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vol.6 - 京都ノートルダム女子大学

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vol.6 - 京都ノートルダム女子大学
Librarianship in the 21st Century
Gregory Peterson (draft: 2011-01-03)
In the 21st century librarians must possess knowledge and skills
that my high school librarian, Mrs. Ruark, could not have imagined
in the 1960s. Although librarians today share much in common with
their predecessors, developments in information and communication
technology (ICT) continue to bring revolutionary challenges and
opportunities to their ancient profession.
Every day a flood of “content” is released on the Web, and anyone
can find popular information with large commercial search engines
like Google. However, finding the most valuable materials for
particular needs may require sophisticated information retrieval
(IR) skills and, in some cases, knowledge of subject-specific
gateways, databases, organizations, and repositories.
The publishing industry is changing dramatically with the appearance
of books in electronic formats (ebooks), online periodicals, and
news on the Web. Consumers use a variety of electronic devices,
such as PCs, ebook readers, digital cameras, video cameras, sound
recorders, and mobile phones. Ordinary people have become authors
and publishers as they create Web sites and blogs, participate in
social networking (Facebook, etc.) and microblogging (Twitter,
etc.), and share their photos (Flikr, etc.), audio recordings
(iTunes, etc.), and videos (YouTube, etc.). Librarians must keep up
with changes in technology, data formats, and trends in publishing
in order to make wise acquisitions and serve their patrons well.
The legal use of materials requires understanding of intellectual
property rights and restrictions. The use of copyrighted materials
may be severely restricted or very open, depending on the conditions
under which those materials are released. Without a clear
understanding of copyright laws and conditions of use, it is quite
easy to break the law.
Many librarians now create and maintain digital repositories in
which digital objects such as texts, images, audio recordings, or
