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ポートフォリオマネージャー

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ポートフォリオマネージャー
MFS Capability
Focus
White
Paper Series
Month
2012
May 2016*
®
筆者について
ブレンド型アプローチ
クオンツ投資とファンダメンタル投資の融合
要約
R・ディノ・デイビス、CFA
インスティテューショナル・
ポートフォリオ・マネージャー
•投
資家は、様々な市場環境下でパフォーマンスを上げることのできるリス
ク・バジェッティングや投資戦略を一層重視するようになってきています。
•フ
ァンダメンタル運用とクオンツ運用は、そのパフォーマンスを発揮する
市場環境がそれぞれ異なります。
•ポ
ートフォリオ構築プロセスに、ファンダメンタルとクオンツ双方のアプロー
チからの超過収益を融合したブレンド型アプローチは、良好なリスク・リター
ン特性を見せてきました。
マシュー・W・クリュンメル、CFA
ポートフォリオ・マネージャー
ジョナサン・W・セージ、CFA
ポートフォリオ・マネージャー
•単
一ポートフォリオの中で融合させた場合のブレンド型アプローチは、単
純に独立したマネージャー2社に資金を配分するよりも良好な結果をもた
らす可能性があります。それは、異なるアプローチを組み合わせることに
よって、それぞれの持ち味を様々な側面で柔軟に活かしながら、包括的な
ポートフォリオ運用を可能にするためです。
2008年から2009年にかけて起きた世界金融危機とその深刻な結末は、投資の世
界に消し去ることのできない爪痕を残しました。投資家は今、資産配分と同じくら
いリスク・バジェッティングにも配慮するようになり、次第に様々な市場環境の中で
も良好なパフォーマンスを上げる戦略を重視するようになっています。投資家のボ
ラティリティをとる意欲が低下する一方で、リターンには一層敏感になっているた
め、投資期間が短くなり投資パフォーマンスを悪化させかねない状況にあります。
リスク管理に注意を払うようになったからといってリターンを求めるニーズがなくな
る訳ではありません。期待リターンが低下する中、長寿化と金利低下に伴い年金基
金の債務が増加しています。投資家は、これまで以上に、指定されたリスクの範囲
内に抑えつつ安定的で予測可能なリターンを求めています。
* 本稿の初版は2013年9月に公表されました。
1
今日の投資業界では、多くの制約を調整しながら、どうすれ
ばボラティリティを抑え安定的なリターンを達成できるかとい
う点が 、調 査 や 議 論の中 心になっています 。リスク削 減
(ディ・リスキング)、ファクター投資、スマート・ベータ、パッシ
ブ運用とオルタナティブ投資への配分増加など、現在、業界
における数々のトレンドにそうした動きを見てとることができ
ます。
ファクター投資は、その中のアプローチのひとつですが、この
戦略は、投資テーマのカギとされてきたクオリティ・バリュエ
ーション・サイズ・モメンタムといった持続性のあるリスクプレ
ミアムの活用を目指します。単一ファクターでは周期性が高く
なる傾向があるので、互いに相関の低いファクターを組合せ
ることで、市場サイクル全般にわたって良好なパフォーマンス
を産むよう効率的ポートフォリオを創ることに注力されます。
複数のファクターの組合せ以外に、様々な市場環境で安定的
なリターンを達成する方法としては、ファンダメンタル運用と
クオンツ運用の2つを組み合わせる
「ブレンド型アプローチ」
があります。ファンダメンタル運用とクオンツ運用のアプロー
チは、それぞれ異なる市場環境の中で優れたパフォーマンス
を示してきました
(後述)。
本稿では、良好なリスク調整後パフォーマンスを産みだすブ
レンド型アプローチの利点を論じます。
ブレンド型アプローチの利点
ファンダメンタル運用とクオンツ運用は、双方パフォーマンス
の出方に循環的な傾向がありますが、それぞれ独自の特徴
を持ち、異なる市場環境下で優位性を発揮します。
クオンツ運用は、ファクター間のヒストリカルな関係が持続す
るという前提に立っています。また、秩序だっていてバイアス
もなく、企業のファンダメンタルズとバリュエーションについ
て体系的かつ客観的な評価を提供します。定性的ファクタ
ー、すなわち個々の証券のスコアリングに関する主観的な判
断は提供しませんが、そのプロセスは体系的で対象銘柄数
を容易に拡張できるため、日次ベースで大量の証券を評価
