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第10次治水五箇年計画

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第10次治水五箇年計画
第10次治水五箇年計画
( 平成19年度~平成23年度 )
~次世代に恵み豊かな河川を引き継ぐために~
京都市建設局
目
次
計画策定の趣旨
1
概念図
7
目
8
標
①
水循環の一翼を担う川
人類の生存に欠かすことのできない貴重な水は,刻々と姿を変えながら,
私たちの住む地球をめぐっています。太陽に温められた海水は,水蒸気とな
って大気中を漂いながら雲として塊になり,それが雨や雪となって地上に降
り注ぎます。その一部は地表から地中に浸透して地下水となり,一部は地表
の水が集まって川として海へ向かいます。この地球に水と太陽がある限り,
この循環は,永遠に繰り返されます。
地球上の水循環
山に降った雨は,渓流となって山の斜面を下り,いくつもの流れと合流し
ながら次第に大きな川となって海へと向かいます。その過程において,上流
部では渓谷を築きながら山肌や川底の土砂を削り取り,それらを下流へと運
搬します。そして,川の流れが緩やかになる下流になるとその土砂は,下流
域に沈んで堆積し,人類の生活環境として最も適している「沖積平野」が形
成されます。このように川は,海へ注ぐ間に「侵食,運搬,堆積」の働きを
しています。特にこの「運搬」の働きにおいて,川の水は,栄養分とともに
さまざまな生物の体内に取り入れられ,その生命を支えています。また,人
間を含む全ての生物の生命維持に必要な飲料水を提供するだけでなく,人間
が快適に暮らせる場所を築造し,地表の気温を低下させるなどの働きもあり
ます。
このように水循環の一翼を担う川は,人類の誕生以来,人間の暮らしと深
く関わり続けています。
-1-
②
歴史から見る川との闘い
京都は,市街地の三方を取り囲む山々と
一体となった水辺の風景が特徴のひとつとな
っています。「鴨川」や「桂川」などの名称
は,それだけで京都を連想させます。京都に
は水に関わりのある神社・仏閣・行事が数多
く,食文化においても良質な地下水と密接に
繋がっており,日常の生活の中で水に求めら
れる重要性は,非常に高いものとなっています。
桂川:嵐山の渡月橋
今から1200年余り前の平安京遷都の理由のひとつには,この地が都とし
て建都できるだけの水資源が豊かであったことにあります。右京に桂川,左京
に鴨川が流れ,扇状地を形成し,そこでは地下水が豊富に得られました。しか
し,都としての規模においては,当時の河川の位置が不適当でありました。こ
のため,造営に先立って河川の流れを変え,かつ河川の数を整理することが必
要となり,相当に大規模な河川の改修や整備を行いました。
また,豊臣秀吉は,都市改造の一環とし
て,外的の襲来に備える防塁及び周辺の川
お
ど
い
の氾濫の対策を目的とする「御土居」と呼
ばれる土の山を市内側に延々と築きました。
現在の地名にも残っていることからも判る
ように大規模な築造工事でした。このよう
に歴史的な観点からも京都の文化は,川と
大宮御土居
深い関わりを持って育まれてきました。
恩恵を与える一方,京都の川は,度重な
る洪水という形で京都に水害を与え続けて
きました。白河天皇が嘆いた「賀茂の水・
すごろく
さい
山法師・双六の賽」からもわかるように当
時,水量の豊かな賀茂川は,堤体の決壊を
引き起こす大変な暴れ川だったのです。こ
のような氾濫による被害を少しでも軽減し
昭和 10 年 京都大水害
(三条大橋)
いせいしゃ
ようと,時の為政者達は,さまざまな治水対策を講じてきました。平安京遷都
以来,京都のまちづくりの歴史は,水害との戦いの歴史であったともいえます。
-2-
時代が進み,京都が近代化され,都市として整備される中で川との関わりに
変化が生じてきました。そう遠くない昔,まだ田畑や雑木林が多かった頃,雨
水は,地下に浸透することで自然の水循環のバランスが保たれていました。し
かし,都市化が進み,市街地が周辺部へ拡大するのに伴い,水との関わりも変
化して様々な水問題が発生しています。
地表がコンクリートやアスファルト舗装に
覆われてしまい,そのために,台風や集中
豪雨の時などに降った雨は,地下に浸透せ
ず,舗装された地表を流れ,一気に河川や
水路に流入するようになりました。この結
果,それらの容量を超えた水は,短時間のうちに河川等から溢れ出し,住宅に
浸水するという局所的な氾濫による水害が頻発するようになりました。つまり,
過去の河川の氾濫は長時間にわたる相当の降雨量によって広大な面積に及ん
だものでしたが,現在の氾濫は短時間に集中的な雨量によって局所的な発生へ
と変化しています。
現在では,河川改修や下水道整備が進み,計画的な雨水対策により,大規模
