...

合算所得金額の計算②

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

合算所得金額の計算②
#
05
マエストロの解説
□□□□■
□□□□■□□□□■□□□
□■□□□□■
複雑になりすぎた 法人税をもう
一度勉強しよう
2
基準所得金額の計算(承前)
(2)現地法令:例外的計算方法
特定外国子会社等の基準所得金額を、当該特
定外国子会社等の本店所在地国の法令(現地法
令)に基づいて計算する方法では、本店所在地
国の法人所得税に関する法令の規定により計算
税務における第一人者 〝税務マエストロ 〟による税実務講座
した金額に一定の調整を加えて計算することに
今週のマエストロ&テーマ
タックス ヘイ
ブン対策税制
─合算所得金額の計算②
#
55
品川克己
日本公認会計士協会租税
調査会専門委員(国際租
税専門部会)
税理士法人プライスウォーターハウスクーパ
ース
(マネージング・ディレクター)
略歴
89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国
際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及
び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロー
スクールにて客員研究員として日米租税条約につ
いて研究。97年より00年までOECD租税委員会
に主任行政官として出向(在フランス)
し、
「 OECD
移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」
の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財
務省を辞職し現職。
次回のテーマ
56
#
る申告所得)に日本の法人税法と大きく差が生
じるであろう項目の調整を加えるものであり、
結果的に本邦法令により計算した金額に近似す
ることが想定されている(措令 39 の 15 ②)。選
択した計算方法により合算課税される金額に差
が生じることは望ましいことではなく、同時
に、納税者の負担の軽減の趣旨から設けられて
いる例外的計算方法との位置づけである。
なお、現地法令により計算する場合には、所
得の金額に次の調整項目を加えて計算すること
となる。
<加算項目>
(ア)本店所在地国の法令により各事業年度の
法人所得税の課税標準に含まれないことと
される所得の金額を加算する。この課税標
準に含まれないこととされる所得について
は、一般に非課税所得や国外所得免除方式
をとっている場合の国外源泉所得が該当す
ると考えられる。しかしながら、法令上特に
定義されていないため、一般的な用語とし
て解釈する必要がある。ただし、諸外国に
はわが国の制度とはかなり性格が異なるも
経営戦略に応える
企業再編成税制
税理士
朝長英樹
経営戦略の1つとして組織再編成税制を活
用できる方法を、同税制等の創設を主導し
た筆者が事例形式で解説する。
※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
[email protected]
18
なる。これは現地の税務上の所得金額(いわゆ
No.469 2012.10.1
のがありその判断が困難な場合も多い。た
とえば、欧州で見られる Notional deduction
(特殊な特別控除)などがその例といえる。
ただ、用語上は、あくまで「所得」である
ことから、特定の引当金や準備金、特別控
除などは該当しないといえよう。
(イ)支払う配当等の額で、各事業年度の損金
に算入されている金額を加算する。
(ウ)減価償却資産につき償却費として各事業
年度の損金の額に算入している金額が、い
金の額のうち、租税特別措置法第 57 条の 5
又は第 57 条の 6 により計算した場合に損金
算入されない金額を加算する。
わゆる一括償却により取得価額を償却限度
(サ)積み立てた異常危険準備金に類する準備
額として計算されている場合には、法人税
金の額で益金の額に算入した金額が、租税
法に定める方法(第 31 条)により計算され
特別措置法第 57 条の 5 又は第 57 条の 6 によ
た限度額を超える部分の金額を加算する。
り計算した場合に益金算入すべき金額に満
したがって、償却限度額の計算が法人税法
たない金額を加算する。
と異なっていても、それが一括償却でなけ
(シ)支出した交際費等に相当する費用の額の