することができます。予想される通り、クオンツ・マネージャー
はモメンタムを持つ安定した市場環境において良好なパフォ
ーマンスを上げます。
一方、ファンダメンタル運用はそのリサーチ対象を急拡大さ
せることは容易ではありませんが、企業のファンダメンタルズ
とバリュエーションについて、より将来を見越した主観的な
評価が可能です。ファンダメンタル・マネージャーは企業につ
いて、経験から得た詳細な知識を持ち、状況の変化に迅速に
対応できます。その結果、市場リスクや投資家心理の変化に
比較的柔軟に対応し、資産バブル時や大きな転換点におい
て比較的良好なパフォーマンスを上げる傾向にあります。
クオンツ・マネージャーに比べて、こうした変化に対応して、
ポートフォリオのエクスポージャーをより迅速に調整できる点
に特徴があります。
この論点を検証するため、ファンダメンタル・マネージャーと
クオンツ・マネージャーの年次リターンを比較しました。具体
的には、eVestment Allianceのデータベースを用いて1994年
から2014年までの米国大型株コアユニバースの比較を実施
しました。それぞれの投資スタイルを代表するものとして、
ファンダメンタル・マネージャーの中央値とクオンツ・マネージ
ャーの中央値を用い、それぞれの年次リターンの差を算出し
ました。また、eVestment Allianceのデータベースの1994年か
ら2014年までの世界の大型株コアユニバースについても調
べましたが、2002年以前に自らクオンツ・マネージャーと名乗
るマネージャーは10社に及びませんでした。
図表1は、これら2種類のマネージャー間の、異なる市場環境
下におけるパフォーマンスの差を示しています。背景が暗い
部分はモメンタムのある安定した市場環境と一致していま
す。一方、背景が明るい部分は市場の転換点で、最初が
TMT(テクノロジー・メディア・通信)バブル、2番目は世界金
融危機です。クオンツ・ファクターは、低位から中位のボラテ
ィリティ環境下で最も効果を発揮する一方、市場の転換点で
しばしば見られる高水準のボラティリティ環境下では特に苦
戦を強いられます。ファンダメンタル・アプローチはこの逆に
なる傾向があります。グラフは、ファンダメンタル・マネージャ
ーが転換点の時期に大きくアウトパフォームする一方、クオ
ンツ・マネージャーは方向性のある安定した市場環境で優勢
となる傾向にあったことを示しています。
グローバル大型株コア・ユニバースの場合でみると、ファンダ
メンタル・マネージャーとクオンツ・マネージャーの結果は、
アウトパフォーマンス・アンダーパフォーマンス期間は同じよ
うなものですが、各々の時期と市場イベントの間にはそれほ
ど相関がありません。このデータの評価では、クオンツ・マネ
ージャーの比較的小さなユニバースも検討の対象になってい
ます。
ファンダメンタル・マネージャーとクオンツ・マネージャーのリ
ターンを比較した結果、これら2つの独立した銘柄選定プロセ
スを体系的に組み合わせると、相互に補完しあうことで、
市場サイクル全体または複数回の市場サイクルにおいて、よ
り高いリスク調整後リターンを達成する可能性があることが
見て取れます。つまり、ブレンド型アプローチ
(クオンツ運用と
ファンダメンタル運用の融合)によって構築したポートフォリ
オは、クオンツもしくはファンダメンタル、どちらか一方のみの
ポートフォリオよりも、長期的に優れたリスク調整後リターン
を達成する可能性があります。しかし、双方とも市場サイク
ルのある時点でアンダーパフォームする可能性があり、このア
プローチが投資家にとって万能薬であると主張するものでは
ないことにご留意ください。
次に、どのようにすれば2つの投資手法を最も効果的に組み
合わせることができるかという問いについて考えましょう。こ
こでの設問は、独立した投資マネージャー2社(ファンダメン
タル・マネージャーとクオンツ・マネージャー)
と契約すべき
か、単一の投資プロセスの中で両方の手法を融合させるべき
かです。
2
図表1:異なる環境下でのパフォーマンスの違い
ファンダメンタル・マネージャーのリターン中央値からクオンツ・マネージャーのリターン中央値を差し引いたもの
クオンツが
アウトパフォーム
ファンダメンタルが
アウトパフォーム
ファンダメンタルが
アウトパフォーム
クオンツが
アウトパフォーム
クオンツが
アウトパフォーム
5.8
4.8
相対リターン (%)
4.3
2.0
1.5
-0.3
-0.4
-0.8
-0.1
-1.4
-1.0
2.0
-0.8
-0.5
-0.7
-1.6
-0.9
-2.0
-2.90
-3.6