な水害の発生は,減少してきています。しかし,短時間的で局所的な豪雨時に
は,依然として現在でも浸水被害が頻繁に発生しています。
③
河川に求められる役割(総合治水)
現在までの河川整備や改修の事業は,河
道の改修を進める「治水施設としての整備」
が中心でありました。原因や形態は別にし
て,河川の氾濫に対処するために河川を治
水施設として整備することは至極当然の手
法なのであります。しかし,その技術や工
法が進化し,一定の対策が進んだ現在では,
治水に対する新しい考え方が二つ生まれて
きました。その一つが「流域対策」です。
それは,調整池に雨水を貯めて時間をずら
して少しずつ川に流す雨水貯留という手法
が第一に挙げられます。第二には,駐車場,
道路や歩道などの舗装を浸透性のある素材
-3-
総合治水のイメージ図
にして雨水を地下に浸透させる手法です。このような手法によって流域全体の
保水・遊水機能を高めることで,溢水などによる水害の危険度を低減させるこ
とを目的としています。
二つ目が「ソフト対策」です。川はあふれるもの,という先人たちの姿勢に
学び,それを前提として,被害を最小限に抑えるために,日頃から準備してお
こうという考え方です。具体的には,第一に警報避難システムの確立です。こ
れは,洪水ハザードマップなどによる避難ルートや場所等の情報を記載した地
図を作成することや情報の迅速かつ的確な伝
達方法を確立することです。さらには,浸水
想定地域や過去の浸水地域を公表し,情報の
公開と共有推進することも含まれます。第二
には,水防管理体制の強化があります。水防
団や消防団による河川の監視,日頃からの訓
練による迅速な対応などの方法で浸水被害の
防止に当たるものです。
④
新しい河川管理の考え方(治水から環境保全へ)
治水を重視した河川整備によって,それまでの川の表情は,大きく様変わ
りをしました。大量の水を一時でも早く下流に流すことを目的として整備さ
れた川は直線化され,護岸は川底も含め,コンクリートで覆われました。そ
の結果,川は,単なる排水路と化し,水の流れは単調になり,川のある風景
はその地域の景観との一体感を失いました。さらに,水辺に住んでいた多くの
生き物たちがその棲息場所を失いました。治水優先の河川整備は,貴重な生態
系を壊してしまいました。
この反省から,川そのものを自然の,景観の
一部として捕らえ,水辺に住む生物の多様性と
川の流れる地域の特性や景観に配慮した「多自
然川づくり」の発想が生まれ,今日では,それ
を積極的に取り入れた整備手法が生み出されま
した。これは,単なる治水だけを目的とした川
の整備ではなく,必要とされる治水上の安全性を確保したうえで,地域の景観
を損なわずに,多様な生き物にとって良好な棲息・生育環境を保全又は復元し
ようという考え方に基づいています。
-4-
⑤
京都市における河川整備計画
平成9年の河川法の改正により,国土交通省は,治水や利水が最優先だった
河川整備の手法を大きく見直し,川のある地域の自然環境や景観,親水性に配
慮した設計や施工方法を採用することを積極的に推進し始めました。また,具
体的な河川の整備計画については,地域の意見を積極的に取り入れる「住民参
加型」の手法を重視するようになりました。こうして,「多自然川づくり」が
河川整備の中心的手法へと変わってきたのです。
その一方で,地球温暖化等の影響により,過去において発生したことのない
ような集中豪雨が,現在頻繁に発生するようになりました。その結果,短時間
に多量の雨水が道路や河川などに集中することで新たな形の水害が発生して
いることも事実です。それは,都市化の進む市街地等では,地下鉄や地下街へ
の浸水であり,水路的河川や側溝から住宅などへの浸水であります。このよう
な事象から,より一層の治水・浸水対策を図る必要が逼迫することとなりまし
た。
このようなことから,京都市内の河川について,自然環境の保護,景観の保
全及び親水性の向上並びに水害の防止を目標として過去9次までの五箇年計
画に基づき,整備を進めてきました。
⑥
第10次治水五箇年計画
京都市では,「安らぎのあるくらし」「華やぎのあるまち」という目標を掲げ
て平成11年12月に市会の議決を得て策定された「京都市基本構想」を具体
化するための「京都市基本計画」を策定しました。さらに,京都市政の基本方
針であるこの構想の実現に向けて,平成14年5月に都市計画の基本方針とな
る「京都市都市計画マスタープラン」を策定しました。これは,市民や事業者
とのパートナーシップによるまちづくりの指針となっていて,現在,京都市は,
このマスタープランに基づく各施策を推進しています。
とりわけ,河川の整備に関しては,このマスタープランに掲げられた『第2
部全体構想2都市計画の目標Ⅰ都市の基盤を作る目標Ⅰ-2自然豊かで環境
負荷の少ない循環型都市をつくる』,
