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山形医学 2
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4
東北地方における血友病インヒビター調査のまとめ
東北地方における血友病インヒビター調査のまとめ
菅原宏文 1,2 ,鈴木宗三 1 ,惣宇利正善 2 ,小嶋哲人 3 ,一瀬白帝 1,2
1
東北止血血栓研究会血友病インヒビターワーキンググループ事務局
2
山形大学医学部分子病態学講座
3
名古屋大学医学部保健学科検査技術科学専攻
(平成2
3
年4月8日受理)
要 旨
【目的】東北地方においては、従来の調査で血友病の頻度は国内の他地域と同等であるに
も拘わらず、凝固第VI
I
I
/
8
因子インヒビターの発生は全国平均に較べて少なく、更に検
討が必要と考えられたので、新たに調査を行なった。
【方法と結果】 2
0
0
6
年調査の東北地方全患者数(合計4
0
1
名)の2
0
.
4
%にあたる8
1
例の調
査票が回収され、うち血友病A1
4
例について第VI
I
I
/
8
因子イントロン2
2
逆位を検索した。
出血症状等臨床所見は従来知られている所見と同様であった。凝固因子製剤による定期
補充療法は、重症度、年齢層を問わず約5
0
%の例で行われており、全国と同様の普及が
見られた。インヒビターの保有率は全血友病患者の9
.
9
%、血友病A患者の1
1
.
9
%、血友
病A重症型の1
9
.
5
%であり、全国と同等の結果であった。第VI
I
I
/
8
因子イントロン2
2
逆
位は検索し得た血友病A症例の2
9
%に認められ、少数例の検討であるが、全国とほぼ同
等の結果であった。インヒビター症例では検索し得た2例中1例に認められた。
【結論】今回の調査ではインヒビターの保有率、代表的な第VI
I
I
/
8
因子遺伝子異常の保有
率とも東北地方の地域的特異性は認められず全国とほぼ同等であり、同レベルの医療が
保証されていると思われる。
キーワード:血友病、調査票、インヒビター発生率、第VI
I
I
/
8
因子遺伝子イントロン2
2
の逆位
地方においては血友病の頻度は国内の他地方と
同等 2,3)であるにも拘わらず、インヒビター保有
Ⅰ.緒 言
率は、全国平均の約3%に対して1%前後4) と
血友病の補充療法に伴うインヒビター(以下
低く(表1)
、何らかの地域的特異性の存在の可
インヒビター)の発生は、本症治療上の大きな
能性も含めて更に調査検討が必要と考えられた。
1)
問題の一つである 。インヒビターの保有率は、 血友病Aで最も特徴的な第VI
I
I
/
8
因子の遺伝
国、人種、施設等によって異なった数値が報告
子異常はイントロン2
2
の逆位5) で、重症型の約
されているが、2
0
0
4
年のデータによれば、東北
4割6) に検出され、この他には欠失やナンセン
別刷請求先:一瀬白帝(山形大学医学部分子病態学講座)〒9
9
0
-9
5
8
5
山形市飯田西2-2-2
―3
7―
菅原,鈴木,惣宇利,小嶋,一瀬
表1 東北地方における血友病患者数、有病率、およびインヒビター保有率
*
1人口動態調査 2
0
0
2総務省,
(千人),
*
2血液凝固異常全国調査,
平成1
4
年(2
0
0
2
)度報告書,エ
イズ予防財団,
*
3男性人口1
0
万人あたりの有病率,
*
4N社2
0
0
4
年次データ,血友病A,
Bをあわせた患者数
1
*人口動態調査 2
0
0
2総務省,
2
*血液凝固異常全国調査,平成1
4
年(2
0
0
2
)度報告書,
エ
イズ予防財団
ス点変異、ミスセンス変異などがある7)。イン
をはさむプライマーと、テロメア側に存在する
ヒビターは、血友病Aでは欠失例、ナンセンス
i
nt
2h-2,
-3の近傍の配列を用いたプライマーで
点変異など
8)
に、血友病Bでは遺伝子の欠損、
PCRを行い、正常の1
2
,
1
0kbのDNA断片を生じ
欠失例などに出現率が高い9) とされている。
るか、逆位例の1
1kbのものが増幅されるかに
我々は東北止血血栓研究会の中に東北血友病
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消化したゲ
よって遺伝子診断した。また、Bc
インヒビターワーキンググループ(HI
WG)を
ノムDNA検体のサザンブロットにより、正常の
発足させ、東北地方の血友病患者の実情やイン
2
1
.
5
,
1
6
,
1
4kbのDNA断片が検出されるか、近位
ヒビター保有状況を調査し、インヒビター保有
型逆位の2
0
,
1
6
,
1
5
.
5kb、あるいは遠位型の2
0
,
患者については2.症例の第VI
I
I
/
8
因子遺伝子
1
7
.
5
,
1
4kbのパターンとなるかによって判定した。
変異についても検討した。
なお、本研究は山形大学医学部倫理委員会の
承認を得てヘルシンキ宣言に従って実施された。
Ⅱ.対象と方法
Ⅲ.結 果
対象は東北6県に在住する血友病A、B症例
で、主治医に対して病型、重症度10)、出血頻度、 1.アンケートと臨床検査による調査結果
インヒビターの有無、出血の予防/治療方法な
1)症例数、重症度分類およびインヒビター
どをアンケート形式で調査した(図1)
。
の保有率
あわせて採取した血液検体の第VI
I
I
/
8
、第
調査票回収症例数は8
1
例(図2)で、2
0
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6
年
I
X/
9
因子活性、抗原量を測定して、更にインヒ
エイズ予防財団調査に11) よる東北地方症例数
(4
0
1
例)の2
0
.
1
%であった。血友病Aは6
7
例で、
ビター等の検査を行った。
今回の調査では、同意の得られた2
4
症例(血
重症4
1
例(5
9
.
7
%)
、中等症1
1
例(1
6
.
4
%)、軽症
友病A1
9
、血友病B5例)について検体のDNA
1
2
例(1
7
.
9
%)
、重症度不明3例(4
.
5
%)であっ
の抽出を行い、このうち血友病Aにつきサザン
た。血友病Bは1
4
例で、重症6例(4
2
.
9
%)
、中
ブロット法および特異的PCRを用いて第VI
I
I
/
8
等症3例(2
1
.
4
%)
、軽症2例(1
4
.
2
%)
、重症度
因子遺伝子(F8
)イントロン2
2
逆位について検
不明3例(2
1
.
4
%)であった。インヒビター陽
nt
22h-1
索した。F8
のイントロン2
2
に存在するi
性は8例(5BU/
ml
以上のハイレスポンダー4
―3
8―
東北地方における血友病インヒビター調査のまとめ
図1 調査票
図2 調査症例数および重症度分類
図3 調査症例の年齢分布
例、それ以下のローレスポンダー4例;BUは
2)年齢分布と重症度分類
Be
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の略でインヒビターの力価を表
苑年齢分布(図3)
す)で、全例重症型血友病Aであった。うち1
血友病Aでは2~5
6
歳、平均3
6
歳、血友病B
例は今回の調査で初めてインヒビターが検出さ
は2~5
9
歳、平均3
1
歳であった。
れた。インヒビター保有率は全血友病患者の
薗年齢と重症度(図4)
9
.
9
%、血 友 病 A の1
1
.
9
%、重 症 型 血 友 病 A の
血友病A、血友病Bとも比較的年齢の低い患
1
9
.
5
%であった。
者群は重症型が多く、軽症型は年齢の高い群に
―3
9―
菅原,鈴木,惣宇利,小嶋,一瀬
図6 重症度と定期補充療法の有無
多く含まれていた。
3)重症度と出血の頻度(図5)
血友病A、血友病Bとも重症度が高いほど出
血の頻度も高く、重症型では3~4回/月以上
の例が多くあり、中等症では1~2回/月以下
が多く、軽症型は1回/月未満であった。
図4 年齢分布と重症度分類
4)重症度と定期補充療法の有無(図6)
補充療法の方法について確認できた4
9
例中重
症例では3
1
例中2
0
例
(6
4
.
5
%)
で定期補充療法12)
が行なわれていた。他の例では約半数で行われ
軽症例でも施行例が見られた。
2.第VI
I
I
/
8因子イントロン22逆位の遺伝子診断
1)血友病A症例に於けるイントロン22逆位
の保有率
第VI
I
I
/
8
因子イントロン2
2
逆位は、解析可能
であった血友病A1
4
例中4
例(2
9
%)に認められ
た(表2)
。
2)血友病Aインヒビター症例に於けるイン
トロン22逆位の保有率
今回の調査でインヒビターの認められた8例
のうち症例5、
7の2例(いずれも血友病A、重
症型、
ロータイターの例)
についてイントロン2
2
逆位の解析が可能であり、症例5では遠位逆位
図5 重症度と出血の頻度
が認められ、
症例7には認められなかった
(表3)
。
―4
0―
東北地方における血友病インヒビター調査のまとめ
表2 血友病A症例に於けるVI
I
I
/
8
因子遺伝子
イントロン2
2
逆位の遺伝子診断
表3 血友病Aインヒビター症例とイントロン
2
2
逆位
日本における第VI
I
I
/
8
因子イントロン2
2
逆位
Ⅳ.考 案
の保有率については、重症型血友病Aの4
2
%に
認められたという報告8)がある。今回の調査で
今回の調査票回収患者数は、対象地域の推定
は血友病A患者のうちの1
4
例と検討症例が少な
患者数の約2
0
%であった。このうちインヒビ
いが、4例(2
9
%)にイントロン2
2
逆位が認め
ター保有患者は8例で、全て血友病A重症型で
られ、全国とほぼ同等の結果であった。血友病
あったので、非自己の第VI
I
I
/
8
因子製剤輸注に
Aインヒビター陽性例において検討した2例の
対する抗体の産生であるものと理解される。う
うち1例にイントロン2
2
逆位が認められ、血友
ち1例(表3、症例5)は今回初めてインヒビ
病A症例ではインヒビターは重度の分子欠損の
ター陽性が明らかになっており、症例の治療管
ある例に多い1)とされる報告と矛盾しない結果
理上、適宜検査する必要があると思われる。イ
であった。
ンヒビター保有率は全血友病患者の9
.
9
%、血友
重症度分類、出血症状、補充療法などの臨床
病A患者の1
1
.
9
%、血友病A重症型の1
9
.
5
%で
像では、出血症状は重症型で最も多く3~4回
あった。日本に於ける血友病A症例のインヒビ
以上/月、軽症例では1回以下/月と凝固因子
ター保有率は約5%、血友病B症例のインヒビ
欠乏の程度とよく合致した。定期補充療法は、
1
1
)
があり、東北
重症型、中等症型、軽症型とも約半数で行われ
地方の血友病患者の保有率は、薬剤販売数を元
ており、治療法の普及が進んでいることを示す
に推定された従来の調査では約1%4) など全国
結果であった。
ター保有率は約3%という報告
平均と比べて低かったが、アンケート形式で行
われた今回の調査では、調査症例数が推定患者
数
1
3
)
の約2
0
%であったことを考慮しても東北地
方おいてインヒビター保有率が低いとは言えな
近い将来、再びこのような調査活動を実施し
て、東北地方の血友病症例の実態を明らかにし、
そのQOLを高める努力を継続したい。
い結果であった。従って、東北地方の血友病症
例においてもインヒビター発生の可能性を念頭
に置く必要がある。
―4
1―
菅原,鈴木,惣宇利,小嶋,一瀬
宮城県
謝 辞
東北大学医学部 血液・免疫制御学分野
佐々木 毅
本研究は、東北止血血栓研究会の指導の下に
東北大学医学部 血液・免疫制御学分野
ノボ ノルディスク社からのご寄付で設立され
石川 正明
た東北HI
WG基金の援助で実施されたことを明
仙台血液疾患センター
鈴木 宗三
記して、関係者および研究協力者各位に感謝の
東北大学医学部 小児科
諏訪部徳芳
意を表する。第VI
I
I
/
8
遺伝子解析の一部には、
国立病院機構 仙台医療センター 内科
山形大学医学部生の石原志乃さんと田中圭一君
伊藤 俊広
の両名が貢献した。なお、研究結果の一部は第
国立病院機構 西多賀病院 内科
酒井 秀章
3
0
回日本血栓止血学会学術集会(2
0
0
7
年1
1
月、
国立病院機構 西多賀病院 内科
三浦 明
三重)にて発表した。
宮城県立こども病院 血液腫瘍科
今泉 益栄
f
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福島県
太田西ノ内病院 血液疾患センター
松田 信
東北血友病インヒビター調査
福島県立医科大学 小児科
鈴木 順造
Wo
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upメンバー
(2
0
0
4
)
福島県立医科大学 第一内科
七島 勉
青森県
(順不同、敬称略:所属は登録時のもの)
青森県立中央病院 小児/輸血科
立花 直樹
弘前大学医学部 第一内科
玉井 佳子
文 献
弘前大学医学部 保健学科 病因・病態検査学
高見 秀樹
1)瀧 正志:血友病患者のインヒビター.図説 血栓・止血・血管学(一瀬白帝 編著),東京,
中外医学社,2
0
0
5
;4
0
2
4
0
9
岩手県
岩手医科大学 血液内科
石田 陽治
大船渡病院 小児科
渕向 透
もりおかこども病院
高砂子祐平
盛岡赤十字病院 小児科
高野 長邦
2)人口動態調査,総務省,2
0
0
2
3)血液凝固異常症全国調査 平成1
4
年度報告書,
東京,財団法人エイズ予防財団,2
0
0
3
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年次データ
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秋田大学医学部 第三内科
三浦偉久男
国立病院機構 あきた病院 内科
間宮 繁夫
6
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4
1
A.
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2
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6)Fukuda K, Na
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3
0
3
3
0
6
公立置賜総合病院 内科
佐藤 伸二
東北中央病院 第四内科
林 朋博
7)He
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山形大学医学部 分子病態学
一瀬 白帝
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山形大学医学部 分子病態学
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2―
東北地方における血友病インヒビター調査のまとめ
1
)血液凝固異常症全国調査 平成17
年度報告書,
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東京,財団法人エイズ予防財団,2
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)血液凝固異常症全国調査 平成18
年度報告書,
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ABSTRACT
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4―
山形医学 2
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1
1
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9
(2
):4
5
-5
6
新しい赤ワインポリフェノール
強い内皮依存性血管弛緩作用をもつ
新たな赤ワインポリフェノールの特性
山崎理美,岩田宏紀*,村田恵理,片野由美,石幡 明
山形大学医学部基礎看護学
*
山形大学医学部分子病態学
(平成2
3
年5月7日受理)
要 旨
【背景】赤ワインに含まれる多種類のポリフェノール化合物(RWPCs
)は強い血管弛緩
作用を有する。RWPCs
中の血管弛緩作用を有するポリフェノールはいくつか報告されて
いるが、RWPCs
にはそれら以外にも未知の成分が多数存在することが知られている。本
研究では、血管弛緩作用を有する新たな赤ワインポリフェノールを探索し、その特性を
検討することを目的に、RWPCs
の比較的親水性の高い成分を分離・分画してから、敢特
に強い血管弛緩作用を有する分画を特定し、柑分子量の測定と構造の推定を行い、桓血
管弛緩作用の濃度反応曲線を作成し、作用機序を調べた。
【方法】敢RWPCs
のうち比較的親水性の高い成分を、高速液体クロマトグラフィーによ
り分画した。柑得られた各成分の血管弛緩作用は、ラット胸部大動脈を用いて検討した。
桓強い血管弛緩作用を惹起した分画について、MALDI
TOF型質量分析計を用いて質量
分析を行い分子量決定と構造の推定を行った。棺その分画の血管弛緩作用については濃
度反応曲線を得るとともに、血管内皮細胞の除去、NO・過分極因子・プロスタサイク
リンの阻害による影響を検討した。
【結果】RWPCs
の主要な血管弛緩成分のひとつとして知られているレスベラトロールよ
りも低濃度から弛緩作用を惹起する分画が得られた。その弛緩作用は内皮除去により消
失した。内皮細胞での作用機序を調べた結果、血管弛緩反応はNO合成酵素の阻害によ
りほぼ完全に抑制された。質量分析では3
4
6
9
Da
の分子量が検出され、解析の結果、糖鎖
を付加した配糖体であることが予測された。
【結論】今回得られた分画の成分は、RWPCs
が惹起する血管弛緩反応において主要な役
割を果たしている成分の一つである可能性が示唆された。分子量3
4
6
9
Da
のポリフェノー
ルが現在データベースにないことから、新規物質である可能性が示された。
キーワード:赤ワインポリフェノール、血管弛緩作用、高速液体クロマトグラフィー、
質量分析
別刷請求先:石幡 明(山形大学医学部基礎看護学)〒9
9
0
-9
5
8
5
山形市飯田西2-2-2
―4
5―
山崎,岩田,村田,片野,石幡
惹起されるのは、経口摂取では得られないほど
高い濃度からであった11)-13)。赤ワイン中にはこ
緒 言
れら以外の多様な成分もあり低濃度から血管弛
日本では死因の約3分の1が虚血性心疾患ま
緩反応が惹起されるポリフェノールも報告され
たは脳血管疾患によるものであり、その対策が
にはワインの発酵・
ているが11),14),15)、RWPCs
必要不可欠である1)。これらの循環器疾患の多
熟成時に産生される未知の成分や重合ポリフェ
くは動脈硬化が発症の基盤となっており、その
ノールも数多く存在することも知られており、
成因として糖尿病、高血圧症、血中脂質異常症
これらの血管作用についてはほとんど報告がな
といった生活習慣病が重要な役割を果たしてい
い。そのため、既知のポリフェノールに加え、
る2)。我が国では、動物性脂肪摂取量等が増加
未知のポリフェノールあるいは重合ポリフェ
するなどの食生活の欧米化に伴い、生活習慣病
ノールもRWPCs
の血管弛緩反応の一部を担っ
が増加し循環器疾患による死亡率が増加してい
ている可能性が予測されている。
1)
る 。
そこで本研究では、RWPCs
中の血管弛緩反応
ところがフランスでは、動物性脂肪の摂取量
を惹起する未知のポリフェノールを探索し、そ
が多いにも関わらず、他の欧米諸国と比べ、虚
の成分の特性を解析することを目的に、RWPCs
血性心疾患による死亡率が低いことが報告され
の親水性成分について成分を分離し、血管弛緩
〝Fr
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nc
hpa
r
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do
x〟
ている3)。この疫学的事実は、
反応を有する分画を探索した。その中で特に強
と呼ばれ、その後の研究により、赤ワインの摂
い血管弛緩作用を有する分画について、分子量
取量と虚血性心疾患による死亡率には負の相関
の測定と構造の推定を行い、血管弛緩作用の濃
があることが明らかになり、赤ワインに含まれ
度反応曲線を作成しその作用機序を検討した。
る多種類のポリフェノール化合物(Re
dWi
ne
Po
l
yphe
no
l
i
cCo
mpo
unds
;
RWPCs
)が冠血管疾
対象と方法
患の予防に寄与していることが示唆された4)。
我々も赤ワインの循環器疾患の予防効果に着
1.RWPCs
成分の分離・分画
目し、RWPCs
を単回投与した場合、摘出心臓の
従 来 当 研 究 室 で 用 い て き た 赤 ワ イ ン
5)
冠循環を改善させること 、内皮依存性血管弛
(CASTI
LLO DEARMOUR,
Ti
nt
o
,
Spa
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n)を凍
緩作用があること6),7)を明らかにしてきた。ま
結乾燥(FRD8
2
M,
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WAKI
,
J
a
pa
n)し、アルコー
た、RWPCs
を3か月間投与した食餌性高コレス
ルを除去した後に蒸留水で1g/
ml
に溶解した
テロール血症ラットの心臓では、冠循環改善効
ものをRWPCs
原液とした。RWPCs
原液を遠心
果が認められること8)、胸部大動脈では血管内
(1
2
0
0
0
r
pm,4℃、
1
0
分間)
して沈殿物を除去後、
皮細胞由来の一酸化窒素(NO)産生遊離機能
e
pha
r
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上 清 中 の 疎 水 性 成 分 をo
c
t
hyls
を高めること、RWPCs
の投与期間に従い血小板
(Pha
r
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af
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nec
he
mi
c
a
l
s
,
Swe
de
n)に 3
0
分間
凝集能は低下すること9) を明らかにしており、
吸着させることで、比較的疎水性の高い成分を
これらが心血管保護効果に寄与している可能性
除去した。RWPCs
成分を含む上清3
0
0
µl
を、
逆相
1
0
)
があること
を報告している。
高速液体クロマトグラフィー;r
e
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-
しかしRWPCs
では強い血管弛緩反応が惹起
7),8)
,1
1
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、赤ワインに含まれてい
HPLC)により分離し、それぞれの成分分画を
るカテキン、タンニン、レスベラトロール、ケ
回 収(分 取)し た。回 収 し た 成 分 分 画 は
ルセチン等の精製されたポリフェノールを用い
Spe
e
dVa
c
(AES1
0
0
0
,
Sa
va
nt
,
USA)で乾燥し、
た場合、RWPCs
でみられる強い血管弛緩反応が
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(TFA)と a
c
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r
i
l
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(Ac
CN)
されるのに対し
―4
6―
新しい赤ワインポリフェノール
を除去した。高速液体クロマトグラフィーシス
方 法 で 確 認 し た。す な わ ち、標 本 を 1µMの
テム(LC2
0
0
0Pl
us
、日本分光、大阪、J
a
pa
n)
phe
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c
hl
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de
(PE)で前収縮さ
を用いたRPHPLCは、移動相には平衡化バッ
せ た 後、1µMのa
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nec
hl
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de
(ACh)
ファーとしてA液(0
.
