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-1- 第6章 法人課税 第1節 法人の捉え方 (1 )法人実在説と法人擬制説
第6章 法人課税 第1節 法人の捉え方 (1 )法 人 実 在 説 と 法 人 擬 制 説 法人擬制説 →法人を株主の集合体として捉え、法人自体には担税力はないとする考え方 法人税は個人所得税の前払い ↓ 個人所得税と法人税の二重課税を調整 1989 年 以 前 法人税において配当分へ軽課税率を適用 1988 年 法人税率 留 保 43.3 % 、 配 当 33.3 % 個人段階での配当に対して配当税額控除 1989 年 抜 本 税 制 改 革 1990 年 4 月 配当経過措置撤廃 法人税率 留 保 分 、 配 当 部 分 と も 37.5% へ 法人実在説 →法人を独立の法的人格を認められた実体として捉え、経営者によって運営される独立の 意思決定単位であり、法人自体が担税力をもつという考え方 ↓ 個人と同様に法人にも累進税率表を適用すべき →現行税制:中小企業の法人税率には軽減税率が適用 (2 )個 人 所 得 税 と 法 人 税 の 二 重 課 税 の 調 整 表 6-1 主要国の負担調整に関する仕組み 国 日 本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 項目 法 人 間 ① 原 則 : 80% 益 金 不 参 [ 持 株 比 ] [ 益 金 不 参 全 額 損 金 不 参 入 配当 入 入率] ② 株 式 保 有 割 合 25% 以 20% 未 満 ・ ・ ・ 70% 上 20% 以 上 80% 未 満 ・ ・・ 80% の 特 定 株 式 等 に 係 る 配 80% 以 上 ・ ・ 100% 当は全額益金不参入 ① 原 則 : インピューテーシ ョ ン方 式 受取配当額とその 1/2 を 課 税 所 得 に 算 入し、受取配当額 の 1/2 を 算 出 税 額 か ら控除する。 ②子会社から受け 取る配当について は益金不算入 法 人 税 部分調整方式 非調整方式 部分調整方式 完全調整方式 完全調整方式 と 所得 配当税額控除方式よ 所 得 税 か ら 、 配 イ ンヒ ゚ュ ーテ ーシ ョン 方 式 イ ン ヒ ゚ ュ ー テ ー シ ョ ン 方 式 イ ンヒ ゚ュ ーテ ーシ ョン 方 式 に 税 の 調 り、所得税と法人税の 当 に 係 る 法 人 税 は に よ り 、 所 得 税 に よ り 、 所 得 税 より、所得税と法 整方式 調整を部分的に行う。 全く控除せず。 と 法 人 税 の 調 整 と 法 人 税 の 調 整 人税の調整をすべ を部分的に行う。 をすべて控除。 て控除。 ( 注 ) 1. ド イ ツ で は 、 法 人 段 階 の 調 整 措 置 と し て 、 法 人 税 率 が 留 保 分 45% に 対 し 、 配 当 分 30% と な っ て い る 。 -1- イ ンヒ ゚ュ ーテ ーシ ョン 方 式 受取配当額とそ の 1/2 を 課 税 所 得に算入し、受 取 配 当 額 の 1/2 を算出税額から 控除する。 2. フ ラ ン ス で は 、 個 人 株 主 段 階 で 、 受 取 配 当 に つ い て は 、 公 社 債 利 子 を 併 せ て 独 身 者 で 年 8,000 フ ラ ン 、 夫 婦 者 で 年 1,6000 フ ラ ン を 限 度 と し て 所 得 控 除 が 認 め ら れ る 。 出所:税制調査会提出資料 インピューテーション方式 →仮に法人税がない場合に生じていたはずである個人の課税ベースを配当以外の課税所 得、課税後配当所得、法人税を加算することで算出し、その課税ベースに累進税率を適用 することで所得税額を計算し、法人段階で配当について前払いした税額を差し引くことで 最終的な税額を決定するもの ↓ 株主の段階での所得水準の差による税率の違いを考慮した上で配当所得に関する二重課税 の調整が可能になる 完全統合方式 法人所得のうち留保部分への課税も株主のキャピタルゲインとの間で、二重に課税されて いるとして、留保部分と配当部分のいずれについても個人所得税と法人所得税を完全に統 合しようとするもの →留保部分を個人株主に持ち株比率を用いて個人段階でのみ課税 部分統合方式 支払配当控除方式 留保部分にのみ課税し、配当部分については個人株主の段階での個人所得税として課税 (3 )地 方 税 と し て の 法 人 課 税 地方税 法人住民税、事業税 ↓ 公共サービスへの対価として法人も税を負担すべき ↓ 現行の地方税における法人への課税の多くは、所得を課税ベース ↓ 赤字法人課税が必要 事業税の外形標準化 (4 )法 人 税 と 転 嫁 法人税の最終的な負担 株主の配当の減少、株主のキャピタルゲインの減少、経営者の報酬の減少、従業員の給与 の減少、製品価格の上昇などへ転嫁 -2- 前転 製品価格へ転嫁 後転 