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新時代のフィールド機器管理ツール FieldMate
新時代のフィールド機器管理ツール FieldMate 新時代のフィールド機器管理ツール FieldMate FieldMate Field Device Management Tool for the New Era 廣 岡 勲 *1 齋 藤 洋 二 *2 HIROOKA Isao SAITOU Youji 川 原 瑞 夫 *1 村 田 浩 紀 *1 KAWAHARA Mizuo MURATA Hironori 当社は,新時代のフィールド機器管理ツールである FieldMate を開発し,2006 年 7 月に販売を開始した。 FieldMateは,HART (Highway Addressable Remote Transducer) /FF-H1 (FOUNDATION fieldbus-H1) /PROFIBUS (Process Field Bus)等の通信機能付きフィールド機器に対して,設定 / 調整 / 交換等の作業を効率的に行うため のNote PCでの使用を想定したソフトウエアである。容易な操作手順と,通信形式に依存しない統合作業環境で, フィールド機器に関する上記作業を大幅に改善することを可能にした。本稿では,FieldMateの技術的特徴を紹 介する。 We have developed FieldMate, a field device management tool for new era, and released it in July 2006. FieldMate is software designed to be used with a notebook PC to efficiently facilitate configuration, adjustment, and replacement of field devices that support communication protocols such as Highway Addressable Remote Transducer (HART), FOUNDATION fieldbus-H1 (FF-H1), or Process Field Bus (PROFIBUS). FieldMate provides an integrated task environment independent of the communication protocol, as well as simple operating procedures to greatly improve the above field device operations. This paper describes the technical features of FieldMate. 1. は じ め に 2. FieldMate の機能 FieldMateは主にNote PCで動作するアプリケーション FieldMateは, 「My PCインストール」 , 「簡単接続 & 簡 ソフトウエアであり,PRM (Plant Resource Manager) と 単操作」 ,「One Tool for ALL」という 3 つのコンセプト 共に,当社のAsset Excellence(AE) コンセプトを具現化 を基本方針として開発された。本章では,このコンセプト するためのキーコンポーネントである。FieldMateには, を実現した FieldMate の特徴について説明する。 Basic 版と Advance 版の 2 つのタイプがある。Basic 版で は,HART (Highway Addressable Remote Transducer) 機器に直接接続し, 機器とFF-H1 (FOUNDATION fieldbus-H1) 2.1 FieldMate の機能構成 FieldMateは,フィールド機器のメンテナンス要員が日 フィールド機器のパラメーター設定/調整/状態確認を行 うことができる。一方,Advance版は,Basic版の機能に Terminator 加えてフィールド機器の管理機能を持っている。また Advance 版では,後述する通信 DTM(Device Type Manager),ゲートウェイ DTM を用いることにより, HARTとFF-H1以外の通信プロトコル及び,直結以外の + + SUPPLY CHECK 接続形式のフィールド機器を扱うことができる。本稿で EJA は,主に Advance 版に関して,その特長を説明する。 図 1 に,フィールド機器との接続例を示す。 FieldMate NI-FBUS in PCMCIA slot + - FF Power Unit with Terminator + - 24 VDC Power Unit *1 IA事業部プロダクト事業センター プラットフォーム開発Gr. *2 IA事業部プロダクト事業センター フィールド機器技術Gr. 11 図 1 FF-H1 機器との接続例 横河技報 Vol.51 No.2 (2007) 45 新時代のフィールド機器管理ツール FieldMate 個別画面 機器DTM EDDL DTM Works 追加組み込み可能 メイン画面 EDDL ( 同梱 ) EDDL(同梱) 機器DTM 機器DTM (同 梱 ) (同梱) 機器管理機能 機器設定/調整機能 Parameter Manager データ ベース Device Viewer COMM COMM DTM ( 同梱) 通信機能 DTM(同梱) 追加組み込み可能 EDDL:Electric Device Description COMM DTM:Communication Device Type Manger 機器や事象を選択する ためのメイン画面と, 個々の機器の情報を扱 う複数の個別画面で構 成される。 