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口頭発表セッション1抄録のダウンロード

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口頭発表セッション1抄録のダウンロード
O-7
医学部医学科における反転授業トライアル
Trial of flipped classroom on medical education
西屋
克己、岡田
宏基
Katsumi NISHIYSA, Hiroki OKADA
香川大学医学部医学教育学
Department of Medical education, Faculty of Medicine, Kagawa University
<あらまし> 反転授業とは、講義内容を 15 分程度にまとめたインターネット上の
動画教材を予習課題とし、従来宿題となっていた演習などの応用課題を講義で学生と
教員が対話的に学ぶブレンド型講義形態である。今回トライアルとして医学科5年生
の医療診断学の講義に反転授業を導入した。予習用動画教材の作成や対話型講義など
反転授業の実際、そして今後の医学科講義における反転授業の導入可能性について検
討する。
<キーワード>
1.導入の実際
e-ラーニング,反転授業, アクティブ・ラーニング
2、予習動画はどこで見ましたか。
自宅 31% 大学 69%
反転授業とは、従来講義で行っていた知識の伝
達を、15 分程度にまとめられたネットワーク上
の動画教材で行い、対面講義においては、予習し
てきた知識を活用して、教員とともに演習や討論、
症例検討などを通して、知識の活性化を行う講義
形態のことである(図1)
。
今回、医学科5年生の「医療管理学・診断学」
の授業のうち、1コマ(75 分)に反転授業を導
入した。出席者は 87 名(出席率 92%)であった。
その内容は「出血傾向」であり、予習用インター
ネット教材として、出血傾向に関する基礎知識を
15 分程度の動画にまとめた。医学部には動画配
信システム(Ub!Point:富士通)が整備されてお
り、簡単に動画教材を作成、サーバーへのアップ
ロードが可能である。(図2)学生はネットワー
クの整備された環境であれば、自宅など学外にお
いても動画を視聴できる。対面講義では、10 分
程度、動画内容の復習をおこない、残りの 65 分
で出血傾向に関する実際の症例を通じて、双方向
型の講義をおこない、予習してきた知識の活性化
をはかる(図3)
。
2.学生アンケートの結果
今回の反転授業を導入した講義に関する学生
アンケートをおこなった。授業に出席した学生の
回答率は 100%である。アンケートの結果は以下
の通りである。
1、予習動画を視聴しましたか。
はい 67% いいえ 33%
3、予習動画の時間は適切でしたか。
長い 9% ちょうどいい 91%
4、予習動画の難易度はどうでしたか。
ちょうどいい 93% 易しい 7%
5、予習動画は分かり易かったですか。
わかりやすい 66% 普通 34%
6、講義において予習してきた知識が活性化し応
用力がついたと思いますか。
とても思う 28% やや思う 69% あまり
思わない 3%
7、予習動画で基礎知識を身につけ講義で知識の
活性化を目指す授業スタイルは今後の大
学
の講義形式にどの程度取り入れた方が良いと思
いますか。
10 割 9% 7 割 5 分 29% 5 割 45% 2
割 5 分 16%
3.考察
大学における学生の学習には、「学習へのレデ
ィネス」の形成と「自己主導型学習」の導入が必
要である。反転授業では、学生はあらかじめ予習
用動画で基本知識を学習するため、学習へのレデ
ィネスが形成され、講義がアクティブ・ラーニン
グとなり知識の活性化が可能となる。トライアル
における学生のアンケートにおいても、自己の知
識の活性化を自覚し、今後の授業への反転授業の
導入を希望する結果となった。限られた人的資源
の中で、効率よく自己主導型学習を導入するため
には、反転授業は効果的な授業形態であると考え
る。
図1
図2
図3
O-8
Xerte を使用したブレンド型 e ラーニング活用に向けた
コンテンツ作製の取り組み
Our Experience Producing e-learning Contents with the Xerte Authoring Toll;
油川 ひとみ 1, R. ブルーヘルマンス 1,2、松村
