Comments
Description
Transcript
ヒラタテクノス株式会社
企業新生に挑んだ MBO 企業 大阪府 ■世間は倒産企業と同一視。総合的な支援が求 中小企業支援センターによる支援 ! ○ められた ここがポイント タンク総合サービス業として再生しつつある 倒産企業MBOという信用、資金基盤がない中での事業計画、投資計画は、 実現性がまず優先される。実現可能性を目標に合うように絞り込んだ戦略と計 画でブレークスルーできた。 製品(上段)と工場 ■スタート時の苦労を乗り越え貯水タンクの総 合サービス業へ 貯水槽製造販売事業は、設備関連事業のうえ に成熟産業といわれている。さらに事業資産の 買い取りや、かつての仲間や関連企業を手助け するための負担もあり、黒字を計上したとはい え低収益であった。なおかつ、出身母体倒産に よるマイナスの影響を受け、信用面・経費面と いう二重の負担を抱えての事業展開には言い尽 ■倒産会社の経営資産を活かしMBO企業をスター トする くせない苦労が伴っていた。 新生ヒラタテクノスを名実ともに築き上げる 中小企業・ベンチャー総合支援センター近畿 ヒラタテクノスは、かつてビル、マンション向け貯 ため、2年目の14年秋に中期経営計画を策定し 水槽で関西を席巻した㈱ヒラタの社員が中心になっ た。保有している技術力を活かし蓄熱、新耐薬 て創業し、2年目にして10億円を売り上げる貯水槽の タンクに参入するとともに、設置実績を活かし 設計・製造・保守管理を営む貯水槽の総合サービス会 水道法改正に合わせた貯水タンクの総合メンテ 社である。出身母体の倒産企業MBOとして、社長はじ サービス「スーパーメンテ事業」を開始した。 め関係者がたいへんな苦労を伴ったケースであり、マ 従来のタンクメンテ事業は、受け身のために イナスの経営資産を払拭するための旧会社との完全 繁閑差が大きく、突発対応がもたらす高コスト 別離、そのための資金調達、体制固めでセンターの支 体制だったが、当社は計画メンテと生産組織化 援が成果を生んだケースである。 によって、コストを半減させる画期的なビジネ 平成11年7月、ヒラタは技術革新に失敗し、大手FR スモデルに革新した。待ちの受け身型企業から、 Pメーカーとの価格競争に破れて和議申請した。佐瀬 情報発信企業、業界革新事業、顧客利益提案型 現社長を中心に社員有志が貯水槽メンテ事業参入の 企業への変身である。15年春から発売を開始し、 ため、13年4月に倒産会社から関係会社株式を買い取 順調に契約を伸ばしてきている。 ったことから新会社は誕生した。社名変更のあと、タ 15年からは中期経営計画に従い、①貯水タン ンク販売代理店に進出し、給排水設備、貯水槽事業者 ク製造販売、②蓄熱・耐薬等高付加価値タンク、 免許を取得するとともに、13年10月、FRPタンク製造 ③タンクメンテサービスという相乗効果のある 用金型などの事業資産を買い取り、事業体制を整え 三本柱経営の事業戦略により、タンク総合サー た。 ビス業として収益基盤を固めた。さらに自社事 元社員13人が力を合わせ、倒産会社が設置した累計 業と環境保全との共存を図るため、FRPタンクを 20万台の貯水槽や、代理店などの経営資産を活かすと そのまま粉砕してタンクに活かす再生技術の開 ともに、一体構造の耐震タンクに注力し、実質創業初 発にも、産学連携により取り組んでいる。 年度の14年9月期には10億円近くを売り上げ、黒字を 計上した。 ヒラタテクノス株式会社 業種 :貯水槽等液体容器設計 当社だが、創業企業として資産・資金がないだ ・製造・保守・管理 けでなく、いまでも出身母体倒産のマイナス影 FRP 廃棄物の再資源化 響は大きい。世間からは倒産企業と同一視され、 本社所在地:大阪府大阪市 資金調達などの苦労は新興ベンチャー企業の比 資本金 :30,000 千円 ではなかった。さらに事業資産買い取り、引継 創業 :平成13年 4 月 ぎの過酷な費用負担と、当社の本社工場が母体 売上高 :962 百万円 代表取締役 からの賃借であったことも信用面・資金面・コ 従業員数 :14 名 佐瀬 得三 スト面の負担を加速させ、悪循環に陥っていた。 そこに債権者からの親会社への立ち退き要求 があり、必然的に当社は工場買い取りないし移 請負による製造業から“提案するサービス業”への体質改善を 転を迫られていた。その額3.5億円に上り、金融 図るため、保有する事業資産を活かすメンテナンス事業を提案し、 機関に当たるものの、実績、信用面から当然よ 15年1月、大阪府による経営革新企業認定を受けました。しかし い返事は一切もらえなかった。 ながら、出身母体の倒産等の影響は大きく、事業再構築の前提と 支援センターに相談があったのは、創業から なる資金調達では先行きのみえない状態に陥ってしまいました。 1年半が経ち、工場買い取りと移転という問題 中小企業・ベンチャー総合支援センターで、事業計画を再検討 に突き当たりながらも、金融機関に相手にされ し、実現可能な計画に組み直す指導をうけたことで、金融機関の ず、身動きがとれなかったときである。経営革 具体的な支援を受けることができました。それは事業再構築が一 新認定先保証制度を利用した融資話にも乗って 歩前進するだけでなく、急展開するきっかけとなりました。 くれない状況であった。 世間的には当然の成り行きで難しい問題であ ったが、戦略と佐瀬社長の考え方、仕事ぶりを 確認してみると、目処が立っている事業と信頼 に足る経営陣であることが確信できた。 そこでまず戦略面で、実績と信用の面から億 単位の資金調達はまったく望めないため、買い また商品力強化については、当センターの別の専門家 派遣先と専門家、その先の大手メーカー部隊と協力し、 貯水槽浄水システムの業務提携を進めている。 ■今年度から中核事業の拡充と相乗効果 取りから移転賃借への投資戦略見直しを勧める ヒラタテクノスは、 とともに、見通しのある現況と支援について取 シナジー効果を生かした、経営資源の拡充を進めます。 引金融機関の本部と支店長に支援を持ちかけ た。この策は現実的な賃借路線推進だけでなく、 マイナス影響を生む倒産母体から離れることを 意味していた。 次に完全別離を促進するため、管理体制や営 業、仕事の進め方などでの旧弊脱却が必要とな 貯水槽製造・ 耐薬タンク/氷蓄熱槽 貯水槽製造・ 販売 った、本社・営業所の大阪中心地への移転計画 立案、経理面や生産管理面、新工場建設計画面 を支援するために専門家派遣制度の利用を勧 め、内部からの体制固めと戦略の具体化、関係 者のベクトル合わせに務めている。さらに、主 要外注まで巻き込んだ支援が動きだしている。 貯水槽メンテ