「気
804pp.
6 )立平良三 , 1999 : 気象予報による意思決定―不
確実情報の経済価値―, 東京堂出版 , 142pp.
7 )西垣語人 , 2012a : 予測検証学の確立 , 大気電気
学会誌 , Vol.6, No.1 (No.80), 156-157pp.
象統計情報」中の「天気予報・台風」のコンテ
8 )西垣語人 , 2012b : スコアの正しい認識による予
ンツ「天気予報・台風 > 竜巻注意情報の発表状
測検証に基づいた 防災気象情報を利用した防災
況」にある「平成 23 年(2011 年)竜巻注意情
マネジメント , ―2011 年の竜巻注意情報の予測
報の発表状況」.
精度が的中率 1%であることに対するコメント
3 )気象庁 , 2012 : 気象業務はいま 2012, 研精堂印
刷株式会社 , 146-154pp. この冊子は「気象白書」
に相当する .
4 )気象庁 , 2012 現在 : 気象庁 HP
http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/kensho/
―, 日本災害情報学会 , 第 14 回学会大会予稿集
予稿集(東京大学).
9 )山田眞吾 , 2001 :[短報]コスト・ロス・モデル
に基づいた天気予報の評価指数の提案 , 天気 ,
48, 39-45pp.
西垣語人:防災気象情報を利用した防災マネジメント(Part Ⅰ)―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―
Disaster management with information for hazardous
weather (PartⅠ) ―Proposition of the forecast verification
based on the true recognition of scores―
Tsuguhito NISHIGAKI*1
Synopsis
Scholars, implementers (disaster prevention government offices or private weather corporations), communicators (i.e., mass-media), users, advisers (disaster management consultant), who concerned with information for hazardous weather, must intimately cooperate with one another and establish disaster management. Especially, considering with the true recognition of scores, the Scholars, implementers must investigate and express the weather
phenomena probabilities and the quantitative trade-off relation between hit rate and false alarm rate, i.e., ROC
(receiver operating characteristic) curve in the signal detection theory.
Key words
information for hazardous weather, cost-loss model, observed rate, signal detection theory,
quantitative trade-off relation between hit rate and false alarm rate
*1 Faculty of Liberal Arts Nihonbashi Gakkan University
NIHONBASHI GAKKAN UNIVERSITY Bulletin No.12
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
原著論文
社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響
∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼
宮入 小夜子*1
学生と社会人で「何のために働くのか」について対話を通して考える「ハタモク」のワーク
ショップ(3 時間)を 2 回実施し、事前、1 回後、2 回後の変化について、準実験的な方法に
よる調査を行った。
その結果、学生の社会人に対するイメージは、事前のネガティブなものが 43.0%、ポジティ
ブなものが 18.5%だったのが、2 回目終了時にはそれぞれ、24.6%と 43.8%と逆転し、
「実際
に見た社会人」が大きな影響を与えている事がわかった。分散分析の結果、
「職業進路成熟」
「話
し方」
「特性的自己効力感」の各因子について調査時点の主効果が認められ、多重比較の結果、
これらの各因子は事前の時点よりも 1 回後、および 2 回後の時点において有意に高かった。
社会人との直接的な相互作用を通じて「気づき」を促進させるハタモクは、ポジティブな社
会人イメージを形成し、自分の将来について考え、自分の言葉で話し、自信を持てるようにな
ることが示唆された。
大学のキャリア教育におけるプログラムとして、
社会人との対話が学生の意識(社会人イメー
ジ、キャリア成熟、対人スキルに関する自己認知、および特性的自己効力感)に影響を与え、
学生たちの進路選択行動の遂行可能感を高めるのに有効であると考えられる。
キーワード
キャリア教育 対話 ハタモク 特性的自己効力感 準実験
1.問題と目的
行支援の必要性等を踏まえ、2010 年度に大学設
置基準及び短期大学設置基準が改正されている。
学 校 基 本 調 査 に よ る と、2011 年 3 月 に 大 学
大学設置基準に「学生が卒業後自らの資質を向
を 卒 業 し て 就 職 し た 人 数 が 34 万 人( 内 定 率
上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要
91.0%、前年比 0.8 ポイント減少)に対し、就職
な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて
できないまま大学を卒業した人数(新卒無業者)
培うことができるよう、大学内の組織間の有機的
は 8 万 8000 人に達し、この年の卒業者の約 20%
な連携を図り、適切な体制を整えるものとする」
であった。
(第四十二の二)という条文が加味され、これに
大学・短期大学への進学率が 55%を超え、学生
よって 2011 年度からは、すべての大学・短期大
が多様化し、職業人育成の観点から大学・短期大
学において、教育課程の内外を通じたキャリア教
学に求められる機能も多様化しているが、現在の
育が義務化されたのである。
厳しい雇用情勢、学生の多様化に伴う卒業後の移
このような方針を受け、2010 年度に「職業意
識の形成に関わる授業科目」を開設している大
2012 年 9 月 27 日受理
The Effect of Dialog with Business Persons on Work Values
of College Students ∼ A Practical Study on Career
Education by Quasi-experiment
*1 Sayoko MIYAIRI
日本橋学館大学リベラルアーツ学部
学は、文部科学省が行った「学生の就職・採用
活動に関する調査結果の概要」によると全体の
71.4%となっており、2001 年度の 35%と比較し
て、10 年間で 2 倍以上となった。
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
しかしながら、従来から学校教育において展開
育との接続の改善について」の中で、「キャリア
されてきた「進路指導」や「職業教育」などと比べ、
教育」を「望ましい職業観・勤労観及び職業に関
「キャリア教育」については、必ずしも明確な共
する知識や技能を身に付けさせるとともに、自己
通理解がなされておらず、
広く使われている「キャ
の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・
リア」及び「キャリア教育」という言葉の意味付
態度を育てる教育」と定義した。ここでは、教育
けや受け止め方は多様である。
課程におけるキャリアの学習、キャリアガイダン
中央教育審議会(以下、中教審と略す)のキャ
リア教育・職業教育特別部会は、2011 年に「今
後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り
方について」答申をとりまとめ、その中で、
「仕
ス、カウンセリング、インターンシップなど、
「学
校教育と職業生活との接続」を図る方策として、
「小学校から高等教育にいたるキャリア教育」に
ついて提案がなされた。
事をすることは一つの企業等の中で単線的に進む
2004 年 6 月の文部科学省の「キャリア教育の
ものだけではなくなりつつあり、社会に出た後、
推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」
生涯の中で必ず訪れる幾つかの転機に対処するた
(以下、「キャリア教育推進会議報告書」と略す)
めにも、また自ら積極的に選択して進むべき道を
では、「キャリア」を「個々人が生涯にわたって
変更するためにも、勤労観・職業観などの生涯に
遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程に
わたって社会で仕事に取り組み、具体的に行動す
おける自己と働くこととの関係付けや価値付けの
る際の判断基準となる価値観を形成する過程を経
累積」
「個人が職業生活、家庭生活、市民生活等
験しておくことが必要である。
」と述べている。
の全生活の中で経験する様々な立場や役割を遂行
さらに、
「
『なぜ仕事をするのか』
『自分の人生の
する活動」と定義した。そして、キャリア教育に
中で仕事や職業をどのように位置付けるか』など
ついては「一人一人のキャリア発達や個としての
の勤労観・職業観が十分に若者に形成されていな
自立を促す視点から、従来の教育の在り方を幅広
いことは様々に指摘されており、(中略)…様々
く見直し、改革していくための理念」であると定
な能力等の育成を通じて、個人の中で時間をかけ
義し、全教育活動におけるキャリア教育の展開を
てこのような価値観を形成・確立していく必要が
求めた。
ある」としている。
「キャリア教育推進会議報告書」
(2004)では、
それでは、大学の課程において行われるキャリ
「従来の職業教育の取組みにおいては生徒のキャ
ア教育の中で、どのようにしてこのような価値観
リア発達の支援が十分行われなかったという問題
を醸成していくことが可能であるのだろうか。単
意識に立ち、今後は、働くことの意義や専門的な
なる知識の獲得や単位取得ではなく、自ら学ぶ目
知識・技能を習得することの意義を理解し、その
的や働く目的を描こうとするためにはどのような
上で、科目やコースひいては将来の職業を自らの
方法が有効であるのか。
意志と責任で選択し、専門的な知識・技能の習得
以上のような問題意識に基づき、
学生の勤労観・
職業観の形成に関して、社会人と働く目的につい
て対話を行うワークショップの有効性について、
に意欲的に取り組むことができるようにする指導
を充実していく」ことを求めている。
2009 年の中教審大学分科会の報告の中で、キャ
本学におけるキャリアデザイン科目において準実
リア教育の課題として、「現在の厳しい雇用情勢
験により検討を行った。
や、学生の多様化に伴う卒業後の移行支援の必要
2.大学におけるキャリア教育に関す
る経緯
1999 年の中教審答申「初等中等教育と高等教
性等を踏まえ、学生が、それぞれの専門分野の知
識・技能とともに、職業を通じて社会とどのよう
に関わっていくのか、明確な課題意識と具体的な
目標を持ち、それを実現するための能力を身につ
宮入小夜子:社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼
けられるようにする」
ことをあげ、
「大学の自主性・
育成支援事業」の助成を受けた「実践的キャリア
自律性や、それぞれの多様性を前提としつつ、す
ガイダンス」を「キャリアデザイン科目」として
べての大学において、教育課程の内外を通じて、
導入し、同時にキャリア関連科目の大幅な見直し
社会的・職業的自立に向けた指導等に取り組むた
を行った。外部専門機関も活用し、従来大学側で
め、その体制を整えることについて大学設置基準
行っていたキャリア科目およびキャリアガイダン
に位置づける」よう提案がされた。
ス(就職指導)の内容をより実践的な内容に改編
2011 年には、中教審がその答申「今後の学校
したのである。
におけるキャリア教育・職業教育の在り方につい
当初は就職課が主催する 3 年次生を対象とした
て」の中で、
キャリア教育を「一人一人の社会的・
就職ガイダンスを年間 10 回程度実施し、一般常識
職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度
対策やビジネスマナー、自己分析、職業適性検査、
を育てることを通して、
キャリア発達を促す教育」
企業研究、履歴書・エントリーシートの書き方等
とし、キャリア教育で育成すべき基礎的・汎用的
を学ぶとともに、企業の人事担当者を招いたセミ
能力として、①人間関係形成・社会形成能力、②
ナーや先輩の就職活動体験報告会などを開催し
自己理解・自己管理能力、③課題対応能力、④キャ
ていた。また、夏休みには希望者を対象に「公務
リアプランニング能力をあげている。
員試験対策講座」や SPI(Synthetic Personality
これら 4 つの能力は、各界から、現実の社会で
Inventory、総合適性検査)の国語・数学・英語に
生き、社会をつくる人間が有する資質・能力や職
加え、小論文・時事問題の一般常識対策などの「就
場等で求められる能力という観点等から、「人間
職試験対策講座」などを設けていた。
力」
「社会人基礎力」
「就職基礎能力」等の考え方
大学側の取り組みに加え、学科主催の「経営
が提案されたものを参考としつつ、特に国立教育
フォーラム」を年 2 ∼ 3 回開催し、企業の経営
政策研究所による「キャリア発達にかかわる諸能
者や第一線の実務家などのリーダーを招いて、外
力(例)
」を基に、
「仕事に就くこと」に焦点をあ
部からの情報や企業に求められる人材について理
て整理を行ったものである。
解を深める機会を設けていた。
この中の「キャリアプランニング能力」は、
「働
このような一連の就職支援講座への学生の参加
くこと」の意義を理解し、自らが果たすべき様々
が低迷し、それに伴う就職活動の準備不足や活動
な立場や役割との関連を踏まえて「働くこと」を
開始の遅れが目立ってきたため、当時の就職関係
位置付け、多様な生き方に関する様々な情報を適
委員会および就職課では対策として、2005 年度
切に取捨選択・活用しながら、自ら主体的に判断
より 2 年次生を対象としたキャリアガイダンスの
してキャリアを形成していく力であるとされてい
開催を並行して行った。
る。この能力は、社会人・職業人として生活して
2007 年度には就職課をキャリアセンターとし
いくために生涯にわたって必要となる能力であ
て改編し、キャリアガイダンスと平行して、カリ
り、例えば、学ぶこと・働くことの意義や役割の
キュラムに全学年を対象とする単位制の「キャリ
理解、多様性の理解、将来設計、選択、行動と改
アプランニング科目」を開講して、本格的なキャ
善等が挙げられる。
リア教育を実施している。キャリアプランニング
3.本学におけるキャリア教育の取り
組み
2011 年度から職業指導(キャリアガイダンス)
(CP)は全学年を対象とし、1 年次生からそれぞ
れ CP Ⅰ、CP Ⅱ、CP Ⅲ、CP Ⅳの通年科目とし
て、講座は主に専任教員が担当し、一部非常勤講
師が担当した。1 年次生を対象とした CP Ⅰは 1
を大学の教育課程に盛り込むことが義務化された
年ゼミとの組み合わせで必修科目とし、初年次よ
ことに伴い、本学では千葉県の「大学生の就業力
りキャリアについて考え、大学での学びにつなげ
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
られるように配慮されていた。
実際のところ、この間のキャリア教育に関して
は、試行錯誤のもとで、単位制となった後もカリ
択行動と関連づけて、「進路選択に対する自己効
力感(Career Decision-Making Self-Efficacy)」
という概念を提唱した。
キュラム全体における位置づけやキャリアガイダ
自己効力感は、
「ある行動が自分にうまくでき
ンスとの連動や整合性など、多くの課題を抱えな
るかどうかという予期の認知されたもの」と定義
がら運営がされていたといえる。キャリア教育の
され、行動と直接的な関連を持つと仮定される。
重要性については基本的な理解はされながらも、
そこから「進路選択に対する自己効力感」は、進
一部担当教員や担当職員の取り組みに留まり、全
路を選択・決定する過程で必要な行動に対する遂
学的な共通認識や取り組みは十分ではなかったと
行可能感とされ、これが強い者は進路選択行動を
思われる。
活発に行い、努力するが、弱い者は進路選択行動
このような経緯の中で、前述のように 2011 年
度の全面的なキャリア教育のカリキュラムの再編
を避けたり、不十分にしか行わないことが指摘さ
れている(Taylor & Betz, 1983)
。
が行われた。半期科目の「キャリアデザイン基
浦 上(1995b) は、Taylor & Betz(1983) が
礎」
「キャリアデザインⅠ」「キャリアデザイン
それまでの進路不決断(career indecision)の研
Ⅱ」
「キャリアデザイン A」
「キャリアデザイン B」
究成果にもとづき、直接的な介入を行うために、
「キャリアデザイン C」に加え、それまで総合経
不決断を訴える者の自信の無さを自己効力感とい
営学科の専門科目として設置されていた「イン
う観点から捉えなおした点に注目した。そして、
ターンシップ」
科目を加え、
キャリア委員会やキャ
