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衛星海面高度計データ処理の概要

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衛星海面高度計データ処理の概要
Vol.26,2
00
8
海洋情報部技報
衛星海面高度計データ処理の概要
工藤宏之:海洋研究室
Satellite Altimeter Data Processing
KUDO Hiroyuki : Ocean Research Laboratory
し,バイナリファイルを読み込んで,必要なデータ
1 はじめに
を抽出し,1行1レコードのタブ区切りフォーマッ
衛星海面高度計データと高精度のジオイドデータ
トで出力するように改造した.具体的には nrtssha_
(笹原ほか2
00
6)を組み合わせることにより,広範
dump.c を書き換える.抽出するデータは,サイクル
囲の力学的海面高度を準リアルタイムで求めること
番号,パス番号,レコード番号,経度,緯度,日付,
が可能となった.力学的海面高度の分布を知ること
海面高度偏差(SLA,Sea Level Anomaly)
,平均海面
により,黒潮,暖水渦,冷水渦などの海洋現象の位
高度(MSS,Mean Sea Surface)の8項目である.
置を把握することが可能となる.本稿では,流況把
抽出したデータはデータベースに登録して管理す
握の基礎となる力学的海面高度分布図の作成につい
る.使用しているデータベースはフリーソフトの
て,データの取得から,データ処理,図化するまで
PostgreSQL で あ る.ジ オ イ ド 高 デ ー タ も デ ー タ
の工程を解説する.
ベースに登録する.海面高度計データをデータベー
スに登録する際,経緯度から1分メッシュのメッ
2 PO. DAAC データの処理(JASON 1)
シュ番号を計算する.
人工衛星 JASON1の NRTSSHA(Near Real Time
第1図にデータベースの ER 図(entity-relationship
Sea Surface Height Anomaly)データを NASA(Na-
diagram,データモデルを表現した図)を示す.デー
tional Aeronautics and Space Administration,アメ
タテーブルは NRTSSHA とジオイド(Geoid)の2つ
リカ国立航空宇宙局)の海洋データ公開機関 PO.
である.
DAAC(Physical Oceanography Distributed Active
登録した海面高度計データの海面高度偏差と平均
Archive Center)の HTTP サーバ aspera.jpl.nasa.gov
海面高度から,基準楕円体からの海面高度を計算
からダウンロードする.ホームページ http : //aspera.
し,メッシュ番号の一致するジオイド高度を引い
jpl.nasa.gov/download/pub/sea_surface_height/ja-
て,力学的海面高度を計算する.
son/j1_nrtssha/data/以下の HTML ファイルを解析
3
して新しいファイルをダウンロードする.だいたい
AVISO データの処理(JASON 1, ENVISAT,
GFO)
2,3日遅れのデータを取得できる.
ダウンロードしたデータファイルはバイナリファ
PO.DAAC のデータが取得できないとき,または
イルである.データ処理を行うのに便利なように,
不良データが含まれるときは,かわりに CNES(Le
一度アスキーファイルに変換する.データをアス
Centre National d’Etudes Spatiales,フランス国立宇
キー表示するプログラムが FTP サイトにあるので
宙研究センター)が提供する海洋データアーカイブ
(ftp : //podaac.jpl.nasa.gov/near_real_time/ocean_
AVISO(Archivage, Validation et Interprétation des
topography/j1_nrtssha/software/c/),ダウンロード
données des Satellites Océanographiques)のデータ
― 41 ―
Vol.2
6,200
8
海洋情報部技報
を使う.4,5日前のデータを取得できる.データ
ファイルは FTP サイト ftp.cls.fr からダウンロードで
参
考
文 献
きる.人工衛星 JASON1,ENVISAT,GFO のそれ
笹原昇,矢沼隆,矢吹哲一朗:日本周辺における海
ぞれの最新のデータファイルが,res_oer_j 1_latest.
域ジオイドモデルの決定,海洋情報部研究報
nc.gz,res_oer_en_latest.nc.gz,res_oer_g2_latest.
告,4
2,3
9
‐4
7,
(20
06)
.
nc.gz のファイル名で置いてある.