一 3、泉
美貴 1,2
Hitomi YUKAWA1, Raoul BREUGELMANS1,2, Hajime MATSUMURA3, Miki IZUMI1,2
1 東京医科大学
医学教育推進センタ―
2 東京医科大学
医学教育学講座
3 東京医科大学
形成外科学講座
1
Medical Education Promotion Center, Tokyo Medical University
2
Department of Medical Education, Tokyo Medical University
3
Department of Plastic Surgery, Tokyo Medical University
<あらまし> 東京医科大学では 2011 年より e ラーニングの使用を開始した。資料の掲載など代替的
な役割のみではなく、さらなる活用をめざし、2013 年度よりオリジナルコンテンツの作製を開始した。
Xerte はオープンソースで、コンピュータの高い知識を必要とせず、機能も多彩で、ユーザのニーズに応えられ
るオーサリングツールである。しかし、動画のファイル形式の制限およびタブレットあるいはスマートフォンでの使
用が困難な機能があり、制作者が気をつける点・使用上の注意点もある。今回、本学での使用経験を報
告する。
<キーワード>
e-Learning,Xerte, コンテンツ, ブレンド型
1.はじめに
2.Xerte とは
東京医科大学では、2011 年より e ラーニング
Xerte の仕様には、簡単にコンテンツの作製が
を導入した。使用されている機能は、授業資料・
可能な通常版 Xerte Online Tool Kits 2.0、カス
参考資料の掲載、小テスト、レポート提出、学生
タマイズが可能なエキスパート版 Xerte 2.x、特
による授業評価が中心であるが、さらに e ラーニ
定 の OS 用 に カ ス タ マ イ ズ す る Xerte Flex
ングの特長である場所と時間を選ばない学習を
Compiler、および、リポジトリ―である Xpert
推進するために、オリジナルコンテンツの作製に
がある[1]。今回は通常版の Xerte Online Tool
着手した。
Kits 2.0 をダウンロードし、ローカルなサーバ環
本学の e ラーニングはブレンド型で、授業のよ
境下で制作した。
り効率的な運営と学習効果の向上を目的として
いる。したがって、現在開発中のコンテンツは、
授業内容を補完しつつ、系統的に学べるコンテン
ツで、自習時間だけでなく講義でも使用できるも
のを目指している。
われわれは 、 今回コンテンツ作製の ために
Xerte(ザーティ)を利用した。Xerte は、英国
Nottingham 大学で制作されたオープンソース
のオーサリングツールである(図 1)。コンピュ
ータの高度な知識を必要とせず、多種多様の教材
を作製できるシステムである。今後教員および学
生が自身による教材制作を可能とし、多くのオリ
ジナル教材を創出することを目指している。
図 1. Xerte ホームページのトップ画面 [1]
3.コンテンツ制作過程
初回のコンテンツとして、形成外科学における
教材である「皮膚縫合と創傷治癒の知識」を作製
した。制作期間は当初 3 ヶ月間を予定した。スト
ーリー作りと素材収集に 1 ヶ月、著作権処理と試
作品制作に 1 ヶ月、そして、検証と完成に 1 ヶ月
であった。医師の教員がストーリーと素材、検証
に携わったが、それ以外の作業は医学教育推進セ
ンターで行った。今回使用した Xerte Online
Tool Kits 2.0 はデフォルトでレイアウトも設定
されているため、レイアウトを自由に決められな
いが、数種のテンプレートから選択し、作製する
ことができる。Xerte の多彩な機能のうち、画像・
動画を掲載する方法は複数あり(図 2)、小テス
トや資料の掲載も様々な方法で行える。
図 3 ミニ e ラーニングコース「皮膚縫合と創傷治癒の知識」
載から 3 ヶ月を経て、学生による授業とは独立し
た学習活動として機能している。また、看護師な
どのアクセスもあり、幅広く活用されていること
がわかる。受講者にアンケートを行うことにより、
コースの内容等を評価し、次の教材に反映させる
予定である。
5.課題
Xerte は、画像、動画、テキストなどを様々な
コンテンツを作製することができる有用なシス