video recordings are prepared, cataloged, and organized into
collections. Some objects are digitized from handwritten or printed
materials, audio recordings, photographs, films, or videotape, and
some objects are born digital. Many repositories are accessible on
the Internet, and now metadata about many collections can be
harvested automatically for subject gateways and other information
services. Digital repositories can be extremely valuable for the
preservation and sharing of cultural heritage materials, creative
works, research data, papers, monographs, and educational
resources. Some universities have even placed the contents of entire
courses on the Internet. Twenty-first century librarians must
understand the principles of good digital collections, and they must
be able to collaborate with members of their communities, technology
experts, and others to make their collections valuable and
accessible.
The 21st century is a very challenging time for those of you who
study and practice librarianship. You need knowledge and skills that
previous generations could not imagine. However, whatever challenges
you may face, remember your predecessors. For thousands of years
librarians have been accumulating knowledge and wisdom, and they
have used their professional skills to serve their communities and
maintain the vitality of human civilization. So will you.
本の扉第 6 号掲載の日本語訳は一部意訳になっております。(翻訳 服部昭郎)
第6号
2011年3月発行
ISSN 1880-165X 京 都ノートルダム女 子 大 学
司書・司書教諭課程
ニューズレター
目 次
巻頭言
21世紀の図書館司書職/グレゴリー ピーターソン
1
司書課程から
資料組織演習/前川由実子・慈道佐代子
2
司書課程から
図書館経営論/岡村敬二
2
卒業論文から
絵本に描かれた「食」/津守愛
3
修士論文から
英国のベッドタイムストーリーと日本の読み聞かせに関する考察/酒井美佳
3
現場の先輩、
先輩の現場
大学図書館 日々思うことなど/安威和世
書架から書庫から/羽柴多恵子 佐藤明子
4
5
実地見聞
図書館特論(=京都資料論)−フィールドワークとともに/岡村敬二
6
実践報告
司書課程・司書教諭課程の学生による子ども向けお話会/岩崎れい
日々往来
21世紀の
図書館司書職
グレゴリー・ピーターソン
(本学学術情報センター長・英語英文学科教授)
訳 服部昭郎
(本学人間文化学科教授)
7
8
者はPC、電子書籍リーダーなど様々な情報端末を
使います。ごく普通の市民がウエブ上で「著者」とな
り、画像や音声を共有します。図書館司書が情報を
うまく入手して利用者のニーズに応えるためには、新
しいデータ・フォーマットあるいは出版界の新しいト
レンドを常に熟知していなければならないのです。
法にかなった情報のやり取りのためには知的財産
に関する権利や制限についての理解が求められま
す。版権や資料の使用条件についての知識のなさ
は法を守らないことに通じかねません。
私が 1960 年代に通っていた高等学校の図書館司
多くの図書館司書がデジタル環境を構築し、そこ
書はお名前をルーアークさんと言いましたが、当時
にデジタル資料を集積しております。そのようなデジ
彼女のような図書館司書には想像もつかなかった知