1
% TFA、水)
、溶出バッ
を投与し、4
0
%以上の弛緩反応が見られたもの
フ ァ ー と し て B 液(0
.
1
% TFA、 9
0
% Ac
CN、
を内皮細胞無傷標本、1
0
%以下しか弛緩反応が
水)を用いた。調整したRWPCs
成分を平衡化さ
みられなかったものを内皮細胞除去標本とした。
れたカラム(ODS1
2
0
T、東ソー、東京、J
a
pa
n)
3.RWPCs
成分の血管弛緩作用
に導入・吸着させ、流速0
.
5
ml
/
mi
nで溶出した
一回のHPLC分離で得られた各成分分画を乾
(溶出時間9
0
分)。溶出にはB液の混合割合を1
2
燥し、di
me
t
hyl
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xi
de
(DMSO) 1
0
µl
に溶解
~2
5
%のリニアグラジエントとした。カラムか
後、生理食塩液9
0
µl
で希釈した。各分画の血管
ら溶出された成分は、di
o
dea
l
l
a
y型可視・紫外
弛緩反応の強さを以下の方法で検討した。まず
多波長検出器(MD2
0
1
0Pl
us
,日本分光、大阪、
PE(1µM)で標本を前収縮させた後、RWPCs
J
a
pa
n)を用いて、2
0
0
nm~6
0
0
nmの光吸収を
から分画されたそれぞれの成分を投与した。PE
4nm、0
.
4
秒間隔で記録した。検出吸光波長は、 による血管収縮力を1
0
0
%とし、それぞれの標本
3
3
0
nm、2
8
0
nm、3
6
0
nmの3波長を用いた。光
での血管弛緩反応の大きさを求めた。各成分の
吸収特性は、コンピュータを用いてリアルタイ
弛緩反応の評価後、再度AChによる血管弛緩反
ムにモニターし、成分抽出時に各成分分画を分
応を測定して、内皮機能が維持されていること
取した。
を確認した。なお、AChによる弛緩反応が4
0
%
2.摘出血管標本の作製
以下だった場合は、実験中に内皮機能障害がお
5 ~ 6 か 月 齢 の 雄 性Fi
s
c
he
r3
4
4
ラットを
こったとみなして実験データから除外した。
エーテル麻酔下で頸椎脱臼後、速やかに胸部大
内皮細胞での作用機序を調べる実験では、
動脈を摘出した。摘出した大動脈を冷却した
ni
t
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La
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gi
ni
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NO 合 成 阻 害 薬 の NG-
t
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(LNAME)
、プロスタサイクリン
Kr
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He
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(KH)液(Na
Cl1
1
8
、KCl4
.
7
、 me
4
.
9
、MgSO4 1
.
2
、KH2PO4 1
.
2
、gl
uc
o
s
e
Na
HCO3 2
合成阻害薬のdi
c
l
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e
na
c
、過分極因子を阻害する
.
8(mM)
、pH 7
.
4
)に浸し雑組織
1
1
.
1
、Ca
Cl
21
ための3
0
mM KCl
それぞれ存在下で血管弛緩作
等を除去し、幅約2~3mm、直径約2~2
.
5
mm
用を測定した。各阻害物質はPEで前収縮させる
の血管標本を作製した。1個体から4
~8
本の血
1
0
分前から処置した。
管標本を得た。ただし、実験例数(n)は、実
4.質量分析
験動物 1個体から得られたデータを1例(n=
成分の分子量を測定し、分子構造を推定する
1)と数えた。標本を混合ガス(9
5
% O2
、5
%
た め、
ma
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pt
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CO2
)を通気したKH液(3
7
±0
.
1
℃)で満たし
z
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ght
(MALDI
TOF)型質量
i
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たo
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nba
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hに懸垂し、
1gの静止張力を負荷し、 分
析
装
置(Aut
o
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uke
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ni
c
s
,
1
5
分間隔で新鮮な灌流液と交換しながら1時間
Ge
r
ma
ny)を用いて質量分析を行った。まず、
安定させた。血管標本の収縮張力は等尺性張力
RPHPLCで分取した分画⑥の成分をマトリッ
トランスデューサー(7
T1
5
2
4
0
,オリエンテッ
クスと混合しターゲットプレート上で乾燥後、
ク,東京)を用いて測定した。それぞれの血管
質量分析装置に導入し、リニアおよびリフレク
+
標本の最大収縮力は6
6
.
7
mM KCl
液(高濃度K )
ターモードにて測定した。マトリックスにはα-
で測定した。
c
ya
no
4
hydr
o
xyc
i
a
nna
mi
c a
c
i
d (CHCA)、
内皮除去標本は、内皮細胞をペアンで軽く擦
り除去して作製した。内皮細胞の有無は以下の
pi
ca
c
i
d(SA)、 2
.
5
di
hydr
o
xybe
nz
o
i
ca
c
i
d
s
i
na
(DHB)を、試料のイオン化にはN2パルスレー
―4
7―
山崎,岩田,村田,片野,石幡
図1 RPHPLCによるRWPCs
の親水性成分の分離
ザーを用いた。各測定時にはキャリブレーター
組成(mM)は、Na
Cl9
2
.
7
、KCl3
0
.
0
、Na
HCO3
.
2
、 KH2PO4 1
.
2
、 gl
uc
o
s
e1
1
.
1
、
と し て、各 マ ト リ ッ ク ス お よ びa
ngi
o
t
e
ns
i
nI
I 2
4
.
9
、 MgSO4 1
(1
0
4
6
.
6
Da
)、 a
dr
e
no
c
o
r
t
i
c
o
t
r
o
pi
c
ho
r
mo
ne
(ACTH,
2
9
3
2
.
6
Da
)を用いて較正を行った。試
.
8
であった。
Ca
Cl
21
6.統計処理
料の測定は5
0
0
ショット以上行い積算した。
また、 得られたデータは、F検定による等分散の検
分 子 の 内 部 エ ネ ル ギ ー に よ る po
s
ts
o
ur
c
e
t
定をおこない、等分散であれば通常のSt
ude
nt
’
s
de
c
a
y
(PSD)法を用いたMALDI
PSDスペクト
検定、
不等分散であればWe
l
c
h’
s
t検定を行った。
ルよりMS/
MS解析(目的分子(親 MS)から分
それぞれの値はすべて平均値±標準誤差で表現
解して得られる分解産物(子 MS)との分子量
した。危険率P<0
.
0
5
をもって有意とした。
の差から分子の構成成分を調べる)し、さらに
7.倫理的配慮
詳細な分子構造を予測した。
本実験は、山形大学動物実験規程16)、動物の
5.使用薬物
愛護及び管理に関する法律(昭和4
8
年法律第1
0
5
TFA、DMSO、a
ngi
o
t
e
ns
i
nI
I
、ACTHおよび
号)
、実験動物の使用及び保管等に関する基準
5
年総理府告示第6号)
を遵守して行った。
Ac
CNは 和 光 純 薬 か ら、PE、LNAME、 (昭和5
di
c
l
o
f
e
na
c
、CHCA、SAお よ びDHBはSi
gma
結 果
c
he
mi
c
a
lCo
.
(USA)から、AChは第一製薬か
らそれぞれ購入した。PE、ACh、LNAMEおよ
びdi
c
l
o
f
e
na
c
は生理食塩液を用いて溶解希釈し
1.高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ る
RWPCs
成分の分離と血管弛緩作用を有する
た。6
6
.
7
mM KCl
の組成
(mM)
は、
Na
Cl5
6
.
0
、
KCl
4
.
9
、MgSO4 1
.
2
、KH2PO4 1
.
2
、
6
6
.
7
、Na
HCO3 2
.
8
であった。3
0
mM KCl
の
gl
uc
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s
e1
1
.
1
、Ca
Cl
21
分画の探索
RWPCs
の親水性成分の分画結果を図1に示
―4
8―
新しい赤ワインポリフェノール
表1 分画①~⑨の血管弛緩率
す。得られた分画をそれぞれ分取し、血管弛緩
行った結果、3
4
6
9
.
3
Da
の分子量関連イオンが検
作用を有する成分を調べた。その結果、弛緩作
出された。またその付近に、その分子の分解産
用を有する分画が9個得られた(図1)
。
物と思われる3
3
6
5
.
0
Da
のフラグメントイオンも
血管弛緩作用を示した9個の分画のうち、弛
検出された
(図2)
。分子量関連イオンとの質量
緩作用が強い成分を特定するため、それらの分
の差は1
0
4
Da
であった。次に、MALDI
PSDを
画の血管弛緩作用を比較検討した
(表1)
。弛緩
行った結果、1
3
2
0
.
7
、1
1
8
8
.
7
、1
0
5
6
.
6
Da
のフラグ
反応の大きさは、PEによる血管の前収縮の収縮
メントを形成することが観察された。それらの
力を1
0
0
%として表した。表中の実験例数はデー
フラグメントの質量の差は1
3
2
Da
ずつで規則的
タとして用いたラットの個体数である。なお、
であった(図3)
。
除外数は、各実験の最後に、PEで前収縮させた
3.分画⑥の血管弛緩反応に関する濃度反応曲
標本で再度AChによる血管弛緩反応を測定し
線と作用機序の検討
た結果、内皮機能が実験中に障害されたとみな
分画⑥の濃度と血管弛緩反応との関係を調べ
した個体数である。
るため、濃度反応曲線を作成した。その結果、1
9個の分画のうち、HPLCによる分離が最も
-6
Mから弛緩反応がみられ
(9
4
.
9
±4
.
8
%)
、
3×
×1
0
良いうえに、弛緩反応が大きくかつ血管障害の
-6
-5
Mでは7
6
.
5
±7
.
3
%、1×1
0
Mでは 4
0
.
2
±3
.
7
%
1
0
発生が少なかった分画⑥(極大吸収は3
0
7
nm と
まで弛緩した(n=6、図4)
。
5
3
4
nm)を選択し、質量分析と、その成分によ
次に、血管弛緩反応への血管内皮細胞の関与
る血管弛緩作用機序について検討を行った。
について評価を行った。その結果、内皮除去標
2.強い血管弛緩反応が見られた分画⑥の質量
本では弛緩反応が消失した(n=3、図4)
。
次に、内皮無傷標本においてNO合成阻害薬
分析
MALDI
TOF型質量分析計により質量分析を
であるLNAMEを処置した場合、分画⑥による
―4
9―
㪠㫅㫋㪼㫅㫊㪅㩷㪲㪸㪅㫌㪅㪴
山崎,岩田,村田,片野,石幡
㪈㪍㪇㪇
㪊㪊㪍㪌㪅㪇㪊㪈
䊐䊤䉫䊜䊮䊃䉟䉥䊮
㪈㪋㪇㪇
3469
ಽሶ㊂㑐ㅪ䉟䉥䊮
㪈㪉㪇㪇
㪈㪇㪇㪇
㪏㪇㪇
㪍㪇㪇
㪊㪇㪇㪇
㪊㪈㪇㪇
㪊㪉㪇㪇
㪊㪊㪇㪇
㪊㪋㪇㪇
㪊㪌㪇㪇
㪊㪍㪇㪇
㪊㪎㪇㪇
㫄㪆㫑
㪠㫅㫋㪼㫅㫊㪅㩷㪲㪸㪅㫌㪅㪴
図2 分画⑥の分子量関連イオンとフラグメントイオンのMa
s
s
スペクトル
㪈㪇㪌㪍㪅㪍㪊㪌
㪍㪇㪇㪇
㪋㪇㪇㪇
1188.7
㪈㪈㪏㪏㪅㪍㪍㪏
1320.7
㪉㪇㪇㪇
㪇
㪈㪇㪇㪇
㪈㪇㪌㪇
㪈㪈㪇㪇
㪈㪈㪌㪇
㪈㪉㪇㪇
図3 分画⑥のMALDI
PSDスペクトル
―5
0―
㪈㪉㪌㪇
㪈㪊㪇㪇
㪈㪊㪌㪇
㫄㪆㫑
新しい赤ワインポリフェノール
図4 分画⑥の内皮依存性血管弛緩反応
弛緩反応はほとんど消失した
(図5)
。過分極因
質 量 分 析(Li
qui
dc
hr
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gr
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phyma
s
s
子を阻害する3
0
mM KCl
の存在下では、阻害薬
s
pe
c
t
r
o
me
t
r
y;
LCMS)に基づいて行われるこ
を処理しないコントロール群に対し、弛緩反応
とが一般的である。質量分析には、多くの場合
が有意に抑制された(P<0
.