テムである。問題点として、アクティビティにい
くつかデバイスによる制限および使い勝手の悪
さがある。動画は、Flash だけに対応していたた
図 2 Xerte 編集画面
め、iOS では使用できなかった。また、数種のア
素材の使用方法およびアクティビティの種類が多い
クティビティに使用されているドラッグ&ドロ
ップの機能がスマートフォンおよびタブレット
Xerte は HTML5 でアウトプットできるシステ
では使用しにくいという意見がある。制作の段階
ムであるが、制作はコード入力を行う必要がなく、
でドロップの範囲等を工夫することで改善を計
テンプレートに記入するだけでよい。また、「プ
る予定である。
レビュー」機能が備わっており、作業中に出来上
がりを確認しながら制作できるため効率よく進
められる。修正や差し替えが項目単位で行えるた
め容易で、全体の調整などの手間がかからない。
制作期間は予定より短く、約 2 ヶ月で完成した。
6.おわりに
東京医科大学では、アクティブラーニングの普
及のために、e ラーニングを使用した自習教材の
作成を推進している。今後も Xerte を用いたコン
臨床の教員との打ち合わせと資料の収集が制作
テンツを充実させることにより、学生が自主的能
時間を決める鍵となった。
動的に学ぶことのできる教材を提供することを
目標とする。
4.成果物
成果物は、
「ミニ e ラーニングコース」として、
試験的に本学 e ラーニングサイトに掲載し、外部
からも自由に受講できるようにした(図 3)
。掲
参考
[1]http://www.nottingham.ac.uk/xerte/index.as
px
アクセス日:2014 年 1 月 21 日
O-9
学生による看護技術映像の自己評価と妥当性の検討
Examination of the validity of self-evaluation of nursing skill video by student
平野 加代子1,徳永
Kayoko HIRANO,Kiyoko
基与子1,真嶋
由貴恵2
TOKUNAGA,Yukie
MAJIMA
1
京都光華女子大学,2大阪府立大学
Kyoto Koka Women’s University
Osaka Prefecture University
<あらまし> 看護基礎教育の質を確保するために,様々な教育方法の検討が必要とされている.
特に,看護技術の習得過程において,自己評価を行うことは,技術に対するメタ認知を促し,自己ト
レーニングする上で重要である.しかし,初学者が正確に技術の良し悪しを判断することは容易ではな
い.そこで,無菌操作技術の演習時に撮影した映像を e-learning 上で視聴させ自己評価を行うこと
を課題とし,正確に自己評価がなされているか否か,その妥当性について検討を行った.
<キーワード>
e-learning,自己評価,看護技術,無菌操作
1.はじめに
項目で演習を実施した.
看護基礎教育の質を確保するために,様々な教
演習終了 1 週間以内に演習記録の自己評価を
育方法の検討が必要とされている.近年の映像技
提出させ,その後,e-learning 上にアップされた
術と視聴機器の発展,さらに e-learning システ
映像について確認させ,次の 3 つの視点から記述
ムの導入は,学生の自己学習を支援することを可
させた.視点1:清潔(無菌状態が維持できてい
能とした.特に看護技術教育では,自己評価をさ
るか)・不潔の区別による実施,視点2:視点1
せることは,技術に対するメタ認知を促し,事故
で出来ていない部分の改善点,視点3:その他気
トレーニングする上で重要である.徳永らは,演
づいた事,とした.
習時に撮影した映像を学生自身がチェックする
自己評価の分析方法は,質的帰納的に分析を行
ことで,自己の技術を客観視できることを報告し
い,技術の評価を表現している部分を抽出し,コ
ている[1] [2].しかし,初学者が正確に技術の良し
ード化・カテゴリー化を行った.さらに学生の自
悪しを判断することは容易ではない.そこで,無
己評価の妥当性を検討するために,学生の記述内
菌操作技術の演習時に撮影した映像を
容と映像を比較した.
e-learning 上で視聴させ自己評価を行うことを
倫理的配慮は,研究の目的と方法,記述内容や
課題とし,正確に自己評価がなされているか否か,
撮影映像は研究以外には使用しないこと,個人が
その妥当性について検討を行った.