坂野ら(1993)の研究を引用し、進路選択に対
リアセンターの活動とも連動しながら、実効性の
する自信の無さを、進路選択に対する自己効力感
あるキャリア教育の実践を目指すこととなった。
が低いと読み替えることができるとしている。
この中で、主に 1、2 年次生を対象とした「キャ
浦上(1995a)によると、
「自分の進路を自分で
リアデザイン基礎」および「キャリアデザインⅠ」
決める」ことのできない不決断状態を改善するた
は、
「実践的キャリアガイダンス」として外部専
めには、進路選択に対する自己効力感に対して、
門家による授業運営が行われたが、2012 年度か
それを高揚させるような介入を行うことにより改善
らは専任教員が担当することになっていたため、
することが理論的には可能であると指摘している。
ここで得られた知見をもとに独自に行っていく必
大学生を対象に、川崎(2000)はキャリア決
要があった。受講学生のアンケート結果や、授業
定自己効力尺度とキャリア決定不決断尺度を用い
を担当した業者からの報告を総合すると、授業内
て、職業情報の活用が及ぼす効果を測定している。
において外部の企業担当者とのワークショップや
Sherer et. al.(1982)は、臨床場面や教育場
経営者の講話などについて有意義だったという報
面で多く用いられてきた課題や特異場面の行動に
告があり、学生たちも外部の刺激に対して反応が
影響を及ぼすとされる自己効力感とは異なる「特
良かったことから、このような機会をいかに設け
性的自己効力感」という概念を提唱した。特性的
るかということが課題となっていた。
自己効力感とは、具体的な個々の課題や状況に依
4.キャリア教育の効果測定に関する
理論的背景
Bandura(1977)によって提唱された「自己効
存しない、より長期的に、より一般化した日常場
面における行動に影響を与える自己効力感のこと
であり、年齢や性別に影響されない、性格特性的
な認知傾向であるとされている。成田ら(1995)
力感(Self-Efficacy)」の概念を進路関連領域に
は、Sherer et. al.(1982)にある質問項目を日
初めて適用したのが Hackett & Betz(1981)で
本人の実態に即して訳した尺度を用いて生涯発達
あり、その後、Taylor & Betz(1983)は進路選
的な利用の可能性を検討し、標準化した。
宮入小夜子:社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼
安達(2001)は、大学生を対象として社会・
内容・場面づくりの工夫が必要であり、学外講師
認知的進路理論で設定される進路発達プロセスに
からの多様な分野の情報提供や多様な生き方モデ
ついて、進路決定を自己概念や自己効力感などの
ルの提示によって『気づき』が促進される」と指
既存の概念と関連づけ、進路探索行動に対して自
摘している。
己効力感が直接影響を与えていることを検証して
いる。
しかし同時に、同報告書は、「外部モデルの生
き方を自分に関連づけさせるための『気づき』の
一方、キャリア教育の実践における教育効果の
支援方策には知恵が必要」であり、「『気づき』を
検証については、坂柳(1996)の職業キャリア・
深めるための学び方を授業内で教えることが重
レディネス尺度を用いた研究や、キャリアに関す
要」であると強調している。
る授業を受講した大学生を対象にした受講前後の
キャリア教育で、職業観・勤労観を形成するた
進路成熟度(career maturity)の変化に関する三
めには、多様な人たちとの対話を通して自分がど
川(2008)や松井(2008, 2009)による実践的な
うありたいかを考え、何のために働くのかなど、
研究などがあげられる。
さまざまなことに気づき、自分なりに見つけてい
進路成熟(キャリア)尺度は、進路成熟を進路
くステップが有効であると考えられる。
選択・進路適応などのキャリア発達上の課題に対
本学では前年度の外部実務家による講義や
処するためのレディネスとした定義(松井・伊丹 ,
フォーラムをキャリアデザイン科目内で実施して
1998)から作成されたものであり、キャリア概
いたが、2012 年度より著者が正規科目の「キャ
念の多義性や広がりなどを考慮に入れて、①人生
リアデザイン基礎」を担当することになり、社会
キャリア・レディネス(主として、人生・生き方
人と学生が対話を行う「ハタモク」のワークショッ
への取り組み姿勢)、②職業キャリア・レディネ
プを授業に導入した。
ス(主として、職業選択や職業生活への取り組み
「ハタモク」とは、学生と社会人で「なんのた
姿勢)
、という 2 系列のキャリア・レディネスが
めに働くのか」を“気楽に真剣に”語り合うこと
設定されている。また、それぞれについて、「関
を通して、社会に出る前に、働くことの意味や目
心性」
(自己のキャリアに対して、積極的な関心
的を考える取組みを行っている団体であり、6 月
を持っているか)、「自律性」(自己のキャリアへ
と 7 月の土曜日に学生約 70 名、社会人約 35 名
の取り組み姿勢が自律的であるか)
「計画性」(将
、
が参加して、小グループに分かれて約 3 時間の対
来展望を持ち、自己のキャリアについて計画的で
話を行った。
あるか)という 3 つの態度特性(下位尺度)を設
定している(松井 , 2009)
。
5.1 社会人との対話(ハタモク)に
よる学生意識の変化に関する調査
5.社会人との対話を通した職業観・
勤労観の形成
1)調査の目的
キャリア教育において社会人との対話が、学生
社団法人国立大学協会の教育・学生委員会に
意識(社会人イメージ、キャリア成熟、対人スキ
よる報告「大学におけるキャリア教育のあり方」
ルに関する自己認知、および特性的自己効力感)
(2005)の中で、
「キャリア発達が不十分な学生
にどのような影響を与えるかについて、準実験的
は夢や目標に挑戦・行動する力が弱い、目的・目
な方法による調査を行い、大学におけるキャリア
標が欠如し学ぶ力が弱い、職業観が脆弱で論理的
教育の方策としての有効性を検討する。
思考力・コミュニケーション能力が弱い」という
特徴をあげている。そして、
「このような層の学
生に対しては、『気づき』を促進するための教育
2)「ハタモク」プログラムの内容と実施
本プログラムは、2012 年前期に「キャリアデ
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
ザイン基礎」科目の中の 4 コマ分を充て、土曜日
2 コマずつ、2 回実施した。
グループ編成は 1 グループにできるだけ異なる
対話セッションは全体で 3 回行われた。最初
に、
「価値観マップ」の中から「大切だと思うもの」
を選び、優先順位をつけて、ベスト 3 とその理由
三学科の学生が一人ずつになるようにし、社会人
を紹介し合うという「価値観ガタリ」を行った。
が 1 人または 2 人と学生 3 人の 4 ∼ 5 人とした。
次に、社会人の「ジブンガタリ」の例を全体で聞
大教室に椅子だけで車座になり、全体で 16 ∼ 17
いた後で、グループ内で子供の頃の思い出やこれ
グループとなった。途中で 1 回、グループメンバー
からの学生生活、将来について自由に語り、お互
を替えて合計 3 セッションの対話を行った。
いを知るという「ジブンガタリ」という自己開示
写真 1 は、ハタモクで学生と社会人が対話をす
【第 2 回】
7 月 7 日(土)9:50 ∼ 13:00
る様子である。
第 1 回と第 2 回の内容は、それぞれ次のよう
なものであった。
【第 1 回】 6 月 2 日(土)9:50 ∼ 13:00
30 分
オリエンテーション
20 分
自己紹介(4-5 人チーム)
30 分
価値観ガタリ(4-5 人チーム)
10 分
5分
10 分
25 分
5分
のセッションをグループを替えて、2 回行った。
休 憩
「ジブンガタリ」の進め方
30 分
オリエンテーション
25 分
ジブンガタリ(4-5 人チーム)
30 分
ハタモクガタリ(4-5 人チーム)
10 分
5分
15 分
休 憩
チーム替え
社会人のジブンガタリ
40 分
ミライガタリ(4-5 人チーム)
15 分
個人ワーク/グループ内共有
10 分
アンケート記入
社会人のジブンガタリ
ジブンガタリ①(4-5 人チーム)
チーム替え
25 分
ジブンガタリ②(4-5 人チーム)
10 分
クロージング(8-10 人チーム)
10 分
アンケート記入
第 2 回の目的としては、①自分が社会に出るこ
とをイメージする、②これからの学生生活をどう
送るかを考える、の 2 点を掲げた。
4、5 人のグループに分かれ、最初に前回行っ
全体の流れとしては、最初にハタモクのファシ
た「ジブンガタリ」を 1 回行った。次に、
「働く
リテーター(非常勤講師)から、学生と社会人が
目的」について、
「金、やりがい、夢、他」に順
“ヨコ”の関係で「ハタモク(=働くことの意味
番をつけ、その理由についても記入し、小さい頃
や目的)」を気楽に真剣に語り合う場であること
やりたかった仕事や将来やりたい仕事・職業を書
と、対話の進め方について説明を行った。
いて、社会人も交えてお互い紹介し合う、
「ハタ
第 1 回の目的として、①自分の言葉で、自分の
モクガタリ」というセッションを行った。
ことを話してみる、②同じ大学の仲間たちのこと
最後に、
「創りたい未来」と「創りたくない未
を知って、自分のことも知ってもらう、という 2
来」を社会に出ることとの関係を意識しながら想
点を提示した。
像し、卒業するときの自分のイメージを学生が語
り、社会人がアドバイスやフィードバックを行う
「ミライガタリ」セッションを行った。
なお、「ハタモク」プログラムは、前期 15 回
の「キャリアデザイン基礎」科目の 7、8 回およ
び 12、13 回に実施されたため、その前後の講義
ともつながるような構成となっている。
写真 1.ハタモクの様子(7/7)
宮入小夜子:社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼
3)プログラムの効果測定
(1)調査方法
い、「1 =自信がない」∼「5 =自信がある」
までの 5 段階評定法で回答させた。
本プログラム(
「ハタモク」ワークショップ)
⑤特性的自己効力感
の効果測定のため、著者が担当する「キャリアデ
成田ら(1995)が Sherer et al.(1982)に
ザイン基礎」科目を履修している学生に対し、事
ある質問項目を日本人の実態に即して訳した
前に通常授業内で「キャリアイメージに関するア
特性的自己効力感を構成する項目のうち、一
ンケート」に回答してもらった。その後、土曜日
般性因子の 15 項目を用い、
「1 =全くあては
の午前中 2 コマ(合計 3 時間)で社会人との対
まらない」∼「5 =非常にあてはまる」まで
話(
「ハタモク」
)を 2 回実施し、6 月の 1 回目後、
の 5 段階評定法で回答させた。
および 7 月の 2 回目後の合計 3 回、同じ内容の
質問紙調査を実施した。
⑥自由回答
その他、毎回、感じたことについて自由に
調査期日は以下のようになっている。
記述してもらい、第 1 回後と第 2 回後は学
第 1 回(事前)
生自身の振り返りとして、この部分のみコ
2012 年 5 月 30 日(水)
第 2 回(第 1 回後) 2012 年 6 月 2 日(土)
第 3 回(第 2 回後) 2012 年 7 月 7 日(土)
(2)調査内容と分析の手続き
事前調査と事後 2 回の調査において、以下の項
目について調査を行った。
①社会人イメージ
社会人に対してどのようなイメージを持っ
ピーをとって返却した。
(3)分析対象者
著者が担当する「キャリアデザイン基礎」の受
講者で、事前の通常授業に出席し、6 月と 7 月の
土曜日に行った「ハタモク」のワークショップに
参加した者を対象とした。
事前アンケートの回答者 67 名(有効回答 67)、
ているか、15 項目および「その他」から 3
第 1 回ハタモク参加者 75 名(有効回答 70)
、第
項目を選択させた。15 項目は、
「テキパキし
2 回ハタモク参加者 68 名(有効回答 62)のうち、
ている」
「楽しそうな」などのポジティブな
3 時点全ての調査に回答した学生 59 名のうち、
イメージ(5 項目)、「収入のある」「働いて
有効回答 46 名を分析の対象とした。
いる」などの中立イメージ(5 項目)
、そし
(4)結果
て「苦労している」「疲れている」などのネ
「キャリアデザイン基礎」科目は、1 年次生を
ガティブイメージ(5 項目)となっている。
対象に開講されているが、他の学年も履修希望者
②社会人イメージ想起対象者
①のイメージを想起させた対象の人物につ
は受講が可能となっているため、回答者は表 1 の
ような学年および男女構成となっている。
表 1.回答者構成
いて 4 項目および「その他」から 1 項目を
1 回後
2 回後
38
26
46
24
39
23
男
女
2
0
2
0
1
0
男
女
1
0
3
0
5
0
合計
男
(有効回答数) 女
41(41)
26(26)
51(46)
24(24)
45(41)
23(21)
67(67)
75(70)
68(62)
選択させた。
学年
性別
③キャリア成熟
1年
男
女
2年
3年
松井(2001)の職業進路成熟、人生進路成
熟の 2 因子からなる進路成熟測度の 10 項目
を用い、
「1 =あてはまらない」∼「5 =あて
はまる」までの 5 段階評定法で回答させた。
④対人スキル自信
山田(2011)が使用した「儀礼(マナー)
」
「聴き方」
「話し方」の 3 因子で構成される対
人スキルに関する自信について 12 項目を用
(単位:人)
総計
事前
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
①社会人イメージ
かという問いに対し、事前の回答では「親・
表 2 および図 1 は、時点ごとに学生が社
兄弟・親類」といった身近な者のイメージが
会人に対して持っているイメージについて聞
43.8%と最も多かったが、ハタモクで社会人
いたものである。(複数回答:一人 3 つまで
との対話を行ったことによって、1 回目後、
選択、
「その他」は具体的に記入)
2 回目後ともに「実際にみた社会人」と回答
した者がそれぞれ 55.2%、46.9%と最も多く
②社会人イメージ想起対象者
なっている(表 3)(図 2)。
①の社会人イメージを誰の姿から想起した
表 2.社会人イメージの変化(3 つ以内複数回答)
(単位:人)
事前
1 回後
2 回後
ポジティブイメージ項目 37(18.4%) 88(40.2%) 89(43.8%)
12
28
24
しっかりしている
7
21
25
テキパキしている
1
8
6
14
20
27
3
11
7
頑張っている
自立している
楽しそうな
中立イメージ項目
21
16
18
責任のある
28
32
24
4
4
4
17
13
16
7
3
2
働いている
通勤している
38.3
42.8
77(38.3%) 68(31.1%) 64(31.5%)
収入のある
自由な
18.4
図 1.社会人イメージの変化
表 3.社会人イメージを想起させた対象者
ネガティブイメージ項目 86(42.8%) 63(28.8%) 50(24.6%)
事前(%) 1 回後(%) 2 回後(%)
苦労している
23
25
20
多忙な
17
10
12
大変な
10
15
8
2. 学校関係者
(教員など)
4.7
6.0
6.2
3. 実際にみた社会人
25.0
55.2
46.9
4. テレビで見た社会人
18.7
10.4
7.8
7.8
3.0
9.4
100.0
100.0
100.0
疲れている
22
6
7
ストレスのある
14
7
3
その他
合 計
1(0.5%)
0(0.0%)
0(0.0%)
201(100%)219(100%)203(100%)
1. 親・兄弟・親類
5. その他
合計
18.7
6.2
図 2.社会人イメージを想起させた対象者
43.8
25.4
29.7
宮入小夜子:社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼
③キャリア成熟
④対人スキル自信
10 項目に関して主因子法にて探索的因子分
12 項目に関して探索的因子分析を行った
析を行ったところ、
2 因子が抽出された。次に、
ところ、3 因子が抽出された。それぞれの因
2 因子を仮定して主因子法・Promax 回転に
子を構成する項目から、山田(2011)で示
よる確定的な因子分析を行ったところ、表 4
された「儀礼(マナー)」「聴き方」「話し方」
のように、松井(2001)で示された「職業進
の 3 因子と判断された。各因子のα係数は、
路成熟」と「人生進路成熟」因子が抽出され
「儀礼(マナー)
」がα= .878、
「聴き方」が
た。各因子のα係数は、
「職業進路成熟」で
α= .807 および「話し方」がα= .755 と十
α= .934、
「人生進路成熟」でα= .850 と十
分な内的整合性の高さが認められた(表 5)。
分な内的整合性の高さが認められた(表 4)
。
表 4.キャリア成熟に関する因子分析結果(Promax 回転後の因子パターン)
第 1 因子
第 2 因子
職業進路成熟
人生進路成熟
将来の職業や就職先は、自分で責任をもって決めている。
.999
-.137
.833
将来どんな職業につくのか、見通しをたてている。
.950
-.044
.848
将来の職業の準備は、自分から進んでしている。
.873
-.047
.710
自分を生かせる職業について調べている。
.784
.112
.745
将来の職業や就職先のことについて考えている。
.572
.319
.674
これからの人生のことについて考えている。
.051
.821
.734
-.123
.734
.432
.017
.725
.543
-.026
.699
.464
.349
.494
.597
.934
.850
<進路成熟測度> 項 目
いろいろな生き方を比べたりして、自分の生き方を探している。
これからの自分の人生は、自分の力で切り開いていく。
自分にふさわしい生き方を、いろいろと考えている。
どんな生き方をしたらよいのか自分で考えている。
* α係数
共通性
表 5.対人スキル自信に関する因子分析結果(Promax 回転後の因子パターン)
<対人スキル自信尺度> 項 目
第 1 因子
第 2 因子
第 3 因子
儀礼
聴き方
話し方
共通性
正しいあいさつの仕方や礼儀作法で目上の人(大人)と接すること
.868
