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XV 市営住宅(PDF:34KB)

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XV 市営住宅(PDF:34KB)
ⅩⅤ
1
市営住宅
施設の概要
(1)市営住宅の建設及び管理の概要
市の公営住宅は、そのほとんどが戦災による住宅不足及びその後の住宅難対
策として昭和 48 年度までに建設された。昭和 49 年度以降は市財政の悪化や泉
北丘陵等での府営住宅の大量建設があったため、公営住宅の新規建設は見送っ
てきた。昭和 56 年、市営木造住宅等建替基本計画を策定し、さらに昭和 60 年
地域別事業計画(ゾーン計画)を策定して、建替事業の促進に努めている。な
お、その管理は市が直接に行っている。
今回の監査対象は市営住宅のうち、住宅地区改良事業による改良住宅、密集
住宅市街地整備促進事業によるコミュニティ住宅、第三種住宅、中堅所得者階
層向けの特定公共賃貸住宅を除く住宅であり(以下、
「公営住宅」という。
)、か
つ住宅管理課所管の 3,272 戸である。各々の管理戸数は次のとおりである。
(単位:戸、平成 16 年 3 月 31 日現在)
所管部署
公営住宅
改良住宅
住宅部住宅管理課
3,440
2,810
(監査対象)3,272
760
168
2,050
50
20
188
50
20
188
4,290
(うち 501 戸空家)
−
−
−
コミュニティ住宅
第三種住宅
特定公共賃貸住宅
総数
住宅部住宅改良課
6,508
2,218
(2)住宅使用料
①住宅使用料
住宅使用料は次のように算定される。
入居者の住宅使用料(収入超過者、高額所得者以外の者に適用)=家賃算定
基礎額(注 1)×市町村立地係数×規模係数×経過年数係数×利便性係数
(A)収入超過者の場合
収入超過者(注 2)の住宅使用料=本来入居者の住宅使用料+(近傍同種の
住宅の家賃(注 3)−本来入居者の住宅使用料)×加算率(=1/7∼1 の範囲)
(B)高額所得者の場合
高額所得者(注 4)の住宅使用料=近傍同種の住宅の家賃
②減免
- 169 -
死亡、失業、退職等により収入が著しく減少し、住宅使用料の支払に困る者
のために、住宅使用料の減免制度がある。平成 15 年度の減免件数は 643 件であ
り、減免金額
74,297 千円である。
(注 1)家賃算定基礎額・・・次の表のとおり「認定月収」に応じて決定される。
平成 15 年度
における世帯数
123,000 円以下
2,265
123,000 円を超え 153,000 円以下
159
153,000 円を超え 178,000 円以下
114
178,000 円を超え 200,000 円以下
58
200,000 円を超え 238,000 円以下
102
238,000 円を超え 268,000 円以下
39
268,000 円を超え 322,000 円以下
59
322,000 円を超える
74
その他(市の調査では不明)
4
合計
2,874
なお、入居者は毎年度収入を申告し、認定月収に応じて家賃が決定される。収入
申告書を未提出又は必要書類に不備があった者は「未申告者」とされ、近傍同種の
住宅の家賃が適用される。
区
分
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
Ⅶ
Ⅷ
家賃算定
基礎額
37,100 円
45,000 円
53,200 円
61,400 円
70,900 円
81,400 円
94,100 円
107,700 円
認定月収
(注 2)収入超過者・・・入居期間が 3 年以上で法令に規定する収入基準を超えて
いる入居者(公営住宅法第 28 条)。
(注 3)近傍同種の住宅の家賃・・・民間の賃貸住宅と同程度となるように国が定
めた方法によって計算する家賃のこと。複成価格×利回
り+償却額+修繕費+管理事務費+損害保険料+公課+
空家等引当金。
(注 4)高額所得者・・・入居期間が 5 年以上で最近 2 年間引き続き公営住宅法に