0
5
、図5)
。一方、
にエレクトロスプレーイオン化(El
e
c
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pr
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y
プロスタサイクリン合成阻害薬である
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ESI
)法が用られてきた。ESI
法によ
di
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na
c
処理では、血管弛緩反応はほとんど抑
り赤ワインから1
0
0
0
Da
以上の分子量を検出し
制されなかった(図5)
。
た例もあるが17)、ESI法は試料分子が多価イオ
ンになりやすく、装置の分解能の限界から高分
子の検出は一般的に難しい18)。これに対して、
考 察
MALDI
TOF型質量分析は比較的均一に一価の
今回用いたRWPCs
成分の分画から、強い血管
イオンを生じることから高分子量の検出に最も
弛緩作用を示し、比較的分離が良く、実験中に
適しているとされている19)。最近では、MALDI
血管障害がおきにくかったひとつの分画を選択
法を用いたRWPCs
等のポリフェノール分析も
し、質 量 分 析 を 行 っ た 結 果、そ の 分 子 量 は
試みられており、今回得られたような3
0
0
0
Da
以
3
4
6
9
Da
であり、1
3
2
Da
ずつの規則的なフラグメ
上の高分子量ポリフェノールも複数報告されて
ントが検出されることが示された。その分画は
いる20)-22)。本研究で高分子が検出された一つの
強い内皮依存性血管弛緩作用を示し、その作用
要因としては、MALDI
TOF型質量分析計を用
には主にNOが関与し、一部は過分極因子も関
いたことも考えられる。
与することが示唆された。
分画⑥の分子構造
RWPCs
の質量分析法
MALDI
TOF型質量分析計により検出された
RWPCs
の分析は、液体クロマトグラフィー-
分画⑥の分子量は3
4
6
9
Da
であり、
データベースに
―5
1―
山崎,岩田,村田,片野,石幡
図5 分画⑥の血管弛緩作用に対する各種阻害薬の影響
同じ分子量のポリフェノールがないことから23)、 子 が 脱 離 す る た め、分 子 量 は1
8
小 さ く な り、
この成分が新規物質である可能性が示唆された。 1
3
2
Da
の分子量の差として検出される。このた
RWPCs
は、フラボノイドとノンフラボノイドの
め、分画⑥のポリフェノールは5炭糖の糖鎖を
2種類に大別することができ、フラボノイドに
複数付加した配糖体であることが示唆された。
はアントシアニン、カテキン、 エピカテキン、
5炭糖のような単糖類は、有機化合物の疎水性
ミリセチン、ケルセチンなどとその配糖体があ
の部分(炭化水素基(CH基))の割合に対して、親
り、ノンフラボノイドにはガリック酸、t
r
a
ns
-レ
水性のOH基の割合が大きく、親水性が高まる
スベラトロール、 c
i
s
-レスベラトロールなどと
と考えられる。
2
4
)
その配糖体が知られている 。これらの物質は
一方、分子全体の質量分析では、分子量関連
いずれも分子量が2
0
0
から5
0
0
Da
が一般的であ
イオン3
4
6
9
Da
の付近に、3
3
6
5
Da
も検出されて
る。通常の分子は、分子量が大きくなるほど炭
いる。そのフラグメントから、末端に何らかの
素原子の含有率が高くなり、成分は疎水性を示
官能基を持つことが示唆された。光吸収をみる
す傾向があるが、今回調べた成分は比較的親水
と、分画⑥は3
0
7
nmと5
3
4
nmに極大吸収を有す
性の高い成分である。分子量が大きいにも関わ
ることから、ベンゼン環に官能基が結合した構
らず分画⑥が親水性である要因として、親水性
造を有すること、また複数の共役二重結合を有
の高い糖鎖などを含有する可能性が高いことが
する構造であることが予測された。他のポリ
予測される。分画⑥の分子構造の予測のため、
フェノール類もフェノール性水酸基をもち、ア
MALDI
PSD法により質量分析を行ったところ、 グリコンによって吸収パターンは異なるものの、
分子量の差が1
3
2
Da
ずつの規則的な間隔でピー
3
0
0
~3
3
0
nm付近に吸収を持つ成分が多いこと
クが検出された。この差から、分子量1
5
0
Da
の
や、配糖体では4
5
0
~6
5
0
nm付近に吸収を持つ成
5炭糖であることが予測された。PSD時に水分
分が多いことから25)、分画⑥はポリフェノール
―5
2―
新しい赤ワインポリフェノール
の配糖体である可能性が示唆された。分画⑥の
ことによってNO産生を増加させる。さらにレ
分子量は、既知のポリフェノール単体よりはる
スベラトロール等の一部のポリフェノールは、
かに大きく、いくつかのアグリコン(ポリフェ
内皮細胞のエストロゲン受容体を活性化しp3
8
ノールの基礎骨格)の重合体である可能性が示
MAPki
na
s
e
を活性化させてNOを産生する28),29)
唆された。佐藤らは、単体ポリフェノールに比
ことも知られている。今回得られた分画⑥は、
べ重合体となったポリフェノールのほうが、赤
主に内皮由来NOを介して作用していることが
ワインの抗動脈硬化作用により効果的であると
明らかになったことから、これらのいずれかの
2
6
)
報告している 。このことから、赤ワインの分
機序を経て内皮細胞でのNO合成を増加させ血
画⑥は、強力な内皮依存性血管弛緩作用に大き
管弛緩反応を惹起している可能性が考えられる。
く影響している可能性が考えられる。
分画⑥の血管作用と作用機序解析
結 語
レスベラトロールは、赤ワインポリフェノー
ルによる血管弛緩作用の主要成分の一つとされ
赤ワインに含まれている新たな血管弛緩性ポ
ているが、PEによる収縮を5
0
%抑制するのに約
リフェノール成分を分画し、その作用機序を明
1
3
)
,2
7
)
。今回得られた分画⑥
らかにした。成分の構造を決定し、生体におけ
成分は、約1
0
µMでPEによる収縮を5
0
%抑制し
る吸収・代謝・分布・排泄にわたる経路や作用
た(図4)ことから、赤ワイン中の血管弛緩作用
機序が明らかになれば、健康を維持するうえで
1
0
0
µM必要とされる
に関与する新たな主要成分の一つと考えられる。 有用な知見になると思われる。
分画⑥の作用機序解析のため、まず内皮細胞
の関与を検討したところ、内皮を除去した場合
謝 辞
に分画⑥の血管弛緩作用は消失した。このため、
分画⑥の作用が内皮細胞依存性であることが明
本研究は、一部、文部科学省科研費補助金
らかになった。また、内皮細胞における作用機
(基盤研究
(C)
2
0
5
9
0
0
8
7
)により行われたもので
序を検討したところ、NO合成阻害薬であるL- ある。
NAMEを処理した場合に血管弛緩作用がほと
んど消失した。このため、この成分は主にNO
文 献
の経路を介して血管弛緩反応を惹起しているこ
とが明らかになった。また、3
0
mM KCl
を用いて
1.国民衛生の動向.厚生統計協会;2
0
0
8
年第5
5
巻
第9号:7
9
-8
3
-5
M
過分極因子を阻害した場合、
高濃度の1×1
0
において、分画⑥の血管弛緩作用が有意に抑制
2.図説 血栓・止血・血管学 血栓症制圧のため
に.一瀬白帝 編著;2
0
0
5
年初版1刷:7
1
されたことから、作用の一部が内皮依存性平滑
筋過分極を介している可能性が示唆された。こ
3.Kuul
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が見られなかったため、プロスタサイクリンの
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経路は介していないことが示唆された。
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ポリフェノールによりNO産生が増加するメ
カニズムには複数の経路が考えられている。多
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6.利美賀子,石幡明,曾田智美,下田智子,片野
由美:老化血管に対するポリフェノール含有赤ワ
Spa
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イン凍結乾燥物の内皮依存性弛緩作用とその機
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Ma
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序:若齢血管との比較.山形医学.2
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7.山崎理美,三重堀亜矢:ポリフェノール含有赤
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3
ワインの内皮依存性弛緩作用とその機序:加齢に
よる変化.山形大学医学部看護学科卒業論文;
1
6
.
「山形大学医学部動物実験規程」の解説.山形
2
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大学医学部.2
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ツキヨタケ中毒
ツキヨタケ中毒の4症例
林田昌子,清野慶子,伊関 憲
山形大学医学部救急医学講座
(平成2
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年4月1
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日受理)
要 旨
キノコ中毒の多くは秋におこり、また集団発生することが特徴である。今回我々は山
で誤って採取したツキヨタケ(La
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陥った症例を経験したので報告する。
【症例】①7
9
才、男性 ②7
6
才、女性 ③4
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才、女性 ④1
5
才、男性
【現病歴】2
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年9月某日、2
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時頃、母親が山で採ってきたキノコを味噌汁にして家族で
食べた。1時間3
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分後より嘔気、嘔吐が出現した。A病院受診し、4時間後に当院救急
部に紹介となった。持参したキノコの柄の根元に黒いシミがあることからツキヨタケと
判明した。
【来院後経過】4名とも来院時バイタルサインは安定しており、検査上異常所見は認めら
れなかった。嘔気・嘔吐が強かったためメトクロプラミド1
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mg静注、脱水に対して輸液
を施行した。その後経過観察のため入院となった。
翌日には嘔気、
嘔吐の症状が消失し、
経
口摂取可能となった。その後、全身状態安定しており、退院となった。
【考察】ツキヨタケの主毒成分はイルジンSである。これまでの報告では、ツキヨタケの
個体によって、イルジンSの重量当たり含有量は異なるとされている。このため、ツキ
ヨタケ摂取量と症状は必ずしも相関しないこととなる。
ツキヨタケ中毒の症状としては摂取後3
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分~1時間より激しい嘔吐、下痢、腹痛がおこ
る。重症例では著明な腸管の浮腫や肝機能障害がおこる。
中毒治療としては、毒物を除去するために、催吐、胃洗浄が行われることがある。また、
対症療法として、初期に十分な補液を行う必要がある。4症例とも来院時より細胞外液
の投与を行った。摂取量は異なっているが、発症時期や収束した時期はほぼ同じであっ
た。ツキヨタケ中毒の治療は輸液管理が中心となるが、今回の症例も輸液を中心とした
対症療法で治療することができた。
キーワード:ツキヨタケ、食中毒、輸液療法、イルジンS
別刷請求先:伊関 憲(山形大学医学部救急医学講座)〒9
9
0
-9
5
8
5
山形市飯田西2-2-2
―5
7―
林田,清野,伊関
キノコ中毒の多くは秋におこり、また集団発
症例3:4
8
才、女性;母
生することが特徴である。なかでもツキヨタケ
主 訴:嘔気・嘔吐
mpt
er
omyces
(La
j
aponi
cus
, Omphal
ot
us 既往歴:特記すべき事項なし
guepi
ni
f
or
mi
s)は、2002-2006年の統計におい
現病歴:日中に山に行きキノコを採ってきた。
て全国での植物性自然毒による食中毒4
0
9
件中、
キノコを用いて味噌汁を調理した。きのこの傘
1)
7
7
件を占め発生事例のうち最も多い 。またツ
約半分を食べたが、汁はほとんど飲んでいない。
キヨタケ中毒の発生は、山形県内での発生件数
2
1
時3
0
分頃より嘔気、嘔吐が出現し、A病院受
は新潟(2
1
件)に次ぎ1
3
件と第2位である。そ
診した。車にて当院救急部を受診した。
1)
/
8
6
mmHg、心
して発生時期は1
0
月に集中するとされている 。 来院時現症:意識清明、血圧1
4
9
今回我々は山で誤って採取したツキヨタケに
拍数7
0
回/分、SpO2 9
8
%
より、家族4人が中毒に陥った症例を経験した
症例4:1
5
才、男性:息子
ので報告する。
主 訴:嘔気・嘔吐
既往歴:特記すべき事項なし
症 例
現病歴:症例1と一緒に味噌汁1杯分の汁およ
びきのこの傘半分を食べた。2
1
時3
0
分頃より嘔
症例1:7
9
才、男性;祖父
気、嘔吐が出現した。A病院受診し、症例3と
主 訴:嘔気・嘔吐
同じ車で当院救急部を受診した。
既往歴:糖尿病、高血圧
来院時現症:意識清明、血圧1
3
1
/
6
6
mmHg、心
平成3年 胆石にて胆嚢摘出術施行
拍数5
6
回/分、SpO2 9
8
%
平成1
3
年 大腸癌手術
現病歴:2
0
0
9
年9月某日、2
0
時頃、山で採って
来院後経過(図1)
きたキノコを味噌汁にして家族で食べた。
味噌汁1杯分の汁およびきのこの傘1つを食べ
4名とも来院時バイタルサインは安定してい
た。2
1
時3
0
分頃より嘔気、嘔吐が出現した。A
たが、
検査上血液濃縮の所見が得られた
(表1)
。
病院受診し、持参したキノコよりツキヨタケ中
まず救急部ではいずれの症例も、脱水に対して
毒が疑われ、当院救急部に救急搬送となった。
細 胞 外 液 の 酢 酸 リ ン ゲ ル 液 を 用 い て2
0
0
-
覚知時間は2
2
時4
7
分、救急隊の現場到着は2
2
時
3
0
0
ml
を輸液した。また、嘔気・嘔吐が強かっ
5
0
分、現場出発は2
2
時5
8
分、当院到着時刻は2
3
たためメトクロプラミド1
0
mgの点滴静注をお
時4
7
分であった。
こなった。その後、輸液にて経過観察をおこな
来院時現症:意識清明、血圧1
9
2
/
8
0
mmHg、心
うため入院となった。当初は酢酸リンゲル液を
拍数5
8
回/分、SpO2 9
6
%
1
0
0
ml
/
hr
で投与し、症状の改善をみて維持輸液
症例2:7
6
才、女性;祖母
に変えて8
0
ml
/
hr
とした。翌日朝には嘔気、嘔
主 訴:嘔気・嘔吐
吐の症状消失し、6時の血液検査では4例とも
既往歴:平成1
3
年 冠動脈バイパス術後
正常化していた。症例3と4では9時には経口
現病歴:症例1と一緒に味噌汁1杯分の汁およ
摂取可能となり、症例1と2は昼食より摂取可
びきのこの傘1+1
/
4
を食べた。2
1
時3
0
分頃より
能となった。このため夕食の摂取後に輸液を終
嘔気、嘔吐が出現した。A病院受診し、症例1
了した。その後、全身状態安定しており、第3
と同じ救急車で搬送された。
病日に退院となった。
来院時現症:意識清明、血圧1
4
1
/
7
9
mmHg、心
拍数7
9
回/分、SpO2 9
8
%
―5
8―
ツキヨタケ中毒
࠷࡛ࠠ࠲ࠤ
៨ข
ᒰ㒮᧪㒮
╙䋱∛ᣣ
20
22
╙䋲∛ᣣ
23
0
78ᚽ
↵ᕈ
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䈐䈱䈖䈱஺1䈧
ཌྷ᳇ ཌྷฯ
76ᚽ
ᅚᕈ
๧ཬ᳝1᧰ಽ
䈐䈱䈖䈱஺1䋫1/4
ཌྷ᳇ ཌྷฯ
48ᚽ
ᅚᕈ
๧ཬ᳝䈱ౕ䈱䉂
䈐䈱䈖䈱஺1/2
ཌྷ᳇ ཌྷฯ
15ᚽ
↵ᕈ
๧ཬ᳝1᧰ಽ
䈐䈱䈖䈱஺1/2
ཌྷ᳇ ཌྷฯ
1
3
5
䊜䊃䉪䊨䊒䊤䊚䊄 10mg
ャ ᶧ䋺
7
9
䋨ᤨ䋩
80-100ml/hr
図1 経過表
図2 持参したツキヨタケ
キノコを割ると黒いシミが見えることでツキヨタケと判断できる
シイタケ、ムキタケ、ヒラタケに形・色彩が似
考 察
ており、これらと共生するため誤食される。
ツキヨタケは月夜茸とも書き、笠に含まれる
山形県においての植物性自然毒による食中毒
ランプテロフラビン(l
a
mpt
e
r
o
f
l
a
vi
n)により暗
の第1位は、ツキヨタケである。ツキヨタケは、 所で青白く光ることからこの名がある2)。また、
―5
9―
林田,清野,伊関
表1 来院時検査所見(症例1)
ツキヨタケは裂くと柄の根元に黒い斑紋がある
ことが特徴であり容易に区別できる。しかし、
幼生株では不明瞭なことや一部には斑紋を認め
3)
ないものもある 。今回の症例においても、持
参したキノコを裂いたところ同部に黒い斑紋を
認めた(図2)。キノコ中毒の基本として、持参
case1
WBC
case2
case3
case4
11940
9480
7190
6050
/㱘L
RBC
531㬍104
403㬍104
444㬍104
499㬍104
/㱘L
Hb
15.8
12.0
14.0
14.7
g/dL
Hct
46.1
38.2
41.9
43.4
%
18.7㬍104
23.3㬍104
21.0㬍104
25.6㬍104
case2
case3
Plt
/㱘L
したキノコは必ずしも中毒の原因物質ではない
case1
可能性があり注意しなければならない。
ツキヨタケの主毒成分はイルジンS(i
l
l
udi
n
S,
l
a
mpt
e
r
o
l
)であり、他に蛍光物質のランプテ
case4
TP
8.5
8.0
7.3
7.5
Alb
4.7
5.0
4.4
4.8
g/dl
g/dl
T.Bil
0.6
0.5
1.1
0.5
mg/dL
ロフラビンや毒性のないdi
hydr
o
i
l
l
udi
nSなどが
AST
28
23
22
24
IU/L
含まれる。ツキヨタケの個体によって単位重量
ALT
35
21
15
23
IU/L
当たりのイルジンSの含有量は異なり、1
.
2
μ
LDH
250
259
201
208
IU/L
g/
gから3
1
8
.