タル資料はインターネットを通じて利用に供され、現
識や技術が今の時代の図書館司書のみなさんには
在では多くのデジタル・コレクションについてのメタ・
求められています。もちろん21世紀の図書館司書
データが利用できます。文化遺産、研究資料や教
のみなさんはルーアークさんのような先輩図書館司
育資源などの保持にはデジタル化は大変有効です。
書と多くの面で共通の仕事を行っているのですが、
21世紀の図書館司書のみなさんは有益なデジタル・
情報とコミュニケーション技術の進歩発展が図書館
コレクションを作るための知識や技術を身に着けて
司書の仕事に革命的な変化をもたらしているので
いなければならないのです。
す。
21世紀は図書館司書職を目指すあなた方に多く
情報が洪水のようにウエブ上に流されていますが、
を求めます。先輩司書たちには想像もつかなかった
グーグルなどの検索エンジンを使えば誰でも情報を
知識や技術が必要なのです。しかし先輩司書たち
得ることができます。しかし特定の目的に最適な情
の足跡を忘れてはなりません。彼らは長い年月をか
報を見つけるためには熟達した情報検索技術が必要
けて知識と知恵を蓄積してきました。そしてその専
ですし、場合によってはデータベースについての特
門的な知識と知恵をもって社会に貢献し、文明に常
別の知識が不可欠です。
に活力を与えてきたのです。みなさんも先輩たちを
電子書籍やウエブ・ニュースなどの出現によって出
追ってその道を歩んでください。
版産業がいま劇的な変化をとげつつあります。消費
※原文は司書課程 HP 上に掲載しています。
1
司書課程から
司書課程から
資料組織演習
図書館経営論
標記の授業は、夏季集中で学ぶ「資料組織概説」を受け、
図書館の経営、つまり図書館のマネイジメントを
後期に開講される演習科目である。前川が「目録」を担当し、
学ぶこの科目は、言い換えれば図書館運営において
慈道が「主題(分類・件名)」を担当している。
「目録演習」では、資料の目録作成を体験する。現在はコ
ンピュータを使う目録作業が主流である。目録をコンピュー
日々直面している現代的な諸課題を学ぶことでもあ
る。そのためには、まずは図書館の設置母体や管
タで作成する方法は様々だが、授業では、書誌ユーティリ
轄のこと、またその法律的根拠や組織構成、予算
ティ環境を疑似的に体験できる「Biblas(ビブラス)」という
などを知らなければならない。すでに
「図書館概論」
ソフトウエアを使用し、参加館の一員になった気持ちで目録
の科目で学んだこれらの知識を総動員しながら授業
作業に取り組む。そこでは、多数の図書館等がオンラインに
よる分担目録作業を行い、総合目録データベースを構築し提
供する。授業ではオンライン環境ではないが、演習を進める
中で、目録規則はもちろん総合目録データベース作成の仕組
を進めていった。
もう一つ、
この授業での特徴は、
図書館現場で日々
直面する諸問題を具体的に検討していったことであ
や、書誌ユーティリティ利用のありかたを理解できるであろ
る。それはわたし自身が長く大阪府立図書館に勤務
う。また同時に自館の蔵書目録も簡単に作成できる事が実感
してきたことに起因する。つまり実際に現場のカウン
できる。現在、ほとんどの大学図書館等は書誌ユーティリティ
ターに立って体験した、利用者のトラブルやクレーム
に参加している。日本では国立情報学研究所が提供している
「NACSIS-CAT」が代表的である。授業では、目録利用者の
便宜を図るためにはどのように作成すればよいか?と常に考
えながら、目録作業を楽しんでほしいと思う。
(前川由実子 本学非常勤講師)
を事例にとりながら、その背後に潜んでいる図書館
自身が抱える本質的な問題を検討していったことで
ある。それは図書館の運営につながる重要な問題で
もある。
たとえば複写を巡る問題。これは著作権者の権
「主題(分類・件名)演習」で、分類は「NDC」(Nippon
Decimal Classification:日本十進分類法)を、件名は「BSH」
(Basic Subject Heading:基本件名標目表)を学ぶ。「NDC」
(本
表編)は、主題に沿って分類記号が展開しており、本表編に
利と利用者の要求が真っ向からぶつかる問題でもあ
る。商業出版物と自主制作や団体の出版物など多
様な出版の形態が錯綜しており、なかなかやっかい
ある分類記号だけでは不十分な場合、主題に加えて図書の形
な問題でもある。どこかで折り合いをつけなければ
式区分、地理区分等を考慮し、本表編の分類記号に付加して
ならない問題だが、図書館現場はその利害のせめ
最終的に分類記号を確定していく。NDC は、分類記号を数字
ぎあいの狭間に立たされている。訴訟や裁判といっ
で表現している。そのため、形式区分や地理区分等を付加す
る時に、既に本表編にある分類記号と重複したり、似たよう
な分類記号ができてしまう。それらの問題をどう扱っていく
のかを演習問題で学んでいく。実際に図書館現場で使用され
た「大事」ではないにせよ、そこには社会の縮図が
確実に存在しているのである。