規定する高額月収を超えている入居者(公営住宅法第 29
条)。
(3)入居者の募集について
市営住宅の入居者募集については、新築・空家・空家待ちの申込区分を設け
た総合募集を年 1 回実施している。
入居申込みに際しては、世帯の収入が基準内(裁量世帯(注)268,000 円以
下、その他の世帯 200,000 円以下)であること等の要件を満たす必要がある。
(注)裁量世帯とは、身体障害者世帯、精神障害者世帯、知的障害者世帯、50
歳以上の世帯、戦傷病者世帯、原爆被爆者世帯、引揚者世帯、ハンセン
病療養所入所者等をいう
(4)公営住宅建替・改修・改善計画
市の公営住宅は耐用年数を経過若しくは耐用年数の 1/2 を大きく超える居住
- 170 -
水準や防災性能が劣っている老朽住宅が約 2 割を占めている。このため、平成
15 年 3 月に国の「公営住宅ストック総合活用計画」の策定指針に基づき、住宅
別に活用手法の選定を行っている。この市のストック活用手法を「堺市営住宅
ストック総合活用計画」で位置付け、計画を推進している。
また、市域では公営住宅の供給可能戸数は需要数を上回っている、と判断し
ており、新規建設ではなく、老朽住宅を良質な住宅へと建替えていくことを計
画している。当計画上では、1 次∼3 次の判定により住宅別に活用手法(用途廃
止対象、建替対象、改善対象あるいは相当期間管理)を決定し、建替事業、改
善事業、その他の改善・改修事業計画を策定している。計画期間は、9 年間(平
成 14 年度∼平成 22 年度)であり、前期を平成 14 年度∼平成 17 年度、後期を
平成 18 年度∼平成 22 年度としている。後期計画は前期の進捗状況等により見
直しされる予定である。
(5)公営住宅事業収支状況
市から提供を受けた資料をもとに、監査人が平成 15 年度公営住宅事業の収
支状況表を作成すると次のとおりである。
堺市営住宅管理・建替事業収支計算書(公営住宅分のみ)
(単位:千円)
<市営住宅管理事業>
科目
平成 15 年度
市営住宅管理費(注 1)
429,386
市営住宅管理支出計
管理戸数
429,386
3,272
1管理戸数当たりの管理支出額
131
住宅使用料
768,969
国庫補助金
277,326
雑収入(敷金収入等)
3,500
市営住宅管理収入計
市営住宅管理収入・支出差引計(A)
- 171 -
1,049,795
620,409
<市営住宅建設事業>
建替事業費(注 2)
1,525,294
起債償還金(注 3)
731,476
市営住宅建設支出計
国庫補助金
2,256,770
666,384
雑収入(敷金収入等)
1,402
市営住宅建替事業債(注 4)
747,000
市営住宅建設収入計
1,414,786
市営住宅建設収支差額(B)
△ 841,984
<市営住宅関係人件費>
人件費(注5)
181,811
市営住宅管理・建設収支差額(人件費差引前)
△ 221,575
(=A+B)
市営住宅管理・建設収支差額(人件費差引後)
△ 403,386
(=A+B−C)
(注1) 市営住宅管理費は、改良住宅等も含んだ管理費 562,979 千円を戸数で按分(3,272 戸/4,290 戸)
した。
(注2) 人件費は除く。
(注3) 起債償還金 731,476 千円のうち、元金償還金 435,441 千円、利子償還金 296,034 千円
(注4) 市営住宅建替事業債は、借換による収入は除いている。
(注5) 市営住宅に関する人件費については、住宅総務費・人件費 531,913 千円を人数比
(31 人/70 人)、
市営住宅建替事業費・人件費 2,817 千円、管理戸数比(3,272 戸/4,290 戸)により按分計算し
ている。
(注6) 千円未満を切り捨てているため、合計金額が一致しない箇所がある。
2
監査の結果
下記の事項を除き、特に指摘すべき事項はない。
- 172 -
公営住宅の土地、建物については、公有財産台帳に記録され、管理されている。
今回、視察対象とした北鳳団地について、土地台帳、登記簿謄本の記載状況を
確認した。