COMM DTM Device Maintenance Info 図 2 FieldMate の機能構成 図 3 FieldMate の画面構成 常使用するような Note PC (My PC) にインストールして 使用することを想定している。FieldMateは下記の3つの 機能から構成されている (図 2) 。 FieldMate の画面構成の特長を以下に示す。 (1)現在,多くのユーザーが日常的に使用している (1)フィールド機器設定 / 調整機能 Microsoft Office Outlook と同様のヒューマンマシン 本機能を実行するためには,個々のフィールド機器 専用に用意された E D D(E l e c t r o n i c 2.2 FieldMate の画面構成 インタフェース (HMI) とした。 Device (2)フィールド機器や事象を選択するための「メイン画 Description) 技術によるEDDファイルか,機器DTM 面」と,個々の詳細を扱う「個別画面」の 2 種から構 (Device Type Manager) と呼ばれるプログラムが必 成 されている (図 3)。 要である。これらは通常はフィールド機器ベンダー (3)現場で使用することを想定し,入力/選択操作を極力 により提供されるが,FieldMateでは他社機器も含め 減らし,キーボードだけで操作できるようにした。 て HART 協会やフィールドバス協会が提供する最新 メイン画面では,Microsoft Outlook と同様のナビ の一式を同梱している。追加的に組み込むことも可 ゲーションウィンドウの切り換えボタンの選択によ 能である。EDD ファイルと機器 DTM の特徴や使い り下記の3画面を切り換え,使用局面に応じて,目的 分けに関しては,2.3 章で説明する。 の機器や事象に効率的に辿りつけるように配慮した (2)フィールド機器管理機能 (図 4) 。 本機能は,フィールド機器の保全に関する情報を ① セグメントに接続されている実機器一覧を,機器ア データベースとして持ち,フィールド機器の保全/管 イコンにより解り易くかつ機器の健全性を含めて表 理作業を支援する機能である。データベースは,多く 示する「Segment Viewer」 。 のユーザーが日常的に使用しているWindowsの通常 ② データベースに登録された機器を一覧表示し,検索 のフォルダとファイルの集合で実現した。詳細は2.4 やチェックマークを付けることができる「Device 章で説明する。 (3)フィールド通信機能 Navigator」 。 ③ FieldMateで行った主要操作の事象を時系列で一覧表 フィールド機器との通信を行うための機能である。 示し,フィルターにより絞込み可能な「History」 。 HART 機器と FF-H1 機器は,専用 H/W を機器に直 上記の3画面により機器や事象を選択し,次に個々の機 接接続して通信可能である。更に通信DTM,ゲート 器の詳細を扱う「個別画面」を開く操作フローとした。 ウェイDTMと呼ばれる通信機器のドライバを追加的 ユーザーの入力/選択操作を極力不要にする工夫として にインストールすることにより,HART と FF-H1 以 は,例えば過去にユーザーが扱ったことのない当社の 外の通信プロトコル及び,直結以外の接続形式の通 HART機器であっても,機器に電源を供給し,HART USB 信経路をサポートすることが可能である。詳細は2.5 モデムで物理的に接続し,FieldMateを起動して数クリッ 章で説明する。 クの操作のみで機器 DTM (DTM Works) を起動し,機器 46 横河技報 Vol.51 No.2 (2007) 12 新時代のフィールド機器管理ツール FieldMate Segment Viewer History のフィールド機器を横並びで同一の HMI で扱う ことができる利点がある。 Parameter Manager は,フィールド機器パラ Microsoft Outlookと同様の セレクトバーで切り替え メーター値の管理,CSVファイルへのExport/編 集 /Import,実機器とデータベース / ファイル保 存値とのパラメーター比較,差分ダウンロード等 の機能を,機種に依らず統一的なHMIで実現して いる。 2.3.2 DTM Works DTM Works の画面例を,図 6 に示す。機器 DTM は,フィールド機器専用に開発された表示 画面付きアプリケーションプログラム(Active X Control) である 。複雑な設定 / 調整用の手順や, Device Navigator 図 4 FieldMate のメイン画面 特別な MMI を作成することができ,全てのホス トシステム上で,同一のHMIで動作させることが できる利点がある。DTM Works は,その機器 DTM をそのまま動作させることができ,フィー の設定 / 調整や状態確認を行うことができるようにした。 ルド機器の設定/調整をホストシステム非依存の HMI で実現している。 2.3 フィールド機器設定 / 調整機能 フィールド機器の設定/調整や,状態確認を行う機能で 2.4 フィールド機器管理機能 ある。本機能を実行するためには,個々のフィールド機器 フィールド機器の保全に関する情報をデータベースに 専用に用意された EDD ファイルや,機器 DTM プログラ て管理できるようにし,フィールド機器の保全/管理作業 ムが必要である。これらは,フィールド機器ベンダーによ を支援する機能である。FieldMateでは,下記5つの情報 り提供される。FieldMateでは,フィールド機器設定/調 の集合を「Device Maintenance Info」という概念で定義 整用画面として,EDD ファイルを使用した Parameter し,1 つのフィールド機器に対して,1 つの「D e v i c e Manager と,機器 DTM を使用した DTM Works を搭載 Maintenance Info」が対応するという仕様にしている。 している。両者に関して,下記に説明する。 2.3.1 Parameter Manager Parameter Managerの画面例を,図5に示す。