さらには、刑事事件となったときの「読書の自由」
ているものと同じ「NDC」と「BSH」を使う。問題の回答は、
と犯罪捜査への協力の問題もある。また「読書の
名簿の順番に当て、分類記号を確定していくプロセスを黒板
自由」と資料提供、さらには少年犯罪を実名報道
に書いてもらう。回答された結果を解説し、順次進めていく。
した雑誌の提供など、報道媒体の問題もなかなか
このような作業を通して知的生産物を分類し、記号で表現し
ていくという分類作業の役割を学ぶ。分類の次は件名を学ぶ。
「資料組織演習」では、目録で図書の物理的な特徴を表現し、
主題で分類記号や件名を付与することを学ぶ。図書館資料の
難しい。そしてさまざまな利用者が来館するなかで、
より快適な読書環境の確保をめぐっても、現場では
多くの課題を抱える。
利用には、このような資料の組織化が欠かせないことへの理
こうした図書館個有の現象的な諸問題にあって
解を目標にしている。
も、その根底をよくよく検討してみると、それは図書
(慈道佐代子 本学非常勤講師)
館だけでなく社会それ自体が抱えている根本的な問
題もほの見えてくるのである。このように、図書館で
の事象を社会的な課題として検討していくことも大
切なことではないかと考えながらこの授業をおこな
っている。
(岡村敬二 本学教員)
2
授業風景
卒業論文から
絵本に描かれた「食」
修士論文から
英国のベッドタイムストーリーと
日本の読み聞かせに関する考察
本論文の目的は、絵本に描かれた「食」を深く
本論文の目的は、英国において子育ての一環とし
追求することにより、今までイメージで語られがちで
て伝統的に根付いているベッドタイムストーリーの習
あった絵本と「食」との関係を明らかにしていくこと
慣と日本の読み聞かせの現状を題材に、日本と英国
である。検証にあたり、以下の三つの仮説を立てた。
の読書環境の違いや目的の違いを比較することで、
一つ目に、食べ物が登場する絵本は子どもが好きだ
日本の子どもの読書環境や親が置かれている現状
から人気があるのではないか、二つ目に、食べ物が
を明らかにすることである。この目的のために、2
登場する絵本は教育・しつけのために出版されてい
つの仮説を立てた。
るのではないか、三つ目に、食べ物が登場する絵本
第一の仮説では、英国に伝統的な習慣として根
は文化的・社会的背景を反映しているのではないか、
付いているベッドタイムストーリーと日本で行われて
という仮説である。
いる読み聞かせの目的は違い、日本の方が教育的
一つ目の仮説については、小学 2 年生 111 人を
要素が強いのではないかと考えた。その結果、日
対象とした、アンケート調査と、保護者へのインタ
本でも英国でも現代の社会問題の影響を受けて、同
ビュー調査によって検証した。二つ目の仮説につい
じような目的を持ってベッドタイムストーリーも読み聞
ては、食生活が描かれている絵本の分析と、保護
かせも行われていることが明らかになった。
第二の仮説では、英国ではベッドタイムストーリー
仮説に関しては、食べ物が登場する絵本を収集・分
減少の要因の一つとして父親の関与が少ないことが
類し、分析することによって検証した。
挙げられており、伝統的に子育て=母親という価値観
その結果、小学校低学年には、食べ物の登場す
をもつ日本においても同じことが言えると考えられ、
る絵本は人気があり、食べることが好きということ
育児支援制度を含む労働環境の違いから日本は英国
や、料理をすることに憧れがあるということがその
より読み聞かせにおける父親の関与は少ないのでは
理由に挙げられていた。そして、二つ目の仮説につ
ないかと考えた。その結果、子育て環境や子どもを
いては、食 生活が描かれている絵本の分析から、
とりまく環境の違いについて英国と日本を比較したと
食べ物が登場する絵本が、教育・しつけのために出
ころ、英国では、親が子育てと仕事を両立するため
版されているかどうかは検証できなかったが、イン
の支援が整っており、父親の子育てへの関与を促す
タビュー調査の結果から、保護者が食育を意識し
支援が積極的に行われていることが明らかになった。
て子どもに絵本を与えていたケースが比較的多いこ
よって英国では、母親が子育てと就労を両立する
とがわかり、出版社の意図はともかく、保護者には
ための支援が整いつつあり、両親ともに子育てをす
絵本に教育やしつけの意味を持たせていると言える
るという社会の変化の中で、ベッドタイムストーリー
だろう。三つ目の仮説については、1950 年代以降、
への父親の関与はむしろ増加の方向に向かっている
約 20 年間ごとの食べ物が登場する絵本を分析した
のではないかと考えられる。一方、日本ではまだ子
結果、年代によって登場する食べ物や内容の変化が
育てと就労の両立が困難であり、OECD加盟国の
見られることがわかった。食べ物が登場する絵本は
中で父親と子どもが一緒に過ごす時間が最も少ない
文化的・社会的背景を反映していると言える、とい
ことがわかった。しかし、父親の子育てに対する意
う結果であった。
識は向上しており、社会的な制度の不十分さから、