れば認められることとなる。なお、この償
うち、租税特別措置法第 61 条の 4 第 1 項に
却費の計算は個々の減価償却資産ごとに行
より計算した場合に損金の額に算入されな
い、ここで加算された償却超過額は翌期以
い金額を加算する。
後の普通償却額として認容されよう。
(ス)組合契約に基づいて営まれる事業等の損
(エ)資産の評価換えにより各事業年度の損金
失のうち、租税特別措置法第 67 条の 12 又
の額に算入している金額で、法人税法(第
は第 67 条の 13 により計算した場合に損金
33 条)の規定による場合に損金の額に算入
に算入されない金額を加算する。
されないこととなる金額を加算する。つま
り、資産の評価損の計上については、わが
国の基準により行うこととなる。
(オ)役員に対して支給する給与の額のうち、
法人税法第 34 条(役員給与の損金不算入)
による場合に損金に算入されない金額を加
算する。
(カ)使用人に対して支給する給与の額のう
<減算項目>
(セ)過年度の組合等損失超過額で、租税特別
措置法第 67 条の 12 又は第 67 条の 13 により
計算した場合に損金に算入される金額があ
る場合には、その金額を減算する。
(ソ)還付を受ける法人所得税の額を益金の額
に算入している場合には、その金額を減算
する。
ち、各事業年度の損金の額に算入している
(タ)資産の評価換えにより各事業年度の益金
金額で、法人税法第 36 条(特殊関係使用人
の額に算入している金額で、法人税法(第
に対する過大使用人給与)の規定によると
25 条)の規定による場合に益金の額に算入
損金に算入されない金額を加算する。
されないこととなる金額を減算する。
(キ)寄付金の額のうち、法人税法の規定によ
(チ)本邦法令に従って計算した場合同様、持
り計算した場合に損金算入限度額を超える
株割合及び保有期間を満たす他の子会社か
部分の金額、および国外関連者に対する寄
ら受ける配当等の金額を減算する。
付金を加算する。
(ク)納付する法人所得税の額で、当該事業年
度の損金の額に算入している金額がある場
合には、その金額を加算する。
(ケ)損金の額に算入している過去の欠損の金
額がある場合には、その金額を加算する。
(コ)積み立てた異常危険準備金に類する準備
3
控除対象配当等の金額の減算
特定外国子会社等の基準所得金額の計算にあ
たり、その特定外国子会社等が、同じく特定外
国子会社等に該当するその子会社(孫会社に該
当)から配当を受領した場合には、その配当
No.469 2012.10.1
19
は、孫会社段階で合算課税の対象となり、再度
♦他の特定外国子会社等から受ける配当等の額
もう一方の特定外国子会社等(子会社)で合算
が、他の特定外国子会社等の配当等の額の支
課税の対象となることとなる。こうした二重課
払に係る基準日の属する事業年度(基準事業
税を排除するために、基準所得金額の計算にあ
年度)の「配当可能金額」のうち保有割合に
たって、こうした配当の金額(控除対象配当等
対応した金額(出資対応配当可能金額)を超
の額)を控除することとされている(措令 39
えない場合であって、かつ、当該基準事業年
の 15 ③、④)
。この措置は、本邦法令により基
度が課税対象金額の生じる事業年度である場
準所得金額を計算する場合及び現地法令により
合……当該配当等の額の全額
計算する場合のどちらの場合も該当する。な
♦他の特定外国子会社等から受ける配当等の額
お、この措置の対象となる配当を行う特定外国
が、基準事業年度の出資対応配当可能金額を
子会社等は、上記
(チ)
の「他の子会社からの配
超える場合……当該他の特定外国子会社等の
当の除外」の対象とならない子会社に該当する
基準事業年度以前の各事業年度の出資対応配
子会社である(下図参照)
。つまり、親会社た
当可能金額をそれぞれ最も新しい事業年度の
る一方の特定外国子会社等の保有する持分が
ものから順次当該配当等の額に充てるものと
25%未満の場合や 6 ヶ月未満の保有である場合
して当該配当等の額を当該各事業年度の出資
等となる。
対応配当可能金額に応じそれぞれの事業年度
ごとに区分した場合において、課税対象金額
【図】
の生じる事業年度の出資対応配当可能金額か
(他の子会社)
・25%以上
・6ヶ月以上
所有
上記以外
特定外国子会社
配当
等に該当
特定外国子会社
等に該当しない
(特定外国子会社等)
この特定外国子
会社等が有する
他の子会社が、
同じく特定外国
子会社等(適用
除外を満たさな
