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違うってことは素敵ジャン ラズモフスカヤ・オクサナ 「お母さんの日本語
違うってことは素敵ジャン ラズモフスカヤ・オクサナ ・ ・ 「お母さんの日本語へたくそ」と娘にもろ言われてしまいました。 私は日本語能力はまあまあと思っていましたから「えっなぜ」と聞き返しました。 「私はニコニコしながらねえ・ねえ・と話すよ。お母さんが話す時アヤシイ顔するよ」 「あやしい顔って」 「変な顔だよ。アヤシイよ。」意味が分からなかったのであやしいを辞書で引くと「妖」と「怪」の二 つの字がありました。この二つを合わせるとナント「妖怪」になるではありませんか。ロシアの諺に 「子供の口から真実がでる」と言うのがあります。私自身気が付いていなかったのですが、私の本 当の姿は妖怪ママゴンなのかもしれません。子供は日本の社会の窓口です。この窓からは光も陰 もよく見えます。光と陰があってこそ立体的に日本が見えるように思います。 ある日、隣のクラスの男の子が娘にはさみを突きつけ「明日あったら殺すぞ」と言いました。私達 はパニクッてしまいました。関西で起こった事件が脳裏をかすめました。夫は学校へ相談に走り、 私はその子を待ち伏せして「なぜそんなこと言ったの」と問いただしました。少しずつ分かったこと は、その子はみんなからどこか違うと言う理由でいじめられていて、その腹いせにもっと違う外国人 ミラに牙をむいたのです。恐怖の後ろに寂しさが見えました。どの国でも、弱い立場少数民族の人 が迫害を受ける、そのような歴史の一ページを切り取った事件です。私はその子と話し合いました。 私たちがどんなに恐かったか、でも君をいなめないことを。私の父は「問題のおかげでアイデアが 生まれるのだから」と言っていました。問題が起こらないのは天国だけです。私はまだ行ったこと はありませんが、きっと退屈でしょうね。日本での生活は幸い毎日がトラブルの連続ですから退屈 しないですみます。私達に恐怖を与えた子は、今ではその子の方から大声で挨拶するようになり 恐怖のかけらもありません。 学校での出来ごとです。席替えがありました。娘の隣には「公平」と言う男の子が座ることになり ました。ところが「いやだ」「いやだ」と泣き叫ぶのです。わが娘は私に似てとても可愛くて、性格も 温和で泣き叫ぶほど嫌われる理由はありません。そこで、私達はこの状態を解消すべく、娘の誕 生日に公平君を我が家に招きました。当日彼はやってきました。しかし、私の家の前で立ったまま です。そして、公平ならぬゴネ平になりました。 「どうぞお入りください」 「やだ」 「ちょっとだけでもどうぞ」 「ばか」 「ケーキもあるわよ」 「く そじじ・はげくそ」 と辞書に載っていない生きた言葉を勉強する機会を与えてくれました。十五分 の攻防戦のすえやっとゴネ平は茶の間に納まりました。茶の間に座ったとたん普通の子供に変身 しました。そこで、私は恐る恐る「さっき、どうして入らなかったの」と尋ねました。ゴネ平君は「だって 髪の色や顔や目が違うから恐いんだもの」 「じゃ、今は」 「こわくない。ねえヘアートリートメントし たほうがいいよ」ですって・・・ ・・・。ヘアートリートメントをすれば、私の縮れた髪が日本人のよう なストレートヘアーになると思ったのでしょう。ゴネ平君ありがとう。 一か月後、公平君は「サハリンはロシアだよ。北海道に一番近いよ。」と小さな理解を元気な声 で私に教えてくれました。私は日本とロシアがウーンと近くなったような気がしました。 ある日、娘は本屋で「世界の人々」という絵本を見つけました。その本には「皆違っているすてき でしょう」と言うのです。娘は大事に本を抱えて学校へ持っていきました。そして、「皆で読んだよ。 皆分かって、違うことは素敵ジャンといってたよ。」と幸せ一杯の声で報告しました。 今、団子三兄弟が流行っていますが、娘にも三兄弟がいます。みらい、ミラ、みのり、同じ頭文字 ではじまる「ミーチャンズ三兄弟」です。私の隣の住人で、一緒にヌードになってお風呂へはいった り、文字通りの裸の付き合いをしていますから、ミラが外人だと言う意識は全くありません。国際化 と言う言葉をよく耳にしますが、現在の国際化は形式的なものです。これは国際化の入れ物、即ち 箱だと思います。箱も大切ですが、その中に入れる団子がもっと大切ではないでしょうか。一人一 人の関係です。それも一緒に串刺されて焼かれてお醤油を塗られた三兄弟ではなく、素材も(民 族)色も(はだの色)味も(考え方)違う新しい団子兄弟があったらもっといいのではないでしょうか。 ピロシキ団子やギョウザ団子もイケルと思いますよ。