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ネット販売ビジネス高度化を “EC物流サービス”で強力
物流現場をスマート化! 〈緊急企画①〉 [ZoomUp] 先端物流 ITツール・ソリューション ネット販売ビジネス高度化を “EC物流サービス”で強力支援 4PLのPALとWMSのフレームワークスが コラボで新提案〈後〉 今回から数回にわたり 〈緊急シリーズ企画〉 として、物流現場のスマート化に向け最近急速に技術開発が進展している スマート端末、クラウドコンピューティング、関連 ITにスポットをあてる 「先端物流 ITツール・ソリューション ZoomUp」 を お届けすることにした。まず前号FOCUS枠で前半をお送りした、4PLとWMSベンダーの協働による 新しい「EC物流サービス」についてのレポート、後半は緊急シリーズ企画の1つとして、EC物流をスマート化する (編集部) 次世代ソリューションの核心を探ってみることにしたい。 EC物流サービスの フレームワーク ことなく,最低限の投資で効率的サ ービスを提供可能とするのだ。 同じWMSの同じデータベースに 全国8か所の自社運営現場で900 複数荷主の在庫データを乗せ,保管 人に上る従業員を擁し,4PLサービ からピッキング,出荷までそれぞれ スを展開するPAL(辻有吾社長)は, ワンストップ・ワンアクションのシ WMS ベンダーのフレームワークス PAL関西第一センター によって辻社長の目指すのが,可能 (秋葉淳一社長)と協働し,大阪市南 港のPAL関西第一センターを舞台 する「物流オペレーション」を軸と にEC(Eコマース;電子商取引)物 して構築された(図表-1) 。 な限り「動かさない物流」である。 だがそのためには,シンプルなオ もう一つ従来のサービスと違う ペレーションの背後で,受発注・在 特長は,PALが 4PL として受託す 庫所有移転など複雑な情報管理を迅 る卸など BtoB の業務と合わせて, 速確実に行うための,柔軟かつ高度 らは物流センターや車両など資産を 中小規模EC のBtoC 物流業務を受 なIT ソリューションが不可欠にな 保有せずに3PL・物流事業者を駆使 託することだ。 る。 流の全く新しい試みに挑もうとして いる。 4PLとは4th Party Logistics,自 PALと協働しそれを担うのがフ し,最適なロジスティクスサービス 両者に規模や特性の違いはあっ を提案・コンサルティング,ソリュ ても,在庫・保管・入出庫・入出荷 レームワークスで, ーションとして提供する業態である。 という物流拠点の基本機能・現場オ ①従来のWMSよりはるかに簡易・ 後編の今回は初めに前回レポー ペレーションフローはさほど変わら 廉価に導入でき,受け払いなど重 トの要点を振り返りながら,新しい ない。もしその卸の商品をEC企業 要ポイントだけをカバーするソ ビジネスモデルの概要とセンター現 が販売するなら,商品在庫自体が共 リューション 場の様子を紹介していこう。 通のものになる。 ②受発注からセンター在庫の所有が そこでPALでは顧客の了解を得 移転していく多数のトランザク 「EC物流サービス」は配送・倉 て,拠点はもちろん在庫ロケーショ ションを管理し,分析・活用を可 庫・システムを中心とした既存EC ンもピッキング作業も,さらにWMS 能にする新システム 発送代行とは異なり,PALが集中 など管理システムも両者で区別する の2つを提供開始した。 * 34 ングルオペレーションで捌く。これ 2011・2 図表-1 PALとフレームワークスが協働で提供するEC 物流サービスのイメージ 受注管理アプリ 受注情報 購入 モール 受注情報 5 配送情報 物流実績情報 出荷指示 (CSV/WEB-API) 1 WMS 2 在庫管理情報 作業指示 商品お届け 問合せ・クレーム 倉庫内 オペレーション コンタクト センター マーケティング 向け情報 調達支援画面 EC 事業者 (荷主) 3 コンタクトセンター 向け情報 EC-PAL サービス ❸作業実績データ ❷在庫管理データ ❹配送実績データ 宛先情報、商品情報、物流加工情報、決済情報 物流加工実績情報、出荷伝票番号情報 入荷情報、出荷情報、棚卸し情報、在庫定数情報、自動発注情報 まず前者としてフレームワースク 利用者 ニーズ情報 作業実績情報 ❶出荷指示データ iWMS G5-SPとiWMS X1 物流管理画面 請求管理画面 マーケティング サービス 物流実績DB 自社サイト EC利用者 EC-PALポータル 4 ❺物流実績データ 在庫管理データ、配送実績データ 出荷伝票番号、在庫数情報 パッケージシステム) ,iWMS G5-SP ①∼⑥に順次紹介するので参照頂き を活用してきた。 