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哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 年間報告PDF
「JTの森 重富」における 哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 年間報告 ─2014年─ ■目次 1. 調査の概要 P.02 2. 撮影ポイント P.03 3. 結果と考察 3-1. 「JTの森 重富」の哺乳類相 3-2. 月毎の哺乳類の撮影頭数 3-3. 月毎の哺乳類の出現率 3-4. 出現種の周日変化 P.04 P.05 P.06 P.07 P.08 4. 資料:各月の記録、記録された鳥類 P.09 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 1. 調査の概要 ◆目的 「JTの森 重富」において、鳥類や昆虫類、植物は調査の結果、生育する植物や生息する動物について分かってき た。しかし、哺乳類や夜行性動物については直接観察することが難しく、食痕や糞など生活痕だけではどのような動 物が生息し、どのように行動しているかがわからない。そこで、赤外線センサーを内臓した自動撮影カメラを利用して、 「JTの森 重富」の動物相・行動生態を把握し、重富の森に生息する野生動物の保全に生かすこととする。 ◆方法 自動撮影カメラを巣穴や獣道、糞場、餌場等(詳細は次頁参照)に6基設置し、夜行性動物の種類、撮影 時刻、行動形態のデータを取得した。 ここでは、2014年1月から10月までに取得したデータに基づき、野生動物 の種の生息確認のほか、ノネコやアライグマ等移入種の生息有無の確認、日周行動・変化、季節行動・変化等を 分析・評価する。 2 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 2. 撮影ポイント 定点撮影ポイントは、白銀坂と水辺の小道周辺とし、 カメラは樹幹の樹上約2~3mに設置した。 川の横 けもの道 ④ ① ⑥⑤③② けもの道 ぬた場 けもの道 ムササビ狙い 3 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 3. 結果と考察 定点撮影ポイント①「ぬたば」で確認されたイノシシ 4 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 3-1.「JTの森 重富」の哺乳類相 2014年1月から10月にかけて「JTの森 重富」で 見られた哺乳類は10種。 ◇定点調査による一日当たりの撮影頭数 ムササビとクマネズミの2種が新たに確認され、昨年 見られたノイヌは確認されなかった。このうちノネコ、ノ イヌ(野犬)は外来生物であり、クマネズミもその 可能性がある(国立環境研究所侵入生物データ ベース)。 1日当たりの撮影頭数は、2012~2014年のいず れの年もイノシシが最多だった。次いで多いのは 2012年がアカネズミ、2013年はアナグマ、2014 年はテンだった。イノシシを除く全種の撮影頻度が 前年に比べて減少した。 前年と撮影条件が異なるため、一概に断定はでき ないが、イノシシが過剰に増加すれば森の豊かな生 態系に負のインパクトを与える可能性がある。 それゆえ、引き続きイノシシの増加、さらにはその他 の種の減少傾向を注視していく必要がある。 イノシシ テン ノウサギ アナグマ タヌキ ムササビ アカネズミ クマネズミ ノネコ ノイヌ野犬 2012年 8~12月 0.665 0.255 0.104 0.084 0.019 2013年 4~12月 0.471 0.140 0.043 0.219 0.115 0.318 0.040 0.019 0.007 0.004 2014年 1~10月 1.061 0.051 0.038 0.048 0.038 0.003 0.029 0.003 0.010 5 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 3-2. 月毎の哺乳類の撮影頭数 1日当たりの撮影頭数を種類毎に月別に示した。 イノシシは2013年には、冬場に個体数が大きく 減少したが、本年はそのような変動は見られな かった。2013年と比較して確認個体数が大きく 増えていることから、イノシシの個体群密度が高 まり、分散できずに同じエリアに留まったために、 季節的な個体数変動のパターンが不明瞭に なった可能性がある。 イノシシ以外の種については確認個体数が少な く断続的にしか確認されないため、変動パターン の把握が困難であった。 