食べ物が登場する絵本は、単に子どもが好きだか
ら、という理由だけでなく、教育・しつけ・食育に
父親が読み聞かせを含む子育てに関与する機会が
非常に少ないといえるだろう。
影響があったり、社会的・文化的背景を反映したり
これらの結果から、家族環境を取り巻く社会の体
して、数多く出版され、人気を集めていると言える
制が整っていることと読み聞かせへの関与のあり方
だろう。
には深い関係があると結論づけることができた。
(津守 愛 人間文化学科卒業生)
本の扉
者へのインタビュー調査によって検証し、三つ目の
(酒井美佳 人間文化専攻修了生)
3
大学図書館 日々思うことなど
梅花女子大学図書館
図書館情報センター 図書グループ
アシスタントマネージャー
安威 和世
学生の頃、図書館で過ごすことが好きでした。本を読むこと、またそ
の企画でした。本好きな人、デジタル好きな人、それぞれの学生さんか
の空間がとても居心地がよく、授業の合間や放課後はたいてい図書館に
ら生の声を聞き、今図書館に求められているものは何かなどを具体的に
いました。就職時、図書館司書を希望したものの実現せず、「将来、役
知ることができました。
立つはず!」と信じ、コンピュータソフトの会社に入社しました。就職し
今取組んでいることとこれからの図書館
た会社では提案制度があり、私は社内の資料やマニュアルの整理・貸出
「学生の読書離れ」と言われて久しいですが、私たちは図書館や資料
の管理システム ( 極々簡単な図書館システム ) を考え、社長賞をもらった
に興味をもってもらえるよう、カウンター付近にテーマを決め「館員のお
りしましたが、やはり図書館で働きたいという思いが強くなり、縁あって
すすめコーナー」を置いたり、展示会の際に展示ケースの外に関連する
梅花女子大学の図書館に勤め始めました。
資料を手に取ってもらえるよう並べたりといった工夫をしています。さら
ある大学図書館の 1 年と私の担当業務
に、学生さんの「本を読んでみようかな」というモチベーションを上げる
4 月、新入生対象の図書館オリエンテーションやガイダンス、5 月には
ために「読書マラソン」を計画しています。既に他大学では実施されて
春の図書館所蔵資料の展示と関連講演会、6 月はゼミ対象のガイダンス、
いるものですが、本学独自のものができないか、生きる力となるような、
夏休みには受験生対象のオープンキャンパス。後期に入ると秋の展示と
より上質な読書体験をしてもらえるようなものを、と話し合っています。
講演会、ステップアップ版ガイダンス、クリスマス関連の展示、新年度
そして「ラーニング・コモンズ」です。2010 年は電子書籍元年と言わ
の準備。これらに加えて、同窓生や学外からの見学者や閲覧者への応
れました。大学図書館はインターネットをはじめとするデジタルな部分と
対などがあります。
従来のアナログな部分が共存し、豊かな情報環境と読書・学習 ( 研究 )
一方、日々の業務として、カウンター業務、参考業務、資料の選書・発注・
環境が提供できる、ということが求められていると考えます。そこに人
受入・整理・配架、広報活動(ホームページの更新、ポスターや案内板の
が集い、互いに知識や情報を共有し向上し合う、そんな知のオアシスで
作成、広報紙編集など)、図書館システムの管理、学内他部署との打合せ、
あり、知の拠点であるよう努めたいと思います。
業者とのやり取りなどが私の担当業務であり、同僚と行っているものです。
最後に
大学図書館では、1 年間にすべき行事・業務はおおよそ決まっています。
学生の頃、毎日のように通った図書館。当時と現在とでは学生さんの
けれどもこれらは、大学図書館として最低限すべきことであり、これら
気質が異なり、また人それぞれ図書館への思いは異なるかもしれません
に終始していては利用者の方によいサービスを提供しているとは言えませ
が、どんな時も誰にとってもホッとくつろげる、安心して過ごせる居心地
ん。私たちを取巻く環境は常に進化・変化しています。私の職場では、
「現
のよい場所を提供し続けたいと思います。そのための努力として、論文
状維持は後退を意味する」「新しいメディアに対して敏感に反応すること。
を読んだり研修に参加したりということにとどまらず、「司書は 24 時間司
何年か後に使われなくなったとしても利用者が今何を必要としているかを
書でありつづける」という先輩の言葉を胸に、常に情報を収集し、他の
見極め、できるだけ揃えていく努力をする」という考え方が浸透しており、
図書館はもちろん、書店や美術館に行ってもデパートのフロア案内を見て
私自身、新しいことにチャレンジすることへのとまどいはなく、「とにかく
も、アイデアやヒントを見つけ日々の仕事に生かしたいと思っています。
やってみよう」という前向きな姿勢で仕事をしています。
最近の例を挙げますと「中学生の職業体験の受入れ」「学生さんとの
梅花女子大学図書館では、日本文学関係および国内外の児童文学関連
座談会」などを行いました。ともに初の試みです。前者では、作業の説
の古書を数多く所蔵しており、年 5 ~ 6 回、テーマを決めて所蔵展を開