2
μg/
gまでの開きがあったという
ALP
210
199
252
328
IU/L
ChE
419
347
259
364
IU/L
AMY
110
68
70
73
IU/L
によって含有量が異なる5)。さらに、調理する
CK
183
174
301
244
IU/L
と煮汁中にも溶出し、沸騰加熱により容易には
BUN
22
18
17
14
分解しない4)。このため、ツキヨタケ摂取量と
Crea
1.19
0.56
0.70
0.81
mg/dL
重症度は必ずしも相関しないこととなる。ツキ
Na
138
142
142
143
mEq/L
ヨタケのイルジンSは脂溶性であるため、ツキ
K
4.6
3.4
3.9
4.3
mEq/L
ヨタケと一緒に油で炒めるとイルジンSが溶出
Cl
105
1.9
108
106
mEq/L
<0.10
<0.10
<0.10
<0.10
mg/dL
236
152
113
100
mg/dL
報告がある4)。また、同じツキヨタケでも部位
6)
することがある 。この場合はツキヨタケを食
CRP
べないでも炒めた他の具を摂取することで中毒
BS
mg/dL
症状が発現する。
ツキヨタケ中毒の典型的な臨床症状は、摂取
二指腸と近位空腸に強い壁肥厚があり、胃は炎
後3
0
分~3時間より激しい嘔吐、下痢、腹痛が
症所見を認めないものの拡張が認められた。ま
おこる。さらに、脱水がすすむと血圧低下、体
た、岩井らも摂取後8時間後に激しい腹痛、嘔
温降下などがおこる。また、特徴的な所見とし
吐、水様性下痢を呈した症例で、第4病日の内
ては、色覚異常がみられる。
視鏡上で胃から十二指腸に潰瘍瘢痕、浮腫、粗
厳密なものではないが、摂取後2時間以内に
造粘膜があったことを指摘している7)。
嘔吐や下痢などがみられ、2
4
時間以内に軽快す
さらに、胃と十二指腸の粘膜浮腫、びらんな
る胃腸炎型、摂取後6時間から1
2
時間後に胃腸
どの消化器症状に加えて、肝機能障害を呈した
炎症状と肝障害をきたすコレラ型に大別される
報告もある9),10)。
7)
という報告もある 。この分類によれば、今回
これら一連の消化管の症状の誘因物質はイル
の4症例は胃腸炎型であった。
ジンSである11)。笠原はマウスにイルジンSを
また、重症例では消化管の浮腫が著明に見ら
経口投与させると胃の拡張がおこり、トノサマ
れるとされる。山浦らはツキヨタケ摂取3日後
ガエルでは嘔吐回数が用量依存性に上昇すると
に腹痛、嘔吐、下痢で発症し、内視鏡所見で十
na
ka
らはラットにイルジン
報告している12)。Ta
二指腸球部から下行部に強い粘膜浮腫、びらん、 Sを摂取させたところ胃、十二指腸、上部空腸
出血を認めたと報告している8)。CT所見では十
にびらん、浮腫が生じたとしている13)。
―6
0―
ツキヨタケ中毒
ツキヨタケ中毒の治療は輸液などの対症療法
7.岩井啓一郎,松本主之,江崎幹宏,八尾隆史,
が中心となる。上記の報告されている重症例で
鎌田正博,飯田三雄:ツキヨダケ摂取が原因と考
は輸液療法を主として、抗生剤、抗潰瘍剤の投
え ら れ た 急 性 十 二 指 腸 炎 の 1 例.
与で軽快している。今回の4症例でもツキヨタ
Ga
s
t
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e
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l
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c
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lEndo
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0
0
6
;4
8
:2
4
9
3
-
ケの摂取量は異なっているが、輸液を中心とし
2
4
9
8
.
8.山浦秀和,河村泰孝,伊藤春海,栗山とよ子,
た対症療法で治療することができた。
山本誠:月夜茸(毒キノコ)中毒による腸炎の1
本稿の要旨は第2
4
回日本中毒学会総会東日本
例 CT所見と病変の分布.臨床放射線 2
0
0
3
;4
8
:
地方会(2
0
1
0
、新潟)で発表した。
8
7
9
-8
8
1
.
9.西倉健,渡部重則,綱島勝正,清水春夫,笹川
参照文献
力,朝倉均,他:急性胃,十二指腸病変および肝
機 能 障 害 を 呈 し た ツ キ ヨ タ ケ 中 毒 の 1 例.
1.伊藤健,笠原義正:全国および山形県における
s
c
o
py1
9
9
3
;3
5
:1
0
8
0
-
Ga
s
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r
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r
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l
o
gi
c
alEndo
食中毒の発生状況(2
0
0
2
-2
0
0
6
年) 自然毒によ
る食中毒を中心に.山形県衛生研究所報 2
0
0
7;
1
0
8
5
.
1
0
.原瀬一郎,辻孝,若原達男,西垣洋一,斎藤吉
4
0
:3
4
-4
1
.
男,下村哲也,他:肝障害をきたした毒キノコ
2.権守邦夫:
【法中毒】 「きのこ」と中毒 きの
(ツキヨタケ)中毒の2例.岐阜市民病院年報
この毒性成分と中毒事例.アニムス 2
0
0
6; 1
1:
2
3
-2
7
.
1
9
9
0
;1
0
:1
2
3
-1
2
9
.
1
1
.中西香爾,大橋守,鈴木沖,多田愈,山田泰司,
3.伊東則彦,山形章,有田智幸,中村宏,斎藤泰
稲垣清二郎:薬学雑誌 1
9
6
3
;8
3
:3
7
7
-3
8
0
.
一,森満:日高山麓におけるツキヨタケ(月夜
1
2
.笠原義正,板垣昭浩,久間木國夫,片桐進:ツ
茸・ヒカリタケ)集団食中毒事例.北海道公衆衛
キヨタケの胃腸管毒性及び塩蔵による減毒.食品
生学雑誌 2
0
0
9
;2
2
:1
7
9
-1
8
1
.
衛生学雑誌 1
9
9
6
;3
7
:1-7.
4.笠原義正,伊藤健:LC/
MS/
MSによるツキヨ
1
3
.Ta
na
ka
タケおよび食中毒原因食品中のi
l
l
udi
nSの分析.
食品衛生学雑誌 2
0
0
9
;5
0
:1
6
7
-1
7
2
.
K, Mi
ya
s
a
ka
S, I
no
ue
T.
Hi
s
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pa
t
ho
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a
nc
eo
fpo
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s
o
no
usmus
hr
o
o
m,i
nr
a
t
.Hum
5.笠原義正:ツキヨタケの有毒成分i
l
l
udi
nSの定
;3
1
:5-9.
量.山形県衛生研究所報 1
9
98
6.大木正行:おそろしい毒きのこの正体.食と健
康2
0
0
5
;5
8
6
:5
2
-6
1
.
―6
1―
.
1
9
9
6;
1
5
:
2
8
9
9
3
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Ya
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1
1
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Lampteromycesj
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ci
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Yamagat
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ci
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ABSTRACT
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6
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cas poi
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i
nf
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o
n,
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nS
―6
2―
山形医学 2
0
1
1
;2
9
(2
):6
3
-6
9
クレゾール中毒の一例
低容量のドパミン投与により治療したクレゾール中毒の一例
榎戸正則 1,2),伊関 憲3),福家千昭4),佐多晶子1),高橋徹也1)
林田昌子 1,3),清野慶子 1,3),篠崎克洋3),大谷浩一2)
1)
山形大学医学部附属病院卒後研修センター
2)
山形大学医学部精神医学講座
3)
山形大学医学部救急医学講座
4
)
琉球大学医学部法医学講座
(平成2
3
年4月1
1
日受理)
要 旨
クレゾールは5
0
%石鹸液として用いられる消毒薬であり、服毒すると細胞毒性と溶液
による腐食性で全身臓器を障害する。中毒の治療法は、クレゾールが主に腎排泄される
ため、強制利尿が推奨されている。一方で大量輸液により肺水腫となりやすい。今回、
クレゾールを誤飲したアルツハイマー型認知症の高齢者に輸液負荷に加えて低容量のド
パミン投与により軽快した症例を経験したので報告する。
【症例】7
2
才の女性が、施設の部屋の前でふらついているのを発見された。クレゾール臭
があり、救急隊に要請された。クレゾール石鹸液5
0
0
ml
瓶中(4
2
-5
2
%含有)
、3分の1
程度が減っており、1
5
0
ml
程度を誤飲したものと推測された。救急隊到着時、意識レベ
ルはJ
CS3
0
0
であったが、
来院後次第に回復していった。来院時血圧は9
7
/
6
2
mmHgであっ
た。入院後、クレゾールの尿排泄の促進と昇圧のために、1
0
0
1
5
0
ml
/
時の輸液と塩酸ド
パミンの持続投与を開始した。ドパミンは1μg/
kg/
mi
nの投与で、血圧は安定し尿量も
1
5
0
ml
/
時程度えられた。第2病日には全身状態も安定したため、
ドパミンを中止とした。
経過良好であり、第4病日に退院となった。第1
4
病日に施行した上部消化管内視鏡検査
では、クレゾールの影響による病変は認められなかった。
【考察】クレゾール中毒の症状は、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状や化学性熱傷を認
める。さらに重症例では中枢神経抑制や血圧低下、DI
C、肺水腫を呈し死亡することが
ある。クレゾール中毒に対する初期治療としては胃洗浄、強制利尿、直接血液潅流が挙
げられている。なかでもクレゾールは2
4
時間以内に9
0
%が尿中に排泄されるため強制利
尿が行われることが多いが、肺水腫を引き起こす症例もある。今回の症例では、高齢で
あることから低容量のドパミンを持続静注しながら輸液負荷したところ、良好な尿流出
が得られた。
キーワード:クレゾール、利尿、ドパミン、輸液療法 アルツハイマー型認知症
別刷請求先:伊関 憲(山形大学医学部救急医学講座)〒9
9
0
-9
5
8
5
山形市飯田西2-2-2
―6
3―
榎戸,伊関,福家,佐多,高橋,林田,清野,篠崎,大谷
表1 来院時検査所見
BNPの上昇以外、特記すべき所見はなかった。
WBC
7,190
/㱘L
TP
6.5 g/dl
RBC
373㬍104
/㱘L
Alb
3.8 g/dl
Hb
12.3
g/dL
T.Bil
0.7 mg/dL
AST
29 IU/L
Hct
36.2
%
Plt
14.3㬍104
/㱘L
േ⣂ⴊ䉧䉴ᬌᩏ (O2䊥䉱䊷䊋䊷䊙䉴䉪5㷔/min䋩
ALT
20 IU/L
LDH
295 IU/L
ALP
131 IU/L
ChE
216 IU/L
AMY
70 IU/L
pH
7.340
PaO2
369.9
mmHg
BUN
16 mg/dL
PaCO2
42.4
mmHg
Crea
0.66 mg/dL
HCO3䋭
22.4
mmol/L
Na
136 mEq/L
BE
-3.3
mmol/L
K
4.5 mEq/L
%
Cl
104 mEq/L
CRP
0.41 mg/dL
MetHb
䊃䊤䉟䉣䊷䉳®
0.7
CK
䈜䈼䈩㒶ᕈ
284 IU/L
BS
199 mg/dL
BNP
45.6 pg/ml
はじめに
症 例
クレゾールはフェノールにメチル基を結合さ
患 者:7
2
歳 女性
せた芳香族酸化物で、o
r
t
ho
,
me
t
a
,
pa
r
a
3
種の
主 訴:意識障害(J
CS 3
0
0
)
異性体がある。水溶性が低いため、植物油に水
既往歴:高血圧
で溶解した水酸化カリウムを加え、石鹸液と混
2
6
年前 陳旧性心筋梗塞
和し、通常5
0
%石鹸液として用いられる消毒薬
6年前 アルツハイマー型認知症
である。クレゾール石鹸液はクレゾールによる
現病歴:アルツハイマー型認知症で特別養護老
殺菌効果と石鹸液の洗浄効果を併せ持つため、
人ホーム入所中であった。異食をすることがあ
医療用品や手指、便所の消毒などに使用されて
り、数日前も軟膏を食べた。某日2
2
時頃、部屋
きた。しかし自殺目的で大量服薬されたことや
の前でふらついているのを施設職員に発見され
フェノール系消毒薬の排水規制から、近年では
た。クレゾール臭があり、救急隊に要請された。
使用できなくなっている。
ク レ ゾ ー ル 石 鹸 液5
0
0
ml
瓶 中(4
2
~5
2
v/
v%)、
今回、我々は認知症の高齢者がクレゾール石
3分の1程度が減っており、1
5
0
ml
程度を誤飲
鹸液を誤飲した症例を経験した。輸液負荷に加
したものと推測された。
えて低容量のドパミン投与により排泄を促すこ
救急隊到着時、J
CS3
0
0
であり、エアウェイを
とにより軽快した症例を経験したので、文献的
挿入し、酸素投与を行いながら当院救急部に2
2
考察を加えて報告する。
時5
7
分に搬送された。
来院時現症:J
CSⅢ3
0
0
、GCSE1
V2
M5
。血 圧
、自発呼吸あり。そ
9
7
/
6
2
mmHg、脈拍 7
6
bpm.
―6
4―
クレゾール中毒の一例
(b)
(a)
(c)
図1 来院時胸部X線写真(a
)と胸部CT写真
(b,
c
)
胸部X線写真上は肺水腫などの異常陰影は認めなかった。また、胸部CT写真
では臥位のためと思われる背側無気肺はあるも、
胸水などは認められなかった。
の他、呼吸状態や神経学的な異常所見は認めな
輸液は、1
0
0
~1
5
0
ml
/
hr
のペースで継続とし
かった。呼気・体全体からクレゾール臭を認め
た。ドパミンの投与量は1γ(
μg/
kg/
mi
n)
で、
た。
来院時の検査所見
(表1)
では、
軽度BNPの上
血圧も安定し、尿量も平均して1
5
0
ml
/
hr
が得ら
昇が認められたが、
その他著明な異常所見はなかっ
れた。胸水腫や浮腫などの輸液過剰の徴候は全
た。また、トライエージもすべて陰性であった。 経過中出現しなかった。クレゾール臭も除々に
来院時の頭部CTでは、慢性の虚血性病変と脳
軽減し、全身状態が安定していたため、第2病
溝・脳室の拡大は認めたが、意識障害の原因と
日の1
3
時にドパミンを中止とした。その後尿量
なるような所見は認めなかった。
は減少したものの、全身状態の悪化を認めな
胸部X線写真、胸部CTでは肺野に明らかな異
かった。経過良好であったため、第4病日に退
常陰影は認めなかった。
(図1)
院となった。
入院後経過(図2):来院後1時間半(服用後約
退院後は入所していた施設に戻り、食事摂取
3
~3
.
5
時間後)にはJ
CS1桁まで意識状態が改善
を再開、その後、腹部症状出現なく、全身状態
した。 SpO2の低下は認められなかったが、呼
は良好であった。第1
4
病日に施行した上部消化
吸抑制や肺水腫をきたす可能性があったため、
管内視鏡検査では、喉頭~食道には粘膜病変見
L/
mi
n)は継続とした。クレゾー
酸素投与(O2 5
られず、胃には糜爛性胃炎の所見があったもの
ルの尿排泄促進目的に細胞外液の輸液、ドパミ
のクレゾールの影響によるものと考えられる病
ンの持続静脈注射を開始した。胃管挿入時には
変は認められなかった。
わずかにクレゾール臭の残る液体がわずかに流
来院時のクレゾール血中濃度を液体クロマト
出したが、ほとんど吸引はできなかった。消化
グラフィーで測定したところ、pクレゾール、m-
管粘膜保護及び希釈目的に胃管より牛乳+アル
クレゾールは、それぞれ9
.
6
μg/
ml
、1
8
.
9
μg/
ml
ギン酸ナトリウム
(1回2
0
ml
)
の投与を開始した。 であった(図2)
。
―6
5―
榎戸,伊関,福家,佐多,高橋,林田,清野,篠崎,大谷
⇕−⇤∞∑ᐰ
(ml)
‶⁡⁢⁓ ⁛⁠⁗‣ₓ
in
out
╙2∛ᣣ
╙3∛ᣣ
╙4∛ᣣ
図2 経過表
4時間おきの水分バランスを記した。入院後、輸液は細胞外液を1
0
0
~1
5
0
ml
/
時の投与下に、ドパミン1μg/
kg/
mi
nの投与により1
5
0
ml
/
時の良好な尿排泄が得られた。
‟⁕⁤⁗⁥⁡⁞‒‒‒‫
†‫‬ₜ⁙‡ ⁞
⁢‟⁕⁤⁗⁥⁡⁞‒‣‪†‫‫‬ₜ⁙‡ ⁞
೅แ๋෩
ᘉ
ฌ
図3 高速液体クロマトグラフを用いたクレゾール血中濃度分析
来院時の血清からmクレゾール9
.
6
μg/
ml
、pクレゾール1
8
.