名称
北鳳 C 棟
北鳳 D 棟住宅
北鳳3
北鳳4
北鳳5
北鳳6
北鳳8
合計
住所
鳳北町4丁222番地-2
鳳北町 4 丁 220 番地
鳳北町 4 丁 220 番地
鳳北町 4 丁 214 番地
鳳北 4 丁 206 番地
鳳北町 4 丁 220 番地
鳳北町 4 丁 208 番地
土地台帳上の面積
2,331.20 ㎡
1,581.23 ㎡
1,277.99 ㎡
2,900.98 ㎡
618.00 ㎡
2,655.99 ㎡
756.99 ㎡
12,122.38 ㎡
金額(千円)
未記載
未記載
未記載
未記載
未記載
未記載
未記載
土地台帳に取得金額の記載がなく、市では取得金額が把握できていない。取
得当時の記載漏れであったとのことである。また、当該団地以外にも市町村合
併継承及び寄付により受け入れた土地については、当時鑑定を取っていないた
め土地価格は把握していないとのことである。しかし、取得価格の記載は規則
上必要であり、また、取得価格を把握しておくことは、土地の管理上も必要で
あることから、今後は、関係書類を調査のうえ可能な限り土地台帳に土地金額
の記載を行い、整備していくべきである。
3
意見
(1)公営住宅事業に関する府と市の連携について
大阪府及び堺市において、公営住宅の供給戸数は現況の管理戸数である、と
明文化している。今後、人口、世帯数の増減や住環境に対する人々のニーズの
変化、高齢者社会の進展に対応して、堺市内における公営住宅及び高齢者向け
の公営住宅について連携を図っていくことが望ましい。
なお、大阪府営住宅ストック総合活用計画(平成 14 年 2 月策定)の基本方針
において「原則として新たな供給を行わず、これまで蓄積してきた府営住宅ス
トック約 370 団地、13 万戸を有効活用する」ことを基本として取り組むことと
なっている。一方、堺市営住宅ストック総合活用計画(平成 15 年 3 月策定)の
基本目標において、目標戸数は、ほぼ現況管理戸数 4,300 戸としている。
(2)公営住宅のあり方
①新たな供給手法の検討
公営住宅法第 1 条には「国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な
生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対し
- 173 -
て低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福
祉の増進に寄与することを目的とする。」とある。この第 1 条の趣旨に則って
いれば、必ずしも市が住宅を建築する必要はないと考える。現在、堺市営住
宅ストック総合活用計画に基づき、公営住宅のストックの活用や建替事業を
推進しているが、計画期間終了後には、その時点において市の経済性、入居
者のニーズを考慮して、公営住宅の他のあり方、例えば新規住宅供給時には
一つの手法として民間住宅の借上げ等を検討することも必要である。
②入居者ニーズに対応した住宅
現在、公営住宅の各住戸(3DK、2DK、1DK)において間取り、面積等
は均一となっている。ニーズが多様化している現在、より一層入居者のニー
ズに合わせて住宅を供給することが望ましい。
現在、堺市営住宅ストック総合活用計画において、市営住宅の基本目標は
次のとおり掲げている。この基本項目にそって市営住宅の整備がさらに進む
ことが望まれる。
1 . 木 造、 簡 易 ・老朽化の著しい木造、簡易耐火造住宅の良質な住宅への更新を進める。
耐 火 造 住 宅 の ・整備にあたっては、耐久性が高く、ライフサイクルコストや環境負荷
の軽減に配慮するとともに、スケルトン・インフィルの考え方を導入す
建替えの推進
るなど、住宅の長寿命化を進める。
2 . 既 存耐 火 住 ・長寿社会に対応した良質な住宅ストックについては、より長期的に使
宅の有効活用
用できるよう適切に維持保全する。
(1)居住水準
・年々向上している市営住宅の設備水準との格差が著しい耐火住宅につ
の向上等
いては、長期に活用していくための最適な手法を選択し、改善等を進め