.085
.133
.778
目上の人(大人)に対して、正しい言葉づかいで話をすること
.838
.155
-.015
.727
いつも相手の目を見て、しっかりと話を聞くこと
.659
.228
.300
.576
目上の人(大人)への挨拶と学生仲間への挨拶を使いわけること
.648
.523
.188
.729
場面によって、辞儀(おじぎ)を使い分けること
.472
.110
.224
.285
人の話に耳を傾けて聞き、相手の気持ちを理解すること
.133
.909
.061
.848
人の話をしっかりと聞きとること
.113
.874
.147
.798
素直な気持ちで、目上の人(大人)の話に耳を傾けること
.315
.806
.135
.767
自分が望まないことには、はっきり「NO」ということ
-.082
.083
.865
.762
目上の人(大人)に自分の考えをしっかりと伝えること
.326
.028
.767
.695
わからないことがあったとき、隠さずに質問をすること
.252
.090
.659
.505
伝えたいことを簡単な言葉にして、正しく相手に伝えること
.138
.170
.623
.437
.878
.807
.755
* α係数
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
⑤特性的自己効力感
ハタモクの実施によって、学生の意識にどのよ
成 田ら(2001)で は、Sherer et al.(1982)
うな影響を及ぼすかを検討するために、「キャリ
に従い 2 因子構造にて分析を試みたが、同様
ア成熟」を構成する「進路成熟因子」「人生進路
の 2 因子を見出すことができなかったため、1
成熟」、
「対人スキル自信」を構成する「儀礼因子」
因子構造で分析を行っている。
「聴き方因子」「話し方因子」、および「特性的自
今回も 2 因子にて確定的因子分析を行った
己効力感」の各合成得点を従属変数、調査時点(事
結果、回転前の 15 項目の全分散の十分な説
前・1 回後・2 回後)を独立変数とした被験者内
明量は得られなかった(40.5%)ため、1 因
要因の分散分析を行った(表 7)。
子構造にて分析を行うことにした(表 6)。
表 6.特性的自己効力感に関する因子分析結果(Promax 回転後の因子パターン)
<特性的自己効力感> 項 目 ( (R) は逆転項目)
(自分にあてはまるもの)
共通性
一回の挑戦でできないことがあっても、できるまで挑戦を続ける
.110
嫌なことでも、それをやりとげるまでがんばる
.084
ねばりづよい方だ
.208
友人よりもすぐれた能力がある
.575
何かについて、友人よりも多くの知識を持っていることがある
.502
世の中の役に立つ力を持っていると思う
.335
自分のことを信頼している
.265
将来、有能な人間になれると思っている
.463
何かをやりとげる前にあきらめてしまうことが多い (R)
.209
複雑そうな問題であれば、挑戦する前にあきらめてしまう (R)
.307
過去の失敗や嫌な経験を思い出して、またそうなるのではないかと心配することがある (R)
.093
人よりも心配性だと思う (R)
.030
何かをするとき、どうやったらよいか決心がつかなくて、とりかかれないことがある (R)
.210
小さな失敗でも、人より気にするほうである (R)
.129
何かをしようとするとき、うまくゆかないのではないだろうかと、不安になることが多い (R)
.157
* α係数
.767
表 7.各因子の合成得点の平均値と標準偏差、および一要因分散分析の結果
事前
第1回後
第2回後
値
多重比較
(1)キャリア成熟
①職業進路成熟因子
2.844
3.322
3.322
13.706
1 回後>事前 *
1.122
0.956
0.956
2 回後>事前 *
②人生進路成熟因子
3.424
3.591
3.606
1.543
0.821
0.718
0.672
①儀礼因子
3.400
3.526
3.622
2.802
0.783
0.701
0.726
②聴き方因子
3.544
3.775
3.703
2.644
0.931
0.801
0.738
(2)対人スキル自信
③話し方因子
(3)特性的自己効力感
** < .01, * < .05
2.843
3.116
3.273
8.505
0.738
0.900
0.832
1 回後>事前 *
2.583
2.738
2.758
6.918
1 回後>事前 *
.538
.505
.607
2 回後>事前 *
2 回後>事前 **
宮入小夜子:社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼
分析の対象は、事前アンケート、第 1 回ハタモ
<.05)。多重比較の結果、事前の時点よりも 1 回
ク実施後、第 2 回ハタモク実施後の三時点全て
後の時点、および 2 回後の時点における「職業進
の調査に回答した学生 59 名のうち、有効回答 46
路成熟」「話し方」「特性的自己効力感」の各因子
名とした。
が有意に高かった。一方、
「人生進路成熟」およ
分散分析の結果、「職業進路成熟」「話し方」
び「儀礼」「聴き方」の各因子には有意な調査時
「特性的自己効力感」の各因子について調査時点
期の主効果は認められなかった(人生進路成熟
の主効果が認められた(それぞれ、 (2, 44)=
(2, 44)= 1.543、儀礼 (2, 44)= 2.802、聴き方
13.706、 (2, 44)= 8.505、 (2, 41)= 6.918、
(2, 44)
= 2.644)。
図 3.3 特性的自己効力感
図 3.1 キャリア成熟
職業進路成熟
事前
事前
第 1 回後
.478*
第 2 回後
.478*
* <.05
図 3.2 対人スキル自信
話し方因子
事前
特性的自己効力感因子
第 1 回後
.273*
第 2 回後
.430**
** <.01, * <.05
* <.05
第 1 回後
.155*
第 2 回後
.175*
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
6.結果の考察
「キャリアデザイン基礎」の授業として導入し
た社会人との対話「ハタモク」に参加した大学生
ジが 28.8%と 14.0 ポイント減少している。そし
て、ポジティブなイメージは、
「実際に見た社会人」
と答えた割合が 55.2%と、事前の想起対象者の
うち 25%から 30.2%増加している。
を対象に質問紙による調査を行い、その効果測定
2 回目後も、ポジティブイメージは 1 回目後よ
を分析し、今後のキャリア教育の有効性を高める
り 3.6 ポイント増加して、全体の 43.8%となり、
方策について検討した。
事前の割合と比較すると 25.4 ポイント増加した。
キャリア教育の目的の一つである、生涯にわ
一方、ネガティブイメージは 1 回目後より 4.2 ポ
たって社会で仕事に取り組み、具体的に行動する
イント減少し、事前からは 18.4 ポイントのマイ
際の判断基準となる価値観を学生が持つために
ナスとなる 24.6%まで減少した。2 回目後もイ
は、
「なぜ働くのか」
「自分の人生の中で仕事をど
メージを想起させた対象者について 46.9%が「実
のように位置付けるか」などの職業観・勤労観を
際に見た社会人」と答えており、社会人イメージ
形成するための機会や経験をどのように提供する
に大きな影響を与えている事がわかる。
かということが重要と考えられる。
次に、
「キャリア成熟」を構成する「職業進路
大学の課程におけるキャリア教育の中では、演
成熟」と「人生進路成熟」の各因子の合成得点の
習を用いてこれらのことについて考えさせるよう
平均値をみると、「これからの人生について考え
なプログラムが展開されているが、自ら学ぶ目的
ている」、「自分の生き方を探している」といった
や働く目的を描こうとするためにはどのような方
項目で構成されている「人生進路成熟」因子の方
法が有効であるのか。
が全体的に高く、「将来どんな職業につくのか、
そもそも、
「キャリア発達が不十分な学生は夢
見通しをたてている」や「自分を生かせる職業に
や目標に挑戦・行動する力が弱い、目的・目標が
ついて調べている」など、より具体的な職業探索
欠如し学ぶ力が弱い、職業観が脆弱で論理的思考
行動に関する「職業進路成熟」因子については低
力・コミュニケーション能力が弱い」(国立大学
くなっている。
協会 , 2005)という状態から、学生が自らキャリ
多重比較の結果、事前の時点よりも 1 回後の時
アについて考え、職業観・勤労観を醸成し、目標
点、および 2 回後の時点における「職業進路成熟」
をもって大学で学ぶようになるためには、かなり
が有意に高かった( <.05)が、
「人生進路成熟」
の「気づき」と動機づけが必要ということになる。
には有意な調査時期の主効果は認められなかった。
このようなジレンマに対して、社会人との直接
対象者が大学入学直後の 1 年次生であったた
的な相互作用を通じて「気づき」を促進させるハ
め、まだ具体的に職業や就職先のことを考えては
タモクは、効果があるのではないかと思われた。
いなかったところが、様々な職業や企業で働く社
まず、学生が社会人に対して持っているイメー
会人との対話を通して、将来の職業について具体
ジについて、ハタモク参加前には 43%の学生が
「苦労している」
「疲れている」などのネガティブ
的に考え始めたことが伺える。
「対人スキル自信」は、
「儀礼(マナー)」
「聴き方」
なイメージを持ち、ポジティブなイメージは全体
「話し方」の 3 因子で構成されており、キャリア
の 18.4%であった。このようなネガティブな社
を築く上で重要なスキルであるが、分析対象者の
会人イメージは、親・兄弟・親戚など身近にいる
合成得点の平均値をみると、特に「話し方」につ
人から想起されたものであった。
いては自信の無さが目立っていた。第 1 回のハタ
1 回目のハタモクの社会人との対話の後では、
モクまでの「キャリアデザイン基礎」の授業の中
ポジティブな社会人イメージを持った割合が
で、数回にわたって「聴く力」に関する内容の演
40.2%と 21.8 ポイント増え、ネガティブなイメー
習を行っていたため、
「聴き方」が 3 つの因子の
宮入小夜子:社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼
中では全体的に高い値を示している。
多重比較の結果、事前の時点よりも 1 回後の時
点、および 2 回後の時点における「話し方」が有
な影響を及ぼすかを分析した結果、「職業進路成
熟」「話し方」、および「特性的自己効力感」が実
施後に有意に高まることが検証された。
意に高かった(それぞれ <.05, <.01)が、
「儀
ハタモクに参加した学生たちは、ほとんどが 1
礼(マナー)」および「聴き方」には有意な調査
年次生で、不安や自信の無さが目立ったが、社会
時期の主効果は認められなかった。
人たちとじっくり話をすることによって、将来の
「話し方」因子を構成する項目をみると、
「大人
に自分の考えをしっかりと伝える」「伝えたい事
ことを考え、自信を持てるようになっていったこ
とが分析結果から明らかになった。
を簡単な言葉にして、正しく相手に伝える」など
このようなワークショップ形式の対話の経験
となっているが、これらのスキルに関してハタモ
は、大学に入学間もない学生たちが自らを見つめ、
クでは少人数で時間をかけて実際の大人
(社会人)
将来何をしたいのか、何のために働くのかをじっ
と対話を行うことで、確実に自信をつけていった
くりと考えるきっかけとなり、職業観・就業観の
ということが伺える。
じっくり人の話を聴き、しっ
形成につながると同時に、目標に向けて大学で学
かりと考えて自分の思いを話すことを通して、話
ぼうというモチベーションを高めるものと考えら
をすることに自信がついたということは、双方向
れる。
の「対話」の有効性といえるだろう。
「特性的自己効力感」に関しては 1 因子構造で
7.今後の課題
分析を行ったが、分析対象者の合成得点の平均値
今回は、ハタモクに参加した学生を対象に調査
をみると、特に事前の点数が低かった。多重比較
を行ったが、今後は、このような機会に参加して
の結果、事前の時点よりも 1 回後の時点、および
いない学生との比較を行う必要があるだろう。そ
2 回後の時点が有意に高くなっている( <.05)。
れによって、本学学生の特性に合わせた教育指導
社会人が対話の中で学生の気持ちをしっかりと受
のあり方について提案し、その有効性について引
け止め、傾聴することで、自分を見つめ直し、自
き続き研究していくことが求められる。
己効力感が高まったのではないかと考えられる。
また、職業進路成熟と特性的自己効力感の間の
「特性的自己効力感」因子を構成する項目の中
関係については、さらに分析を深めていくことで、
で、逆転項目として、
「あきらめてしまう」「心配
自己効力感の高さが進路探索行動にどのように結
する」
「不安になる」などといった自信の無さを
びつくかについて明らかにしていきたい。
表す内容があり、その他「できるまで挑戦し続け
さらに、今回ハタモクに参加した学生の実際の
る」
「世の中に役に立つ力を持っている」
「ねばり
職業選択活動に関して経年の追調査を行い、社会
づよい」など、進路を選択・決定する過程で必要
人との対話が実際の行動や働く意欲にどの程度つ
な行動や、将来のキャリア(個人が職業生活、家
ながっているのかどうか、ということを検証して
庭生活、市民生活等の全生活の中で経験する様々
いく必要があるだろう。
な立場や役割を遂行する活動)の充実に関わる資
質に関連した内容となっている。
「特性的自己効力感」が弱いと、進路選択行動
を避けたり、不十分にしか行わないことが指摘さ
れていることから、ハタモクの社会人との対話は
学生たちの進路選択行動の遂行可能感を高めるの
に有効であると考えられる。
以上、社会人との対話が学生の意識にどのよう
謝辞
本研究の調査票の使用に関してご教示いただき
ました山田智之氏に感謝申し上げます。
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
14)成田健一・下沖順子・中里克治・河合千恵子・
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宮入小夜子:社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響∼キャリア教育に関する準実験による実践的研究∼
The Effect of Dialog with Business Persons on Work
Values of College Students ∼ A Practical Study on Career
Education by Quasi-experiment
Sayoko MIYAIRI*1
Synopsis
Three-hour “HATAMOKU” workshops were carried out twice between college students and business persons
to think about the purpose to work through dialog, and the effects of this program on college students were examined by a quasi-experimental method.
The result shows that 43.8% of the college students had positive images of the work people at the end of the
second workshop compared with 18.5% at the start, while the negative images decreased from 43.0% to 24.6%. The
result shows that this reversal is strongly affected by the “business persons whom the college students actually observed.”
As a result of analysis of variance, it was confirmed that there is a major effect on each factor of “occupational
career maturity”, “speech skills” and “generalized self-efficacy” at the point of examination. As a result of multiple
comparison, each factor was significantly high at the time after the first and second workshop than the prior point
in time.
These results indicate that HATAMOKU which facilitates “awareness” through direct interaction with the
business persons make college students form positive image of the work people, think of their future, talk with
their own words, and gain confidence.
As a program in the career education of the universities, dialog with business persons is thought to affect the
consciousness (positive image of the work people, career maturity, self-recognition about interpersonal skills, and
generalized self-efficacy) of college students, and to be effective in raising the feeling of college students that they
can pursue their career choice activities.