9
μ
g/
ml
が検出された。
1つはクレゾールのタンパク質凝固作用によ
考 察
る細胞毒性である。細胞の変性壊死をきたし、
基本的にすべての細胞に対して毒性を発揮し、
クレゾール石鹸液の毒性は大きく分けて2つ
全身臓器の症状をきたす。2つ目は溶液の強ア
挙げられる。
ルカリ性による腐食性である。
―6
6―
クレゾール中毒の一例
表2 重症例における症状の検討
これまで報告された重症5例の症状を検討したところ、呼吸抑制、肺水腫などがみられた。
અӕ᣽
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ⅎ
඙ၷ
ⅎ
ⅎ
ⅎ
രʧ
രʧ
クレゾール中毒の症状は、細胞毒性によりほ
色尿が多く認められている2)。また、生命予後
ぼ全身の臓器にわたって発症する。少量の経口
にかかわる症状としては呼吸抑制が最も高頻度
摂取時は腐食性による悪心、嘔吐、下痢などの
であった。さらにこれまで報告された重症例を
消化器症状が出現しやすく、さらに口腔、食道、 検討したところ、呼吸抑制と同程度に腎不全と
消化管軟膜に化学性熱傷を認めることがある。
肺水腫が報告されている。
(表2)
化学性の熱傷が重篤な場合、咽頭~上気道の浮
クレゾールを経口摂取した場合、消化管から
腫、狭窄を認めることがある。
速やかに吸収され、急速に血中に移行する。そ
多量摂取時は上記の症状以外に、中枢神経系
の後、肝臓でグルクロン酸抱合をうけ、2
4
時間
抑制などの全身症状が急性期に出現しやすく、
以内に9
0
%が尿中に排泄される3),4)。皮膚や吸
血圧低下、呼吸の抑制から停止、昏睡がみられ
入による暴露は一般的に経口時より毒性が強く
ることがある。小児では脊髄への刺激による痙
現れ、付着面積によって吸収量が左右される5)。
攣がみられることがあるが、成人では稀とされ
クレゾール中毒に対する初期治療としては胃
ている。1~数日後には腐食性によって毛細血
洗浄、強制利尿、直接血液潅流があげられる。
管障害による透過性の亢進にともなう組織内水
胃洗浄の適応については賛否両論あるが、非
分貯留、血漿蛋白の減少、細胞毒性による多臓
常に稀に消化管穿孔することがあり禁忌とする
器不全が発生してくる。DI
C、肺水腫、脱水、
ものもある。一方で、クレゾールが蛋白質との
ショック、代謝性アシドーシス、腎不全、肝機
結合性が弱く、深部組織に浸潤しやすいため複
能障害、化学性肺炎、溶血性貧血、メトヘモグロ
数回の胃洗浄が必要ともされている6)。そして、
ビン血症などを起こす。死亡例は呼吸麻痺、肺
服用からの経過時間、胃内でのクレゾールの残
水腫、
昏睡、
心停止の経過をとるが多くは2
4
時間
存など適応を限定し施行すべきとする意見もあ
以内であるとされている1)。石鹸液としてのヒ
5
0
ml
のクレゾール石鹸液
る2),7)。本症例では1
ト経口推定致死量は1
0
0
~2
5
0
ml
と広範囲だが、
を摂取されたと推測された。しかし、施設の職
8
0
ml
での死亡例や2
7
0
ml
での救命例もある1)。
員は今回誤飲された石鹸液の所在を把握してお
軽症~重症まで含めた2
2
例の検討では、化学
らず、もともとの残量も正確には把握されてい
熱傷が高頻度に認められ、次いで意識障害や黒
なかった可能性があった。また、服用より病院
―6
7―
榎戸,伊関,福家,佐多,高橋,林田,清野,篠崎,大谷
到着までの時間が1時間半以上経過していたと
める場合など、その適応を限定して施行すべき
推測された。このため、本症例では胃洗浄を行
である7),8)。
わない方針となり、胃洗浄を行わずに治療を
本症例においては、
輸液管理と低容量ドパミン
行ったが、全身状態の悪化は認めなかった。
の持続静注により安全に治療することができた。
強制利尿に関しては、クレゾールは9割以上
ま と め
が腎排泄であるため、多くの報告は大量補液と
利尿剤の投与を推奨している1),5),8)。重症例の
症状の検討(表2)で肺水腫と腎不全、脳浮腫
クレゾール中毒では大量摂取した場合、腎不
が多く認められる。したがって、重症クレゾー
全や肺水腫などの合併症をきたす可能性がある。
ル中毒の治療は超急性期の呼吸管理だけでは不
このため、呼吸管理や輸液管理などの全身管理
十分であり、輸液管理が非常に重要である。本
が必要である。
症例は摂取量1
5
0
ml
と大量服用例と推定され、
腎不全や肺水腫などの重篤な合併症をきたす可
能性を念頭におきつつ診療を開始した。さらに
本 稿 の 要 旨 は 第 7 回 山 形 救 急 医 療 研 究 会
(2
0
1
0
、山形)で発表した。
陳旧性心筋梗塞の既往があったため、心機能の
低下が予想された。これらは強制利尿時の大量
参照文献
補液による心不全・肺水腫の危険因子であるた
め、本症例においては、大量輸液は行わずに輸
1)村田正弘:クレゾール石鹸液.救急医学 1
9
9
6
;
2
0
:1
5
8
2
~1
5
8
3
液量を1
0
0
~1
5
0
ml
/
hr
までに制限した。 入院時
血圧の低下も認められたため、腎血流量の増加
2)仲本昌一,上原元:クレゾール中毒2
2
例の検討.
沖縄医学会雑誌 1
9
9
0
;2
7
:2
6
6
~2
6
8
と血圧の上昇を目的に低用量のドパミンの投与
にて行うこととした。この結果、肺水腫や腎不
3)熊野宏昭,黒木啓文,堤晴彦,豊岡秀訓,三井
香児,西原カズヨ:クレゾール中毒.薬事 1
9
8
6
;
全などの重篤な病態が惹起されることなく、尿
排泄も得られ、良好な経過を辿った。2
4
時間以
内に9
0
%が排泄されるため、第2病日には投与
を終了した。
2
8
:1
6
9
7
~1
7
0
1
4)仲本昌一,上原元:クレゾール.中毒研究 1
9
9
1
;
4:3
4
9
~3
5
3
5)石川雅健,鈴木忠:クレゾール.救急医学 2
0
0
1
;
また、クレゾール中毒の治療には、直接血液
灌流が有用であるとされている。クレゾールが
2
5
:2
2
7
~2
2
8
6)成松英智,太田孝一,本間英司,半沢辰夫,渡
低分子で蛋白結合率が低いことから、直接血液
辺昭彦,並木昭義:急性クレゾール中毒の1症例.
灌流により除去はしやすい4)。 クレゾール中毒
による腎障害は急速に進行するため可及的速や
救急医学 1
9
8
9
;1
3
:1
7
3
5
~1
7
3
7
7)中西和雄,宮本友美,渡辺敏光:クレゾール石
9
9
9;2
3:6
1
3
鹸液経口中毒の1例.I
CUとCCU 1
かに施行すべきとの報告がある1)。しかし反対
~
6
1
8
にクレゾールの吸収、排泄の速さから服用早期
のみ有効とするもの
5)
や早期でも無効との意見
8)横山隆:直接血液灌流を行ったクレゾール中毒
の1例.Pha
r
maMe
di
c
a2
0
0
0
;1
8
:7
9
~8
1
9)
もある 。分析した検討ではクレゾール石鹸液
8
0
ml
を経口摂取の症例において、直接血液灌流
法による血中クレゾール除去率は3時間で
5
5
.
8
%であった8)。
9)上條吉人:クレゾール石鹸.中毒研究 2
0
0
0;
1
5
:4
5
6
~4
5
7
1
0
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結果として、全身状態や服用量、持続的吸収
が予測される場合、腎不全などの代謝障害を認
―6
8―
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1
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):6
3
-6
9 クレゾール中毒の一例
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3)
MasanoriEnoki
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ci
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ci
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4)
Depar
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mentofLegalMedi
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Uni
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heRyukyus,SchoolofMedi
ci
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ABSTRACT
A 7
2
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-7
6
急性冠症候群の1剖検例
急性冠症候群と考える院外心停止の1剖検例
西 勝弘1),刑部光正2),伊関 憲3)
1)
山形大学医学部附属病院卒後臨床研修センター
2)
山形大学医学部人体病理学講座
3)
山形大学医学部救急医学講座
(平成2
3
年4月2
1
日受理)
要 旨
4
4
歳、女性。乗用車を運転中に意識消失し、2
0
分後に救急隊が到着した際には心肺停
止状態であった。心電図上は心室細動であり、心肺蘇生法や除細動等を施行しながら、
当院救急部へ搬送された。救命処置を行うも反応なく、死亡が確認された。a
ut
o
ps
y
i
ma
gi
ngを施行したが、明らかな死因の特定に至らず、剖検を行った。冠動脈3枝のい
ずれにおいても粥状動脈硬化を認め、さらに左前下行枝の中枢側には壁在性の新鮮血栓
が確認された。また左前下行枝の灌流域である心室中隔の前2/
3の部分に一致して陳旧
性心筋梗塞が確認された。一方、心筋線維の波状化や収縮帯壊死、好中球浸潤といった
急性心筋梗塞の早期でみられる所見は捉えられなかった。なお他臓器に死因につながる
ような明らかな所見は認められなかった。
本症例は左前下行枝における血栓形成、灌流域に陳旧性心筋梗塞を認めたものの、明
らかな新鮮梗塞巣は認められなかった。一般に急性心筋梗塞の形態学的変化は発症後5
~6時間を経てようやく観察されるようになるため、本症例のような突然死において急
性心筋梗塞の診断は困難である。こうした症例の診断に際しては、急性冠症候群の概念
に含まれる心臓性突然死が最も合致すると考えられた。この疾患概念は、冠動脈病変に
起因して発症したという、より病態に即した意味合いを持っており、本症例のように急
性心筋梗塞の形態学的変化を捉えきれない症例の集積に寄与する可能性がある。
キーワード:急性冠症候群、突然死、心臓、病理解剖
然死の原因疾患の1つである急性心筋梗塞は、
緒 言
発症後6時間以内の急性期では形態学的変化に
乏しく、病理学的診断に苦慮する。今回我々は
発症後短時間の経過で死亡し、死因を明らか
左前下行枝に壁在血栓を認めた突然死の剖検例
とするための臨床経過や検査所見に乏しい突然
を経験したので報告する。
死の症例では、剖検がその死因解明への有力な
情報を提供することが多いとされる。一方、突
別刷請求先:西 勝弘(山形大学医学部眼科学教室)〒9
9
0
-9
5
8
5
山形市飯田西2-2-2
―7
1―
西,刑部,伊関
表1 来院時検査所見
Biochemistry
Hematology
TP
6.9
g/dl
/㱘l
Alb
3.7
g/dl
441㬍104
/㱘l
T.Bil
0.4
mg/dl
Hb
8.1
g/dl
AST
27
IU/l
Hct
29.6
%
ALT
24
IU/l
Plt
32.2㬍104
/㱘l
LDH
238
IU/l
ALP
205
IU/l
WBC
9210
RBC
CK
94
IU/l
BloodGasAnalysis (O210㷔/minmask䋩
CKͲMB
3.9
IU/l
pH
6.978
BUN
12
mg/dl
PaO2
16.7
mmHg
Crea
0.88
mg/dl
PaCO2
71.7
mmHg
Na
139
mEq/l
K
4.5
mEq/l
HCO3
16.4
mmol/l
BE
Ͳ15.2
mmol/l
䋭
Cl
CRP
104
mEq/l
<0.10
mg/dl
BS
302
mg/dl
TropͲI
0.31
ng/ml
BNP
50.4
pg/ml
TC
179
mg/dl
TG
58
mg/dl
HbA1c
5.8
%
であった。瞳孔径は両眼で5mmと散大し、対
症 例
光反射は消失していた。
来院後経過:両側前腕に静脈路を確保し酢酸加
患 者:4
4
才、女性
リンゲル液にて急速輸液を開始し、気管挿管を
主 訴:心肺停止
行った。3~5分おきにエピネフリン1mgを静
既往歴:特記すべきことなし
注し、除細動(二相性、1
5
0
J
)は計3回施行、
現病歴:某日9時2
5
分、患者の運転する乗用車
さらにリドカイン、アミオダロン、硫酸マグネ
が自宅を出てすぐに蛇行運転となり、道路端の
シウムを使用したが、Vf
から無脈性電気活動
ビニルハウスに衝突した。9時3
7
分に同乗して
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いた家族が救急隊を要請し、9時4
6
分に救急隊
(a
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)となった。当院到着後、約4
0
分間心
静
止
が現場に到着した。呼吸停止、脈拍は触知不可
肺蘇生法を行ったが1
0
時5
5
分に死亡確認となっ
であり、瞳孔は散大し、対光反射は消失してい
た。確認後、家族に既往歴やこれまでの胸痛の
たため、直ちに救急隊によって心肺蘇生法が開
有無を聴取したが明らかではなかった。また、
始された。心電図波形上、心室細動(ve
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r 血液検査上(表1)でも死因を特定できる所見
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)であり、現場にて除細動
はなく、a
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(1
5
0
J
)を3回施行されたがVf
が継続した。9
Aut
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時5
5
分現場を出発し、1
0
時0
9
分車内で除細動
(1
5
0
J
)を1回施行されたがVf
は継続していた。
1
0
時1
3
分に当院救急部に到着した。
頭部CTでは、大脳において皮髄境界の不明瞭
来院時現症:意識レベルJ
CS3
0
0
、GCS3
点(E1
化と浮腫を認め、低酸素脳症の所見を呈してい
V1M1
)、心停止状態であり、心電図波形上Vf た。頭蓋骨骨折はなく、脳出血、くも膜下出血
―7
2―
急性冠症候群の1剖検例
図1 心臓の肉眼所見
心臓に割を入れ(切片A-D)観察した。
図2 切片D
心室中隔に陳旧性心筋梗塞巣(矢頭)を認めた。
などは認められなかった。
めた(図3)
。左室壁において、組織学的には心
胸部CTでは、上行・弓部・下行大動脈いずれ
筋線維の波状化や収縮帯壊死、好中球浸潤と
にも解離を疑わせる所見は認められなかった。
いった急性心筋梗塞早期でみられる所見はいず
両側肺門部から背側優位に一部浸潤影を含む濃
れの切片でも捉えられなかった。また求心性左
度上昇を認めた。
室肥大を呈していたが、組織学的には心筋線維
腹部CTでは、腹部大動脈に解離はなく、腹部
の錯綜配列など肥大型心筋症を疑う所見は認め
諸臓器に特記すべき所見はなかった。
なかった。
骨盤部CTでは、子宮筋腫を認める他は、特記
血管系では、左右腎動脈分岐部より尾側の腹
すべき所見を認めなかった。
部大動脈で高度の粥状動脈硬化を認めた。
臨床経過、およびa
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ngにおいても
肝臓の表面は平滑で、割面は黄白色調であっ
死因を明らかにすることができなかった。4
4
才
たが、組織学的には脂肪変性は約5%程度にと
の突然死であり、心電図がVf
であったことから、 どまり、明らかな脂肪肝といえるほどではな
心原性突然死が強く疑われた。他に致死的疾患
かった。
を有していた可能性もあり、死因特定のために
両肺ともに肺胞出血のために重量の増加(左
剖検を施行した。
肺;7
3
0
g、右肺;8
7
5
g)を認めた。これは胸骨
圧迫やマスク換気といった心肺蘇生法の過程で
剖検結果
生じた可能性が考えられた。
また、生前の糖尿病、あるいは耐糖能異常の
身 長1
6
7
c
m、体 重7
7
kg、BMI2
7
.
6
1
と肥満で
有無は不明であったが、腎臓と膵臓に糖尿病を
あった。腹壁の皮下脂肪は肥厚していた。
疑う所見は認めなかった。
心臓の外表には出血などの所見は認められな
なお、生前に指摘はなかったが、慢性リンパ
かった。図1のように冠状断にて観察したとこ
性甲状腺炎を認めた。
ろ、切片Dの心室中隔に陳旧性心筋梗塞巣を認
以上より、肥満による動脈硬化症を背景とし、
めた(図2)。冠動脈は3枝のいずれにも粥状硬
左前下行枝におけるプラーク破綻・血栓形成を
化を認め、うち左前下行枝には切片Cのレベル
機序とした心筋虚血発作が原因で突然死をきた
でプラークを背景とした壁在性の新鮮血栓を認
したと考えられた。
―7
3―
西,刑部,伊関
A
B
C
D
図3 左前下行枝のミクロ所見
左前下行枝を階段切片(切片A-D)で観察した。各々の切片でプ
ラークによる内腔狭窄を認め、切片Cにおいてプラークを背景とし
た壁在性の新鮮血栓を認めた。
かった。しかし、心血管イベントのリスクであ
考 察
る肥満による動脈硬化症が背景にあること、左
前下行枝灌流域における陳旧性心筋梗塞巣の存
本症例は4
4
歳の女性が、心原性突然死を来し
在、剖検にて確認された新鮮壁在血栓の存在か
た一例であった。剖検結果では冠動脈3枝のい
ら、左前下行枝灌流域における心筋虚血が原因
ずれにおいても粥状動脈硬化を認めた。特に左
となり突然死を来したと推定された。一般に心
前下行枝の中枢側に壁在血栓が確認され、灌流
筋梗塞巣は発症後5~6時間を経て形態学的変
域で急性の心筋虚血を呈したと考えられた。一
化を呈するため、発症早期の心筋梗塞は肉眼的、
般に急性心筋梗塞に伴う心室細動は再疎通を契
組織学的な診断は困難とされる4)。
機とした虚血再灌流障害によるものが多い 1)。
そこで本症例の死因について、急性心筋梗塞
本症例では搬送時には心室細動を呈しており、
とするか、急性冠症候群とするかは意見の分か
切片Cの左前下行枝の壁在血栓は形態学的に完
れるところである。
全閉塞ではなかったことから、再疎通による可
急性冠症候群とは不安定狭心症や急性心筋梗
能性も示唆された。
塞、心臓性突然死の総称である。急性冠症候群
また左前下行枝の灌流域である心室中隔の前
の発症メカニズムはプラークの破綻と血栓形成
2/
3の部分に陳旧性心筋梗塞が確認された。心
であり、血栓が血管内腔を急激に狭窄または閉
筋梗塞の既往は突然死の危険因子であり、心肺
塞することにより生じる5)。また高度な冠動脈
停止時の救命は非常に困難であると報告されて
の狭窄が原因部位ではなく、軽度あるいは中等
2)
,3)
おり
、陳旧性心筋梗塞を認めた本症例の生
度狭窄が責任病変になっていることが多いとさ
前の突然死リスクは高かったものと推定された。 れる6)。
他臓器に死因となる明らかな所見は認められ
本症例では不安定狭心症を背景に心室細動を
ず、形態学的に新鮮な心筋梗塞巣は認められな
生じた可能性は否定できないことに加え、形態
―7
4―
急性冠症候群の1剖検例
学的所見が現れていない段階で急性心筋梗塞と
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7
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1
診断すると、正確な診断ではない危険性が危惧
された。急性心筋梗塞とするだけの形態学的変
2.笠岡俊志,鶴田良介,中島研,副島由行,定光
化を捉えていない本症例では、より病態に即し
大海,立石彰男,他:院外にて心停止を起こした
た疾患概念である心臓性突然死
(急性冠症候群)
急性心筋梗塞の検討.日救急医会誌 1
9
9
7
;8:
と診断するのが妥当であると考えられた。この
疾患概念は従来の〝心臓性突然死〟という表現
2
0
1
-2
0
8
3.森田大,西原功,大野正博,福本仁志,冨士原
彰:院外心肺停止で搬送されてきた急性心筋梗塞
とは異なり、冠動脈病変に起因して発症したと
の臨床的特徴:蘇生に成功した症例からの検討.