従業員の給与の引き下げや配当の減少で株主へ転嫁 ・部分均衡モデルを用いた古典的見解 企業が短期的な利潤を最大化する場合、消費者価格には転嫁されず、法人税は株主の負 担になる ・一般均衡モデル 株主の受け取る配当が減少すると、株主の所得の減少、消費の減少を通じて、製品価格に 影響を与える可能性も ・売上高最大化行動 第2節 価格転嫁の可能性があり 法人課税の仕組みと現状 (1 )法 人 税 の 仕 組 み 「所得」=収入(益金)−費用(損金) 益金:資本等取引以外から生じる一切の利益 損金の計算の基準 企業会計原則:企業が将来の設備の置き換えに備えて減価償却費を計上 税法:その年に実際に資金が流出した場合にのみ費用(損金)として認める 税法上の減価償却 定額法 (取得価額−残存価額)/耐用年数=年当たり償却額 定率法 償却資産の耐用年数がn年とすると 取 得 価 額 × ( 1 − 償 却 率 ) n= 残 存 価 額 表 6-2 法 人 税 の 税 率 ( 2002 年 税 制 ) 1999 年 度 改 正 前 1999 年 度 改 正 以 降 普通法人の税率 34.5% 30 % 中小法人の軽減税率 25 % 22 % 公益法人等、協同組合等及び 25 % 22 % 30 % 26 % 特定の医療法人の軽減税率 特定の協同組合等の特例税率 (2 )税 収 に 占 め る 法 人 税 の 比 率 -3- 図 6-1 主 な 国 税 収 入 の 内 訳 の 推 移 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 1978年 1983年 1988年 所得税 1993年 法人税 1998年 消費税 出 所 :『 財 政 金 融 統 計 月 報 ( 租 税 特 集 )』 各 年 版 よ り 作 成 。 (3 )国 際 比 較 表 6-3 法人税率の国際比較 国 日 税 地 本 法人税 30.0% 事 方 業 11 年 度 改 正 前 11% 10 年 度 改 正 前 37.5% 10 年 度 改 正 前 12% 道府県民税 法人税額の 市町村民税 法人税額の12.3% イギリス 法人税 30% ド イ ツ 法人税 25% 営 法人税額の フ ラ ン ス 法人税 ※ 9.6% 34.5% 35% 州法人税 付加税 税 11 年 度 改 正 前 アメリカ 法人税 付加税 税 8.84% ── 業 税 19.65% 5.5% 3 3 1/3 % 法人税額の 6% アメリカの「地方税」は、カリフォルニア州の例である。 出 所 : 財 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/083.htm -4- 5% ── 図 6-2 法人実効税率の国際比較 ( 注 ) . 日 本 の 実 効 税 率 は 、 法 人 事 業 税 が 損 金 算 入 さ れ る こ と を 調 整 し た 上 で 、「 法 人 税 」「 法 人 住 民 税 」「 法 1 人事業税」の税率を合計したものである。 2 .アメリカの「地方税」は、カリフォルニア州(州法人税)の例である。なお、一部の市では市法人 税 が 課 税 さ れ る 場 合 が あ り 、 例 え ば ニ ュ ー ヨ ー ク 市 で は 連 邦 税 ・ 州 税 ( 7.5 % 、 付 加 税 [ 税 額 の 17 % ] ) ・ 市 税 ( 8.85 % ) を あ わ せ た 実 効 税 率 は 45.95 % と な る 。 こ の ほ か 、 一 部 の 州 ・ 市 で は 、 法 人 所 得 課 税 の ほか、支払給与額等に対して課税される場合もある。 3 . ド イ ツ の 実 効 税 率 は 、 付 加 税 ( 法 人 税 額 の 5.5 % ) を 含 め た も の で あ る 。 な お 、 ド イ ツ の 「 国 税 」 は 、 連 邦 と 州 の 共 有 税 ( 50 : 50 ) で あ り 、「 地 方 税 」 は 、 営 業 収 益 を 課 税 標 準 と す る 営 業 税 で あ る 。 4 . フ ラ ン ス の 実 効 税 率 は 、 付 加 税 ( 法 人 税 額 の 6 % ) を 含 め た も の で あ る 。 ま た 、 法 人 利 益 社 会 税 (法 人 税 額 の 3.3 % ) を 含 め る と 実 効 税 率 は 36.43 % と な る 。 (た だ し 、 法 人 利 益 社 会 税 の 算 定 に お い て は 、 法 人 税 額 よ り 500 万 フ ラ ン の 控 除 が 行 わ れ る が 、 実 効 税率の計算にあたり当該控除は勘案されていない。) なお、フランスでは、法人所得課税のほか、職業税(地方税)が課税される。 5 . 