Key words
career education, dialog, HATAMOKU(purpose to work), generalized self-efficacy, quasi-experiment
*1 Faculty of Liberal Arts Nihonbashi Gakkan University
NIHONBASHI GAKKAN UNIVERSITY Bulletin No.12
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
原著論文
Local Muscles を活性化させる振動刺激方法の検討
宮下 智*1 和田 良広*2 鈴木 正則*3
近年、体幹部の安定性を求めるトレーニングは、アスリートの強化や腰痛治療を進める上
で不可欠である。体幹の安定性を得るためには、Cresswell らによって提唱された、体幹を
固定する筋群(Local Muscles)と体幹の動きに関わる筋群(Global Muscles)の内、いかに
Local muscles の活動性を高めるかが重要であるとされている。我々は先行研究で、高負荷運
動での Local muscles 活性化に有効な運動方法の報告を行った。しかし、この方法はアスリー
トに対してのトレーニングとしては有効なものであるが、体力低下者や高齢者、疼痛を伴う人
には、その負荷量が強すぎて実践しにくい方法であった。そこで今回、振動刺激による Local
muscle に対する活性化を検討した。対象は、健常男性 52 名(17.0 ± 0.8 歳、171.0 ± 5.5 cm、
63.2 ± 5.4 kg)
。筋の活性化を判断する評価は、超音波診断装置を用い、外腹斜筋、内腹斜筋、
腹横筋の筋厚を測定し、3 筋合計厚から各筋の比率を算出した。振動刺激装置は、Redcord
Stimula(Redcord.co 社製)を使用し、振動周波数は 30 Hz で、振幅は弱とした。運動課題は
上下肢を空中に腕立て肢位で静止姿勢をとらせ、上肢、下肢、それぞれから振動刺激を入力し
た時の体幹筋厚を計測した。その結果、外腹斜筋、内腹斜筋の収縮を抑え、腹横筋収縮を増
大する方法は 2 台の Redcord trainner を用い、上肢から振動刺激を加えることによって、腹
横筋を効果的に収縮させることが可能であったことが確認された。低運動負荷における Local
muscles を活性化させる方法は、振動刺激によって効果があることが確認できた。
キーワード
ローカルマッスル 振動刺激 筋厚 レッドコード 振動刺激装置
【緒論】
我が国における腰痛は、有訴率第一位となって
いるのが実態なのである。この様な慢性腰痛患者
の増加は国内に留まらず、世界的に見ても各国の
社会的コストの増加につながり、社会問題になっ
おり、日本人の 8 割以上が生涯において腰痛を経
ている1)。腰痛に対する発生メカニズムの研究は、
験していると言われている。しかし腰痛を訴える
1980 年代後半からが始まり、
Cresswell ら2)によっ
多くの対象者は、画像診断上に異常が見られない
て体幹部を固定する筋群を Local Muscles、体幹
場合は疾患として認められず、健常者扱いとなっ
の動きに関わる筋群を Global Muscles と分類し
ている。従って、腰痛患者の 8 割は原因が特定
た。
特に Local muscle である腹横筋の活動様式は、
されておらず、多くの患者はそのまま放置されて
健常者では四肢の動きに先だって収縮するが、慢
性腰痛患者では、腹横筋の収縮が遅れるか、もし
2012 年 9 月 25 日受理
Examination of stimulating vibration that revives Local Muscles
method
*1 Satoshi MIYASHITA
日本橋学館大学リベラルアーツ学部
*2 Yoshihiro WADA
御代田中央記念病院リハビリテーション科
*3 Masanori SUZUKI
東京衛生学園専門学校
くは消失するという結果が示されている3・4)。
この報告から、慢性腰痛患者に対して治療者や
研究者は、腹横筋の活動性を高めることが重要で
あるという認識を持ち、多くの研究が腹横筋の効
率的な収縮について検討を進めることになった。
そのひとつとして Panjabi らの提唱した脊柱安定
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
化システムがある。これは脊柱の安定化について
muscle である腹横筋の収縮を促すことが可能で
3 つのサブシステムを示しこれらの相互作用で脊
あると報告した。しかし、この方法は高い運動負
柱の安定性が保たれると説明したものである。こ
荷量があり、アスリートに対してのトレーニング
の安定化機構のひとつが破綻すると可能な限り他
では有効なものであるが、体力低下者や高齢者、
のシステムが代償して機能を維持しようとするた
疼痛を伴うものには、適応しにくい方法であった。
め、すぐに腰痛を発生させるものではないが、代
そこで今回、振動刺激による Local muscle に
償が長期間に渡る場合や不意に過大な外力が脊柱
対する活性化を検討した。振動刺激は、周波数の
に加わった際に、腰痛発生の重要な原因となると
違いにより筋収縮の抑制と促通の 2 つの効果があ
されている。従来はこの脊柱安定化システムには
るとされている13)。特に筋収縮抑制作用は、異常
体幹の腹直筋や脊柱起立筋といった表層筋が関与
な筋緊張が生じる筋肉に対して振動刺激を加える
するとされてきたが、近年の研究で腹横筋や多裂
ことにより、鎮痛や痙性の抑制の効果がみられ、
筋といった深部筋が重要であるとされ、これらの
関節可動域制限の拡大につながることから、表在
5)
筋に対するアプローチが重要視されている 。そ
6・7)
の後、Sapsford ら
により、骨盤底筋群の収縮
にある Global muscles の抑制が可能であると考
えられた。
を行うことで、腹横筋の収縮が誘発されるという
本研究は、姿勢保持時に振動刺激を加えた時の
発表がなされ、臍を意識し腹部を脊柱方向に引き
代表的な体幹筋(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)
込む「pulling the body in」という方法
8-10)
や、模
を超音波診断装置で筋厚を測定し、振動刺激が
擬的に「排尿を止めるように腹部に力を入れる」
Global muscles の活動を抑え、効果的な腹横筋収
という口頭指示により、Local muscles の収縮、
縮を引き出すことが可能であるかを明らかにする
すなわち腹横筋の収縮を促す方法が可能となっ
こと目的とした。
た。しかし、様々な場面で超音波診断装置を使用
して、腹横筋活動を測定してみると、背臥位のリ
【対象】
ラックス肢位では有効な腹横筋収縮を観察するこ
対象は、健常男性 52 名、
平均年齢 17.0 ± 0.8 歳、
とができるが、立位等、実生活で使用される抗重
平均身長 171.0 ± 5.5 cm(183.0 cm ∼ 157.0 cm)
、
力位姿勢では、動作筋群とされる Global muscles
平均体重 63.2 ± 5.4 kg(77.0 kg ∼ 50.1 kg)であっ
の活動が強く表れ、Local muscle である腹横筋
た。対象者にはヘルシンキ宣言に基づく倫理規定
の活動が不十分な場面が臨床的に観察された。村
を遵守し、書面と口頭で十分な説明を行い、同意
11)
上ら は腰痛経験の有無と腹部筋群との関連を明
らかにする報告の中で、腰痛経験群は腰痛経験の
無い群に比べて腹横筋筋厚が低値であることを示
と署名を得たものとした。
【方法】
し、脊椎分節を安定化させる腹横筋の筋活動低下
体幹筋の筋厚測定は外腹斜筋、内腹斜筋、腹横
や筋収縮遅延が起こり、それを補うために内腹斜
筋の 3 筋とし、測定機器は東芝社製超音波診断装
筋、外腹斜筋の過剰な筋活動が見られることを示
置 Xario SSA-660A を用い、表層画像が測定で
唆している。腰痛患者においては、動作時痛が大
きる 8 MHz リニアプローブを用いた。筋厚は筋
きな問題となっているため、動作を通じた腹横筋
膜を基準として超音波診断装置内のマーキング装
収縮方法の確立が求められる。我々の先行研究
12)
置にてポインティングし、表示された数値を採用
では、
腹横筋の有効な収縮を得られる方法として、
した。測定箇所は臍レベルの水平線と前腋下線上
Redcord trainer(Redcord.co 社製)を 2 台使い、
の交点から前内方部にプローブを置き、外腹斜筋、
不安定環境である空中での運動動作を求めること
内腹斜筋、腹横筋が最も摘出しやすい位置である
により、Global muscles の活動性を抑え、Local
臍部から外側 10 cm 付近とした。超音波測定診断
宮下智 和田良広 鈴木正則:Local Muscles を活性化させる振動刺激方法の検討
装置を使用した理由は、それまでは針電極を体内
中の各筋厚を測定した。振動刺激入力部は 2 台
に埋め込むといった侵襲的な手法であったため、
の Redcord trainner を使用し、上下肢を空中に
臨床での追証は難しかった背景があげられる。し
腕立て肢位で静止させた。足部の高さは肩関節
14)
かし McMeeken ら は、
腹横筋厚の変化について、
の位置と同じになるよう調整し、各々の Redcord
超音波診断装置と筋電図を用いて両者の関連性を
trainer に Redcord Stimula を取り付け上肢、下
検討し、筋厚が増加することと筋活動が増加する
肢それぞれから振動刺激を入力した(図 2)。
ことには強い相関があると報告したことから、本
また各筋の筋厚については、事前に MRI 画像
研究では超音波診断装置で筋厚を測定する手法を
で確認したところ、左右差が強く(図 3)
、支持
採用した。
側の方が厚い傾向にあったため本研究において
振動刺激装置は、Redcord Stimula(Redcord.
は、支持側の測定とし、各筋厚は、外腹斜筋・内
co 社製)を使用し(図 1)、振動周波数は 30 Hz
腹斜筋・腹横筋の合計を 100%とし、全筋厚にお
で振幅強度は弱とし、15 秒の振動刺激を与えた。
ける各筋の比率を求め比較することにした。
体幹筋厚の測定は、静止肢位での外腹斜筋・内腹
統計処理は、刺激部位(静止姿勢(刺激無)
・
斜筋・腹横筋を測定し、同じ測定部位で振動刺激
上肢刺激・下肢刺激)、各筋(外腹斜筋・内腹斜筋・
図 1 Redcord Stimula 振動刺激装置(Redcord.co 社製)
図 2 上肢・下肢それぞれからの振動刺激入力方法
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
腹横筋)を主要因とする分散分析(3 × 3)を行っ
すべての刺激条件において内腹斜筋は全筋厚に
た。さらに有意な主効果および交互作用が認めら
対して約 50%を占める状況にあるが、その残り
れたものについては、多重比較検定(Bonferoni)
の約 50%において Local muscle である腹横筋は
で検討し、有意水準は 5%とした。
静止姿勢時に比べ、上肢刺激および下肢刺激にお
【結果】
静止姿勢・上肢刺激・下肢刺激に際して、各筋
の筋厚比率の平均値および標準偏差は以下の通り
であった(図 4)
。
いて筋厚比率が増大し、一方では Global muscle
である外腹斜筋の筋厚比率は低下することが認め
られた。
刺激部位の違い(静止姿勢・上肢刺激・下肢刺激)
と各筋の筋肥厚率(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)
静止姿勢時の各筋厚比率は、外腹斜筋 26.6 ±
の変化について分散分析を施行したところ、各筋
5.2%、
内腹斜筋 50.8 ± 5.7%、
腹横筋 22.6 ± 4.2%。
の要因において有意な主効果が(F(2,102)=437.34,
上 肢 刺 激 時 の 各 筋 厚 比 率 は、 外 腹 斜 筋 24.5 ±
p<0.01)認められ、刺激部位×各筋における有意
4.5%、
内腹斜筋 49.5 ± 6.4%、
腹横筋 26.0 ± 5.2%。
な交互作用
(F(4,204)=8.23, p<0.01)
が認められた。
下 肢 刺 激 時 の 各 筋 厚 比 率 は、 外 腹 斜 筋 24.4 ±
各筋の主効果に対して多重比較検定(Bonferoni)
4.8%、
内腹斜筋 51.6 ± 4.8%、
腹横筋 23.9 ± 4.2%
を行ったところ、静止姿勢では、外腹斜筋<内腹
であった。
斜筋,外腹斜筋>腹横筋,内腹斜筋>腹横筋であり、
図 3 MRI 画像による外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の左右差
図 4 各筋の刺激入力部位の違いによる筋厚比率
宮下智 和田良広 鈴木正則:Local Muscles を活性化させる振動刺激方法の検討
それぞれ有意差(p<0.05)が認められた。上肢刺
激においては、外腹斜筋<内腹斜筋、内腹斜筋>
【考察】
腹横筋であり、それぞれ有意差(p<0.05)が認め
アスリートトレーニングや腰痛患者の治療にお
られたが、外腹斜筋と腹横筋の間には差が認めら
いて、Local muscle である腹横筋収縮の重要性
れなかった。下肢刺激においては、外腹斜筋<内
は認識されつつある。臨床で腰痛患者は体幹筋力
腹斜筋、内腹斜筋>腹横筋であり、それぞれ有意
が低下していることを多く経験する。この原因は
差(p<0.05)が認められたが、外腹斜筋と腹横筋
筋自体が損傷を受け疼痛を発症している場合、疼
の間には差が認められなかった。したがって、すべ
痛発生後の活動制限によって二次的に筋力低下を
ての刺激条件において Global muscle である内腹斜
招いている場合、疼痛発現に対する恐怖心で本来
筋は、外腹斜筋、腹横筋に対して有意に筋肥厚率
の筋力を発揮できない等の理由が考えられる。こ
が高いことが認められた。
れに対して、疼痛除去を主目的ではなく脊柱への
また刺激部位×各筋における交互作用に対して
負荷や代償作用の軽減、更に再発予防のために安
多重比較検定(Bonferoni)を行ったところ、外
定化システムが推奨されている。そのため健康増
腹斜筋では、静止姿勢>上肢刺激、静止姿勢>下
進を謳うメディアでも体幹トレーニング、コアト
肢刺激となり、それぞれに有意差(p<0.05)が
レーニングなどと情報発信がなされ、様々なト
認められたが、上肢刺激と下肢刺激の間には差は
レーニングが紹介されている。
認められなかった。内腹斜筋では、上肢刺激<下
しかし我々の先行研究12)で示したように、一
肢刺激において有意差(p<0.05)が認められた
般的に行われているトレーニングでは、Local
が、静止姿勢と上肢刺激、静止姿勢と下肢刺激の
muscle の筋収縮よりもむしろ Global muscles が
間には有意な差は認められなかった。
腹横筋では、
活動してしまい、有効な Local muscles へのアプ
静止姿勢<上肢刺激、上肢刺激>下肢刺激におい
ローチとは言えないと結論づけることになった。
て、それぞれ有意差(p<0.05)が認められたが、
その上で Redcord を用いた高い負荷量で運動し
静止姿勢と下肢刺激の間には差が認められなかっ
た場合のみ、効果的な腹横筋収縮を見出すことが
た。したがって Local muscle である内腹斜筋は、
可能となった。高負荷トレーニングは健常者や
静止姿勢に比べ上肢あるいは下肢刺激を入れたと
アスリートに対して有効な方法であるが、高齢
きに有意に筋肥厚率が高くなり、かつ、上肢刺激
者やリハビリテーション適応者などへの低負荷
は下肢刺激に比べ有意に筋肥厚率が高くなること
で Local muscles への活性化させる有効なトレー
が示された。
ニングは見あたらなかった。治療場面でも腹横筋
姿勢保持のために、多くの運動課題で収縮を見
に働きかけていると考えられている方法が、実は
せていた外腹斜筋は Redcord stimula の振動刺激
Global muscle により強くアプローチしていたと
によって有意に活動量が低下を示し(p<0.05)
、
言うことが超音波診断装置の使用により確認でき
腹横筋収縮と連動して収縮のしやすい内腹斜筋は
たことは、大きな問題提起となり、本研究で振動
安静時とは差が生じないが、上肢と下肢の刺激部
刺激を用いるきっかけとなった。
位の違いで筋厚に有意差が生じ(p<0.05)
、上肢
Local muscle は体幹・脊柱部の固定作用に働
刺激の有効性を示した。また Local muscle であ
く機能を持っており、Global muscle の活動性を
る腹横筋活動が上肢刺激により有意に筋厚が厚く
抑えて収縮を求める方法は、背臥位やリラックス
なったことから(p<0.05)
、有効な振動刺激法は
肢位では可能であった。しかし、姿勢を維持し、
上肢から加えることで Global muscles の影響を
Global muscle の働きやすい環境での腹横筋活性
最小限にし、Local muscles の活性化を求める方
化は難しい。多くの指導者や治療者が「pulling
法として有効性が認められた。
the body in」という指示を与え、立位での腹横筋
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
収縮を促しているのだが、実際に超音波診断装置
Hz 前後)、振幅が大きい時に顕著に表れ、促通
を使い、筋厚変化を確認すると上手にできない人
作用は,周波数が高く(100 Hz 前後)
,振幅が大
が多いことが認められた。この要因として、運動
きいほど誘発されやすいとするいくつかの先行研
方法の理解が十分でないことがあげられる。
一方、
究を採用した17-21)。このことから、30 Hz の振動
擬似的に「排尿を止めるように」という指示では、
刺激の選択で Global muscles の筋抑制作用を認
背臥位では Global muscles を抑制した上で、腹
めることができたことは、運動負荷量を小さくせ
横筋の収縮を有効に求めることができることを確
ざる得ない高齢者や痛みを伴う患者にとって有効
認できるが、同様な指示を立位で行うと、Global
な方法であると考える。視点を変えると、周波
muscles が活性化され、腹横筋の収縮は確認でき
数の高い振動刺激を与えることで Global muscles
るものの、内腹斜筋や外腹斜筋が強く働くこと
の活用が更に高まり、目的とする Local muscles
が認められる。このことは、Global muscles の代
の活動性を阻害する可能性をも示唆する結果と
表的な外腹斜筋と内腹斜筋が、Local muscle で
なった。
ある腹横筋と類似した神経支配をしている点
15)
上肢からの振動刺激と下肢からの振動刺激を
と、腹横筋が姿勢保持時の脊椎安定化に関与して
比較すると、その作用には明らかに異なる作用
いるため既に収縮状態にあり、口頭指示に対して
を見出すことができた。姿勢保持のために、多
背臥位ほどの変化がみられないという理由を考
くの運動課題で収縮を見せていた外腹斜筋は
えることができる。高齢者など、口頭指示の入
Redcord stimula の振動刺激によって活動量が低
りにくい対象者に対して、運動を通して腹横筋
下する。刺激なしで姿勢を保持したときと比較
の収縮を求めることは非常に重要な問題である。
し、上肢刺激でも下肢刺激でも同じ程度の外腹斜
16)
Richardson ら は、Therapeutic Exercise for
筋活動量抑制が可能である。このことは、振動刺
spinal segmental stabilization in low back pain で、
激が Global muscle の最も表層に位置する筋肉の
腹横筋トレーニング方法として 3 段階のモデルを
活動を抑制できていると考える事ができる。ま
提唱している。段階 1:負荷あるいは抗重力体重
た Global muscle の中間層に位置する内腹斜筋に
支持機能を加えずにトレーニングする方法、段階
関しては、上肢刺激で抑制を、下肢刺激では促通
2:体重支持において重力負荷刺激を漸増するこ
されること確認できた。特に腹横筋と連動して収
とにより Local muscles と体重支持筋を統合する、
縮のしやすい内腹斜筋が、上肢と下肢の刺激部位
段階 3:中間の腰椎骨盤姿勢を維持し個々の関節
の違いで、筋厚に有意差が生じることは、新たな
の文節コントロールを高めるというものを紹介し
発見であり、上肢からの振動刺激の有効性を示
ている。段階 1 についての報告はされているが、
すものであると考えられる。本研究では結果的
段階 2・3 の報告は少なく、その意味でも本研究
に Local muscles である腹横筋活動が高くなった
の示す価値は大きいと考える。
ことから、適切な周波数を選択することで Local
本研究は、姿勢保持をした中で有効な腹横筋
収縮を求めることが目的であったため、30 Hz の
muscles の活動性をより高めることが可能である
ことが示された。
弱い振動刺激により筋抑制作用のある機器を使
また腹横筋に関しては、下肢刺激より上肢刺激
用するに至った。今回使用した Redcord stimula
の方が有意に増加したデータを得ることができ
は、予備実験で 3 軸加速度計を機器と、Redcord
た。外腹斜筋および内腹斜筋の活動を抑えること
のロープに装着し、振動周波数が目的部位まで正
ができ、腹横筋の活動を高める事ができた振動刺
確に伝導可能であることをあらかじめ確認してい
激法は、上肢からの振動刺激入力であった。外腹
る。具体的な振動周波数の決定については、振動
斜筋・内腹斜筋・腹横筋の 3 筋の収縮厚比率か
刺激による筋抑制作用は、振動周波数が低く(30
ら、Global muscles の影響を最小限にし、Local
宮下智 和田良広 鈴木正則:Local Muscles を活性化させる振動刺激方法の検討
muscles の活性化を求める方法として、下肢から
抑え、腹横筋収縮を増大する方法は、Redcord を
の振動刺激より、むしろ上肢からの振動刺激入力
用い、空中での腕立て肢位で、上肢からの振動刺
が有効だった。Hodges は、腹横筋が動作に対し
激を加えることによって腹横筋を効果的に収縮さ
て先行収縮をすると報告しているが、具体的に上
せることが可能であったことから、低運動負荷に
肢運動の場合、動作より腹横筋収縮が 30 ms 早く、
おける Local muscles 活性化は、振動刺激によっ
下肢運動においては、動作より 110 ms 速く動く
てもたらされることが確認することができた。
22)
と報告している 。この点を勘案すると、下肢は
重量が大きく、実験肢位が空中に姿勢を保持する
参考文献
不安定な環境であることから、より早く反応する
1 )Rosen M. : The epidemiology and cost of Back
上肢振動刺激での方法が、有効な腹横筋収縮を得
pain. Annex to the Clinical Standards Advisory
られたものと考えられる。また腹横筋は、速い
動きでの Feed forward は可能であるが、遅い動
4)
Group’s report on back pain. HMSO, London.