る。
3 . 世 帯人 員 及 ・3DK、2DK、1DK の各タイプの住宅を、入居世帯及び住宅に応募する世
び 家 族 の 型 に 帯の型を踏まえて適切に供給、整備する。
応 じ た 住 宅 の 住戸タイプに応じた適切な住み替えの促進を図るなど制度の枠組みを整
えて、最低居住水準未満世帯の解消に努めるとともに、誘導居住水準を
供給
満たす世帯の割合の向上を図る。
1 . 高 齢者 仕 様 ・建替住宅はニュー・エイジレス仕様とし、身体能力に応じて安心して
(2)少子・高
の住宅の整備
住み続けられる住宅ストックを形成する。
齢社会への
・進行する高齢化に適切に対応するため、既存住宅のバリアフリー化も
対応
進め、計画期間中にエイジレス仕様の住宅も含めたバリアフリー住宅を
公営住宅等ストックの 5 割を目標として整備する。
2 . 中 層住 宅 へ ・加齢等により身体機能が低下した方や身体障害者の方が生活しやすい
の エ レ ベ ー タ 住宅を整備していくため、計画的に設置可能な中層住宅へのエレベータ
ー設置を推進する。
ーの設置
・エレベーター設置と併せて、共用部分及び屋外・外構部分のバリアフ
リー化を図る。
- 174 -
3 . 福 祉施 策 と
の連携
(3)地域のま
ちづくりへ
の貢献
・身体に障害のある市民のライフスタイルの多様化に応えるため、車い
す住宅についても 2DK、1DK の型別供給を進める。
・福祉部門との連携のもと地域のニーズに応じながら、グループホーム
や高齢者等のための施設など福祉的利用を進めるため、活用可能な住宅
ストック等について有効活用を進める。
・大規模な住宅団地の建替えにあたっては、必要に応じて、高齢者や子
育て支援のための福祉施設の併設を検討するとともに、高齢者世帯や多
子世帯の優先的な入居を考慮する。
・建替事業においては、敷地形状に応じて土地の有効活用を図るととも
に、団地周辺における道路などの基盤整備を進める。
・市営住宅の建替えは、住宅の規模によっては周辺の地域コミュニティ
への影響も大きいことから、コミュニティの醸成や地域の活性化などに
寄与する施設の導入を進める。さらに、団地内における良好なコミュニ
ティの形成を図るため、募集方法などを検討し、バランスのとれた年齢
構成や世帯構成に配慮する。
(3)公営住宅に係る国庫補助金について
公営住宅に係る国庫補助金の一つである「公営住宅家賃収入補助金」は、補
助金算定にあたり、収入超過者入居戸数は補助対象外とするよう要領において
規定されている。当該収入超過者入居戸数には収入超過者、空家、収入未申告
者、不適正入居者、不正入居者、その他が含まれている。
このうち未申告者分(平成 15 年度は 158 件)については、補助金を受け取る
ことができるよう未申告者を出来るだけ減らすよう努める必要がある。
(4)公営住宅管理人への支出について
市は入居者のうちから住宅管理人を団地毎(団地によっては複数人)に選任
している(堺市営住宅管理条例第 38 条第 2 項、堺市営住宅管理条例施行規則第
29 条、第 30 条)。住宅管理人は、市営住宅の環境を良好な状態に維持すること
を目的に監理員の職務を補助させるため監理員(注)の指導のもと団地施設全
般の維持保全、入居者台帳(記載事項は氏名等世帯構成を把握するための必要
最小限の情報)を交付して、入居者やその使用状況の把握その他公営住宅制度
上の相談や助言の業務を行っているとされる。
(注)監理員・・・管理人の監督、使用料滞納整理事務、その他管理について
必要な事務を行うことが規定されている(堺市営住宅管理
条例施行規則第 30 条)。市の場合、住宅管理課職員が監理
員として任命されている。
管理人の業務は監理員(住宅管理課)の補助をすることであり、その業務は
必要と考えられるが、単なる用紙配布作業ではなく、その職責どおりに機能し
ているかどうかを常に点検する必要がある。また、大部分の住宅は自治会を設
- 175 -
置しており、自治会の業務の一環として管理人が行っている業務を担わせるこ
とが可能かどうかの検討も必要である。