イノシシ テン ノウサギ アナグマ タヌキ ムササビ アカネズミ クマネズミ ノネコ 1月 2月 3月 4月 5月 6月 1.045 0.725 1.231 0.815 1.212 0.676 0.136 0.025 0.115 0.037 0.061 0.118 0.045 0 0.038 0.185 0.030 0 0 0 0 0 0.061 0.118 0.091 0.025 0.038 0.074 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.061 0.088 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.030 0 7月 1.517 0.069 0.069 0.103 0 0 0.034 0 0 8月 9月 10月 0.711 1.357 1.514 0 0 0.086 0.053 0 0 0.158 0 0.029 0 0.107 0.086 0 0 0.029 0 0.036 0.057 0.026 0 0 0 0 0.057 6 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 3-3. 月毎の哺乳類の出現率 定点観測モニタリング結果(月毎) 月毎に各種の出現率(全種合計の個体数に対する 各種の比率)を求め、季節変化を分析した。 2014年は、年間を通してイノシシの出現率の高さが 特に目立つ。出現率が年間を通して1種に集中する ことは、種子散布の低下や食害による植物の喪失等 の影響がでてくると考えられる。またイノシシは歩道を 移動し脇の地面を掘りかえすことが多いため、遊歩道 としての白銀坂を維持する上でも悪影響が出る可能 性がある。 哺乳類相の変化に伴う他の生物の変化や、遊歩道 への影響等にも、今後注目していく必要がある。 イノシシ テン ノウサギ アナグマ タヌキ ムササビ アカネズミ クマネズミ ノネコ 1月 2月 0.793 0.935 0.103 0.032 0.034 0 0 0 0.069 0.032 0 0 0 0 0 0 0 0 3月 0.865 0.081 0.027 0 0.027 0 0 0 0 4月 0.733 0.033 0.167 0 0.067 0 0 0 0 5月 0.833 0.042 0.021 0.042 0 0 0.042 0 0.021 6月 0.676 0.118 0 0.118 0 0 0.088 0 0 7月 0.846 0.038 0.038 0.058 0 0 0.019 0 0 8月 9月 10月 0.750 0.905 0.815 0 0 0.046 0.056 0 0 0.167 0 0.015 0 0.071 0.046 0 0 0.015 0 0.024 0.031 0.028 0 0 0 0 0.031 7 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 3-4. 出現種の周日変化 撮影された全哺乳類のうち、撮影日時が記録されている出現種の中でも出現頻度が高い6種(イノシシ、テン、 ノウサギ、アナグマ、タヌキ、アカネズミ)について、出現時刻ごとに個体数を集計し、活動時間を分析した。 ほとんどの哺乳類が夜行性に偏った活動時間を持つことが分かるが、テンはほかの種類に比べて昼間も活動して いることが分かる。また、テンは遊歩道沿いに糞が多数確認されていることから、この6種の中では遊歩道利用者 にとって最も観察チャンスのある哺乳類といえる。 8 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第1回 回収日1月16日) 定点撮影ポイント①、②、⑤で撮影記録あり。多い順にイノシシ(23回)、テン(3回)、タヌキ(2回)、ノ ウサギ(1回)であった。イノシシの活動が飛び抜けて活発であった。なお、定点撮影ポイント③のカメラは故障 機材のやりくりのため移設中。 テン(2013.12.25,22:24) イノシシ(2014.1.23,0:56) イノシシ(2014.1 未記録) ノウサギ(2014.1 未記録) 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント② タヌキ(2014.1 未記録) イノシシ(2013.12.31,15:56) イノシシ(2014.1.2,19:03) 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑤ 9 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第2回 回収日2月25日) 定点撮影ポイント①、④、⑥で撮影記録あり。多い順にイノシシ(9回)、テン(1回)であった。イノシシの 活動が飛び抜けて活発であった。なお、定点撮影ポイント③のカメラは故障機材のやりくりのため移設中。 