-4.8
-4.8
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
出所:eVestment Alliance。米国大型株コアのユニバース
(月次リターン・データ)。対象プロダクトは
「ファンダメンタル」
アプローチと
「クオンツ」
アプローチとに区分け。
マネージャーの分散化によってリスクの軽減と付加価値の向
上を試みる手法は一般的に行われています。2つの異なる投
資手法を組み合わせることで、全体的により効率的なポート
フォリオが得られると信じて、投資家はファンダメンタル・
マネージャーとクオンツ・マネージャー双方と契約することが
あります。これは広く受け入れられている慣行かもしれません
が、いくつかの潜在的なリスクが伴います。
投資家にとって典型的な出発点は資産・負債の検証です。
これは、年金基金が現在および将来の債務に対処するため
に策定する方針と政策的資産配分のベースとなるものです。
例えば、多くの投資家はMSCIオール・カントリー・ワールド・イ
ンデックス
(ACWI)やMSCI エマージング・マーケット株式イ
ンデックス
(EME)などお馴染みの時価総額加重インデックス
に代表される様々な資産クラスに資金を配分しています。
これらのインデックスは、それぞれ世界市場や新興市場の株
式を代表するものとして使われているものです。次に、投資
家は資産配分戦略に合わせて、ベンチマークを特定したマン
デート毎にマネージャーと契約します。この際、一般的に取ら
れる手法は、分散化を促進するため一資産クラスにつき複数
のマネージャーを採用するというものです。
しかし、同一ベンチマークについて複数のマネージャーと契
約した場合、投資家には当初明確でなかったリスクが発生す
る可能性があります。マネージャー2社がベンチマークとして
MSCI ACWIを使用すると仮定します。両社ともそれぞれ独
自に推奨セクターはハイテク、推奨地域は欧州と考え、小型
株や成長株も推奨対象であると考えています。両マネージャ
ーが独立して、自らの投資見通しでそれぞれのポートフォリ
オを構築すると、投資家の株式配分は、政策目標を反映した
ものとは云えなくなります。投資家の合算ベースのポートフォ
リオは地域、セクター、サイズ、スタイルでバイアスがかかっ
たものとなり、ポートフォリオは対ベンチマーク・リスクにさら
され、目標とのミスマッチが発生します。
特に、機関投資家が3社目のマネージャーと契約し、オーバー
レイ戦略や補完ポートフォリオを採り入れ、意図せざるエクス
ポージャー
(マクロ経済に関係したリスクオン/リスクオフ、
それに伴う顕著な地域、セクター、サイズ、スタイルのシフト
に伴うリスク)
を消去しない限り、合算ベースのポートフォリオ
と目標ベンチマークの間のミスマッチから、投資家のリスク/
リターン予想が大きく影響を受ける可能性があります。
一方、単一の投資戦略の中に複数の超過収益源を体系的に
組み込むことにより、様々な側面において持ち味の違いをフ
ルに活かす柔軟性がもたらされ、単純に個々のマネージャー
に資金配分するよりも良好な結果が生まれる可能性がありま
す。当社は、こうした手法でより効率的なポートフォリオを構
築するとともに、セクター、スタイル、サイズに関するバイア
スに関して行き届いた包括的なポートフォリオ管理プロセス
も確保できると考えています。
2つの分析的視点
ボトムアップのファンダメンタル・アナリストは、定量的視点と
定性的視点の両面から企業を検討し、企業や業界、成長性、
バリュエーション特性等を評価して、各銘柄ごとに詳細な収
益とバリュエーション・モデルを構築します。評価には、製品・
サービスの質や競争力、業界平均と比較した成長率、経営陣
の質、企業の財務力の分析などが含まれ、また業種分析で
は、成長見通しや価格決定力、規制環境、景気感応度など
が検討されます。アナリストはこれらの分析評価をモデルに
組み込んで収益成長率を予測するほか、銘柄の現在や過去
のバリュエーションを評価します。その際、割引キャッシュフロ
ー分析や株価収益率、株価純資産倍率、株価キャッシュフロ
ー倍率などの指標や、株主資本利益率、投下資本利益率、
営業利益率などが用いられます。こうしたリサーチの結果とし
て、
「buy」
「hold」
「sell」
等のレーティングが付与されます。
3
クオンツ・モデルは構成要素や複雑さの点でモデルによって
差がありますが、一般的には、以下の要素が含まれます。
•銘柄選択ファクター
(モデルの基本的構成要素)
•モデル・ウェイティング(どのようにファクター間を組み合わ
せモデル構築するか)
