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緩い砂模型斜面の浸透による破壊実験 Model test of loose sand for
緩い砂模型斜面の浸透による破壊実験 Model test of loose sand for slip failure induced by seepage ○堀俊和 * 毛利栄征 * 松島健一 * HORI Toshikazu * , MOHRI Yoshiyuki * and MATSUSHIMA Kenichi * 130 1.はじめに 50 築造年代が古い農業用ため池は、 DV5 Loose sand DV4 締固めが不十分なものが多く、豪雨時にすべり破 DH4 DV3 壊が発生する事例が見られる。本研究では、緩い EP5 W.L.=40 80 砂模型を作成して浸透実験を行い、模型内のサク ションおよび模型表面の変位を詳細に測定し、破 DH3 DV2 PS8 PS7 PS6 PS5 PS4 PS3 EP3 PS2 EP2 PS1 DH2 DV1 EP4 W.L.=20 壊に至るメカニズムについて検討を行った。 DH1 W.L.=0 2.実験方法 EP1 W.L.=0cm Fig.1 に実験に用いた模型の形状を示す。模型の 奥行きは 150cm である。底面から 20cm 部分は霞 Dense sand Fig.1 ヶ浦砂を良く締固めて基盤とし、その上に同じく 霞ヶ浦砂を用いて緩詰の斜面を作成した。緩詰の Drain 模 型 形 状 お よ び セ ン サ ー 配 置 単 位 :cm Model and distribution of sensor 斜面部の含水比、乾燥密度と霞ヶ浦砂の物理的性質を Table1 に示 Table1 材 料 ・ 模 型 の 性 質 Properties of sand and model Fig.1 に示す PS1∼PS8 にテンシオメータ、DH1∼DH4 に水平方向 w (%) Kasumigaura sand 7.1 の変位計、DV1∼DV5 に鉛直方向の変位計を設置した。水位は基 ρd (g/cm 3 ) 1.403 盤面(緩詰砂と密詰砂の境界面)から水面までの距離で示してい Dr (%) 1.0 D50 (mm) 0.2998 Gs (g/cm 3 ) 2.715 す。また下流法尻には浸食防止用のドレーンを設置している。 50 (b) 40 (c) (d) (e) (f) 30 20 Pore water pressure and suction (kPa) Water pressure at the tank(kPa) る。始めに、上流側水位を 20cm、下流側の水位を 0cm まで上昇 4.0 (b) 2.0 0.0 10 PS1 (d) (e) (f) PS4 -2.0 PS7 -4.0 0 (a) 250 0 -6.0 500 750 1000 1250 0 T ime (min) Fig.2 上 流 側 水 位 の 時 間 変 化 Record ofwater level at the upper stream tank 2.0 (b) (c) 0.0 DH1 (d) (e) (f) DH3 -2.0 -4.0 -6.0 0 (a) (c) 250 500 750 T ime (min) (d) 1000 Fig.4 水 平 変 位 の 時 間 変 化 Record of lateral displacement (e)(f) 1250 (a) 250 500 750 T ime (min) 1000 1250 Fig.3 サ ク シ ョ ン ・ 間 隙 水 圧 の 変 化 Record of suction and pore water pressure 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 -2.0 (b) Vertical displacement (mm) Lateral displacement (mm) (c) sand type (c) (d) DV DV3 DV1 0 (a) 250 500 750 T ime (min) (e) (f) 1000 1250 Fig.5 鉛 直 変 位 の 時 間 変 化 Record of vertical displacement [ *農 業 工 学 研 究 所 ][ *National Institute for Rural Engineering][ た め 池 ,す べ り 破 壊 ,浸 透 ,飽 和 コ ラ ッ プ ス ] させ、定常浸透状態となるまでこの水位を維持した。定常浸透状態の後、上流側水位を 40cm まで一気に上昇させて模型斜面を崩壊させた。Fig.2 に上流側水位の時間変化を示す。 3.実験結果 Fig.3 に模型内の間隙水圧の変化を示す。また、Figs.4,5 に模型表面の水 平変位、鉛直変位の一例を示す。また Figs.2∼ ∼ 5 中に点線で示す(a)初期状態、(b)水位上昇 開始 15 分後、(c)200 分後、(d)1000 分後、(e)1200 分後、(f)1230 分後の時点での間隙水圧 分布と変位を Fig.6(a)∼ ∼ (f)に示す。変位は大きさを 20 倍としたベクトルで示している。 Fig.6(a)は模型を作成して約 12 時間経過後のサクション分布である。上流側水位を 20cm 上 昇 さ せ る ( Fig.6(b)、(c)) と 、 模 型 の 天 端 及び 法 肩 は 沈 下 し な がら上 流 側 へ と 傾 く よう に変形していることが分かる。更に模型内に浸透が進むと、下流法尻部分が法先方向へと 変形しはじめ、天端にヘアークラック(crack1)が生じた(Fig.6(d))。次に水位を 40cm に 上昇すると、試験開始後 1200 分および 1230 分で、Fig.6(e)、(f)に示すように、下流斜面上 段に 2 本目(crack2)、中段に 3 本目のクラック(crack3)が生じた。クラックは引張によ るものであり、時間の経過とともに開口幅が拡大した。試験開始後 1236 分後、下流法尻部 分の変形が進行し、Fig.7 に示すように crack2 から法先にかけてのすべり崩壊が発生した。 4.考察 本実験から、緩い砂模型の場合、浸透に伴って天端及び法肩部分が上流側に 傾くように変形・沈下し、下流法尻部分は法先方向へと変形することが分かった。更に、 変形に伴って、引張クラックが生じ、クラックを起点として下流法先を通るすべり破壊に 進展することが分かった。このような変形は飽和に伴う飽和コラップスと下流斜面のせん 断変形によって生じるものと考えられる。Kohgo(1997) はアースダムの解析結果を行い、初期湛水に伴う飽和 Slip surface コラップスによって、上流側への回転変形が生じ、ク レスト付近に引張クラックが生じる可能性があると述 べているが、本実験結果はこの解析結果と同様な結果 となった。ため池のような締固め度が低い土構造物で は、降雨や貯水からの浸透によって発生する飽和コラ Fig.7 ップスが崩壊に関与する可能性があることが分かった。 -3.0 -3.0 -3.0 -2.5 -2.5 -2.0 -2 .0 -1.0 0.0 .0 -1 0.0 -2.0 (a)試 験 開 始 0 分 ・ 初 期 状 態 崩壊後の模型断面の形状 Shape of model failure -2.5 1.0 (b)試 験 開 始 15 分 後 ( 水 位 20cm) (c)試 験 開 始 200 分 後 ( 水 位 20cm) crack1 crack1 -3. 0 -2 .0 -1.0 - 2 .0 -3 .0 crack2 0.0 1.0 2.0 3.0 -1.0 0.0 1.0 (d)試 験 開 始 1000 分 後 (水 位 20cm) (e)試 験 開 始 1200 分 後 (水 位 40cm) crack1 -1.0 -2 .0 crack2(open crack) crack3 0.0 1.0 2.0 3.0 (f)試 験 開 始 1230 分 後 (水 位 40cm) Fig.6 模 型 斜 面 の 間 隙 水 圧 ・ サ ク シ ョ ン の 分 布 と 変 位 Distribution of suction, pore water pressure and displacement 単 位 :kPa 参 考 文 献 : Yuji Kohgo(1997):Method of analysis of saturation collapse behavior, JIRCAS Journal No.4,p1-28