管理人に対しては、報酬額を支払っており、平成 15 年度の支払額は 7,016
千円(支給対象者 49 人)である。
もし、管理人の職務が充分に機能しているのであれば、約 15 年前から見直し
はされてはいない報酬単価の見直しも検討すべきである。
なお、管理人は、入居者の個人情報を取得する立場にあるから、その流出が
ないように留意して運用されたい。
(5)家賃収入手続
①
利用率の向上対策について
市では、公営住宅使用料(家賃)の徴収については、平成 12 年度より新入
居者に口座振替制度を勧奨している。しかし、平成 15 年度における口座振替
による収納割合は 58.09%である。平成 15 年度の水道料金の口座振替収納割
合 78.35%に比べて低い。これは、水道料金と公営住宅の徴収対象者が異な
ることもあるが、公営住宅入居者の多くを占める高齢者の中には、口座振替
制度を利用するよりも現金で納めることにより納入義務を果たしていると実
感される者もおり、また、窓口で納付する方が安心感を得ておられる方も多
いためであるとのことである。
しかし、家賃滞納者のうち 80.05%(注)が現金納付者である実態より、
現金納付による方法は納付忘れ等による家賃滞納が発生しやすいことが想定
される。口座振替制度の利用率が向上することにより、家賃滞納を防ぐこと
へ繋がることができると考えられる。現在、毎年の家賃決定通知書の送付時
や年 2 回の入居者へ送付する「住宅だより」において口座振替制度の勧奨を
行い、また、窓口で納付した者については、口座振替手続の案内を行ってい
るとのことであるが、今後とも口座振替制度利用の充実に向けた取り組みを
強化することが望ましい。
(注)平成 15 年度家賃滞納者数 441 件のうち、現金納付者は353 件であり、
353÷441=80.05%と算定される。
②
減免対象者について
現在、公営住宅法施行令第 2 条及び堺市営住宅管理条例第 12 条に基づき収
入額に応じて家賃を算定され、堺市営住宅管理条例第 17 条により使用料減免
対象が規定されている。
- 176 -
減免対象
(1)
入居者又は同居者の収入が著しく低額であるとき。
(2)
入居者又は同居者が病気にかかったとき。
(3)
入居者又は同居者が災害により著しい損害を受けたとき。
(4)
前 3 号に掲げるもののほか、特別の事情があるとき。
しかし、平成 15 年度の減免件数 643 件のうち、収入超過者であったが退職
により総収入額が減少し、上記(1)に該当し減免対象となった者 4 件が含まれ
ている。収入超過者であった者に対しては減免手続の対象外とする、又は、
一定期間は減免手続の対象外とする等の新たなルール作りを検討することが
望ましい。
(単位:円)
A氏
B氏
C氏
D氏
平成 14 年度の家賃月額
平成 15 年度の家賃月額 毎月の差額
(ア)(近傍家賃×調整率) (イ)(減免後の家賃) (ア)―(イ)
21,000
10,700
10,300
27,100
6,300
20,800
63,300
12,100
51,200
64,500
12,400
52,100
(6)収入超過者への対応
現在、市において収入超過者は 217 件(うち 2 件は高額所得者)と入居者の
約 1 割程度の人数である。現在、正当な入居資格を有する多くの市民が公営住
宅の入居を待っている状況である。収入超過者の滞留により入居対象者の入居
が阻害されることは、公営住宅法の趣旨に反することは明らかである。収入超
過者減少のための対策を図る必要がある。
例えば、堺市営住宅管理条例第 27 条において「収入超過者に対して他の適当
な住宅のあっせん等を行うものとする。」とある。これに対して、市では平成
15 年度に公営住宅以外の住戸への移転あっせん通知を 2 回送付しており、通知
発送対象者は「高額所得者」及び「収入超過者のうち、既に高額所得者認定を
受けることとなる収入基準を超える者で、次年度も引き続き高額所得者認定を
受けることとなる収入基準を超える場合に高額所得者となる者」とのことであ
る。その他の収入超過者については、年 2 回入居者に配布する「住宅だより」