•ポートフォリオ構築(ポートフォリオの観点からどのようにモ
デルを活用するか)
銘柄選択ファクターは様々なポイントを見て選ばれていま
す。例えば、ファンダメンタルな根拠があり道理に適っている
か、それは有意なレベルか(すなわち、ファクターのシグナル
対ノイズ比率は常にプラスの高い値を示しているか)、互いに
どの程度独立しているか、などが問題となります。新たなファ
クターを追加する場合は、モデル中の他のファクターとの相
関が低いかマイナスであることが理想的です。
クオンツ・モデルでは、収益モメンタム、株価モメンタム、バリ
ュエーションおよび収益の質に基づくファクターを使用するこ
とがあります。モデルはセクターごとに固有であり、それに応
じて、同業他社グループが持つ様々な動向を捉えるためのウ
ェイトが付加されることがあります。
例えば、米国市場における生活必需品セクターは従来ディフ
ェンシブ・セクターとされており、バリュエーションが相対リタ
ーンの主な決定要因となっています。これに対して、ハイテ
ク・セクターは成長セクターとされ、収益と株価のモメンタム
が相対リターンの決定に大きな役割を果たしてきました。こう
した違いは、これら2つのセクターのモデルにおけるファクタ
ーやテーマのウェイトに反映されています。
クオンツ・リサーチでは企業のファンダメンタルズやバリュエ
ーションの体系的かつ客観的な評価が行われ、マネージャー
はこれらのモデルによって、ファンダメンタル要因の長期的な
持続性を引き出すことが基本的に可能となります。
ブレンド型アプローチ:リスク・バジェットを考慮
ブレンド型アプローチは、ファンダメンタル・リサーチとクオン
ツ・リサーチそれぞれから予測されるアクティブ・リターンを
融合し、対ベンチマークで市場リスクを最小化する規律ある
プロセスと組み合わせることで、アクティブ・リターンの最大
化を図ろうとするものです。
このアプローチでは、ベンチマーク全体の各構成銘柄につい
て、ファンダメンタル・アナリストとクオンツ・モデルに基づくア
クティブ・リターンの予想を融合します。次に、その予想アク
ティブ・リターンを用いてポートフォリオが構築されますが、
その際、予想アクティブ・リターンが高い銘柄には大きなウェ
イトが付与されます。ポートフォリオ最適化のプロセスにおい
て、ベンチマークの地域・セクター・サイズ・スタイルとの大幅
な乖離が生じないよう調整されます。
結論
投資家が資産だけでなく負債にも焦点を当て、資産配分と
同時にリスク配分も考慮するようになってきたことから、様々
な市場環境の下で良好なパフォーマンスを上げられるような
投資商品が求められています。体系的なポートフォリオ構築
プロセスの中でファンダメンタル運用とクオンツ運用の超過
収益源を組み合わせたブレンド型アプローチは、こうしたニ
ーズに応えるべく、市場環境が変化する中でも、安定的なリ
ターンを上げる可能性を提供しています。
本稿では、ファンダメンタルとクオンツを融合した運用を行う
単一マネージャーを採用する方が、独立したマネージャー2社
に単純に資金配分を行うよりも優れた結果を生み出し得ると
いう根拠を示しました。この主張が正しいのは、ブレンド型ア
プローチが、ポートフォリオの様々な側面においてアクティブ
とパッシブ双方の良さを引き出す柔軟性をもたらすととも
に、地域やセクター、サイズ、スタイルのバイアスやその他の
リスクを管理する包括的なポートフォリオ運用プロセスを可
能にするからです。
異なる表記がない限り、ロゴ、商品名、サービス名はMFS®およびその関連会社の商標であり、一部の国においては登録されています。
当資料は、情報提供を目的としてマサチューセッツ・ファイナンシャル・サービセズ・カンパニー
(MFS)および当社が作成したものであり、金融商品取引法に基
づく開示資料ではありません。当資料は、MFSもしくは当社が信頼できると判断したデータ等に基づき作成しましたが、その正確性及び完全性を保証するも
のではありません。当資料は作成日時点のものであり、市場環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。当資料のデータ・分析等は過去の
一定期間の実績に基づくものであり、将来の投資成果および市場環境の変動等を保証もしくは予想するものではありません。当資料は特定ファンドの勧誘を
目的とするものではありません。当資料に基づいてとられた投資家の皆様の投資行動の結果については、MFSおよび当社は一切責任を負いません。
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