諸 外 国 に つ い て は 、 2001 年 7 月 現 在 の 税 制 に 基 づ く 出 所 : 財 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/084.htm -5- (4 )法 人 税 負 担 の 現 状 図 6-3 資本金階級別にみた法人税負担 4,000,000 3,500,000 百万円 3,000,000 2,500,000 2,000,000 1,500,000 1,000,000 500,000 10 0万 円 未 10 満 0万 円 以 20 上 0万 円 以 上 50 0万 円 以 10 上 00 万 円 以 20 上 00 万 円 以 50 上 00 万 円 以 上 1億 円 以 上 5億 円 以 上 10 億 円 以 上 50 億 円 以 上 10 0億 円 以 上 0 法人数 税負担額 出所:前川聡子・本間正明「法人税改革への提言−日本経済活性化のための実現可能な 法 人 税 率 − 」『 税 研 』 第 75 号 Vol.13,1997 年 ,p33 引 用 。 第3節 法人課税の諸問題 (1 )引 当 金 ・ 準 備 金 の 見 直 し -6- 表 6-4 主要国の税制上の引当金の概要 日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 負債性引当金は原 負債性引当金は原 負債性引当金に関し、 負債性引当金は、引当金 則として認められ 則として認められ 税法上は一般的な規定 に関する一般的な規定に (平成 6 年度 ない。 ない。 がなく、企業会計に従 基づき一定の要件を充足 末残高) 貸 倒 引 当 金 (注 1 ) い個別に認められる。 × × 〇 〇 × × × × 87,768 億 円 × × 〇 〇 139,335 億 円 × × × × × × 〇 〇 × × 〇 〇 46,726 億 円 返品調整引当金 N.A. 賞与引当金 退 職 給 与 引 当 金 (注 2 ) 特別修繕引当金 N.A. 製品保証等引当金 すれば認められる。 2,511 億 円 ( 注 1) ① 個 別 の 債 権 に つ い て 、 具 体 的 な 判 断 を す る こ と な く 、 法 定 率 又 は 実 績 率 で 繰 入 を 認 め る も の に つ い て 記 載 。 ② ア メ リ カ で は 、 総 資 産 平 均 残 高 5億 ド ル 以 下 の 金 融 機 関 に つ い て の み 認 め ら れ て い る 。 ( 注 2) ① 退 職 一 時 金 に 関 し 、 内 部 留 保 と な る も の を 記 載 。 ②ドイツでは、一定の要件を充たした場合に税法上、退職年金引当金が認められる。 出所:税制調査会「これからの税制を考える−経済社会の構造変化に臨んで−」平成 9 年 1 月 、 付 属 資 料 26 頁 引 用 。 (2 )フ リ ン ジ ・ ベ ネ フ ッ ト 課 税 表 6-5 内訳別法定外福利費(常用労働者1人1ヶ月平均) 企業規模 法定外 住居に 医療・ 福利費 関する 保健に関 関する 娯楽 に関す 制 度 へ の 加 給 付 舞 等 の 励 金 等 法 定 外 福 費用 する費用 費用 る費 用 拠出金 の費用 1,456 円 1,179 円 1,144 円 計 文化・体育 私 的 保 険 労 災 付 慶 弔 見 財 形 奨 そ の 他 の 費用 の費用 利費 227 円 466 円 537 円 1,538 円 平成7年実額 計 13,682 円 6,330 円 5,000 人 以 上 23,601 11,708 1,875 2,315 1,910 765 95 629 1,408 2,897 1,000∼4,999 人 17,439 9,442 819 1,644 1,236 1,181 102 644 570 1,801 300 ∼ 999 人 11,317 5,864 396 1,182 888 1,051 233 367 346 989 100 ∼ 299 人 8,069 2,724 381 1,026 802 1,177 318 321 197 1,123 30 ∼ 6,907 1,342 228 1,023 977 1,551 403 334 91 959 99 人 760 円 食事に ( 備 考 ) 資 料 は 、 労 働 省 「 賃 金 労 働 時 間 制 度 総 合 調 査 」( 平 成 7 年 ) に よ る 。 出所:税制調査会提出資料 表 6-6 フリンジ・ベネフット税の主な課税対象 社宅 住宅貸付 社内食堂 従業員割引 福 利 厚 生 施 社用車 設 オースト 課税 ラリア 課税 課税 課税 課税 課税 非営利団体等の被 購 入 価 額 が 最 業務遂行に用 用者で老人や障害 低 市 場 価 格 の いた割合に相 -7- 者の看護を住み込 75% 以 上 の 場 合 当する部分は みで行う場合は非 は非課税 非課税 課税 ニュー 非課税 課税 非課税 課税 課税 課税 ジ ー ラ ン (個人段階で課税) (個 人 段 階 で 課 業務遂行に用 ド 税) いた割合に相 当する部分は 非課税 出所:税制調査会提出資料 -8-