によってあっせん制度の存在を周知し、希望者に対してあっせん通知を送付す
ることとしているとのことである。
しかし、平成 15 年度におけるあっせん手続(注)件数は 2 件のみであり(2
- 177 -
件とも住戸移転まで至らなかった)、あっせん通知書発送対象者以外の収入超過
者についても、
「住宅だより」のみならず、あっせん通知書の発送を行うことも
検討することが望まれる。
(注)あっせん手続・・・対象者に紹介住戸のパンフレットを送付する。
また、収入超過者が入居継続している場合の対策として、国土交通省が検討
している新方式の家賃負担制度の導入などの国の施策の動向に注視しながら、
適切な対策を講じるよう努められたい。
(7)不納欠損処理に関する規定化ついて
平成 15 年度における収入未済額は 98,128 千円(7,689 件)である。その内
訳は次のとおりである。
発生年度
昭和 61 年度
昭和 62 年度
昭和 63 年度
平成 元年度
平成 2 年度
平成 3 年度
平成 4 年度
平成 5 年度
平成 6 年度
平成 7 年度
平成 8 年度
平成 9 年度
平成 10 年度
平成 11 年度
平成 12 年度
平成 13 年度
平成 14 年度
平成 15 年度
合計
収入未済額(千円)
18
32
76
191
388
523
840
1,016
1,197
2,786
2,755
1,889
2,778
4,009
7,049
12,799
24,403
35,369
98,128
収入未済件数(件)
6
10
16
30
48
62
106
126
160
254
252
152
251
449
676
986
1,921
2,184
7,689
(注)各年度毎に千円未満を切り捨てているため、合計金額が一致しない。
それに対し、市では次の理由により、平成 13 年度から不納欠損処理は行って
いない。
公営住宅の家賃は、地方自治法第 225 条の規定による公の施設の使用料に該
当するが、近年の判例では、公営住宅の使用関係は私法関係であり、民法及び
借地借家法の適用があると示されているため、地方自治法第 236 条第 1 項に基
づく不納欠損処分の対象ではないとも考えられている。そこで、民法の規定に
従うと民法第 169 条の「定期給付の債権の短期消滅時効(5 年)」が適用され、
不納欠損処分を行うには同法第 145 条の規定により滞納者からの時効の援用
- 178 -
(注)を要するといった制約がある。いずれにしても、公法上の債権か私法上
の債権か明確ではないため、不納欠損処分を行う際には慎重な対応が求められ
るため不納欠損処分を行っていない。
(注)援用・・・時効の利益を受ける旨を債務者側から意思表示すること(民
法第 145 条)。
しかし、現在、滞納者のうち所在不明・死亡した者に対しても、具体的な対
応が規定されていないこともあり不納欠損処分を行っていない。また、時効の
援用を申し出た者は過去 5 年間にはないが、援用申出者への対応について具体
的には規定されていない。
また、退去時に滞納がある者には、その時点で督促等を行っているのとのこ
とであるが、退去後長期間経過しているもの(例:昭和 61 年度発生分 6 件)に
ついては、滞納していることを失念している可能性があるが、堺市としては不
納欠損処理を行わないまま、このまま放置されてしまうこととなる。
今後は、不納欠損の基準を要綱等上で明確にし、滞納者の所在不明・死亡等
や滞納者からの時効の援用があった場合には、適切に不納欠損処分を行うこと
が望ましい。
(8)入居者が行う増改築・模様替について
入居者は入居住戸の増改築を行う場合には、その旨の申請書を提出し、堺市
の承認を得ることが必要である。増改築申請書の堺市における保管状況につい
てヒアリングしたところ、過去 10 年間提出を受けていない。これは、増築の要
望がある住宅は建設年度の古い木造住宅等(昭和 40 年以前に管理開始された木
造・簡易耐火構造の平屋住宅に限られ、これらの戸数は住宅管理課所管の公営