Wessel, P. and W.H.F. Smith : New improved ver-
ダウンロードしたデータファイルはバイナリファ
sion of the Generic Mapping Tools released,
EOS Trans. AGU,79,5
79,(19
98)
.
イル(NetCDF ファイル)である.1行1レコードの
アスキーファイルに変換するプログラムが FTP サ
Hernandez, F. and P. Schaeffer : The CLS01Mean
イトにあるので,これ(ftp : //ftp.cls.fr/pub/oceano
Sea Surface : A validation with the GSFC
/AVISO/software/PublicReadDelibery.tar.gz)をダウ
0
0.
1 surface,
ンロードし,コンパイルして使用する.
com / documents / donnees / produits / aux-
データベースを使ったデータの管理は行わない.
データベースは平均海面高度,ジオイド高度の加減
算に使うのみである.
第2図 に デ ー タ ベ ー ス の ER 図 を 示 す.デ ー タ
テーブルは衛星海面高度計データの一時テーブル
(Temporary)と,平均海面高度(MSS, CLS 01, Hernandez and Schaeffer 2001)
,ジオイド(Geoid)の
テーブルの3つである.
海面高度偏差にメッシュ番号の一致する平均海面
高度を加えて基準楕円体からの海面高度を計算し,
同じくメッシュ番号の一致するジオイド高度を引い
て,力学的海面高度を計算する.
4 作図
計算で求められた力学的海面高度分布を図で表現
するのには,GMT(Generic Mapping Tools, Wessel
and Smith19
98)の psxy コマンドの矢付の描画(−
Sv オプション)を使う.力学的海面高度を矢付の長
さで表現する.JASON 1の場合,Ascend(北上)軌
道のデータは矢付の角度を−30度にして色は赤で表
現し,Descend(南下)軌道のデータは矢付の角度
を30度にして色は青で表現する.作図例を第3図に
示す.使用するデータは最新3日分のものである.
1週間分のデータを空間内挿した分布図も参考資
料として作成する.内挿には GMT の nearneighbor
コマンド(nearestneighbor 法)をもちいる.作図例
を第4図に示す.
― 42 ―
http : //www.jason.oceanobs.
iliaires/cls 01_valid_mss.pdf,(2
0
01)
.
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00
8
海洋情報部技報
NRTSSHA
Temporary
Geoid
Cycle No.
Cycle No.
Mesh No.
Pass No.
Geoid
Pass No.
Record No.
Geoid
Record No.
Date
Longigude
Latitude
Mesh No.
SLA
MSS
Mesh No.
Date
Longigude
Latitude
Mesh No.
SLA
MSS(CLS01)
Mesh No.
MSS
第1図 PO.DAAC データの ER 図
Fig.1 ER Diagram for PO.DAAC Data.
第2図 AVISO データの ER 図
Fig.2 ER Diagram for AVISO Data.
j1_2007-11-2_2007-11-4
SSDH_2007-10-29_2007-11-4
135˚
140˚
145˚
150˚
155˚
160˚
165˚
50˚
120˚
50˚
125˚
130˚
135˚
50˚
140˚
145˚
1m
1500
160˚
165˚
50˚
3000
Contour Interval 250mm
CAUTION : This figure includes old data.
45˚
155˚
(mm)
0
45˚
150˚
500
130˚
50
0
125˚
50
0
120˚
Geoid
45˚
45˚
500
40˚
40˚
40˚
35˚
35˚
35˚
35˚
30˚
30˚
30˚
25˚
25˚
25˚
20
00
00
20
40˚
30˚
20
00
2000
25˚
20
00
20˚
120˚
These data were obtained from AVISO
125˚
130˚
135˚
140˚
145˚
150˚
155˚
160˚
20˚
0
2002000
20˚
165˚
120˚
第3図 JASON1航跡下の力学的海面高度
Fig.3 Sea Surface Dynamic Height along Track
of JASON 1.
― 43 ―
These data were obtained from AVISO
125˚
130˚
135˚
140˚
145˚
150˚
155˚
160˚
第4図 力学的海面高度分布図
Fig.4 Sea Surface Dynamic Height Map.
20˚
165˚
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