いう、より病態に即した意味合いを持っている。
日救急医会誌 1
9
9
8
;1
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:8
1
-9
0
また梗塞としうるだけの形態学的変化を捉えき
4.東海林哲郎,金子正光,伊藤靖,坂野晶司,今
れない今回のような症例の集積にも、今後寄与
泉均,小林謙二,他:成人内因性搬入時心肺停止
していく可能性がある。
症例における急性心筋梗塞の頻度とその超急性
期突然死例の病態:剖検時冠動脈造影と病理組織
学的検討.日救急医会誌 2
0
0
3
;1
4
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5
8
-1
6
2
参照文献
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第27回山形電気生理研究会抄録
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o
phys
i
o
l
o
gi
c
a
lRe
s
e
a
r
c
hGr
o
up
平成22年12月17日
(金)
山形大学医学部 第4講義室
3.
「手根の力と運動の自動計測・表示・記録装置の臨床応用」
成田亜矢 1 ,渡辺忠良 1 ,仲野春樹 1 ,荻野利彦 1 ,長沼誠 2 ,
一般演題
橋爪和足 2 ,内藤輝 2 ,鈴木克彦 3 ,佐藤寿晃3(1山形大学医
1.
「ストア作動性カルシウム流入チャネルに作用する新規ビスホ
学部整形外科学講座,2 同・解剖学第一講座,3 山形県立保健
ウ素化合物の解析」
後藤純一(山形大学医学部生理学講座)
医療大学)
カルシウムイオンは細胞内における重要なセカンドメッセン
演者らは、手根のあらゆる方向の力と運動を計測・表示・記録で
ジャーであり、その細胞質における濃度は細胞外よりも低く保たれ
きる装置(健常者用)を開発してきた。同装置は、手根の曲げによ
ている。小胞体を始めとする細胞内小器官の内腔には細胞質よりも
り第3中手骨頭部に発する力や手根の運動中の同骨頭の位置を2次
高濃度のカルシウムが存在し、I
P3
受容体等のカルシウムチャネルを
元(前額面)の軌跡で実時間表示することができる。これまで健常
介して細胞質へとカルシウムが放出されることで様々なシグナル伝
者を対象に8方向の曲げ力や描円運動の軌跡について測定し、前腕
達を行っている。
の肢位による変化や利き手と非利き手の違いなどについて報告して
ス ト ア 作 動 性 カ ル シ ウ ム 流 入(St
o
r
e
o
pe
r
a
t
e
dc
a
l
c
i
um e
nt
r
y,
いる。今回、新たに患者用の力計測装置を作製し、運動計測装置と
SOCE)は細胞内カルシウムストアである小胞体内腔のカルシウム
ともに臨床応用した。新装置は、種々の患者の手を簡便に固定でき
濃度がカルシウム放出等によって低下することで作動し、細胞外か
るようにするため、計測部を大きくして作製した。この装置で3名
らのカルシウム流入を誘導することで小胞体へのカルシウムの再充
の患者[症例1:パーキンソン病、症例2:脳腫瘍術後、症例3:
填を促す。近年、STI
MとOr
a
i
がSOCEを担う分子としてクローニン
橈骨神経深枝(後骨間神経)麻痺]の8方向の曲げ力、運動計測装
グされ、T細胞の成熟等に重要であることが示されている。本研究
置で1名(症例3)の自動描円運動を測定した。その結果、症例1、
ではSOCEの阻害薬である2
APBを改良し、その副作用であるI
P3
受
2では症状の回復に伴う力の増加、症例3では後骨間神経支配筋の
容体の阻害を相対的に弱めることでSOCEに対する選択性を高める
作用方向の力や可動域の減少を明確に示すことができ、治療効果の
ことを目的に化合物ライブラリーをスクリーニングした。6
0
0
余りの
判定や病態の把握などに利用できる可能性が示された。
化合物のうち、2種類の化合物(DPB1
6
2
AE,
DPB1
6
3
AE)はSOCE
4.
「脊髄モニタリングにおけるアラーム基準の検討」
仲野春樹,武井寛,橋本淳一,杉田誠,成田亜矢,荻野利彦
に対する阻害作用が2
APBよりも強力で、選択性も向上が見られた。
(山形大学医学部整形外科学)
HEK2
9
3
細胞を用いたSTI
M/
Or
a
i
強制発現系で電気生理学実験を行
い、これらの阻害薬のSTI
M/
Or
a
i
サブタイプによる作用の違いを調
経頭蓋電気刺激による複合筋活動電位を用いた脊髄モニタリング
べることで、どのような機構で阻害作用が発揮されるかの検討を
(Br
CMAP)
におけるアラーム基準を、Gr
a
de3:電位が両側で消失
行った。
した場合、Gr
a
de2:一側で消失し一側で低下した場合、Gr
a
de1:
2.
「組合せ神経筋電気刺激による手根の動作制御の試み」
一側で消失し一側で不変の場合に分類し設定した。 2
0
0
3
年8月か
長沼誠 1 ,橋爪和足 1 ,鈴木克彦 2 ,佐藤寿晃 2 ,藤井浩美 2 ,
ら2
0
1
0
年8月までに脊髄モニタリングを行った1
1
3
例のうち、両下肢
成田亜矢 3 ,内藤輝1(1山形大学医学部解剖学第一講座,2 山
記録でBr
CMAPを行った8
8
例を対象に本アラーム基準を検証した。
形県立保健医療大学,3 山形大学医学部整形外科学講座 ) Gr
a
de3で警告したのは、大動脈瘤手術の1例(術後運動完全麻痺)
、
短橈側手根伸筋(ECRB)と尺側手根伸筋(ECU)の組合せ神経
特発性側弯症の1例(術後不全麻痺)
、Gr
a
de2で警告したのは、症
筋電気刺激(ENS)で手根にどのような動きや力が誘発できるか調
候性側弯症の1例(矯正緩和し術後麻痺なし)
、Gr
a
de1で注意とし
べた。対象は健常男性の右上肢(前腕回内位)とした。ENSによる
たのは、
脊髄腫瘍の一例
(術後片側前脛骨筋の低下あり)
であった。
他
収縮閾値と最大収縮となる電圧をそれぞれ0
%と1
0
0
%の刺激強度と
に振幅の低下のみを示した例が5例あったが、全例術中に電位が回
した。ECRBとECUそれぞれの1
0
0
%刺激で手根の伸展(1
0
0
B)と内
復し術後麻痺の発生を認めなかった。
転方向の曲げ動作と力(1
0
0
U)、両筋の1
0
0
%同期刺激で1
0
0
Bと1
0
0
U
Br
CMAPにおいて、少なくとも一側の消失をもってアラームとす
の間の曲げ動作と力(1
0
0
BU)が誘発された。そこで、ECRBを1
0
0
%、
る本基準は妥当なものと考えられた。
ECUを1
0
9
0
%またはその逆の比率で同期刺激したところ、前者で
1
0
0
Bと1
0
0
BU、後者では1
0
0
Uと1
0
0
BUの間の曲げ動作と力が誘発さ
特別講演
れた。また、ECRBを1
0
0
%にしてからECUを10
0
%にし、ECRBを0
%
「聴性定常反応回想録」
に戻すまたはその逆の順番で交代刺激を行うと、1
0
0
Bと1
0
0
Uの間の
青柳優(山形大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座)
描弧動作と力が誘発された。両筋に加え他の伸筋や屈筋も組合せ
我々は昭和5
7
年頃からシグナルプロセッサ7
T1
7
(NEC三栄製)を
ENSすることで、あらゆる方向の曲げ動作や力、描弧動作や力が制
聴性誘発反応検査に導入して臨床に供すると共に、自作のソフトに
御できる可能性が示唆された。
より聴性定常反応(ASSR)の臨床的研究に取り組んできた。解析
ソフトは高速フーリエ変換による位相スペクトル解析法を用いたも
―7
7―
のであり、これにより閾値判定の感度が増し、検査時間の短縮が図
脳幹反応の、8
0
HzASSRは聴性中間潜時反応のs
t
e
a
dys
t
a
t
eve
r
s
i
o
n
れる。ASSRは、正弦波的振幅変調音を用いると周波数特異性の高
と考えられているが、その根拠について論じ、4つの周波数を一度
い反応となり、周波数ごとの聴力レベルが推定可能となる。4
0
Hz
に検査できるMASTER遺について解説すると共に、最近教室で取り
ASSRは成人覚醒時に適応となるが、睡眠時には反応性が悪化する
組んでいるASSRによる補充現象の検査についても述べ、教室にお
ので、幼児睡眠時には8
0
HzASSRが適応となる。4
0
HzASSRは聴性
けるASSR研究の過程について概説する。
―7
8―
山形医学 2
0
1
1
;2
9
(2
):7
9
-8
2
第21回実験動物セミナー研究成果発表会抄録
Abs
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1
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ma
lCe
nt
e
r
2010年12月16日 山形大学医学部視聴覚室
成し門脈に分泌する。しかし、胃E2合成分泌の制御機構や調節因子
1.ラット行動学習への慢性アルコール投与効果
などについては不明な点が多い。本研究では胃のE2合成分泌に及ぼ
○藤原浩樹,金子健也,伊藤貴史,上村雄太,松木惇,
す絶食の影響を調べた。
【方法】実験動物には1
2
週齢Wi
s
t
a
r
系雄ラッ
矢尾板亮,藤井聡(山形大学医学部生理学講座)
トを用いた。飼料を与えた対照群
(C)
、絶食1日群
(F1
)
、絶食7日
近年、アルコールは想起の過程で不安定になる記憶を安定化させ、
間に栄養剤を皮下投与した群
(F7
)
の3群を用意した。ELI
SAにて門
再固定を強く促進させると報告された。しかし、慢性アルコール摂
脈 と 動 脈 のE2 を 測 定 し、免 疫 組 織 化 学 に よ る 胃 粘 膜 上 皮 の
取ではいまだ不明な点が多い。そこで運動協調性と学習の形成に慢
Ar
o
ma
t
a
s
e
等の抗体陽性細胞の画像解析とRe
a
l
Ti
mePCR法による
性アルコール投与がどのような影響をもたらすかを検討した。そこ
1
7
βHydr
o
xys
t
e
r
o
i
d de
hydr
o
ge
na
s
(
e1
7
βHSD)
,1
7
αHydr
o
xyl
a
s
e
で、運動協調性は回転棒テストを用いて、運動学習を検討し、学習
(1
7
αH)
等の遺伝子発現量の検討を行った。
【結果】 門脈E2はF1
群
の形成には恐怖条件づけを用いて、記憶の獲得と想起のプロセスに
で2
7%、F7
群で9
0%減少し、動脈E2も絶食群で減少傾向を示した。
重点をおいて検討した。本実験ではラットを用い、慢性アルコール
回帰分析の結果、動脈E2量の減少は門脈中E2量に依存することが分
投与群とコントロール群の2群で検討した。回転棒テストは、回転
かった。粘膜上皮のAr
o
ma
t
a
s
e
抗体陽性細胞の面積は絶食群で減少
棒上に被験体を乗せてから落下するまでの時間や一定時間内に落下
した。遺伝子発現量では、
絶食群でAr
o
ma
t
a
s
e
と1
7
βHSDが減少し、
した回数を計測することにより運動協調性の障害の程度を評価した。
1
7
αHが増加した。
【考察】絶食は胃のステロイド代謝系酵素の遺伝
また、恐怖条件づけでは、CSに音刺激と光刺激、USに電激を対呈
子発現に影響を与え、E2合成を抑制するとともに、門脈に分泌する
示し、消去ではCSのみの呈示を行い、慢性アルコール投与と記憶へ
E2量を減少させる。
また、
門脈E2量が動脈E2量に反映することから、
の影響について検討した。回転棒テストでは、運動協調障害や運動
絶食による胃E2 の合成分泌抑制は内分泌器官に影響を与えること
学習の評価をした。2群とも変速回転実験と速度一定実験の両方で
が示唆された。
歩行時間に有意な差を見ることができなかった。また、恐怖条件づ
4.アルデヒド還元酵素(ALR)遺伝子改変マウスを用いたペント
けでは、条件づけにおいて記憶の獲得に有意な差がみられず、消去
バルビタール解毒障害機序の解明
○大槻倫之 1 ,伊藤純一 1 ,高橋素子 2 ,西田隼人 1 ,金野祐 1 ,
時に慢性アルコール投与群に影響がみられた。よって、慢性アルコー
角田智志 1 ,倉橋敏裕 1 ,張旭紅 1 ,宮田哲 3 ,藤井順逸1
ル投与は、
条件づけで恐怖を獲得でき、消去時の想起に影響を与えた。
(1山形大学大学院医学系研究科生化学分子生物学講座、2札幌
2.遺伝性食後高トリグリセリド血症(PHT)ウサギにおける脂質
3
医科大学医化学講座、
神戸大学大学院医学系研究科内科学講
代謝関連遺伝子発現の解析
1
2
2
1 1
○福田直樹 ,
伊藤恒賢 ,
大和田一雄 ,
藤井順逸( 山形大学
大学院医学系研究科生化学分子生物学講座,2 動物実験施設)
座・大阪厚生年金病院内科)
Al
de
hyder
e
duc
t
a
s
e
(ALR)は肝臓と腎臓に多く分布し、NADPH
山形大学医学部附属動物実験施設で開発された食後高トリグリセ
依存性にカルボニル化合物を還元・解毒する。最近ALRがアスコル
リド血症(PHT)ウサギは、食後にのみ高トリグリセリド血症を呈
ビン酸(ビタミンC)合成に関わることが明らかになった。しかし、
し、ヒトのメタボリックシンドロームのモデル動物として研究が進
ALRの解毒作用については対象基質をはじめ不明な点が多い。
められてきたが、その病態発症機構は未だ明らかになっていない。
今回我々は、ALRの麻酔薬に対する解毒作用について、遺伝子改
本研究では、PHTウサギの脂質代謝異常に関わる原因遺伝子を明ら
変マウスを用いて検討した。ケトン基を持つペントバルビタール
かにすることを目的とし、関与が考えられる9種類の脂質代謝関連
(PB)と持たないイソフルランを投与したところ、PBのみがALR欠
遺伝子について、それらのmRNAの発現レベルを調べ、PHTウサギ
損(KO)マウスに対して持続的な麻酔効果を示した。アスコルビ
と正常対照の間で比較解析した。その結果、PHTウサギでは食後に
ン酸欠乏食(CL2
群)で飼育したマウスにPBを腹腔内投与し麻酔時
FASmRNAの発現が増加し、HTGLmRNAの発現は低下すること
間を測定したところ、ALRKOマウス(8
8
分2
7
秒±4
9
6
秒)ではWt
が分かった。血液中のHTGL活性を測定したところ、PHTウサギで
マウス(6
2
分3
0
秒±3
6
秒)に比べて麻酔時間が有意に長く、ALR-
は対照と比較して有意に低値を示した。またPHTウサギにおける
Tg(4
2
分4
3
秒±2
9
8
秒)では逆に有意に短かった。しかし、CL2
群
HTGL遺伝子のエクソン領域と、プロモーターを含む 5
’
上流領域の
では普通食群に比べ麻酔時間が延長する傾向は見られたが、いずれ
約1kbの塩基配列を比較したところ、HTGLの第5エクソン領域に
の系統でも有意差を認めなかった。ALRはアスコルビン酸生合成を
1塩基置換を見出した。しかし、この1塩基置換はコードするタン
調節していることが確認されたが、PBの解毒にアスコルビン酸を補
パク質のアミノ酸置換を伴わない変異であった。5
’上流領域につい
因子とした酸化還元反応が関与するかどうかについては否定的で
ては、両系統間で塩基配列に違いは認められなかった。
あった。以上の結果より、PBは主に肝臓のALRの直接作用により解
3.胃のEs
t
r
adi
ol
17β合成分泌は絶食により抑制される
毒されていることが示唆された。
○松田友美,小林裕人,吉田沙織,孫英傑,白澤信行,内藤輝
(解剖学第一講座)
5.マ ウ ス 盲 腸 部 に お け るNa+ 依 存 性 モ ノ カ ル ボ ン 酸 輸 送 1
(SMCT1)の遺伝子発現に及ぼすカシューナッツ殻液給与の影響
【目的】胃の壁細胞は胃酸分泌に加えて、Es
t
r
a
di
o
l
1
7
β
(E2)も合
―7
9―
○小笠原実咲,遠藤翔子,小酒井貴晴(山形大学地域教育文
化学部生活総合学科食環境デザインコース)
輸送体であるSMCT1
の遺伝子発現が誘発されたと考えられた。今後
【目的】カシューナッツはウルシ科の植物であり、その殻から得ら
の課題としては、腸内発酵産物の濃度の測定を検討したい。
れるカシューナッツ殻液(CNSL)は抗菌性を有することが知られ
6.マウス腸管部におけるNa+依存性グルコース輸送体1(SGLT1)
ている。最近、CNSL給与が草食動物の消化管におけるメタンガス
の遺伝子発現に及ぼすカシューナッツ殻液給与の影響
産生を抑制するとともに、プロピオン酸産生を促進するということ
○遠藤翔子,小笠原実咲,小酒井貴晴(山形大学地域教育文
が報告された。微生物発酵産物である酢酸、プロピオン酸および酪
化学部生活総合学科食環境デザインコース)
酸はモノカルボン酸の短鎖脂肪酸で、大腸内容物における主要な陰
【目的】
食物中の炭水化物や食物繊維は消化管微生物により代謝さ
イオンである。これら短鎖脂肪酸の吸収にはナトリウム依存性モノ
れ、酢酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸が産生される。最近の研
カルボン酸輸送体(SMCT1
)が関わっていることが示唆されている。
究で、カシューナッツの外殻から得られるカシューナッツ殻油
しかし、
CNSLの給与が盲腸部SMCT1
発現に及ぼす影響は不明である。 (CNSL)給与が草食動物の消化管におけるメタンガス産生を抑制す
そこで本研究では、2
8
日間のCNSL給与がマウスの体重及び盲腸部
る上に、プロピオン酸産生を促進することが報告されている。つま
におけるSMCT1
の遺伝子発現率に及ぼす影響について検討した。
り、食品中の栄養素、消化管微生物発酵及び消化管の栄養素吸収の
【方法】8週齢雄I
CRマウス(日本クレア社)4
0
匹(1処理区1
0
匹)
3者間には相互関係が存在すると考えられる。上述のように、
CNSL
を供試した。マウス用粉末飼料(CE2
)を給与して2週間の馴致を
は消化酵素発酵パターンを変えると報告されていることから、グル
行った後、①コントロール区、②0
.