特定されないこと,成績とは無関係であることな
どを説明し,同意を得た.本学倫理委員会の承認
2.対象および方法
看護大学生 1 年生 117 名のうち研究協力に同意
の得られた 112 名を対象とした.時期は,2012
年 10 月~11 月.看護技術演習の内容は,無菌操
作と滅菌手袋の着脱の技術とした.これらは,今
後学習していく看護技術の共通した基本となり,
清潔・不潔の概念を十分に熟知した上で,確実に
実施できなければならない.(1)滅菌パックを
を得た.
3.結果
3.1.自己評価記録の結果
記述された自己評価の内容を視点1,視点2,
視点3の観点から分析を行った.
視点1:567 の記述が抽出され,[実施前の確
開封(めくり法)し,受け取り側に渡す技術,
(2)
認不備],[清潔部分との接触],[無菌操作への注
滅菌鑷子(ピンセット)を受け取る技術,(3)
意],[自身の行動を客観視],[無菌操作にかかる
滅菌包の開け方,(4)滅菌手袋の着脱の技術の
時間],[清潔・不潔の判断]の6つのカテゴリー
に分類された.
概念を意識した実施ができていなかった.このこ
視点2:144 の記述が抽出され,[空間を確保
とは、学生の自己評価にも,「滅菌物の上を手が
する],[清潔・不潔の意識をもつ],[気流を起こ
通っていた」と評価し,映像を確認することで初
さない動き],「無菌操作のコツを獲得する」の
めて気づくことができていた.さらに,今回の学
4つのカテゴリーに分類された.
生の自己評価と映像を教員が確認することで,学
視点 3:74 の記述が抽出され,(1)滅菌パッ
クの技術では,
「手順はできていた」,「めくり方
生の自己評価の妥当性が確認できた.
さらに,その他の気づきで記述された内容から,
が不十分で相手が取りにくそうだった」など.
「滅菌物の取り扱いは,他の看護技術にも応用で
(2)滅菌手袋の装着の技術では,「装着を意識
きる技術がある」や,「落下細菌に注意しなけれ
しすぎている」
,
「手順通りにできない」,
「この技
ばならない」,
「無菌操作は常に清潔・不潔の概念
術は,他にも応用できる」,
「理解できていないと
を理解しておく必要がある」などの気づきが記述
うまく装着できない」など.
(3)その他,
「滅菌
されていた.手順通りできるだけではなく,根拠
物の上で操作することは,落下細菌などが影響す
の理解につながり,知識の確認につなげることが
る」,
「一つひとつの動きに根拠があることがわか
できたと考える.
った」などが記述されていた.
3.2.自己評価記録と実際の映像との
比較
学生の自己評価記録と実際の映像を比較し,自
己評価にズレがないかを確認した.
5.まとめ
今回,学生に看護技術映像を e-learning 上で
視聴させ自己評価を行うことを課題とし,正確に
自己評価がなされているか否か,その妥当性につ
視点1:「できていない」,「できている」とそ
いて検討を行った.映像を確認する時に,学生に
れぞれ評価した学生の映像と比較した結果,記述
いくつかの視点を示すことで,学生は演習時や映
内容とほぼ一致していた.
像視聴前の自己評価では気づかなかった事に具
体的に気づくことができていた.また,演習時は
4.考察
今回,無菌操作の演習において滅菌物の取り扱
いと滅菌手袋の装着という2つの技術を学生同
主観的な評価が中心であったが,自分自身の映像
を視聴することで,客観的な評価につなげる事が
できていた.