『同,目標Ⅰ-3安全で安心してくらせる
都市をつくる』及び『同,目標Ⅱ-2歩いて楽しい魅力的な京都のまちをつく
る』の3項目を実現させることが求められています。さらに,このマスタープ
ランに掲げられた「自然環境の保全」
,「京都の自然特性を踏まえた都市整備」,
「水辺環境の整備」,「総合的な治水対策の推進」及び「都市内河川の親水空間
-5-
の整備」という五つの具体的な目標に基づく方針及び京都市水共生プランを構
成する水に関する関連計画の一つの柱としての位置付けにより,京都市内を流
れる河川の多種多様な整備が求められています。京都市は,今後,次世代に恵
み豊かな河川を引き継げるように河川の整備を進めていかなければなりませ
ん。そのためには,前述の京都市における上位計画に基づく方針を十分に踏ま
えた河川の整備計画を策定し,これを確立させることが必要となります。
しかしながら,そのためには,単一年度での計画を作成しただけでことが足
りる訳ではありません。中長期的な視点を併せ持ち,毎年の本市の予算等の財
政状況を把握したうえで,効果的に,合理的に,かつ計画的に河川整備を推進
できる計画でなければならないのです。
また,実際に河川整備を推進するためには,国(国土交通省)と京都府とい
う上位団体の計画や意向及び補助金の配分状況をも踏まえ,整合性のある計画
を策定する必要があります。達成すべき河川行政の目標を定め,河川ごとに,
年度別,工種別及び予算別に区分し,さらには,整備期間,整備手法や工事内
容が一目で分かるように分類することが要求されるため,これに応えられる計
画でなければならないのです。そして,これに基づく国及び府への補助金の要
望を初め,必要な予算の確保を図るための基本的な計画という一面も併せ持た
なければならないのです。
京都市都市計画マスタープランに掲げられた方針を推し進め,その目標を達
成させ,かつ京都市水共生プランを具体的に実現させるため,平成19年度を
初年度とし,5箇年にわたり京都市の河川行政の根拠となるための第10次治
水五箇年計画を策定しました。
-6-
京
都
市
基
本
京都市基本計画
構
想
各区基本計画
分野別計画(京都市都市計画マスタープラン)
第10次治水五箇年計画
京都市水共生プラン
・京の環境共生推進計画
・京都市地球温暖化対策計画
・京都市水道マスタープラン
・京都市下水道マスタープラン
・京都市緑の基本計画
・京都市農村環境計画
・京都市森林整備計画
・京都市地域防災計画
・京都市防災水利構想
・その他の関連計画
-7-
平成19年度から23年度までの5箇年における治水計画の目標を,財政状況,
浸水被害状況及び各河川の整備率等を考慮し,以下のように設定します。
① 近年浸水被害が発生し,特に整備が急がれる河川の整備を優先的に進め,治
水安全度の向上に努める。
旧安祥寺川
溢水状況
第二太田川
② 現在実施中の都市基盤河川改修を促進する。
一級河川
西羽束師川支川
一級河川
善峰川
一級河川
有栖川
一級河川
新川
一級河川
白川
一級河川
旧安祥寺川
一級河川
西野山川
一級河川
長代川
一級河川
七瀬川
-8-
溢水状況
③ 普通河川においては,河川改修を促進させ,特に全体改修計画区間に対する
整備進捗率の高い河川の改修を完了させる。
④ 改修計画目標1時間降雨確率を,都市基盤河川においては全体基本計画で定
めた1/10,1/30及び1/50とし,普通河川においては1/10と
する。
⑤ 新規事業として,河川整備計画を新たに策
定する場合は,特に市街化地域においては,
国土交通省事務連絡「河川景観の形成と保
全の考え方」に基づき,それぞれの河川や
地域の特徴を踏まえつつ美しい河川景観の
形成と保全を目指すこととし,河川環境整
備事業を推進する。
堀川水辺環境整備事業イメージパース
・ 堀川水辺環境整備事業完成
・ 東高瀬川・白川の整備計画策定のための調査に着手
⑥ 京都市水共生プランの基本方針~流域全体を見据
えた治水対策~に基づき,河川整備の促進及び雨
水流出抑制対策として,雨水貯留・浸透施設の整
備を推進する。特に京都市などの公共施設におけ
る対策に取り組むとともに,開発行為における流
出対策も推進する。
-9-
⑦ 国土交通省事務連絡「多自然川づくりの基本指針」
をすべての河川における川づくりの基本とし,この
基本指針に基づき,善峰川・西高瀬川(有栖川工区)
において,上流から下流まで連続した美しい河川景
観の形成と保全を目指した「多自然川づくり」を推
進する。
⑧ 市民にわかりやすい河川行政の具体的な取組としてパンフレット,京都市政
出前トーク用(プレゼン)の説明資料を充実させる。
一級河川
七瀬川
一級河川
善峰川
一級河川
長代川
-10-
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