0
3
%区CNSL給与区(0
.
0
3
%区)
、
コースなどの基質は微生物によって代謝され、動物腸管で吸収・利
③0
.
0
6
%CNSL給与区(0
.
0
6
%区)、④3
0
ppmモネンシン区(モネンシ
用されにくくなっていることが予想される。がしかし、CNSL給与
ン区)を設定して、各処理とも2
8
日間自由採食させた。CNSLは粘
がグルコース代謝に及ぼす詳細な影響は不明である。そこで、
CNSL
性の高い液体であるため、アルファルファ(マメ科植物)乾草粉末
を2
8
日間マウスへ給与したときの、マウス血中グルコース濃度とグ
に吸着させ、CE2
粉末に混合させて給与した。モネンシンは塩化モ
ネンシンを用いた。なお、コントロール区には、CNSLを含まない
+
ルコース能動輸送を担っているNa
依存性グルコース輸送体1
(SGLT1
)の遺伝子発現率に及ぼす影響を検討した。
アルファルファ乾草粉末を他の3処理区と同等量添加し、処理区間
【方法】8
週齢雄のI
CRマウス(日本クレア社)4
0
匹(1処理1
0
匹)
の給与成分の違いはCNSLのみとした。
を供試した。マウス用粉末飼料(CE
‐2
)を2週間給与して馴致した。
体重は毎週1回測定した。実験日当日、頸椎脱臼で安楽死させ、
処理区は、①コントロール区、②0
.
0
3
%CNSL給与区(0
.
0
3
%区)
、③
盲腸を摘出し、遺伝子発現解析まで-8
0
℃で保管した。t
o
t
a
l
RNA抽
0
.
0
6
%CNSL給与区(0
.
0
6
%区)及び④3
0ppmモネンシン(モネンシ
出はRNAi
s
oPl
u(
sタカラバイオ株式会社)を使用し、AGPC法で行っ
ン区)とし、各処理区とも2
8
日間自由採食させた。CNSLは粘性の
た。抽出したt
o
t
a
l
RNAから逆転写酵素(Appl
i
e
dBi
o
s
ys
t
e
ms
社 Hi
gh
高い液体であるため、アルファルファ(マメ科植物)乾草粉末に吸
Ca
pa
c
i
t
yc
DNA Re
ve
r
s
eTr
a
ns
c
r
i
pt
i
o
nKi
t
を使用)にてc
DNAを合
着させ、CE‐2
粉末に混合させて給与した。モネンシンは塩化モネン
成し、r
e
a
l
t
i
me
PCRにて盲腸部のSMCT1
遺伝子発現を解析した。
シンを用いた。なお、コントロール区には、CNSLを含まないアル
r
e
a
l
t
i
me
PCRで使用した各プライマー、プローブは表1に示す。
ファルファ乾草粉末を他の3処理区と同等量添加し、処理区間の給
SMCT1
の発現率はΔΔCt
法を用いて解析した。
与成分の違いはCNSLのみとした。
採血は、1群につき供試マウス6匹から約4
0
0
μLを心臓採血し、
real
ti
memouseBacti
nForward 5’TGACGGCCAGGTCATCACTAT3’
real
ti
memouseBacti
nRevrse
凝固させたのち、1
2
0
0
0r
pm×2
0
分、4℃で遠心分離し、血清を回
5’CCACAGGATTCCATACCCAAGA3’
Pri
mer
収した。血液中のグルコース濃度は酵素法で測定した。心臓採血後、
real
ti
memouseSMCT1Forward 5’CCCTGGCATCGCTGATG3’
頸椎脱臼にて安楽死させ、空腸部と盲腸部を採取し、8
0
℃に保管し
real
ti
memouseSMCT1Revrse 5’CCAAAGAAAACAAGCCCAGAAG3’
た。RNAi
s
oPl
u(
sタカラバイオ株式会社)を用いたAGPC法により、
real
ti
memBACTIN
5’FAMCAACGAGCGGTTCCGATGCCCBHQ3’
real
ti
memSMCT1
5’
FAMTTACCATTGCCCCTTGAAACCTATGGCTBHQ3’
組織からt
o
t
a
lRNAを抽出した。抽出したt
o
t
a
lRNAを逆転写反応
Probe
【結果】
(RT法)によってc
DNAを合成し、その後、r
e
a
l
t
i
me
PCRで SGLT1
の遺伝子発現率を測定した。SGLT1
の遺伝子発現率はβa
c
t
i
nで補
①4処理区とも体重は加齢に伴って増大したが、4処理区間に統
計的有意差は認められなかった。
正し、ΔΔCt
法にて解析した。
【結果】4処理区間の血中グルコース濃度は9
8
.
3
~1
0
9
.
7ml
/
dl
でほ
②盲腸部におけるSMCT1
遺伝子発現率は、モネンシン区、0
.
0
6
%区、
ぼ同程度であった。空腸部SGLT1
遺伝子発現率は、0
.
0
6
%区で最も
0
.
0
3
%区、c
o
nt
r
o
l
区の順で高値であった。特に、モネンシン区
高値を示し、次いでモネンシン区、0
.
0
3
%区、コントロール区の順で
のSMCT1
発現率はc
o
nt
r
o
l
区のそれより統計的に有意に高値で
あった。一方、盲腸部SGLT1
遺伝子発現率は、コントロール区で最
あった。
も高値を示し、次いで0
.
0
3
%区、0.
0
6
%区、モネンシンの順であった。
【まとめ】1
0
1
4
週齢のマウスにおいて、2
8
日間のCNSL給与は盲腸
CNSL給与区のSGLT1
遺伝子発現率は空腸部で増大し、盲腸部で減
部におけるSMCT1
発現率を増大させることが示唆された。しかしな
少したものの、統計的有意差は認められなかった。
がら本研究ではモネンシン区が最も高いSMCT1
発現率を示した。
【まとめ】1
0
1
4
週齢のマウスにおいて、0
.
0
3
%および0
.
0
6
%のCNSL
CNSLと同様にモネンシンは消化管内の微生物に選択的に作用し、
給与は血中グルコース濃度に影響しなかった。加えて、SGLT1
遺伝
プロピオン酸産生を促進することが既に明らかとなっている。よっ
子発現の結果から、CNSL給与はグルコース代謝には大きく影響し
てモネンシン区では、プロピオン酸産生が促進されたために、その
ないことが示唆された。
―8
0―
7.Domi
nantnegat
i
v
e(
DN)Maf
Bトランスジェニックマウスにお
9.PI
3K/
mTOR経路とMEK/
ERK経路のクロストークがグリオブ
ラストーマ幹細胞の自己複製能/
造腫瘍能の制御に関与する
けるマクロファージの検討
○佐藤道子,柴田陽光,木村友美,阿部修一,會田康子,
○砂山潤 1 ,松田憲一郎 1,2 ,佐藤篤 1,2 ,立花研 1 ,成田善孝 3 ,
岸宏幸,小坂太祐,山内啓子,井上純人,久保田功
渋井壮一郎 3 ,櫻田香 2 ,嘉山孝正 2 ,富山新太 1 ,北中千史1
(1 山形大・医・腫瘍分子医科学講座,2 山形大・医・脳神経
(内科学第一講座)
外科,3 国立がんセンター中央病院脳神経外科)
【背景】肺胞マクロファージ(AM)はCOPDの病態に重要な役割
を果たしている。我々は以前、喫煙暴露マウスのAMで転写因子
グリオブラストーマを形成する腫瘍細胞は放射線や抗癌剤に対す
Ma
f
Bの発現が亢進し、Ma
f
BがAMのアポトーシスを抑制している
る感受性が一般的に低く、予後は極めて不良であることが知られて
ことを報告した。また、重喫煙者でも同様に、AMのMa
f
B発現が亢
おり、従来とは異なる画期的な治療法の開発が待たれる。これまで
進していた。これまで遺伝子改変マウスを用いて、AMにおける
に、癌組織は自己複製能を持つ癌幹細胞とそこから分化した癌細胞
Ma
f
Bの役割を検討した報告はない。
【方法】Ma
c
r
o
pha
geSc
a
ve
nge
r
から形成され、癌の形成はこの癌幹細胞に支配されていることが分
Re
c
e
pt
o
rEnha
nc
e
r
Pr
o
mo
t
e
rDN Ma
f
Bトランスジェニックマウス
かってきた。近年、グリオブラストーマにも癌幹細胞が存在するこ
(MSRDN Ma
f
BTGマウス)を作製し、マクロファージの表現型と
とが報告されており、その性質及び機能解析が重要な課題となって
貪食能を解析した。
【結果】MSRDN Ma
f
BTGマウスでは、野生型
いる。本研究ではグリオブラストーマで活性に異常があることが多
マウスに比べて、気管支肺胞洗浄液中の細胞濃度が有意に減少して
いPI
3
K/
mTOR経路とMEK/
ERK経路の役割について検討を行った。
いた。また、AMには偽足の形態変化があり、貪食能は有意に低下
その結果、PI
3
K/
mTOR経路とMEK/
ERK経路の両経路を阻害する
していた。
【考察】今回の解析から、Ma
f
BがAMの数、細胞形態、
と一方の経路のみの阻害より分化度が増し、その背景として両経路
機能に影響を及ぼしていることが示された。当マウスを用いた検討
間にクロストークが存在していることが分かった。また、両経路の
が、COPDの病態を解明する契機になると考えられた。今後、生体
阻害によって分化した細胞の造腫瘍能は未分化なグリオブラストー
内でのMa
f
Bの機能解析を進める方針である。
マ幹細胞と比較して顕著に低下することも明らかにした。このこと
8.妊娠期の止血における凝固XⅢ因子陽性細胞の役割
から癌幹細胞は自身の未分化状態を様々な経路を用いて多重的に保
障することで造腫瘍能を維持させているのではないかと考えられ、
張偉光,岩田宏紀,○惣宇利正善,一瀬白帝
また、両経路の阻害がグリオブラストーマ幹細胞治療に有用である
(分子病態学講座)
血漿トランスグルタミナーゼ前駆体である凝固XI
I
I
因子(FXI
I
I
)
可能性が示唆された。
は、酵素部位であるAサブユニット(FXI
I
I
A)とその安定化に働く
10.新しい赤ワインポリフェノール成分の分離およびその血管弛緩
Bサブユニット(FXI
I
I
B)から成る異種四量体として血中に存在し、
作用機序の解析
止血と妊娠の維持および創傷治癒に働く。
FXI
I
I
Aはまた、
巨核球/
○山崎理美,片野由美,石幡明(山形大学医学部看護学科)
血小板や単球/マクロファージなどの細胞内にもFXI
I
I
Bとは独立
【背景・目的】赤ワインポリフェノール混合物は内皮細胞依存性の
して存在する。マウスにおけるFXI
I
I
Aの完全欠損は、雌が妊娠し
血管作用を示すが、それに比べ、レスベラトロールやケルセチンな
た場合、子宮内に致死的な出血を引き起こす。本研究では、FXI
I
I
A
ど赤ワインに含まれる既知のポリフェノールでは弱い血管弛緩作用
が血中では著減しているものの細胞内では野生型と同等レベル存在
しかみられない。そこで今回、赤ワインポリフェノール中の血管弛
するFXI
I
I
B欠損マウスについて、妊娠期の出血の有無を検討した。
緩作用を惹起する主要成分を探索することを試みた。【方法】逆相
FXI
I
I
A欠損マウスでは、9割を超えるマウスで妊娠1
0
日以降に膣
HPLCにてポリフェノール成分を分画し、得られた各成分の内皮依
からの出血を呈し、その6割が出血後1~2日後に死亡した。一方、 存性弛緩作用を、ラット摘出血管を用いて測定した。強い弛緩作用
FXI
I
I
B欠損マウスにおいては、1
0
匹中1匹のみ妊娠1
6
日目に出血を
の見られた分画について、弛緩反応の濃度反応曲線を作成し、また
認めたが、死亡することはなかった。妊娠1
0
日目の子宮を組織化学
作用機序解析と成分の同定を試みた。
的に観察したところ、床脱落膜内における顕著な出血がFXI
I
I
A欠
【結果】
(1)既知のポリフェノールよりも低濃度で血管弛緩反応
損マウスで確認され、FXI
I
I
B欠損マウスにおいても軽微な出血が認
を惹起する成分が分離された。
(2)この弛緩反応は内皮細胞除去に
められた。
FXI
I
I
B欠損マウスにおいて、
妊娠1
0
日目における血漿中の
より消失した。また内皮細胞無傷標本において、LNAMEを処置し
FXI
I
I
活性は検出されなかったが、床脱落膜における多数のFXI
I
I
A
た場合に弛緩作用が抑制された。
(3)質量分析の結果、既知のポリ
陽性細胞が免疫組織染色により検出された。FXI
I
I
B欠損マウスから
フェノールとは異なる分子量が検出された。
調製した白血球を妊娠したFXI
I
I
A欠損マウスに注入したところ、
【考察】今回得られた成分は、主にNOを介して血管弛緩反応をお
膣からの一時的な出血は認めたものの、死に至ることはなかった。
こすことが示唆された。質量分析の結果、糖鎖を付加した配糖体で
加えて、野生型、FXI
I
I
B欠損マウスおよび組織トランスグルタミ
あることが予測された。
ナーゼ欠損マウスの腹腔マクロファージを試験管内でFXI
I
I
A欠損
11.パッションフルーツ種子に含まれるポリフェノール成分の冠循
マウスの血漿、トロンビン、カルシウムと反応させたところ、フィ
環改善作用
ブリンの架橋結合が検出された。以上の結果から、妊娠時の出血に
○松本裕 1 ,佐野翔子 2 ,片野由美 1 ,石幡明1(1山形大・医・
おいて、FXI
I
I
A陽性細胞が止血に働き得ることが強く示唆された。
看護・病態機能学,2 森永製菓株式会社栄養機能研究室)
【背景】Pi
c
e
a
t
a
nno
l
は赤ワインやパッションフルーツなどに含ま
れているポリフェノールであり、抗酸化・抗炎症・血管平滑筋細胞
―8
1―
増殖抑制・再灌流不整脈抑制をはじめとする心血管保護的な生物活
性や抗がん作用などを有する。
13.遺伝性食後高トリグリセリド血症(PHT)家兎の血小板凝集能,
血漿NOおよびTGの経時的変化
【目的】今回、我々はPi
c
e
a
t
a
nno
l
およびパッションフルーツ種子
○菱沼早織 1 ,阿部陽平 1 ,伊藤恒賢 2 ,片野由美 3 ,石幡明3
抽出物中に存在する未同定のポリフェノール成分(Po
l
yphe
no
lX)
(1大学院医学系研究科,2 動物実験施設,3 基礎看護学講座)
が虚血性心疾患の予防に有用であるかどうかを調べる目的で、ラッ
【目的】近年、高脂肪食や運動不足などの生活習慣を背景にメタボ
ト冠灌流量(CF)に対する影響を検討した。
リックシンドローム(MS)を呈する患者が増加している。MSは心
【方法】56ヶ月齢の雄性Fi
s
he
r
3
4
4
ラットをエーテル麻酔後、速
血管イベントのリスク因子であり、特に高脂血症との関連が注目さ
やかに心臓を摘出し、
混合ガス(9
5
%O2、5
%CO2)で飽和したKr
e
bs
-
れている。血小板凝集能の亢進は血栓形成を促進させるため、心筋
He
ns
e
l
e
i
t
液(3
7
℃)を用いてLa
nge
ndo
r
f
f
式に定圧灌流(7
5c
mH2O)
梗塞をはじめとする虚血性心疾患の原因の一つである。しかしなが
した。Po
l
yphe
no
lXおよびPi
c
e
a
t
a
nno
(1
l0
、3
0
、1
0
0
μM)を投与し、
ら、高TG血症と血小板凝集能との関連について未だ明らかとなって
心機能、冠灌流量の変化を測定した。
いない。そこで、本研究では、高TG血症、高インスリン血症、中心
【結果】Pi
c
e
a
t
a
nno
l
はCF、HRおよび心機能に影響を及ぼさなかっ
性肥満などのMSの病態を呈するPHTの血小板凝集能、血漿NOおよ
た。Po
l
yphe
no
lX は 濃 度 依 存 性 に CFを 増 加 さ せ、 1
0
0
μMの
びTG値の経時的変化について検討した。
Po
l
yphe
no
lX 投 与 後、CFは 速 や か に 約1
0
% 増 加 し た。し か し、
【方法】1年齢(雄性)のPHTとその比較対象群として日本白色
Po
l
yphe
no
lXは、いずれの濃度(1
0
、3
0
、1
0
0
μM)においてもHR、LVP、
種(J
W)家兎(n=5e
a
c
h)を使用した。制限食(1
2
0
gを1
2
:
3
0
に給
dP/
dt
に影響を及ぼさなかった。
餌)
、水分自由摂取環境下、6、1
2
および1
8
時に各個体から血液を採
【結論】以上の結果から、Po
l
yphe
no
lXは、心機能に影響すること
取した。
なく冠血管を拡張させる作用を持つことがしめされた。
【結果・考察】PHTの血漿TG値は、J
Wと比較して高値を示し、
12.高トリグリセリド(TG)血症が血管弛緩能に与える影響
特に朝(6時)から昼(1
2
時)にかけて高値を示した。PHTの血小
○阿部陽平 1 ,菱沼早織 1 ,松本裕 1 ,伊藤恒賢 2 ,片野由美 3 , 板凝集能は、朝から昼にかけて高値を示し、一方で血漿NO値は、
石幡明3(1大学院医学系研究科,2 動物実験施設,3 基礎看護
朝から昼にかけて低値を示した。PHTの血小板凝集能は、血漿TG
学講座)
値と正の相関を示し、一方で血漿NO値と負の相関を示した。
【目的】最近の疫学研究で、食後高トリグリセリド(TG)血症が
14.ラット膀胱におけるアトロピン抵抗性収縮の加齢変化とその機序
○細田朋佳 1 ,
菱沼早織 1 ,
阿部陽平 1 ,
山田晃子 2 ,
小林優子 2 ,
高コレステロール血症と独立した心血管イベントの危険因子である
2 1
2
片野由美 2 ,
石幡明(
大学院医学系研究科,
基礎看護学講座)
ことが示された。しかしながら、高TG血症が心血管イベント発生に
どのような役割を演じているか一定の見解は得られていない。そこ
高齢化に伴い、頻尿や尿失禁などの生活の質を低下させる下部尿
で、本研究では高TG血症が血管機能に与える影響について検討した。
路症状を呈する過活動膀胱(OAB)が大きな問題となっている。