たい。 ファンシー・キャラクター玩具 だが今回,iWMS G5-SPを未導 内在庫管理サービス「iWMS X1」 。 など雑貨,アパレル,加工食品など 入の中小規模現場に簡易版のクラウ 前回も触れたように昨年12月から 常温品を扱うPAL関西第一センタ ドサービスであるiWMS X1を投入 PALの現場でトライアル導入を開 ーでもこれを導入し,ゲート開閉式 することにしたのだ。iWMS X1は 始した。 ピッキングシステムと連携。高効率 従来の高機能型シリーズとは大きく PALはこれまで主要拠点で,フ で正確な作業指示やデータベース管 発想を変え,導入の裾野を大きく広 レームワークスのシナリオ型ソリュ 理,遠隔地からでもリアルタイムに げるため「固定型ではなく,完全な ーション(業種業態ごとのシナリオを 進捗管理可能な仕組みになってい (フレームワー 変動費型のサービス」 保有し最適な運用を選択・適用できる る。このセンター現場の様子を写真 クスの秋葉社長)とした。 スが新登場させたのが,SaaS型庫 1 2 写真①②:関西第一センター1階の出荷作業(①) と4階の様子(②) 。大物はリストピッキング。BtoBもBtoCも在庫ロケーションを区別せず、効率的なシングルオペレー ション 2011・2 35 図表-2 iWMS X1のクラウド運用イメージ 図表-3 物流の現場に求められる精緻な在庫管理をパブリッククラウドプラット フォームから提供。オペレーションはExcelと無線 HTに対応し、即座に サービスインが可能。インターネットからのリアルタイムな在庫照会と高品 質な出荷、確実な受払情報の管理を可能にする。サービス提供環境 は国内大手ソリューションベンダのデータセンタ内に設置されている。 iWMS X1の画面・帳票イメージ あらゆるビジネスシーンに普及しているExcelの機能を活用し、 在庫管理に必要な機能を提供する。インターネットから Webブラウザを使ってリアルタイムな在庫照会も可能。 入出荷登録画面 帳票出力画面 HT Excel リアルタイムに Webブラウザから 在庫を照会 帳票プレビュー画面 Excelを使って リアルタイムに 在庫を管理・更新 Web 在庫照会画面 帳票イメージ 無線HTを使って リアルタイムに 在庫を管理・更新 ※画面は開発中のものです。仕様等は変更になる場合があります。 ノンカスタマイズで物流現場に いる。 卸とEC企業は, 「卸元と卸先」と 求められる在庫管理機能に絞り込 み,パブリックな「クラウドプラッ トフォーム」でサービスを提供する (図表-2,クラウド環境はサーバ1台 分から使用できる新日鉄ソリューショ 背後のトランザクション 管理を支えるIT いうリアルな,別個の存在だ。しか 調達と販売のECプラットフォーム 理できれば,両者間で売買取引が成 し同じ物流センターで・同じシステ ムの・同じデータベースで在庫を管 フレームワークスが提供するもう 立し在庫移動=「出荷・入荷」が発 このほど正式に上市し,一般への提 一つのソリューションが,トランザ 生しても, 「データ上で所有名義を 供も開始した。 クション管理システムである。 変更する」だけの問題になる。 ンズのabsonne[アブソンヌ]を使用) 。 オペレーションはExcelによる操 これがなぜEC物流サービスに必 そう,実際に物を動かす必要はな 作容易なインターフェースと無線ハ 要なのか。PALの考える進化形EC い。動かないのだからリードタイム ンディ端末に対応し,即座にサービ ビジネスモデルとは, 「ECの調達・ は「ゼロ」だ。かかるコストもデー スインが可能。インターネットから 販売統合プラットフォーム」である タスイッチング費用のみ。これが辻 リアルタイムな在庫照会と高品質な からだ。 社長のいう究極の「動かさない物 出荷,確実な受払情報の管理などを かねてから多くの物流事業者が, 流」である。 