イノシシ(2014.2.4,0:10) イノシシ(2014.2.5,5:09) テン(2014.2.9,6:46) イノシシ(2014.2.24,10:40) 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① イノシシ(2014.2.25,1:46) イノシシ(2014.2.20,19:26) 定点撮影ポイント④ 定点撮影ポイント⑥ 10 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第3回 回収日3月23日) 定点撮影ポイント①、②、④、⑤で撮影記録あり。多い順にイノシシ(32回)、テン(3回)、タヌキ(1 回)、ノウサギ(1回)であった。イノシシの活動が飛び抜けて活発であった。なお、定点撮影ポイント③のカメ ラは故障機材のやりくりのため移設中。 タヌキ(2014.3.7,19:51) イノシシ(2014.3.9,22:16) テン(2014.3.11,5:06) イノシシ(2014.3.20, 23:00) 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① イノシシ(2014.3.5,22:56) テン(2013.12.31,15:56) イノシシ(2014.3.5,22:44) ノウサギ(2014.3 未記録 ) 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント④ 定点撮影ポイント⑤ 11 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第4回 回収日4月19日) 定点撮影ポイント①、②、④、⑤で撮影記録あり。多い順にイノシシ(22回)、ノウサギ(5回)、タヌキ (2回)テン(1回)であった。イノシシの活動が飛び抜けて活発であった。なお、定点3のカメラは故障機 材のやりくりのため移設中。定点撮影ポイント⑥のカメラは故障のため回収中。 イノシシ(2014.3.25,23:01) イノシシ(2014.4.1,1:08) テン(2014.4.16,9:56) ノウサギ(2014.3.24, 2:31) 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① タヌキ(2014.4.5,4:28) ノウサギ(2013.4.13,1:51) イノシシ(2014.4 未記録 ) 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント⑤ 12 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第5回 回収日5月22日) 定点撮影ポイント①、②、④、⑤、⑥で撮影記録あり。多い順にイノシシ(40回)、テン(2回)、アナグマ (2回)、アカネズミ(2回)、ノウサギ(1回)、ノネコ(1回)であった。イノシシの活発な活動が目立った。 小型の哺乳類や鳥類を捕食する可能性があるノネコが確認された。 イノシシ(2014.4.24,0:10) ノネコ(2014.4.27,23:50) イノシシ(2014.4.30,2:06) イノシシ(2014.3.20, 23:00) 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント④ 定点撮影ポイント① テン(2014.4 未記録) ノウサギ(2014.4.22,20:06) アナグマ(2014.5.15,21:35) アカネズミ(2014.5.15,23:43) 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑥ 定点撮影ポイント⑥ 定点撮影ポイント⑥ 13 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第6回 回収日6月25日) 定点撮影ポイント①、②、④、⑤、⑥で撮影記録あり。多い順にイノシシ(23回)、テン(4回)、アナグマ (4回)、アカネズミ(3回)であった。イノシシの活発な活動が目立った。 テン(2014.5.22,19:13) アカネズミ(2014.6.15,23:28) テン(2014.5.22,21:39) イノシシ(2014.6.16, 1:45) 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント④ テン(2014.5 未記録) ノウサギ(2014.4.22,20:06) アカネズミ(2014.6.7,0:50) アナグマ(2014.6.15,2:38) 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑥ 定点撮影ポイント⑥ 定点撮影ポイント⑥ 14 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第7回 回収日7月24日) 定点撮影ポイント②、④、⑤、⑥で撮影記録あり。多い順にイノシシ(44回)、アナグマ(3回)、テン(2 回)、ノウサギ(2回)、アカネズミ(1回)であった。イノシシの活発な活動が目立った。確認されたイノシシに は、体に縞模様のある「ウリ坊」と呼ばれる今年生まれた個体の姿が確認されるようになった。 