1993.
2 )Cresswell A.G. : Responses of intra-abdominal
きでは活動が見られない という報告からも、静
pressure and abdominal muscle activity during
止姿勢であるものの常に不安定環境であったこと
dynamic trunk loading in man. European
が、
有効な反応を導き出せたと考える事ができる。
Journal of Applied Physiology and Occupational
Physiology, 66(4), 315-320, 1994.
Local muscles の活性化は、実生活や競技に反
3 )Hides J.A., Richardson C.A., Jull G.A. :
映することや、腰痛の治療に重要である。Global
Multifidus Muscle recovery is not automatic
muscles の働く環境で、有効な腹横筋の収縮を引
after resolution of acute, first-episode low back
き出すことは、今後の治療やトレーニングを進め
る上で重要である。
Redcord は、そのハンギングポイントとロープ
の長さで、自由自在に負荷量をコントロールする
ことができる。対象者にとってのオーダーメイド
の運動負荷量を求めることができるのである。高
pain. Spine, 21, 2763-2769, 1996.
4 )Hodges P.W., Richardson C.A. : Feedforward
contraction of transversus abdominis is not
influenced by the direction of arm movement.
Exp Brain Res, 114, 362-370, 1997.
5 )伊 藤 俊 一・ 隈 元 庸 夫・ 白 戸 修: 腰 部 脊 柱 安 定
化エクササイズによる腰痛治療と再発予防,
Orthopaedics, 21(6), 49-56, 2008
負荷トレーニングが難しい対象者や、pulling the
6 )Sapsford R.R., Hodges P.W., Richardson C.A.,
body in や排尿を擬似的に止めることが難しい患
et al.: Co-activation of the abdominal and
者、
痛みがあり運動に制限が生じる対象にとって、
pelvic floor muscles during voluntary exercise,
Neurourology and Urodynamics, 20, 31-42, 2001.
振動刺激を用いることにより、適切な負荷量とポ
7 )Sapsford R.R. and Hodges P.W.: Contraction
ジションを設定する事ができれば、有効なトレー
of the pelvic floor muscles during abdominal
ニングや治療を進める事ができる。また、Local
maneuvers, Arch Phys Med Rehabilitation, 82,
muscles の活動性を高めるためには目的とする筋
群に直接刺激を加えるのではなく、他部位からの
1081-1088, 2001.
8 )Strohl K.P., Mead J., Banzett R.B., Loring S.H.,
Kosch P.C. : Regional differences in abdominal
適切な刺激によって効果を期待することができる
muscle activity during various manoeuvres in
こと、目的とする筋群と刺激を加える部位との距
humans. Journal of Applied Physiology, 51, 1471-
離関係など今後のトレーニングの指標を示すこと
ができたことも有用であると考える。
【結論】
Local muscles を活性化させる振動刺激方法の
検討をおこなった。外腹斜筋、内腹斜筋の収縮を
1476, 1981.
9 )Locote M., Clevalier A.M., Mirander A., Bleton
J.P., Stevenin P. : Clinical evaluation of muscle
function. Churchill Livingstone, Edinburgh, 1987.
10)DeTroyer A., Estenne M., Niname V., VanGansbeke
D., Gorini M. : Transversus abdminis muscle
function in humans. Journal of Applied Physiology,
68, 1010-1016, 1990.
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
11)村上幸士・桜庭景植・永井康一:腰痛の有無に
17)中林紘二・兒玉隆之 他:振動刺激による下腿三
て比較した腹部筋群の筋厚−超音波画像を使用
頭筋の筋緊張抑制効果−H/M 比を用いた筋緊張
して−,理学療法科学,25(6), 893-897, 2010.
の経時的解析−,理学療法科学,26(3), 393-396.
12)宮下智・和田良広・鈴木正則:効率的な体幹ト
2011.
レーニングの検討−異なる運動における腹横筋
18)Eklund G., Hagbarth K-E.: Normal variability of
と内腹斜筋の収縮厚から−,日本橋学館大学紀
tonic vibration reflexes in man, Expl Neurol, 16,
要 , 11, 41-51, 2012.
80-92, 1966.
13)中野治郎 他:振動刺激療法,物理療法(第 2 版)
,
神陵文庫,333-350, 2009.
14)McMeeken J.M., Beith I.D., Newham D.J., Miligan
P., Critchley D.J. : The relationship between
EMG and change in thickness of transversus
abdominis. Clinical biomechanics, 19, 337-342,
2004.
15)James E.A. : Grant’
s Atlas of Anatomy (seventh
edition),The Williams & Wilkins company,
Baltimore, 2-6 to 2-13, 1978.
19)松原由未子・栗井瞳 他:疲労に至る等尺性運
動後の筋硬度回復に対する振動刺激の効果,理
学療法科学,19(4), 341-345, 2004.
20)柳原章:H- 反射と緊張性振動反射(TVR)を
用いた筋緊張異常および相反性機能失調の検討,
近畿大学医学雑誌 , 17(1), 23-35. 1992.
21)松田孝史・渡辺誠介 他:緊張性振動反射の H
波による検討,千葉医学会雑誌,47(4), 291-302,
1971.
22)Hodges P.W., Richardson C.A. : Contraction of
16)Richardson C., Jull G., Hodges P., Hides J.
the abdominal muscles associated with movement
: Therapeutic Exercise for spinal segmental
of the lower limb. Physical Therapy, 77, 132-
stabilization in low back pain, Churchill
144, 1997.
livingstone, United kingdom, 103-123, 1999.
宮下智 和田良広 鈴木正則:Local Muscles を活性化させる振動刺激方法の検討
Examination of stimulating vibration that revives Local
Muscles method
Satoshi MIYASHITA*1 Yoshihiro WADA*2 Masanori SUZUKI*3
Synopsis
In recent years, it has become vital to demand the stability of the body trunk when athletes train or when
treating low back pain. According to the theory Cresswell advocates, to stabilize the trunk muscles, of the two
muscles of the trunk muscle, the local muscles, rather than the global muscles need to be exercised. In our previous
work, we reported on the effectiveness of using high load exercise to stimulate the local muscles. However, though
this method was effective with athletes, it was not appropriate for people in a weakened state or the elderly. So
in order to develop a method that would use a light load to stimulate the local muscle, this time we experimented
with vibration stimulation.
The subjects were 52 men in normal health (17.0±0.8 years old, 171.0±5.5cm, and 63.2±5.4kg). The evaluation
method measured a muscular thickness of the external oblique, the internal oblique muscle, and the transversus
abdominis muscle by using ultrasonic diagnostic equipment. The ratio of each muscle was calculated from the
combined thickness of these three muscles. The vibrational frequency was 30Hz and the amplitude was set at low,
using the Redcord Stimula. The movement task was a push up position suspended in the air by using two Redcord
trainers. The vibratory stimulation was separately stimulated from the part of the hand and the part of the foot
and trunk muscles thickness was then measured. As a result, it was confirmed that vibration from the upper extremities maximized the contraction of the TrA local muscle. Moreover, it was confirmed to oppress the shrinkage
of the external oblique and the internal oblique muscle that are Global muscles. It was concluded that vibration
stimulation is effective in stimulating Local muscles.
Key words
Local muscles, Vibration stimulation, Muscular thickness, Redcord, Redcord stimula
*1 Faculty of Liberal Arts Nihonbashi Gakkan University. *2 Department of Rehabilitation Miyota central
memorial hospital. *3 Tokyo Eisei Gakuen college.
NIHONBASHI GAKKAN UNIVERSITY Bulletin No.12
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
研究ノート
日本橋学館大学留学生対象初年次科目における
ノートテイキングの指導
―ノートテイキングの習慣化とその意義について―
國弘 保明*1
授業見学あるいは期末試験前の指導を通じて、留学生が十全にノートを取れていない実態に
気付いた。これを解決すべく、模擬講義をビデオ収録し、それを練習素材とする教育実践を行っ
た。模擬講義を視聴させてノートを取らせ、それをもとに質疑応答し、ノートの講評を行うと
いうものである。外国語である日本語で講義を受けるという難しい作業を留学生は行わなけれ
ばならない。さらにノートテイキングは講義のポイントを自分自身で探り、素早く筆記すると
いう高度な技能が必要となる。ノートを取ることは大学での学びに不可欠な技能であることか
ら、本実践を行うことにした。
結果は、ノートを取ることに関して学生の意識を高め、講義を受けることに慣れさせたとい
う点では効果を見た。しかし、実際のノートが効果的・効率的なものになったと断ずるには及
ばなかった。
今後の課題としては、より基本的な練習から実践を行うこと、専門用語の導入を初めとして
学生の日本語力を醸成すること、他教員の協力を得て様々な講義スタイルを体験すべきこと、
講義に用いられる談話の分析である。
キーワード
ノートテイキング 模擬講義 初年次教育 アカデミックスキル 談話
1.指導の目的
けられるのに対し、本学のような小規模大学では
そこまでの細分化はなされず、様々なレベルの学
筆者が本学で留学生に対する教育に関わるよう
生を一度に扱わなければならないことも指摘でき
になり、今年で 2 年目になる。それまでは大学予
るだろう。このように予備教育機関と大学にはい
備教育としての日本語教育に従事し、いわば大学
くつかの差異があるが、そのひとつとして筆者が
に学生を送り出す側にあったが、一転して受け入
日常的に行っている授業の中で感じることは、本
れ側に立場が転じたことになる。この転換により
学の留学生がノートを取らないということである。
気づいたことは様々ある。それは例えば、日本語
説明を行い、板書をしても、ノートにペンを走
能力試験・日本留学試験対策に重点が置かれる予
らせない学生が多い。筆記用具を持参しない学生
備教育機関の教育内容に対し、大学では「その先」
などは論外であるが、演習問題を扱えばきちんと
の内容が求められることである。また、予備教育
考え、自分の答えを記述する学生が多いため、こ
機関では習熟度によってかなり細かくクラスが分
れは日本人学生と留学生の「学習スタイル」の
違いなのではないかと当初考えていた。しかし、
2012 年 9 月 24 日受理
A Study on Training for Note-Taking of University Freshmen
International Students
*1 Yasuaki KUNIHIRO
日本橋学館大学リベラルアーツ学部
FD 活動の一環として他の講師の講義を見学した
ところ、日本人でもノートを取っていない学生が
いることに気付いた。そして、学期末が近づき、
レポートの作成支援をする際に、配布されたプリ
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
ントは保管しているものの、何の書き込みもメモ
トテイキングを指導する旨を述べた。本章では
もなく、授業で学んだはずのことを何も記録して
ノートを取ることの効用について、とりわけアカ
いない留学生さえいることに気付かされた。つま
デミックスキルの点からどのように論じられてい
り、たとえその場では理解できたとしても、自ら
るのかについて述べる。
の手で何も記録していないため、講義には単に講
佐藤(2006)では「『ノートを取るぞ』という
師の話を聞きに行き、プリントを受け取りに行っ
気持ちになるということは、講義を俺は聞くぞ、
たのと変わらない状況であった。これではスムー
私は聞くぞという心構えをつくることでもある」
ズにレポートを作成できるわけがないし、そもそ
もその学生が講義を受講することの意義を再考せ
ざるを得ない。
(p.31)として、精神的な効用を挙げている。
北尾ほか(2005)では「なぜノートを取るの
か?」と題して、
「重要なことをメモしておかな
このような状況から学生を脱却させるべく、
いと忘れます。試験の前やレポートを書くときに
ノートをとることに対する学生の意識を改め、加
利用できるように、将来の学習や研究に役立つよ
えて十全にノートをとることができるように教育
うにノートを取るのです。つまりノートを取る
活動を行った。
ことは、自分の知の世界を築くことです」
(p.41)
2.先行研究
講義に於ける教員の発話に関しては佐久間
(2010)に詳しい。ここでは、
