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低歪・低ノイズ・低消費電力を実現した スイッチングアンプ
低歪・低ノイズ・低消費電力を実現した スイッチングアンプ 東洋大学 理工学部 電気電子情報工学科 准教授 佐野 勇司 1 研究背景 薄型テレビや携帯オーディオ機器などに搭載される 汎用オーディオアンプ ⇒ 小形低コスト化にむけて スイッチングアンプ(D級アンプ)が用いられる。 無駄な電力を消費せず発熱が小さいので小形回路で低コストに構成可能 (電源効率:アナログアンプ70%以下⇒90%程度) アナログアンプ スイッチングアンプ 発熱大 SP 発熱≒0 S1 LPF Q 電圧V VO1 入力信号 Vi 電流 I 発熱∝電力P=V×I S2 SP 電圧V 電流 I 電力P=V×I≒0 S:スイッチング⇒V≒0 or I≒0 2 従来技術とその問題点 しかし、スイッチングアンプの弱点 ①スイッチングによる高周波ノイズ抑制が課題 ノイズ対策部品(フィルタ・シールド部材):コストアップと小形化制約 ②大出力時に歪が増大 出力フィルタのインダクタの非線形性: 大形インダクタによるコストアップや大出力化制約 強力な負帰還を掛けた場合には音質の総合特性が低下 3 研究成果 スイッチングノイズと信号歪の両方を相殺する 新方式スイッチングアンプを開発 (パルス極性変調方式D級アンプ) 出願特許 ①特願2008−54722/特開2009−212902 「増幅器」 ②特願2010−67890 「増幅器」(未公開) 学会発表 ①2008年電気学会 東京支部埼玉支所研究発表会 O-1105 ②2008年電子情報通信学会 総合大会 A-1-22 ③2010年電子情報通信学会 総合大会 A-1-8 ④2010年電気学会 電子回路研究会 ECT- 09-46 4 従来方式スイッチングアンプの動作 従来方式D級アンプ IC化範囲 VOL 2 一般的は差動駆動方式(BTL)により高出力化 5 新方式スイッチングアンプの原理 パルス極性変調方式D級アンプ IC化範囲 入力アナログ信号の段階で信号反転 ・出力パワーを低下させずに出力パルスVoの振幅を半減 ・出力パルス周波数も2倍化してLPFの小形化可能 6 従来方式との構成比較 信号反転回路の位置を変えPWM回路(コンパレーター)を追加するのみで、 (IC化範囲なので低コストに改良可能) ノイズを半減 従来方式 IC化範囲 新方式 IC化範囲 7 ノイズ低減効果の解析 オーディオ信号成分 奇数次高調波成分 奇数次高調波の側波帯成分 偶数次高調波の側波帯成分 オーディオ信号成分 偶数次高調波の側波帯成分 奇数次高調波とその側帯波を排除して、 信号成分と偶数次高調波のみに抑制できる。 8 ノイズ低減効果の解析結果 従来方式のD級アンプの 周波数スペクトル 新方式のD級アンプの 周波数スペクトル 9 歪特性の解析結果 アナログ信号の段階で反転してからパルス変調して差動出力 ⇒ パルス変調過程で生じる偶数次歪を相殺 出力 Vo =A1Vi+A2(Vi)2+A3(Vi)3… +A(2n−1)(Vi) (2n−1) +A(2n)(Vi) (2n) 反転出力 -Vo =A1(−Vi)+A2 (−Vi) 2+A3 (−Vi) 3… +A(2n−1) (−Vi) (2n−1) +A(2n) (−Vi) (2n) 差動出力 Voー(-Vo)=2{A1Vi+A3(Vi)3…+A(2n−1)(Vi) (2n−1)} 偶数次歪が消滅して奇数次歪のみが残る 10 実測した回路基板 11 出力振幅の実測結果 差動出力電圧 従来方式 出力パルス電圧 新方式 15Vpp 30Vpp 出力パルス振幅が半減 (入力信号に応じて パルス極性も変調される) 入力オーディオ信号 12 ノイズ低減効果の実測結果解析 高調波ノイズスペクトル 新方式 従来比[dB] 基 本 波 −35.3 第2次高調波 −19.9 第3次高調波 −38.8 第4次高調波 −27.3 第5次高調波 −40.4 第6次高調波 −32.8 第7次高調波 −43.1 第8次高調波 −39.2 第9次高調波 −47.7 第10次高調波 −46.5 ノイズの実測結果においても、 奇数次高調波成分が35dB以上低減。 13 歪特性の実測結果 全高調波歪(THD)特性 信号周波数:1.0kHz , 歪測定周波数∼20kHz(10次歪) 14 研究結果 信号反転回路の位置を変更しPWM回路を追加するだけで、 スイッチングノイズと信号歪の両方を大幅に低減できる 新方式スイッチングアンプを開発。 (パルス極性変調方式D級アンプ) 利点 ・ノイズと歪を相殺する小規模低電力回路 ⇒小形化可能 ・低歪であり音質劣化させる強力な負帰還不要 ノイズフィルタによる音質劣化低減 ⇒音質の向上 ・低ノイズ ノイズ対策コストの削減 ⇒低コスト ・ICの簡単な設計改良のみで従来回路に適用可能。 ⇒開発期間短縮・開発コスト削減 IC化や共同開発して頂ける企業を募集しています。 15 新方式スイッチングアンプの特徴 1.ノイズと歪を相殺する小規模低電力回路。⇒小形化可能 2.低歪であり音質劣化させる強力な負帰還不要 ノイズフィルタによる音質劣化低減 ⇒音質の向上 3.電磁妨害の発生自体が半減すると共に、 パルス基本周波数が倍加してノイズフィルタも小形化可能。 ノイズ対策コストの削減。 ⇒低コスト 4.IC内の小信号回路部分を小改良するのみで 従来回路に適用可能。 ⇒開発期間短縮・開発コスト削減 16 想定される用途 1.携帯オーディオや携帯電話、ノートPCなどの 低消費電力機器 2.家庭用オーディオやフラットパネルディスプレイなどの 高音質で小形なオーディオ機器・映像機器 3.小信号回路とパルス回路が混在していたり、 多数のパルス・ディジタル信号が近接する情報機器や集積回路 17 実用化・活用が見込まれる分野・対象業種等 IC化や共同開発して頂ける企業を募集しています。 1.各種のAV製品・情報機器の製造業 (1)映像機器 (2)オーディオ機器 (3)携帯機器 (4)情報機器 2.キーデバイスの製造業 (1)集積回路 (2)パワー半導体 18 本技術に関する問い合わせ先 東洋大学 理工学部 電気電子情報工学科 准教授 佐野 勇司 E-mail [email protected] TEL(FAX) 049−239−1468 東洋大学 知的財産・産学連携推進センター TEL 03-3945-7564 19