EDDファ イルとは,フィールド機器のパラメーターや,パラメー (1)機器情報 機器タグやシリアル番号等の個体情報や,設置場所 や納入日等の機器を管理するための情報。 (2)保全メモ ターに対するアクセス方法を定義したデータ辞書である。 機器点検等の際に,機器に対してユーザーが自由に 長い歴史があり,ほぼ全ての FF-H1 機器 /HART 機器で 設定できるメモ (複数可)。 用意されている。また,ホストベンダーにとっては,全て ユーザー入力の文字情報の他に,添付ファイルを付 図 5 Parameter Manager 画面例 13 図 6 DTM Works 画面例 横河技報 Vol.51 No.2 (2007) 47 新時代のフィールド機器管理ツール FieldMate 項目 FieldMateでの通信経路の定義 プロセッサー 機器DTM (HART機器用) HART PDU ゲードウェイDTM (B社PROFIBUS <−>HART変換機用) 通信DTM (A社PROFIBUS カード用) 仕様 Pentium III 1 GHz以上(Pentium M/Pentium 4推奨) 主記憶 256 MB以上(512 MB以上推奨) ハードディスク マシン全体で8 GB以上(空き容量1 GB以上) CD-ROMドライブ Windows XP互換ドライブ2倍速以上 CRT 1024×768(256色)以上必須 その他 PROFIBUS PDU (データとして HART PDU を保持) USBポートあるいはRS-232Cポート (HARTモデム用) PCMCIAカードあるいはPCIカード用スロット (NI-FBUSカード用*) PROFIBUS PDU (データとしてHART PDUを保持) A社 PROFIBUSカード オプション HART USB(Universal Serial Bus)モデム OS Windows XP Professional(英語版) SP1以上 * FF-H1機器を扱うためには,米National Instruments社のNI-FBUSカードが別途必要。 表 1 FieldMate の動作環境 PROFIBUS PDU (データとしてHART PDUを保持) は,機器DTMと同様にFDT (Field Device Tool) 仕様で規 PDU:Protocol Data Unit B社 PROFIBUS<−>HART変換機 定されており,FDT 仕様に従った FDT フレームアプリ HART PDU HART機器 ケーションとの組み合わせであれば,ユーザーが自由に組 み込んで使用することができる。つまり,異なったベン ダーの通信DTM及びゲートウェイDTMを組み合わせて, 図 7 COMM DTM 接続の例 様々な多段積みのネットワーク構成を定義できるメリット がある。図 7 に,その例を記載する。 加することも可能。 (3)ドキュメントリンク 機器のマニュアルや関連URLへのリンク情報を定義 できるようにしたもの。 (4)履歴 当該機器に関する操作ログ。 (5)機器パラメーター 2.6 FieldMate の動作環境 表 1 に,FieldMate の動作環境を示す。 3. お わ り に FieldMateの技術的特徴を紹介した。本稿では紹介しな かったが,FieldMate ではユーザー用 Web サイトを公開 機器の設定/調整を行う場合の,機器パラメーターの しており,そこでは EDD ファイルと機器 DTM の最新版 情報。 や,FieldMateのアップデイト版のダウンロード等を行う 「Device Maintenance Info」は, (A)実機器から情報 ことができる。 を取得して作成するか,(B)ユーザーが必要項目を入力 近年,UMPC (Ultra-Mobile PC) 等の小型PCも発売され して作成するか, (C)Import して作成するかの 3 通りで ており,FieldMateをインストールして使用する応用も考 作成することができる。 (B) と (C) は実機器が無い状態で えられる。 も可能であるが,実機器入手後に,実機器を作成済の 今後,当社専用通信プロトコルを持ったBRAIN機器の 「Device Maintenance Info」 に関連付けることも可能であ サポート及び使い勝手と他社フィールド機器との相互運 る。 用性の更なる向上,英語以外の言語への対応,PRMとの データ連携強化等を進めていく。 2.5 フィールド通信機能 フィールド機器との通信を行うための機能である。 FieldMate では,通信 DTM,ゲートウェイ DTM と呼ば れる通信機器のドライバーを追加的にインストールする ことにより,HARTとFF-H1以外の通信プロトコル及び, 直結以外の接続形式の通信経路をサポートすることが可 能である。通信DTMの例としては,HART通信用のPC COMポートドライバーや,PCに挿入するPROFIBUS通 参 考 文 献 (1)R. Simon,et al.,FDT Field Device Tool,Oldenbourg Industrieverlag,April 2005 (2)森宏 他, “統合機器管理パッケージ ‘PRM’ ” ,横河技報,Vol. 45, No. 3,2001,p. 153-156 (3)元吉伸一, “デバイス管理インタフェースの標準化”,計測と制 御,Vol. 44,No. 6,2005,p. 390-395 信カード用のドライバーが挙げられる。ゲートウェイ DTM の例としては,PROFIBUS と HART のプロトコル *‘FieldMate’ , ‘PRM’ , ‘CENTUM’ ,は横河電機 (株) の登録商標 変換を行うリモート I/O 用のドライバーが挙げられる。 です。その他,本文中の製品及び名称は,各社の商標又は登録商 通信 DTM とゲートウェイ DTM は,機器 DTM と同様 標です。 に通信機器ベンダーから提供される。インタフェース (I/F) 48 横河技報 Vol.51 No.2 (2007) 14