中小EC事業者の倉庫・在庫管理・ そのために,卸のEC向け商品在 しかも「出荷伝票明細1行当たり 出荷まで物流業務の一括受託や,受 庫をPALの物流センターに集めよ 10円」という低廉な完全従量課金制 注も含めたフルフィルメントサービ うというのだ。 とし,最低料金は9,800円/月だか スを提案してきたことは周知の通り。 ら,まさに誰でも・すぐに導入でき 「でもそれは我々の考えからする 1か月で売れるだろう・売りたい流 るクラウドサービスとなった。加え と,ほんの第一歩に過ぎません」と 行のショートテール商品を卸企業に て使用量に応じた台数のハンディ端 辻社長は続ける。 置いてもらうわけです。まだ誰に売 可能する(図表-3) 。 末(キーエンス製)もこの料金内で提 「中小のEC企業さんが集まると, 「1か月間,在庫費用は無料にし, るかは決まっていないけれど入荷証 供するという,魅力的なサービスに 必然的に商品調達先である卸企業と 明を出し,データベースに画像と共 なっているのが特長だ。 のリレーションが生まれます。普通 にアップし,EC業者さんが即買い 昨秋から動き出したEC物流サー なら卸の倉庫からの横もち輸送やメ 付けできるようにします。PALが ビスは,EC 事業者やEC 向けベン ーカーからの直送で,我々のセンタ 仕入れて卸すわけではなく,債権管 ダーの参加企業が拡大中。これに ーに商品を調達する必要がありまし 理するだけ。しかしその在庫異動で iWMS X1の活用提案が加わること た。でも初めからその卸の商品在庫 手数料収入は得られます」 (同) で機能が一層充実した。 を,我々のセンターに置けば? そ すでにiWMS X1は成長中の3PL 企業・トランコムが導入を決定して 36 にできるはずです」 2011・2 一方でECの良さは,リアル店舗 れなら余計な輸配送が不要になり, にはいつまでも置いておけないロン データベースも管理システムも一緒 グテール品も買えること。実際,現 ネット販売ビジネス高度化を “EC物流サービス”で強力支援 4PLのPALとWMSのフレームワークスが コラボで新提案〈後〉 在のPAL関西第一センターにある 卸から物流センターに商品が入 生する。さらにその実績データを基 在庫も大半がロングテール品だとい 荷する。商品データをアップする。 に様々な分析を行い,結果を提供す う。 EC事業者が買い付ける。EC事業者 る必要がある。 一般の卸会社にとって,売れ残っ が販売し,出荷する……。 「人気商品ほど,瞬間的に大量の た商品は不良在庫だが,長期間にわ PALのEC物流サービスは,従来 トランザクションが集中します。そ たり少しずつでも売れるロングテー なら企業間物流と商流が2段階で発 れをきちんと捌いてロジスティクス ル品は,EC企業にとっては宝の山。 生していたこのビジネスフローを統 を支え,アーカイブし,情報分析サ だが従来,両者をつなぐサービス, 合するプラットフォームとなり,1 ービスにつなぐ仕組みを用意するの プラットフォームは存在しなかっ 段階の「入荷・出荷」に短縮する。 が私どもの新たなソリューションで た。PALが初めて,そのスキーム しかし「動かない物流」の背後で す」とフレームワークスの秋葉社長 を確立しようとしている。 は,入荷・受発注・所有権移動のデ トランザクション管理 ータトランザクションが休みなく発 は話す。 「これはWMSの範疇ではなく, ロジスティクスに関わる情報を一括 3 管理する仕組みになり,我々がスマ ート・ロジスティクス情報システム (SLS)と称するものです。エンジ ンは,大手家電量販店さんで店の POS 情報やネット販売オーダーな ど1日に数十万のトランザクション を処理し,どのセンターから出荷す るのが一番効率良く,納期がいつに なるかの回答を直ちに出しているも のの応用です」 なるほど,今後のロジスティクス 高度化,とりわけEC 物流の進化に 4 は,4PL とIT 企業のコラボレーシ ョンが不可欠になることが実感され る。 「クラウド物流サービス」 への道 かつてなかったPALのビジネス スキーム。もう少し辻社長の言葉に 耳を傾け,そのイメージを追ってみ よう。 