「表現と理解デー
と指摘している。森(1995)ではより端的に「『あ
とから見るため』です。ノートを取る目的はそ
れ以外にない、といっても過言ではありません」
(p.61)と喝破している。
タに共通する作業仮説的単位」
(p.28)として「情
このようにノートを取ることには気構えを整え
報伝達単位」を定義し、これをもとに、談話の展
る効用と、記録としての効用の 2 つが挙げられる。
開や表現の特性を論じている。とりわけ、小沼・
学習姿勢の向上に関しては前者が、レポート・試
田中(2010)ではこの情報伝達単位を導入して、
験を鑑みれば後者が重視されるところであり、い
談話とノートに記録された要約文の分析を行って
ずれにしても大学生の学習にノートを取ることは
いる。
欠かせないといっても過言ではないだろう。
また、佐藤・藤村(2011)では短時間の数学
の講義を利用し、留学生のノートテイキングと講
義内容の理解の相関について分析を行っている。
4.大学入学前のノートと入学後のノート
前章ではノートを取ることの効用について述べ
その結果、
「内容を正しく聴きとることと、公式
た。また、ノートテイキングの問題を考える場合
を実際に適用して計算できる技能を獲得すること
には、高校までの授業と大学での講義はそのスタ
とは異なる」
(p.96)として、受動的に板書を書
イルが大きく異なることに注目する必要があるだ
き写すのみでは、新しい学習内容の理解に不十分
ろう。
であるとしている。板書の筆写に加え、自身でも
専修大学出版企画委員会(2006)は両者の違
ノートに計算するような能動的な作業が必要であ
いを「大学に来るまでは、たいてい先生が、黒板
り、それをしている学生の理解度が高いことを指
に書き(これを「板書する」という)
、生徒はそ
摘している。
れを写していた。板書されたことを写せば、それ
3.ノートを取ることの効用
前章では、講義の談話あるいはノートテイキン
がそのままサブノートになった。しかし、大学で
の授業は、
『書く・写す』という関係ではなく、
『話
す・聞く』という関係で成り立っている」
(p.11)
グに関する先行研究について触れた。また前々章
と端的に表現している。森(2007)も「『大学の
では学習に対する学生の意識を変革すべく、ノー
講義』では、多くの先生は重要な事柄はほとんど
國弘保明:日本橋学館大学留学生対象初年次科目におけるノートテイキングの指導―ノートテイキングの習慣化とその意義について―
『話』で進め、補足説明や話し言葉では伝わりに
的なノートを取るためにはどのようなことが必要
くい単語などだけ黒板に書く(『板書』といいま
なのか。逆に、どのようなノートでは不十分であ
す)方式で進められます。
『高校(や中学)の授
るのか。この点に関してはビジネス書を中心に
業』が重要な事柄を整理して板書するのとは反対
様々な知見が披瀝されている。ここではそれを紹
です」
(p.58)として、同様の指摘をしている。
介する。
大学の講義が「話すこと」を中心に行われるこ
とに関しては、
大学導入教育研究会(2011)は「学
5.1 よくないノートとはどのようなノートか
生に伝えるべき内容があまりに多く、板書できる
田村(2012)では「ノート作りの際によくあ
情報量をはるかに超えているから」
(p.29)と情
る失敗」として「①授業で先生が言ったことを全
報量にその理由を見いだしている。
部書きとろうとしている。②美しいノートにこだ
また森(2007)は、大学の講義は批判的に聞
わっている。③家に帰って丁寧に清書している。
くことが求められている点で、自説の要点を押し
④参考書の内容をノートに丸写ししている。⑤抽
つけることを避けるがために、「大学教員の多く
象概念だけをノートに書きとっている。」という
は『自分で講義の要点をつかみとる』ことを求め
5 項目を挙げている(pp22-25)
。
ます」
(p.61)ということを指摘している。山下
藤田(2006)では授業タイプ別に「良くない例」
(1997)も同様に「ノートするのも、教師の説明
を紹介している。まず、教科書に沿った授業の場
を書きとめるというよりは、教師の『主張』とそ
合の「良くない例」として、
「①教科書に書いて
の『理由づけ展開』を書きとめ、それに対する、
あることを、わざわざ抜き書きしてある。②板書
自分の感想や意見を即座に書きとめておく。そう
したことのみを書き写している。③やたらとカラ
いうためのものです」
(p.60)として教員の講義
フル(何色も使っている)」の 3 点を挙げている。
内容が知識として絶対的なものではないことを指
また、「板書中心の授業の場合」として、「①板書
摘している。この点も、高校までの授業とは大き
したことを正確に記録しようとしている。②ノー
く異なる点だろう。
トに余裕(余白)を作らず詰めて書く」の 2 点を
以上のように、高校までの授業と大学での講義
挙げている。さらに「プリント中心の授業の場合」
はそのスタイルが大きく異なり、ノートの取り方
として「①何も、書かなさすぎ。②先生が話した
も必然的に違いが生じてくる。この「違い」につ
ことを片っぱしから書き込む」の 2 点を挙げてい
いて十分な説明を行い、その対策について大学教
る(pp33-36)
。
員は教えてきたか顧みる必要があるだろう。
高校までの授業であれば板書をそのまま写せば
5.2 いいノートとはどのようなノートか
済んだノートテイキングを、大学生は大学の講義
佐藤(2006)はノートを取ることを「講義の
を前にどのように行えばよいのだろうか。前掲の
流れをひとつのストーリーとして聞きつつ、同
指摘を見ても、板書を写すだけではあまりに不十
時に組み立てていくという作業」
(p.31)として、
分である。ここで考えるべきなのは、大学の講義
講義を再構成しつつ、疑問点や興味を感じたこと
でノートを取らない(取れない)学生に対して、
を記していくことが必要だとしている。
何を書くべきなのかを指導することである。
5.よくないノートと、いいノート
藤田(2006)では「他人に説明できること」
(p.32)
という基準を設け、ノートの内容を吟味すること
を提案している。ノートの記録としての効用か
前々章ではノートを取ることの効用について述
ら、時間が経過しても、ノートを読み返すだけで
べ、前章では大学で講義のスタイルが大きく変わ
講義の内容が想起できることが必要であるとして
ることについて述べた。では、大学の講義で効果
いる。
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
これらの観点から考えれば、講義の発話内容の
ではなく、それをじっくり聞くゆとりを生み出し
重要度を自分で判断し、取捨選択してノートを取
てくれるシステム」(フライ(1996)p.80)とし
る必要があることがわかる。また、講義の内容が
て、素早く記録できる自分なりの簡便な表記を利
教員の発話のみでわからないような場合には、講
用するということである。具体的にいえば、アル
義後に適宜補足する必要があるともいえるだろう。
ファベットに置き換える(例:キャリアデザイン
取捨選択の分量に関して吉澤(2011)は、
「話
→ CD)、1 ∼ 2 文字に略す(例:厚生労働大臣→
したり板書された情報が 100%だとすると、ノー
厚相)
、漢字をカナに置き換える(例:基礎文献
ト に 書 き と め る 情 報 量 は、 そ の 20 % 程 度 に
研究→キソブン)
、専門用語を短縮する(例:地
ぎゅーっとエッセンスを圧縮して書くときに、最
球温暖化対策→温対)
、略字をつくる(例:国際
大効果が出るようです」
(p.72)と指摘しており、
関係→□カ)
、記号を活用する(例:アメリカが
講義を聞くことを優先させ、限られた内容だけを
ロシアに優越する:米>ロ)というようなもので
ノートにとるよう勧めている。
ある。
6.いいノートを取るためのテクニック
6.3 教員の話をよく聞く
講義を聞き、重要度を自分で判断しながら素早
教員の話をよく聞くという最も基本的な指摘で
くノートを取ることは、大学入学前の板書をその
はあるが、フライ(1996)は「いきいきとした
まま写すノートテイキングに比べ、高等な作業で
頭―注意深く聞き、即座に反応する頭脳―は効果
ある。これを支援するためのテクニックは各書で
的なノートをとるためのキーポイント」
(pp.31-
以下のようなものが提起されている。
32)であるとし、ノートテイキングにとって最も
重要な要素に位置づけている。
6.
1 余白を取る
この「教員の話をよく聞く」ことの目的は 2 つ
まず、工夫のひとつとして余白を取ることが挙
に分類できる。ひとつは環境を整えるという目的
げられる。これには、講義中には疑問点や思いつ
である。教室の一番前に座る、落ちつきのない友
きを書きとめておくためといった目的がある。ま
達のそばには座らない、姿勢を良くする。これら
た講義後には、自分で内容が補足するため、ノー
によって、より講義に集中することが可能となる。
トを読み返しキーワードを抜き出すためといった
もうひとつの目的は、講義のポイントを示す言
目的がある。
語的・非言語的な手がかりを見いだすという目的
余白の取り方にも様々なスタイルがあり、単に
である。藤田(2006)は「先生のいい回しの中で(中
文字間や行間を広く取るといったものから、
「ノー
略)
『つなぎのことば』に注目しておくと、話の
トの端 3 センチから半分程度の所に縦線を引い
内容の構造が明確になる」
(p.38)として例示を
てスペースを作」
(学習技術研究会(2006)p.23)
導く表現(まず第一に・次のような理由で)
、因
るもの、あるいはノートの下端から 5 センチほど
果関係を示す表現(従って・その結果)
、対立関
の所に横線を引き、これに加えてノートの左端か
係を示す表現(他方・反対に・逆に)、結論・要
ら 6 センチぐらいの所に縦線を引いてノートを 3
約を示す表現(要するに・まとめると)を紹介し
分割する「コーネル大学式ノート」
(田村(2007)
ている。これらに加え、学習技術研究会(2006)
pp.66-69)などもある。
では「要点をつかむコツ」
(p.22)として、テー
マを示す表現(今日は○○について述べます・今
6.
2 表記の工夫
日は△△について述べてきましたが)、言い出し
ノートを取る際に表記の工夫を促している文献
や言い換え(つまり…など)、よく出てくる語句・
も多い。換言すれば、
「教師の話を書きとるだけ
解説がつけられた語句、テキストの参照ページを
國弘保明:日本橋学館大学留学生対象初年次科目におけるノートテイキングの指導―ノートテイキングの習慣化とその意義について―
示す表現(テキストの○ページにもありますが)
などを挙げている。
非言語的な手がかりとしては、教員が学生が
ノートを取り終わるのを待っている、繰り返し同
①新聞記事等を参考に、筆者がテーマを選定し、
講義メモを作成する。講義時間は 5 ∼ 15 分程
度になるよう、内容を考慮する。発話を一言一
句決めた原稿を作るようなことはしない。
じことを述べる、早口だったのが急にゆっくりに
②模擬講義を実施し、ビデオ録画する。この際に
なる、そこだけ大きな声になるといった現象を藤
はホワイトボード・黒板を用意し、講義中に適
田(2006)は紹介している。
宜板書を行う。板書したのは講師がポイントだ
と考えた点、あるいは聞いただけではわかりに
6.
4 テクニックの限界
くいと考えた言葉などである。また、収録中に
前節では「教員の話をよく聞く」として、講義
言いよどんだりすることがあっても、それは実
のポイントを弁別するテクニックをまとめた。し
際の講義でも起こりうることとして、そのまま
かし、これはあくまで一般的なものであることも
収録を続けた。
指摘しなければならない。教員が講義でどのよう
な発話をするかは千差万別であることが想像され
③録画内容の確認。①②の条件に合わない場合に
は再収録する。
るし、どのような非言語行動をとっているかもま
④授業「基礎力リテラシー C(留学生用)」にて、
た同様であろう。「つなぎのことば」の示す意味
ノートを取るべき点、講義を聞くうえで留意す
は誰にとっても同じものではあるが、実際にどの
べき点を確認。
ような
「つなぎのことば」
がどの程度の重みをもっ
て用いられているかは、検討の余地がある。
つまり、究極的には教員それぞれに即したテク
ニックが生じることになるが、
それは講義を受け、
⑤模擬講義ビデオを放映。これに先だって、氏名
欄・日付のみがあり、罫線が入っていない白紙
を配布し、④を踏まえてノートを取るように指
示。
ノートをとることの本質からは外れてしまう。今
⑥模擬講義ビデオ放映終了後、放映画面上の授業
後の課題としてはなるべく多くの講義を収集し・
終了時の板書をもとに質疑を行う。その際、ど
分析し、より一般化したテクニックを言語面・非
れだけ自分が理解できているか、ノートを取れ
言語面から見出していく必要がある。
ているか確認させる。
7.指導内容の実際
本教育活動は、
1 年生を対象とした選択科目「基
礎力リテラシー C(留学生用)」で実施した。こ
⑦講師が用いた講義ノートのコピーと、講義のも
とになった新聞記事のコピーを配布。自分の
ノートの過不足について講師と簡単にディス
カッション。ノートの回収。
れとは別に、留学生を対象とした必修の日本語ク
ラスもあるが、こちらはレベル別に 2 クラス編成
7.2 模擬講義で扱った内容
となっており、受講人数が限られてしまう。これ
本教育活動では、これまで以下の内容で模擬講
に対して当該授業は選択科目ではあるが 1 年生の
義を扱った。本科目を履修する学生が中国人留学
留学生が全員履修登録している授業である。ノー
生であること、学生の所属学科(総合経営学科 6
トテイキングはこれからの大学での学びに不可欠
人、総合文化学科 2 名)
、学生の関心を考慮して
であり、学生の日本語力に関わらず重要であると
内容を決定した。なお、学生の日本語学習年数は
も考えたため、
この科目で活動を行うこととした。
4 月の時点で 1 ∼ 3 年間である。日本語力は日
本語能力試験の N1 レベルに合格している学生か
7.
1 指導内容の手順
ら、N2 レベルの試験に不合格であったため未だ
本活動は以下のような手順で実施した。
何の級を持っていない学生まで様々である。
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
表 1 これまで実施した模擬講義内容
5 月 23 日 若年失業率
中国の自動車市場
5 月 30 日 自動車盗難で狙われるハイエース
原子力災害特別措置法
6月6日
「ノートをとることの大切さがわかった」という
問いに、それぞれ 86%の学生が首肯しているこ
とから、この点での意義はあったといえるだろう。
AKB 総選挙と経済効果
6 月 13 日 メタンハイドレードの可能性
節電の方法
6 月 20 日 電子書籍と紙の書籍の違い
経済のグローバル化
6 月 27 日 大学の統廃合
経済学が対象とすること
7月4日
パソコンの補助記憶装置
7 月 11 日 なぜ円高が進むのか
わかりやすい話し方
7 月 18 日 拡大する電気自動車の用途
7 月 25 日 スポーツをプレーするときに大声を出すこ
との意義
軽減税率とは何か
9 月 19 日 台湾で増加する外国人労働者
中東の安定に人材育成が果たす役割
図1
7.
3 ノートにとるべきと指導したこと
本教育活動では学生の日本語力も勘案し、ノー
トにとるべきことを 3 段階に分けた。即ち、①板
書を写す、②板書の説明を聞き取って書く、③自
分で大切だと思うところを書き、場合によっては
マークする、である。また、6 章で述べたテクニッ
クを紹介し、記号・略語やカタカナ表記を推奨し、
見た目よりも重要な内容を速く書くことを意識さ
せた。
8.本活動の効果について
後期も継続しているが、前期には全部で 10 回、
図2
本教育活動を実施した。当初は「何を書いたらい
しかし、
「本活動を通じてノートがうまくとれ
いかわからない」と、聞き流すだけだった学生も
るようになった」という問いに対しては 57%が
いた。しかし、
「模擬授業受講→ノートテイキン
肯定するに留まり、一概に高い効果があったとす
グ→内容の問答→ノートの吟味→ノート回収」と
ることはできない。図 1・2 は学生 A のとったノー
いう流れを繰り返すことにより、「白紙のまま提
トである。図 1 は本活動第 1 回目に、図 2 は第
出するのはきまりが悪い」と考えたためか、授業
10 回目にとったノートである。付した下線は講
が進むにつれて白紙のまま提出する学生はいなく
師の板書をそのまま写した箇所を示しているが、
なった。これも、まずは「授業を受けたら何かを
図 1 と図 2 では下線のない部分(つまり、自分
書く」習慣形成の第一歩と考えている。
で聞き取ってノートに取った部分)の分量が増え
また、後日実施したアンケート調査では、「こ
の活動を通じて、講義を受けることに慣れた」
ており、学生の成長を感じることができる。
國弘保明:日本橋学館大学留学生対象初年次科目におけるノートテイキングの指導―ノートテイキングの習慣化とその意義について―
図3
図5
図 5 は学生 C の第 1 回目のノートである。こ
れを見ると、板書だけではなく自分で聞き取った
内容をノートにとっていることが分かり、第 1 回
目からこの学生は本活動の目標を達成しているこ
とがわかる。
これを、同じく第 1 回目のノートである図 1・
図 3 と比較すると、ノートにとった分量は図 3
<図 1 <図 5 のように表すことができる。この
ような差異を生み出しているのは、板書した事項
に関する補足説明・追加説明がノートにとれたか
否かであった。
図4
図 3・4 は学生 B のノートである。これを見る
と、第 1 回目の図 3 と第 10 回目の図 4 ともほぼ
全て講師の板書を写したのみであり、成長はあま
り見られない。7.