明に使うマニュアルを点検することにより、合理化できる点を見つけ、日
いています。春と秋には関連する講演会も行っています。皆さんも是非お
頃何気なく行っていた仕事
を見直すよいきっかけにも
立寄りください。
《梅花女子大学図書館HP http://www.baika.ac.jp/~lib/》
なりました。カウンターで
貸出の際、バーコードを読
取るだけでうれしそうに目
を輝かせている彼女たち
を見て、微笑ましく思い、
私たちも刺激を受けまし
た。後者は図書館広報紙
4
(英語英文学科卒業生)
「言語力」を育てる
授業づくり 小学校
梶田叡一・甲斐睦朗編著
図書文化社 2009 年
ムーミン童話全集(1)
『ムーミン谷の彗星』
トーベ・ヤンソン=作・絵、下村隆一=訳
講談社 1990 年
いつもおだやかなムーミン谷に、赤い尾をひく彗
星がせまってきます。天文台の科学者によれば、
「彗
星は 8 月 7 日の午後 8 時 42 分に地球へ衝突する」。
それを知ったムーミン谷の住人たち…さてどうしま
しょう、というお話です。
「ムーミン」といえば、某大学の広報に起用される
など、国内では愛らしいマスコットとしての地位を得
ている生き物です。しかしながら、
「ムーミン」たち
が登場する物語を読み進めていくと、それは決して
無垢でふわふわした子どもむけの読みものではない
ことがわかります。読み手が年齢を重ねるほどに、
その多様な登場人物と、かれらを受けとめる寛容な
世界にはっとする、
「気づき」の多い童話なのです。
その「ムーミン」を語るうえで欠かせない登場人物
のひとりが、ムーミンママです。
彗星が落ちてくるという 8 月 7 日にケーキを焼き、
口笛を吹きながらデコレーションをしていた、という
落ちつきぶりも尊敬してしまいますが、やはり特筆す
べきは、赤い彗星がムーミン谷に衝突したときのこ
と。星のかけらが雨あられとふりそそぎ、地面がぐ
本の扉
21 世紀に入りグローバル化が進みそれにともない我々の周囲
の環境は目まぐるしく変化し、とりわけICTの発達は我々の予
想を超えて生活のあり方さえ著しく変化させてしまったと言って
も過言ではない。とかく多忙と言われている現代人は人と関わ
る時にいったいどの様な方法でコミュニケーションを取っている
のであろうか。最近は我が国からの海外留学者数が減少するも
のの外国語習得のために英語圏をはじめ中国などへ語学留学す
る傾向は依然と続いている一方で、海外からの我が国への移
住民も近代では珍しくなくなり日本においてもかつてとは比べも
のにならないくらい多様化しているのが現状である。
教育現場の視点から述べるが来年度から小学校教育では新
学習指導要領がいよいよ導入されるのにともない現行の学習指
導要領では総合的学習の中での英語活動が行われているが全
国の小学校で依然と領域ではあるが外国語活動が本格的に導
入されるわけである。新学習指導要領の外国語では大きく3つ
の柱で成り立っているが、特に今回の改定では我が国の国語力
や文化に対して文言が加えられているところに着目したい。つま
りゆとり教育の反省からの今回の改定で国語教育が基本である
べきだと重要視されている。子どもが教育に接する場所は家庭
や地域社会と様々ではあるがやはり学校教育を抜きには考えら
れないため、教師が児童・生徒に与える影響
は学力面では言うまでもなく、豊かな感性を
育みまた社会秩序を守れるように未熟な児童・
生徒の人間形成のうえでも大きく与えるのであ
る。改めて母語である国語教育を通じて情緒豊かで健全な教育
が求められている。母語とは広辞苑の第六版に「幼時に母親な
どから自然な状態で習得する言語。第 1 言語。」とある。
本書は前々京都ノートルダム女子大学学長の梶田叡一先生が
国語教育の大切さを冒頭に述べられており、学校教育において
国語を中心とし各教科・領域において言語力を育てるために各
分野の専門の先生方からの視点で詳しく指導例が配列されてい
る。児童・生徒は知識や理解は出来るがそれを活用しさらに探
求するため教師は児童・生徒に生きる力を育てるため教育面か
らサポートする必要がある。最近は子どもや若い世代でのコミュ
ニケーション不足が指摘され、意思の疎通を上手くすることがで
きないため、かつてでは考えることの出来ない事件が起こり胸を
痛めることがしばしばある。つまり我々の慣れ親しんでいるはず
の母語に対する危機感を抱いている人は多数であろう。ここで
再度、国語力の大切さを認識し教育を通じて自分や他者の意見
や思想を相互理解しながら全ての児童・生徒に全人教育の場が
与えられることを期待したいと思う。余談ではあるが外国語習得
の基本は母語教育が確立されていることも重要な要因と一言だ
け触れておきたい。本書は小学校版であるが中学校版も発行さ
れているので教育関係に携われている方には是非とも手にして頂
き教育に対する認識を新たにして頂ければ幸いである。
(羽柴多恵子 応用英語専攻修士課程)
らぐら揺れ、ようやくあたりが静まり…身を寄せあっ
てその衝撃に耐え、おびえていたムーミントロールた