「メーカーから卸,ECを含む小 売,そして消費者につながるサプラ 写真③④:小分け出荷の主役・ゲートアソートシステム(GAS、タクテック製)は、その商品を出荷する間口の ゲートだけが開くので誰でも正確・迅速な仕分け作業が可能、瞬発出荷力を保証する(取材後1階に移設し、 1基増設した) イチェーンの中で,既存のリアル物 流は多段階の“利害のチェーン”で 2011・2 37 5 7 そこでPALは消費者(C) ,EC事 業者(B) ,卸(B)の3社をBtoBtoC でつなぎ,共通のデータベースを構 6 写真⑤:センター4階のコンピュータルー ム。iWMS G5-SPによる管理・指示と効率 的な現場作業が相まって最短で当日6時ま での受注品を当日出荷・宅配ベース経由で 翌日配送可能。高いサービス品質と業界最 安レベルの低コストを両立する 築して,シングルオペレーションに 統合する。動いているのはデータの スイッチングだけ。 そして「売れるECプラットフォ 写真⑥:PALではプレイステーション3を活 用したテレビ電話・会議システムを導入。低 コストで本社と1セット最大5か所の物流現 場をつなぎ、会話や情景の見える化が可能だ ーム」を確立すれば,売れる商材が 写真⑦:握手するPAL・辻社長(左) とフレー ムワークス・秋葉社長 は現在も「1品目1サイト」と言わ どんどん集まる。実際,EC業界で れるほど,一部の勝ち組と大半の負 した。しかしWeb経済圏では古い ウド化していく”んです。リアル物 け組みがピラミッド構造をなしつつ 利害にとらわれず,急速に従来の壁 流企業の人に話してもなかなか理解 ある。 が乗り越えられています」 してもらえませんが,これは間違い 確かに在庫は持たず,受発注だけ 担っているEC事業者も多い。それ * 抜き,商品が集まるほど, 「動かな い物流」にますます近づくことにな る。 ならリアル物流と情報を,デマンド 確かに,消費者にとってはEC購 チェーンとして1つにまとめられな 買そのものが「クラウド化」しつつ 辻社長の脳裏にあるのは単なる いか。 ある。どこから買うか,どこからど 物流サービスでない。メーカー・ベ 「ロジスティクスは今後,リアル う届くかは問わない。雲の中の「ど ンダーからの調達と,EC事業者の 経済圏とWeb経済圏に分かれてい こか」から,欲しい物がすぐ玄関に 販売を商流・物流とも統合する「総 くと思います。Eコマースの売上は 届けばいいのだ。PALはその「ク 合的なECロジスティクス・プラッ 6兆円を越え(サービス含む),ソー ラウド物流サービス」の担い手にな トフォーム」 。ないしは「リアルな シャルネットワークも巻き込み今後 ろうとしている。 ロジスティクスを統合したEマーケ ットプレイス」 ,ということになる はさらに拡大するでしょう。でもそ ただし配送の下流側ばかりに目 の新たな経済圏に対する適切なロジ を取られてはいけない。辻社長の目 スティクス機能を提供できる物流イ 指すのは,卸企業の在庫がある状態 それを実現する一手が,先進IT ンフラは,まだない。これから“物 から始まる, 「オンデマンド型EC 企業・フレームワークスとのコラボ 流ビッグバン”が起こるんです」 物流」である。調達した豊富な在庫 レーションだったのだ。 だろうか。 * 「PALはそこで,ITとロジスティ にロジスティクス機能が直結。それ クスのリアルなインフラも全部含め がもっとも効率的なECの売り方で その構想実現への第一ステップ たソリューションを一括提供しま あり,そのプラットフォームを提供 が,PAL関西第一センターで始ま す。EC社会のロジスティクスは運 することが目的だ。 った。2人が展望する未来は,従来 の物流・ロジスティクスサービスと 送業者でなく,ITアーキテクチャ 「従来のECに対するロジスティ に秀でた企業が作っていく。たぶん クスサービスは,EC企業と消費者 その未来がくるまで5年も掛からな の間に立ち,品質とコストだけで勝 「だから,うまく行けばPALは日 いと思います」 負していました。でも実際の機能と 本一になりますよ。最近,そんな風 しては大差ないし,それだけでは本 に豪語しているんです」 「つまり,クラウド化していく Web経済圏と同じく, “物流もクラ 38 ないでしょうね」 PALのプラットフォームが勝ち 2011・2 質的には何も変わらない」 は別次元にあるようだ。 辻社長は明るく笑った。 MF