イノシシ(2014.7.1,0:19) ノウサギ(2014.7.8,5:02) テン(2014.6.29,1:36) イノシシ(2014.6.29, 1:37) 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント④ 定点撮影ポイント④ イノシシ(2014.7 未記録) イノシシ(2014.7 未記録) アカネズミ(2014.6.30,20:44) アナグマ(2014.7.22,2:10) 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑥ 定点撮影ポイント⑥ 15 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第8回 回収日8月31日) 定点撮影ポイント②、④、⑥で撮影記録あり。多い順にイノシシ(27回)、アナグマ(6回)、ノウサギ(2 回)、クマネズミ(1回)であった。定点撮影ポイント⑥では人家やその周辺を生息場所とするクマネズミが確 認された。 イノシシ(2014.7.28,22:48) イノシシ(2014.8.3,6:47) ノウサギ(2014.8.10,2:27) イノシシ(2014.8.18, 21:20) 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント② 定点撮影ポイント④ イノシシ(2014.8.18, 21:20) イノシシ(2014.8.3,18:14) クマネズミ(2014.8.7,12:39) アナグマ(2014.8.12,2:30) 定点撮影ポイント④ 定点撮影ポイント⑥ 定点撮影ポイント⑥ 定点撮影ポイント⑥ 16 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第9回 回収日9月27日) 定点撮影ポイント①、④、⑤、⑥で撮影記録あり。多い順にイノシシ(38回)、タヌキ(3回)、アカネズミ (1回)であった。 イノシシ(2014.9.1,23:48) タヌキ(2014.9.9,3:42) タヌキ(2014.9.2,4:37) イノシシ(2014.9.14, 20:02) 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント④ 定点撮影ポイント④ イノシシ(2014.9 未記録) イノシシ( 2014.9 未記録) イノシシ(2014.9 未記録) アカネズミ(2014.9.2,22:54) 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑥ 17 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:各月の記録(第10回 回収日11月2日) 定点撮影ポイント①、④、⑤、⑥で撮影記録あり。多い順にイノシシ(53回)、テン(3回)、タヌキ(3回)、 アカネズミ(2回)、ノネコ(2回)、アナグマ(1回)、ムササビ(1回)であった。定点撮影ポイント⑤では樹 上生の哺乳類であるムササビであると思われる哺乳類の姿が確認された。また、定点撮影ポイント④と定点撮 影ポイント⑤ではノネコの姿が確認された。 タヌキ(2014.10.2,22:33) アカネズミ(2014.10.7,21:21) ノネコ(2014.10 未記録) テン(2014.10 未記録) 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント① 定点撮影ポイント④ 定点撮影ポイント④ イノシシ(2014.10 未記録) ノネコ( 2014.10 未記録) ムササビ(2014.10 未記録) アナグマ(2014.10 未記録) 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑤ 定点撮影ポイント⑥ 18 「JTの森 重富」における哺乳類等夜行性動物の定点撮影調査 4. 資料:記録された鳥類 鳥類については、ヒヨドリやヤマガラなど、これまでの定点撮影や鳥類調査で確認された種が今回も多数確認され た。樹上で活動することが多く、地上にはあまり下りないアオゲラが初めて撮影された。希少種では、2012年、 2013年にも確認されているコシジロヤマドリ(準絶滅危惧種)が記録された。 ヒヨドリ(2014.1.16,17:09) 定点撮影ポイント① コシジロヤマドリ♂ (2014.2.24,17:58) 定点撮影ポイント⑤ ヤマガラ(2014.2.3,13:38) 定点撮影ポイント⑥ キジバト(2014.4.10,13:31) 定点撮影ポイント① アオゲラ(2014.2.17,8:31) 定点撮影ポイント⑥ コシジロヤマドリ♀ (2014.7.12,6:28) 定点撮影ポイント⑥ ハシボソガラス(2014.2.21,9:26) 定点撮影ポイント⑥ シロハラ(2014.10 未記録) 定点撮影ポイント⑥ 19