ちに、ママはこう話します。
「もう、ねましょうよ。あ
の彗星のことは、いったり考えたりしないことにしま
しょう。それから、外がどうなったか、だれも見ちゃ
いけませんよ。それは、あしたでいいことだもの。」
どこまでもやさしく、おだやかなムーミンママ。そ
の存在は、物語に流れるゆったりとした時間そのも
ののようです。
ご存じのように、ムーミンシリーズには、このほか
にも個性的な面々がたくさん登場します。ハーモニカ
と孤独を愛するスナフキン、哲学を語るじゃこうねず
み。かれらの主張はときに自分勝手で、読者を翻弄
します。そんな気ままなかれらの言動にふりまわされ
てみたい方や、ムーミンママのおだやかな愛に包ま
れたいと思う方は、ぜひ本学図書館へおいでくださ
い。
「ムーミン童話全集」
(全 8 巻+別巻、講談社)
のほか、ムーミンコミックスシリーズ(全 14 巻、筑
摩書房)など、各種資料を所蔵しております。
ふだんの暮らしにつかれたときや、人生に迷った
ときは、ムーミン谷をのぞいてみませんか。そこには
「自分らしく」生きる住人の姿があり、おおよそのこ
とを許容する、かれらのやさしいことばが聞こえてく
るはずです。
(佐藤明子 本学学術情報センター図書館司書)
5
実地見聞
図書館特論
(=京都資料論)
-フィールドワークとともに
司書としての基礎知識や技術を涵養する、という
内容であれば、比較的自由に設定できるこの「図書
館特論」を本学では「京都資料論」と呼称して、京
都の事象を調べていくための基本的な資料群を学
ぶこととしている。
ただ京都資料といっても、関係資料を解題風に説
明するだけではすぐに退屈してしまう。そこでこの授
業では、大学の近くの深泥池(深泥池水生植物群と
いう国の天然記念物に指定されている)を事例とし、
この深泥池に関連する資料を使いながら知識を深め
ていくこととした。
そしてフィールドワーク、つまり教室で取り上げた説
深泥池の池畔を歩く
話や歴史書の記述、古地図や名所図会などを持ち、
現地に入って実地見聞をすることとしたのである。
二度目は秋も深まった時期、大学の西にある児童
まずは「深泥池から歩きだす」ということで、平凡
公園で別の碑文を確認した。そこには「昭和 9 年
社の『京都市の地名』の記述を手掛りに深泥池の基
10 月誌」とあり、洛北土地整理組合の碑文であった。
礎知識を獲得した。そしてこの記述に出る典拠資料
そして古地図にもある鞍馬街道(現下鴨中通り)を
を検討していった。さらにその典拠になっている資料
歩き、植物園で水琴窟、最近建碑成った小野蘭山
の「活字版」を探し実際に手にするというプロセスを
の碑文を読んだ。
踏んだ。また深泥池の位置を現在の地図と江戸時代
三度目は、鞍馬口の上善寺。ここには深泥池畔
の古地図とで対照しながら、典拠として挙がる『雍州
にあった深泥池地蔵が祀られてある。そして「掃苔」
府志』や『今昔物語集』を読み、
『都名所図会』の
には欠かせない資料である『京都名家墳墓録』に
変体仮名にも挑戦した。この『都名所図会』を事例
掲出される長州藩士首塚の墓参もおこなった。この
にとりあげ、本学蔵の原本や複製版・活字版、また
上善寺に至るまでに、上御霊神社に参拝し、鳥居
国際日本文化研究センターのデータベース「平安京都
横の応仁の乱発祥の碑を確認し、門前の水田玉雲
名所図会」の全文ファイルや索引についても言及した。
堂のお煎餅をいただきながら寺町を歩き、額縁門と
フィールドワークはあわせて 3 度実施した。一度
しても有名な天寧寺も巡覧したのだった。
目は、授業の早い時期に深泥池へ出向いた。深泥
本年度の図書館特論(京都資料論)の授業はこ
池へ歩いていく途中に、大学横の 児童公園にある
のようなものであった。このようにフィールドワークと
(昭和 14
「竣工記念碑 松賀茂土地区画整理組合」
いう方法をとり入れ、資料と見聞とによる重層的な
年 11 月建設)の碑文を一行全員で確認した。大学
学びにより、京都のこと、京都資料のこと、さらに
の在る北山地域は、大正末から昭和のはじめの区
日本の歴史のことに関心を持ってもらえれば、この
画整理と宅地開発で町割が成ったこと、そして閑静
授業の目標は達したことになると考えている。
な住宅街として今日に至っているそんな歴史的な事
(岡村敬二 本学教員)
実を知ることができた。こうした碑文は、深泥池近
くの公園にも建っていて、これも見学しながら歩い
た。
深泥池では、
『都名所図会』に載る地蔵堂と深泥
池の様子を参考にしながら位置を検討した。そして
平安時代、狩猟の場であった深泥池の周囲をそぞ
ろ歩きしてみることにした。
古地図で確認してみる
6
実 践 報 告
いました。また、
「こぶた たぬき きつね ねこ」
司書課程・司書教諭課程の
学生による子ども向けお話会
などの童謡を珍しいハープの伴奏で歌う場面もあり
ました。
2010 年 10 月 30 日、ND 祭の日に図書館で司書
課程・司書教諭課程の履修生有志による子ども向
けのお話会を学術情報センターの共催で開催しまし
た。主に小学校低学年向きのプログラムで、準備し