3 で述べたように本活動では板
書を写すことは最低限として、それをいかに上積
みしていくかを課題としたが、この学生には難易
度が高かったようにも思われる。
図6
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
心と所属学科に合わせて模擬講義のテーマを選定
したが、大学の講義を受講するための練習とし
て、どうしてもある程度専門的な内容にも触れる
ことになった。このため、言語的な問題に加え内
容的にも理解が困難で、テーマによっては聞き取
りを諦めてしまう学生もわずかながら見られた。
関連分野の頻出する専門語彙については、場合に
よっては媒介語を交えても積極的に導入すること
で、この問題を解決したい。
第三に他の教員の協力を得て、様々な講義スタ
イルを体験させる必要があることである。本教育
活動では日本語教育担当教員の発表者が様々な分
図7
野の教員に扮して模擬講義を実施したが、講義の
図 6・図 7 は第 8 回目の模擬講義のノートであ
スタイルは当然ながら各教員で様々である。藤田
る。模擬講義を授業で扱う回数も多くなってきた
(2006)では「授業タイプ別のノートの取り方の
が、それでも学生間に差は見られる。どちらの
アドバイス」
(p.33)がされているが、講義スタ
学生も板書は写せているものの、図 7 の学生は
イルによって効果的なノートの取り方が異なるこ
「リーマンショック」
「ギリシャ危機」の具体的な
とは想像に難くない。今後は他教員に協力を仰ぎ、
内容、またギリシャ危機前に「EU 国家」が行っ
より効果的な教育活動を志向したい。
たこととその結果について、補足説明をノートに
また、第三の課題に関連させれば、講義の談話
とっている。それに対して図 6 の学生はキーワー
ではどのような言葉や非言語行動を用いて重要性
ドを書いているにすぎず、模擬授業後の質疑でも
がマークされるかを検討することが第四の課題と
理解ができていないことが明らかになった。
して挙げられる。6.4 で藤田(2006)の述べる「つ
9.今後の課題
今後の課題としては、第一に留学生の日本語力
のさらなる向上が求められることである。書くべ
き・聞き取るべきことはわかっても、それが模擬
講義に於いては理解できなかったという声を授業
中に耳にした。日本語能力試験の聴解問題の多く
では先に問いが与えられ、その点に集中して談話
を聞けばいいのに対して、講義では自分でポイン
トを探ったり課題を設定したりしながら談話を聞
く必要があり、かなり高度な作業といえる。今回
の実践では 5 分程度の短い模擬講義から、次第に
講義の時間を長くすることで慣れさせることをは
かったが、数行レベルのより基本的な内容から指
導を行う必要があったと思われる。
第二に、学生に学習内容への興味を喚起し、関
連語彙知識の拡充をはかることである。学生の関
なぎのことば」について論じたが、実際には何が
重要な「つなぎのことば」なのかを明らかにでき
れば、講義理解の大きな手助けになると思われ
る。
國弘保明:日本橋学館大学留学生対象初年次科目におけるノートテイキングの指導―ノートテイキングの習慣化とその意義について―
参考文献
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ず美しい 文藝春秋
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と理解 , 講義の談話の表現と理解 くろしお出
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. 大学生 学びのハンド
ブック 世界思想社
12)大学導入教育研究会(2011)
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デザイン入門 第 2 版 古今書院
13)田村仁人(2007)
. アタマが良くなる合格ノート
術 ディスカヴァー・トゥエンティワン
14)藤田哲也(2006)
. 大学基礎講座 改増版 北大路
書房
15)本田尚也(2006). 図解 百戦百勝のメモ術・ノー
ト術 三笠書房
16)美崎栄一郎(2009)
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に何を書いているのか Nana ブックス
17)森靖雄(2007). 新版 大学生の学習テクニック 大月書店
18)山下威士編(1997)
. 大学生のヤリ方 尚学社
19)吉澤ゆか(2011)
. 1 本線ノート術 アスキー・
メディアワークス
20)仕 事 に 効 く ノ ー ト 術 , 日 経 ビ ジ ネ ス Associe,
2012 年 7 月号
日本橋学館大学紀要 第 12 号(2013)
A Study on Training for Note-Taking of University
Freshmen International Students
Yasuaki KUNIHIRO*1
Synopsis
The purpose of this study is to investigate how international students learn their note-taking techniques. Although Learners are expected to take notes efficiently, most of international students face a difficulty in writing it
down. In this study, educational practices which learners take notes by watching lecture videos are conducted. It is
essential to acquire note-taking techniques for university students, hence I decided to do this educational practices.
It is difficult for international students to take notes of a lecture. They are required to get the point of the contents, write it down speedy. It is essential to have an ability which takes notes properly. Through 15-week Japanese instructions, the participants in the study took notes of the lecture, had a question-and-answer session and
commented about notes each other.
Summary of research processes are as follows;
1. Lecturer films a trial lesson.
2. Students take notes on a lecture.
3. After watching a trial lesson, lecturer and students have Q and A sessions.
4. Lecturer comments on the quality of students’ notes.
Results show that learners could enhance their note-taking strategy, get used to take lectures.
The author suggest that learners are expected to do basic practices from the beginning, increase their vocabulary including technical term, practice to take various lectures. Furthermore, we are expected to analyze lecture’s
discourse.
Key words
note-taking, trial lesson, first-year experience, academic skills, discourse
*1 Faculty of Liberal Arts Nihonbashi Gakkan University
NIHONBASHI GAKKAN UNIVERSITY Bulletin No.12
教育研究業績一覧〈2012 年 1 月∼ 12 月〉
[教授]
教員名
種別
研究業績
飯森豊水
講座
「バッハ << ゴルトベルク変奏曲 >> を聴く」,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),2012.11.5・
12・19・26.
池沢政子
著書(共)
『特別活動』
,培風館,林尚示編著,
「第 8 章 特別活動の評価と指導要録への記載等について」
,
167-189,2012.7.29.
太田英比古
勝野まり子
北垣日出子
五藤寿樹
佐々木さよ
佐々木由利子
講座
「稲荷信仰」,柏文化財ゼミナール,柏市教育福祉会館,千葉(柏),2012.1.14.
講座
「天皇号の成立」,柏文化財ゼミナール,柏市教育福祉会館,千葉(柏),2012.2.6.
講座
「古代の戸籍を読む ―下総国倉麻郡意布郷養老五年戸籍断簡―」,柏文化財ゼミナール,柏市教育
福祉会館,千葉(柏),2012.5.7.
講座
「真間の手児奈」,柏文化財ゼミナール,柏市教育福祉会館,千葉(柏),2012.6.11.
講座
「古代の戸籍を読む ―下総国倉麻郡意布郷養老五年戸籍断簡―」,平成 24 年度柏市小中学校教職
員特別研修,日本橋学館大学,千葉(柏),2012.8.23.
講座
「新羅の朝鮮半島統一と日本(一) ―七世紀の東アジア〈隋唐帝国の成立と朝鮮半島・日本〉―」,
柏文化財ゼミナール,柏市教育福祉会館,千葉(柏),2012.10.6.
講座
「最近の邪馬台国論 ―箸墓古墳の築造年代と纏向遺跡の大型建物群跡―」,日本橋学館大学公開講
座,千葉(柏),2012.11.8.
講座
「千葉県龍角寺古墳群と龍角寺 ―権力モニュメントとしての古墳から仏教寺院へ―」,柏文化財ゼ
ミナール,柏市教育福祉会館,千葉(柏),2012.11.24.
講座
「現地研修 印旛郡栄町・龍角寺及び古墳群と印西市松虫寺」,柏文化財ゼミナール,千葉(栄町・
印西市),2012.11.26.
講座
「新羅の朝鮮半島統一と日本(二)
―武烈大王金春秋と金庾信将軍の外交と軍事―」
,柏文化財ゼミナー
ル,柏市教育福祉会館,千葉(柏)
,2012.12.4.
原著論文
「“Odour of Chrysanthemums”
『菊の香り』に関する一考察―リアリズムがシンボリズムを超えて
伝えるところ―」,日本橋学館大学紀要,第 11 号,3-18,2012.3.10.
著書(共)
『秘書概論』,高橋眞知子・北垣日出子編著,樹村房,48-62,151-155,2012.4.
その他
(巻頭言)「興味ある研究テーマ」,『研究年報』
,第 19 号,日本国際秘書学会,3-8,2012.5.1.
原著論文
「日本社会情報学会誌(JASI)はどのような研究を発表してきたか」,日本社会情報学会誌,23(2)
,
5-12, 2012.3.31.
原著論文(共)
“CLOUD COMPUTING: WEB 2.0 AND ENTERPRISE 2.0”
,
原著論文
「社会情報とビジネス―ソーシャルメディアからデータ集約型科学へ―」,社会情報学会誌,1(2),
27-35, 2012.12.25.
国際会議発表
“CLOUD COMPUTING: WEB 2.0 AND ENTERPRISE 2.0”
(共同研究),Asia Pacific Conference on
Information Management 2012, Seattle, U.S.A., 2012.8.18.
講座
「『雨月物語』から『白峯』を中心に―三島由紀夫・石川淳に触れつつ―」,日本橋学館大学公開講座,
千葉(柏),2012.10.31,11.7・14.
研究ノート
「初年次教育としての夏期グループ体験学習の研究」
,日本橋学館大学紀要,第 11 号,73-83,
2012.3.10.
学会発表
「震災を契機とした学生相談室の昼休み音楽サロンの試み」
,日本心理臨床学会,愛知学院大学,愛
知(日進市),2012.9.16.
(
)
, 2012.8.16.
講演
(出張授業)「自分に向いてる仕事ってどんなもの?」,帝京中学校,東京(板橋区),2012.6.28.
報告・資料
「大学一年生における前期試験が及ぼす心理的影響:試験前後の気分調査の結果から」, 日本橋学館
大学紀要,第 11 号,95-102,2012.3.10.
講演
(出張授業)「自己理解のための枠組み―認知的不協和理論―」,第一高等学院,長野,2012.3.9.
柴原宜幸
塩澤寛樹
佐藤康廣
服部一枝
井下千以子(企画),「心理学教育は学生の『書く力』をいかに支援できるか:深い学びにつながる書く力と
その他
(ワーク は」,日本心理学会第 76 回大会,2012.9.11,専修大学,神奈川(生田)< 平成 24 年∼ 26 年度文部科学省科
ショップ司会) 学研究費補助金・基盤研究(C)(一般)「ライティングスキルズ育成を軸としたキャリア教育の質保証に関
する国際連携研究」の研究分担者として >
講演
「源頼朝が東大寺再興にもたらしたもの」,奈良国立博物館,奈良(奈良)
,2012.9.8.
講演
「南都復興と鎌倉幕府」,鎌倉社会福祉協議会,鎌倉市教養センター,神奈川(鎌倉)
,2012.10.15.
講演
「魅力再発見!仏像彫刻の世界」,北区教育委員会,北区飛鳥山博物館,東京,2012.10.21.
講演
「蓮蔵院聖観音菩薩像について」,蓮蔵院御開帳実行委員会,市原市引田公民館,千葉(市原),2012.11.25.
原著論文
「開始残高勘定の存在理由(1)
」,日本橋学館大学紀要,第 11 号,29-39,2012.3.10.
著書(共)
『教育実習』,日本橋学館大学教職課程,
「教員の仕事、教材研究と授業の準備(国語)、学習指導案(国
語)」,6-10,12-13,16-18,2012.3.
講演
「高校∼大学∼社会へ 今求められる力」,早稲田学院高等学校研修会,東京(新宿区),2012.7.27.
講座
「 王 朝 の 恋 文 に つ い て ―『 蜻 蛉 日 記 』 か ら 探 る ―」, 日 本 橋 学 館 大 学 公 開 講 座, 千 葉( 柏 )
,
2012.11.20・27.
その他
(評価者)「柏市版事業仕分け」
,柏市役所,千葉(柏),2012.8.24・25.
教員名
種別
研究業績
報告・資料
「地方自治体における『対話型』事業仕分けが職員の意識改革に与える影響」,日本橋学館大学紀要,
第 11 号,103-110,2012.3.
研究ノート
「自治体における『対話型』事業仕分けが職員意識に与える影響」,『自治体学』,36(1),76-81,
2012.11.
研究ノート
「 組 織 風 土 の 概 念 と 組 織 風 土 改 革 」, 日 本 大 学 大 学 院 総 合 社 会 情 報 研 究 科 紀 要,13,207-214,
2012.11.
フォーラム発表
「組織変革のアプローチにおける論理と感情」,第 15 回経営行動科学学会年次大会,神戸大学,兵庫,
2012.11.18.
講演
「企業が求める人材と学校教育に期待すること∼若者の自立と自律型人材の養成」
,東京都教育ビ
ジョン(第 3 次)(仮称)策定に関わる第 7 回検討会,東京都庁,2012.5.29.
講演
「『こうなりたい!』がモチベーションをアップする」,帝京中学校出張授業,東京(板橋区),
2012.6.21.
講演
「『対話』を通した職場の安全風土の醸成∼対話を通して職場とメンバーの安全感度を高める∼」
,
安全フォーラム,JR 東日本東京電気工事システム開発事務所,東京(新宿区),2012.12.13.
宮入小夜子
その他
「働く目的を考えるということ∼何のために働くのか?」,『労働判例』,No.1040,2,2012.4.1.
(巻頭エッセイ)
原著論文
「効果的な体幹筋トレーニング方法の検討―異なる運動における腹横筋と内腹斜筋の収縮厚か
ら―」,日本橋学館大学紀要,第 11 号,41-51,2012.3.10.
学会発表
「高齢者の立位前方リーチ距離と重心移動距離との関係性―Redcord 使用時と未使用時の比較―」,
第 14 回日本レッドコード研究会学術大会,帝京平成大学,東京,2012.1.22.
学会発表
「早期脳血管疾患患者に対する Redcord Exercise」
,第 14 回日本レッドコード研究会学術大会,帝
京平成大学,東京,2012.1.22.
学会発表
「陸上競技者におけるレッドコードを使用したトレーニングに関する主観的評価の調査」,第 14 回
日本レッドコード研究会学術大会,帝京平成大学,東京,2012.1.22.
学会発表
「座位リーチと立位リーチの関係―高齢者の骨盤傾斜からの検討―」,第 47 回日本理学療法学術大会,
神戸国際展示場・神戸ポートピアホテル,兵庫(神戸),2012.5.27.
講演
「レッドコードの新たな挑戦」
,第 14 回日本レッドコード研究会学術大会,帝京平成大学,東京,
2012.1.22.
講演
「コンディショニングにおける Redcord の使い方」,北海道ハイテクアスリートクラブ選手講演会,
北海道(千歳),2012.3.16.
講演
「Redcord Exercise 講座」
,NPO 山梨排泄問題を考える会,春期フォーラム,山梨県立文学館,山梨,
2012.6.30.
講演
「アスリートから高齢者まで、『体幹(たいかん)トレーニング』を必要とするわけ」,平成 24 年度
柏市立図書館・市内大学図書館合同企画,日本橋学館大学,2012.10.27.
講演(海外招聘)
“Examination of the effective trunk muscle training method”,2012 Redcord international
Conference,Norway(Lysaker)
,2012.9.15.
宮下 智
安田比呂志
柳沢孝子 横山敬子
原著論文
「ベスト・コメンテイターとしてのデイヴィッド・ギャリック―『マクベス』を実例として」
,日本
橋学館大学紀要,第 11 号,53-72,2012.3.10.
原著論文
「アーロン・ヒルの『プロンプター』と「造形的想像力」」,『日本橋学館大学芸術フォーラム叢書 3:
18 世紀ヨーロッパにおける演技の展開』,安田比呂志・新沼智之編 , 20-36, 2012.10.10.
研究会発表
「情念の演技―アーロン・ヒルの造形的想像力」,西洋比較演劇研究会シンポジウム「18 世紀ヨーロッ
パにおける演技の展開」,明治大学,東京,2012.7.7.
講座
「原文で読む『ハムレット』
」,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),2012.9.25,10.2・9・16・23.
解説
「オトウェイの『スカパンの悪だくみ』について」,
『西洋比較演劇研究』,第 11 巻,西洋比較演劇研究会,
94-98,2012.3.
翻訳
トマス・オトウェイ,
『スカパンの悪だくみ』,
『西洋比較演劇研究』
,第 11 巻,西洋比較演劇研究会,
99-124,2012.3.
翻訳
ジョン・ゲイ,『これって、なに? 悲劇的喜劇的牧歌劇的笑劇』,文学同人誌『飛翔』,白露号(35
号),飛翔同人会,193-228,2012.11.10.
エッセイ
「悲劇『アテネのタイモン』という挑戦」,『板橋演劇センター第 91 回公演『アテネのタイモン』公
演パンフレット』,板橋演劇センター,2012.6.16.
講座
「谷崎潤一郎・葛西善蔵『悪魔』」,早稲田大学オープンカレッジ,東京,2012.4.21.