【方法】1年齢(雄性)の食後高TG血症(PHT)家兎とその比較
OABの治療薬である抗コリン薬は高齢者では、十分な効果を発揮し
対照群として日本白色種(J
W)家兎から摘出された胸部大動脈のリ
ない場合もある。これには膀胱平滑筋におけるアトロピン抵抗性収
ング標本を用いて、a
c
e
t
yl
c
ho
l
i
ne
(Ac
h)および ni
t
r
o
pr
us
s
i
de
(NP)
縮の関与が考えられているが、その機序については不明な点も多い。
による血管弛緩反応を評価した。さらに、5-6ヵ月齢(雄性)の
本研究では若齢、成熟齢、老齢のF3
4
4
ラットを用いて、1)膀胱
Fi
s
c
he
r3
4
4ラットの胸部大動脈から同様にして作製されたリング
平滑筋におけるアトロピン抵抗性収縮の加齢変化、2)膀胱平滑筋
標本に、TGを主成分とする脂肪乳剤(I
nt
r
a
f
a
t
)を処置した後、同
収縮に対するプロピベリンの効果、3)アトロピン抵抗性収縮への
様に血管弛緩能を評価した。
プリン作動性成分の関与について検討した。
【結果・考察】Ac
hによるPHTの血管弛緩能はJ
Wと比較して減弱
ラット膀胱において、加齢に伴いアトロピン抵抗性収縮は増加し
しており、I
nt
r
a
f
a
t曝露下の血管弛緩能も同様に減弱した。一方、
た。老齢ラットで増加するアトロピン抵抗性収縮をプロピベリンは
PHT および I
nt
r
a
f
a
t曝露下での NPによる血管弛緩能には変化が
有意に抑制した。膀胱収縮におけるプリン作動性成分に加齢変化は
なかった。以上より、高TG血症は血管内皮障害を引き起こし、血管
なかった。
弛緩能を減弱させることが示された。
以上より、加齢に伴うアトロピン抵抗性収縮の増加が高齢者の頻
尿、尿失禁の一因となっている可能性、プロピベリンは加齢に伴い
増加するアトロピン抵抗性収縮を効果的に抑制する可能性、プリン
作動性成分はアトロピン抵抗性収縮の一部を担っているが、その加
齢変化には他の不明なメカニズムが存在する可能性が示唆された。
―8
2―
査読の御礼
第2
9
巻の発刊に当たっては、以下の方々に査読していただきました。ご多忙中にも拘わらず
熱心に査読いただき、誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
石井 邦明 大谷 浩一 川勝 忍 川前 金幸
木村 理 久保田 功 後藤 薫 齋藤 貴史
貞弘 光章 柴田 陽光 白石 正 鈴木 民夫
田嶋 克史 冨田 善彦 早坂 清 藤井 聡
藤井 順逸 横山 浩之 吉岡 孝志 渡邉 哲
(五十音順・敬称略)
山形大学紀要(医学)投稿規程
紀要(医学)編集委員会
平成1
1
年3月2日制定
平成1
2
年1月7日改正
平成1
2
年9月5日改正
平成1
4
年1
1
月1
2
日改正
平成1
6
年4月1日改正
平成1
7
年4月1
9
日改正
平成1
9
年3月6日改正
平成2
0
年7月3日改正
平成2
3
年4月1日改正
1.名称
本誌の名称は、
「山形大学紀要(医学)
[Bul
l
e
t
i
no
fYa
ma
ga
t
a
Uni
ve
r
s
i
t
y(Me
di
c
a
lSc
i
e
nc
e
)
]
」
(I
SSN ;
0
2
8
8
0
3
0
X)とし、文献
引用に際しては、通称「山形医学(Ya
ma
ga
t
aMe
di
c
a
lJ
o
ur
na
l;
略称 Ya
ma
ga
t
aMe
dJ
)
」を用いてもよい。
2.掲載記事および発行
本誌は医学医療の進歩発展に貢献する論文で他誌に発表されて
いない原著、総説、症例報告、CPC、学会抄録、医学部における
学術講演会の要旨等を掲載し、年2回の発刊とし、各々の原稿の
締切日は3月1日及び9月1日とする。
3.投稿資格
投稿者は、原則として本学教職員、定年退職した者、現在本学
に相当年数勤務している非常勤講師、本学の大学院研究科学生及
び研究生とする。
4.掲載の可否
原稿の採否並びに掲載号については山形大学紀要(医学)編集
委員会(以下、委員会)に一任のこととする。原著論文について
は、編集委員会は2名の査読者に審査を依頼する。審査の結果必
要ならば、編集委員会は原稿の修正等を求めることができる。
5.投稿論文の提出
本誌への投稿の際には次のものを揃えて、委員長宛に提出する。
1)手紙
2)表紙
3)抄録
4)本文
5)文献
6)表・図版とその説明
7)邦文論文にあっては欧文抄録
表紙を1頁、表・図版とその説明を最後として頁を加える。
手紙は1通、他は正1部、副(コピー)2部を提出する。原稿
にはA4判用紙を用い、原則としてワードプロセッサーを使用
する。
邦文は4
0
字×3
0
行とし、平仮名、横書き、現代仮名づかいを
用いる。数字は算用数字を用いる。欧文では、必ずタイプを用
い、ダブルスペースで、原則として8
0
字×2
0
行とし、3c
mの
マージンを空ける。邦文の原著、総説は原則として1
6
,
0
0
0
字以
内、症例報告は8
,
0
0
0
字以内とし、表・図版は4
0
0
字と換算する。
欧文の場合は、原著、総説は2
5
枚以内、症例報告は1
0
枚以内と
する。
査 読 終 了 後 に 投 稿 論 文 を 収 録 し た フ ラ ッ シ ュ メ モ リ ー、
CDR、またはフロッピーディスク(以下フラッシュメモリー等
という)をウィルスの有無を確認の上委員長宛に提出する。
フラッシュメモリー等には投稿論文(表・図版の説明を含めて
もよい)以外のファイルを収録してはならない。
6.手紙
この論文がこれまでに他誌に掲載されたことがない、または
投稿中ではないことを述べた内容を含む。
7.表紙
1)論文名(これには略語を用いてはならない。
)
2)ランニングタイトル(邦文2
5
字以内、欧文4
0
字以内)
3)著者名
4)所属教室名(または機関名)
5)論文の連絡者名
6)希望別刷部数
7)ワードプロセッサーの機種名、ソフト名(バージョンも
記入のこと)
、ファイル名を記入する。
8.抄録
邦文においては8
0
0字以内、欧文においては2
0
0語以内とし、
構成は、背景、方法、結果、結論とする。 Ke
ywo
r
ds
を5つ以内
付記する。
9.本文
1)構成は、緒言、対象と方法、結果、考察、謝辞とする。
2)測定単位以外の略語は使用しない。 ただし、標準的な
略語は初めて表示する際に省略元の語句を明示した後に
使用してもよい。
3)文献は該当箇所の右肩に片括弧で引用順に記す。
4)表・図は該当箇所に括弧で表示し、図版は印刷に耐えら
れるものとする。
5)商品名、薬品名は一般名とし、単位、記号は国際単位を
用いる。
6)動植物、微生物等の学名は、邦文では片仮名とする。
7)統計処理法を明記する。
8)
文部省科学研究費等の研究費の出所は謝辞の項に記載する。
1
0
.参照文献
1)引用順に一括する。
2)私信、未発表データ、及び「未発行」または「投稿中」
の原稿に対して番号をつけた文献は認めない。
3)雑誌名の省略は、I
nde
xMe
di
c
us
及び医学中央雑誌に
従う。
4)著者が6名以内の場合は全員を記載し、7名以上の場合
は最初の6名のみを記載して後は「他」または「e
ta
l
.
」と
する。
5)記載形式は以下のとおりとする。
例①雑誌
1.楊黄恬,野呂田郁夫,遠藤政夫:メトキサミンの強心作
用とPI
代謝促進効果.心臓 1
9
9
4
;
2
6
(
Suppl
.
4
)
:
2
4
2
8
2.Endo
h M: Phys
i
o
l
o
gi
c
a
l a
nd pa
t
ho
phys
i
o
l
o
gi
c
a
l
a
t
i
o
no
fc
a
l
c
i
um s
i
gna
l
i
ng i
n myo
c
a
r
di
a
lc
e
l
l
s
.J
pn
mo
dul
Ci
r
cJ1
9
9
1
;
5
5
:
1
1
0
8
1
1
1
7
例②単行書
1.遠藤政夫,安部不二夫:血管平滑筋内皮細胞におけるCa
イオンの研究法.江橋節郎編,エクオリン実験法.東京 ;
学会出版センター,1
9
9
0:
2
9
1
3
0
1
2.Wa
t
a
na
beT,s
hi
ma
z
a
kiY,Sa
i
t
o
hH,Kur
a
o
kaS,J
iWe
i
o
o
df
l
o
w i
nt
he
Zha
ng,Os
hi
ki
r
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l
.:Nut
r
i
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r
f
us
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o
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l
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i
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t
he
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a
.
a
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o
t
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I
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Ao
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i
cSur
ge
r
y.
Ams
t
e
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da
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El
s
e
vi
e
r
,
1
9
9
7
:
5
9
6
9
1
1
.表・図版
表・図版の説明は本文とは別にまとめる。表・図版・写真は、
「図版台紙」に貼り付けするか、
「図版台紙」に示された規格に
準拠して作成する。
1
2
.倫理
臨床治験に関しては「ヘルシンキ宣言」、動物を用いた研究は
「山形大学動物実験規程」あるいはこれに準ずるものを遵守した
ものでなければならない。 このことを本文中に明記する。
1
3
.校正
校正はすべて著者が責任を持って行う。校正の段階での大幅な
加筆や訂正は認めない。
1
4
.Na
t
i
ves
pe
a
ke
r
による校閲
欧文論文及び欧文抄録は著者の責任により論文の提出前に
Na
t
i
veSpe
a
ke
rの 校 閲 を 受 け る。 表 紙 に Na
t
i
veSpe
a
ke
r
の
「所属・氏名等」 を記入する。
1
5
.経費
出版経費に不足が生じた場合、別刷料(1
0
0部を超える場合)
及び特殊印刷費用については、著者の所属する教育研究分野、
講座等の大学運営資金をもって負担することがある。
1
6
.著作権
論文を投稿する者は、山形大学に対して、当該論文に関する
出版権・複製権・公衆送信権の利用につき許諾するものとする。
なお、掲載された論文等は、原則として電子化するものとし、
山形大学機関リポジトリに保存し附属図書館ホームページ等を通
じてコンピュータ・ネットワーク上に公開する。
他者に著作権が帰属する資料を引用・転載する場合は、投稿者
自身が著作権者の了解を得たうえで、出所を明記する。
附 則
この規程は、平成1
1
年4月1日から施行する。
附 則
この規程は、平成1
2
年1月7日から施行し、平成1
2
年1月1
日から適用する。
附 則
この規程は、平成1
3
年1月1日から施行する。
附 則
この規程は、平成1
4
年1
1
月1
2
日から施行する。
附 則
この規程は、平成1
6
年4月1日から施行する。
附 則
この規程は、平成1
7
年4月1
9
日から施行し、平成1
6
年4月1
日から適用する。
附 則
この規程は、平成1
9
年3月6日から施行する。
附 則
この規程は、平成2
0
年7月3日から施行する。
附 則
この規程は、平成2
3
年4月1日から施行する。
その他の注意事項
1.「投稿申込書」について
各々の原稿の締切日の1か月前(2月1日及び8月1日)まで
に投稿申込書を提出してください。
2.本学の大学院研究科学生及び研究生の投稿について
「学位論文」および「本学教職員との共著論文」である場合に
投稿が認められます。学位論文については指導教員の承認を得て
ください。
3.「学会報告」について
別に申合せが定められていますので、新たに投稿を希望される
場合は予め医学部事務部学務課図書担当へお尋ねください。
4.
「海外ニュース、トピックス等」について
本学部関係の海外研究者の方が、現地での研究の動向(ニュー
ス、トピックス等)を投稿する場合は、
1)邦文:4
0
字×3
0
行で作成の原稿4枚以内
2)欧文:8
0
字×2
0
行で作成の原稿6枚以内
としてください。また、本学における所属講座(責任講座)を
明記するようにしてください。
5.その他不明な点は、医学部事務部学務課図書担当までご照会く
ださい。
編 集 後 記
山形医学第2
9
巻第2号をお届けします。山形医学を冊子体としてお届けするのは、これ
が最後になります。第3
0
巻からは電子版のみとなる予定です。時代の流れといえば流れ、
伝達方法の進歩といえば進歩ですが、少し寂しい感じがしないわけでもありません。
本号には、原著論文2編、症例報告3編、研究会抄録2編が掲載されています。原著論
文はそれぞれ力作ですが、症例報告について少々触れてみましょう。3編のうち2編は、
筆頭著者の所属が卒後臨床研修センターです。つまり、研修医によって書かれたものです。
「山形医学の存在意義は?」ということが、繰り返し議論の俎上に上げられてきました。全
部英文にして、国際的にも認められ、I
mpa
c
tFa
c
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o
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の高いものを目指すべきだと主張した
人もいました。しかし、これは余りにも現実を無視した意見であると考えます。それぞれ
の雑誌にはそれぞれの役割があります。山形医学の役割は、当然のことながら、Na
t
ur
e
や
Sc
i
e
nc
e
とは異なりますし、Ne
w EngJMe
dとも異なります。私は、山形医学は本格的な
論文を書く練習台でかまわないと思っています。但し、練習も真剣に行わなければ上達は
ないので、そこは筆者、指導者とも心して臨んでもらわなければなりません。この点を少
し軽々しく考えている投稿者もこれまで残念ながらいました。また、山形医学は、ローカ
ルであっても全然かまいません。全国的には既にかなりの報告があって全国誌に掲載され
ることは難しいが、身近な問題として是非周囲の人たちに知ってほしいという症例であれ
ば、ツキヨタケ中毒にしろ、クレゾール中毒にしろ、注意を促す意味でも意義があります。論
文は、その内容を誰かに知ってほしいと思うところから始まるのですから。そして、論文
の先ず第一の価値は、筆者がその論文にどれだけ愛着を持っているかです。
編集委員長 本 山 悌 一(平成2
3
年7月3
0
日記)
山形大学紀要(医学)編集委員会
委 員 長
本 山 悌 一
副委員長
中 村 孝 夫
副委員長
石 幡 明
委 員
浅 尾 裕 信
委 員
根 本 建 二
委 員
川 前 金 幸
※
※ 編集責任者
平成2
3
年8月1
5
日印刷
平成2
3
年8月1
5
日発行
編 集 兼 山
発 行 者
形
大
学
山形市小白川町1丁目4-1
2
印 刷 所 株式会社 大 風 印 刷
山形市蔵王松ヶ丘1-2-6
山 形 大 学 紀 要(医 学)
I
SSN 0
2
8
8
-0
3
0
X
山 形 医 学
第2
9
巻 第2号 平成2
3
年8月
目 次
原 著
東北地方における血友病インヒビター調査のまとめ
菅原宏文,鈴木宗三,惣宇利正善,小嶋哲人,一瀬白帝……………………………3
7
強い内皮依存性血管弛緩作用をもつ新たな赤ワインポリフェノールの特性
山崎理美,岩田宏紀,村田恵理,片野由美,石幡 明………………………………4
5
症例報告
ツキヨタケ中毒の4症例
林田昌子,清野慶子,伊関 憲…………………………………………………………5
7
低容量のドパミン投与により治療したクレゾール中毒の一例
榎戸正則,伊関 憲,福家千昭,佐多晶子,高橋徹也
林田昌子,清野慶子,篠崎克洋,大谷浩一……………………………………………6
3
C P C
急性冠症候群と考える院外心停止の1剖検例
西 勝弘,刑部光正,伊関 憲…………………………………………………………7
1
学会抄録
第2
7
回山形電気生理研究会抄録……………………………………………………………………7
7
第2
1
回実験動物セミナー研究成果発表会抄録……………………………………………………7
9
山 形 大 学
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