た座席はほぼ満席となりました。
お話会のオープニングには、人間文化学科3年次
生の近藤謹子さんが友情出演でハープを演奏してく
れました。1番目のプログラムは『キャベツくん』の
読み聞かせでは、ナンセンスな作品の面白さが子ど
今まで、授業の中でのお話会の実習やノートルダ
もたちの関心をじゅうぶんに誘っていました。2番
ム学院小学校での実演は経験してきたものの、広く
目~4番目はペープサートの実演でした。2番目の
一般の子どもたちに来場してもらってのお話会は初
プログラムは『つきよのかいじゅう』で、いささかグ
めての試みでしたが、卒業生の応援参加もあり、子
ロテスクな「シンクロをしている大男の足」に子ども
どもたちも楽しんでくれたようで、とても充実したお
たちの視線が釘付けになり、子どもたちの動きも一
話会になったと思います。今後もできる限り続けて
瞬凍ったようにとまっていました。3番目のプログラ
いければ、と思っています。
(岩崎れい 専任教員)
ムは『たまごにいちゃん』、いつまでもおにいちゃん
本の扉
になりたくない「たまごにいちゃん」は小学校低学
年になった子どもたちの気持ちにどこか寄り添って
いたのではないでしょうか。4番目のプログラムは
『10
プログラム
ぴきのかえる』、数と連動したリズミカルな動きはお
オープニング:ハープ演奏 話会の中盤を超えたところでも子どもたちを飽きさ
〈かすみか雲か〉〈庭の千草変奏曲〉
せないテンポを保ちました。
人間文化3年 近藤謹子
1.読み聞かせ『キャベツくん』 人間文化3年 瀬戸佑香
2.ペープサート『つきよのかいじゅう』
人間文化4年 関小田菜保子・高松理恵
3.ペープサート『たまごにいちゃん』 人間文化M1年 吉田優香
人間文化卒業生 栗田麻里・塩崎愛
森川理菜
最後のプログラムはブックトーク
〈「わおぉん」と
「ぶ
ひぶひ」〉。プログラム開始からかなり時間が経ち、
また少し長めのプログラムでしたので、子どもたちの
集中力が保つかどうか、いささか気にしながらの実
施でしたが、子どもたちは積極的にブックトークに
参加してくれて、また担当した学生も子どもたちの予
想もしない反応に、テンポよく臨機応変に対応して
4.ペープサート『10ぴきのかえる』 英語英文4年 高田知佳・田中瑠美
心理卒業生 秋田奈穂
5.ブックトーク〈「わおぉん」と「ぶひぶひ」
:おおかみとぶた、お月さまのお話〉
人間文化3年 小谷真央・西岡友美
7
12 月~ 1 月 読書プログラム実習
「読書と豊かな人間性」にて。
4 月 8 日 司書課程オリエンテーション
参加者は新一年生を中心に 75 名であった。
6 月〜 7 月 読書プログラム実習
「児童サービス論」で、ペープサート、ブッ
クトーク、読み聞かせ、紙芝居などを実習。
8 月 25 日〜 27 日 京都ライトハウス見学
「資料特論」集中講義最終日に京都ライトハ
ウスを見学した。授業内では点字実習も行った。
10 月 30 日 お話会開催(ND 祭)
司書・司書教諭課程の受講生が近隣の幼稚園
児、小学生を対象にお話会を行った。
11 月 20 日、27 日 製本技術講習会
講師の藤原孝先生より製本の基本(洋綴じ、
和綴じ、朱印帳作り)を学んだ。皆丁寧に作業
をし、きれいな本に仕上がった。
11 月 28 日 図書館情報学検定試験準備試験
本学からは 4 名が受験した。
11 月 30 日~ 1 月 18 日 「図書館サービス論」展示実習
テーマは、“図書館からグリムの世界へ”
「心理学とグリム童話」
「パロディとその風刺」
「キリスト教の影響」等、多角的な視点からグ
リムに関する本を選書。ジオラマを作るなど、
凝った展示になった。
編集後記
昨年今年と、文部科学省の科学研究費助成の
中間的成果 発 表として、資料展示 会を 3 月に開
催することができた。昨年度は
「満洲の図書館」、
今年度は「終戦時新京 蔵書の行方」と題しての
展示である。そしてともに 32 頁のカラー版図録
も刊行することができた。第 6 号を迎えるこの
『本
の扉』とあわせてお正月明けは、それらの準備
や編集作業でいささか大変ではあるのだが、そ
れぞれにやりがいのある仕事であり、こうした仕
事に関与できるということはまことに幸せなこと
だ実感している。( オ )
今 年は 大 学のND祭で、初めて一 般の 子ども
向けのお話 会を開催した。初めてにしては好評
であった。お話 会に限らず、できるだけ学生が
実地に経験できる機会を増やせていければ、と
思っている。
(零)
酷暑の夏も雪の冬もあっという間に過ぎ去り、
今 年度ももう終わりです。御 協力くださった皆
様ありがとうございました。(K)
京都ノートルダム女子大学 司書・司書教諭課程
ニューズレター 本の扉
第6号 2011年3月30日
8
編集・発行
京都ノートルダム女子大学
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〒606-0847
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