い 場合)に該 当
し、合算 課 税を
受けた所得から
の配当が該当
ら充てるものとされた配当等の額の合計額
② 配当可能金額
配当可能金額とは、特定外国子会社等の各事
業年度の適用対象金額に次の(イ)から(ニ)まで
の金額を加算し、(ホ)および(へ)の金額を控除
した残額
【図3】 受取配当の除外(原則)
(イ)基準所得金額の計算にあたり控除された
他の子会社からの配当等の金額
(他の子会社)
(特定外国子会社等)
配当
(ロ)合算課税を受ける内国法人に係る他の特
・25%以上
基準所得金額
・6ヶ月以上
の計算上減算
定外国子会社等から受ける控除対象配当等
所有
配当
の金額
上記以外
基準所得金額
(ハ)当該特定外国子会社等と取引を行う親会
を構成
① 控除対象配当等の額 社たる内国法人が移転価格税制の適用を受
控除対象配当等の額とは、他の特定外国子会
けたことにより減額される所得の金額(内
社等の課税対象金額の生ずる事業年度の所得か
国法人に支払われない部分に限る。)
らされる配当等をいい、端的には合算課税の対
【図2】
本邦法令に基づく基準所得金額の計算
(ニ)剰余金の処分により支出される金額(法
象となる(又はなった)特定外国子会社等の所
人所得税および配当金以外。したがって利
法人税法・措置法により
得からされた次の配当等となる。つまり、適用
計算される所得
益処分による役員賞与などが該当)
除外となった事業年度の所得からされる配当等
は対象とならないと考えられる。
(措令39の15①一)
20
(加算)納付法人所得税
(措令39の15①二)
No.469 2012.10.1
(減算)還付法人所得税
(措令39の15①三)
(ホ)法人所得税および配当金以外で、当該事
業年度の費用として支出されたが損金の額
日本本
商流
(
関連会
(シンガポー
商流
(購入
製造会
(インドネ
に算入されなかったため適用対象金額に含
まれた金額(いわゆる損金不算入の役員賞
与、交際費などが該当)
5
現地通貨による計算
特定外国子会社等の基準所得金額を計算する
③ 出資対応配当可能金額
場合には、特定外国子会社等それぞれが会計帳
出資対応配当可能金額とは、特定外国子会社
簿の作成にあたり使用している現地通貨表示に
等の配当可能額に他の特定外国子会社等の有す
より計算することとなる(措通 66 の 6 - 9)。
る当該特定外国子会社等の株式の数又は金額の
これは、実務上の便宜性および次の適用対象金
割合を乗じて計算した金額
額の計算における前 7 年の繰越欠損金の処理に
関して為替差損益の影響を避けるためである。
4
計算方法の継続適用
なお、本邦法令に準じて計算する場合や、現
地法令による所得の金額に加える調整において
特定外国子会社等の基準所得金額の計算は、
必要となる日本円表示の基準金額(たとえば交
本邦法令に準じて計算する方法を原則とし、現
際費等の損金不算入)については、内国法人が
地法令に準じて計算する方法は例外的方法とし
特定外国子会社等の課税対象金額の円換算にあ
て選択できることになる。この選択にあたって
たり適用する為替相場を用いて現地通貨表示に
は、最初に基準所得金額を計算する際に特に別
換算した金額により計算することとされてい
途の手続きを行う必要はなく自由に選択するこ
る。具体的には、特定外国子会社等の事業年度
とができるが、いったん選択した方法は継続し
終了の日の翌日から 2 ヶ月を経過する日におけ
て適用する必要があり、事業年度ごとに有利な
る電信売買相場の仲値であり、継続適用を条件
方法をとることは認められていない。ただし、
として、内国法人の事業年度終了の日の値を使
選択した方法を変更する必要がある事態に至っ
用することも認められている(措通 66 の 6 -
た場合には、あらかじめ納税地の税務署長の承
14)。ただし、この場合には全ての特定外国子
認を得ることにより、準拠する計算方法を変更
会社等につき、事業年度終了日の値を使用しな
することができる(措令 39 の 15 ⑨)
。
ければならない。
記事に関連するお問い合わせ先
記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容を
お伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:[email protected]
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
No.469 2012.10.1
21
Fly UP