士で撮影させ,振り返りながら自己評価を行わせ
今後は、撮影映像を技術の確認にとどめず,知
た.学生の映像と自己評価を照合した結果,以下
識や技術の定着ができるような学習方略を検討
考察する.
していきたい.
手順については,無菌操作の手順は理解できて
おり,映像を確認しても,課題のある学生は見ら
れなかった.しかし,詳細項目である「清潔・不
潔の区別をした技術になっているか」については,
自己評価の通り曖昧な技術になっているケース
参考文献
[1] 徳永基与子,平野加代子,久留島美紀子:
“学内 e-ラーニングを活用した看護技術の学
習プログラムの試み 自己動画視聴の活用“,
滋賀医科大学看護学ジャーナル,Vol.11,
No.1,pp.48-51,2013.
が多くみられた.技術そのものは,イメージしや
[2] 徳永基与子,平野加代子:“講義・演習をつ
すく,手順に戸惑うことはないと考えるが,無菌
なぐ e-ラーニングによる自己学習の工夫”,
状態を維持した操作が確実に実施できてない.特
に,実施時は手順に注目しており,清潔・不潔の
教育システム情報学会研究報告,Vol.27,No.7,
pp.98-103,2013.
O-10
グループからチームへの意識変革を目指した
実習教育システムの構築
Construction of a training education system which aimed at
the consciousness change to a team from a group
荻津 直通、鈴木 茂孝
Naomichi OGITSU, Shigetaka SUZUKI
藤田保健衛生大学
Fujita Health University
医療系教育において、実習は知識の定着、問題解決能力の向上などに重要な役割を持っている。
我々は、実習を更に効果的なものとするため、TBL を範としたチーム活動に e ラーニング(Moodle)を導
入した能動的学習を試みた。実習前に、実習計画書を提出することを義務づけ、実習後には成果物
の発表とチーム間での評価に Moodle の「ワークショップ」機能を積極的に活用し、学生に学習成果の
発表の場を設けるとともに、学習することの喜びと達成感、チームへの責任感の育成を促した
<キーワード>
e ラーニング,グループ学習,能動的学習,Moodle
1.はじめに
本学科は、臨床検査技師を育成することを目指
している。その教育は、生命に関わる化学から生
ーム活動を中心とする実習を実施した。[1]
2.実習方式
積極的に学習に参加させるためには、「充分な
理学、薬学、医用工学など様々な分野に渡り、そ
予習」、
「学習目標の把握」、
「達成感」、
「責任感」
れらの実習は、技術の習得以外に、知識・メタ知
が重要と考え、授業方法に「レポートの事前作成」
、
識の定着、能動的な学習姿勢を体得させさる上で
「チーム活動」
、
「学生による相互評価」を取り入
重要である。本来、実習授業は“ラーニングピラ
れた。
ミッド”での「体験を通した学習」に該当するは
「充分な予習」と「学習目標の把握」を目的と
ずであるが、その効果が充分に機能していない。
して、実習前に、原理、理論の課題を予習して理
その原因は、手技にのみに集中し、実習の学習
解しておくことを徹底した。そのために、各個人
目標を理解していないことで、そのために無駄が
が実験計画書を実習開始前に提出することを義
多くなり、時間もかかり、かつ学習効果も低いも
務付けた。実験計画書の内容は、課題を与え、実
のとなっていた。レポートも教科書の丸写しなど、
習の目的、原理、操作法を中心とした。
内容の薄いものとなってしまう傾向があった。そ
「責任感」の育成には、実習結果と与えられた
の対策として、グループ学習の導入を行った。グ
考察課題の報告書をチームディスカッションに
ループ学習では、各学生がグループに対して責任
よりチームで考えることとした。これにより、チ
を持つことが要求され、単なる「グループ」から
ームに対する個人の責任感を啓発した。すなわち、
「チーム」として結びつけ、活発なディスカッシ
実習までの予習時間は個人活動とし、実習時間か