住宅で 546 戸であり比率的には 17%)に限られており、当該住宅への入居につ
いては、建替計画を促進するために、木造住宅については昭和 57 年を最後に公
募を停止し、また、簡易耐火平屋住宅についても、平成 3 年の入居を最後に新
規入居を停止し政策空家としていることから、増築は過去において既に完了し
ているか、あるいは将来建替が計画されているため、入居者が自己負担での増
築を控える傾向にあるためではないかと説明されている。また、それ以前に提
出を受けた申請書の保管もなされていない。これは、増改築申請関係書類の保
存期間は文書分類表の規定によると 5 年であり、保存期間が満了すれば廃棄処
分を行っているためとのことである。
公営住宅法及び堺市営住宅管理条例において、入居者の増改築に関して次の
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とおり規定されている。
公営住宅の入居者は、当該公営住宅を模様替し、又は増
公営住宅法第 27 条第 4 項 築してはならない。ただし、事業主体の承認を得たとき
は、この限りではない。
堺市営住宅管理条例
第 21 条第 5 項
入居者は、市営住宅を模様替えし、又は増築してはなら
ない。ただし、原状回復又は撤去が容易である場合にお
いて、入居者が当該市営住宅を明け渡すときは、入居者
の費用で原状回復又は撤去を行うことを条件に市長の承
認を得た場合は、この限りでない。
退去時における入居者との修繕工事の負担関係を明確にできるためにも、増
改築の状況を市は随時把握しておく必要がある。増改築申請書の保存期間を当
該団地の用途廃止までにすることが望まれる。
なお、模様替申請書(例
手すり、スロープの設置)は、近年提出を受ける
ケースが多いが、当該申請書の保存期間も 5 年というのは短すぎる。当該団地
の用途廃止までというと、耐火住宅は法定耐用年数が 70 年と長期に亘るので、
当該申請者が退去後一定期間(当該申請書が証憑として必要となる合理的期間)
までというように見直すことが望まれる。
(9)管理形態の検討
公営住宅の管理は現在、市が直接行っている。しかし、公営住宅駐車場につ
いては、その土地を堺市住宅供給公社(以下、「公社」という。)に目的外使用
許可を与え、公社から目的外使用料を徴収し、公社に駐車場の管理を任せてい
る。
公営住宅の管理を市が直接行っている理由については、市は次のような見解
であった。
「市の出資法人で設立目的に市営住宅の管理があるものは皆無であり、類似
の設立目的及び関連業務のノウハウを有する法人としては、唯一、公社が考え
られた。しかし、市が管理を行っている市営住宅の事業規模に比して当該公社
の人員等組織規模を勘案した場合に、公社への公営住宅の全面的な委託は困難
であると判断した。従って、旧地方自治法における法定条件を満たし、かつ、
受託業務を遂行できる組織規模を有する受託者を選定することが困難であった
ことから直営方式を採用してきた。」
指定管理者制度の創設に伴い、地方自治法の趣旨に沿って最少の経費で最大
の効果を挙げられるよう、市営住宅の管理方式について改めて検討を行う必要
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がある。しかし、指定管理者制度導入の方向性検討にあたっては、国土交通省
の平成 16 年 3 月 31 日付通知「公営住宅の管理と指定管理者制度について」
(国
住総第 193 号)が出されている。法的な縛りではないが、これを遵守すること
が望ましい。
当該通知では、指定管理者に管理を代行させることができる業務の範囲とし
ては、従来の管理委託制度により受託者が行うことができるものと同様のもの
であるとされ、入居承認等行政的判断を必要とする事項や家賃の強制徴収など
権力的色彩が強いものについては指定管理者の委託はできないとされている。
当該通知を参考にし、アウトソーシングの適否について検討を行っていく必
要があると考える。
以上
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