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SEM - 廃棄物資源循環学会
H20年度廃棄物学会研究討論会 分析走査型電子顕微鏡法(SEM-EDS) によるアスベスト分析 株式会社環境管理センター 豊口 敏之 はじめに 分析走査型電子顕微鏡法(SEM-EDS)は、 ①大気中のアスベスト分析法 (JIS K 3850-1、アスベストモニタリングマニュアル(参考法)) ②水道水中のアスベスト分析法 (上水試験方法2001年版-追補版:暫定方法) に示されているが・・・ ↓ “X線回折法(XRD法)”や“位相差顕微鏡法(PCM 法)”の補完的な位置づけで用いられることが多い。 分析走査型電子微鏡装置 日本電子製 JSM-6390LA 分析走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)の原理 EDS 入射電子 SEM 反射電子 X線 二次電子 試料 分析走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)による アスベスト測定 ①対象(水質、ガス、固形物)毎に定められた方法で 試料を採取、調製。 ↓ ②調製後の試料にC、Pt、Au等のコーティングを施し、 帯電(チャージアップ)防止する。 ↓ ③形態観察(SEM)及び元素分析(EDS)を実施。 試料採取方法の一例 試料採取方法の一例 (大気中のアスベスト測定の流れ) ①試料採取(ろ紙捕集) ↓ ②ろ紙の前処理(標本作製) ↓ ③分析(顕微鏡法) 大気中の石綿測定の対象 ・作業環境 ・室内環境 ・環境大気 ・排ガス 試料採取(作業環境・室内環境・環境大気) ろ紙ホルダー ろ紙ホルダー ろ紙 ポンプで空気を吸引 粉じん捕集 機材全景 電源 1m程度 吸引ポンプ 1m程度 図-1 空気中のアスベスト採取方法 試料採取(排ガス)① 排ガス採取イメージ図 採取管 連結管 メンブランフィルター 等速吸引 ヒーターで加温 燃焼排ガス ダクト ポンプ インピンジャー 無じん水 氷水 試料採取(排ガス)② 大気中の石綿測定方法 ①位相差顕微鏡法(アセトン・トリアセチン法) ②位相差顕微鏡法(アセトン・トリアセチン法) &生物顕微鏡法との併用 ③位相差顕微鏡法(分散染色法) ④走査型電子顕微鏡法(SEM法) ⑤透過型電子顕微鏡法(TEM法) 位相差顕微鏡法(アセトン・トリアセチン法)① クリソタイル 位相差顕微鏡法(アセトン・トリアセチン法)② アモサイト 位相差顕微鏡法(アセトン・トリアセチン法)③ クロシドライト SEM写真①(クリソタイル) EDS①(クリソタイル) S iK a 1600 M gKa 1800 016 CKa O Ka 2000 1400 C o u n ts 1200 1000 800 600 400 200 0 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 keV 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00 SEM写真②(アモサイト) EDS②(アモサイト) S iK a 001 O Ka 1000 900 800 700 500 C Ka FeKb 200 FeKa 300 M gKa 400 FeLa C o u n ts 600 100 0 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 keV 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00 SEM写真③(クロシドライト) EDS③(クロシドライト) 2400 S iK a 2700 012 CKa O Ka 3000 2100 600 300 FeKb 900 FeKa 1200 N aKa M gKa 1500 FeLa C o u n ts 1800 0 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 keV 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00 SEM写真④(アンソフィライト) EDS④(アンソフィライト) S iK a 004 O Ka 6000 M gKa 5400 4800 4200 3000 2400 600 FeKb 1200 FeKa FeLa 1800 CKa C o u n ts 3600 0 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 keV 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00 SEM写真⑤(トレモライト) EDS⑤(トレモライト) 014 5400 SiKa OKa 6000 MgKa 4800 4200 3000 2400 CKa CaKa 1800 FeKa CaKb 600 FeKb 1200 FeLa Counts 3600 0 0 .0 0 1 .0 0 2 .0 0 3 .0 0 4 .0 0 5 .0 0 keV 6 .0 0 7 .0 0 8 .0 0 9 .0 0 1 0 .0 0 SEM写真⑥(アクチノライト) EDS⑥(アクチノライト) 005 S iK a 6000 5400 O Ka 4800 M gKa 4200 3000 FeKb 600 FeKa 1200 C aKb FeLa 1800 C aK a 2400 C Ka C o u n ts 3600 0 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 keV 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00 大気中の石綿濃度の計算方法 ①大気中の石綿濃度の算出 CF=A×(N-Nb)/(a×n×Q) CF:石綿濃度(f/L) A:フィルターの有効面積(mm2) N:計数した石綿繊維総数(f) Nb:計数したブランクの石綿繊維総数(f) a:顕微鏡視野(1画面の観察試料上で)の面積(mm2) n:計数視野数 Q:吸引ガス量(L) ②定量下限値 S=2.645×A/(a×n×Q) S:定量下限(f/L) A:フィルターの有効面積(mm2) a:顕微鏡視野(1画面の観察試料上で)の面積(mm2) n:計数視野数 Q:吸引ガス量(L) アスベスト分析における各顕微鏡法との比較 形状観察 位相差顕微鏡 アセトン・ 分散染色法 トリアセチン法 ○ ○ 走査型電子顕微鏡 透過型電子顕微鏡 SEM法 A-SEM法 TEM法 A-TEM法 ○ ○ ○ ○ 表面の状態 △ △ ○ ○ △ △ 格子像 - - - - - ○ 電子線回折(ED) - - - - - ○ 化学組成(EDS、EDX) - - - ○ - ○ 400倍 2000倍 1万倍 0.2~0.4μm 0.5~0.8μm 0.1μm 0.02μm 倍率 最小観察繊維幅 △※ アスベスト鉱物の同定 △ - ○ - ◎ 0.07065 0.003072※※ - 環境大気で定量下限値_0.3f/L の際の計数視野(画面)数 50 1150※※ - 計数に要する時間(1検体当) 20~30分 10~20時間 20~30時間 分析技術 中 中~高 高 装置費用 50万~250万円 1500万~4000万円 5000万~1億円 観察時の1視野面積(mm2) ※ :生物顕微鏡との併用でクリソタイルの同定可 :使用する装置によって異なる ※※ アスベスト分析におけるSEM-EDS法の メリットと課題 《メリット》 ①細い繊維幅のアスベスト繊維の確認が可能。 ②分散染色法と比較してアスベスト鉱物同定の確度が高い。 (形態観察+元素組成) 《課題》 ①繊維に付着物等があるとその影響で正確な元素分析が困難。 ②元素組成がアスベスト鉱物と似通っている他の繊維状物質との 識別が困難。 ③位相差顕微鏡と比較して分析装置が高額。 ④大気分析において、従来のPCM法と同等の定量下限値を得 るために多くの分析時間を要する.