講座
「宇野浩二と大阪」
,早稲田大学オープンカレッジ,東京,2012.11.24.
講座
「日本近代詩の夜明け」
,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),2012.10.12・19.
書評
「勝又浩『鐘の鳴る丘世代とアメリカ』
」,『東京新聞』,2012.2.26.
書評
「平川祐弘『内と外からの夏目漱石』
」,『東京新聞』,2012.10.21.
書評
「伊藤博『貧困の逆説』
」,『日本近代文学』,2012.5.15.
講演
「金融機関のコンプライアンス」,日本大学経済学部,経済学部 7 号館 2 階講堂,東京(千代田区),
2012.6.26.
[准教授]
教員名
阿部雄一
種別
研究会発表
講座
「原文で読むドイツ文学:フリードリヒ・ヘッベルの短編小説『マッテオ』講読」
,日本橋学館大学
公開講座,千葉(柏),2012.10.4・11・18・25
翻訳(共)
古賀 毅
研究業績
「近代古典グリルパルツァー『トレドのユダヤ女』」,ドイツ演劇研究会,専修大学神田校舎,東京,
2012.3.12.
アーダルベルト・シュティフター他,
『ウィーンとウィーン人』
,中央大学出版部,2012.3.30.
著書(共)
『比較教育学事典』,東信堂,日本比較教育学会編,「アリアンス・フランセーズ」,31, 2012.6.
講座
「教育の最新事情」,埼玉工業大学教員免許更新講習,埼玉(深谷),2012.8.12.
講座
「生活と進路に根ざした社会科の学習」
,柏市教職員特別研修(柏市教育委員会主催)
,日本橋学館
大学,千葉(柏),2012.8.23.
その他
(企画・コー キャリア教育企画「ドリカムトーク in TOKYO」
,福岡県立城南高等学校 2 年生修学旅行(同窓会
ディネーター) 東京支部提供),浅草ビューホテル,東京,2012.11.12.
佐久間祐子
高橋早苗
報告・資料
「大学一年生における前期試験が及ぼす心理的影響:試験前後の気分調査の結果から」, 日本橋学館
大学紀要,第 11 号,95-102,2012.3.10.
講座
「 若 さ と 健 康 を サ ポ ー ト し ま す! ― ミ ニ テ ニ ス ―」, 日 本 橋 学 館 大 学 公 開 講 座, 千 葉( 柏 )
,
2012.10.23・30,11.6・13・20・27.
講座
「ミニテニススキルアップセミナー」,日本橋学館大学,千葉(柏),2012.10.28.
その他
日本キッズアスレティックス協会認定「上級インストラクター」取得,2012.7.15.
その他
日本ニューラック協会認定「Neurac information program」修了,2012.7.25.
[講師]
教員名
種別
原著論文
学会発表
「留学生に対する初年次教育に於ける、ノートテイキングの指導」
,日本リメディアル教育学会,立
命館大学,京都(京都市)
,2012.8.29.
原著論文
「白居易詩に見える『悠然』─唐代における陶淵明詩受容研究の一環として─」,日本橋学館大学紀要,
第 11 号,134-146,2012.3.10.
講座
「唐詩を中国語で読んでみましょう(全二回)
」,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏)
,2012.10.11・
18.
講座
「漢詩に詠まれる日常―杜甫の日常を詠う詩―」
,柏文化財ゼミナール,柏市教育福祉会館,千葉(柏)
,
2012.1.24.
講座
「漢詩に詠まれる日常―白居易の詩に詠まれる日常―」,柏文化財ゼミナール,柏市教育福祉会館,
千葉(柏),2012.2.21.
学会発表
「聖地と交流・伝播――インド密教行者ナーローパの聖地論――」,日本宗教学会第 71 回学術大会,
皇學館大學,三重(伊勢市),2012.9.8.
講座
「インドの仏像・神像――身像から見るインドの仏教とヒンドゥー教――」,日本橋学館大学公開講
座,千葉(柏),2012.11.13・20.
著書(共)
『2013 年版 社会福祉士 国家試験対策用語辞典』
,福祉臨床シリーズ編集委員会編,弘文堂,
「10 権
利擁護と成年後見制度」
,160-173,「19 更生保護制度」,293-301,2012.8.
著書(共)
『2013 年版 精神保健福祉士 国家試験対策用語辞典』,福祉臨床シリーズ編集委員会編,弘文堂,
「10
権利擁護と成年後見制度」,160-173,2012.8.
國弘保明
三枝秀子
杉木恒彦
瀧川修吾
研究業績
「日本橋学館大学 1 年生対象講義の教科書に於ける日本語―語彙のレベルと傾向に関する考察―」,
日本橋学館大学紀要,第 11 号,19-28,2012.3.10.
原著論文
「
『江湖(ごうこ)新聞』と福地櫻痴」,日本橋学館大学紀要,第 11 号,121-132,2012.3.
講座
「常識を変えた革命思想:トマス・ホッブス『リヴァイアサン』を読む;第一回 ホッブスとその
思想の特徴、これをとりまく世界/ホッブスの人間観」,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),
2012.10.6.
講座
「常識を変えた革命思想:トマス・ホッブス『リヴァイアサン』を読む;第二回 ホッブスの国家観/ホッ
ブスの理論における問題点の諸相」,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),2012.10.6.
講座
「明治維新はいつ始まり、いつ終わったのか:第一回 明治維新のイメージ ∼維新とは何か/明治維
新の始期」,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),2012.10.13.
講座
「明治維新はいつ始まり、いつ終わったのか:第二回 明治維新の終期/明治維新の意味するもの」
,
日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),2012.10.13.
報告・資料
「大学一年生における前期試験が及ぼす心理的影響:試験前後の気分調査の結果から」,日本橋学館
大学紀要,第 11 号,95-102,2012.3.10.
報告
「親子相互作用アセスメント尺度 JNCATS に基づく研究・実践支援ネットワークの構築」
,科学研
究費補助金研究成果報告書,(基盤研究
(C),H21-23, 研究課題番号:21590683)
学会発表(共)
「親準備性促進ツールとしての NCAST 教材の有用性」
,第 22 回乳幼児医学・心理学会,早稲田大学,
東京,2012.11.17.
講習会
「JNCAST 講習会」,乳幼児保健学会主催,東京医科歯科大学,東京,2012.8.27.
講座
「人間の「こころ」の発達―乳幼児精神保健入門―」,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),
2012.11.10.
寺本妙子
講演(出張授業)「やる気と時間的展望」,第一高等学院,千葉(柏)
,2012.11.29.
講演(出張授業)「やる気と時間的展望」,KTC 中央高等学院,千葉(柏),2012.12.1.
教員名
鳥越淳一
種別
研究業績
学会発表
「フロイトの論文を読みなおす(4)―症例論文を中心に―」,日本心理臨床学会第 31 回秋季大会,
愛知学院大学,愛知,2012.9.14.
講座
「フロイトの精神分析と現代の自己愛型社会」,日本橋学館大学公開講座,千葉(柏),2012.11.15.
学会ベスト論文 「Saved by Stuckness: A Schizoid’s Mechanism for Preserving the Authentic Self」, National
賞ノミネート
Association for the Advancement of Psychoanalysis, New York U.S.A., 2012.10.27.
日本橋学館大学紀要
投稿規則
1.本誌には教育 ・ 研究に関する「原著論文」、「研究ノート」、「報告 ・ 資料」、「書評」等
を掲載する。
2.
「原著論文」等は未公刊のものに限る。
3.投稿の資格は原則として本学の専任および兼任の教職員とするが、本学と関連をもつ
研究者を認める場合がある。
4.
「原著論文」
、
「研究ノート」
、および「報告 ・ 資料」は一般投稿を原則とするが、
「報告・
資料」、
「書評」等は委員会が執筆を依頼する場合がある。
5.本誌に掲載する原稿の採否は、紀要編集委員会で審査のうえ決定する。なお、投稿原
稿に対しては、編集委員会の委嘱する査読者が査読し、内容の修正等を要求すること
ができる。
6.掲載された論文等の著作者は、国立情報学研究所による電子化 ・ 公開、及び本学ホー
ムページその他に無料公開することを許諾するものとする。
7.それぞれの内容は次の要件を備えているものとする。
(1)「原著論文」は、問題・方法・手続き・結果・考察の各部分から構成され、独自の
論旨が明確であること。
(2)「研究ノート」は「原著論文」に準ずる内容のものであること。
(3)「報告 ・ 資料」は、本学教育・カリキュラム等に関する考察、教材、参考資料およ
び実態調査の報告などとする。
8.投稿は次の要領による。
(1) 原稿の他に同文のコピー 1 部を添付する。
(2) 原稿は電子ファイル形式(Word 等)で執筆し、電子媒体(フロッピーディスク、
MO、USB メモリ等)をそえて提出すること。
(3) 和文原稿は、16,000 字程度(1 行 40 文字× 30 行を 1 頁とする)とし、A4 判用
紙を用いる。欧文原稿の場合は、65 ストローク 33 行ダブルスペースで 15 枚以下
とし、A4 判用紙を用いる。
(4) 日本語およびその英訳のキーワードを 5 個以内つける。
(5) 題名、執筆者所属氏名には欧文を付する。また、
「原著論文」および「研究ノート」
については 450 語以内の欧文抄録(およびその日本語訳)をつける。
(6) 本文において章・節などの記号をつける場合は、次のように記すのを原則とする。
序 ・ 結論を除き、
章にあたるもの
1.
2.
3.
節にあたるもの
1.1
2.1
3.1
項にあたるもの
1.1.1
2.1.1
3.1.1
項以下のもの
1.1.1.1
2.1.1.1
3.1.1.1
(7)文字は、当用漢字、現代かなづかいを原則とし、数字は算用数字、欧文は活字体、
統計記号はイタリック体で記す。
(8)外国地名・人名は原語を用いる。外国語はなるべく訳語を付ける。ただし、日本
語として慣用化している外国語はカタカナで記す。
(9)図表は別紙にトレースのないように描き、次のように記す。
図 1、図 2、
表 1、表 2、
Figure 1、Table 1
なお、本文中に図表のスペースを換算して位置を明記する。
(10)注・引用文献は、次のいずれかの方法で記載する。
①上付きで(1)
、
(2)
、
(3)と付番し、本文末に「注・引用文献」としてまとめる。
②引用文の直後に( )書きし、
( )の中には、著者名、発行年、所在ページ
を記し、本文末に「引用文献」としてまとめる。このとき、番号は付けず、和
文は著者名の“あいうえお”順、次に英文は著者名の“アルファベット”順に
記載する。
[例]“ ”(Davis,1968;p.153)
“ ”(Collins,1982;pp.20-21)
この場合、注は、上付つきで(1)、(2)、(3)と付番し、本文末に「注」とし
てまとめる。
※ 1 邦文の引用文は「 」でくくり、欧文の引用文は“ ”でくくる。長文の
引用の場合は、
「 」を付けず、前後を 1 行ずつあけ、引用部全体を 1
字下げて記す。
※ 2 ②の場合、同一発行年に同一著者の文献が複数ある場合には、最近のも
のから順に、1968a、1968b のように区別する。
(11)引用文献の記載方法
①雑誌論文の場合
著者名:発行年,論文名,雑誌名,巻数,号数,始めの項−終わりの項.
(例 1) 土居健郎:1960,「ナルチシズムの理論と自己の表象」
,『精神分析研
究』
,第 7 巻,第 3 号,7-9 頁.
(例 2) Collins D.T.:1982,“Notes on the Hospital Treatment of Disordered
Youth”,
, Vol.20, No.1, pp.20-28.
②単行本の場合
著者名:発行年,書名,出版社名,発行地.
(例 1) 山本太郎:1998,
『決定権の所在』,伊藤出版,東京.
(例 2) Kernberg, O. F.:1980,
Aronson, New York.
③単行本の 1 章または一部の場合
, Jason
著者名:発行年,論題名,編者名,書名,出版社名,発行地,始めの項−終わ
りの項.
(例 1) 内井惣七:1991,
「数学的論理学の成立」
,神野慧一郎(編)
,『現代
哲学のバックボーン』,勁草書房,東京,11-32 頁.
(例 2) Smith, L. C.:1998, ”
Defining the Role of Information Science”, Alan C.
Bowen(ed.),
, New York, pp. 77-106.
(12)本文中に記載する事例などについては個人情報の保護に充分に配慮する。
(13)原稿の末尾に脱稿年月日を記入して提出する。
(14)執筆者校正は 2 校までとする。原則として加筆修正は認めない。
紀要編集委員会
最終改定 平成 21 年 3 月 1 日
編 集 後 記
日本橋学館大学「紀要」第 12 号をお届けする。
域の専門性を保持するという点から、学内外に査
今号は、原著論文 3 本に研究ノート 1 本と、昨
読者を求めてきたが、今号でも多くの方々に御協
年、一昨年に比較すると相当にさびしい掲載本数
力をお願いした。「学術のために」という一点か
となった。
ら、御多忙にもかかわらず御力添えをくださった
投稿希望が例年より少なかったのかというと、
ことに、委員一同、心より深く感謝を申し上げる。
決してそうではない。希望は例年と変わりなく、
また、今号はこれまで以上に学外から多くの御厚
むしろ多めかもしれなかった。大きく異なったの
意を賜ることになり、学外査読者の割合はかつて
は、締め切り期日が迫るころに辞退者が続出した
ないほどに高い。実に詳細な意見書をお寄せくだ
ことである。本学においても教員が担う学内的負
さった学外査読者の方々もあり、別して御礼申し
担が増え、学術研究に重要な余裕が少なくなって
上げたい。
いるのではないか。ことによると、そうしたこと
が影響しているのではあるまいか。
なお、通常の図書館業務が多忙であるにもかか
わらず諸々の実務を担ってくださったのは、中田
だが、何はともあれ刊行がかなったことに安堵
しつつ、各々が抱える様々な事情の中で投稿して
路子主任である。その熱意と御尽力に厚く感謝申
し上げる。
くださった方々には御礼を申し上げたい。
かねてより本学では、「紀要」における研究領
(編集委員長 佐々木 さよ)
日 本 橋 学 館 大 学 紀 要 第 12 号
ISSN 1348-0154
平成 25 年 3 月 23 日 印刷
平成 25 年 3 月 30 日 発行
編集者 日 本 橋 学 館 大 学
紀 要 編 集 委 員 会
委員長 佐々木 さ よ
委 員 太 田 英比古
杉 木 恒 彦
西 垣 語 人
横 山 敬 子
佐久間 祐 子
寺 本 妙 子
宮 下 智
発行者 日 本 橋 学 館 大 学
〒 277-0005 千葉県柏市柏 1225-6
TEL 04-7167-8655
FAX 04-7163-0096
http://www.nihonbashi.ac.jp/
印刷所 十一房印刷工業株式会社
〒 130-0024 東京都墨田区菊川3-11-6
青濃
2013.03.04_#10252288_ 表 1-4_02_1416 ツカ 4mm 2c
赤濃
ISSN 1348-0154
紀 要
March 30, 2013
第
12
No.
号
12
Original Article
••Disaster management with information for hazardous weather (PartⅠ)
3
••The Effect of Dialog with Business Persons on Work Values of College Students
Yoshihiro WADA
Masanori SUZUKI
••A Study on Training for Note-Taking of University Freshmen International Students
… …………………………………………………………………… Yasuaki KUNIHIRO
••Results of Educational Research… ………………………………………………………… 3
30
日
… ………………… Satoshi MIYASHITA
Note
17
月
••Examination of stimulating vibration that revives Local Muscles method
25
年
―A Practical Study on Career Education by Quasi-experiment―
… ………………………………………………………………………… Sayoko MIYAIRI
平成
―Proposition of the forecast verification based on the true recognition of scores―…
… ………………………………………………………………… Tsuguhito NISHIGAKI
33
43
第 12 号
平成25年3月30日
原著論文
••防災気象情報を利用した防災マネジメント(PartⅠ)
垣 語 人
3
~キャリア教育に関する準実験による実践的研究~…………宮 入 小夜子
17
―スコアの正しい認識に基づく予測検証のすすめ―…………西
••社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響
••Local Muscles を活性化させる振動刺激方法の検討
…………宮下 智 和田 良広 鈴木 正則
33
研究ノート
••日本橋学館大学留学生対象初年次科目におけるノートテイキングの指導
―ノートテイキングの習慣化とその意義について―…………國
弘 保 明
43
54
••教育研究業績一覧…………………………………………………………………… 54
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