ョンの場となることが期待される。反面、学習者
ら結果の報告まではチーム活動とした。
間の依存心が強くなる、一人のリーダ的存在の影
その他、
「学習環境の整備」として、
「eラーニ
響が強く、偏った知識、誤った手技がそのまま伝
ング(Moodle)
」上に教材を作成し、予習、復習
搬するなどの問題点も考慮しなくてはならない。
に活用した。「達成感」、「責任感」の育成には
これらの問題点を解決するためには、従来の受
Moodle の「ワークショップ」機能を用いて、発
身の学習からアクティブラーニングへの転換が
表する充実感、評価してもらう喜びを体験する機
必要と考え、eラーニング(Moodle)を活用したチ
会を設けた。
3.実施
価が得られていた。
グループ学習は機器分析化学実習を対象に実
実習科目の開始時と終了時のアンケートから、
施した。この実習は新入生が専門教科として初め
チーム学習の効果は非常に良好な結果が得られ、
て受ける実習で、実験に対する知識を全く有して
協調性の育成に十分な効果が認められた。特に
いない学生が対象で、分析機器の計測理論、実験
「積極的に発言できた」とするものが 84%と多
の基本的事項を習得することを目標としている。
かったのが印象的であった。特に、自主性、思考
実習は 1 日 2 コマ 180 分で行い、56 名を1チ
する能力、能動的活動などが養われた効果が認め
ーム 7 名ずつの 8 チームに分けた。前述のごとく
られた。
予習を重視するために、毎回の.実習開始までに、
各人が、実習計画レポートを作成し提出すること
を義務づけた。
そして、実習当日は、TBL を範として、予習
の度合いを 確認するために 個別予習確認試験
(iRAT)とチーム予習テスト(gRAT)、実習に対す
る質問を含めたアピールとそのフィードバック
(解説)の実施を 60 分間で行った。[2]
その後の 120 分間でチーム毎に実習の段取り
を調整させた後、実習を行わせた。
実習終了後はチーム単位で、実習の「結果と考
察」を作成し、Moodle の「ワークショップ」に
提出させた。
提出されたレポートは全チームが閲覧し、実習
の最終日までに、各チームは Moodle により指定
された被評価チームに対して、教員が定めた基準
に沿って、ルーブリック評価を行わせた。
最終日に、最も高得点だったチームにプレゼン
テーションを行わせ、教員がそのプレゼンテーシ
図 チーム学習の効果;実習最終日に受講者全員にア
ンケート調査を行った。選択肢は肯定的回答と否定的回
答 2 種づつ、4 択とした。設問は貢献度 3 問、協調性 2 問
とした。欠席者 1 名と協調性に未回答が数名いた。
ョンに対してのフィードバックを行うことで、振
返り学習の効果を高め、学生の理解度を深める工
夫をした。
以上のように、チーム学習と e ラーニングを組
合わせたチーム力を生かすアクティブラーニン
4.結果と考察
学生の立場より、実習科目への e ラーニングの
利用については、おおむね良好な結果を得ること
グの工夫をした実習は、目標の理解、チーム活動
での責任感、達成感を持たせる上で、効果的であ
った。
ができた。e ラーニングの操作方法についても問
題点は皆無であった。
参考文献
しかしながら、e ラーニングを用いた勉強法や
[1] 山田 太郎,鈴木 次郎:
“e-Learning システ
その内容に少しの改善意見があった。これは教科
ムを用いたチーム基盤型学習の導入”, 高知
書と e ラーニングの記載内容の関連が浅いなど、
学園短期大学紀要 ,第 41 号,pp.1-19,2011.
説明が不足している部分も残っていたためであ
[2] 三木洋一郎、瀬尾 宏美: “新しい医学教育技
り、e ラーニングのコンテンツの充実を図る必要
法「チーム基盤型学習(TBL)」”, 日医大医会
が認められた。
誌 vol.7, No.1, pp.20-23, 2011
e ラーニングサイトのワークショップ機能を用
いた、「結果と考察」の提出レポートについての
チーム間の相互評価の方式は、おおむね良好な評
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